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パタゴニア氷原の溢流氷河の1944/45

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パタゴニア氷原の溢流氷河の1944/45
ヒマラヤ学誌 No.8 2007
南米チリ・北パタゴニア氷原の溢流氷河の
1
9
4
4
/
4
5
2
0
0
4
/
0
5年の変動とその要因
安仁屋政武
筑波大学大学院生命環境科学研究科
北氷原に分布する 2
1の溢流氷河の 1
9
4
4
/
4
5
2
0
0
4
/
0
5年の 6
0年間の変動を、各種の リモー ト・センシ
ング・データを使って明らかにした。それによると過去 6
0年間は全般的に後退傾向にあり、面積約
2で東
2が減少した。氷原の西側(偏西風帯の風上側)に分布する氷河の平均後退量は約 8
101km
.
1km
9
k
m
'で突出
側に分布する氷河の 4倍強である。氷原最大の氷河サン・キンテイン氷河の後退量は約 2
して大きく、全体の1/
3弱に当たる。距離ではレイチェル氷河の約 6kmが最大である。 2
1の溢流氷
河のうち 1
7がカーピング氷河で、いくつかの氷河では氷河前縁湖での末端崩壊による短期間の大規
模な後退が起きている。一方、 6
0年間でほとんど変動していない氷河が氷原の東側(偏西風帯の風
下側)に見られる。このような大規模な後退は一般に地球温暖化による気温の上昇の結果と考えられ
るが、サン・ラファエル氷河で見られた停滞/前進/後退・前進という変動はフィヨルドの地形の影
響(主に幅、深さも一部関係?)と解釈される。
i
可変動を理解する上で重要で欠くことのできない
1 はじめに
最近、近年の地球環境問題、特に温暖化とその
研究である。
今までパタゴニア氷原ではアニヤの一連の研究
影響に対する関心が高まってきている。温暖化に
よる直接的・間接的な影響はさまざまであるが、
によって、 1
9
4
4
/
4
5年以降の北氷原の変動が(Ani
y
a
氷河の変動は重要な直接的影響の一つである。氷
9
8
6
;Aniya,1
9
8
8
;Aniya,1
9
9
2
;Wada
andEnomoto,1
河の後退・縮小は地域によっては水資源の枯渇や
を及ぼすが、氷河の融解による海面上昇は地球規
9
9
5
;AniyaandWakao,1
9
9
7
;Aniya,
andAniya,1
2
0
0
1
)、 お よ び 南 氷 原 の 変 動 (Aniyae
ta
l
.,1
9
9
7
;
Aniya,1
9
9
9
;Ani
y
ae
ta
,
.
l2
0
0
0
) が明らかになって
模 の 影 響 と な る 。 海 抜 1m以下に約 1
0億 人 が 住
いる。
観光資源の消滅などによって人間生活に直接影響
n
dA
l
e
a
n,
2
0
0
4
)、世界の主
むといわれ (Hambreya
本論文の目的は、パタゴニア氷原のうち、北パ
要な大都市の多くは海岸沿いに発達しているた
タゴニア氷原を対象として、そこから溢流する氷
め、海面上昇によって大きな影響がでることが避
9
9
4
4
/
4
5 (南半球の夏の意味)から 2
0
0
4
/
0
5
河の 1
までの過去 6
0年間の変動をリモート・センシン
けられない。
このような背景から、世界の氷河の変動を明か
グ・データによって明らかにし、その要因を考察
にすることは、これからの地球環境を考え、それ
することである C 北氷原では 2
8の溢流氷河のう
に対処する上で非常に重要で、ある O 南米南端、ア
ち2
1の氷河で(図 2
) トライメトロゴン空中写真、
ルゼンチンとチリにまたがるパタゴニア氷原は南
垂直空中写真、斜め空撮写真、衛星画像などさま
2を持ち、南半球では最
北併せて面積約 1
7,
200km
ざまなリモート・センシング・データを使って
大の温暖氷河(氷河の中に水が存在している氷河)
海面上昇に対する寄与という面からは、南極・グ
1
9
4
4
/
4
5
1
9
9
9
/
2
0
0
0年の変動が明らかになっている
(
A
n
i
y
a,
2
0
01
) 今回は 2
0
0
1年
、 2
0
0
3年
、 2
0
0
4年
のデータを新たに加えて、 1
9
4
4
/
4
5から 2
0
0
4
/
0
5
リーンランドとは規模が 2~3 桁違うが (Aniya,
年の変動を総合的に解析し考察して、その要因 に
1
9
9
9
;R
i
g
n
o
te
ta
l2
0
0
3
)、南半球は陸地が少なく
ついても議論する
の氷体で、世界でも 5指に入る規模である(図 1
)
。
リ
0
大きな温暖氷河は他にないので、パタゴニア氷原
の氷河変動を明かにすることは、世界規模での氷
- 99-
O
南米チリ・北パタゴニア氷原の溢流氷河の 1
9
4
4
/
4
5
2
0
0
4
/
0
5年の変動とその要因(安仁屋 政武)
図1
パタゴニア氷原の位置(左)と NOAAの画像 (
1民初年 2月 1
7日。
) 白く写っているのが氷原。北パ 9コニ
∞
∞km'である。
'
、南パヲゴニア氷原の面積は約 1
3,
0
ア氷原の面積は約 42 km
図2
北パ宮ゴニア氷原のランドサッ卜衛星画像 (
2
0
0
1年 3月 1
1日)。変動がモニヲーされている溢流氷河と主な山を示す。
1
0
0一
ヒマラ ヤ学誌 NO.8 2007
2 研究対象地域一北パタゴニア氷原
山がいくつか連なっている 。因みにセロ ・
アレナー
パタゴニア氷原は南米アンデス山脈の南端に
レスは 1
9
5
8年に日本
チリ合同登山隊 (
隊長:
発 達 Lた細長い氷体で、ほぽ西経733
0
'に沿って
田中葉)が初登頂している 。図 4は衛星画像とディ
5
'から 5
13
0
'まで南北約 500kmの長 さ
南緯 462
ジタル標高データを使って氷原を立体的に示した
を持ち、幅は最大で約 60km、最も狭い所では僅
もので、起伏と流域が良〈分かる 。
0
0
0
0
' 付近のフィ
か 8kmである 。現 在 は 南 緯 474
北パタゴニア氷原では、モニターされている
ヨルドによ って南北に分けられている 。北パタ
j
(i
可のうち 1
7は カ ー ピ ン グ j
j
(i
可 (
c
a
l
v
i
n
g
2
1の j
0
2で 2
ゴニア氷原は面積約 4200km
8の溢流氷河を
g
l
a
c
i
e
r
,末端が氷河前縁湖や海にあり氷山分離を
持ち (
A
n
i
y
a,1
9
8
8
