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湘南西部地区地域保健医療推進指針

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湘南西部地区地域保健医療推進指針
湘南西部地区
地域保健医療推進指針
平成25年3月
1
指針の位置づけ
地域保健医療推進指針は、神奈川県保健医療計画の趣旨に沿い、各地域に
おける保健医療施策を推進するため、二次保健医療圏域ごとに、地域の特性
に応じた課題の解決に向けた取組の方向性を示すものです。
本指針は、湘南西地区保健医療福祉推進会議委員、関係機関・団体等より、
貴重なご意見をいただき作成しました。
また、本指針の期間については特に定めず、社会、経済情勢等の変化や大
幅な制度改正などがあった場合など、必要に応じて常に指針の見直し・修正
を行います。
2
地域の現状及び特性
湘南西部地区二次保健医療圏は、平塚市、秦野市、伊勢原市、大磯町及び
二宮町の3市2町で構成され、神奈川県南部のほぼ中央に位置し、面積は
253.22k㎡で、県の総面積の10.5%を占めます。
地形的には、北から北西にかけて、丹沢・大山山麓が連なり、南は相模湾
に向かって開口しています。一級河川の相模川が地区の東側を南北に流れる
一方で、地区のほぼ全域が二級河川の金目川水系となっています。
(1)
人口及び世帯
湘南西部地域の人口は、平成24年1月1日現在、593,653人で前回計画
策定時(平成18年)からの増加率は0.34%ですが、22年から人口が減少に
転じています。出生率が減少し、死亡率が増加しているのが主因で、平成
22年「神奈川県衛生統計年報」によると、第1位の「悪性新生物」、第2
位の「心疾患」、第3位の「肺炎」、第4位の「脳血管疾患」など、生活
習慣病や高齢化によるものが上位を占めています。
世帯数は、平成24年1月1日現在、240,506世帯で、前回計画策定時か
らの増加率は3.6%で、人口の増加率を大きく上回っており、平均世帯人
員は減少傾向にあります。
平成24年1月1日現在の年齢階級別人口に見ると、年少人口及び生産年
齢人口の構成割合はそれぞれ12.9%、65.1%で、前回計画策定時から減少
する一方、老年人口の構成割合は18.3%から22.1%へと増加し、当地区で
は当初計画策定時(平成5年)以来、一貫して少子高齢化が進展し、超高
齢社会(※)となっています。
(※) WHO(世界保健機関)や国連の定義によると、65歳以上人口の割合が21%超で
「超高齢社会」とされています。
- 1 -
【年齢3区分別人口の割合】
高齢者独
人口(人)
世帯数
居世帯数
区分
年少人口
生産年齢人口
老年人口
(世帯)
総数
(世帯)
(0∼14歳)
(15∼64歳)
(65歳以上)
1,182,523
5,957,088
1,868,418
308,463
神奈川県
9,060,257
3,876,258
(13.1%)
(66.1%)
(20.7%)
76,142
385,540
130,639
18,117
湘南西部
593,653
240,506
(12.9%)
(65.1%)
(22.1%)
出典:神奈川県年齢別人口統計調査、神奈川県人口統計調査、国勢調査
(注)人口、世帯数はH24.1.1現在、高齢者独居世帯数はH22.10.1現在
(注)人口の総数には年齢不詳を含んでいるが、年齢3区分別構成比は年齢不詳を除
いて算出している。
【主な死因別死亡者の推移】
【主要死因別死亡割合(平成22年)】
(人)
1800
1600
その他
29%
悪性新生物
33%
800
心疾患
14%
脳血管疾患
5%
600
400
200
肺炎
9%
0
4%
(2)
1200
1000
自殺
3%
不慮の事故
3%
呼吸器系疾患
1400
H9年
H13年
悪性新生物
脳血管疾患
呼吸器系疾患
自殺
医療施設の状況
H22年
H17年
心疾患
肺炎
不慮の事故
その他
湘南西部地域の病院、一般診療所及び歯科診療所数は、平成22年10月1
日現在、それぞれ22施設、386施設、300施設で、人口10万人当たり、それ
ぞれ3.7施設、64.9施設、50.5施設と、いずれも県全体を若干下回ります。
