Comments
Description
Transcript
Road Transport in the 21st Century
49巻 4号 (1997.4) 生 産 研 究 183 退官記念講演 21世 紀 の 道 路 交 通 ― 情報化 ・知能化 の新時代一 Road Transport in the 21st Century -New Era for Intelligence and Informatics高 羽 禎 雄 * Sadao TAKABA l.は じ め に 本 日は標題 にあ ります よ うに,21世 紀 の道路交通 を目指 して,最 近話題 になってお ります高度 道路交通 システム,あ るい はイ ンテ リジェ ン ト交通 システム ITsに ついてお話致 します。その前 置 きとして,わ が国のこの分野 にお ける経緯 と,私 自身が行 った研究 に簡単 に触れます. 昨年 (1995年 )12月 に,最 初 の ITS世 界会議 がパ リで開催 されました。 この時 に,わ が国のこ の分野 における経緯 と動向を私が紹介 した ビデオを見 ていただ きます。 欧米先進国 と異な り,今 世紀 の半 ばまでは,道 路交通 はわが国の主要な交通輸送手段 ではあ り 『 ませんで した。1960年代 にお ける経済 と産業 の発展,そ れに伴 う急激なモ ー タリゼ ーシ ョンは, 事故 ・渋滞 ・公害等 の社会問題 を引 き起 こ し,そ の対策 として,警 察 の交通管制 セ ンターや高速 道路 の交通管制 システムの整備,文 字 0図 形情報板等 による渋滞情報,さ らには旅行時間情報 の 提供等が広 く行 われました。一方,車 載装置 を用 いて 自動車 と地上のシステ ム との間で情報交換 を行 うシステム も1970年代 の CACSの 実験 に始 ま り,1980年 代 のカーナ ビゲーシ ョン装置 の開発 を基 に,1990年 代 の VICSの 実用 に至 りました。 わが国 における道路交通 の情報化 ・知能化 の活動 の特徴 を考 えてみます と, 一 官庁 ・企業 ◆大学等 の協力 による くの研究開発が継続的に行われた こと 多 一 交通管制 セ ンターを始めとす る実用 システムの設置 と 普及が早期 に行 われた こと が挙げ られると思 い ます。 (ビデオ説明要約)』 私 自身 は,以 上のような活動 に参画す るとともに,研 究活動 として次 の事項 を行 ってきました。 -9交 差`点・12道路 リンクの規模 の交通流ハ ー ドウェアシミュレー タの 開発 ―信号制御 のシミュレーシ ョン及 びフイール ド実験 システム との比 較検証 一 機能分散 ・負荷分散 による並列処理 を取 り入れた大規模なシミュレー タの 開発 ― 高速道路や街路で観測 した交通現象 によるシミュレーションの 妥当性検証 一事故等 のイ ンシデ ン トによる交通流事象 の検出手法 ―小 ゾー ン連続形 自動車パ ケ ット通信 システムの開発 とシミュレーシ ョンによる 評価 ― 交通流画像計測 の手法 とシステムの開発及 び 多車線交通流,歩 行者等 に関す る計測 ― 固体イメージセ ンサ ・レーザ ー光切断法等 によるシステムの 開発 ― 同一周波 を用 い複数の車両 と同時 に交信す る自動車 ・地上間通信 システム *東 京大学名誉教授 49巻 4号 生 (1997.4) 産 研 究 2.次 世代 の 自動車交通 シ ス テ ム ITS イ ンテ リジ ェ ン ト交通 シ ス テ ム (Intelligent Transport Systems,ITS)は ,わ が国で は高度道 ム い ス こ は の 。 れ ,道 路交通 に通信 と情報処理 技術 を導入 し, 路交通 シ テ と名付 け られて ます 自動車 と道路 に知 的 な検 出 0判 断 ・制御 の機 能 を持 たせ る こ とに よって,自 動車 と道路 を連携 さ せ た, よ り高度 な シ ス テ ム を実現 しよ う とす る もので す 。 