)、南パタゴニア氷原は面積約
している氷河)である 。 カービング氷河の一つ、
2で約
13000km
サン・ラファエル氷河 (
Gl
a
c
i
a
rSanR
a
f
a
et)は海
48の溢流氷河を持つ (
Ani
y
ae
ta
l
.,
1
9
9
6)
。
に末端があるタイドウォーター氷河 (
t
i
d
巴w
a
t
e
r
北パタゴニア氷原の大体の高度は 1000-1500m
')
g
l
a
c
i
e
r
) で、世界で一番赤道に近い緯度 (
4641
0
であるが、北東角にパタゴニアの最高峰モン
2
に位置 している。氷原 最大の氷河は面積 765km
テ・サン・ヴァレンテイン (
MonteSanV
a
l
e
n
t
i
n,
のサン・キンテイン氷河 (
G
l
a
c
i
a
rS
a
nQ
u
i
n
t
i
n
)、
3910m)が鋒えている (
図 3)
。 この他、氷原の中
次が面積 760
km2のサン・ラファエル氷河 (
G
l
a
c
i
a
r
町 oA
r
e
n
a
l
e
s,
央付近にはセロ・アレナーレス (
Ce
SanR
a
f
a
et)で、南北併せたパタゴニア全体でも
3365m) があり、ここから南東方向へ 3000m級の
それぞれ第 5位と 6位である。
図3 冬のパタゴニアの最高峰、モンテ・サン・ヴァレンティン (
3
9
1
0
m
) と北氷原(サン・ラファ
∞αn強。
函養域)。忽
氾5年 8月 1
5日南西方向から撮影。手前の氷原の標高は 1
エル氷河のj
- 101-
南米チリ
北パタ ゴニ ア氷原の溢流氷河の 1
9
4
4
/
4
5
2
0
0
4
/
0
5年の変動とその要因(安仁屋政武)
図4 北パヲゴニア氷原の 3D衛星画像。 1987年2月撮像のランドサッ 卜MSS画像を、 5万分の 1の地形図を基にした
2
5
0
mの等高線を使って生成したテ イジヲル標高デ -9に被せて作成。 Aは南西から見たもの。手前はシュテフ工ン氷
3
9
1
0
m
),Bは南東から見たもの。氷原
河、一番奥の高い山が、パヲゴニアの最高峰モンテ・サン・ヴァレンティン (
の中央を山脈が西から東へ斜めに横断しているのがよく分かる。手前の氷河はパレッド・ノルテで、右奥の高い山が
モンテ・サン・ヴァレンティン。氷原の西側に分布する溢流氷河の面積が一般に広いのが見て取れる。
ε
3 データと方法
定した。 しかし、 1
9
8
0年 代 か ら 1
9
9
0年 代 に か け
北パタゴニア氷原では 1
9
4
4
/
4
5年 の 南 半 球 の
て氷河の後退は著しく、氷河末端付近の斜め空
1
9
7
4
1
7
5年 の 垂 直 空 中 写 真 と の 比 定 が 困
夏に、アメリカ陸軍航空部隊によって撮影され
撮写真と
T
r
i
m
e
t
r
o
g
o
nA
e
r
i
a
l
たトライメトロゴン空中写 真 (
難になり、精度が落ちるようになった。その後、
P
h
o
t
o
g
r
a
p
h
y、垂直空中写真に加えて、左右両方の
1
9
9
7
/
9
8年 に チ リ 空 軍 空 中 写 真 測 量 局 (
S
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r
v
i
c
i
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A
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o
f
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o
g
r
a
m
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r
i
c
oC
h
i
l
e
n
o,
FACH) が 縮 尺 約 7万
分 の lの白 黒 空 中 写 真 を 撮 影 し た の で、 こ の 空
9
8
6, 1
9
9
1, 1
9
9
5, 1
9
9
6, 1
9
9
9,
中写真を使い、 1
2
0
0
0年 撮 影 の 空 撮写 真 の 再 判 読 を 行 い 、 い く つ
斜め空中写真も撮ったもの)が一番古いリモート・
セ ン シ ン グ ・ デ ー タ で あ る 。 その後、
1
9
7
4
1
7
5に
チリ軍地理局 (
I
n
s
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i
t
u
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oG
e
o
g
r
姐c
oM
i
l
i
t
a
rd
eC
h
i
l
e
)
が 縮 尺 約 6万 分 の lの白 黒 垂直空中写真を撮り、
こ れ を 基 に 等 高 線 間 隔 50mの 5万 分 の lの 地 形
かの氷河の末端位置を修正した。そして後退距離、
9
8
0年 代 に 作 成 し た 。 こ れ に 氷 河 の 輪 郭 や
図を 1
面積を再計測した。従って、いくつかの氷河では
末端が描かれているが、その後の現地調査や元の
以前に発表した論文の数値と変わっているものが
空中写真の判読により誤りがいくつかあるのが判
ある。当然、本論文に示されている数値が最新で
明した。
正しいが、以前の議論が根本から覆るような数値
1
9
8
4年からアニヤが空撮を始め、その後、 1
9
8
6
年
、 1
9
9
0年、 1
9
9
3年、 1
9
9
5年、 1
9
9
8年、 1
9
9
9
の変更はない 。
斜 め 空 撮写 真の末端は撮影年度が同じ垂直のリ
年と続け、前述のように 2
1の 溢 流 氷 河 の 変 動 を
モート・センシング・データのほうが比定しやす
明らかにしている。斜め写真に写 っている氷河
いので、 2
0
0
1年 1
1月 の 空 撮 写 真 は 2
0
0
0年 3月
末端を地形図に直接書き入れるのは非常に難 し
0
0
3年 1
2月と 2
0
0
4
のランドサット画像を使い、 2
1
9
7
4
1
7
5年 の 垂 直 空 中 写真 に移写
年 1
2月の空撮写真は 2
0
0
3年 4月のランドサット
し、次に垂直空中写真と地形図を比べて氷河末
画像を使って、末端位置を同定した 。 ランドサッ
いので、最初に
端を地形図に書き込んだ。変動は異なった年度の
ト・データの分解能は 30mと粗く、影などの影響
地図を重ね合わせて抽出し、その距離と面積を測
もあるので、ディジタル解析による 末端 識 別 な ど
