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層の男

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層の男
テレビは他のメディア以上に“リラックス”
~生活時間調査「テレビと気分」から~
世論調査部(視聴者調査) 中野佐知子/小林利行/諸藤絵美 1.調査の概要
表 1 調査有効サンプル実数・サンプル構成比
「テレビと気分」調査は,
「生活行動」
めて同時に調査したもので,両者の直
全 体
性
と「気分」を生活時間調査の方式で初
接的な関連を明らかにしようと試みたも
のである1)。とりわけテレビについては,
年層による特徴を詳細に分析した。ま
た,他のメディア利用や行動時の気分・
男女年層
視聴時の気分・状態や,時間帯や男女
状態との比較なども通じて,日常生活
の中のテレビの現在値を明らかにした
いと考えている。さらに本稿では,メ
ディア利用以外の主な行動についても,
その気分・状態の特徴や曜日・男女年
*3
調査は,層化無作為 2 段抽出法で
職業
層による違いなどを紹介していく。
選んだ関東(1 都 6 県)20 歳以上の男
女 1,800人に対して,2008 年 10 月19
に行った。なお,調査の有効率が低
い男女 20 代について分析に必要なサ
ンプル数を確保するため,1,800人と
は別に補助サンプルとして男女 20 代
276 人を追加して調査を行った。有効
40
APRIL 2009
有職者
日( 日)・20 日( 月)の 2 日間を 対 象
月 曜
実 数
構成比
日 曜
実 数
構成比
1,035 人
1,049 人
男
511
女
524
126(58)
男 20 代* 1
男 30 代
101
男 40 代
87
男 50 代
84
男 60 代
93
男 70 歳以上
88
126(61)
女 20 代* 1
女 30 代
110
女 40 代
97
女 50 代
80
女 60 代
103
女 70 歳以上
73
農林漁業者
24
自営業者
83
販売職・サービス職
119
技能職・作業職
132
事務職・技術職
217
経営者・管理職
39
専門職・自由業・その他
55
主 婦
180
無 職
157
学 生
23
669
有職者*2
男有職者
400
女有職者
269
100%
49.4
519
50.6
530
(5.6)126(58)
9.8
99
8.4
91
8.1
85
9.0
93
8.5
93
(5.9)124(59)
10.6
108
9.4
99
7.7
81
10.0
107
7.1
76
2.3
24
8.0
87
11.5
120
12.8
134
21.0
214
3.8
39
5.3
55
17.4
182
15.2
165
2.2
23
64.6
673
38.6
404
26.0
269
100%
49.5
50.5
(5.5)
9.4
8.7
8.1
8.9
8.9
(5.6)
10.3
9.4
7.7
10.2
7.2
2.3
8.3
11.4
12.8
20.4
3.7
5.2
17.3
15.7
2.2
64.2
38.5
25.6
*1「男
20 代」「女 20 代」の実数については,20 代補助サンプルをあわせた数字。なお,
参考までに( )内に正規サンプルの実数を示し,構成比は正規サンプルのみの構
成比を示した。
*2「有職者」とは,農林漁業者から専門職・自由業・その他までをまとめたもの。
*3 今回,農林漁業者,経営者・管理職,専門職・自由業・その他,学生については,サ
ンプル数がとても少ないため,分析を行っていない。
数( 率)は 1,065 人(59.2 %)であった( 補 助
てもらう「配付回収法によるプリコード方式」
サンプルは含まない。内訳は表 1)。
で,具体的な項目は表 2 に示した。行動は原
調査方法は,行動・気 分の項目が 印刷さ
則,24 時間漏れなく記入してもらったが,気
れた 15 分目盛りの日記式調査票を配付して,
分については該当のものがない時間帯は空欄
当てはまる行動・気分の時間帯に線を記入し
にしてもらった。気分はプリテストを重ね,テ
レビ視聴と関係が深い項目として
抽出した“ リラックス”
“ 忙しい”
表 2 行動・気分の分類
1)生活行動
中分類
調査項目
略称
自宅にいた時間
在宅
すいみんをとる(30 分以上)
睡眠
洗面・入浴・着替えなどの身のまわりの用事,病院へ行く 身のまわりの用事
食事をする
食事
通勤,通学,その他の移動(往復とも)
移動
仕事をする,仕事上のつきあい,学校の授業・行事,
塾や家での勉強
仕事・学業
家事をする(炊事・掃除・洗濯,家族の世話,買い物,片付け)
家事
社会参加(PTA・地域活動・冠婚葬祭・ボランティアなど)
社会参加
会話・ 友人との会話・おしゃべり
交際 家族との会話・おしゃべり
趣味・娯楽・けいこごと・あそぶ,スポーツ,行楽・散策
友人との会話
家族との会話
レジャー活動
趣味・娯楽・けいこごと・あそびでインターネットを使う 趣味娯楽(ネット)
テレビ
ラジオ
NHK総合テレビを見る
NHK総合
NHK教育テレビを見る
NHK教育
NHK衛星放送を見る
NHK衛星
民放テレビを見る
民放テレビ
NHKラジオを聞く
民放ラジオを聞く
テレビ ワンセグを見る(NHK,民放を問わない)
新聞を読む
NHKラジオ
民放ラジオ
ワンセグ
新聞
雑誌・マンガ・本を読む
雑誌・マンガ・本
CD・MD・テープを聞く
CD・MD・テープ
ビデオ・DVDを見る
休息をとる
その他(具体的に)
リラックスした,くつろいだ
楽しい,ゆかいな
の 6 項目を設定した(各気分の調
査票上の表記は表 2 を参照)。ま
た,この調査ではテレビ・ラジオを
「NHK」と「 民 放 」に分けて項目
を設定したが,本稿では両者を合
わせて集計した「テレビ」
「ラジオ」
について報告する。
なお,本文中で使用した主な指
標の定義は,次のとおりである。
①行
為者率:1 日の中で,ある行動
(気分)を 15 分以上した
(感じた)
人が全体の中で占める割合
②平
均行為者率(30 分)
:15 分ごと
の行為者率を基本単位として,30
分ごとに平均化したもの
③ 全員平均時間量:その行動(気
分)をしなかった
(感じなかった)
人も含めた全員の平均時間量2)
ビデオ・DVD
休息
その他・不明
2.1日の“気分”
まず,今回の調査で設定した 6
2)気分
忙しい,時間に追われた
“楽しい”
