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小海町の定住促進について
小海町の定住促進について 沼尾ゼミナール3年 飯野友貴 倉持学朗 滝直大 1 林智也 山崎司 目次 序章 はじめに………………………………………………………………………………… 3 第一章 小海町の基本情報……………………………………………………………………… 4 第二章 小海町の抱える地域課題……………………………………………………………… 41 1節 地域の衰退について…………………………………………………………………… 41 2節 小海町が抱える地域課題の考察とヒアリング結果………………………………… 45 3節 地域課題解決のためには……………………………………………………………… 49 第三章 地域課題の解決方法について………………………………………………………… 52 1節 IU ターン者へのヒアリング結果……………………………………………………… 52 2節 小海町内アンケート結果……………………………………………………………… 59 3節 都市部在住者へのヒアリング 結果…………………………………………………… 70 第四章 政策提言………………………………………………………………………………… 80 1節 町内ヒアリング・都会アンケートからの 小海町の課題の抽出…………………… 80 2節 小海町への提言………………………………………………………………………… 83 第五章 終わりに………………………………………………………………………………… 90 参考文献一覧 ……………………………………………………………………………………… 91 2 序章 はじめに 私たちは今年度、研究テーマとして「小海町の定住促進」を取り上げる。本論文における「定住促 進」とは、対象の自治体内に IU ターン者が入ってくるような制度を整備し人口の社会増を目指すと ともに、自治体内の子育て支援の充実等で、人口の自然増を目指し、さらには対象の自治体に住 んでいる住民がそこに住み続けてくれるような町をつくることである。また、本論文において「IUJ タ ーン」とは、域外出身者が町内に流入し生活をしていることを指して「I ターン」、域外での就労の有 無にかかわらず、域内出身者が就学・就業などの理由で一度域外に出て生活し、再び地元に戻っ てきて生活していることを指して「U ターン」、U ターン同様に一度町外に出て生活し、地元には戻 らず、近隣市町村で生活していることを指して「J ターン」としている。 次に、私たちの問題意識を明らかにする。農山村において、過疎高齢化にともなう担い手不足 から様々な問題が起こっている。具体的には、集落のコミュニティ機能が低下し、水田、畑、山林な どの保全や協働作業による集落施設などの維持管理など相互扶助機能の維持が困難となってい ること、災害時の安全確保、降雪期の雪かきなど集落維持のための担い手の確保が困難であると いったことなどである。私たちは、以上のような問題が原因で住民の方々の不自由が増えてしまっ ている現状に対して問題意識を持った。そして、それらの地域課題が起こっている原因は人口の 減少、とりわけ担い手の不足であると考えた。そこで、定住促進を進めていくことで小海町が抱える 先述のような地域課題の解決を図りたいと考えた。 論文の構成としては、第一章では、小海町がどのような地域であるのかを明らかにするために基 本情報を述べる。 第二章では小海町の抱える地域課題とは何なのかについて言及し、その課題を解決するため の方法について論じていく。 第三章では第二章において小海町の地域課題の解決策として挙がった「定住促進」を進めてい くためにはどうすればよいのかを、実際に小海町内に IU ターンしてきた方たちへのヒアリング調査、 その他小海町内でのアンケート調査、都市部でのヒアリング調査から考察していく。 第四章では、第三章の分析結果から小海町の定住促進 に関する課題を抽出し解決策を示すこ とで小海町への提言を述べる。 3 第一章 小海町の基本情報 長野県 佐久地方 出典:長野県庁ホームページ 本章では、小海町の課題を抽出するために基本情報を述べる。 長野県の東部、佐久地域のほぼ中央に位置し、東は北相木村、西は八ヶ岳連峰を境に茅野市、 南は南牧村・南相木村、北は佐久穂町(旧八千穂村)にそれぞれ接している。町の中央を南北に 流れる千曲川に沿って帯状の平坦地が形成され、ここを国道 141 号、JR 小海線が走り、町の主要 な交通路となっている。千曲川の左岸(西部地域)は八ヶ岳連峰の裾野が広大な傾斜地として広が り、右岸(東部地域)は秩父山塊の裾野の段丘帯となっている。小海町の一番低い地点が海抜 790m、最も高い八ケ岳連峰の天狗岳の標高が 2646m と標高差が大きい地形で、夏は涼しい気候 である。 4 ・小海町の面積、人口 小海町の面積は 114.19 km?、人口が 5201 人(2013 年現在)であり、人口密度は 45.5 人/km?で ある。図 1−1 では、小海町の人口の推移を示している。 図 1−1 2010 年における、年少人口(15 歳未満)は全体の約 11%、生産年齢人口(15∼64 歳)は全体の 約 54%、老年人口(65 歳以上)は全体の約 35%であり、これは全国平均より 10%高い数値である。 よって、全国と比べて高齢化が進む自治体であると言える(図 1−1)。小海町の人口は年々減少し 続けているが、老年人口はほとんどの年で増加している。また、2010 年における 65 歳以上の高齢 夫婦世帯数が 312 世帯、高齢単身世帯数が 209 世帯と、地域での見守りが必要である高齢者が 総世帯数約 2,000 のうち、およそ 4 分の 1 存在していることがわかる。 5 図 1−2 出典:小海町役場 転入・転出者の推移のグラフ(図 1−2)を分析すると、どの年でも転出者数が転入者数を上回っ ていることがわかる。よって、小海町では人口の社会減が起こっている。 6 図 1−3 出典:小海町役場 出生者・死亡者数の推移のグラフ(図 1−3)では、死亡者が出生者を毎年約 2 倍以上上回って いる。また、出生者数は近年減少してきている。よって、小海町では人口の自然減が起きており、 今後も人口減少が続いていくことが予想できる。 7 図 1−4 図 1−5 出典:小海町役場 8 2010 年の小海町の年代別人口(図 1−4)と 50 年後の人口推計から見た日本の年代別人口(図 1−5)を比較すると、ほぼ同様の形を示している。これは人口のうちおよそ 5 人に 2 人が 65 歳以上 の高齢者、およそ 10 人に 1 人が 15 歳未満の子ども、1 年間に生まれる子どもの数が 20∼30 人と いう状態であり、「50 年後の日本の人口構成に近い町」と呼ばれている。(引用:産経新聞 1 月 30 日 街は高齢者仕様に 「50年後の日本」長野県小海町を歩く) ・集落別人口 図 1−6 出典:平成 23 年度 沼尾ゼミナール研究論文 9 図 1−7 出典:平成 23 年度 沼尾ゼミナール研究論文 集落別(図 1−6・7)で人口の分布をみてみると、最も人口の多い東馬流地区で 298 人、最も人 口が少ない五箇地区で 29 人と大きく差があり、小海町内でも居住地に偏りがあることがわかる。こ の東馬流地区は国道 141 号線沿いにある地区で、町内でも平坦な場所にある。一方五箇地区は 山間地に位置あり、自動車がなければ町の中心部に出ることも難しい地域である。 小海町には伝統芸能が存在し、二百年以上の歴史を持つ親沢人形三番叟や道祖神の鹿舞、ふ るさと祭り・ぎおん祭、松原諏方神社・浦安の舞などたくさんのイベントや伝統芸能が行われている が、人口の減少、とりわけ年少人口と生産年齢人口が減少していることにより、後継者不足が懸念 されている。 10 図 1−8 消防団は、20∼40 歳の町民で構成されているが、消防団の団員数(図 1-8)を見ると年々減少傾 向にあることがわかり、地域防災力の低下という問題につながっていることが考えられる。また、消 防団員数の減少は生産年齢人口の減少に起因すると考えられる。 11 ・平均気温 図 1−9 出典:気象庁 続いて、小海町を含む佐久地方の平均気温(図 1−9)を見てみる。1 月の-1.8 度が最も低く、8 月の 23.4 度が最も高い。1 年通しての平均気温が 10.6 度と、冬は寒さが厳しく、夏は過ごしやすい 環境である。なお、小海町の平均気温は標高が高いため上記で示されている佐久地方の平均気 温よりも、若干低い。 ・小海町の特産品 小海町の特産品として挙げられるのは、高原野菜 である。小海町は標高が高いため、高原野菜 の栽培は盛んで、特に白菜やキャベツ、レタスは柔らかくて甘みが強い。また、くらかけまめ豆腐は 小海町産鞍掛豆を使って作られた豆腐である。鞍掛豆は大豆の仲間で、黄緑色に黒い模様が入 っている。くらかけまめ豆腐は少し緑がかった色で、食べるとまろやかな豆の風味が広がる。そのま ま何も付けずに食べても、塩を付けて食べてもおいしい。鞍掛豆は、遊休農地対策として栽培を奨 励したされており、町内の「小山豆腐店」と協力して、豆腐「くらかけまめ豆富」を作った。また、他地 域ではあまり見かけることがない花豆や食用ほおずきも、小海町の特産品となっているほか、小海 そばはコシが強く、そば本来の香りを存分に楽しむことが出来る。 12 写真:くらかけまめ豆腐 写真:鞍掛豆 13 写真:小海町産の白菜、キャベツ、レタスなど 写真:食用ほおずき 14 真:花豆 写真:小海そば ・小海町の観光 小海町には様々な観光資源がある。春には山菜採りツアー、夏は花火大会・灯篭流しなどのイ ベントや、高原の涼しい気温の中でのウォーキングやキャンプ、トレッキングなどが最適である。秋 15 の紅葉は、10 月に標高 2000m の白駒の池から始まり、松原湖へと続く。また、キノコ狩りツアーも始 まる。冬にはマイナス 15 度の中でのワカサギ釣りやスキー、スケート、雪山登山が楽しめ、国内唯 一の冬のトライアスロンである「氷上トライアスロン小海大会」も行われている。こういった四季折々 の楽しみ方ができる。(引用:静岡商工会議所 つなごう中部横断自動車道 2010 年5月号掲載) 小海町の観光スポットの一つに、松原湖高原がある。松原湖は八ヶ岳の麓に位置し、湖の周辺 には、小海リエックス(スキー場、ゴルフ場など)や、日帰り温泉施設の八峰(やっほう)の湯、松原 湖スケートセンター、オートキャンプ場などの施設が点在しており、小海町最大の観光地である。ま た、ホテル、民宿ともに充実している。 写真:松原湖と八ヶ岳 16 写真:小海リエックス 写真:八峰の湯 浴場 17 写真:小海町の観光スポットの一つである「高見石」から見た白駒の池 図 1-10 出典:長野県ホームページ 図 1−11 18 出典:長野県ホームページ 小海町の観光地である松原湖(図 1−10)と八ヶ岳(図 1−11)の観光客数を見ると、松原湖は県内 よりも県外から訪れる方が圧倒的に多く、宿泊客より日帰り客のほうが圧倒的に多い。八ヶ岳を訪 れる観光客数を見ると、県内よりも県外から訪れる方が二倍ほど多く、日帰り客と宿泊客の数は同 程度である。このことから観光客が小海町内の宿泊施設をあまり利用していないということがわか る。 ・JR 小海線について JR 小海線は、中央本線小淵沢駅(山梨県)から、しなの鉄道小諸駅(長野県)を結ぶ日本一標 高の高い場所を走る高原列車である。 鉄道駅の標高ランキング 1 位から 9 位までを小海線が占め ており、野辺山駅の標高の 1,345mは日本一を誇る。車窓からは富士山、八ヶ岳、奥秩父、南アル プス、浅間山など日本有数の山々を見ることができ、「山岳展望列車」としても有名である。 その JR 小海線には、「環境負荷低減」のコンセプトのもと、開発されたハイブリッド車両が世界で 初めて導入されている。 小海駅に発着する列車は、小淵沢方面へ向かうものが 17 本、小諸方面へ向かうものが 16 本運 行しており、1∼2 時間に 1 本列車が走っている。 19 写真:小海線ハイブリッド車両 図 1−12 20 ・小海町の町営路線バスについて 小海町には、松原湖線、小海原・箕輪線、溝の原線、親沢線、本間線の 5 つの路線を走 る町営バスがある。松原湖線は小海駅から八峰の湯方面へ向かうバスが 1 日に 10 本、八峰 の湯方面から小海駅に向かうバスは 1 日に 11 本である。小海原・箕輪線は川平から小海駅 へ向かうバスは小学校スクール含め 1 日に 6 本、小海駅から川平へ向かうバスは 4 本であ る。溝の原線は、溝の原から小海駅へ向かうバスは 4 本、小海駅から溝の原へ向かうバス は 3 本である。親沢線は、川平と小海駅を行き来するバスが小学校スクール含め 1 日 7 本 である。本間線は、馬越入口から小海駅へ向かうバスが 1 日 5 本、小海駅から馬越入口へ 向かうバスが 4 本である。善光寺から長野駅へ向かうバスが 1 日に 85 本であることと比較 すると、いかに小海町内のバスの本数が少ないのか、ということがわかる (図 1−12)。小 海町内では自家用車を持たない、または車を運転できない人にとっての町内の移動が困難 であることが想定される。 ・小海町の産業 21 図 1−13 (※見やすさを重視し、第三次産業について主要なものは個別的に表示し、数の少ないものは 「その他第三次産業」として、一つにまとめた。また、小海町には建設業において、6 つの事業所が 存在している。) 小海町の 2010 年における産業別事業所数(図 1-13)を見ると、第一次産業が全体の 2%、第二 次産業が 26%、第三次産業が 72%と、第三次産業が全体のおよそ 4 分の 3 を占めている。 最も 多い小売業が 22%、続いて建設業の 16%、宿泊業・飲食サービス業の 15%となっている。 図 1−14 22 図1-14 は 2010 年における小海町の産業別従業者数を示したものである。最も従業者が多いの が建設業で 18%、続いて小売業の 17%、宿泊業・飲食サービス業と医療・福祉がそれぞれ 11%と なっている。事業所数(図 1−12)と比較して、若干の違いはあるものの、事業所数と従業者数はほ ぼ同様の割合を示している。例外として、事業所数の割合が主要な第三次産業のなかでは最も低 い医療・福祉が、従業者数で見ると、比較的割合が高い。小海町では、医療・福祉事業所が他産 業と比較して重要な雇用機会を提供していると分析できる。 なお、農業・林業が 3%程度で示されているが、これは専業としている者の割合であり、兼業で従 事している方は多数存在している。 ・小海町の農業 23 図 1-15 小海町は標高が高く、涼しい気候を利用して高原野菜の生産が行われている。私たちは農家民 泊等を経験させていただく中で、小海町で農業が盛んであるという印象を受けた。