この よ うな考 え方 は,1960年 代 か ら各 国 の有識者 によって構想 され,い まと同様 の多 くの応用が提案 されて い ま した。 ITSの 目標 として,ア メ リカの IVHS(Intelligent Vehicle Highway Systems)計 画では,① 安 全性 の改善 。強化 ,② 生 産性 の向上,③ 交通流 の改善,④ 大気 の浄化 の 4つ が掲げられ,事 故 による年間死者数 の減少 目標 としては,45,600人 (1989)か ら35,500人 (2010)へ と22%減 が示 されてい ます。 また,わ が 国 の道路 ・交通 ・車両 イ ンテ リジェン ト化推進協議会 VERTIS(Vehた た,Road& Trafic lntenttence sOcた ty)で は,① 安全機能 (事故回避,災 害軽減),② 円滑機能 (高速性,効 率性),③ 環境機能 (走行環境,周 囲環境)の 3つ に分類 し (渋滞 は走行環境 に包含 される),事 故 による年間死者数 も1991年の10,547人か ら2021年の5,518人へ と,30年 間 に半減す ることを 目標 に掲げてい ます。 これ まで安全 は金 にならない とされて きましたが,21世 紀 には社会 の質を高 めるとい う観点 か ら,安 全 の向上 に本格的な取 り組 むこと,そ のために科学的 ・工学的な方法 で対処す ることが必 要 とされてい ます。 3.IVHSか ら ITSヘ ー ア メ リ カ の 挙 国 的 取 り組 み アメ リカで は, 1966年にゼ ネラルモ ー ターズ社 が DAIR(Dr市 ers Aid lnfOrmation and ROut‐ ing)と 名付 けた運転者情報 システムの開発 を手が け,引 き続 いて連邦運輸省 DOT(Department of Transportation)が 車載装置 を用 い る経路誘導 シ ス テ ム ERGS(ElectrOnic Route Guidance System)の 研究開発 に着手 しましたが,方 針 の変更 によ り1970年に中断され,宇 宙開発 の推進等 の影響 を受 けて十数年 の ブラ ンクを生 じました。 日本や欧州等 の進歩 を見 てこの状況 を憂 えた有 識者が,1987年 に MOBILITY2000と 名付 けた会合 によってこの分野 の振興 を提唱 し,1990年 に連 い う組織 が発足 しま した。1991年9月 には, 邦運輸省 の諮問機 関で ある IVHS AMERICAと 1997年までを第 1期 とす る総合 陸上交通効率化法 ISTEAが 成立 し,年 間約200億円の連邦予算 を 投 じて,連 邦政府 と地方 自治体,産 0官 。学 の連携 と複数 グル ープの競争 によ り研究開発 と実用 ITS AMERICA 化 の事業 を推進 す る体制 が成立 しました。1994年には,IVHS AMERICAは 略)と 改称 し,1997年 以降へ 向けた活動 を引 き続 い (ITSは Intelligent Transportation SOcietyの い て展開 して ます。 IVHS/1TSの 対象分野 としては,次 の 6つ が掲げられています。 ① ATMS(先 ② ATIS(先 ③ AVCS(先 進交通管理システム) 進旅行情報システム) 進車両制御システム) ④ CVO (業 ⑤ APTS(先 ⑥ ARTS(先 務車両運用システム) 進公共輸送システム) 進地域交通システム) 計画 の当初 か ら全米 の各地で数十に及ぶ プロジェク トが推進 されました。 2,3の 例 を挙げ ます と,フ ロ リダ州オーラ ン ド市 の TRAVTEKで は,州 の高速道路管理セ ンター,市 の交通管理 セ ン ター と連携 して情報サ ー ビスセ ンター を設け,自 動車 と無線 の リンクで結 びます。