“ドキドキ”
“ 集中”
“退屈”
忙しい
リラックス
楽しい
つの気分・状態について,人びと
は1日にそれぞれどのくらい感じて
ドキドキ
いるのか,また,どのような人が感
集中した,のめりこんだ
集中
じているのか,基本的な傾向をま
退屈な,つまらない
退屈
とめておきたい。
ドキドキした,ハラハラした
APRIL 2009
41
大多数が感じる“リラックス”と“忙しい”
次に多いのは,
“楽しい”で,特に日曜の行為
6 つの気分を1日に感じる人の割合(行為者
者率は 58%と半数を超える。続いて“集中”は
率)と1日あたりの時間量(全員平均時間)を
月曜・日曜とも4 割程度が感じているが,時間
表 3 にまとめた。月曜は,84%
表 3 気分の1日の行為者率と時間量(全体)
の人が“リラックス”,73%の人
月 曜
が“忙しい”とそれぞれ感じて
日 曜
行為者率 全員平均時間 行為者率 全員平均時間
おり,大多数の人が 1日のどこ
リラックスした,くつろいだ
84%
3 時間 46 分
87%
4 時間 55 分
かで感じている気分といえる。
忙しい,時間に追われた
73
4 時間 28 分
57
2 時間 24 分
楽しい,ゆかいな
41
1 時間 10 分
58
2 時間 10 分
集中した,のめりこんだ
38
1 時間 46 分
42
1 時間 20 分
退屈な,つまらない
14
25 分
13
24 分
9
10 分
12
15 分
日曜になると,
“忙しい”と感じ
る人は減少,一方で“リラック
ドキドキした,ハラハラした
ス”は時間量が長くなる。
図 1 1日の各気分の時間量(男女年層別)
<月曜・時間:分>
忙しい
ドキドキ
集中
10:38
37
1:24
37
2:15
9
2:04
15
1:58
1:22
13:34
13:09
12:42
8
11:05
4
1:17
1:30
4:25
1:23
12:41
1:26
1:20
3:37
2:51
女60代
40
1:28
3:18
4:41
女50代
12:26
2:21
2:03
3:39
5:16
女40代
16
9:28
3:27
5:51
14:28
2:37
36
3:18
5:09
女30代
13:28
48
25
1:36
55
1:22
5:15
女20代
23
53
4:31
1:10
23
3:09
3:05
男60代
55
2:13
55
3:17
5:59
男50代
11:45
2:11
1:07
3:25
5:47
男40代
25
1:46
3:49
6:52
男30代
<「気分」の合計時間>
退屈
1:10
3:46
5:14
男20代
女70∼
楽しい
4:28
全体
男70∼
リラックス
9:31
26
8:28
<日曜・時間:分>
2:24
4:55
男20代
2:21
4:57
男30代
2:15
全体
男40代
1:27
男70∼
1:33
女20代
2:40
1:25
1:20
54
4:24
女40代
3:27
女50代
3:32
4:51
10:16
15
9:27
1:35
1:27
2:57
2:10
4:09
1:48
1:29
23
2
29
10
12:57
12:17
15
1:03
1:19
1:01
46
12:19
24
28
4:38
13:23
11:37
1:18
2:58
3:56
47
30
3:25
4:04
2:24
1:15
1:49
13:00
48
1:48
1:53
1:34
4:50
3:20
女70∼
2:04
1:32
5:26
11:28
24
2:28
6:07
女30代
女60代
2:32
5:48
2:30
男60代
1:20
5:48
1:45
男50代
2:10
19
12:38
11:20
9:36
8:55
※グラフ中には「ドキドキ」の数字(分数)は表示していない。
42
APRIL 2009
量は月曜のほうが長い。
“退屈”
“ドキドキ”といっ
曜・日曜とも男性各層で長めの傾向である。
“楽
た気分は月曜・日曜とも1割前後の人が感じて
しい”は日曜の女 20 ~ 40 代で 3 時間前後と
いるが,他の気分と比べれば少なめであった。
長めである。また,
“退屈”は,全体でみれば
感じる人が少なめな気分だが,男女 20 代と男
“集中”は男性で,
“楽しい”は女性で長い
30 代では月曜を中心に 3 割近くが感じており,
時間量も男 20・30 代で 50 分前後ある。
次に,男女年層別に気分の傾向をみてみたい。
図1は,6つの各気分・状態の1日あたりの時間
60 代以上の高年層の特徴をみると,6 つの
量(全員平均時間)を積み上げたグラフである。
気分の合計の時間量が短い傾向がみられる。
グラフ右側には6つの気分を足し上げた時間量を
これは,気分の記入がなかった時間が多いこ
載せている。
とを示している。また内訳をみると,
“リラック
ス”の占める割合が高めであった。
男女年層別に“忙しい”と“リラックス”の時
間量の曜日差に着目すると,男30 ~ 50 代で
は,月曜は“忙しい”時間が大変長いが日曜に
3.メディア利用と気分
は減り,
“リラックス”時間が大幅に増える。逆
に女 30 ~ 50 代は,
“忙しい”
“リラックス”とも
ここからは,
(1)
テレビ,
(2)
ラジオ,
(3)
テレビ・
時間量の曜日差が小さく,日曜では最も“忙し
ラジオ以外のそれぞれについて,まずメディア
い”が長い層となる。
の利用状況をふまえた上で,気分との関係をみ
このほかの気分に注目すると,
“集中”は月
ていきたい。
図 2 テレビの行為者率と時間量(男女年層別)
%
100
時間
6:00
90
5:00
80
70
4:00
60
50
3:00
40
2:00
30
20
1:00
10
0:00
全体
男20
代
男30
代
男40
代
男50
代
男60
代
男70
以上
女20
代
女30
代
女40
代
女50
代
女60
代
女70
以上
全員平均時間:月曜
3:28
1:25
1:47
2:07
2:08
4:05
5:32
2:46
3:27
3:29
3:44
4:50
5:31
全員平均時間:日曜
4:17
2:17
2:53
4:09
5:10
5:18
6:06
2:51
3:26
3:16
3:41
5:32
5:40
行為者率:月曜
86
60
64
82
81
94
97
79
87
85
90
99
96
行為者率:日曜
89
70
77
86
89
96
98
82
86
87
90
98
96
全員平均時間:月曜