実際に小海町 の農業の状況を知るため、農業に関するデータを示す。 小海町の農家数の推移(図 1−15)をみると、自給的農家は増加しているのに対し、販売農家は 専業、兼業ともに減少している。このことから、販売農家が減少している一方で、自給的農家が増 加していることがわかる。 図 1−16 24 (野菜販売額はその年の天候などにより、販売単価や出荷数が変化している。) 図 1−17 野菜販売額(図 1−16)、生産者(図 1−17)ともに比較すると、20 年間で大きく減少しており、特 に 2000 年以降は生産者の減少と比例して販売額も減少していることがわかる。 図 1−18 25 年代別に農業従事者数(図 1−18)を見ると、20∼40 代に比べて 50 代以上の方が多く農業に携 わっており、将来農業を担っていく 40 歳代以下の従事者は少ない。よって、後継者不足から耕作 放棄地の増加が懸念される。 図 1-19 26 自給的農家の後継者の有無 いる 7戸 いない 22戸 図 1-20 販売農家の後継者の有無 いる 4戸 いない 12戸 ここで述べられている販売農家とは、商品生産を主たる目的とし、経営耕地面積 30a 以上、また は農産物販売額 50 万円以上の農家を指し、自給的農家とは飯米自給等を主たる目的とする、30a 未満,50 万円未満の農家を指す。(データ出典:世界大百科事典 第2版) 自給的農家、販売農家の後継者の有無(図 1-19,20)を見てみると、どちらも全体の 4 分の 3 が 後継者はいないと回答しており、このことからも将来農業を担う人材が少ないことがわかる。 また、図 1−19,20 は平成 23 年度の沼尾ゼミナール生がヒアリングで得た回答である。図 1−15 と比較すると、後継者のいない可能性のある農家はさらに存在すると考えられる。 図 1−21 27 耕作放棄地の面積割合(ha) 販売農家 自給的農家 土地持ち非農家 56 63 98 小海町内の耕作放棄地の面積(図 1−21)を見ると、総面積のおよそ半分が土地を持っているが 農家ではない世帯の所有であり、販売農家、自給的農家はおよそ 4 分の 1 ずつである。 図 1−22 耕作放棄地のある農家世帯数(戸) 販売農家 自給的農家 土地持ち非農家 155 167 204 農家世帯数(図 1−22)を見ても、図 1−21 と同様の割合となっており、耕作放棄地を持つ世帯が 多いことがわかる。 ・小海町の林業 図 1−23 28 小海町 1∼3ha未満 326 保有山林規模別保有山林面積(ha) 3∼5 5∼10 10 ∼20 20 ∼30 30 ∼50 50 ∼100 100 ∼500 223 194 214 141 112 167 234 500 ∼1,000 0 図 1−23 を見ると、1∼3ha 未満の山林面積が全体の 20%、100∼500ha の山林面積が 15%、3 ∼5ha の山林面積が 14%を占めていることがわかる。 図 1−24 29 1,000ha以上 0 小海町 1∼3ha未満 199 保有山林面積規模別林家数(戸) 3∼5 5∼10 10 ∼20 20 ∼30 30 ∼50 50 ∼100 100 ∼500 61 32 16 6 3 3 1 500 ∼1,000 0 図 1−24 を見ると、1∼3ha 未満の山林の保有者が全体の 62%を占めており、次いで 3∼5ha の 山林保有者が 19%、5∼10ha の山林保有者が 10%を占める。 ・小海町の商業 30 1,000ha以上 0 図 1−25 図 1−25 を見ると、商店数が 1991 年から 2007 年にかけて減少し続けており、従業員数は 2002 年 まで増減を繰り返していたが、それ以降減少し続けている。 小海町内の商店数が減少したことにより、町民からすると町外まで買い物に行かなくてはならな くなるといった課題、また雇用面からすると商店が減少することで働き口がなくなってしまう、といっ た課題につながると考える。 図 1-26 31 ※回答者 180 名とは、小海町に住む方を対象としており、ここでいう商店街とは、土村・馬流商店 街を指している。 小海町民が実際に商店街で買うものについて(図 1-26)、食料品という回答を 77 人得られた。 次いで多いのは 70 人がほとんど利用しないと回答しており、小海町民があまり商店街を利用して いないことがわかる。 図 1-27 図 1-28 32 図 1−29 回答者:180 名 佐久市などにあるイオンやヤマダ電機などの大型店をどの頻度で利用するか(図 1-27)という質 問に、週 1 回で利用するという回答が最も多く聞かれた。 大型店でよく買うものとして(図 1-28)、多いほうから、衣類、日用品・家具類、食料品、家電と、 図 1-20 と比べて小海町の商店街では買わないものを大型店で買っているということがわかる。 また、大型店で買い物をする理由(図 1−29)として、最も多い理由が商品数の多さだった。続い て、値段が安いから、営業時間が長いからといった声が聞かれた。また、佐久市の大型店までにか かる時間が、小海町からは車で約 40 分、佐久穂町からは約 30 分と、近さの面においても居住地を 決める要因の一つとなっているのではないかと考える。 図 1−30 33 回答者:180 名 図 1−31 回答者:180 名 図 1−32 34 回答者:180 名 小海町や近隣の町の国道沿いにあるツルヤやマツヤなど中型店の利用頻度(図 1−30)は、週 1 回、週 2,3 回の順に利用していることがわかった。小海町民は、中型店を大型店よりも多く利用し ていることがわかる。 中型店で買うものについて(図 1−31)、食料品、日用品・家具類の順に小海町民がよく買ってい ることがわかる。 また、小海町民が中型店に感じる魅力(図 1−32)として、商品数の多さという意見が最も多く挙 げられており、これは大型店に感じる魅力でも最も多い意見である。続いて多い意見が、家から近 い、値段が安いというものであり、中型店を利用する人は大型店と比べて家からの近さを魅力ととら えている人が多い。 図 1-33 35 小海町民が現在商店街にほしい店として(図 1-33)、生鮮食料品店が最も多く挙げられている。 続いて本屋と、この2つが回答のほとんどを占めており、いかにこの二つを小海町民が必要として いるかがわかる。 ・小海町の病院数 2003 年に、小海赤十字病院(内科、外科、小児科、整形外科、産婦人科の計5診療科があった) が医師不足と経営悪化で閉院し、その後同年 4 月に新たに佐久総合病院小海分院が開院した。 この小海分院は、ヘリポートを兼ね備えており、ドクターヘリを利用した救急医療にも対応できるよう になっている。診療科は内科、小児科、外科、整形外科のほかに、リハビリテーション科があるが、 産婦人科は設置されていないので、町民が出産する際には自動車で 20∼40 分ほどかかる佐久市 内の病院まで行かねばならず、妊娠中の女性にとってみれば不安であり、町内に居住しづらいとさ れる一つの要因となっている。 36 写真:佐久総合病院小海分院 ・小海町の義務教育等 図 1-34 37 図 1−35 ※中学校在校者数には南北相木村出身者含む 図 1−36 38 図 1-37 出典:文部科学省 学校基本調査 小海町の小学校は、2009 年まで旧小海小学校と旧北牧小学校の 2 校があったが、2012 年度か ら 2 校が統合されたことにより、新小海小学校の 1 校のみとなっている。小学校の在学者数(図 1-34)の推移を見てみると、1984 年には 569 名の児童が在学していたが、2012 年には半分以下の 231 名の児童が在学している。 中学校は以前から小海中学校の 1 校のみであり、中学校の在校者数の推移(図 1−35)をみると、 1980 年以降から減少を続けている。(数値は南北相木村を含む。) 小海町に住む 0∼6 歳児人口(図 1-36)を見てみると、1991 年時点では 427 人だったものが、 2013 年には半分以下の 175 人にまで減少している。 保育所数の推移(図 1-37)を見ると、1983 年の時点ではたかね保育所、本村保育所、松原保育 所の 3 ヶ所があったが、1993 年に本村保育所が移転を機に名称を小海保育所と変え、2001 年に 当時のたかね保育所が小海保育所と統合されたことで 2 ヶ所となった。翌年の 2002 年には当時の 松原保育所が小海保育所と統合されたことにより、現在は小海保育所の 1 ヶ所のみとなっている。 小海町内の子供の数は減少し、それに合わせて保育施設も減少したと考えられる。 ・小海町の土地 39 図 1−38 ここでは小海町と、比較的小海町民が移住先に選ぶ傾向がある佐久市・佐久穂町の、住宅地に おける土地の標準価格を示す(図 1-38)。(ただし、ここで述べられている標準平均価格はある一 地点の価格であり、場所によっては価格が異なる。) この3つの自治体を比べると、小海町と佐久市ではほとんど土地価格に差がない。小海町と佐久 穂町を比べると、土地価格が 7,000 円佐久穂町のほうが安いことがわかる。つまり土地の購入という 面からは小海町に土地を買うメリットはほとんどない。生活をする上での利便性を考えると、小海町 よりも佐久市に移住しようと考える小海町民が多いことが予想される。 ・小海町民の自動車保有台数 40 図 1-39 ここでは、小海町民が保有する自動車台数の推移を示している(図 1-38)。1998 年までは増加し ていたものの、それ以降は減少し、ほぼ横ばいの状態となっている。 2010 年における小海町の世帯数は 2000 世帯(データ出典:小海町ホームページ)で、自動車を 保有する割合は約 95%と、ほぼ一家に 1 台は保有している計算となる。この割合の高さから、小海 町で生活するにおいて、自動車は不可欠であると考えられる。 以上のような基本情報を踏まえて、次章以降も問題提起につなげていく。 第二章 小海町の抱える地域課題 41 前章の考察から、小海町では、人口減少や産業の衰退が起こっていることが予測された。 そこで本章では、小海町の現状と課題について考えるに当たり、地域の衰退とは何か、と いうことを 検討したい。また、小海町の課題について考察を行い、小海町の衰退について 検討するとともに、町の課題を解決するためにどのような方法があるかを論じる。 1節 地域の衰退について 私達は昨年度何度か小海町を訪問してみた中で、小海町に活気がないと感じた。小海駅 前から役場に歩いていくときに、人とすれ違うことはほとんどなく 、また道沿いにはお店 もがなくなっているように 見えた。こうしたことから 、小海町は衰退しているように 感じ られた。では実際に地域の衰退とはどういうことなのか 。まず、先行研究を手掛かりに、 一般的な地域の衰退について考察していくことにする。 始めに、文献調査の結果をもとに整理した地域衰退によって生じている地域の状況につ いてまとめる。 Ⅰ.地域の結びつきの低下 Ⅱ.空き家の増加 Ⅲ.商業機能の低下 Ⅳ.行政サービスの低下 Ⅴ.雇用の減少 こうした事象の背景には様々な要因があるが、その一つに、少子高齢化と人口減少があ る。そのなかでも、地域づくりの担い手である生産年齢人口の減少は、地域の活力を低下 させる大きな要因となっている。 例えば篠田暢之(2012)では、地方では少子高齢化社会急激 に進行をしており、大 都市圏への一極集中がさらに進めば、地域の衰退が発生してしまうと指摘する。また、こ うした人口減少と過疎化への対応として、各種の活性化策を行うことで、人口減に歯止め をかけることを 指摘する研究もみられる。 例えば糸数 望・吉澤 早織(2005)では、埼玉県鳩山町の事例をとりあげ、少子高 齢化と人口減少によって生じた過疎化対策として,地域の特色を見つけ,活性化に繋げて いくという意味で、各種の地域振興を行っていることを述べている。地域振興を行う事で, 地域を活性化し人を呼び,良い循環が生まれる。そして経済が潤い,また新たな活性化に 向けての行動が起こす事が可能になる。こうした発想のもと、地域間の交流がなく,互い に隔たりを感じている町内で、互いの隔たりをなくし ,町が一体となって地域活性化に協 力する必要がある、と述べている。 一方、垂水亜紀・藤原三夫・泉英二(2000)では、過疎化が進行する徳島県山城町 42 の事例を取り上げ、その再生に向けた取組みについて論じている。林野率85%の過疎山村 で、多くの人は山腹集落に居住し、産業にめぼしいものはな かった。常住就業者約2800名 のうち約800名が他市町村で就業だった。しかしながら、地域で雇用創出を図った結果、域 内に転入する人々が少しずつ増えたことが指摘されている。 「全国建設研究センター では、高知県の事例を紹介しているが、高齢化の進展度合いは 過疎地域になるほど高くなっていることを指摘している。ところが、こうした過疎地域の なかにも、人口が増加している市町村があり、その要因をみると、企業立地、企業誘致に よる就業の場の拡大を図ったことが挙げられている。 また、田中勝(1995 )では、愛知県の三河山間部では過疎化や高齢化が進行してい るが、これらの地域では、独自に人口定住対策として「定住促進住宅建設」 「宅地分譲」 「報 奨金制度」の三つを実施していることが紹介されている。 香坂玲(2012)では、石川県能登町について、若者が少ない自治体であったため、 「若 者が戻ってくる村」を実現させようとして、農家民宿を充実させ、観光業を盛り立ててい くことに取り組んだことが紹介されている。 このように、人口減少、とりわけ生産年齢人口減少 に対して、日本全国で様々な取組が 行われていることが 分かる。生産年齢人口減少 は、地域の将来を担う子供の減少にもつな がる。また、人口減少と高齢化が進めば、地域は持続的な発展をすることができなくなり 、 それに伴って、様々な課題を引き起こすのである。では、実際にどのような 課題が生じて いるのだろうか 。ここでは 6 点について紹介する Ⅰ.地域の結びつきの低下 1 点目は、地域の結びつきの低下 である。 生産年齢人口が減少してしまうことで 、道普請や川普請、地域消防団などの地域の活動 における担い手不足が発生してしまい、活動自体の維持困難、一人あたりの負担の増加な どが起こる可能性がある。こうした地域の活動が減少すれば、やがて、地域コミュニティ の結びつき低下や喪失が起こってしまう。また、地域のアイデンティティの 象徴であった 地域の文化・観光資源などは地域コミュニティが維持し支えてきたが、結びつきの低下に よって、地域の特色が失われて、地域の没個性化につながりかねない 。 Ⅱ.空き家の増加 2 点目は、空き家の増加である。 人口減少は空き家の増加をもたらしている。空き家に は持ち主による維持管理が行われているものと、そうではなく放置されているものがある 。 