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ベネズエラの動向(10 月 1 日~10 月 31 日)
国際協力銀行 ニューヨーク駐在員事務所 2010 年 11 月 22 日 ベネズエラの動向(10 月 1 日~10 月 31 日) I. 1. 政治・経済 チャベス大統領、国有化促進へ 2. 財務大臣、2011 年予算案を議会に提出 1 2 3 4 5 チャベス大統領は、9 月の議会選挙の結果を踏まえ、10 月以降、社会主義政策を一段と強化し、 国有化を更に促進する意向を表明。毎週日曜日放送のテレビ番組「Aló, Presidente」(放送日 10 月 3 日)では、ベネズエラを農産工業大国に発展させるため、大土地所有者に対する新たな統制 を発表。ベネズエラ西部のララ州、アプレ州及びスリア州にある遊休地 25 万ヘクタールを食糧生 産増加のため接収すると表明。更に、番組内でスペイン系農産物サプライヤーの Agroisleña 社を 不当利益行為、貯蔵独占等の理由から接収を指示し、社名を「Agropatria」へ変更させた。 同大統領は、国内の食糧不足対策として 9 日に英系食品メーカーVestey Group 子会社で国内最 大手の畜産農家 Agroflora 社を1、10 日には石油化学企業 Veneco 社2及び肥料製造企業 Fertinitro 社3を接収。政府は、これらの接収が農業セクターにおける肥料、種子の生産・流通独占 化の解消、中小農家向け支援の拡大、農産物の価格安定につながる政策的な措置と説明してい る。 なお、農業セクター以外では、15 日、中小銀行 Bancoro が高損失、不採算ローン等のため接収。 25 日には、米系ガラス容器メーカーOwens-Illinois 子会社が労働者搾取及び環境破壊の理由で 接収4。31 日には、Sivensa 子会社の鉄鉱メーカーSidetur5社が価格の投機的実行のため接収。そ の他、ホテル、自動車部品メーカー、耐火物処理企業及び住宅不動産も接収対象となっている。 アナリストは、「チャベス大統領が国内の食糧不足、高インフレ率等の国内問題に取組むため、更 なる経済統制を進めようとしている」と指摘。また、「2012 年の大統領選挙を視野に、同大統領は、 支持基盤強化のため当該政策促進している」と言う Ecoanalytica の推計によると、財政負担は 270 億ドル(過去 5 年間の平均 GDP の 11.4%を占める)に上る。 10 月 14 日、ジョルダーニ財務大臣は、2011 年予算案を議会に提出。当該予算案は、2010 年予 算額より 28%増の 475 億ドル相当(1 ドル=4.3BsF で換算、以降同様)で、下記の基準で計上され たもの。 但し、政府は、同社に補償金を支払うと表明している。 Veneco は、2007 年に発生した C.F.キルチネル亜大統領への不正政治献金事件に関連しているベネズエラ人ビジネスマン 2 名により一 部所有されている。 Fertinitro は、Pequiven(持分 35%)、米 Koch(35%)及び伊 Snamprogetti(20%)により所有。 一部では、チャベス大統領が同社の大口顧客であるベネズエラ大手食品メーカーPolar 社をターゲットにしていると見られている。Polar 社は、ベネズエラの非石油 GDP の約 3%を生産。 9 月の議会選挙で最多投票数を獲得した野党候補の Maria Corina Machado 氏の親戚が同社の取締役会に所属。 1 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ II. 1. チャベス大統領、8 ヶ国訪問へ 7 ル切下げを見込んでいる) ⑦ 国内外債務発行可能額: 540 億 BsF(126 億ドル) ジョルダーニ財務大臣は、ベネズエラの主要歳入源である原油セクターが市場変動の影響を受け やすいことから、予算を慎重に設計しており、原油依存度を軽減するため、歳入源多様化を目指し ていると説明。 