全員平均時間:日曜
行為者率:月曜
0
行為者率:日曜
APRIL 2009
43
(1)テレビ
聴が増えて6 割弱である。
視聴する人も,視聴時間も少ない男 20 代
男女年層別にみると,
「専念」視聴の割合が
テレビの視聴状況(図 2)をみてみると,1日
高いのは男70 歳以上で月曜・日曜とも7 割強で
のうちテレビを見た人の割合は,月曜は 86%,
ある。一方,
「ながら」視聴の割合が高いのは
日曜は 89%で,大半の人が日常的に接している
女性で,月曜では女 30・40 代,日曜では女 30
メディアである。曜日別では月曜より日曜が行
代で,視聴時間の 6 割強が「ながら」視聴であ
為者率は高く,全員平均時間も月曜 3 時間 28
る。なお,何をしながらテレビを視聴している
分,日曜 4 時間17分で,日曜のほうが長い。
かをみると,主に食事(月曜 36 分,日曜 40 分),
テレビ視聴は年層差が大きい。男女年層別
家族との会話
(月曜 27分,日曜 38 分),家事(月
にみると,月曜・日曜とも全体と比べて男女 20
曜 26 分,日曜 24 分)があげられる(表 4)。こ
代,男30 代で行為者率・時間量とも少なく,
の3 つの行動との「ながら」視聴は月曜・日曜と
男20・30 代の月曜の行為者率は 6 割台にとど
もに女 30 代以上で多く,女 30 代で家事との重
まっている。一方,男女 60 代以上は月曜・日曜
複時間は1 時間弱と長い。
とも行為者率・時間量とも多く,テレビ視聴は
テレビ視聴時間の 5 割が“リラックス”視聴
高年層に偏っている。
ここまでのテレビ視聴状況をふまえて,テレ
女 30・40 代で多い「ながら」視聴
ビ視聴時の“気分”をみてみよう。図 3 はテレ
次に,他のことをしながら見る「ながら」視
ビ視聴時の 6 つの気分,および気分の記入が
聴・
「専念」視聴別にテレビ視聴時間をみると,
なかった時間を積み上げたグラフで,右側にテ
月曜は「ながら」1 時間 37分に対して「専念」1
レビ視聴時間を示した。全体では,6 つの気
時間 52 分で,
「専念」視聴は全体の 5 割強であ
分のうち多いのは“リラックス”であり,月曜 1
る。一方,日曜は「ながら」1 時間 48 分に対し
時間 36 分,日曜 2 時間 9 分で,視聴時間のお
て「専念」が 2 時間 29 分で,日曜は「専念」視
よそ 5 割を占める。平日の月曜でもテレビを見
表 4 「テレビ視聴」との重複行動(男女年層別)
(全員平均時間:分)
男
行為者 全員
率% 平均時間
女
20 代
30 代
40 代
50 代
60 代
70 歳~
20 代
30 代
40 代
50 代
60 代
70 歳~
〈月曜〉
〈日曜〉
食事
60
0:36
14
19
26
26
54
48
27
32
32
40
50
50
家族との会話
24
0:27
11
18
8
13
36
30
28
46
37
43
21
33
家事
27
0:26
1
1
2
3
8
4
16
58
62
52
48
40
食事
59
0:40
19
28
40
37
58
56
27
34
33
39
56
44
家族との会話
30
0:38
14
28
35
51
34
33
31
46
49
47
37
36
家事
28
0:24
2
5
4
19
6
8
14
55
33
33
52
34
20 分以上
44
APRIL 2009
図 3 テレビ視聴時の“気分”
(男女年層別)
<月曜・時間:分>
忙しい
男20代
4
1:01
9
男30代
5
1:00
10
男40代
4
男60代
13
2:07
2:08
4:05
24
5:32
33
2:46
27
女40代
42
1:40
女50代
44
1:33
3:44
23
4:50
8
20
5:31
7
29
2:11
16
3:29
25
1:52
22
3:27
15
1:19
53
女60代
<視聴時間>
5
1:14
23
なし
1:47
1:57
女30代
退屈
3:28
2:43
女20代
集中
2
5
女70∼
ドキドキ
5
1:25
1:16
8
楽しい
19
1:27
男50代
男70∼
リラックス
1:36
21
全体
<日曜・時間:分>
全体
男20代
2
男30代
3
男40代
4
男50代
6
男60代
5
2:17
2:53
14
1:45
4:09
22
2:24
15
21
女50代
27
女60代
24
10
2:51
28
1:24
36
6:06
32
2:54
女30代
5:18
27
2:40
女20代
5:10
28
3:18
9
女40代
4:17
10
12
1:33
男70∼
女70∼
26
2:09
14
1:27
1:34
22
3:26
39
3:16
3:41
32
1:37
2:11
27
30
2:29
5:32
15
5:40
11
※グラフ中は「忙しい」
「リラックス」
「楽しい」の分数と,本文でコメントした値を表示した。
ながら“リラックス”する時間が 1日1 時間半を
特に“リラックス”度の高い男 20 代
超えており,テレビは生活に溶け込み,また
“リ
同じ図 3 で男女年層別にみると,どの層も
“リ
ラックス”という気分との相性のよさがうかが
ラックス”している時間は長いが,視聴時の気
える。一方で,特に気分を感じていない時間
分の傾向は異なる。
も長い。
男70 歳以上は,視聴時間そのものが長いた
このほか多いのは“忙しい”
“楽しい”で,
“忙
め,
“リラックス”視聴も月曜は 2 時間 43 分,日
しい”が月曜 21分,日曜 14 分,
“楽しい”が月
曜は 2 時間 54 分と長い。一方,視聴時間全体
曜 19 分,日曜 26 分だった。曜日間で比べてみ
に対する“リラックス”の割合が高めであるのは
ると,
“忙しい”は月曜のほうが長く,
“リラック
男20 ~ 50 代である。その中でも特徴的なの
ス”
“楽しい”
“集中”
(月曜 5 分,日曜 10 分)は
は男20 代で,視聴時間は短いが,月曜・日曜
日曜のほうが長い。
とも“リラックス”度は 7 割前後と特に高い。ま
APRIL 2009
45
た,男50 代は月曜の視聴時間は短いが,日曜
聴の率が上がり,特に 20・21時台は 20%を上
はテレビを見ながら“リラックス”している時間
回っている。
一方,日曜は,
“リラックス”視聴は 8 時~ 19
は 3 時間以上と長い。
一方,女 30 ~ 50 代は“忙しい”時間が長く,
時は10%前後,
