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Title Author(s) Citation Issue Date URL Cephalothinの血清中濃度ならびに尿中排泄 -3g点滴静注に ついて大井, 好忠; 川畠, 尚志; 後藤, 俊弘; 小畠, 道夫; 岡元, 健一 郎 泌尿器科紀要 (1979), 25(2): 203-209 1979-02 http://hdl.handle.net/2433/122379 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 20S 〔墜騨欝欝 Cephalothinの血清中濃度ならびに尿中排泄 一3g点滴静注について一 鹿児島大学医学部泌尿器科学教室(主任 :岡元健一郎教授) 大 井 好 忠 川 畠. 後 藤 @尚 .志 岡 俊 弘 畠 道 小 夫 元 健 一 郎. SERUM・ LEVEL AND URINARY EXCRETION OF’ CEPHALOTHJN 一 A STUDY OF DRIP INFUSION OF THREE GRAMS 一一 Yoshitada Om, Takashi KAwABATA, Toshihiro GoTo, Michio OBATA and Kenichiro OKAMoTo Irom伽エ)ePartmentげひプ0♂09フ,, Facult]げλf6砒’η8,・Kagoshima翫が雄∫勿 μ)ノ剛or’P彫2(碗。伽。 Okamot・ノ Six cases of healthy adult velunteer were employed for the study and divided into two groups. Thtee grams of cephalothin diSsolved in 100 rn1 of sterile saline for injection was given to the one group by 1 hour drip infu$ion. . ’lrhe 6ther was given 8 g of cephalothin dissolved in 500 ml of the saline by 2 hours drip infusion. Serum level ahd urinary excretion of the drtig were measured by thin layer cup method using Bacillus subtilis ATCC 6633 as a test strain. A peak .of serum level obtained by 1 hour drip infusion reached higher than that obtained by 2 hours infusion. Area under the plasma’concentration time curve obtained by 1 hour drip infusion seemed to be wide; than that by 2 hours infLvsion at 50 ggfml. Urinary excretion rate up to 6 hours after the injection was 78.90/. and 76.90/. respectively. How− ever, the rate up to 2 ho.urs was higher in the grottp injected for 1 hour than 2 hours. ・Neither adverse side effect nQr abnorma} laboratory data was noticed after the administration of,3. g Qf oephaJothin.・ る3>.尿路感染症から分離されるグラム陰性桿菌の頻 緒 言 Cephalothin(CET)は1962年開発され1), 1966年 度はますます増加の傾向にあり4),最近の尿路感染菌 にたいするCET. フ感受性は低下の傾向を示し,その 第13回日本化学療法学会でシンポジウム2)に取り上げ MICのピークはE. cogiにたいして,複雑性尿路感 られて以来,わが国においても日常診療に慣用され, 染症から分離された菌株では106/ml接種で12.5μg/ml, 感染症治療に大きな役割を果している・CETは現在 le8/in1接種では50μ9/m15・6)となっている.