- 1
0
2-
ヒマラヤ学誌 N
o
.
8 2007
には利用していない。
るものと予測される 。次いで、サン・ラ ファエ ル
4 結果
9
9
1年
氷河の減少が目に付くが (
図 7)、同時に 1
以降の停滞・前進・後退・停滞が特徴的で、この
表 1に 6
0年間の末端後退距離を 一括して示す。
しかし、氷河末端の後退は一様ではなく部分部分
ような変動は北氷原の他の氷河には見られない。
で起きるのが普通なので、距離に加えて後退面積
9
4
5
1
9
7
5年は約 400m前進しているので (
細
たが、 1
0年間の後退傾向を詳しく見る
を表 2に示す。6
ために、表 2は計測年度毎に細かく変動を示して
くなったので面積は減ったが)、実質的には 30年
間での後退である 。 これは北氷原でもっとも距離
いる 。感覚的には l次元の距離の方が分かりやす
いが、これは氷河の偏に影響されやすい。従って、
0 2000年ぐらいまで末
の長い後退である (
図 8)
端が北東と南西の 2つに分かれて、それぞれ氷
基本的には変動の実体をより反映している面積で
以下 の議論を行なう 。末端変動により、末端が
河前縁湖でカービングしていたが、両末端、特に
レイチェル氷河の南西末端は約 6kmも後退し
長がかった南西末端の 1990年代の崩壊を伴う大
規模な後退により、 2つに分かれていた末端は 一
2つに分かれていたのが一つになったり、 一つが
2つに分かれたりする 。最近ではレイチェル氷河
(
G
l
a
c
i
a
rR
e
i
c
h
e
r
) とグアラス氷河 (
G
l
a
c
i
a
rG
u
a
l
a
s)
の末端が一つになり、カシェット氷河 (
G
l
a
c
i
a
r
つになり、氷河前縁湖も 一つにつながった。 2番
目に長い距離を後退したのはカシェット氷河で約
5
凶 で あ る 。現在は 2つの末端に分かれ、北末端
C
a
c
h
e
t
) が北末端と西末端の 2つに分かれた。図
は陸に上がり西末端のみが氷河前縁湖に突っ込ん
5は 2
1の氷河の 1944
/
45年(以後 1945と表記する。
でいる。
他の年代も同様)から 2004
/
05年の面積変動を
0年間の一般的な傾向は後退である
示す。過去 6
が、サン・ラファエル氷河の 1990年代の顕著な
停滞・前進を含め、いくつかの氷河で前進がある 。
m
)。括弧
表 1 北パタゴニア氷原溢流氷河の後退距離 (
内は年平均。
しかし、ピスシスタiJ<i
可(
G
l
a
c
i
a
rP
i
s
c
i
s)、HPN37](
河 (
G
l
a
c
i
a
rH
i
e
l
oP
a
t
a
g
o
n
i
c
oN
o
r
t
e3
)、レオン氷河
(
G
¥a
c
i
a
rL
e
o
n
) といった小さな氷河の前進は写真
を撮影したタイミングによる 一時的な見かけの可
能性が高い。一方
、1
9
9
1
9
4年のネフ氷河 (
G
l
a
c
i
a
r
、表 2では減少しているが、これは末端は伸
Nef
びているが幅が狭くなり、面積としては減少して
いるためである )、およびグアラス 7
]
(
i
可の 1
9
9
6
9
9
年(南末端) と 2000-02年の前進は、大規模な後
退の前に起きたもので、おそらくクレパスが開い
た結果と解釈される 。 グアラス氷河では 1994年
に現地調査で北末端が前進したことが報告されて
H
a
r
r
i
s
o
na
n
dW
i
n
c
h
e
s
t
e
r
,
1
9
9
8
)02005年の時
いる (
7の氷河がカービングしており、
点で 21のうち 1
大きな後退をしたのはカービング氷河である 。
図 5で顕著に目立つのは氷原の西側に位置する
サン・キンテイン氷河、サン・ラファエル氷河、
レイチェル氷河の変動である 。特にサン・キンテイ
ン氷河の面積減少は約 29km2と群を抜いており
(
図 6)、北氷原全体の面積減少の 30%弱を占める 。
2000年代に入ってから末端の崩壊が続いており、
面積減少と氷河前縁湖の拡大はますます加速され
一
103-
G
l
a
c
i
e
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P
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r
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o
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、
1
9
4
5
2
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SW
Gua1as:N
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4
3
)
3
8
0
0(
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3
)
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1
0
0
)
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4
9
)
2600(
4
3
)
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S
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1
c
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6
9
)
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5
0
0
2
9
0
0(
2
548
)
S
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7
)
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1
)
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n
i
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o
1
9
5
0(
3
3
)
HPN1
3
1
0
0