“楽しい”も12 時~ 15 時は 2 ~
特 に月曜 は 女 30 代 は 53 分,女40 代 は42 分,
3%で推移し,ピークの20 時台は 8 ~ 9%で,月
女 50 代は44 分で,慌しい状況でテレビを見るこ
曜に比べて日曜は高めである。日曜は,月曜か
とが多いといえる。また,女40・50 代では“楽
らの仕事などに備えるためか,22 時以降のテレ
しい”の時間量・割合も多めである。
ビ視聴の減少が急で,23 時以降の“リラックス”
“楽しい”視聴の行為者率は月曜を下回っている。
“忙しい”ピークは朝,
“リラックス”は夜
それでは,人びとは1日のどのような時間帯
“忙しい”視聴のピークは 6 時 30 分~ 8 時
にテレビを見ながら“リラックス”しているのだ
テレビ視聴時の気分の発生の仕方は男女年
ろうか(図 4)
。テレビは1日のうち,朝・昼・夜
層で違うのだろうか。まず,朝のテレビ視聴と
と3 つの視聴の山があるが,
“リラックス”視聴
“忙しい”視聴との関係をみてみる。月曜朝の男
の山もほぼこれに一致する。夜間にむけてテレ
女年層別のテレビ視聴の30 分ごとの平均行為
ビ視聴が増加すると“リラックス”
“楽しい”は高
者率を表 5に,そのうち“忙しい”テレビ視聴
くなり,ピークは 20 時台となっている。また,
“リ
を表 6 に示した。全体の月曜朝のテレビ視聴の
ラックス”視聴は,月曜は 8 時前後,日曜は 8
ピークは 7 時~ 8 時 30 分で,20%を上回ってい
時台で,昼は月曜・日曜とも12 時台で行為者
る。男女年層別にみると,男 60 代以上,女 30
率が一時的に高くなる傾向にある。
代以上でよく見られ,ピークの時間帯は全体と
次に曜日ごとに気分の流れの特徴をみると,
ほぼ同じである。
月曜の 6 時~ 8 時 30 分は“忙しい”視聴のピー
次に“忙しい”視聴(表 6)をみると,全体で
クで 5%以上である。また,18・19 時台も3%と
は 6 時 30 分~ 8 時で 7 ~ 8%と高めで,テレビ
わずかに高くなる。19 時以降は“リラックス”視
視聴のピークの時間より若干早い。男女年層別
図 4 テレビ視聴時の主な気分の 30 分ごとの平均行為者率(全体・月曜)
(%)
30
忙しい
楽しい
リラックス
20
10
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
時
24
テレビ全体 3 3 2 2 1 0 0 0 1 1 2 5 12 17 24 23 24 17 13 10 7 6 7 8 16 19 13 11 9 7 7 8 10 11 12 13 18 22 36 37 42 44 41 41 34 29 19 13
忙しい
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 5 7 8 7 5 3 1 1 1 1 0 1 1 1 1 1 1 1 1 0 1 1 2 2 3 3 3 3 2 1 1 1 1 0 0 0
楽しい
0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 1 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 4 5 6 6 4 5 4 3 2 1
リラックス 2 1 1 1 0 0 0 0 0 0 1 1 3 4 7 7 8 6 6 5 4 3 3 3 8 9 7 6 5 4 4 4 5 5 4 5 7 8 14 16 21 23 21 21 19 17 13 9
46
APRIL 2009
表 5 朝のテレビ視聴の 30 分ごとの平均行為者率(月曜・男女年層別)
時 刻
全体
男
20 代
6:00 ~ 6:30
12
2
(%)
男
30 代
男
40 代
男
50 代
男
60 代
男
70 歳~
女
20 代
女
30 代
女
40 代
女
50 代
女
60 代
女
70 歳~
9
5
16
13
14
6
13
18
13
19
10
6:30 ~ 7:00
17
4
13
10
19
17
17
6
25
24
17
23
23
7:00 ~ 7:30
24
6
13
9
13
26
41
13
27
25
27
33
45
7:30 ~ 8:00
23
6
5
8
10
26
39
16
27
24
31
36
45
8:00 ~ 8:30
24
3
4
8
8
24
41
18
29
25
31
40
46
8:30 ~ 9:00
17
6
3
8
4
14
34
11
23
20
18
26
29
太字は各層で 1 番目 +2 番目に高い数値(以下同様)
は行為者率 20%台
は 30%台
は 40%以上
表 6 朝の“忙しい”テレビ視聴の 30 分ごとの平均行為者率(月曜・男女年層別)
時 刻
全体
男
20 代
6:00 ~ 6:30
5
2
6:30 ~ 7:00
7
1
男
30 代
男
40 代
男
50 代
男
60 代
男
70 歳~
女
20 代
5
1
2
3
1
6
3
5
4
1
(%)
女
30 代
女
40 代
女
50 代
女
60 代
女
70 歳~
3
8
16
11
3
0
2
17
18
11
5
3
7:00 ~ 7:30
8
2
2
5
8
3
1
9
19
16
14
5
6
7:30 ~ 8:00
7
2
0
3
6
2
1
8
17
13
15
6
6
8:00 ~ 8:30
5
0
0
2
3
1
3
8
19
10
8
6
3
8:30 ~ 9:00
3
0
0
0
1
0
0
3
11
7
5
6
3
は行為者率 10%台
にみると,慌しい状況でテレビを見ているのは
く,女40 代は「学校に通っている子どもがい
女 30 ~ 50 代で,7 時台前後には“忙しい”視
る」
(63%),女 50 代は「社会人の子どもがいる」
聴が 10%以上となる。一方,男 60 代以上のピー
(59%)が最も多い。このため,女 30 代は子ど
クは 3 ~ 4%,女 60 代以上は 6%で,比較的落
もがいても幼児の起床は遅いのに対し,学齢
ち着いてテレビを見ているといえる。
期の子どもがいる女40 代は子どもの弁当を作
“忙しい”視聴のピークの時間帯は,女 30 代
はテレビ視聴のピークと同じ7 時台前後だが,
るなど朝早くから家事にとりかかる必要がある
といった違いが表れているのかもしれない。
女40・50 代はテレビ視聴のピークよりやや早
い時間帯となる。女40 代はテレビ視聴のピー