過疎集落の場合、地区人口そのものが減少していると、空き家に対して住民の目がいきわ たらなくなってしまい 、不法侵入や放火が起こることも考えられる。また荒れた空き家の 存在は、地域の景観悪化を引き起こす恐れもある。荒れた景観は地域のイメージ悪化にも 43 つながりかねない 。 空き家の増加について、前西千寿香・平田隆行(2008)では、地域内の人口減少に より、地域の空き家となった伝統的な農家住宅が増加してしまっていることを述べ、和歌 山県農林水産部新 ふるさと推進課が IJU ターン者の帰住政策として「わかやま田舎暮らし」 事業を進め、こうした住居入手の支援や、地元住民への移住者の紹介を行い、空き家の活 用を行っている事例を紹介している。空き家対策として行政と集落が一体となって、取り 組みを行う事例はこの他にも各地で見られる。 Ⅲ.商業機能の低下 3 点目は、商業機能の低下である。人口減少により、地域で買い物をする人が減ってしま えば、商店の売り上げが減少し、時には商店数の減少をもたらす。また商店街から商店が 減ってしまえば、買い物客はほしいものを取り揃えられなくなってしまい 、さらに客足は 遠のいてしまう。自家用車を持っている人は簡単に遠方に買い物に行くことが可能だが、 自家用車を持っていない人は、 「買い物難民」となる可能性があり、生活が不便になること はいうまでもなく 、状況によっては、引き続きその地域に住み続けていくことが難しくな ることも考えられる。 Ⅳ.行政サービスの低下 4 点目は、行政サービスの低下である。国も地方も厳しい財政状況に置かれているが、財 政悪化による歳入確保が難しくなれば、行政のサービスは減少することとなる。行政サー ビスが低下することで、道路整備や維持管理に手が回らず道が凸凹のままになってしまっ たり、福祉サービスを受けられなくなる人が出てしまったりと 、住民生活に支障がでるこ とも考えられる。また、行政サービスが低下してしまうことによって 移住・定住を希望す る人が減少してしまうことも考えられる。 Ⅴ.雇用の減少 6 点目は、雇用の減少である。地元での雇用減少によって、仕事が見つからなければ、地 域で生活を続けることは難しくなる。域外通勤が不便であることから 地元を離れる人が増 えることや 、移住・定住を希望することが、その地域に暮らすことをあきらめることにも なりかねない。また企業側としても、若者の少ない地域に立地することは考えにくいため、 新たな雇用機会の創出が期待しづらくなることも考えられる。 以上、地域の衰退と、それによって生じる課題を整理したが、次節では小海町において このような課題が起こっているのかどうかについて 、考察していくこととする 。 44 2 節 小海町の抱える地域課題の考察とヒアリング結果 本節では、小海町が抱える地域課題とは何なのかについて考察する。 (1)小海町の抱える地域課題の推測 私たちは小海町が抱える地域課題とは何なのかについて第一章で挙げられたような情報や本 章 1 節の学術的論文の内容、平成 23 年度の沼尾ゼミナールの論文における小海町の基礎調査を もとに議論し、いくつかの仮説を立てた。以下に箇条書きで示す。 ①税収が減る ⑦町民の意見交換の場が減る ⑬商店の売上減 ②行政サービスが低下する ⑧人とのつながりがなくなる ⑭消費の減少 ③国への依存度が高くなる ⑨活気がなくなる ⑮孤独死が起こる ④コミュニティの運営が困難 ⑩空き家が増える ⑯高齢者を支える人がいない ⑤伝統祭事の消失 ⑪学校が廃校になる ⑰商店数の減少 ⑥地域活動の担い手の減少 ⑫施設がなくなる などである。 図 2−1 画像:地域課題推測の議論の様子 45 以上の推測を、本章1節で挙げた地域衰退の要因にならって、以下の項目にグルーピングする。 Ⅰ.地域の結びつきの低下 ④コミュニティの運営が困難 ⑤伝統祭事の消失 ⑥地域活動の担い手の減少 ⑦町民の意見交換の場が減る ⑧人と人とのつながりがなくなる ⑨活気がなくなる ⑮孤独死が起こる ⑯高齢者を支える人がいない Ⅱ.空き家の増加 ⑩空き家が増える Ⅲ.商業機能の低下 ⑬商店の売上減 ⑭消費の減少 ⑰商店数の減少 Ⅳ.行政サービスの低下 ①税収が減る ②行政サービスが低下する ③国への依存度が高くなる ⑪学校が廃校になる ⑫施設がなくなる (2)ヒアリングによる地域課題の抽出と考察 しかし、以上に挙げた地域課題は私たちの仮定に過ぎず、本当に小海町にそのような地域課題 が存在するかどうかはわからない。 そこで、私たちは実際に小海町にはどのような地域課題が存在するのかを確かめるために、2013 年 3 月 15 日から 17 日にかけて小海町内に住んでいる方を対象に、ヒアリング回答者のお宅に訪 問させていただき、7 件のヒアリング調査を行った。小海町で生活するうえで困っていることは何かと いうような質問に対して帰ってきた回答から地域の衰退と関係のある部分について抜粋し、まとめ て以下に示す。 ①消防団の人不足 ⑦給料の良い働き口がない ⑬消費が減少している ②地域協働活動の負担増 ⑧空き家の手入れがなされていない ⑭若者の流出 ③伝統芸能の存続危機 ⑨年に数回帰ってくるだけの家がある ⑮買い物が不便 ④地域イベントの活気減 ⑩空き家がたくさんある ⑯高齢者が多くなっている ⑤子供が少なくなっている ⑪公園などの子供の遊ぶ場所がない ⑥雇用の受け皿がない ⑫商店街の衰退 以上のヒアリング結果をまとめて、本章 1 節の地域衰退の類型化にならって以下のようにグルー ピングする。 46 Ⅰ.地域の結びつきの低下 Ⅱ.空き家の増加 Ⅲ.商業機能の低下 Ⅳ.行政サービスの低下 Ⅴ.雇用の減少 Ⅵ.生産年齢人口の減少 しかし、Ⅶ.生産年齢人口の減少という点に関しては、課題ではなく現象であり、以下 6 点の課 題はすべて生産年齢人口の減少に起因するものであるので、ここで小海町の抱える地域課題とし て同列に並べることはできないこととする。 Ⅵ.生産年齢人口の減少 ⑤子供が少なくなっている ⑭若者の流出 ⑯高齢者が多くなっている 本論文では、以下の 6 つを小海町の抱える地域課題として考察していく。 Ⅰ.地域の結びつきの低下 ①消防団の人手不足 ②地域協働作業の負担増 ③伝統芸能の存続危機 ④地域イベントの活気減 地域の結びつきの減少について述べる。一つ目に挙がっている課題は消防団の人手不足 である。小海町にはいくつかの地区ごとに消防団の分団が 6 つある。第一章の消防団の団員 数の推移(図 1-8)を参照すると、小海町における消防団員数は年々減少していることがわか る。定年の延長や、消防団の予備隊を作らなくてはならないという話も挙がっているほど、人手 が不足している。地区内の消防団員が減少することで、有事の際に駆けつけるのが遅れてし まうといった問題がある。 次に地域の協働作業の一人あたりの負担が増えているという課題があがっている。これは、 集落の人口が減ってしまっていることで、集落単位で実施する道や川などの整備活動や、雪 かき、消防団などの活動における一人あたりの役割と負担が増えてしまうというものである。ま た、地域の保健推進委員などの役員を一人の人間が何度も担当しなければならないという問 題も発生している。 小海町における伝統芸能の存続危機とは、本論文第一章で紹介した小海町の親沢地区の 伝統芸能「親沢人形三番叟」が、後継者不足により伝統の継承が困難になっているということ が挙げられる。以前は役柄の分担が厳密であるなど、厳しい制約があったのだが、「親沢人形 三番叟」を存続させるためにやむを得ず、他集落の者も担い手として参加できるようになって 47 いる。 次に、地域イベントの活気がなくなってきているという課題があがっている。これは、小海町 において子供の数が減ってきていることで、各集落の「子供獅子舞」や「どんど焼き」といった 子供が主役のイベントにおいて活気がなくなってきており、存続の危機に瀕しているというもの である。 Ⅱ.空き家の増加 ⑧空き家の手入れがなされていない ⑨年に数回帰ってくるだけの家がある ⑩空き家がたくさんある 次に、空き家の増加について述べる。 ヒアリング結果によると、手入れがされておらず、住宅としての利用ができなくなってしまって いるようなものや、年に数回、親戚同士が集まるときに帰ってくるだけで、その他の時期は空き 家同然であるものなどが存在することを課題として挙げている。 Ⅲ.商業機能の低下 ⑫商店街の衰退 ⑬消費が減少している ⑮買い物が不便 次に商業機能の低下について言及する。 本論文第一章の商店数の推移のグラフ(図 1−25)を参照すると、小海町の商店数は年々減少 していることがわかる。 ヒアリング結果によると、昔は、小海町内の商店街が賑やかだったにも関わらず、近隣市町村に 大型商業施設ができたことで、さびれていっていると感じているようである。 Ⅳ.行政サービスの低下 ⑪公園などの子供の遊び場がない 次に、行政サービスの低下について言及していく。 ヒアリングから、小海町は子育て支援が充実しているのにもかかわらず、宣伝が下手なため、損 をしていると感じているという回答があがった。そういった小海町のいい部分をもっとうまく宣伝して、 外部の人々に知ってもらうことで、域外からの定住者が増える可能性があるため、もっとうまく宣伝 すべきであるという意見を得られた。また、小海線のハイブリット電車はできた当初は国内初だった のにもかかわらず、売り込みが甘かった、もっと国内初のハイブリット電車を町の活性化に利用でき たのではないかという意見を得られた。さらに、町はもっと観光に力を入れるべきだとも言っていた。 また、気付いていないだけで、小海町内には見どころがあるというように感じている。また、小海町 内には大きな公園が一つもなく、回答者は、小海町は子育て支援が充実しているのに、子供 48 の遊び場が少ないのはもったいないと感じている。 Ⅴ.雇用の減少 ⑥雇用の受け皿がない ⑦給料の良い働き口がない ヒアリングにおいて小海町の雇用が減少している、産業がなくなっているという回答を多数得 られた。大きな雇用の先といえば、役場か農協か病院くらいで、それが原因で若者の流出が おこっているということが、住民の共通の認識である。 しかし、小海町には本当に働き口がないのだろうか。私たちは、それを確かめるために、町内 の企業に対してヒアリングを行った。その結果については、第三章で述べることとする。 以上のヒアリング結果から、小海町民は私たちが仮定したような地域課題を、日常生活の中で 「困っている」と感じていることがわかる。その課題を解決することで、小海町民の不安要素が解消 されるのではないかと考える。 次節では、以上のような地域課題の解決方法について考察していく。 3 節 定住促進により解決しうる課題 前節では小海町には 6 点の地域課題が存在することが分かった。本節では、それらの地 域課題を解決するための方法について考察する。 前節で挙げられた地域課題のほとんどは生産年齢人口の減少に起因していた。このこと から、私達は「定住促進」施策を講じる事で、それぞれの課題が解決されるかどうかを 考 察した。以下がその考察である。 (1)定住促進により解決しうる課題 Ⅰ.地域の結びつきの低下 私達は、定住促進施策を講じることで町内に将来にわたり定住する人達が増え、その人々が消 防団や地域行事を地域間で協力して行う事で、結びつきの低下による伝統芸能の存続の危機な どの地域課題を解決できると考える。また住民の方々が協力し、住民同士の結びつきができる様な 地域のイベントなどを開催し、顔見知りを増やす事により、町内からの移出を考える方が減少する 可能性がある。地域の結びつきが強まり、若者の小海町に対する愛着が強まれば、一度町外へ移 住しても U ターンする可能性が高くなると考えられる。 Ⅱ.空き家の増加 49 定住促進施策を講じることで、現在小海町内に住んでいる方が将来にわたり定住し、その家に 住み続ければ、町民の町外移出による空き家の増加は起こらない。また I ターンや、地域おこし協 力隊などで新たに小海町に住もうとする人々が、空き家を斡旋する「空き家事業」等を利用し、空き 家に住めば空き家は減少する。 町が空き家を買い上げて管理をするなどの方法も考えられる。 Ⅲ.商業機能の低下 定住促進施策を講じることで、商店の跡継ぎが今後も小海に定住し、家業を継ぐことで、商店の 担い手不足による商店街の機能の低下を防ぐことができると考察する。さらに、定住促進によりIU ターン者を増加させ、その方々が空き店舗の活用を行う事で、商店機能の低下を防ぐ事ができる。 定住促進施策の一環で小海町における交流人口が増加し、観光客による商店の利用者が増加 にともなう消費増加が起こることで、商店の衰退が解決されるということが考えられる。商店主が努 力をし、機能を低下させない様にする方法もある。 Ⅳ.行政 サービスの低下 ヒアリングにおいて、町に意見を述べる際、その人が昔から町に住んでいる場合、新しい意見が 挙がりにくく、保守的になってしまうという意見が挙がった。この事から、定住促進によって新たに小 海町に移住した I ターン者などの小海町にしがらみのない人の方が、新しい視点から町に多くの意 見を発信することができ、町が刺激され、行政サービスが向上する可能性があると考えた。 他の方法としては、役場と町民の距離を近くする事で、住民の意見を聞き、サービスを向上させ られることができる可能性があると考える。 (2)定住促進により解決できない課題 私達は、 以下の二点の地域課題は定住促進によって解決できないと考えた。しかし、以下の 二点の課題は実際に小海町に存在するものであり、解決すべき課題である。そこで私たちは今ま でのゼミナールでの研究内容や町内でのヒアリングで挙がった回答から解決策を考察し、以下に 示すこととする。 Ⅴ.雇用の減少 雇用の減少について、私達は定住促進によって解決できないと考えた。しかし、ヒアリングの結 果から、小海町では雇用側と労働者側のニーズのミスマッチが起こっているということがわかり、そ れを解決することで雇用の減少を解決できるのではないかと考えた。雇用側と労働者側のニーズ のミスマッチをなくす為には、小海町にはどのような産業が適しているのかの検討が必要であると 考えた。私達は小海町においてテレワークや、クラウドソーシングなどの働き方を導入することで、 場所や時間にとらわれない柔軟な働き方ができると考える。これらの働き方は、クリエイター やデザイナーに多くみられ、都会でオフィスに向かい仕事をするのではなく、緑に囲まれた田舎で 50 仕事をする事で、新規性のあるアイデアがうまれ、そこでうまれたアイデアを、都会の本社に持ち帰 るなどの方法をとっていることが多い。この働き方をするにあたり、小海では町内の空き家を利用し、 作業場やオフィスとする事で、田舎での快適な就業環境を求めて I ターン者が増加する可能性が ある。また、この働き方により、職を求めて町外に移住する事を防げる可能性があり、雇用の増加が 期待できる。