一方、市場関係者は、既に習慣となっている歳入額の過少評価により、政府が予算外の歳入を自 由使用できる仕組みが確立していると指摘。また、政府支出の増加によりインフレ率の上昇が促 進されると懸念されている。 なお、ベネズエラ議会は、今年 12 月上旬に当該予算案を承認する見込み。 外交 6 GDP 成長率: 2% (市場は、縮小傾向または無成長と予測) 原油価格: 40 ドル/b (現在の油価は、1 バレル=70~80 ドル) 原油生産量: 3.18 百万 b/d (市場は、2.1~2.5 百万 b/d と推計) 原油輸出量: 2.7 百万 b/d インフレ率: 23~25% (市場は、30%前後と推計) 為替水準: 現状維持の 1 ドル=2.60 BsF. / 4.30 BsF. (市場は、2011 年 1 月にもボリバ 10 月 12 日、チャベス大統領は、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、イラン、シリア、リビア、アルジェ リア、ポルトガルの 8 ヶ国を訪問。 ロシア:14 日、チャベス大統領は、メドベージェフ大統領及びプーチン首相と会合し、15 の協力協 定に調印。その中には、今年 4 月に合意された原子力発電建設6やベネズエラによる兵器購入7等 も含む(米国務省は、ベネズエラの露兵器買収そのものよりも、地域への拡散を懸念視)。チャベ ス大統領は、ベネズエラが世界の潮流を意識した原子力・太陽・風力エネルギー開発を実施する とコメント。一方、メドベージェフ大統領は、原子力エネルギー協力がロシアの重要政策の1つと言 及。更に、豊富な原油資源を保有するベネズエラの原油価格変動や旱魃の影響を受けやすい水 力発電所への依存を軽減するものであると指摘。 ベラルーシ:16 日、チャベス大統領は、ルカシェンコ大統領を訪問し、原油、鉄鋼、住宅等分野に おける 6 つの協力協定を締結。ベネズエラは、今後 3 年間でベラルーシ向けに原油 30 百万トンを 供給することを決定し、更に、両国 J/V の Petrolera BeloVenezolana に対し、マラカイボ港等にあ る油田の開発権を承認。その他、ベラルーシ向けアルミ輸出も検討。 ウクライナ:18 日、チャベス大統領は、ヤヌコビッチ大統領と航空宇宙分野での協力協定について 会談。更に、チャベス大統領は、ウクライナ原油ガス企業に対しベネズエラでの原油・ガス掘削活 動を承認。一方、ウクライナは、ベラルーシ向けのベネズエラ原油を Odessa-Brody パイプライン を通じて運送することを約束。 イラン:19 日、9 回目となるイランへの訪問でチャベス大統領は、アハマディネジャド大統領と二国 間戦略的関係の強化、地域協力、西洋経済を除外する外交政策等につき、意見交換。両国は、ベ ネズエラ原油をアジア・欧州地域に輸送するための共同運搬事業を設立することで合意。その他、 エネルギー、産業、住宅等分野における 11 の協力協定を締結。 ロシアは、同国の原子力技術を輸出する方針をもち、イランで初の原子力発電所を完成させている。更に、中国、トルコと原子力発電所 建設の契約を締結するとともに、インド、チェコも協議を行っている模様。 ベネズエラは、2005 年よりロシアから 40 億ドル相当の武器を購入している模様。 2 III. 1. 石油その他の資源セクター PDVSA、30 億ドル債を起債 2. 9 10 11 10 月 12 日、PDVSA は 30 億ドルの社債(期間 2017 年)8の目論見書を発表。当該債券は、1933 年米国証券法のレギュレーション S 及び規則 144 に9基づいて額面価格で販売され、利率 8.5% (半年賦)で期限は 2015 年、2016 年、2017 年。また、政府は、20 日に当該社債を免税対象にす る政令を発表。同社は、同債券への買い注文が 69 億ドル超であったと発表。