月曜は夜遅い時間ほどリラックス度は高まる
クが 7 時台前後のところ,
“忙しい”視聴のピー
次に夜間のテレビ視聴と“リラックス”の関係
クは 6 時~ 7 時 30 分,女 50 代は視聴のピーク
を男女年層別にみてみる。月曜夜間のテレビ視
が 8 時前後のところ,
“忙しい”視聴のピークは
聴の30 分ごとの平均行為者率を表 7 に,その
7 時台である。女40・50 代の“忙しい”視聴の
うち“リラックス”視聴を表 8 に示した。全体の
ピークの違いは,子どもの有無や末子年齢に
月曜夜間のテレビ視聴のピークは,20 時~ 22
よると考えられる。付帯意向調査の結果によ
時で40%台である。男女年層別にみると,男
ると,女 30 代は「小学校入学以前の子どもが
性では年層によってピークの時間帯が大きく異
いる」
(42%)と「子どもはいない」
(38%)が多
なり,男70 歳以上は19 時台がピークだが,男
APRIL 2009
47
表 7 夜間のテレビの 30 分ごとの平均行為者率(月曜・男女年層別)
全体
男
20 代
男
30 代
18:00 ~ 18:30
18
2
4
11
18:30 ~ 19:00
22
6
5
12
19:00 ~ 19:30
36
11
12
17
16
19:30 ~ 20:00
37
11
18
22
21
20:00 ~ 20:30
42
16
21
26
19
20:30 ~ 21:00
44
17
23
33
28
60
65
36
41
37
21:00 ~ 21:30
41
22
25
33
35
56
36
35
43
46
時 刻
男
40 代
男
50 代
男
60 代
男
70 歳~
女
20 代
女
30 代
女
40 代
8
29
33
11
19
16
10
34
39
16
23
18
52
68
25
34
30
51
67
29
35
63
63
36
41
女
50 代
(%)
女
60 代
女
70 歳~
20
27
40
28
36
39
44
64
47
34
47
58
47
33
47
67
64
50
67
62
45
55
47
21:30 ~ 22:00
41
22
32
36
35
56
31
36
43
45
43
53
38
22:00 ~ 22:30
34
23
32
39
33
40
13
37
32
39
40
40
27
22:30 ~ 23:00
29
21
28
39
33
29
8
36
29
40
26
31
21
23:00 ~ 23:30
19
17
24
27
23
15
2
25
22
26
20
17
1
23:30 ~ 24:00
13
13
17
15
13
9
2
23
15
15
13
7
は 30%台
表 8 夜間のテレビの“リラックス”視聴の 30 分ごとの平均行為者率(月曜・男女年層別)
時 刻
全体
男
20 代
男
30 代
男
40 代
男
50 代
18:00 ~ 18:30
7
2
2
5
5
18:30 ~ 19:00
8
4
2
4
8
19:00 ~ 19:30
14
8
7
13
11
19:30 ~ 20:00
16
9
9
16
14
男
60 代
1
は 40%以上
女
60 代
(%)
男
70 歳~
女
20 代
女
30 代
女
40 代
女
50 代
女
70 歳~
14
19
3
3
8
3
6
14
18
21
3
5
8
6
10
11
24
33
7
11
13
14
15
13
25
33
8
14
13
19
19
16
20:00 ~ 20:30
21
14
13
18
13
36
28
18
16
19
21
35
25
20:30 ~ 21:00
23
15
15
25
17
34
30
17
16
23
23
33
27
21:00 ~ 21:30
21
17
18
27
23
30
14
19
21
26
24
22
17
21:30 ~ 22:00
21
15
19
29
21
29
13
20
23
26
21
20
14
22:00 ~ 22:30
19
17
19
32
23
21
4
23
23
24
21
16
12
22:30 ~ 23:00
17
15
16
31
23
15
2
21
20
28
16
13
11
23:00 ~ 23:30
13
10
16
22
18
8
1
18
17
18
11
6
1
23:30 ~ 24:00
9
9
10
12
12
5
1
17
11
10
8
4
1
は行為者率 20%台
50 代以下は 21・22 時台にピークを迎えている。
は 30%台
女性のリラックス視聴は家事を終えてから
次に“リラックス”視聴のピークをみると,全
男女年層別に“リラックス”視聴のピークをみ
体ではテレビ視聴のピークと同じ20 時~ 22 時
ると,男性はテレビ視聴のピークとほぼ重なる
で 20%を超える。テレビ視聴に対する“リラッ
のに対し,女性は若干遅い。女 30 代は 21 時
クス”の占める割合は,ピークにあたる20・21
30 分~ 22 時 30 分,女40 代は 21・22 時 台,女
時台では 5 割程度(テレビ視聴が 41 ~ 42%に
50 代は 20 時 30 分~ 21時 30 分で,
「専念」視
対して“リラックス”が 21 ~ 23%)だが,夜遅
聴のピークとおおむね合致している。食事や家
くなるほど“リラックス”の割合は高くなり,23
事を終え,
「専念」視聴になるタイミングで“リ
時台には 7 割近くまで達する。
ラックス”に入ることがうかがえる。
48
APRIL 2009
また,テレビ視聴に対する“リラックス”視
月曜より早まる。男女年層別にみても,男 40・
聴の割合は,大まかにいって女性より男性の
50 代,女40 代で月曜よりテレビ視聴のピーク
ほうが高い。“リラックス”視聴の割合の低い
が早まり,
“リラックス”視聴は,男 40 代で19
60 代以上は除くと,男 50 代以下は 19 時以降
時台,男 50 代で 20 時台,女 30・40 代も21 時
のどの時間帯も5 割以上であるのに対し,女
台と,月曜と比べ若干早まっている。日曜は女
50 代以下では 21 時以降にようやく5 割を超え
30・40 代は比較的早い時間から家事をしてお
る。この男女の違いは,夜間の自宅での過ご
り,月曜より“忙しい”視聴は少なく,ピークも
し方の違いによると考えられる。男性は仕事中
早めの時間である。日曜のほうが時間的にも
心で,夜遅く帰宅してテレビを見始めるとすぐ