その他、工場の誘致などによる雇用の創出や、新規就農によりⅠ・Uターン者や現在 小海内に住んでいる人が農業の担い手となれば働く先は増加すると考えられる。 以上の5点の地域課題の解決方法は様々であるが、定住促進により多くの課題を解決すること ができると考え、私達は小海町における地域課題の解決方法として定住促進を提案する。解決で きると考えた課題は、上記の4点である。解決できないと考えた課題はⅤ.雇用の減少である。これ は定住促進により解決することはできないが、これらの課題が解決すれば、定住につながるのでは ないかと考えた。 (3)定住促進について 人口変動を表す方法には、その自治体における出生者と死亡者の差で表す「自然増減」と、そ の自治体への流入者と流出者の差で表す「社会増減」の2つがある。人口の社会増が生じていると いうことは、IU ターン者の増加または、流出者の減少が生じているということである。また、自然増が 生じているということは、出生者数が死亡者数を上回っているという状態で、その地域で産まれ育 つ子供が増える可能性が高い事を示している。「その地域で産まれる」という事は、その地域への 愛着や縁を持つ一つの要因になりうる。また、幼いうちから子供も参加して町を作り上げていける様 な教育を行う事や、ぎおん祭などの地域のイベントに参加する事で、愛着が形成されていく可能性 がある。子供が参加し、町を作り上げていくような教育とは、子供たちがプティリッツアなどの町のシ ンボルを作り、それを町に置き、町を彩る現在の様な教育である。また小海町の自然を体験しても らう為に農業体験などを行い、地元に対して愛着を形成していく方法もある。地元に愛着を持った 子供たちは U ターンに対するインセンティブが形成され、将来の U ターンの可能性を高める事にも つながっていく。以上の考察から、本論文では、定住促進施策として、人口の社会増・自然増を目 指していく。 本章では小海町にはどのような地域課題が存在するのかを明らかにし、その課題を解決するた めには定住促進を進めることが有効であると考察した。そこで、私たちは小海町において定住促進 を進めていくための方策を考えるうえで役立つと考え、実際に小海町に IU ターンしてきた方々にヒ アリング調査を行った。次章では、その結果について記載していく。 第三章 地域課題の解決方法について 51 私たちは「小海町の定住促進」を目指すにあたって、住民の意見を聴取するために、ヒアリング調 査とアンケート調査を行った。本章では、その結果から解決すべき課題を抽出し、次章の提言につ なげていく。 1節 IU ターン者へのヒアリング結果 私たちは、実際に小海町ないし近隣市町村に IU ターンしてきた方々の居住地決定要因や、移 住に際しての考えを聴取することで小海町における定住促進の方策を考えるうえで、以下の要領 でヒアリング調査を行った 実施期日:5 月∼7 月 対象:20 代∼70 代の小海町ないし近隣市町村に移住してきた男女 IU ターン者。 5 月 25 日∼26 日:小海町内在住の I ターン者 4 名 U ターン者 8 名 6月 22 日∼23 日:小海町内在住の I ターン者 2 名 7月 23 日∼24 日:小海町内在住の I ターン者 4 名 小海町の隣村の南相木村在住の I ターン者 2 名 目的:それぞれが居住地を決定した要因を明らかにするため 有効票数:I ターン者:12 名 U ターン者 8 名 男女比:男性 12 名、女性 8 名 以下の質問内容でヒアリング調査を行った。 1. 小海町をお知りになったきっかけはどのようなことでしたか。 I ターン者 友人が小学校の教員として小海町に赴任し、その友人から小海町のことを聞いた 1 年間の農業体験を岐阜県で行っていたとき、小海町出身の同じ参加者の方を通じて小海町を知 った NPO 地球緑化センターで森を蘇らせる地域交流の活動で小海町に来て知った 学生の時の先輩との交流によって知った 八ヶ岳に登っており、その時に小海町を知った 親族の別荘があったから 結婚によって小海町を知った 小海町に知り合いがいた 2. 小海町に定住したいきさつどのようなことですか。 I ターン者 近隣の町という候補もあったが、小海町で作った人脈をなくすのはもったいなかったから小海町に 52 移住した。 知り合いからの紹介で、職業が見つかったから移住をした。 自然が豊かで人が親切、景観が自分好みであったから移住をした。 手を動かす仕事したかったため小海町に移住した。 昔から八ヶ岳に登っており、年をとったら住みたいと考えていたため移住をした。 結婚によって小海町に移住した。 3. また現在は貸家ですか持家ですか。 I ターン者 貸家(町営住宅)。2 年以内に持ち家にする予定。 持ち家である 貸家である。 U ターン者 貸家 持ち家である。 4. 今後、小海町にIターン者を増やすにはどのようなことが必要になってくるとお思いですか。 I ターン者 職が必要であると思う。 住む場所が必要だと思う。 小海町を知ってもらうことが大切だと思う。 小海町らしさを大切にし、公共事業や雇用の場を増やす。 交通の便をよくすることが必要だと思う。 ボランティアなどで小海町に来てもらえるようにする必要がある。 集合住宅が必要だと思う。 5. 小海町に足りないものは何ですか I ターン者 産婦人科が必要 住むところ 仕事場が必要になってくる。 交通の利便性 U ターン者 産婦人科が必要 住むところ 53 仕事場が必要になってくる。 6. 小海町の良いところをお教えてください。 I ターン者 空気が綺麗、山が綺麗。 自然が豊かなこと 子育て支援が充実している。 環境が恵まれている。 空気がおいしい。 行政の方が親切で丁寧である U ターン者 人間関係の良さ・自然が多いところ 生活の場として恵まれているという事であった。町内には三番や学校、病院があり、地域の人が顔 見知りである 空気が綺麗、山が綺麗。 自然が豊かなこと 子育て支援が充実している。 三番叟がある。 行政の方が親切で丁寧である 7. 小海町の悪いところをお教えください。 I ターン者 産婦人科がないところ 不便すぎていられないという悪い面がある。 気候が厳しい 情報の発信ができていない 雇用の場が少ない 人口が少ない分、役回りが多いところ 行政の支援があまり意味を持たない。 U ターン者 人口が少ない分、役回りが多いところ 行政の支援があまり意味を持たない。 雇用の場が少ない 54 2 交通の便が悪い。 職場がない 産婦人科がない 冬が寒いところ よそ者に対して、壁あるところ 8. 移住を決定した要因は何ですか。 I ターン者 仕事がみつかったため 高原野菜を作りたかったため 元々田舎育ちで、東京が落ち着かなかったため、空気や山が綺麗な小海町に移住を決めた。 自然が豊かなところに魅かれたため 夫が小海町在住であったため、結婚し小海町に移住した 昔から八ヶ岳に登っており、年をとったら住みたいと考えていたため 幼い頃に小海町を訪れており、小海町の自然などに魅かれたため 家庭菜園が出来る位の畑つきで、家賃が安い村営住宅を借りられたため(南相木村) 村営住宅は I ターンで子供がいれば安く借りられたため(南相木村) 小海町出身の現在の旦那様と結婚したため 夫の仕事があるため 町営住宅が空いていたため U ターン者 都会の生活が嫌になり、家業を継いだため。 長男で実家が自営業であり、将来は継ぐつもりであったため 地元愛が強かったため 父親の体調があまり良くなかったため 会社に縛られたままではなく、身体が動くうちに何が自分でしたいと思い、実家の農業を継いだ ため 農業を手伝うようになったため ふと自分の職に疑問を持ち、自分の職について考えたため 9.一度小海町を出られたときの年齢と小海町を出られた理由をお教えください。 U ターン者 18 歳の時・専門学校に行くため 小海町を出たのは大学進学の為で、18 歳で東京都の杉並区へ行った 55 2 佐久の高校に出て、埼玉の大学に入学された。22 歳、小海町の役場に就職された。 小海町を出たのは 18 歳、公務員試験に受かったのが理由である。 18 の時に小海町を出て、大学卒業後に福島県の大手企業に就職をなされた。 22 歳進学のために埼玉県に行く。 26∼27 歳くらいの時に、このまま都会でこの仕事を続けていていいのかという疑問を抱いたことをき っかけに地元に戻る 大学進学のため、18 歳のとき小海町をでられた。 10.小海町にお戻りになろうと考えたのは、いつごろだったのかをお教えください。また、お戻りに なろうとお考えになった理由をお教えください。 U ターン者 専門学校を出て 2 年後・都会の生活が嫌になった。 t氏は長男で実家が自営業であり、親には継いでくれと直接言われた事はないが、将来は継ぐつも りで東京へ行った。 22 歳。戻った理由は、地元愛が強かったから。子供の頃から小海町の自然に触れ合ったことが大 きい。 小海町に戻ろうと思ったのは、30 歳のとき、子供も 2 人生まれて、子供を育てる環境に田舎暮らし がいいと思った。また、父親の体調があまり良くなかったから。 28 歳の時に、会社に縛られたままではなく、身体が動くうちに何が自分でしたいと思い、実家の農 業を継ぐことになった。 25 歳のころに農業を手伝うようになってから地元に帰ることを考え出した。 以前から小海町に帰ってこようと考えていたが、26∼27 歳くらいの時に、このまま都会でこの仕事を 続けていていいのかという疑問を抱いたことをきっかけに地元に戻る 小海町に戻ろうと考えたのは 29 歳、理由としては看板製作所を継ぐためであった。親から直接継 げとは言われていないが、お姉さんとお兄さんが小海外にいるため、継がない場合はここをたたむ つもりであった。 11.進学された後の情報収集などの就職活動はどのように行いましたか。また、小海町にお戻りに なって就職しようとお決めになった決め手はどのようなものでしたか。 U ターン者 家業だったのが理由。 東京の靴屋で働き、小売の経験を積んだ後に心機一転、小海へと戻ってきた。また進学した後の就職 活動は学校の求人を利用した。 いちご農家を始めたきっかけは、長野県が主催したセミナーに参加してから。 12.小海町の方との交流はございますか。 56 2 U ターン者 消防団(17 年間所属されている)・青年団(8 年間所属されている。)に所属されており、そこでの交 流もある。 ゴルフ仲間や商店の方が中心である。 小海町の方との交流は、消防団にはいっていて、同級生も周りに多くいて、農業をしている人が多 い。 消防に入り、地元の付き合いが多くなった。 小海町の方とは交流はない。 小海の方との交流としては中学校時代の人と飲むなどはある。 13.小海町にもどって来られる方を増やすには、どのようなことが必要になってくると思いますか。 U ターン者 仕事場(現在は、医療所を利用された方が商店街を利用するというかたちができているため、医療 所の必要性が高い。以前商店街に訪れるのは、どの地域の方が多いか調査されたところ、南牧村 や、相木村の方が多かった。また、農業・土方の可能性もある。) 仕事場なども必要だが、何よりも小海独自のものをつくる事が重要であると言っていた。T 様にとっ て「よい町」とは、他の人に自慢できる町であったが、小海ならではのものはということについては悩 まれていた。 職場や土地があれば増える。佐久の土地と小海町の土地では、小海町の土地の方が高いという問 題がある。 さらに、職場はやはり佐久に多いので、小海に住んでもらうために佐久までの交通費を補助すると いう制度を設けて、PRすることが重要だ。 小海町に戻る人を増やすことはできないのかと思っている。自分の子供は戻ってくる気はないと思 う。 まずは、最低限の生活をするために職場が必要。さらに、地元の若者のアイデアを積極的に採用 して、地域活性化を図ることが必要である。 仕事が必要だという。そのためには、町の新規就農者向けの行政支援がほしい。 ただ職があるだけではダメで、魅力的な職が必要 仕事が必要だと考えている。 14.今後も小海町にお住まいになり続けようとお考えですか。 I ターン者 余裕があれば、暖かいところで暮らしたい。しかし、野菜の値段が安いから厳しい。 今後も小海町に暮らし続けようと思っている。 57 子供が大きくなったらいずれ戻りたい。 U ターン者 ずっと住もうと考えている。理由は、生活が不便だと感じない。 今後も小海にお住まいになる。東京の魅力としては、便がよいが、東京も好きという訳ではなく、仕 事があればどこでも良い。 以上のヒアリング調査の結果から、私たちは「職」・「住まい」・「魅力」・「家の概念」「結婚」 の5つの決定要因が、定住促進を行う上で大きなウェイトを占めると推測した。 1つめの「職」とは、 「職場居住地の近くだから」「農業をやりたかったから 」などとい った、職業を優先した居住地の決定要因を指す。 2つ目の「住まい」とは、「安い町営住宅があったから」「知人に住む場所を紹介しても らったから」などといった住まいを優先して居住地を決定した居住地決定要因 を指す。 3つ目の「家の概念」とは「親の世話をしなければならない 」「家業を継がなければなら ない」 「墓を守らなければならない 」などといった、家のしがらみによっての居住地決定要 因を指す。 4つ目の「魅力」とは「自然環境のよさ」「子育て支援の充実」「買い物等の利便性」な どといった小海町独自の魅力を優先した居住地の決定要因を指す。 5つ目の「結婚」とは小海町内の人と結婚することにより、小海町に移住するなど「結婚」を理 由とした居住決定要因を指す。 この5つの観点が重要になると考察するにあたって、IU ターン者のそれぞれの「移住を決定した 要因は何ですか?」という質問に対する回答をみていきたい。 IU ターン者の回答 ①高原野菜を作りたかったため ②元々田舎育ちで東京が落ち着かなかったため、空気や山が綺麗な小海町に移住を決めた。 ③自然が豊かなところに魅かれたため ④昔から八ヶ岳に登っており、いつか住みたいと考えていたため ⑤幼い頃に小海町を訪れており、小海町の自然などに魅かれていたため ⑥仕事を探していたときに、ちょうど小海町内での仕事が舞い込んだため ⑦近隣の公営住宅を借りられたから ⑧主人が小海町在住であったため結婚し、小海町に移住した ①∼⑤の回答は、小海町の「魅力」に類型化をすることができる。また、⑥の回答から「職」に関 しての回答が得られ、⑦の回答から「住まい」に関する回答が得られた。さらに、I ターン者の女性 には⑧の回答のような「結婚」という観点も挙げられた。複数の女性から「結婚」が移住決定要因と なった例が挙げられた事から、「結婚」という要因が特に女性にとって重大なものになると考えた。 58 2 U ターン者の移住を決定した要因としては、今回のヒアリング調査では、家業を継ぐといった、小 海町に実家があるからという回答が理由の大多数を占めている。