(
5
2
)
HPN2
3
0
5
0
(
5
1
)
HPN3
2900(
4
8
)
S
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1
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5
2
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1
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2
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E
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1
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5
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1
8
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1
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2
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5
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3
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1
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2
2
)
C
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1
o
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1
1
5
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1
9
)
C
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8
5
0(
8
1
)
W 3750(
6
3
)
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3
4
0
0(
5
7
)
Sol
e
r
c
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.850(
1
4
)
Leon
c
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.2
5
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4
)
F
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1
0
5
0(
1
8
)
E
x
p
l
o
r
a
d
o
r
e
と一一
c
a
.5
5
0(
9
)
事 1
9
4
5は 1
9
4
4
/
4
5
の南半琢の夏在意味する
南米チリ
北パタゴニア氷原の溢流氷河の 1
9
4
4
/
4
5
2
0
0
4
/
0
5年の変動とその要因(安仁屋政武)
表 2 北パタゴニア氷原の 1
倒らお05の面積変動(後退 k
m
"
)
P
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計(
但L2時期以上のデータを除く)
。従って、総計はそろぞれの時期田合計とは異なる。括弧向は 1氷河当たりの年平均桂退量。
1
9
4
5
2
0
0
5には末端付近の幅減少も吉まれるので、個々の氷河の 1945-2005の変動は必ずしもそれぞれの時期の査動量の合計と一致しない。
寧前の 0
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時期も含まれて
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ぜ「夜寝官官制
∞
ゆ 田
図 5 北パタゴニア氷原の 2
1の 溢 和J
く河の 1
倒4
/45年から 2 4
/
0
5年の面積変動。 1
似4
/45年を基準
k
m
'の変動を示す。
にその後の末端変動による面積の増減を示す。右側の Y軸の目盛り 1つが 1
下がれば後退、上がれば前進である。
-1
0
4-
ヒマラヤ 学誌 No.8 2007
図 6 サン・キンティン氷河の後退。氷河前縁湖の直径は約 6kmである。背景の水は太平洋。
1
切ら2
αl5年で約 20km
'の面積減少。
図 7 サン・ラファエル氷河の後退。フィヨルドの幅が狭くなるところまで後退している。 1
犯3年からお0
4
年まで約 1
5
∞ mの後退である。 Aの氷河上の線は 2
αl4年のおおよその末端位置。世界で最も赤道に近
い所に位置 している空イドウォーヲー氷河。
図 8 レイチェル氷河の 1
9
7
4年から 2
0
0
4年の変動。 A
:チリ軍地理局撮影の空中写真。下が北。氷河はまだ前縁湖を埋めていた。
B:北東末端はほぼ後退したが、南西末端(約 6畑,)はまだ湖を埋めていた。 C 衛星アスヲー画像。下が北。南西末
1∞m、幅約 370mである。0:(
南
端もなくなり末端が一つになった。たくさんの氷山が浮いているが、大きいのは長さ約 1
西より撮影)氷山もほとんど無くなった。湖の幅は約 1kmである。 1
9
7
4
1
7
5年から笈氾4
/
0
5年の 30年間で約臼∞m
後退した (
1似 ら1
9
7
5年はクレパス伸開により約 4
∞ m前進した)。
-1
0
5-
南米チ リ 北パタ ゴニ ア氷原の溢流氷河の 1
9
4
4
/
4
5
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0
0
4
/
0
5年 の 変 動 と そ の 要 因 ( 安 仁屋 政武)
図 9 ネフ氷河の後退。氷原の東側に位置している氷河で 1
9
9
4年末に末端大崩壊を起こした。崩壊前に末端が湾
9
路 Z防 年 で 約 4
αl
O
mの後退。Bの写真は冬で、うっすら
曲していたので、浮いていたと解釈される。 1