為替取引レートは、 1 ドル=4.3Bs.F が適用される。 PDVSA は、資金使途について設備・操業投資に充てられると説明しているものの、チャベス大統 領は一部資金を住宅プロジェクトに充当すると発表。 市場アナリストは、今回の起債に対する強い需要について、中銀が 10 月中に 2 度の準備預金率 引下げ(1 回目は 23%から 20%、2 回目は 17%へ)を実施したことが関連と分析。更に、同債券 は、流通市場でドル建での取引が可能となるため、利回り 16.5~18.5%、取引バンド 70.2%~ 75.8%、実効為替レート 1 ドル=6.0~6.5BsF に達することが予測されている。Fitch は、PDVSAの 強固なバランス・シート、大規模な確認埋蔵量、北米市場から近いという地理的メリット等を評価し、 当該債権及び上記の債券スワップを「B+/RR4)」と格付する方向。市場アナリストは、PDVSA が、 支出拡大や社会・税貢献等が増加している一方、生産能力の低迷及び原油安により、債務発行 せざるを得ない状況になっていると懸念。 PDVSA、2010 年上半期の財政諸表発表 8 シリア:21 日、チャベス大統領は、アル・アサド大統領と経済協力協定等につき協議。両国政府は、 2007 年に合意されたシリア中部にある Homs 市での製油所建設(目標生産量は 14 万 b/d)につ いても意見交換。更に、シリアは、米州ボリバル代替構想(ALBA)の連合加盟国としての参画希望 を表明。 リビア:21 日、チャベス大統領とカダフィ大統領は、10 の協力協定に調印。当該協定は、ALBA 及 びラ米・アフリカ諸国向けのベネズエラ・リビア投資共同基金(10 億ドル規模)設置を含む。 ポルトガル:24 日、チャベス大統領は、ソクラテス首相と再生可能エネルギー、住宅、農業分野等 における 4 億ドル規模の協力協定を締結。ベネズエラは、国内 4 ヶ所で風力発電開発プロジェクト を試みており、ポルトガルは当該プロジェクトへの協力を約束。一方、ベネズエラはポルトガルへの 原油供給を約束。 ベネズエラ外交筋は、今回の外遊は、チャベス大統領が本年 9 月 26 日に実施された議会選挙で の敗北に対する国民焦点を変えようと、自身の社会主義政策が健全であることをアピールしてい ると分析。 10 月 18 日、PDVSA は、2010 年度上半期財政諸表10を発表。同社は、2010 年上半期の総売上 が前年同期より 47.2%増の 468 億ドルとなったと報告。但し、当該増加は、原油生産量の増加より も、油価上昇11及び為替レート切下げに伴うものと市場は分析。 今回の発行は、米 Citigroup が債券引受銀行となっており、2010 年のベネズエラ債券ランキングで Deutsche Bank 及び Credit Suisse を抜いて第 1 位となった。後者 2 行は、今年 8 月の 30 億ドル社債発行を引受けている。 但し、米国証券法には登録せず、Euroclear、Clearstream 及び DTC が管理することとなっている。 http://www.pdvsa.com 2009 年上半期の平均原油価格は 46 ドル/b、2010 年同期は 70 ドル/b。 3 なお、純利益は、社会開発支出12及び原油・石油製品購入費が年々拡大していることから、前年 同期より 14%減の 26 億ドルとなった(総費用は前年同期より 46%増の 388 億ドル)。社会開発支出 は、前年同期より 124%と大幅増加の 51.6 億ドルとなった。一方、操業・探鉱の支出は、前年同期 より 31.5%減の 52.3 億ドルとなっている。 以上 12 このうち国家開発基金(FONDEN)に 6.9 億ドルが移転されている。 本レポートは発表時の最新情報に基づいて作成されておりますが、情報の正確性又は完全性を保証するものではあり ません。また、レポートの内容は今後予告なしに変更されることがあります。予めご了承下さい。 4