車載 デ ィス プ レイにより,地 図上の現在位置, 目的地へ の経路誘導 ,ホ テルや レス トラン等 の案内 を行 い ます。 現在地 に不案内な利用者 が ワ ンタッチで救援 を求める こともで きます。シカ ゴの ADVANCEで 49巻 4号 (1997.4) 生 産 研 究 185 は, カ メ ラによるセ ンサや, 車 両 との双方向通信 によ リカープローブと呼 ばれる車両 をセ ンサ と す る計測等 を用 い る交通管制 システムが実験 されました。 この よ うなア メ リカの I T S 計 画 の特徴 と しては, 1 ) 従 来 に無 い産 ・官 ・学連携 の体制,国 際的 にオー プ ンな組織 2 ) ナ シ ョナ ル ・シス テ ム ・ア ーキテクチ ャの 開発 3 ) 関 係者 の 間での コンセ ンサ ス形成 と地域 社会 に よる評価 4 ) 3 つ の大学 のセ ン ター ・オブ ・エ クセ レンスヘ の選定 な ど,主 要大学 の プ ロ ジェク ト参 カロ 5 ) I T S 世 界会議, I T S ア メ リカ年次大会等 の大規模 な会議 の 開催 や 国際標準 の制定 の推進 等 が挙 げ られ ます 。 シ ス テ ム ・ア ニ キテクチ ャの 開発 で は,1992年 に完結 した州 間ハ イウェイ の整備 に引続 き,全 米 で の ITSの 配備 を効 果 的 に行 う こ とを念頭 に,15の 開発 チ ー ム を 2段 階 で 2つ に絞 る競 争 に よって推進 し,成 果 を挙 げ ま した。 国際標準 につい て は,国 際標準機構 ISOの 技術委員会 TC204に お い て,交 通情報制御 シス テ ム TICS(TranspOrt lnfOrmatiOn and COntrol system)の 審議 が幅広 く行 われて い ます 。 4.ヨ ー ロ ッパの国際的産 ・官 `学 共同計画 ヨー ロ ッパ で は,1980年 代 に各 国 が 共 同 で先端 的科学技術 の推 進 を図 る計画 が進 め られ ま した が ,そ の 一 環 と して 自動車交通 の分 野 で はプ ロ メ テ ウス 計画 (PROMETHEUS,19861994)が 遂行 され ま した。 これ は, ヨ ー ロ ッパ の11の 自動車 メー カに よって 開始 され, 日本 や ア メ リカに 較 べ てやや もす る と遅 れが ちであ った 自動車 の情報化 ・ハ イテク化 を 目指 した もので,AI・ マ イ ク ロエ レク トロニ クス ・路車 間通信 ・車 々 間通信 な ど 7つ のサ ブプ ロ グラム に分類 され,多 くの プ ロ ジ ェ ク トと ヨー ロ ッパ 共通 の デ モ ンス トレー シ ョンが推進 され ま した。 さ らにその成果 はプ ロモ ー ト計画 (PROMOTE,1995-1998)に 引 き継がれて い ます 。 一方 ,こ れ と連携す る形 で ドライブ (DRIVE)計 画 が次 の よ うに遂行 され ました。 これは, ー ヨ ロ ッパ連合EUの 主導す る交通イ ンフラ整備 の研究開発 であ り, 1989-1991(第 1期 ):研 究 ・技術 開発 1992-1994(第 2期 ):12の パ イロ ット実験 を含 む55のプロジェク ト 1994-1998(第 3期 ):複 合輸送モ ー ドによる交通 の体系化 とい う内容です. 第 2期 に実施 されたプロジェク トの実例 を 2,3挙 げます と,交 通 ・旅行情報 の提供 では, リヨ ン,ア ムステル ダム等 5カ 国の 5都 市 で各種 のシステム を並行的 に実験す る LLAMD,統 合的都 市 間交通管理 では,ロ ン ドン,パ リ,ブ ラッセルを結 ぶ幹線道路 と海峡 トンネル を対象 とす る PLEIADS等 が あ ります。交通管制 セ ンターや通信 ネ ットヮーク等 の システム構成,車 載/路上装 置 による情報提供機能等 はアメ リカやわが国の もの と同様 ですが,わ が 国では既 に広 く実用 され てい る可変情報板等 も含 まれてい ます。 