と雪が積もり、氷河前縁湖には薄氷か張っている。湖岸が黒いのは森林に覆われているため。
図1
0 グアラ ス氷河の後退。加 2
心4年の聞に末端大崩壊が起き、氷河前線湖は氷山で一杯となっている。
∞
1
9
8
6
2 5年で約 2000mの後退である。 Aの氷河よの線は 2
0
0
4年のおおよその末端位置。
末端大崩壊は氷原東側に分布するネフ氷河で
動の特徴を議論・考察する 。次に隣 り合いながら
も 1994年に起きており (図的、最近ではレイ
チェル氷河のすぐ南に位置するグアラス氷河でも
2
0
0
2
0
4年に発生している(図 1
0
)。 シュテフェ
異 なった変動をしているサン・ラファエル氷河 と
サン・キンテイン氷河について、そしてデブリ・
カバー氷河について議論・考察する 。
G
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n) は 1986年から活発に末
ン氷河 (
端が崩壊しているが、特に 1999年以降は加速さ
5
・
1 氷原東西の変動
れ、この傾向はしばらく続くと予測される 。
1)氷原の西側に分布する氷河の変動
5 議論・考察
G
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)、 レ イ チ ェ ル 氷 河 、 グ ア ラ ス 氷 河、サ
このグループには北から、グロッセ 7
]
(
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可(
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パタゴニア氷原は偏西風帝に位置 し、背稜山脈
ン・ラファエル氷河、サン・キンテ イン氷河、ペ
が南北に走 っているので、氷原の東西で気象・気
ニート氷河 (
G
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o)、HPN1氷河 (
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nandSugden,
1993)
。 また、
候が全 く異なる (
山脈は氷原の東縁近くに分布しているので、一般
)
、 HPN27](i
可
、 HPN3氷河、
H
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に氷原の西側に位置する氷河の j
函養面積が広く、
み取れるのは、 全体として西側に分布する氷河の
東側は狭い。 また、 東側には氷爆をもっ氷河が多
い。 このような特徴からここでは東西 に分けて変
後退が東側よりかなり大きいことである 。氷河当
シュテフェン氷河が含まれる 。図 5から顕著に読
1km2で東側
た りの 60年間の平均後退面積は約 8.
- 1
0
6-
ヒマラヤ学誌 NO.8 2007
2 と比べると 4倍強である 。 これは南パ
の約 2km
に浮かないという定説 (
e
.
,
.
g Va
nd
e
rVeen,1
9
9
6)
タゴニア氷原では東側の後退が大きいのと非常に
Ani
y
ae
ta
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.,1
9
9
7)
。
特に前述のサン・
対照的である (
を覆すものである (
Wa
町e
ne
ta
l
.,2
0
0
1)
。 コロニ
キンテイン氷河、サン・ラファエル氷河、レイチェ
年代に左側に氷河前縁湖が形成され、後退が活発
ル 氷 河 が 目 立 つが、 HPN1氷河、 HPN2氷河も
化している 。2000年代には陸地の部分が大きく
1
9
8
6
1
9
9
1年に大きく後退している 。一方
、 HPN3
後退した。アルコ氷河は表 lの後退距離では1.3km
ア氷河は陸地に末端があり安定していたが、 1980
氷河は 1990年代の終わりに末端がかなり崩壊し、
と長いが幅が非常に狭く、面積にすると 60年間
氷河前縁湖は氷山で埋まった 。ベニート氷河は北
でほとんど変化がなく、変動量 は北氷原で最小で
氷原で数少ない陸地に末端がある氷河で、後退は
ある 。
緩慢である 。
レイチェル氷河では 2000年から 2004年にかけ
ド・スール氷河は末端が厚いデブリに覆われてい
エクスプロラドーレス氷河、アルコ氷河、パレ ッ
て興味ある変動が空撮と衛星データから捕らえら
る。 フイエロ氷河もデブリに覆われている 。末端
れた 。末端が 3つに割れ (
2
0
0
1年 3月)、左端の
が厚いデブリに覆われている氷河は多くの場合、
2
0
0
1年 9月)、
ものは前進してからカーピングし (
表面低下の結果である 。つまり、表面が融けるこ
長さ約1l00m,幅約 370mの巨大な氷山となった
とにより、氷体内に取り込まれていたデブリが表
(
図 8C参照)
。 末端が氷河前縁湖のなかで 3つに
面に露出して集積することにより、デブ リ
・ カ
分かれ、 左端が左側へカーブしたことは、この末
ノくーになる 。 しかし、エクスプロラドーレス 7
k
i
可
端が浮いていたことを示している 。 この巨大な氷
での流動観測結果によると、デブリの厚 い末端付
山は その後、氷河前縁湖の中を漂い (
流出水路が
近も活発に動いており (
青 木・津柿, 2006)
、こ
北東と南西の 2箇所にあるので、強い風によ って
れがこの氷河の変動が小さい理由である 。 このこ
漂うと理解できる )、氷河末端付近に再度漂い戻 っ
とからパレッド・スール氷河、アルコ氷河で変動
2004年 7月)
、 湖流によ って時計回りに
た時は (
が小さいのもデブリによる太陽光の遮断効果に加
約 150度回転した。 これは氷河から排出される水
えて、活発な流動がある可能性も考えられる 。
と湖流が複雑に絡み合った結果と解釈できる 。 こ
の時までに小さな氷山はほぼ全部溶解 /流出して
5
・2 サン・ラファエル氷河とサン・キンティン
いる (
図 8D参照)
。
氷河
南北に隣り合うサン・ラファエル氷河 (
北側)
2
) 氷原の東側に分布する氷河の変動
とサン・キンテイン氷河 (
南側 ) の変動は非常
このグループには、北からエクスプロラドー
に対照的で興味深い。サン・キンテイン氷河は
レス氷河 (
G
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x
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s)