この事から、「家の概念」という観 点が必要なのではないかと考察した。 次節では、以上のヒアリングから得られた回答とその結果により、私たちが推測した居住地決定 要因としての「職」「住まい」「魅力」「家の概念」「結婚」の 5 つを念頭に置きつつ、幅広い意見を得 るために小海町内でアンケート調査を行った結果を以下に述べる。 2節 小海町内アンケート結果 この章では、小海町内にて行ったアンケート結果について分析していく。今回のアンケート調査 は7月から9月に、ヒアリング結果から得られた「職」「住まい」「魅力」「家の概念」「結婚」の 5 点の小 海町において定住促進を図っていくうえでの重要性を念頭に置きつつ、幅広い意見を聴取するた めに行った。実施方法は質問者二人回答者一人 での対面方式である。対象者はアンケート実施 日に、小海町内に行ったものである。20代から60代の方を中心とし、性別・年齢の比率に偏りが出 ないように、85人の方に調査を行った。 1.基本情報について ここでは、今回の調査でアンケートを行った方の基本的な情報を示していく。 以下は、回答者の属性を明らかにするための、男女の比率と回答者の年齢別の比率、出身地、 在住地を表したグラフである。 男女の比率は概ね五対五になっており、性別による回答の偏りは少ないと言える。 59 年齢別の比率も概ね二割ずつになっており、年代による回答の偏りも少ないと言える。 出身地については、半数が小海町であり、約4分の1が近隣市町村や県内の市町村、残りの4分 の1ほどが他の都道府県であった。小海町内を中心に様々な地域出身者のサンプルを得られたと 言える。またアンケートでは、県外からキャンプなどの観光で小海町に訪れている方もおり、大阪府 や茨城県、愛知県など、他県の方もいた。 60 また、在住地については、約半数が小海町、残りの半数が近隣市町村出身という結果になった。 このことから、獲得サンプルのほとんどが現在小海町内ないし、佐久地域に住んでいると言える。 61 2.アンケート者属性別居住地決定要因 以下において、アンケート回答者の属性を明らかにするために、回答者が在住地に住むことに なるまでの過程で分類してその割合をグラフで示す。 グラフを見てみると、I・U・J ターン者がそれぞれ約20%ずつであり、小海町にずっと住んでおり、 一度も小海町外に移住したことのない方が10%、小海町から県外に移住した方・一度も小海町に 住んだことのない方であるその他の方が約30%ということがわかる。Jターン者の 12 名のうち 9 名は 一度小海町に戻ってきており、その後他市町村に移住したというパターンであった 3.居住地決定要因について 次に「居住地を決定する際に最も優先させたものは何か。」という質問に対する回答について記 載していく。ただし、今回のアンケートでは、2節のヒアリング結果から考察した「職」「住まい」「家の 概念」「魅力」「結婚」の5点のうちでいずれに該当するのかを調査した。 62 居住地の決定要因としては、「家の概念」が一番多く、次に「職」が多いという結果になった。だが、 「I ターン」「U ターン」「J ターン」「ずっと小海町に在住」で決定要因に占める5点の割合にも違いが 出てくるのではないかと考察した。そこで以下からは、アンケート回答者の属性を「I ターン」「U ター ン」「J ターン」、「ずっと小海町に在住」「その他」の 5 つに分類し、その後、「I ターン」「U ターン」「J ターン」、「ずっと小海町に在住」の方に対する居住地決定要因をみていきたいと思う。 63 Ⅰ.家の概念の観点について ここでは、ヒアリング結果から得られた主な居住地決定要因の一つである「家の概念」の重要性を 明らかにするために、U ターン者の移住決定要因と、ずっと小海町に住んでいる方の定住要因に ついて考察する。U ターン者の移住決定要因と、ずっと小海町に住んでいる方の定住要因につい ては以上のグラフのようになった。 グラフを見ると、U ターン者の移住決定要因とずっと小海町に住んでいる方の定住要因は「家の 概念」という回答が他の項目を大きく上回っていることがわかる。このことから、出身が小海町である 方にとっては、「家の概念」が住む場所を決める際に、重要な要因になっていることがわかる。移住 決定要因、定住要因として家の概念と回答された方の具体的な回答項目を以下に記載する。 家の概念 回答項目 親の世話などをするため 住まい又は土地があったため 実家の職を継ぐため 移住・定住決定要因として家の概念と回答された方の具体的な回答項目は上記の表の様にな った。中でも親の世話をする為や実家の職を継ぐ為という理由は多く、U ターン者やずっと小海町 に住んでいる方にとって、上記の家の概念が相互に影響し合っている事がアンケートにより明らか になった。 64 Ⅱ.職の観点について ここでは、ヒアリング結果から得られた主な居住地決定要因の一つである「職」の重要性を明ら かにする。I ターン者の移住決定要因において、女性が結婚をして嫁いでくるという理由が一番多 いものの、2番目に多い回答としては、「職」が挙げられている。また、J ターン者の移住決定要因と しては、「職」が他の項目と比べてかなり多い結果となった。 このことから、I ターン者に関しては、「職」が I ターンをする市町村を選ぶ際の大きな要因になるこ とが考えられる。また、小海町から一度県外へ移住をしたものの、小海町以外の近隣市町村まで戻 ってきた、J ターンの方々の居住地決定要因 も「職」が大きな要因である。この「職」の問題を解決す ることで、J ターン者が U ターン者となり、小海町への定住促進を図ることができる。 Ⅲ.住まいの観点について ここでは、ヒアリング結果から得られた主な居住地決定要因の一つである「住まい」の重要性を明 らかにするために、アンケートで得られた回答から「住まい」に関係するものを抜粋して考察する。 アンケートで得られた回答から「住まい」に関係する回答の一部を以下に示す。 ・家賃が安いし、子育て支援が充実しているから、南相木村に住もうと思った。(20 代 男性) ・町営住宅が少ないこと アパートの家賃が高いこと 町営住宅を増やすべき(30 代 女性) ・小海町内に住む場所を見つけられなかったから町外で家を探した(50 代 男性) 以上のような回答は本章の 3 節でも述べられているものと類似している。 居住地決定要因のグラフを参照すると、「住まい」を居住地決定要因としている人は多くはない が、移住決定要因として「住まい」は存在する。 このことから、私たちの提言における「住まい」の優先度は重要であると考える。 Ⅳ.結婚の観点について ここでは、ヒアリング結果から得られた主な居住地決定要因の一つである「結婚」の重要性を明ら かにする。小海町内で行ったヒアリング調査において挙がった「結婚」という観点であるが、I ターン 者の女性が結婚をして小海町に移住するという形で、定住・移住決定要因となっている。 Ⅴ.魅力の観点について ここでは、ヒアリング結果から得られた主な居住地決定要因の一つである「魅力」の重要性を明 らかにするために、アンケートの「小海町の良いところは何ですか?」という質問に対する回答を記 載していく。この質問は、小海町にはどのような「魅力」や悪いところがあるのかを明らかにし、「魅 力」の観点から、定住促進にどのようなアプローチができるか、また、その重要性を考察する。回答 65 2 内容が多岐にわたるため、ここでは回答の多かったもので類型化を行った。小海町の良いところに ついては、「地域の結びつきの強さ」「施設の充実」「行政サービスの充実」「自然・環境の良さ」の4 つに類型化をし、小海町の悪いところについては、「人口が少ない」「地域の結びつき」「雇用先が 少ない」「施設不足」「商業機能の低下」「土地・住む場所がない」「交通の便が悪い」「行政サービ スの低下」の9つに類型化をしている。 (回答者1名が複数回答している場合有り) 地域の結びつきの強さ 近所の方が子供の面倒を見てくれる 人づきあいが多い 人間関係が良い 人とのつながり 人柄が穏やか 施設の充実 スーパーがあり生活に困らない 病院がある 八峰の湯がある 温泉がある 66 行政・サービスの充実 子育て支援が充実している 福祉政策 イベントが多い 学校などの教育施設が充実している 自然・環境の良さ 夏が涼しい 自然が豊か 自然災害が少ない 水がおいしい 山がある 昔から変わらないところ 田舎過ぎず、都会過ぎない 野菜がおいしい 地元であるところ 静かで暮らしやすい アンケート結果より、小海町の良いところについては、「自然・環境の良さ」が他の項目より圧倒 的に多いことが見てとれる。小海町の「自然・環境の良さ」として、得られた具体的な回答としては、 以上の表のものが挙げられた。グラフからも見て取れるように、「魅力」という観点においては、小海 町の自然・環境という面が魅力として多く挙げられていることがわかる。 居住地決定要因のグラフを参照すると、「魅力」を居住地決定要因としている人は多くはないが、 移住決定要因として「魅力」は確実に存在する。 67 2 次に、「小海町の悪いところは何ですか?」というアンケートにおいて行った質問に対する回答を記 載していく。 (回答者1名が複数回答している場合有り) 人口が少ない 人が少ない 小海町から出ていってしまう人が多い 老老介護ばかりである 地域の結びつき 地元を大切に思わない 年寄りが強く、若者が弱い 立場が下の者が上のものに文句を言えない 障害者への理解が浅い 活気がない 雇用先が少ない 働く場所がない 職種が土木・建築業しかない 施設不足 運動施設がない 68 公園・施設がない 子供が遊ぶところがない 若者が楽しめる場所が少ない 娯楽施設がない 介護施設が少ない 産婦人科がない 娯楽施設の減少 商店街に活気がない お店が少ない 気軽に入れる店が少ない 日用品以外のものを買うことができる場所がない 専門店がない 土地・住む場所がない 空いている土地が少ない 土地や家賃が高い 家を貸してはもらえるが、売ってはもらえない 町営住宅が少ない 交通の便が悪い タクシーが高い 車がないと生活できない バス・電車の本数が少ない 国道の交通量が多く、交通事故が多い 鉄道が小海駅止まり 通学が大変 暗い道が多くて危ない 行政・サービスの低下 農業の支援が過大 若者に小海町への興味を持たせる気がない 公共工事への出費が大きい 観光に力を入れていない 69 2 イベントが少ない イベントが継続されない 以上のアンケート結果より、小海町外での生活経験がある方と生活経験がない方とでは、小海町 に感じる悪い点が違ってくることがわかる。交通の便が悪いや商業機能の低下などといった意見は、 小海町外での生活がなければ比べることができないものである。また、小海町には課題になるもの が多くあるもアンケートより実証された。 3節 都市部在住者 へのヒアリング結果 以上は小海町内在住の方に対するヒアリング・アンケートの結果であるが、都市部在住の移住希 望者は小海町のような農山村への移住についてどのように考えているのだろうか。私たちは都市部 在住の方が I ターンすることに対してどのような不安やニーズがあるのかについて知るために、以下 の要領でヒアリング調査を行った。本節ではその結果と考察について記載する。 1.アンケート概要 実施日:11 月 9 日 15 日 16 日 17日 対象:都市部在住の移住希望者 11 月 9 日 静岡県 U・I ターン就職フェア in Tokyo 参加者 21 件 11 月 15 日 地元カンパニー 信州ゆかりのみ 参加者 3 件 11 月 16 日 東京交通会館2階 長野県移住・交流センター 来訪者 1件 11 月 17 日 北関東磐越&FIT 田舎暮らしフェア 参加者 16 件 目的:都市部在住の移住希望者は小海町のような農山村への移住に関してどう考えているかを知 り、結果を考察することで、小海町に I ターン者を呼び込むための方策を探る。 獲得票数:41件 獲得サンプルを学生とその他に分けて考えることとする。都市部在住の移住希望の学生から得 られたアンケート結果に関しては、本論文の筋とは合致しなかったため、本文中からは割愛するが、 小海町に提出するサンプルとして使用価値があると考えたため、巻末の付録に掲載することとす る。 私たちは以下の質問内容でヒアリング調査を行い、学生以外のヒアリング対象者から得られた回 70 2 答を表にまとめた。 実施日:2013 年 11 月 15 日 地元カンパニー 信州ゆかりのみ 11 月 16 日 東京交通会館2階 長野県移住・交流センター 11 月 17 日 北関東磐越&FIT 田舎暮らしフェア 対象者:20 代から 60 代の IU ターン希望者 有効票数:19 件 男女比 : I ターン希望者 男性 9 件 女性 7 件 U ターン希望者 男性 2 名 女性 1 名 2.アンケート内容 以下の質問内容でヒアリングを行った。 ① 年齢 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 1件 3件 4件 6件 5件 ② 性別 I ターン 男性 9件 U ターン 女性 7件 2件 1件 ③ 現在の居住地はどこですか I ターン U ターン 神奈川県 埼玉県 滋賀県 千葉県 神奈川県 東京都 千葉県 埼玉県 ④ 出身地はどこですか I ターン 福島県 東京都 千葉県 青森県 岩手県 神奈川県 埼玉県 U ターン 長野県 ⑤ 現在の住居は持ち家ですか I ターン 持ち家 栃木県 借家ですか 12 件 71 借家 4件 U ターン 2件 1件 ⑥ 現在の職業は何ですか I ターン 会社員 フリーアルバイター 医療事務 自営業 看護師 主婦 退職済み U ターン IT 関係事務 会社員 退職後 ⑦ あなたは現在どのような移住を考えていますか I ターン 生活の拠点を移して完全に移住したい セカンドハウスが欲しい 夏の間だけ過ごしたい 二地域居住したい ひと月に一回程度通えればいいと思っている 二地域居住したい 東京には年に数回帰ればいいと思っている U ターン 生活の拠点を移してゆっくりと暮らしたい ⑧ 移住先の候補地はどこですか I ターン ウィンタースポーツがしたいので長野県 群馬県 新潟県十日町 放射能の影響が少ない長野県の松本市以西 配偶者の出身地の近くである長野県、群馬県、新潟県の周辺 茨城県 長野県は寒いから嫌だ 農業ができるということを中心に考えている 北関東、東北、信州 第一候補 は長野県だった 現在探している最中である まだ定まっていない 福島県 長野県佐久市 新潟県妙高市 実際に訪れていいと思った 栃木県北部か滋賀県 北海道 新潟県 長野県 と候補地はたくさんあるが、それぞれに差がないこ とが悩み U ターン 地元の佐久市以外に候補地はない 地元の佐久市に帰るか、埼玉に残るかで迷っている 栃木県足尾 72 2 ⑨ 移住先の情報はどのように手に入れましたか I ターン 積極的に自治体に問い合わせた インターネットで自治体のホームページを見た IU ターン者向けのフェアに参加した 現地に赴いて、話を聞いた 自治体の移住相談窓口に問い合わせた 実際に移住に携わった人から話を聞いた 田舎暮らしの雑誌を読んだ 田舎暮らしの体験事業に参加した SNS で田舎暮らし関係の友人、団体とつながった ふるさと回帰支援センターの DM が届いた 新聞記事を見た ラジオを聞いた 友人からのクチコミを聞いた U ターン フェアなどに参加した SNS で地元の友人とつながった ⑩ 小海町という町を知っていますか I ターン 知っている 昔、小諸市で働いていたことがある。