精神的にも余裕があるため,テレビ視聴と“リ
に“リラックス”し,夕食をとったり時折家族と
ラックス”視聴がほぼ重なるといえよう。
話をしたりする。一方,女 30 ~ 50 代は仕事
(2)ラジオ
に加え家事も4 ~ 5 時間行っている。19 時~
22 時 30 分までかなりの割合でテレビはついて
聴取する人が多い男女 60 代,女 70 歳以上
いて,夜間の生活はテレビとともにある人が多
まず,ラジオ聴取状況についてみてみたい
いのだが,19 時台はテレビを見ながら食事を
(図 5)。ラジオを聴いた人の割合は,月曜は
し,食後は家族とのおしゃべり,食事の後片
15%,日曜は 13%である。全員平均時間は月
付けなど,テレビの前の風景は刻々と変わる。
曜 25 分,日曜 22 分で,行為者率も時間量も曜
そして,他のことをせずにくつろいでテレビを
日差はない。
見る時間は夜遅くなってからになるのである。
男女年層別にみると,ラジオの行為者率は
また,日曜の夜間はテレビ視聴と“リラック
年層差が大きい。月曜・日曜とも男女 20 代,
ス”視聴のピークはともに 20 時台(50%強)で,
女 30 代で低く,対照的に男女 60 代,女 70 歳
図 5 ラジオの行為者率と時間量(男女年層別・職業別)
時間
2:00
1:00
0:00
全体
男 20 男 30 男 40 男 50 男 60 男 70
代
代
代
代
代 以上
女 20 女 30 女 40 女 50 女 60 女 70
代
代
代
代
代 以上
自営 販売サ 技能 事務 主婦 無職
業 ービス 作業 技術
全員平均時間:月曜 0:25
0:07 0:30 0:25 0:13 0:47 0:28
0:09 0:05 0:07 0:14 1:01 0:48
0:47 0:08 0:33 0:10 0:30 0:39
全員平均時間:日曜 0:22
0:07 0:13 0:30 0:14 0:37 0:15
0:10 0:08 0:14 0:14 0:41 0:53
0:26 0:13 0:19 0:17 0:24 0:32
行為者率:月曜 15
4
16
12
16
25
22
6
6
9
10
25
26
16
7
19
11
16
23
行為者率:日曜 13
5
8
14
13
17
12
7
7
11
9
22
26
10
11
9
12
14
16
全員平均時間:月曜
全員平均時間:日曜
行為者率:月曜
%
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
行為者率:日曜
APRIL 2009
49
以上で高めである。職業別にみると,月曜は
ると,特に自営業者で長く,月曜は 30 分を超
販売・サービス,事務・技術で行為者率・時
えている。
間量が少なく,無職で行為者率が高い。一方,
日曜は職業による差はあまりみられない。
ラジオの“リラックス”聴取は 3 割程度
ラジオ聴取時の気分で多いのは“リラックス”
自営,技能 ・ 作業は 「 ながら」 聴取が 8 割以上
(月曜 8 分,日曜 7分)だが,ラジオ聴取時間
ラジオの聴取時間について,他のことをしな
のほぼ 3 割で,テレビの 5 割よりも低い(図 6)。
がら聴いている「ながら」聴取・
「専念」聴取別
次いで多いのは“忙しい”
(月曜 5 分,日曜 3 分)
にみると,月曜は「ながら」17分に対し,
「専念」
で,そのほか“集中”
(月曜 2 分,日曜 1分)が
8 分,日曜は「ながら」14 分に対し,
「専念」8
あげられる。日曜はそれに加え,
“楽しい”
“ド
分で,両曜日とも「ながら」聴取が聴取時間の
キドキ”の気分も1分みられた。ラジオ聴取は
3 分の2 程度を占める。
「ながら」聴取の割合が高く,聴取時の行動(家
男女年層別・曜日別にみて「ながら」の割合
事,仕事など)が気分に影響を与えるといえる。
が高いのは,月曜は男 30 ~ 50 代と女 30 代で
男女年層別にみると,月曜は“リラックス”
8 割強,女40 代はすべて「ながら」で,日曜も
が男女 60 代,女 70 歳以上が長めで,20 分前
男 30 代はすべて,男 40 代と女 50 代は 8 割前
後である。一方,男 30 代は月曜に仕事をしなが
後,女 60 代でも7 割強を占める。一方,
「なが
ら」の割合が低いのは男女 70 歳以上で,月曜
は4 割前後,日曜は 3 割強にとどまっている。
職業別にみると,
「ながら」の割合が高いの
図 6 ラジオ聴取時の“気分”
(男女年層別・月曜・分)
忙しい
リラックス
集中
退屈
楽しい
ドキドキ
なし
<聴取時間>
は有職者(
「販売・サービス」を除く)
,
「専念」
の割合が 高いのは無職で 5 割以上を占める。
有職者の中でも特に自営と技能・作業は「なが
ら」の割合が高く,月曜・日曜とも8 割を超え
ている。
5
男20代
4
ラジオを聴きながらどんな行動をしているか
をみると,月曜は仕事(6 分)
,移動(3 分)
,家
事(3 分)
,日曜は家事(4 分),仕事(3 分)な
どがあげられる。
男女年層別にみると,仕事は月曜に男30・
40・60 代と女 60 代, 日曜 に男 60 代 で 多く,
家事は月曜・日曜ともに女 60 代で多い(いずれ
も10 分以上)
。職業別に仕事との重複時間をみ
APRIL 2009
8
0:25
2
0:07
男30代
6
15
男40代
ラジオを聴きながら仕事,家事
50
全体
6
7
男50代
3 3 3
男60代
9
男70∼
3
女20代
22
女30代
2
1
0:30
4
0:25
4
0:13
22
6
0:28
13
0:09
11
0:05
11
0:07
女40代
11
女50代 2 3
女60代
1
11
0:47
0:14
17
11
1:01
0:48
20
3
1
※グラフ中は「忙しい」
「リラックス」
「楽しい」
「集中」の分数のみ値を表示した。
女70∼
ら聴くことが多いため,
“忙しい”が 15 分と長く,
“リラックス”を上回るのが特徴である。
時間帯別にラジオ聴取時の気分の行為者率
リラックス中心だがテレビより気分は多様
図 7 は各メディアの気分の時間量の内訳を示
した。まず利用時間(全員平均時間)をみると,
をみると,
“リラックス”は幅広い時間帯で感じ
新聞が月曜 21分,日曜 24 分,インターネットが
られているが,月曜・日曜とも夜間に高め(3%)
月曜 17分,日曜 26 分と両者の時間量は拮抗し
で,日曜は午前も同程度である。