ヨー ロ ッパ ではさらに,官 ・民 を統合す る実用化推進組織 として ERTICO(Europhn Road TranSpOrt lmplementation COordination Organization)が 1991年11月に発足 しま した。 ヨー ロ ッ パ には国情 の異なる多 くの国々があ り,各 々の都市 にお け る 自動車交通 の形成 には長 い歴史的経 緯 があって,先 進的 な技術 開発 を進めただけでは実用化 と普及には結 びつ かないので,そ の戦略 的分析 と計画立案の導入,標 準化活動等 を進めることとした ものです。ERTICOは ,CORD等 研 186 49巻 4号 (1997.4) 生 究 開発成 果 の 評価 と統合 を行 うプ ロ ジェク トを行 う とと もに, 前 述 の I T S A M E R I C A や 産 研 VER― TISと 協 力 して,1994年 11月に第 1回 ITS世 界会議 をパ リで主催 しました.プ ロメテウス, ドラ イブ両計画が いずれ も区切 りを迎えた時期であ り,そ の成果が広 く世界 に公表 されました。 5口 わが国における経緯 前 にも述べ たように,わ が国では1970年代 か ら現在 に至 るまで,実 用化 と研究開発 の両面で継 続的 に活動が行われた こ とが特徴 であ り,主 な事項 を開始年代順 に挙げ ます と, 1971 1973 1984 1986 1987 交通安全施設等整備事業五箇年計画 (10年間で交通事故死者数半減) 自動車総合管制システム cACSの 開発 (通産省 ,1979ま で) 路車間情報システム RACSの 開発 (建設省,1989ま で) 同第四次五箇年計画 :安全 ・円滑 0快 適 の調和 (交通情報化 の施設 を重′ 点設置) ム システ AMTICSの 新 自動車交通情報通信 開発 (警察庁 ,1988ま で) 次世代道路交通 システム ARTS(建 設省 ,1995か らITSに 統合) ス ーパ ースマ ー トビークルシステム ssvs(通 産省 ,1992ま で) 1991 先進安全 自動車 AsV(運 輸省,1995ま で) 導路交通情報通信 システム vlcS(警 察庁 ・郵政省 ・建設省) 新交通管理 システム UTMs(警 察庁) 1993 第11次道路整備五箇年計画 (1997ま で) 1994 道路 ?交 通 ・車両 イ ンテリジェ ン ト化推進協議会 VERTISの 設立 (1月 ) 1995 政府 の高度情報通信社会推進本部 による基本方針 の発表 (2月 ) 第 2回 ITS世 界会議 の開催 (11月;横 浜) 1996 第 六次交通安全基本計画及 び交通安全施設等整備事業五箇年計画 (2000ま で) VICSの 実用サ ー ビス開始 (4月 ,東 京) 1989 1990 VICSは ,1980年代 にお けるRACS,AMTICS両 システムの開発成果 を踏 まえて,交 通管理者 , 道路管理者そ の他 か らの情報 を道路交通情報 セ ンター等 を経 由 して収集 し,FM多 重 放 送,光 ´ ビー コ ン,電 波 ビー コンの 3つ の通信 メデ ィアを介 して 自動車 に伝達 し,車 載ナ ビゲ ーシ ョン装 置から渋滞 ・事故 ・工事等 の道路交通情報,経 路誘導情報その他 のサービス情報 をリアルタイム に提供す るシステムです。1996年から実用サービスを開始 し, 7年 間で主要都市圏 と幹線,20年 間で全国展開を図 ります。 UTMSは ,わ が国の特徴 であ る交通管制 セ ンターの充実 を背景 に,高 度交通管制 システ ム ITCSを 中核 として,交 通情報提供 システム AMIS,動 的経路誘導 システム DRGS,公 共車両優 先 システム PTPs,交 通公害低減システム EPMSを 結合す る構想です。