一方、県域内の医療サービスの目安となる病床数は、病院が6,446床、一
般診療所が216床で、人口10万人当たり、病院が1,084.2床、一般診療所が
36.3床と、病院は県全体を3割程度上回っています。
病床種別では、全体の55.8%にあたる3,597床が一般病床で、療養病床
1,228 床 ( 19.0 % ) 、 精 神 病 床 1,570 床 ( 24.3 % ) 、 結 核 病 床 50 床
(0.8%)、感染症病床6床(0.1%)となっています。人口10万人対で比
べると県全体に対して一般病床、療養病床及び精神病床はそれぞれ2割、
4割、7割上回り、結核病床においては県の4.9倍となっています。
- 2 -
診療科目の内訳では、病院は内科が20(全病院数の90.9%)、リハビリ
テーション科が13(同59.1%)、精神科が12(同54.5%)、消化器科・循
環器科・外科・整形外科・泌尿器科が各11(同50.0%)などとなっており、
一般診療所は内科が234(全一般診療所数の60.9%)、小児科が82(同
21.4%)、外科が53(同13.8%)などとなっています。
【医療施設・病床数】
(H22.10.1現在)
病院
一般診療所
歯科診療所
施設数
病床数
施設数
病床数
施設数
343
73,574
6,407
3,226
4,868
神奈川県
3.8
813.1
70.8
35.7
53.8
22
6,446
386
216
300
湘南西部
3.7
1,084.2
64.9
36.3
50.5
出典:神奈川県衛生統計年報
(注)表中の上段は実数、下段は人口10万対施設数、病床数
区分
(3)
薬局
施設数
3,444
38.1
230
38.7
医療従事者の状況
湘南西部地域の医療従事者数は、平成22年12月31日現在、医師は1,386
人、歯科医師414人、薬剤師1,241人で、前回計画策定時をいずれの職種も
上回っています。人口10万人当たり、それぞれ233.1人、69.6人、208.7人
で、県全体と比べると、医師では上回っていますが、歯科医師及び薬剤師
は若干下回っています。
また、平成22年12月31日現在の当医療圏の保健師数は147人、助産師146
人、看護師4,419人、准看護師866人で、前回計画策定時と比べると、准看
護師以外は増加しています。人口10万人当たり、それぞれ24.7人、24.6人、
743.3人、145.7人で、いずれも県全体を上回っています。
【医療関係従事者数】
区分
(単位
人)
歯科医師 薬剤師
医師
保健師 助産師 看護師 准看護師
17,676
7,057
19,610
1,899
1,939 51,503
11,335
神奈川県
195.4
78.0
216.7
21.0
21.4
569.2
125.3
1,386
414
1,241
147
146
4,419
866
湘南西部
233.1
69.6
208.7
24.7
24.6
743.3
145.7
出典:「神奈川県衛生統計年報」
厚生労働省「保健師・助産師・看護師等業務従事者届」
(注)表中の上段は実数、下段は人口10万対従事者数(H22.12.31現在、人口は
H22.10.1現在)
- 3 -
3
地域における重点課題
(1)
地域に根ざした健康増進の総合的な推進
湘南西部地域では急速に進む高齢化と共に、悪性新生物、心疾患など生
活習慣病による死亡者が増加しています。更に、認知症患者や寝たきり等
の要介護者の増加等から、疾病構造の変化や多様な健康状態の広がりも課
題となっています。
健康の実現は、元来、自らの健康観に基づく、個人の主体的な取組課題
ではありますが、地域全体としても、個人の主体的な健康づくりを支援す
る取組の重要性が増しています。
そのため、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小、生活習慣病の発症予防
と重症化予防の徹底」等、「かながわ健康プラン21」が掲げる基本的な
方向を実現するため、一人ひとりが健康な生活習慣の重要性に対する関心
と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚し健康の増進に努