一方難治 使用されている cephalosporin剤の中では血中濃度 性感染症にたいして抗生剤の大量投与がおζなわれて 半減期が短く,腎毒性が少ないことが特徴であり, いるT),一般的には大量療法はpenicillin系抗生剤で そのため腎障害時においてもかなり大量に投与でき あるSB−PC, GB−PCでおこなわれているがs), cepha一 204 大井・ほか:CET動態・39点滴静注 losporin剤でこのような大量使用の必要はない. CET 実 験 成 績 は通常1回1∼2g,1日2∼3回使用されているので, 現状において1日最高使用量は6gと考えられる. 1.標準曲線 CET 29点滴静注の吸収・排泄についてはよく検討さ「 阻止円が二重円を呈したものがあったが,すべて外 れている9).今回CET(注射用ト、リセロシン)3g点 円の恒径を測定した, Fig.王のごとく血清稀釈の回 滴静注時の吸収・排泄について検討したので報告す 帰直線10g y−0.64x−1.07であり, PBS稀釈のもの はIog y=1.llx−3.77となった. る. 2.血清申濃度 実験材料ならびに実験方法 Tabie 1, Fig.2のごとく,GET 39を100mlの生 健康成人volunteer 6名を対象とし1群3名として 理食塩水に溶解して1時間で点滴静注した場合,3例 2群に群別した.1群はGET 39をIOOmlの生理食 平均で15分後の血清中濃度は53・6±i5・3μg/mlであり, 塩水に溶解し,1時間かけて点滴静注し,他の群では 点滴終了まで30分値は67.1±10.OPtgfml,1時間値は 500皿1に溶解し2時間かけて点滴静注した.点滴開始 88.0±45。1μg/mlであり,やや漸増の血清申濃度を示 後15分,30分,1,2,3,4,6時間後に採血し, したが,2時間以後の血清中濃度はかなり急速に低下 し,6時間後にはO・4土0・2μ9/mlとなった・ 2時閲おきに6時聞まで採尿した.尿量はmlまで正 CET 39を生理食塩水500mlに溶解して2時間か 確に測定し,その1部を検体とした. けて点滴静注した場合には,3例の平均値で15分後 CETの二二を1/15M PBS pH7。0で溶解後Moni− trol−1血清(米国デイド社)で倍数稀釈し800μg/ml 50.O±12.7 Ptgfm1,30分後58.3±O.9μ9/ml,1時間後 から12段階稀釈液を血清中濃度測定用標準液とし,尿 60.5±5.4μ9/ml,2時間後45.3±7・3μ9/m玉とほぼ均 中濃度測定用には12,800μ9/mlから0・39μg/mlまで 等な血清中濃度が持続できたが,3時間後にはll・0 PBSで稀釈液を作成した.検定菌にはB・∫ubtilis AT ±4.5μ9/m1となり,4,6時間後にはユ時間点滴静 C(〕6633株を用い,薄層カップ法で測定した.4時聞 注群と同様の減衰を示した. 3.血清中濃度測定結果の解析 氷室においたのち37℃で培養し,エ8時間後に判定し 2群の投与方法におけるCET 39点滴静注によっ た. 本実験の対象としたvolunteerは予め末梢血, GOT, て測定された血清中濃度のAUC(area under thc GPT, Al−P, ZTT, TTT,尿素窒素,クレアチニン, plasma concentration time curve)を測定した.算出 検尿結果に異常がないことが確認され,本実験終了後 法には台形法と重量法を用いた.Fig・3, Table 2,3 1週間目に同じ項目について同一施設で血液生化学的 に示すように,6時間までの血清中濃度のAUCは実 測定をおこなった. 測値,理論値は!,2時間点滴静注群の問に有意差は 70 Test strGin:θac1//us subfノカ3 ATCC 6633 o N 1Human serum(MoriJtrol I pH ZO} 60 o Q一一一〇 :Humon urine (1/ts M phosphate buffer pH 701 o 50 省 tog y=[,lix−5,77 o g 40 . eog y=O.64x 一 1,07 暮 舞30 暑 . . 8 20 . ,El io . Q2 Q39 O,78 1.56 3」5 6.25 12.5 25 50 IOO CET(Jtg/m” Fig. 1. 200 400 ’800 1600 3200 6400 12800 205 大井・ほか CET..動態・39点滴静注 Table 1. Scrum level of 3 g of cephaSothin by drip infusion ユ」9/mi Do.$age No・ Age SeX cPk’);’ (i’rT7t2t−ii4 h 3・g 1 h’ C di lOOin1 64 1 58 M 2 54 M 5 5i M 67 74 2h,d; ・5QO’m1. 