1995年までの第 5次 交通 安全施設等整備事業五箇年計画で ITCS,VICSの 展開で AMISの 計画 を固め,引 続 きPTPSの 試行,DRGSの 開発 を行って,こ れらの早期実用化 を図っています。 ASVは 自動車の高知能化 によ り安全性を高め,事 故の予防や事故時の被害軽減をはかったもの で,自 動車 メーカ 9社 によ り試作車 に80余例を実装 し成果を試験 しました。システムの実例 とし て居眠 り運転警報システム,車 間距離警報制御維持 システム,事 故 自動通報 システム等があ りま す。 RACSの 路車間通信 による道路 の知能化 ・情報化 を技術 。応用 の両面で発展 させた も ので,先 進道路安全 システ ム,先 進輸送効率化 システ ムに分類 され,漏 洩 同軸ケーブル (LCX) ARTSは 49巻 4号 生 (1997.4) 産 研 究 187 を用 い るデー タ伝送実験,導 入 と実現 シナ リオの検討等が行 われてい ましたが,ITSに 包含 され た後 は,自 動運転道路 システ ムAHS,ノ ンス トップ自動料金収受 シス テ ム ETCの 2つ に的 を 絞 って,実 用化へ 向けた共同研究が推進 されてい ます。 SSVSは 自動車 の高知能化 によ り,危 険予知 0回 避,運 転支援,交 通運輸制御等 の技術 を総合 的 に発展 させ るもので2010年∼2020年に実現 を想定 してい ます。具体的 な研究 の推進 よ りは,総 ー 合的な研究開発計画 の立案 を主眼 とした もので,学 民約140名のメ ンバ による調査研究が行 われ ました. 一 道路 ・交通 0車 両イ ンテ リジェ ン ト化推進協議会 VERTISは ,豊 田章 郎氏 (経団連会長)を ・ 会長 として,1994年 1月 に設立 され ました。民間企業,協 会等 の団体,大 学 研究所 の個人が参 一 加 し,ITS世 界会議 の運営 に参画 し,第 2回 ITS世 界会議 (横浜)を 主催す る 方,イ ンテ リ ジェン ト交通 システムの研究開発基本計画 を構想 しました。 VERTISグ ラ ン ドデザイ ン」 は,対 象約300システムか ら 1995年4月 に公表 された 「 1)日 本 の社会 に適 してい る。 2)イ ンテリジェ ン ト化 によって達成可能であ る. 3)30年 後 までに実用化 が予測 される。 との基 準 で23のシステ ム を選定 し,30年 後 の実現 を想定 して,ITSの 成果 によ り,① 死亡事故 の 半減,② 渋滞 の解消,③ 都市部 NOX排 出の30%減 ,④ 全国 C02排 出の13%減 が 可能で あ るこ とを推定 しました。 1995年11月の第 2回 ITS世 界会議では,約 500編の論文,約 3400名の参加者 を集 め,第 1回 パ リ ー ラ ン ド (1996),ベ ル リ ン (1997),ソ ウル 世界会議 を上 回 る規模 で 会議 を成功 に導 き,オ ロン ト (1999)と予定 される ITS世 界会議 の確立に寄与 しました。 (1998), ト 6.政 府 の方針 と活動 わが 国の政府 は,21世 紀 における高度情報通信社会実現 のために首相 を本部長 とす る推進本部 ・ を設け,1995年 2月 に基本方針 を発表 しました。 この なかで,道 路 ・交通 車両 の情報化 が公共 0運 輸省 ・郵政 の情報化 6分 野 のひ とつ として取 り上 げ られ,担 当で あ る警察庁 ・通商産業省 ・ ・ 道路 交通 車両分野 における情報化実施指針」が 省 ・建設省 の 5省 庁 によつて,同 年 8月 に 「 発表 されました。 ここでは,高 度道路交通 システム ITSの 開発,実 用化等 に積極的 に取 り組 み,21世 紀初頭 に概 成す るとい う方針 を示 し,施 策 の内容 として次 の11項目が挙げ られました. 