められるよう、あらゆるライフステージにおいて、地域の身体とこころの
健康づくりや疾病予防を積極的に推進することが必要です。
(2)
地域の関係機関の連携等による地域医療の推進
人口の急速な高齢化等とともに進む医療を取り巻く環境の大きな変化の
中で、地域住民が「誰でも等しく良質かつ適切な保健医療サービスを受け
られる」ことを基本として、保健医療提供体制を整備する必要があります。
そのために、5疾病・5事業及び在宅医療 (※) に係る医療体制を病病・
病診連携を通じて整備・充実し、適切な医療を提供していく必要がありま
す。なかでも、近年増加している認知症や脳卒中などで要介護状態となっ
た人々を支える地域の取組を強化する必要があります。
また、在宅医療については、今後の地域医療が直面する「超高齢社会」
の到来(2025年)を控え、これまでの「治す医療」に加え、要介護者等に
対してはその人らしく尊厳を持って生きられるよう「支える医療・介護」
を実現することが求められており、地域における保健、医療、福祉などの
多職種連携を通じて地域包括ケアシステムの構築を進めていく必要があり
ます。
さらに、東日本大震災を踏まえ、災害時における医療について、災害時
の医療救護や保健活動の体制整備・充実が必要になります。
(※) 医療計画において、それらに係る医療連携体制を定めることとされているもので、
5疾病はがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病及び精神疾患の各疾病を、5事業は救
急、災害医療、へき地、周産期及び小児の各医療をいいます。
- 4 -
(3)
多様な保健・医療・福祉ニーズへの対応
地域における様々な健康問題への取組として、難治性疾患対策、エイ
ズ(HIV)対策、不妊症・不育症対策、児童・高齢者・障害者虐待防止対
策や障害福祉施策等の充実に向けて、生活の質の向上や家族の介護の負
担軽減等を含めた保健・医療・福祉にわたる総合的な対策を進めていく
必要があります。
併せて、これら多様なニーズに対応できる人材の育成及び確保を推進
することが必要です。
(4)
健康危機管理体制の充実
食中毒、毒物劇物、感染症、飲料水、医薬品その他何らかの原因によ
り、生命と健康の安全を脅かす健康危機については、平常時からの食品
や環境衛生の監視指導を推進するとともに、健康危機の際、迅速に対応
する体制づくりを進める必要があります。
また、感染症については、平成21年に発生した新型インフルエンザの
対策に係る国の調査報告書の内容を踏まえ、①状況に応じて柔軟な運用
が可能な行動計画策定等の備え、②地域住民との情報共有と意見交換
(リスクコミュニケーション)の強化、③感染症対応に関する人材力の
強化などについて、地域で見直し、将来の感染症に対し、より適切に地
域の関係機関が一体となって対応できるよう、必要な体制を整えておく
必要があります。
さらに、「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」に東日本大震
災等の大規模災害時の対応が追加されたことを踏まえ、情報の収集・提
供・共有化を図り、関係機関等との連携体制を充実強化する一方、地域
住民の健康状態を低下させないために、災害時保健衛生活動の体制を整
備する必要があります。
- 5 -
4
施策の方向性
(1)
地域に根ざした健康増進の総合的な推進
健康寿命の延伸、生活習慣病の発症や重症化の予防、こころの健康
づくりの推進等に向けて地域の企業との連携を推進するなど、「かな
がわ健康プラン21」の理念に基づく取組を強化します。
○
一人ひとりが自分の健康を自覚し、的確な対応ができるよう、
必要な情報の提供を行います。
○
生活習慣病の予防・早期発見のため、特定健康診査・特定保健
指導、がん検診等の受診率向上に努めます。
併せて、ライフステージに応じたきめ細かい健康づくり事業、
栄養・食生活対策事業、禁煙支援事業や受動喫煙防止対策に積極
的に取り組むとともに、これらの事業を支える人材の養成・育成
を図ります。
○
妊娠期から切れ目のない生涯を通じた母子保健対策として、子
育て支援や母子の身体とこころの健康管理の充実のため、学校保