4 56 M 5 55 M 56,8 57.4 66.6 159.8 57,4 66.7 77.5一 4h 6h 23.6 23.6 7.2 OL6 15.1 1,l 0.4 0.4 0,4 0ゼ2 O.9 9.7 53.6士15.36ZI士IO.088.0±45,l i6.1.士7.0 8.5±13.0 Mea fi ± S. D.’ 5g’ 66.6 57.,4 3 h 2h lh 1/2 h 51.5 42.7 55.5 4?,7 5ア.4 58.5. 56 64.7 59.2 6 27 一M 50士12.7 58,3±○.9 6Q5士5.4 45.3±7.3 Mean ± S.D, L2 6.2 0.6 O,4 0.4 H.6 6.4 0 i5.1 49.5 36.8 49.5 66.7 57.4 57,4 27土3.9 Q4±O.2. 1 LO士45 2.7±5.2 03±Q2 pgイm1 90 5g d.i. 80 Hlh 70 x一一一一一x 2h 正 B 60 x〆一x\ ノ’ E 50 @ Cn=5} 、、 野 \ 、、 茂 2 8 40 、 s N s N N .50 N rNl’ x 20 s N N N Io x. 笥、、、、 :;一;=::...x一一.. .−p一. 2 1/4 1/2 1 5 4 ’5 6h Fig. 2. Serum level of CET Table 2. AUC calculated by measured serum level 刃9/ml 880 90 AUC hlg’ her INUC higher Total H 3g lh d.i. 80 k一一一x 5g 2h d.i,’ 70 60 .5Q・ 40 Z1 {n呂3} 20 1h,di 2h,di 1051 rn’ 高Q 572 2426 2382 5184 5654 ,.黛∼・5 6ダ5a3\、 5QO 50」」g/mi N ”)sL45.5 sX Table 3. AU(】galculated by co皿puted serum Ievel AUC higher AUC highe’r Total than 50Lug/ml than25.llg/ml AUC Nx 50 than 50.pg/ml than 25pg/ml AuC N N 25pg/ml .x I6.1 ・i, lh,di 20.Ipg/m卜hr 2h,di 18,0 5i.6 68,5 120.I I50.5 N IO s,1 1.O ktx 8,5 1141/2.1h 2.5 6 Fig. 3. Correlation between serum level of CET’and area under the plasma concentratlon tlme curve みられなかった.25μg/mlに横線を引いて,25μg!ml 以上のAUCを測定した結果も同様に有意差をみとめ られなかった.50μg/ml以上のAUCの測定では実 測値では1時間点滴静注群が有意に大きかった.しか し薬動力学的解析を応用して求めた理論値では両投与 206 .大井.・ほか:.GET動態・39点滴静注 Ole タ9/㎞1 ⊂lOOOO x.9356 .9 b H. 5g lh d,1, )Ss 石 を 80 CET 890 ’”.. s 81000 雪 s 8 60 x一一一x 5g 2h d.i. ”s 刀D.1917 SSSN δ ∈Q6 yZコ3.92h / 曾 52i Xx Q 呂 s あ N δIOO. x −s x .≡ 碧40 D.97 8 61 」 . =). / Lo a 20 jO @ I5.7 3.9 O−2 789 769. こ=コ3glh、 孤.6 O−2 2−4 4一一6 Fig. 4. 2一一4 Q4 Q6 4一一6 Urinary excretion・ levels’ and recovery rate’ Table 4. Urinary excreticn of 3g of cephalothin by drip infusion Dosage No, Urine volume L CET 2 di lOO m1 55.7 Urinary excretlon 313Qgm句 107.7 Urinary level Urinary excretion Urinary recovery 1 04,4 Ol. 550 5420.O i 88 1.0 62.7 5,6 1 2.5 0,4 2 195 120 567.5 94.2 1 iO.7 11.5 5.7 0.4 500 185 UrinarY level 5672.5 753.5 Ur;nary excretlon i701.7 155.7 14.4 Urinary recovery 56.7 4.5. 