7)法 制度等へ の配慮 1)全 体構想 の策定 8)標 準化 2)推 進体制 の整備 9)シ ステムの接続性 3)研 究 開発 4)フ ィー ル ドテ ス ト 5)イ ンフラの整備 10)国 際協力 11)高 度道路交通 システム世界会議 6)実 用化 に向け た展 開 また,こ こで取 り上げる開発分野 として,つ ぎの 9分 野が示 されました。 ① ナ ビゲーシヨンシステムの高度化 ⑥ 公 共交通の支援 ⑦ 商 用車の効率化 ② 自 動料金収受 システム 歩 行者等の支援 ③ ③ 安 全運転の支援 緊 急車両の運行支援 ⑨ ④ 交 通管理の最適化 ⑤ 道 路管理の効率化 わが国では,こ れまで多 くの関係省庁が各々の担当範囲で活動 してきましたが,こ れら省庁が 49巻 4号 (1997.4) 生 産 研 協力 して,政 府 と しての統 一的な方針 を定めるとともに,関 連す る多 くの活動 を整合 を取 って進 めることとな り,今 後 にその成果が期待 されます。 7.今 後 の重点施策 と取 り組み方 高度道路交通 システム ITSに お ける今後 の重点施策 の第 1は ,各 分野の中で ももっ とも取 り組 みが進捗 してい る旅行者情報 システムの実現 と普及 です。 なかで も,1996年 4月 にサ ー ビス開始 が予定 される VICSは ,世 界 で初 めての本格的な先進旅行者情報 システムの実現例 です。 その特 徴 は,情 報源 に依存 しない共有 のデ ー タベ ース と,利 用者 に委 ね られたメディアの選択 にあ りま す。わが 国では既 に交通情報放送,路 側 ラジオ,可 変情報板等 のシステムがかな り高度 の情報提 供サ ー ビス を実現 してお り,こ れ らのサ ー ビス との協調 と役割分担 を配慮す ることが,VICSの 今 後 の展開 と普及 に当たっての課題 です。また,実 用化 の進展がみ られる動的経路誘導 システム を, 普及 しつつ あるナ ビゲ ーシ ョンシステムヘ どのように導入 して行 くかを考 えねばな りません。 重点施 策 の第 2は ,交 通管理 システムの高度化 です.光 通信 や画像処理 による車両固有 の識別 番号 (ID)の 検知 や異常事象 の検出,旅 行時間の推定予測等 の技術開発 には充分 の実績 があ りま す。その実績 を活用 して,平 常時 のサ ー ビス向上 をはかったシステムの普及 に努 めるばか りで な く,異 常対策や災害対策等 に関わる交通管理技術 の向上や安全管理 の高度化 を図るこ とが望 まし い と考 えます。 重点施 策 の第 3は ,自 動車 の知能化 と安全 の向上です。 自動車単体 は高度 に完成 された走行機 械 で あ るとはい え,非 専門家 である一般 の ドライバ が少 ない負担 で安心 して運転 で き,そ の操作 ミス をカバ ーす る安全確実な自動車交通 システム を実現するには,未 だ長 い期間 を要 します。シ ステムの基盤形成 には,路 車間及 び車 々間 にお ける高速大容量 のデー タ通信技術 の確立が必要 で す。 さらに,長 期 的な 目標 に対 してマ イルス トー ンを設定 し,短 期的 にも利用者 に評価 される成 果 を得 た り,長 期 的 目標 へ の 中間成果 を評価す ることが望 まれ ます。具体的 には,こ れ までの SSVS:ASV,ARTS等 の複数 プロジェク トの調和 と融合 を図 り,わ が国 として一貫 した方針 を 取 る必要があ ります。 8:課 題 と解 決 策 これまでの ITSの 実現 を目指 した長い道程 の中で,実 現 のために解決 を要す る課題が次第 にあ きらかになって きました。 その第 1は 社会 の受容性 です.長 い年月 をか けて社会 に普及 ・定着 した 自動車交通 に高度 に情 報化 ・知能化 された手段 を導入す るこ とは,大 きなメ リットとともに,利 用者 に機器操作負担 , 費用負担 ,行 動習慣 の変容 を強 い るだ けで な く,社 会 にとって も活動形態 の変化 ,職 域 の改変; 雇用 の変化等 の問題 をもたらす ことにな ります。 