、フィエロ氷j
可
1
9
4
5年以降、 1
9
7
5年から 1
9
8
6年までは速度が若
(
G
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rF
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o)
、レオン氷j
可、ソレール氷河 (
Gla
c
i
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r
干遅くなったが、かなり 早い速度で面積が減少し
S
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e
r
)、ネフ氷i
可、カシェット氷河、コロニア氷
た。 1990年代始め、末端の 一部で前進が報告 さ
河 (
G
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rC
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n
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a)、アルコ氷河 (
G
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れたが (
W
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巴r
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n,1996)
、これは末
パレ ッ ド・ノルテ氷河 (
G
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rP
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r
e
dN
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t
e)
、パレッ
端崩壊前の見かけの前進であった (
Aniya,2001)
。
ド・スール氷河 (
G
l
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i
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rP
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r
e
dS
u
r)
、ピスシス氷
現在氷河前縁湖にはテーブル状の氷山がたくさん
河が含まれる 。
このグル}プではカシェ ッ ト氷河とネフ氷河が
浮いており、活発なカービングで後退を続けてい
大きな後退をしたが、他の氷河は非常に緩慢な後
径数キロメートルの大きな湖となることが予測さ
退を続けているのが特徴である 。東側のグループ
れる 。
る (
図 6参照)
。 この調子 では 1
0
2
0年後には 直
2弱
の氷河当たりの平均後退量 は小さく、約 2km
一 方 、 サ ン ・ ラ フ ァ エ ル 氷 河 は 1945年 以 降
である 。ネフ氷河は 1993年 1
2月の空撮では氷河
大きく後退したが、その変動は ユニークである
前縁湖の中の末端が湾曲しているのが認められ、
(
表 2, 図 5参 照 )
0 1975年から 1991年の聞は、
1994年の初めに大崩壊を起こしている 。末端が
1
9
7
5
8
6年 で 2.
2km後 退 (
2
0
0m!年 )、 1986-91年
湾曲 したのは浮いている証拠で、温暖氷河は 一般
で 1500m (
3
0
0
m!年) とパタゴニアで も1. 2を
- 10
7-
南米チリ・北パタゴニア氷原の溢流氷河の 1
9
4
4
/
4
5
2
0
0
4
/
0
5年の変動とその要因(安仁屋政武)
争うスピードで末端が後退したが、その後変動パ
9
9
1
9
6年
ターンは大きく変化した。すなわち、 1
氷河、東側にあるフィエロ氷河(デブリは比較的
薄い)、そして氷原の南東縁にあるパレッド・スー
9
9
6
9
9年
、 2
0
0
2
0
4年は前進
は停滞、その後の 1
ル氷河とアルコ氷河である。グロッセ氷河以外は
9
9
9
2
0
0
0年は最大で 450m、2
0
0
0
0
2年は
した。 1
50m後退
末端の部分は異なるが、やはり最大で 4
氷原の東側に分布している 通常、末端のデブリ
が厚い氷河は停滞しているか後退していることが
多い。現在は氷河前縁湖が形成されているグロッ
9
8
0年代後半と比べ
している。このスピードは 1
られるぐらいの早さである。サン・ラファエル氷
河はカーピングが活発で (Wa
町田 e
ta
,
.
l1
9
9
5
)、小
さい氷山を多量に生産するのが特徴的である。
O
セ氷河を除き、 4つの氷河の末端は陸地にある。
この中でもグロッセ氷河は消耗域では白い氷が
全く見えない程、全体が厚いデブリに覆われてい
このようなサン・ラファエル氷河の後退速度か
て、氷河による侵食の大きさを物語っている。一
e
n
t
e
r
i
s(
1
9
9
9)は氷河末端がほぼ浮いてい
ら
、 V
たのではないか、と示唆している。もしそうだと
般的にデブリの厚さが数センチを越えると太陽光
すると、 1
9
9
0年代からの氷河の停滞・前進・後
退のサイクルは以前言われていた 1
9
7
0年代の降
W
a
r
r
e
n,
1
9
9
3
;W
i
n
c
h
e
s
t
e
ra
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d
雨量増加によるもの (
,1
9
9
6
;安仁屋・佐藤、 1
9
9
6
) ではなく、フィ
H
a
r
r
i
s
o
n
ヨルドの地形によるコントロールの可能性が高い
(
A
n
i
y
a
,
2
0
0
1
) 1
9
9
1年頃に氷河後退はフィヨルド
0
の幅カ汚夫まるところでストップした。その後:、フィ
ヨルドの幅が変わるところ付近を境に、停滞・前
進・後退を繰り返しているからである。
雨氷河の i
函養域は氷原の西側にあり、お互いの
流域界もはっきりしないくらい、同じような地形
条件のところに位置している サン・ラファエル
O
氷河は塩分濃度は薄いが海に、一方サン・キンテイ
線の遮断効果が大きくなり、下の氷は融け難くな
e
.