0.5 窒撃獅?volvme Urinary leve1 M弓an士SD, 570 262.8 U’ 5 4’ P 0 857’7.8yg/m1 Urine volume 5g 2−4h 565 in1 Urinary fievel Urinary’recovery 4..一6h O・一2h Urinary recovery 5890.0±25858 521.3±258.7 74.6土26D 3.9士.O.5 255 5 6.4 61.4±50.6 O,4士O.1 Table 5. Urinary excretien of 8 g of cephalothin by drip infusion O“・2h Dosage ・No. Urine volume 4 CET 5g d・i 5 5599.0 Urinary excretion 2222.5 mg 629B Urinq’ry recovery 74.1 O/o 265 Urinory level 461 2.7 ロ .Urmory recovery Urine volvme 6 1 222.4 40.8 21.O 565 15858 4 2.4 1.4 295 26.1 578.1 7.7 19.5 0.5 565, 465 Urinary leve1 口69Z.3 567,5 15.6 Urinary excretlon 20日.9 207. 1 Urinary recovery Urinary leve1 Mean士S,D. 170 249.6 l1697.5P9ノ㎞1 Urine volume 4’v6h 175 Urinary level Urinory excret}on 500 m1 190ml 2tv 4h Urinary recovery 172 670 6.9 95558±40905 19168±1542.9 60.6士17.5 15.7士7.7 7.5 0.2. 97.1,L152.2 O,6..士O.7 O一一6 h 207 大井・.ほか:CET動態・39点滴静注 Table 6. Laboratory data Peripheral blood Dosage No. Renal Liver function function RBC WBC H, Eosino. GO丁.GP丁A1・・P Z丁丁 丁丁T BUN 1 CET 59 di 59 d i 610046 2 26 20 4.7 ,10.6 5.1 14.4 L32 [}50044.5 5 51 18 3.9 8.7 5.8 12.2 i,19 6 50 20 6.6 7.1 5.1 15.7 ’1.24 after 444 6400 45 6 33 25 6.2’ 6.7 4.0 14.1 1.27 ・諮焉ζ1畿,:;1.261ig鱈1.檎il;3 4 CE丁 after 454 before 416 660044 2 沿Oml before 455 Cr before after 455 610046 2 31 17 6.5 z7 2,一 46Ei 5800 4Z5 1 29 17 6.4 7.4 ’ ?13.8一一iJTt T,7 15.4 L 24 before 450 670041.9 一 18 21 IO.4 5.4 O.6 15.0 1.2 5 500ml 6 afSer486ア800466 2 20 26 478 6400 47 before after 428 5400 45.5 15.i 5.8 Q8 i3.5 L4 51 18 5.5 6.4 5.5 15.4 L31 22 目 4、2 60 1.9 14.6 1.32 三間に有意差をみとめなかった. 2時聞点滴静注の際にはむしろ後半,病数を増す調整 4.尿中濃度ならびに尿中排泄 が必要であった.しかし6例とも1分聞の誤差で点滴 尿中排泄の成績をFig.4, Tablc 4,5に示した. 静注を終了しえた. 1時間点滴静注群における3例の平均値では2時間ま 尿路感染症から分離されるグラム陰性桿菌の頻度は での尿中排泄量は2237.9mg,2時間までの尿中回収 増加しているが4・1。),これらグラム陰性桿菌のうち 率は74.6%(74.6±26.0)であり,尿申濃度の平均値 CETが有効と考えられる菌種はE・coti, Klebseilla, は5890Ptgfml(5890±:2585.8)に達した・2∼4時聞, ProteUS mirabilisである11). しかし複雑性尿路感染症 4∼6時間では尿申濃度,尿中緋泄量も減少し,6時 から分離されるE・c・♂宛こたいするCETのMICの 間までの尿中回収率は78.9%であった・ ピークは,Io6/ml接種で12.5μ9/m15),108/ml接種で 2時聞点滴静注群では2時間までの尿中排泄量は3 J” Oμg!m王5・6)となっており,感受性の低下は否定できな 例平均で1818・9mg,尿中回収率は60・6%(60・6± い.