健を含めた地域社会全体での取組を一層強化します。
○
学校、職域保健・地域保健の連携による生活習慣病対策や自殺
予防を含めたメンタルヘルス対策の充実に取り組みます。
○
高齢者が住み慣れた地域で安心して健康に暮らすことができる
よう、健康増進対策と共に、介護予防の充実や高齢者を支える地
域の仕組みづくりに努めます。
○
地域住民が医療機関を適切に選択できるよう、分かりやすい医
療機能情報の提供や相談体制の充実に努める一方、日頃から身近
なところで健康管理を行うかかりつけ医、かかりつけ歯科医、か
かりつけ薬局について普及啓発を行います。
○
8020運動をはじめとする歯と口腔の健康づくりについての普及
啓発を通じて、各年齢層に応じた歯科検診や歯科保健指導等を実
施するなど、地域住民のむし歯・歯周病予防、口腔機能向上等を
- 6 -
支援します。
(2)
地域の関係機関の連携等による地域医療の推進
保健・医療・福祉の連携を通じて、地域住民の生活の質の向上及び
地域医療の確保に努め、「誰でも等しく良質かつ適切な保健医療サー
ビスを受けられる」保健医療供給体制を整備します。
○
生活の質の向上及び地域医療の確保において重要である5疾
病・5事業及び在宅医療について、これらに対応する医療体制の
整備・充実を図ります。
○
脳卒中については、地域連携クリティカルパス (※) の普及を図
り、医療と介護の円滑な連携に努めます。
(※) 急性期病院から回復期病院を経て自宅に戻るまでの疾病ごとの診療計画
を作成し、治療を受けるすべての医療機関で共有するもので、医療連携
の方法の一つです。
○
今後、増加が予測される在宅で療養する要介護者を地域で支え
るため、保健・医療・福祉などの多職種が連携する地域包括ケア
システムの構築を進めます。
○
災害時に医療救護活動が円滑に行えるよう、関係機関等が平常
時から連携・調整を進め、医療情報の共有や要援護者への支援を
含めた医療救護体制・医薬品供給体制の整備を推進します。
(3)
多様な保健・医療・福祉ニーズへの対応
○
難治性疾患対策については、難病患者の在宅生活を支援する保
健・医療・福祉の連携体制の充実と医療費の助成を行います。
○
エイズ(HIV)対策については、性感染症予防の教育や普及啓
発を行うとともに、エイズ(HIV)抗体検査・相談体制の充実を
図ります。
○
不妊症・不育症対策については、地域の少子化の現状を踏まえ、
相談体制の充実を図ります。
○
児童虐待防止対策については、妊娠・出産・育児期において、
養育支援を特に必要とする家庭を早期に把握し、速やかに支援を
- 7 -
開始するために、地域の保健・医療・福祉・教育機関等との連携
体制を整備します。
○
高齢者・障害者虐待の防止及び支援体制整備のために、地域の
保健・医療・福祉・教育機関等との連携を図ります。
○
多様な保健・医療・福祉ニーズに対応するため、保健衛生研修
等による人材の育成・確保を行います。
(4)
健康危機管理体制の充実
健康で安心できる安全な環境づくりを目指し、平常時からの食品や
毒物劇物、飲料水、医薬品等の監視指導を実施するとともに、食中毒
や感染症予防等の普及啓発を推進します。
また、「神奈川県保健福祉局健康危機管理指針」、「神奈川県医療
救護計画」等に基づく、関係機関等との連携体制の整備や健康危機管
理に対する地域住民意識を高めるためのリスクコミュニケーションに
取り組む体制の構築など、大規模自然災害への対応を含めた健康危機
管理体制の充実を図ります。
○
平常時における監視指導や検査を通して、安全で衛生的な食
品・飲料水の確保及び医薬品等の品質・安全性の確保に努めます。
○
地域住民に対して、食品及び衛生管理の正しい知識について普
及啓発するとともに、特に青少年に対する薬物乱用防止の普及啓
発に向けて関係機関との連携を図ります。
○
感染症の発生と拡大を予防するため、関係機関等との連携を図
るほか、平常時からの地域住民とのリスクコミュニケーションの
推進に努めます。
○
大規模自然災害に対応するため、災害時に保健衛生活動を行う
体制の整備に努めます。
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