,
.
gM
a
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t
s
o
ne
ta
l
.,1
9
9
3
)0 そのため 1
9
9
1年頃
る (
9
8
6年
までは後退はゆっくりであった。しかし 1
頃に氷河前縁湖が形成され、氷河表面は凹地や池
が多く形成されアパタのような地形となった。小
さな池は拡大してくっつき大きな池へと成長し、
やがて氷河前縁湖とつながり、前縁湖は拡大し
ていった。 i
胡の拡大は最近加速されている。一
方、同じような地形的位置にあり東西に隣り合っ
9
9
6
9
9年で
ているエクスプロラドーレス氷河は 1
少し後退したが、 1
9
7
5年からその末端位置に顕
著な変化が見られない(表 2
)。この氷河は末端
のデブリが厚いにも関わらず、流動が活発である
ことが、最近の観測から判明した(青木・浮柿、
ン氷河は淡水湖にカーピングしている O 二つの変
動の違いが特に顕著になったのは、サン・ラファ
2
0
0
6
;A
n
i
y
ae
ta
l
.,2
0
0
7
)。このため、末端の位置は
エル氷河の末端が後退によりラグーナからフィヨ
2
0
0
0
0
3年の現地調査では氷河がかなりの速度で
融け始めていることが観察されたのではmyae
t
ルド内に引っ込んで来た 1
9
8
0年代からである。
したがって、 i
函養域の条件に違いがないのに末端
変動が異なるのは、サン・ラファエル氷河がフィ
ヨルドに末端があるからと解釈できる。
すなわち、末端の後退はフィヨルドの幅が狭く
なるところで止まり氷河は停滞した。停滞してい
ほとんど変化していないと解釈される。しかし、
0
0
5
)、いずれは後退すると判断される。
a
l
.,2
このような隣り合った氷河の変動がかなり異
なっている理由にーっとして、冬の降雪パターン
が考えられる。 2
0
0
4年 7月と 2
0
0
5年の 8月(南
半球の冬)に行なった空撮の際、氷原の東側の方
る間に氷河は成長し前進した。前進によりフィヨ
ルドの幅が広くなるところへ来ると氷河が広がり
が降雪が多かった。またいくつかの冬のランド
薄くなって浮きやすくなり、カービングがよ り活
1
2日
、 2
0
0
3年 7月 2
5日など)、氷原の東側の方
が白い。つまり西側にあるグロッセ氷河の方が東
発になる。その結果後退が始ま り、幅が狭くなる
9
9
9年 7月
サット衛星画像を見ると(例えば、 1
所付近まで後退する。
側にあるエクスプロラドーレス氷河よりも冬の降
雪が少ないことが推測される。夏の降水は西側の
5・
3 デブリ・カバー氷河
方が多いが、雪になるのは限られている。
北氷原には末端付近がデブリに厚く覆われた氷
河が 5つある。サン・ヴァ レンテイン 山の北に位
氷河の変動は非常に少ないが、カービング氷河で
置しているグロッセ氷河とエクスプロラドーレス
9
9
9年以降緩慢な後退傾向
あるフィエロ氷河は 1
フイエロ氷河、パレッド・スール氷河、アルコ
-1
0
8-
ヒマラヤ学誌 No.8 2007
にある。アルコ氷河は距離にすると 長いが、面積
H
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na
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9
9
8
) また、
えられた (
では北氷原で変動が一番小さな氷河である O
1
9
9
0年代のサン・ラファエル氷河の停滞 ・前進
6 氷河後退の要因
1
9
9
3
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n,
1
9
9
6
;安仁屋・佐藤、
0
の要因もこの雨量増加と考えられ (
e
.
g
.,Wa
町e
n,
氷原上はもちろん、その近くでも長期の気象観
測データ(気温、降水量)がないので、直接変動
の要因を気候との関係で考察するのは困難であ
る。北氷原の氷河上・末端付近での気象観測は
1
9
9
6
)、氷河の応答時間が 2
0年程度と見積もら れ
i
y
aa
n
dWakao,1
9
9
7
)。 しかし、この 1
970
た(An
年代からの雨量データが誤りである可能性がチ リ
大学気象学教室のフエンサリーダ教授に指摘さ
GRPP (
G
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)
れた (
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9
9
9年 1
1月
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a
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o,
による 1
9
8
3年
、 1985年
、 1998年 の ソ レ ー ル 氷
C
h
i
l
e
)。その後、サン・ラファエル氷河の変動から、
河 (
K
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b
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y
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ia
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i
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o,1
9
8
5
;Fukamie
ta
l
.,1
9
8
7
;
Matsumotoe
ta
,
.
l2
0
0
1
) と 1983年
、 1985年のサン・
ラファエル氷河 (
O
h
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.,1
9
8
5
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,
.