その解決策 としては,継 続的な公 開実験,部 分的な実施 と成果 の調査,成 功 した場合 の拡大普 及へ の努力,優 れた成果 の キャンペ ァ ン,不 具合へ の迅速 な対応 と改善,利 用者 の要求 の高度化 へ のフ ォローア ップ,長 期 的な計画 の立案 と公表等 の多 くの対策が必要 とな ります。わが国の交 通管制 セ ンター,ハ イウェイラジォ,旅 行時間情報提供 システ ム,エ アバ ッグシステム等 の普及 は,こ のような努力 に支えられてお り,こ れらの成功例 に学ぶこ とがで きます。 課題 の第 2は 経済的評価 です。新規設備 の投資額 を数力月 の運用 による時間便益 のみで 回収 が 見込 まれる交通信号制御 システムの例 に顕著な ように,ITSの 経済的効果 はあ きらかです:さ ら に,事 故や災害 の経済損失 は実際 には多大 であ り,今 後 はい っそ う大 きく見積 られると思 い ます。 問題 は投資金額 の規模 の大 きさ,費 用負担 の配分等 にあ ります。利用者負担 を徹底 し,小 規模 の 投資での採算性 を狙 った英国の交通情報 システム Trafic Master,インフラと車載機及 び運用者 と 利用者 の費用分担 に工夫 を凝 らして大規模 システムの実現 を図 ったわが 国の道路交通情報通信 シ ステム vlcsが ,各 々異なる方向で問題 の解決 を図った例 として注 目に値 します。 究 49巻 4号 生 (1997.4) 産 研 究 189 ・ 課 題 の 第 3 は 制 度 組 織 上 の 問 題 で す 。 公 共 イ ン フ ラ と個 人 の 自動 車 に装 備 した情 報 通 信 機 器 が 緊密 に協調す るシステ ム を構成す るのは,基 本的 に容易 ではあ りません。道路交通情報提供 シ ス テ ムは実現 し易 い例 で あ り,道 路 と自動車 の イメージを変 えず に 自動運転 システ ムを実現する のが,最 も難 しい例 です。 また,い くつ かの異 なる機関,異 なる業務や管轄 に亘 ってシステム を 構築す る際 の問題 があ ります。ITSの 究極 の 目標 を評価基準 として普遍性 の高 い システム を共通 ・ ー に構築す ることが その解決策で あ り,ア メ リカを中心 として進められてい るシステ ム ア キテ クチ ャの開発 も,そ のための努力であ るといえます。 9口 お わ り に ・ 高度道路交通システム ITSの 研究開発 と実用普及 が進展 し,安 全 快適 で環境保全 に優 れた交 通社会 とい う夢 が21世紀 において実現す るには,ITSの 活動 をめ ぐる環境 の整備 をすすめ る必要 があ ります. その第 1は ,研 究開発 と計画 の策定 のための体制 の整備 です.特 に大学人や研究者 の参画 を促 す ために,研 究 のテーマ ・費用 。環境 について関係者 の認識 を高 め,支 援体制 を形成す る必要 が あ ります。第 2に ,社 会 の要望 を汲み上げ,受 容性 を獲得す るための PRと ,社 会 の期待 に応 え る人材 の育成 を促進 しなければな りませ ん.こ れらに関 しては,大 学人 の関与 が重要です. さらに第 3と して,国 際協調 の推進,特 にアジアの課題へ の取 り組 みが重要 です.ア ジアでは 年間10万人 をはるか に越 える交通事故 の死者 があ り,経 済 と社会 の発展 に伴 い事故 や渋滞 の問題 はさらに深刻 にな ります。 さらに,エ ネルギーや環境 の問題 の比重 も大 きいのです。 いて 今後,私 として も努力 を重ねますが,斯 界 の専門家 として,社 会 にお いて,ま た大学 にお 1月14日 受理) 3 月21日講演,1997年 活躍 され る皆様 のご認識 とご尽力 に期待 してやみません。 (1996年