他科領域から分離された E・ e・liにたいするGET 17.5),尿中濃度の平均値は9335・8μ9/m1(9335・8±40 のMlcのico 一一クはIo6/ml接種で6.25μ9/m工,108/ 90.3)に達し,6時間までの尿中回収率は76・9%で ml接種で25μ9/mlとなっており12),ほぼ同様の傾 あった, 向と思われる.現在cephamycin系抗生剤12・13),そ の他の新しいcephalosporin系抗生物質の開発が 5.臨床検査成績 CET 39を点滴静注した健康成入6名について,投 急速におこなわれており, これらはインドール陽性 与後1週間の末梢血所見,肝腎機能検査成績を検討し .Proteus, Serratia,緑膿菌などにも優れた抗菌力をもっ たが,赤血球数,白血球数,Ht,好酸球に異常値の出 ている.しかし現時点で日常臨床に供せられている 現はみとめられなかった.GOT, GPT, Al−P, ZTT, cephalosporin剤はCETまたはCEZと比較して格 TTT, BUN,クレアチニンについても投与後正常範囲 段に優れているものはない.したがって第1線の医療 において多少の増減をみたものの,異常値の出現はみ 機関ではcephalospQrin剤としては最初に開発された とめられなかった(Table 6)・ CETが現在十分に慣用されているのは事実である. 考 察 CETは腎機能に対する安全性の点から腎機能障害例 にもかなり大量投与がおこなわれている3).一方難治 …定量の抗生剤を点滴静注によって,「定時問内に 性と考えられる感染症にたいしても大量投与が試みら 投与し終るには細心の注意が払われなければならな れている14).このことはCETは安全であるけれども い9).静注針を用いた場合1滴が0.05mlとすると 現在では抗生剤としての切れ味すなわちMICと臨床 100・mlを1時間で点滴静注し終るには1分間32滴, 効果の関係が今iつシャーープでないということになる. 500mlを2時…聞で点滴静注終了するには1分間85滴 尿路感染症とくに腎孟腎炎,膀胱炎の治療において に調整しなければならない.本実験では1時間点滴静 は抗生剤の血中濃度は必ずしも治療効果に大きな影響 注の場合には時間の経過につれて滴数を減ずる調整を, を与えず,尿申濃度,腎組織内濃度が治療効果を推測 208 大井・ほか:GET動態・39点滴静注 する場合のよい指標となる15・17).実験的腎孟腎炎にお 剤が感染症治療に供せられるようになるまでは,既在 ける化学療法の検討では,E・co liによる感染では尿 の抗生剤の大量使用はやむをえぬ現状であり,安全性 中濃度がMICの6∼10倍以上に達すれば十分な治 という点からはCETは使用されるべき抗生剤の1つ 療効果が得られ16),緑膿菌感染では患側腎孟尿中濃度 であると考えられる. がMICの2倍以上,患腎組織内濃度がMICの数倍 ま 以上に達した場合には十分な治療効果が得られた17). 偏側性の直面腎炎の場合には,正常腎からの抗生剤排 と め 1.健康成人volunteer 6例を2群にわけ, CET 泄が促進するので,愚民組織内濃度を高めるためには (注射用トリセロシン)3gを1方は「00 mlの生理 大量投与が必要になるものと思われる.一方面孟腎炎 食塩水に溶解して1時間,他方は500mlの生理食塩 腎は正常腎に比べて抗生剤は入り難いが,一且組織内 水に溶解して2時間かけて点滴静注した. に達した抗生剤の排泄が不良のために長時間腎組織内 濃度は保たれる17). この実験結果からわれわれは腎孟腎炎の治療にあた 2.血清中濃度のピークは1時間点滴静注群の方が 高かったが,AUCは両群の間に有意差はなかった・ 理論値では有意差はみられなかったが50μg/mlにお っては,少量頻回投与よりも1日2回投与でも1回投 けるAUCは実測値で1時閲点滴静注群の方が有意に 与量を増す方が臨床効果はよいと考えている.一定量 大きかった. のCETを時間を変えて点滴静注した場合,点滴静注 3.6時間までの尿申回収率はそれぞれ78.9%, 時間が短い程,高い血清中濃度ピークが得られる18). 76・9%で両群に有意差はみられなかったが,2時間ま また溶解液量を一定にした場合には血清中濃度は, での回収率は1時間点滴静注群の方が高かった・2時 dose responseがみとめられる9).今回の実験結果は 間までの尿中濃度は平均値で両群とも5000μg/ml以 当然のことながらGET 39を100 mlに溶解し1時 間で点滴静注した方が,500mlに溶解して2時間で 上の高値を示し,尿路感染症治療に有用であることが 示唆された.. 