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1
9
8
7
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u
j
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ie
ta
l
.,1
9
8
7
) のデータしかない。こ
4週間に限られているので、
れらはいずれも夏の 3
年々の変動を見ることはできないのは勿論、通年
の気象を論じることすらできないのが現状であっ
た。しかし、最近、松元・佐藤 (
2
0
0
6
) によりよ
クスプロラドーレス氷河の末端(標高 182m) で
の通年観測に成功した。それによると 2005年の
年平均気温は 7.5'C 、夏は 7~ 16t、冬はー 1~ 7
'
C、
雨量は約 3000mmで、この付近が予想していた以
上にかなり温和で、あることが判明した。このデー
タが周りとどのような関係にあるか、あるいは長
期の傾向の中でどのような位置を占めるかは不明
である。
南半球では過去 100年間で約 0.5tの温度上昇
が報告されている(J
o
n
e
se
ta
l
.,1
9
8
6
)。ローゼン
也(
R
o
s
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n
b
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he
ta
l
.,1
9
9
5
) はパタゴニ
ブルート f
1
'から 5
5
'の間で太平洋岸から大
ア地方の南緯 4
西洋岸にまたがる 1
7の気象観測所の過去 5
0~
1
0
0年のデータを使って気候変動の解析を行なっ
た。それによると南緯 4
6
'以南では温度が 0.
4~
1
.4
'
C上昇しており、氷原の束倶j
i (風下)では南
へ行く程、温度上昇が大きくなる。しかし、この
気温変動では北氷原の西側に分布する氷河の後退
の方が東側よりもかなり大きいことを説明できな
い。偏西風帝が南へ移動して西風が弱くなり降水
量が減少した結果であろうか。
北氷原の風上側、西約 100kmのところにカ
C
a
b
oR
a
p
e
r
) 測候所がある。こ
ボ・ラベール (
この雨量記録では、降水量が 1970年代に 1960
年代の倍近くに増えている (
W
a
r
r
e
n
,1993)。こ
れが 1994年のグアラス氷河の前進に理由と考
雨量ではなくフィヨルドの地形である可能性が示
i
y
a,2
0
0
1
)、今回の変動でそれが有力
唆され(An
な要因であることが判明した。
7 おわりに
北パタゴニア氷原に分布する 2
1の溢流氷河の
1
9
4
4
/
4
5
2
0
0
4
/
0
5年の変動を明らかにした。その結
果、過去 60年間の変動は、一般的な後退である
が一様ではなく、氷河による強弱が大きいことが
判明した。特に後退が大きい氷河では末端が大崩
壊を起こしたケースが認められた。また一部の氷
河では一時的な小前進も見られた。全般的に後退
は1
9
9
0年代以降に大きくなっている。この間の
面積減少は約 1
0
1
k
r
ぜで、この 1
/
3弱が北氷原最
大の氷河であるサン・キンティン氷河の後退によ
るものである。一方、サン・キンティン氷河のす
ぐ北に位置する同規模のサン・ラファエル氷河の
9
9
1年ご
変動はユニークであった。すなわち、 1
ろまでは北氷原で 1
, 2を争うスピードで後退し
たが、 1990年代から 2000年代にかけて停滞・ 前
進・後退・前進という北氷原でも特異な変動をし
た。この大きな理由として考えられるのは、気象・
気候よりもフィヨルドの地形(主に幅、深さも関
係つ)である。
全体の後退傾向は気候変動、すなわち温暖化へ
の応答と解釈できるので、今後もパタゴニア氷河
の後退は続き、加速されるものと予測される。特
にサン・キンテイン氷河やシュテフェン氷河は大
規模な末端崩壊がいつ起きても不思議で、はない状
態にある。
謝辞
1
9
8
4年以来のパタゴニア調査の空撮にはチ リ ・
C
o
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q
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)
パタゴニアの玄関の 町 コジャイケ (
- 109-
南米チリ
北パタゴニア氷原の溢流氷河の 1
9
4
4
/
4
5
2
0
0
4
/
0
5年の変動とその要因(安仁屋政武)
に あ る ド ン ・ カ ル ロ ス 航 空 会 社 (T
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LTD)にお世話になっている。
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.
とくにパイロットのロベルト・レオン氏 (
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) には危険なパタゴニアの風の中を何回も空
撮に飛んでもらっている。
Aniya,M.,S
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o,H
.,Naruse,R
.,Skvarca,P
.and
.(
1
9
9
7
)
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.(
19
9
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引用文献
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畢柿教伸 (
2
0
0
6
) :D-GPSによ る
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s氷 河 の 流 動 観 測。「南米パタ ゴニ
Aniya,M.,Dhakal,A
.S
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k,S
.andNaruse,R
.
ア氷原における完新世の環境変動の解明 J平成
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tandLandsati
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America,u
CanadianJournalofRemoteSensing26(
6
)
平成 1
7年度科学研究費補助金(基盤
研究 (
A
)
) 研究成果報告。 3053。
司
安仁屋政武・佐藤宏昭 (
1
9
9
6
) 南米・パタゴニ
1
)・
ア氷原における最近の氷河変動.雪氷、 58(
5
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1
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11
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4
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20
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6
) 北パタゴニア氷原
松元高峰・佐藤軌文 (
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エクスプロ ラドーレス氷河流域における年間水
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文・気象観測。「南米パタゴニア氷原における
完新世の環境変動の解明」平成 1
5年度
平成
目
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Aniya,M.,Enomoto,H
.,Aoki,T
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, Matsumoto,T
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1
7年度科学研究費補助金(基盤研究 (
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究成果報告。 6
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5年の変動とその要因(安仁屋政武)
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