“忙しい”は,
ている。次いで,雑誌・マンガ・本とビデオ・
月曜・日曜とも午前で高めである(月曜 3%,日
DVD が多く,月曜は10 分強,日曜は 20 分弱の
曜 2%)
。
利用となっている。インターネット,雑誌・マンガ・
(3)テレビ・ラジオ以外のメディア
本,ビデオ・DVDは日曜のほうが時間量が長い。
続いて気分の内訳をみると,基本的にどのメ
今回の調査では,
「ビデオ・DVD」
「新聞」
「雑
ディアも“リラックス”の分数が長く,全体に占
誌・マンガ・本」
「CD・MD・テープ」
「 趣 味・
める割合は 5 割程度と,テレビと大差ない。た
3)
娯楽のインターネット」 の利用についても調べ
だ CD・MD・テープだけは“リラックス”の割
た。時折,前述したテレビの気分とも比較しな
合が低く,
“楽しい”
“集中”など聴取時の気分
がら報告する。
はより多様である。これは(2)で述べたラジオ
と同様,さまざまな行動と「ながら」で聴かれ
図 7 各メディア利用時の“気分”
(全体)
忙しい
集中
リラックス
退屈
楽しい
ドキドキ
なし
<月曜・分>
0:11
6
11
新聞
10
2
1
雑誌・マンガ・本
2
聴の気分と比べると,特に“集中”の割合が高
11
インターネット(娯楽)
9
0:17
22
が多いものの,視聴時間が増える日曜は“楽し
0:13
0:07
2
デオ・DVD はどうだろうか。月曜は
“リラックス”
い”4 分,
“集中”3 分なども目立つ。テレビ視
1 1
CD・MD・テープ
がら」聴取である。
0:21
1
6
際,CD・MD・テープ聴取時間の 7 割以上が「な
では,テレビと同様の映像メディアであるビ
<利用時間>
ビデオ・DVD
ることの多い音声メディアの特徴といえる。実
く,また“忙しい”が皆無である点がビデオ・
DVD 視聴の特徴といえる。さらに日曜でより
気分が多様になることから,時間の余裕があ
る時にテレビ以上に能動的な姿勢で視聴して
<日曜・分>
ビデオ・DVD
9
4
0:18
3
1
新聞
2
0:24
12
11 1
雑誌・マンガ・本
9
CD・MD・テープ
0:19
2 4
4 22
1
インターネット(娯楽)
1
3
5
1
新聞は曜日を問わず“リラックス”が多く,
習慣としての閲読が多いからか,特に気分がな
い時間も比較的多い。一方,雑誌・マンガ・本
0:10
は日曜になると“集中”の割合が高い。特に男
0:26
20 代は時間量が 34 分と長いが,そのうち11分
1
13
いる様子がうかがえる。
を“集中”して読んでいる。
APRIL 2009
51
男若年層のインターネットは“リラックス”
であったり,とテレビ以上に多様な局面で利用
されているインターネットの特性が反映されて
インターネットについては,時間量が伸びる
いるといえよう。
日曜について男女年層別にもう少し詳しくみた
い(図 8)。利用時間をみると,男20・30 代で
1 時間を超えて利用している。彼らの利用時の
4. 基本行動と「気分」
気分に注目すると,
“リラックス”の割合が高く,
特に男20 代は全体の 3 分の 2を占める。つま
この章では,
「仕事(学業)」や「レジャー活
り,男性若年層のインターネット利用の長時間
動」など,メディア接触以外の主な行動の時
化の背景には,肩肘はらない“リラックス”し
に,人びとがどんな気分でいるかをみてみた
た利用が主流となっていることが考えられる。
い。義務 性・拘束性の高い行動(拘束行動)
彼らは(1)でも述べたようにテレビ視聴時間が
と自由裁量性の高い行動(自由行動)に分け
短い層であり,テレビで感じるような“リラック
てみていく。
ス”を,一部インターネットで代替しているのか
(1)仕事と家事(拘束行動)
もしれない。
男 40 代の 1日の仕事時間 9 時間半
さらにインターネットは,
“リラックス”だけ
ではない。男 20・30 代以外の年層も含め,
“楽
図 9 は,月曜の仕事中の気分を男女年層別
しい”や“集中”の分数がある程度あり,全体
に示したものである。まず,仕事の時間量か
でみても“集中”の割合はテレビより高い。一
らみていきたい。男女を比べると,男性のほう
方,男 30 代は“退屈”が 10 分もある。時に楽
がかなり長い。男 20 ~ 50 代では 8 時間以上
しく,夢中になったり,また時には退屈しのぎ
となっていて,特に 40 代は約 9 時間半に及ん
でいる。
女性は,20 代の時間量が最も
図 8 趣味・娯楽のインターネット利用時の“気分”
(男女年層別・日曜・分)
忙しい
リラックス
楽しい
ドキドキ
集中
退屈
長く,30 代以上との開きが大き
なし
<利用時間>
5
3
13
全体
0:26
1
8
45
男20代
12
4
15
男40代
17
男50代
男60代
6
1 4
男70∼
5
5
1
女30代
15
女40代
3 3 2
13
女50代
女60代
5
女70∼
2
5
9
10
2
1:10
1:08
0:30
1
0:13
10
8
8
5
2
1
4
0:42
0:30
0:13
0:20
0:13
5
0:03
※グラフ中は「リラックス」
「楽しい」
「集中」「退屈」の分数のみ値を表示した。
52
によるものである(行為者率は,
20 代が 78%なのに対して,30 ~
50 代は 50%台)。
0:37
0:14
16
女20代
14
7
33
男30代
い。これは主に,行為者率の差
APRIL 2009
男性で多い仕事中の多忙感
次に,仕事中の気分について
みていく。全体をみると,仕事中
は“忙しい”がかなり多いことが
わかる。
“忙しい”は仕事時間全
体の 5 割以上を占め,次いで“集
中”が 4 分の1程度となっている。
図 9 「仕事(学業)」の時の“気分”
(男女年層別・月曜・時間:分)
忙しい
リラックス
全体
楽しい
ドキドキ
なし
<仕事時間>
5:05
1:50
4:21
男30代
8:00
1:57
5:40
男40代
4:43
男50代
4:51
男60代
8:46
2:19
9:23
1:53
8:56
52
2:22
5:31
21 10
0:55
女20代
47
9
3:21
45
1:21
女60代
3:52
1:13
1:42
女50代
4:12
1:25
2:15
女40代
6:21
1:44
3:20
女30代
女70∼
退屈
1:12
2:37
男20代
男70∼
集中
1:54
24
1:05
11
※グラフ中は「忙しい」
「集中」の分数のみ値を表示した。