小海町に対するイメージ は、とにかく寒いというところ。 あまり知らない。小海線はよく利用するし、八ヶ岳には登ったことがある。小海 線の車窓から見た小海町のイメージは、移住するにはちょっとお店の数が少 なそうだということ。 聞いたことがないが、八ヶ岳は登ったことがある。東京の小学生はみんな林間 学校で八ヶ岳に登るので、都民のあいだで八ヶ岳は有名である。 知らない。先日、松原湖にキャンプに行ったが、夜は寒街灯がなくて暗いし、 水は冷たいしで散々だったと言っていた。 知っている。移住のためにいろいろなところを見て回っている時に、何度か通 過したことがある。自然が豊かで綺麗なイメージ。 初めて聞いた。全く知らない。 知っている。小海町が目的ではないが、明後日には小海線沿線を旅する予 定である。小海町周辺のイメージは、佐久平の駅が出来てから随分変わった ということである。特に、佐久市は栄えてきたが、小諸市は廃れてきて立場が 逆転したと言っていた。小海町に対するイメージは、旅をするには最高で、住 むにも悪くないところだが、日陰っぽいじめじめしたイメージがある。 73 知っている。小海町にはとても魅力を感じる。テレビでやっているのを観た。 知らない。聞いたこともない。松原湖には来たことがある。小海線も聞いたこと がある。 知っている。旅行中に通過したことがある。小海町に対するイメージは 、「冬は 寒そう」「空気が澄んでいて星が綺麗に見えそう」「高原野菜を作っていそう」 という程度である。 U ターン 知っている。実家に帰った時に、八峰の湯やリエックスは一年に一回以上は 利用する。のんびりとした雰囲気が好き。 小海町はよく知っており、高原のパン屋さんやリエックス、八峰の湯はよく利 用している。 知らない ⑪ 移住先にどんな不安がありますか I ターン 現在の仕事をやめなければならないところ 地域の活動が大変かどうか 買い物が便利かどうか 高齢者の交通手段があるか 原子力発電所の影響があるかどうか ビジネスとしての農業が出来るか 農業に対する経験・知識不足 地域に溶け込むことが出来るか 医療・獣医療が充実しているかどうか 飲食店はどんなものがあるのか 福祉は充実しているのか 田舎で自分のやりたいことが出来るかどうか 国民健康保険にかかる費用が高いのではないか 自然環境が過酷かどうか 何かあった時にほかの人を頼れるかどうか U ターン 家賃が高額であったり、家が見つかるかどうかわからなかったりというところが 不安 仕事を辞めなくてはならないところ 移住後の職が見つかるかどうか ⑫ 移住先ではどんな生活がしたくて移住するのですか 74 2 I ターン 温泉に行きたい 家庭菜園をしたい 土日に車に乗って景色のいいところにドライブに行ったり、地域で開催されて いるイベントに参加したりといったような自由な生活をしてみたい。 のんびり暮らしたい 東京の時間に追われた毎日や、満員電車などにストレスを感じているので、 そのストレスを忘れられるような生活をしたい 山登りがしたい 地域の活動に参加したい ビジネスとしての農業をやりたい 陽のあたる生活をしたい 第六次産業的な活動をしたい 日曜大工・家の改修をしたい 避暑がしたい U ターン トライアスロンやマラソンに参加したい 自給自足の生活がしたい 家庭菜園をしたり、草花を育てたりしたい ⑬ 移住先にはどのような職を考えていますか I ターン 検討中。農業は難しいというイメージ。自営業は、田舎の人口の少なさを考え ると稼いでいけるのかが不安。事務職は候補としてなくはないが、希望として はサービス業の仕事につきたいと思っている。土木建築業は女性が働けるイ メージがないということだった 現在と同じ電気関係の職業に就けるのが理想だが、移住先に似たような仕事 がなければなんでもいいと思っている。独身なので、生活していくには自身が 退職まで働かなければならない 定年後だから考えていない 現在と同じ看護師。看護師ならどこでも働き口がある。 農業で生計を立てて いけるとは思わない。 ビジネスとしての農業。移住してすぐに農業だけで稼いでいけるとは思ってい ないので兼業で考えている。副業としては林業、農業手伝い、地域案内人な どを考えている。 農作物の加工やグリーンツーリズム、エコツーリズムなどといった、第六次産 業的な事業の展開を目指している。農業のノウハウを学ぶまでのうちは兼業 を考えている。農業について学ぶ時間を確保できて、なおかつ生活にかかる 75 お金をなんとか工面できるような職業に就きたい。 働くつもりはない 探している最中である 半自給的農業をしたい。もしも余ったら道の駅や農協に出荷する程度のイメ ージ。 U ターン 非正規雇用でパート・アルバイトとして働くつもり 地元に貢献できる仕事をしたい 農業関係の仕事など 考えていない ⑭ 移住先の住居はどのようなものを考えていますか I ターン マンションは嫌だ 別荘地ですぐ近くに温泉があるところ 庭付き一戸建てがいい 賃貸で考えている。家賃 5 万円以上は絶対に嫌だ。 マンションを買いたい 生活できる最低限のものでいい 農地に近いほうがいい 戸建がいい 当面は借家で生活してみて、慣れてきたら家を買いたいと思っている。 長い目で見れば賃貸よりも買ってしまったほうが安上がりなので、持ち家のほ うがいいと思っている。 古くてもいいから、動物と暮らせる一戸建ての家がいい 安さと使い勝手を重視して、空き家の利用を考えている。 農地付きの家が理想 借家、持ち家のこだわりはない 家庭菜園ができるスペースが欲しい 古民家に住みたい 安く手に入れられたら購入、なければ賃貸をと考えている ※海沿いのマンション U ターン 年老いた両親と暮らせるような大きな家 子供が出来ても住めるくらいの広さの家 駅から徒歩圏内だと好ましい 戸建てがいい 以下において、都市部でのヒアリングから得られた結果を「移住先に抱える不安」や「移住先での 76 2 生活の希望」というような部分に要点を絞って分析し、記載していく。 3.分析結果 Ⅰ.自然環境の魅力発信 7の移住希望者が持っている移住に対するイメージについての質問を見ていく。この質問では、 一口に移住と言っても、各個人によって持っているイメージが違うため、その移住希望者が完全に 生活の拠点を田舎に移そうと思っているのか、田舎に第二の家を建てて二地域居住をしたいのか などを聞いている。この質問の回答として、私たちが注目したのは、夏の間だけ移住しようと思って いるというところである。二地域居住を希望している65歳の女性から、埼玉県の夏の暑さからどうに か逃れたくて、夏の間の避暑地として長野県で二地域居住を考えているといった回答を得ることが できた。この回答から夏でも涼しい気候という長野県の魅力があったことが理由で、移住候補地を 決めていることがわかる。小海町においても、涼しさという魅力を発信していくことが有効なのでは ないかと考察する。 Ⅱ.情報入手方法 9の移住先の情報入手についての質問の回答を見ていく。この質問では、アンケート対象者がど のようなツールから移住先の情報を得ているか、どの情報源が移住希望者にとって有益であった のかなどを聞いている。この質問の回答として私たちが注目したのは、移住希望者の多くは移住の 情報は実際に移住をした人や現地の住民に個人的に聞いた話が有益だったと感じているというと ころである。多くの移住希望者は実際に移住候補地に赴いて現地の人と話したり、11 月 17 日の北 関東磐越&FIT 田舎暮らしフェアのようなイベントで移住者からの話を直接聞いたりという方法で得 た情報について、「自身の励みになった」や「直接話を聞くことが一番重要」などと、直接話を聞くこ とを重要視していることが分かった。さらに、直接話をしたときには、その自治体のいいところだけで なく、自分の希望と本当に合致しているのかということについて掘り下げて質問できたり、いいところ だけでなく悪いところも言ってくれたりするところがいいということであった。また、若者の移住希望 者の多くは移住後の自分の希望の生活のイメージがある程度明確になっており、希望の生活を実 現している先駆者に、個別的に相談に乗ってほしいというニーズがあるようである。例えば、移住後 は農業をビジネスとして展開していきたいと考えている 40 歳男性は、現在までずっとサラリーマンを やってきたため、農業に関する知識不足が不安であり、田舎暮らし未経験者で農業ビジネスに成 功した人から直接話を聞きたかったが、期待していたような話は聞けなかったと言っていた。このよ うな結果から、小海町において移住・交流の情報を発信する際には、フェア等に参加するなど、実 際に移住希望者と直接話をすること、移住希望者のニーズに合致した情報を提供できるようにする ことが必要である。 77 Ⅲ.地域社会へ溶け込むことへの不安 11の田舎暮らしに抱える不安についての質問の回答を見ていく。この質問の回答で私たちが注 目したのは、移住後、地域に溶け込めるかどうかが不安だという意見が多いということである。移住 希望者の多くは、田舎で生活するにあたって濃密な地域住民とのつながりを求められるが、移住者 は住民に受け入れてもらえるのか、また、移住者は住民を受け入れられるのかというところに不安を 持っているということである。田舎ではよそ者、秩序を乱す者に対して壁を作ってしまうというようなイ メージを持っていると推測される。栃木県か滋賀県への移住を希望している 53 歳の男性は「地域と の濃密な関係を築かなければ生きていけない」とまで言っている。小海町においては移住者に対 して暖かく迎え入れてくれたという例が多いが、地元住民との壁を感じているという意見もあるので、 そこを改善していく必要があると考える。 Ⅳ.交通弱者の日常交通への不安 11の田舎暮らしに抱える不安についての質問の回答を見ていく。この質問の回答の中で、私た ちが注目したのは車の運転できない高齢者の移動手段について不安に思っている人が多いという ことである。田舎に二地域居住することを考えている 65 歳の女性は、車を持っていないということで、 制限されることが多すぎるので、行政にもう少し配慮して欲しいと思っており、小海町が路線バスの 改革を先立って行うのであれば、小海町への移住も考えると言っていた。また、こちらも田舎と都会 の二地域居住を希望している 51 歳の女性は、自分の義母、または自身が高齢者になって車を運 転できなくなってしまったとき、買い物時などの移動手段がなくなってしまうことが不安なので、町の コミュニティバスを循環させたり、一定数以上の高齢者が集まったらまとめて送迎したりというような 仕組みが欲しいと言っていた。小海町においても高齢者が買い物をしやすい仕組みづくりを推進 していくべきである。 Ⅴ.就農支援の希望 11の田舎暮らしに抱える不安についての質問の回答を見ていく。この質問では、移住希望者が 田舎暮らしをするにあたってどのような不安を抱えているのかを、それぞれの事象について掘り下 げて質問している。この質問の回答の中で私たちが注目したのは、経験不足や知識不足から就農 支援を求めている人が多いということ、経験不足や知識不足から就農支援を求めている人が多い という回答については、農業をビジネスとして展開していきたい若者も、家庭菜園や自給的な農業 をしたいという高齢者の方まで幅広い年齢層から得ることが出来た。12の移住後の希望の生活に ついての質問や、13の移住後の職業についての質問の回答を見てもわかるとおり、移住後に何ら かの形で農業に携わりたいと考えている人は多い。しかし、都市部在住の人たちは農業経験が全 くないという人もおり、そのような人たちは農業を学ぶ必要がある。小海町としても新規就農者の支 援に力を入れていくべきであるといえる。 78 Ⅵ.移住後の就農に対する世代間の希望の違い 12の移住後の生活の希望についての質問を見ていく。この質問では、移住後にどのような生活 をしたいかについて掘り下げて質問している。この質問の回答の中で私たちが注目したのは若者と 高齢者では移住先でやりたい農業のイメージが異なるというところである。若者の移住希望者は目 的意識を持ってビジネスとしての農業を行いたいと思っており、高齢者の移住希望者は老後のスロ ーライフの楽しみの中で自給的な家庭菜園程度の農業をやりたいと思っている人が多いということ である。11の質問の回答で、移住後の就農支援の話が出てきた時にも記載したが、このようなニー ズの違いを意識して支援、情報発信をしていくべきである。 79 第四章 政策提言 本章では、今までの調査結果から明らかになった分析結果や課題考察をもとに、小海町 への提言を述べる。 第1節 町内ヒアリング・都会アンケートからの 小海町の課題の抽出 私たちは小海町内や都市部でのヒアリング調査から得られた回答をもとに課題を抽出し、 地元町民向けと IU ターン希望者向けに分類、類型化した。詳しくは、表にまとめたものを 巻末に付録として掲載するのでそちらを参照していただきたい。 小海町内や都市部でのヒアリングの回答を整理すると、定住促進を進めるに際して必要 なことは I ターン者、U ターン者、J ターン者、地元住民それぞれについて異なるというこ とが分かった。そして、私達は定住促進施策対象者の立場や置かれている状況によって、 異なる施策を段階的に講じる必要性を感じた。そこで、定住促進施策対象者の立場や状況 を 5 段階に分け、それぞれの段階ごとに解決策を考察し以下の表にまとめた。以下の表で は全く小海町を知らない移住希望者を第一段階、一度小海町を訪れたことのある移住希望 者を第二段階、複数回訪れたことのある小海町ファン・リピーターを 第三段階、小海町に 移住してきたばかりの定住初期段階を第四段階、小海町に移住をして、このまま小海町に 定住し続けようと考えている方の生活をさらに快適にしつつ、次の世代の定住促進につな げていく段階を第五段階とした。それぞれの段階の者に対して、「情報発信」「小海町案内 人」 「地域コミュニティの活用」 「バスの活用」という大きくわけて4つの施策を講じるこ とで次の段階へのレベルアップを 目指していく。 80 図 4−1 情報発信 1.(全く小海町を知ら 方法 ない) 内容 方法 2.