点滴静注した場合よりも高い血清申濃度のピークが得 4.6例のvolunteerでは副作用の発現はみられず, られた.したがってより高い血清中濃度によって臨床 投与前後におこなった末梢血検査,血液生化学的検査 効果を期待する場合にはCET 39を生理食塩水100 ml でも異常値は串現しなかった. に溶解して1時間で点滴静注する方が有利といえる. 文 実際にMIG 25μg/皿1,50μg/mlの細菌による感染を 想定して実測からAUCを求めた場合には,50μg/ml 献 1) Chaurette, R. R. et al.: Chemistry of Cephalos− 以上のAUCでは1時間点滴静注群の方が有意差をも porin antibiotics. II. Preparation of a new って大きかった. class of antibietics. and the relation of structure 抗生剤の血中濃度曲線の理論値の計算で現在広く利 用されているmodelはopen model systemである・ one and two compartment open model systemによ to activity. J. Am. Chem. Soc., 84: 3401N3402, 1962. 2)第13回日本化学療法学会シンポジウム:合成 る理論値と実測値はよく一致しうることが示されてい Gephalosporin〔】について. Ghemotherapy,14= る19).しかし今回の測定では1時間点滴静注群ではや 199N208, 1966. や不一致を示し,実測値の方がやや高い血清申濃度 3)山面房之輔・ほか:腎機能障害患者に対する のピークが得られた.これは生体における抗生剤の Cephalothinの大量療法, Chemotherapy,21: elimination constantの個人差の影響と,点滴スピー 1845一一1850, 1973. ドの調整の仕方に原因が求められるものと思われた. 4)大越正秋・河村信夫・岡田敬司・田崎 寛:最近 CET 39点滴静注の尿中排泄はすこぶる良好であり, のグラム陰性桿菌に関する統計.Che・notherapy, 6時間までの回収率は1時間,2時間点滴静注群でそ 25: 480N491, 1977. れぞれ78・9%,76・9%であり有意差はみとめられなか 5)大川光央・ほか:尿路性器感染症患者尿申分離菌 っt.2時間までの二曲回収率は1時間点滴静注群が の薬剤感受性の最:近の動向.泌尿紀要,23=493∼ 高かったが,いずれも5,000Ptg/ml以上の高い尿中濃 507, 1977. 度が得られ,尿路感染症治療に有用であることを示唆 した. MICの小さい,吸収・排泄のよいcephalosporin 6)大井好忠・ほか:Cephapirinの基礎的臨床的検 討,西日泌尿,36:110∼114,1974. 7)上田 泰・ほか:化学療法における薬剤の大量使 大井・ほか:CET動態・3g点滴静注 用にかんする研究一体内動態について.Chemo− therapy, 21: 611, 1973. 8)石神裏次・ほか:難治性尿路感染症に対するリラ 209 の基礁的臨床的検討,Chemotherapy,26(S−1): 592”一599, 1978. 14)藤井千穂・、ほか:重度外傷患者に対するGepha− シリンの応用,日本臨床.4月号別冊,189∼195, Iothinの大量使用経験,外科治療,30:445∼454, 1976. 1974. 9)深谷一太・ほか:Cephalothinの吸収,排泄,臓 器内濃度(1).Volunteerおよび動物に挙げる成 績最:新医学,29:838∼844,1974. 10)大井好忠:尿路感染菌とその病原性,西日泌尿, 33: 140N145, 1971. li) Weinstein, L., and Kaplan, K.: The Cephaios− porins, Microbiological, Chemical, and Pharma− cological Properties and Use in Chemotherapy 15)大井好忠:尿路感染症,新薬物療法の実際,アサ ヒメディカル,東京,P.560∼565,1978・ 16)角田和之:実験的腎孟腎炎における抗生剤の効果 に関する研究,泌尿紀要,19:931∼962,1973. 17)川畠尚志:緑膿菌性腎孟腎炎の化学療法に関する 実験的研究,Chemotherapy,25:2371∼2386, 1977. 18)真下啓明・ほか:Cephalothinの吸収,排泄,臓 of lnfection. Ann. lnt. 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