(一度訪れたことが ある) 小海町案内人 インターネット・SNS の活 用・IU ターンフェア ての IU ターンフェア への参加 の活用 町営ブログ・ SNS 内容 地域のつながり 第一印象の重要性 信 の発信 案内人による商店、 定期的な地域 送迎バスとして 観光への関わり の集まりに参加 活用 インターネット したもの、お試し居住情報 商店・観光業でつな がりの創出 コミュニティ会合 つながりの創出 インターネット 4.(定住初期) 望者へのフォロー の集まりに参加 空き家の活用 街コンの推進 住居用だけではなく仕事場 としての空き家の利用 意見の聴取 暮らし支援 住まいの相談 や仕組みに対 つながりの創出 する意見をバス 内の目安箱に 入れてもらう 案内人、町内放送、 案内人による移住者 目安箱の活用 へのフォロー イベント情報 移住者のニーズを把握 方法 観光客目線の バスのデザイン ふれあい活動の情報 内容 への送迎 観光に利用 農業体験・支援 方法 町内移動 観光等の情報 子育て支援・職・住まい ター) (P-BUS)による 活動記録の発 案内人による移住希 定期的な地域 3.(小海ファン・リピー デマンドバス 移住相談の受付 の発信) 方法 バスの活用 観光・農業体験 農業体験(より地域に密着 内容 案内人の相談員とし 地域コミュニティ 定期的な集まり 防災訓練への 参加を促進 交通弱者として の意見の聴取 定住初期の生活、 つながりの創出 バスに対する不 農業の不安除去 壁を取り除く 満やニーズ調査 町内放送、 案内人の担い手へ 回覧板の活用 育てる 子供の参加 デマンドバスと して活用 自身の経験を生かし 5.(永住) 内容 医療・福祉・冠婚葬祭 て小海町への IU タ 将来の U ターン ーンをしてきた方に 者・小海にずっ 「小海案内人」への と住む方の増加 参加を勧める 情報発信とは、移住者に対してそれぞれの立場や置かれている状況にあった情報を提供 81 高齢者、交通弱 者への支援 することで、次の段階にレベルアップさせることを 目指す。情報発信ツールとしては SNS や町が運営するブログ・回覧板、町内放送、IU ターンフェアにおける 案内人による情報発 信などが挙げられる。 小海町案内人とは IU ターン者を含む地域住民で組織される、移住希望者の相談から移住 後のフォローまでを担う集団であり、移住者の置かれている状況に合ったさまざまなフォ ローを担う。構成員は実際に小海町に移住、地元住民、農業従事者、地域おこし協力隊な ど、状況に応じていろいろな方が担うことが望ましい。 案内人の役割、担い手に関しては主に以下の 7 つが考えられる。 役割 担い手 インセンティブ ① 住まい案内人 区長から依頼された地区住 地区住民の増加 民 地域協働作業等の担い手増加 宿泊施設の店主 宿泊施設の売り上げ増加 ② 観光案内人 地域おこし協力隊 ③ 農業案内人 ゆうきちゃんクラブ 農業の担い手増加 ④ 地域交流案内人 コミュニティ参加者 参加者の増加 コミュニティの存続 ⑤ 商店街案内人 地域おこし協力隊 小中学生の社会経験の獲得 地元の小中学生 ⑥ 移住者案内人 IU ターンの先輩 自身の経験から移住の苦労が わかるため、新たな移住者を 支援したいと思うこと ⑦ 移住希望者案内人 IU ターンの先輩 自身の経験から移住の苦労が わかるため、新たな移住者を 支援したいと思うこと 移住者の情報と小海町案内人の情報に基づくマッチングは、IU ターン者のことを理解している人 が行うことが考えられる。自らの移住当初の経験を生かして移住希望者の抱える不安や問題ご とになるべく似たような境遇の人同士をマッチングさせ、小海町案内人の得意分野で移住希望者 の支援ができるようにする。それぞれの立場や置かれている状況にあった移住者への支援を することで、次の段階にレベルアップさせることを 目指す。 地域コミュニティの活用とは現在小海町内で行われている無尽のような、新しい定期的 82 な集まり、コミュニティを推進するものである。地域ごとに定期的に集まってお酒を飲ん だり、旅行に行ったりといった活動を利用して、移住者が地域に溶け込む手助けをしたり、 子供の小海町に対する愛着を創出したりする。それぞれの立場や置かれている状況にあっ た移住者と地域とのつながりを創出することで次の段階にレベルアップさせることを 目指 す。 バスの利用とは、小海町のバスのボディに小海町のキャラクターであるプティリッツァ をペイントした 広告車などに利用することを指す。プティリッツァが 書いてあることから 「Ptylitza Bus」略して「P-BUS」とする。P-BUS の車体には町営バスを使用する。運営は 民間に任せることによって、運転手等が必要になり、町内に雇用が生まれることが期待で きる。運転手が利用者との会話の中で小海町の魅力を発信していくことも期待できる。 P-BUS を使用してそれぞれの立場や置かれている状況にあった情報の提供やつながりの創 出をすることで、次の段階にレベルアップさせることを 目指す。 次節では、それぞれの段階の解決策について一つ一つ解説し、提言する。 第2節 小海町への提言 (1)全く小海町を知らない人への対応 ここでは 「全く小海町を知らない」段階の移住希望者に、小海町を知ってもらうための 方策について述べる。 定住を考えるうえで、まずは小海町がどのような場所なのかを知ることが重要だと考え る。そのために、観光や農業体験の実施などのイベント情報に加えて、小海町では近隣の 関係性が希薄な都市部とは異なり、地域のつながりが 濃く、暮らしの安心が確保できると いった情報を発信していくことを 提案する。観光情報として発信することは 、松原湖や八 ヶ岳、八峰の湯、リエックスといった 観光地、季節ごとに行われているイベントの 紹介、 農業を一度やってみたいという方向けの農業体験情報 である。情報を発信するためのツー ルとして、インターネット、SNSを利用した小海町の観光地、農業体験の紹介、バスを 利用した広告宣伝車の運用を提案する。バスの車の外装を、小海町のイメージキャラクタ ーであるプティリッツァと 小海町の季節に合わせたデザインにすることで 、多くの方の目 に触れることができ、小海町に関心を持ってもらえると考えられる。また、住民同士の仲 が良く、地域のつながりが濃いといったことについて 、都市部の人々には馴染みのない無 尽について、町が総合コミュニティサイト「むじん」を立ち上げ、そこにアップしていく。 このホームページは 旧来からある無尽の集まりだけでなく、各集落や地域に存在するなど 様々な団体がそれぞれページを持ち、その集まりごとに自由に編集ができる。また、この 83 総合サイト内でアクセスランキングをつけることで 、よりよい情報を提供しようと競争意 識が生まれるのではないかと考えた。 次に町民の方々に、小海町外で行われている移住交流フェアへの参加をしてもらう 方法 を提案する。フェアには、役場職員だけではなく、実際に小海町にIUターンしてきた 先 輩である移住希望者案内人にも説明者として参加してもらう。移住希望者案内人のインセ ンティブとしては 、IU ターン後輩が小海町に住んでくれることによって 、地域協働作業等 の担い手の増加が見込めることである。移住希望者案内人 にもフェアに参加してもらうこ とによって 、普段は提供することのできない 、小海町に住んでみての感想やIUターンす るにあたっての注意点などといった生の声を提供することが出来る。この説明会に参加す る方は、説明を受けるIUターン希望者への優しい対応が必要とされる。第一印象を大切 にすることで、IUターン希望者は小海町に対して「行政が優しそうだ」「移住をして不安 なことがあっても 気軽に相談できそうだ」などといったプラスイメージを 与えることが出 来ると考える。 小海町のイメージキャラクターであるプティリッツァが 描かれたバス「P-BUS」の町内外 での運用、町が運営する無尽総合サイトを利用した地域のつながりの 濃さのアピール 、移 住交流フェアでの移住希望者案内人 による説明、観光地、農業体験情報の発信といった施 策を行うことで、小海町の認知度の上昇、小海町はどのようなところなのかという 意識の 向上を図ることができ、全く小海町を知らない方でも一度小海町を訪れてみたいと思わせ ることができると 想定される (2)小海町を一度訪れたことがある人への対応 ここでは、小海町を訪れたことがある方が、小海町のファン・リピーターとなるための 提言を記述していく。まず、情報発信はインターネットにおいて 、農業体験や小海町に住 んでみるお 試し居住の情報を提供するべきであると 考える。農業体験については、農業案 内人が小海町を初めて訪れる方を対象に発信したものよりもさらに 地域との関わりが密に なるになるような 体験を行い、地域とのつながりを創出しつつ、農業の仕方を学べるよう な農業体験 にするべきだと考える。具体的には、民泊を受け入れてもらえる 農家の方を募 集し、民泊において地域とのつながりを創出し、農業の手伝いも行う仕組みを提案したい。 また、ここでの農業体験の目的は、小海町の農業を知ってもらう程度に留め、農業に楽し さを感じてもらい、興味を持たせるようにするべきだと考える。 人口減少が進む小海町では、町を訪れた方との交流を積極的に行い、人と人とのつなが りを強めることが必要になると考える。そこで、商店街案内人 が小海町を訪れた方と小海 町住民の方とのつながりを強める部分において手助けを行うような仕組みを構築すること を提言したい。また、交流を図る場所としては、土村・馬流商店街が挙げられる。土村・ 馬流商店街 は小海駅の目の前にあるため、観光客の方が電車で小海町を訪れた際に初めに 84 目にするものである 。しかし、現在の商店街では、温泉などを目的に訪れた観光客の方が 商店街で買い物や、食事をしようと考えるかは疑問である。そこで小海町を訪れた方が商 店街の店舗を利用するような仕組みを作っていくためにも 商店街案内人が商店街の中に入 り、活気を出すことが必要になると考える。 私たちは土村・馬流商店街を何度も訪れて、商店街が静かすぎることを感じていた。そ のような中で、土村・馬流商店街の現状を変えていくためには 、外から入ってきた方や若 者の力が必要であると考えた。商店街の店舗が中心になり、これらの人々と協力をして、 小海町を訪れた観光客の方に商店街店舗の宣伝活動を行う。そうすることで 、今までは素 通りをされてしまっていた 商店街を利用する観光客の方も増加することが考えられる。そ して、静かであった商店街に活気が出てくることが望める。 観光業においても、小海町案内人と協力をして活性化を図っていくべきだと 考える。ヒ アリング・アンケート 調査や実際に私たちが小海町を訪れてみて、小海町の自然は、小海 町の大きな魅力であると感じた。小海町在住の方が魅力であると感じていなかったものが 、 都会在住の方にとっては魅力的なものであるということもある 。小海町で宣伝することが できる魅力を再発見するためにも、小海町外の方の意見がここでも必要となってくる 。ま た、観光客の方へ小海町の魅力を伝えるために、観光案内人が観光ガイドのような役割を 図るべきだと考える。そうすることで、小海町外の方が感じる小海町の魅力も伝えること ができるのと同時に、観光客の方との交流を図ることができる。以上のように商店街・観 光業の活性化を図る際に「案内人」との協力体制を強化することを私たちは提案する。無 論、 「案内人」が観光客の方との交流を図るだけでなく、観光客の方が商店街の店舗や、旅 館などの観光施設を利用した際には、各店舗の方がそれぞれ積極的に交流を図ることが重 要である。実際に小海町に住んでいる方との交流を持ち、観光客の方とのつながりが 生ま れることで、再び小海町に訪れようという気持ちも生じてくることが 考えられる。この観 光客の方とのつながりという部分を強くしていくことで、軽井沢などの全国的にも有名な 観光地との差別化が図れ、小海町に観光客を呼び込むことができるのではないか 考える。 次に地域コミュニティの活用についてである。小海町に訪れた方がさらに小海町の住民の 方と交流を図り移住へと繋げていくために、観光者の方が参加できるコミュニティを 構築 するべきであると 考察する。観光で来た人たちとの交流イベントを企画し、それをコミュ ニティの担い手がブログで発信をする。また、参加しやすい状況をつくるために発信をす るだけでは なく、地域交流案内人 も宣伝を行い、観光客のコミュニティへの 参加を促すべ きであると考察する。 最後にバスの活用についてである 。バスについては観光客の移動手段として活用しつつ、 さらに交流イベントに参加する際の送迎を行うべきであると考える。移動手段が少ないと いう課題がヒアリング調査において挙げられていたが、送迎を P−BUS で行うことで、交流 イベントへの参加もしやすくなると考察する。 85 (3)小海ファン・リピーターへの 対応 ここでは 小海町を複数回訪れている「小海ファン・リピーター」に、小海町に移住して もらうための方策について述べる。 まず情報発信についてであるが 、移住すると考えるときに、アンケートやヒアリングの 回答から出てきた、 「移住先で働く場所の情報や住居の情報がほしい」という意見が挙がっ た。そのため、小海町の求人情報や住宅情報を発信していく必要がある。住宅の情報では、 小海町には空き家の増加という地域課題が上がっているので、空き家紹介のホームページ を作り、空き家の斡旋を行っていくことが必要となる。空き家を、人が住むためだけでは なく、テレワークやサテライトオフィスの 事務所として活用することができる可能性があ ることから、このようなニーズに対しても情報発信をしていくことが 重要である。また、 「ど のような行政サービスや移住者への支援策があるのか知りたい」といったアンケートやヒ アリングの 回答から、小海町でビジネスとしての農業を行いたい人などに向けて、例えば 農耕機械購入支援 などの行政の支援策についても発信をしていく。また、農業体験につい ての情報発信も行うべきだと考える。これまでは、農業の楽しさを伝えるような農業体験 であったが 、この段階からは、農業の厳しさや大変さを伝えられるような本格的な農業体 験を行うべきであると考える。この農業体験も民泊を行い実施するべきであると考える。 しかし、この段階においては、体験農業のようなものではなく 、農業での暮らしが見える ような農作業を行い、民泊をした方にも体験していただく仕組みをとるべきだと考える。 行政支援においては、小海町では高校生まで医療費が無料であるなど、子育て支援が充実 している。そのため、子育て支援についての情報をインターネットで 記載していくことも 重要になると考える。 移住するためのフォローは住まい案内人が行い、つながりも創出していく。このような 活動を行うことのほかにも、移住に向けて、自分の希望の条件の物件があるかを尋ねたり もするべきである 。また、移住して農業をやりたい方ならば、家庭菜園程度の農業をやり たいのか、それともビジネスとしての 農業をやりたいのかというよう に、どのような農業 をやりたいのかを 聞いておくことで、移住してくるまでに準備をおこなうことができる 。 移住する前であっても、小海町内のコミュニティに 参加することは可能であるので、た だお客さんとして集まりに参加をするだけではなく 、地域に早く溶け込むことができるよ うに、様々な集まりに参加できる仕組みを構築できるような工夫を行うべきである。具体 的には地域交流案内人が小海町のファン・リピーターとなった 方とコミュニティ参加者と の仲を取り持つことも大切である。 また、現在行われている街コンを推進し、町内で結婚促進することで、町内に嫁いでく ることによる人口の社会増とともに、両者の間に子供が生まれることが期待できるので、 人口の自然増も期待される。 この段階においては、何回も小海町には訪れていることから、すでに P-BUS を活用して 86 いることが 考えられる。ファン・リピーターだけに 限った話ではないが、利用したときに P-BUS に対しての改善点や要望があると思われるので、その意見を取りこぼさないように、 目安箱をバスに取り付けていくことは必要となる。普段 P-BUS を利用する住民の方が気づ かないようなことが 意見としてあがってくることも 考えられる。また、車体のデザインや 情報提供のスタイルについても、ファン・リピーターの 新たな意見を取り入れることで、 より良い観光宣伝ができるのではないかと 考えられる。 以上のようなサポート体制整えることで、小海町の住むまでの不安解消の手助けとなり、 移住後もスムーズに地域に溶け込むための支援が行えるものと考えられる。 (4)定住初期の人々への対応 ここでは 小海町に住み始めたばかりの「定住初期」段階の移住者に、小海町に永住して もらうための方策について述べる。 まず、定住初期段階の移住者への情報発信については、その地域の方々とのふれあいが できる場について情報提供を提案する。まだ小海町に住み始めたばかりの移住者にとって 地域との壁があるということは、その後の生活がしづらくなる 要因になりえる。移住者と 地域の人々とのつながりを創出する場を提供するためにも、地域の祭やイベント、無尽等 の開催情報 を発信していくべきである 。そのようなふれあいの 場は地域のことを知り、地 域の人々とのつながりを創出できる場であるので、こうした情報の発信は小海町に永住し てもらうために有効であると考える。また、定住初期段階の移住者の情報に対するニーズ を把握するために目安箱を活用し、それぞれの段階に合った情報発信をしていくべきであ る。 小海町案内人による定住初期段階の移住者に対しての以下の支援を提案する。 まだ、小海町に住み始めたばかりの移住者は、新天地での生活に慣れず、生活面で多く の苦労をすることが考えられる。そこで私たちは、移住案内人による移住後のアフターケ アを提案する。例えば、農業をやっている移住者ならば、農機具の貸し借りや草刈の手伝 いなど、農業案内人が積極的に移住者にかかわり、支援していくことが大切である。移住 者が以上のような情報をキャッチし、実際にふれあいの場へと足を運ぶことで、小海町を 知り、つながりが生まれ、永住につながっていくと考える。 次に地域コミュニティを活用した定住初期段階の移住者への支援として以下のような仕 組みを提案する。 小海町には、よそ者意識、見えないグループ間があるという課題がある。例えば、小海町内で IU ターン者に対してのヒアリング調査の結果の中に、小海町に U ターンしてきて六年経つ のに近隣住民の見えないグループ 感が有り、地域にとけ込めていないと感じているという 意見があった。また、都市部在住の学生以外の I ターン希望者に対する「田舎暮らしをする 上で不安に感じていることはありますか 。」という質問の回答の中には、地域コミュニティ に溶け込むことが出来るかどうかが不安だという意見が多くあった。こういった課題の解 87 決のためにも、 「小海町案内人」の中でもコミュニティ活動に関わりのある地域交流案内人 が、新規定住者の地域コミュニティ参加に向けた手助けをすることを 提案したい。実際に 小海町に IU ターンしてきた IU ターンの先輩や、長年小海町に住んでいる住民の方々に、 地域の人々を紹介してもらったり 、一緒に飲み会に参加したり旅行に行ったりと、地域に 溶け込む手助けをしてもらう。地域交流案内人にコミュニティに溶け込むためのフォローや生活 ケアなど密な関係を保ってもらうことで、定着率の増加を図り、永住につなげることを期待する。 バスを利用した定住初期段階の移住者への支援としては、P-BUS を移動手段としてあて にして移住してきた P-BUS に対する不満やニーズを調査することを提案する。 P-BUS を移動手段としてあてにして移住してきた人は、P-BUS を活用していることが考 えられる。利用したときに P-BUS に対しての改善点や要望があると思われるので、その意 見を取りこぼさないように、目安箱をバスに取り付けていくことは必要となる。また、車 体のデザインや情報提供のスタイルについても、移住者の新たな意見を取り入れることで、 より良いバス運営ができるのではないか考える。 (5)小海町に長く住んでいる方への対応 小海町に移住をして、このまま小海町に定住し続けようと考えている方の生活を快適に しつつ、地域の結びつきを更に強める事で、将来にわたり定住につなげていく提言を記述 する。 情報発信については小海町の医療や福祉、高校生や大学生への雇用先の情報を回覧板や 町内放送で提供する。医療や福祉についての小海町在住の方の老後の不安を払拭する為に、 福祉施設の斡旋を行い、老後の生活に安心感を持たせるべきである 。小海町は人同士の結 びつきが強く、お互いに助け合い、コミュニケーションが 密である為、安心安全な町であ る。施設の斡旋を行う事で、老後もより安心した生活が出来る環境になると考える。 高校生や大学生への雇用先の情報について、町内において雇用のミスマッチが起こって いる現状が明らかになった。町内の雇用先の情報を中心に提供する事により、地元に多様 な雇用があることが分かれば、仕事を求めて町外へと流出する方が減少するのではないか 。 また小海町案内人が、農業や林業などについてのサポートを行うことによって定住した 人々が、が、その後、町内で積極的に農林業に従事していく事で、将来の農林業の担い手 となり、永住につながるのではないだろうか 。 小海には IU ターン者が参加するコミュニティが存在するが、都会のニーズと小海の地域 資源をつなぎ合わせる事で雇用を創出し、その情報を発信していく方法もある。例えばデ ザイナーなどの方々は、新規性のあるアイデアを出す為、都会のオフィスに 向かい作業を するのではなく、小海町の様な自然の豊かな環境の中で仕事を行いたいというニーズがあ ることも珍しくない。このようなニーズと 地域資源をつなぎ合わせる場を情報により創造 できる仕組みを作る事も一つの手段ではないだろうか。 88 ヒアリングにおいて、車がなければ生活することができない 為、年をとってからの 生活 が不安であるという意見が多く挙がった。小海町の町民も述べているが、今の小海町のバ ス等の公共交通機関は決して便利ではない。そこで P‐BUS のような使い勝手の良い公共交 通機関ができる事で、小海町においての生活の利便性を向上させる。このバスにより 、車 が運転できない高齢者の生活をサポートすることとなり 、永住につながるのではないか 。 小海町へ移住する際、知り合いからの紹介により住まいを決定したなどの例が挙がった。 移住の際に、その移住をサポートする役割は非常に重要であった。このサポートを行う「小 海町案内人 」という仕組みを存続させる為に、「小海町案内人 」は、次の世代の担い手の 育成にも力を入れるべきであると 考える。移住の際に移住案内人の手助けがあって小海町 に移住をした方が、次の世代の移住案内人となることで、自身の経験を生かすことができ る為、IU ターンをして小海町に移住してきた方には、「小海町案内人」への参加を勧める べきだと考える。 小海町内や都市部でのヒアリング調査によると、U ターン希望者は地元への愛着が理由で U ターンを希望している事が分かった。そこで私たちは、地元への愛着を造成する事を目指 して、大人も子供も積極的に参加できるコミュニティを 提案する。小海町から若者が流出 してしまっている 現在の状況を解決する為にも、私たちは地域との関わりをより強くする 為に、子供たちも参加できるようなコミュニティが 必要であると考える。コミュニティに 参加している大人や子供が参加しやすいような 地域活動を企画・運営し、一か月に1回ほ ど定期的に交流を深める。幼少時から地域住民同士のつながりを深め、食事などをする為 に、交流の場を作る事で、子供たちには様々な世代の方との交流をする。このような取り 組みを行うことで、将来的に U ターン者や小海町にずっと安心して住み続ける方が増加す ることを期待したい。 89 第五章 終わりに 本章では、本論文で論じた流れを記載していく。 第一章では、小海町の基本的な情報を載せることで、小海町がどのような市町村であるか、また、 現状がどの様なものなのかを示していった。 第二章 1 節では、世間一般に見て地域の衰退とは一体どのような要因で生じるのかということを、 文献を用いて調査することで示していった。2 節では、1節の内容を踏まえ、小海町にはどのような 地域課題が存在するのかということを推測し、その後、小海町に住んでいる方にヒアリング調査を行 なった。私たちの推測とヒアリング調査において得られた地域課題の比較を行うことで、小海町で は実際にどのような地域課題が生じているのかを考察した。その結果、小海町には 5 つの地域課 題が生じていることが明らかになった。その後の3節において、私たちはこの 6 つの地域課題それ ぞれについての解決策を考察し、5 つの地域課題のうち 4 つについては、人口の自然増・社会増 を目指すことと、その地に住んでいる人の外部への流出を防ぐという定促促進によっての地域課題 の解決が可能であり、残りの課題についてはその課題を解決することで、定住人口増加に結び付 くという結論に至った。 第三章では、小海町において定住促進を進めていくためにはどのような施策を講じるのが有効 であるのかを探るため、実際に小海町に IU ターンをした方にヒアリング調査を行った。IU ターン者 合計 20 名にヒアリング調査を行い、私たちは、定住促進を行っていくために、IU ターン者の居住地 決定要因として「職」「住まい」「家の概念」「魅力」「結婚」といった5つの観点について考えることが 必要なのではないかと推測した。また、ヒアリング結果から、小海町への IU ターン者を増加させるた めに参考にできそうな部分を抽出し、類型化することで整理した。その後、居住地決定要因に占め る5つの観点を念頭に置きつつ、幅広い意見を聴取するために、私たちは小海町内で、アンケート 調査を実施した。次に、都市部在住の移住希望者が田舎への移住に関してどう考えているかを知 り、サンプルを小海町に提出するという目的の元、都市部でのヒアリング調査を実施した。都市部 在住の IU ターン希望者 42 名にヒアリング調査を行い、その結果から課題を抽出、類型化、整理し た。 第四章では、今までの考察・分析の結果から得られた地域課題を解決するためにはどう したらいいかという 提言を行った。まず、それぞれの地域課題についての解決策をヒアリ ングやアンケートの 結果から考察し、それぞれの解決策を提言した。小海町にもともとあ る地域資源 を生かし、定住促進施策対象者 の立場や置かれている状況によって、異なる施 策を段階的に講じることで住民・移住者の増加定着を図ることができ 、小海町の抱える地 域課題の解決につながると考える 90 参考文献リスト 第一章 長野県庁ホームページ http://www.pref.nagano.lg.jp/ 小海町ホームページ http://www.koumi -town.jp/ 静岡商工会議所 つなごう中部横断自動車道 2010 年5月号掲載 国勢調査 政府統計データ 産経新聞 1 月 30 日 街は高齢者仕様に 「50年後の日本」長野県小海町を歩く 平成 23 年度長野県小海町 と日本大学経済学部の交流事業成果報告書 小海町役場の方からいただいた資料 農林業センサス JA長野八ヶ岳小海支所 第二章 割出勇也・遠藤新(2008) 「金沢まちなか定住建築制度を利用した住宅の外部空間特 性に関する研究」 『日本建築学会北陸支部研究報告集 』51巻 全国建設研究センター 地域づくり成功事例 339-342 頁 高知県 総務省(2003) 『過疎地域における近年の動向に関する実態調査報告』 川相典雄(2005) 「大都市中心都市 の人口移動と都心回帰」『摂南大学経営情報学部論 集』13巻 37-58 頁 間藤辰則・古賀 元也・大貝彰・レレイトエマニュエル・ 谷武 (2009) 「中山間地域の定住促進方策に関する考察」『学術講演梗概集』877-878 頁 沼野夏生・大澤智昭(2000) 「施策目標からみた定住促進型住宅地の現状と課題」『学術講演梗概集』549-550 頁 第四章 中村 剛治郎(2007) 『基本ケースで学ぶ地域経済学』有斐閣ブックス 間藤辰則(2009)中山間地域の定住促進方策に関する考察 篠田暢之(2012) 『日本を元気にする地域の力〈1〉日本の新しいかたち』戎光祥出版 前西千寿香・平田隆行(2008) 「中山間地域における I ターン住宅としての空き家利用 の可能性」『学術講演梗概集』585-586 頁 高岸美由貴・木南莉莉(2012) 「農村におけるIターン促進の取り組み 埼玉県秩父市」 『新潟大学農学部研究報告 』65 巻 1-14 頁 91 香坂玲(2012) 『地域再生』 岩波書店 根本 祐二 (2013) 「豊かな地域」はどこが違うのか∼地域間競争の時代∼ 筑摩書房 糸数 望・吉澤 早織(2005)鳩山町活性化に向けた地域調査『東京電機大学情報社会 学科卒業論文』 田中勝(1995)「愛知県三河山間部における人口定住の試み」 『学術講演梗概集』 1213-1214 頁 沼野夏生・沢木利行(1999) 「中山間地域における定住促進型住宅地居住者の特性と定 住意識」 『学術講演梗概集』577-578 頁 垂水亜紀・藤原三夫・泉英二(2000) 「徳島県山城町における定住促進政策の展開と成果」『林業経済研究』46 号 57-62 頁 長畑実(2012) 「地方中都市における協働のまちづくりに 関する研究」 9巻 『大学教育』 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