男女年層別にみてみると,男30 代で
“忙しい”
が 6 割以上を占め,働き盛りの多忙感が伝わっ
てくる。
気分をみると,
“忙しい”の山は,男女とも仕
事全体の山のほぼ半分の大きさになっている。
“忙しい”の山自体は,もちろん男有職者のほ
“集中”については,時間量そのものは,男
うが大きい。一方,
“集中”の山の大きさに男女
性のほうが長いが,仕事時間全体に対する割
差はほとんどない。つまり,仕事に対する“集
合は女性のほうが高めという傾向がある。特
中度”は女有職者のほうが高いということがわ
に女 30・40 代では 3 割を超えている。
かる。
仕事中の“集中”度の高い女性
圧倒的に長い女性の家事時間
仕事中の気分についてもう少し詳しくみるため
に,仕事全体のほか,仕事時に感じた“忙しい”
“集中”のそれぞれの30 分ごとの平均行為者率
を男女有職者別に示した(図10)
。ここで言う有
職者とは,パートタイマーなども含んでいる。
続いて,家事についてみていきたい。家事に
ついては,日曜の男女年層別のグラフを示した
(図 11)。
家事の時間量は女性のほうが圧倒的に長い。
グラフは省略してあるが,月曜の男性の家事の
仕事全体のグラフの形を大まかに言うと,男
時間量はさらに短く,20 ~ 50 代では 20 分以
女とも真ん中(昼休み)に深い谷があり,頂上
下にとどまっている。一方,女性は曜日差はほ
の部分がテーブルのような形をした山になって
とんどなく,月曜・日曜とも30 ~ 60 代で4 ~
いる。山は男有職者のほうが大きい。女有職
5 時間となっている。
者の山は,パートなどで午前中だけ働く人もい
女性の担う家事の時間量の多さと,月曜と日
るためか,午前の部分が午後よりやや高くなっ
曜で手間がそれほど変わらない家事の実情がよ
ている。
く表れているといえよう。
APRIL 2009
53
図 10 「仕事(学業)」の時の“忙しい”
“集中”の 30 分ごとの平均行為者率(男女有職者別・月曜)
(%)
80
仕事全体
忙しい
集中
【男有職者】
60
40
20
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
時
24
仕事全体 3 3 2 2 3 2 2 3 3 4 5 6 7 8 10 19 37 57 68 74 74 77 77 75 27 29 71 75 78 79 74 78 78 77 68 59 52 45 33 30 23 21 18 16 12 11 9 7
忙しい
2 2 2 1 2 2 2 3 3 3 4 4 4 5 6 11 20 29 37 40 41 43 42 41 14 15 39 42 45 45 41 43 44 43 37 34 30 25 20 17 12 10 9 8 6 6 5 4
集中
1 1 0 0 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 2 6 11 15 17 17 18 19 18 4 5 16 17 17 17 16 17 17 16 14 12 11 9 7 7 5 5 4 3 2 2 2 2
(%)
80
仕事全体
忙しい
集中
【女有職者】
60
40
20
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
時
24
仕事全体 2 2 2 2 2 1 1 2 2 1 1 2 2 3 3 5 14 28 51 60 64 63 63 60 30 32 53 55 56 57 57 57 56 54 45 36 29 24 18 15 11 9 5 5 4 3 4 3
忙しい
2 1 1 2 1 1 0 0 0 0 0 1 2 2 2 3 8 15 24 27 29 28 28 27 15 16 24 26 28 27 27 28 28 27 21 17 13 12 10 7 5 3 2 3 3 2 3 2
集中
0 1 1 1 0 0 1 1 1 1 1 1 0 1 1 1 4 7 16 18 21 21 22 21 8 9 13 14 14 15 15 15 15 15 14 10 8 7 5 4 3 3 1 1 1 0 0 0
図 11 「家事」の時の“気分”
(男女年層別・日曜・時間:分)
リラックス
忙しい
全体
男20代
51
24
男40代
14
22
男70∼
女20代
18
退屈
なし
<家事時間>
2:32
13
23
1:35
15
1:33
13
18
20
1:08
15
25
1:12
5
0:57
13 3
32
女30代
15
1:20
9
1:30
女40代
35
35
2:05
女60代
23
1:19
38
34
37
4:00
22
1:59
女50代
女70∼
集中
0:30
14
男60代
25
ドキドキ
7 7 3
男30代
男50代
楽しい
9
12
23
19
4:32
4:49
4:10
3:11
※グラフ中は「忙しい」
「リラックス」
「楽しい」の分数のみ値を表示した。
54
APRIL 2009
家事は“忙しい”
のほか,気分がない時間も
き彫りになってくる。
次に,家事中の気分について,仕事と比べ
定例の生活時間調査では,家事を「炊事・
ながらみてみる。全体をみると,仕事と同じよ
掃除・洗濯」
「買い物」
「子どもの世話」
「家事
うに,家事中の気分も“忙しい”が多いが,仕
雑事(家の簡単な補修や病人の世話など)」の
事では 5 割以上を占めていたのに対して,家事
4つに分けて調査している。2005 年の調査で
では 3 割程度にとどまっている。その代わりに,
は,日曜の女 20 歳以上の家事時間の全員平
仕事にはあまりなかった,特に気分を感じない
均時間は4 時間 52 分で,このうち「炊事・掃除・
という時間が“忙しい”と同じくらいの割合で
洗濯」が 2 時間 27分,
「買い物」が 52 分,
「子
存在している。また,仕事にはほとんどなかっ
どもの世話」が 44 分,
「家事雑事」が 1 時間 2
た“リラックス”も25 分ある。このように同じ
分だった5)。
拘束行動でも,仕事と家事では気分がかなり
異なることがわかった。
一方,男20 歳以上は家事時間が 1 時間 35 分
で,このうち「炊事・掃除・洗濯」が 18 分,
「買
い物」が 35 分,
「子どもの世話」が 20 分,
「家
男性で割合高い“リラックス”
“楽しい”
事雑事」が 25 分だった。
家事中の気分を男女年層別にみてまず目につ
同じ家事といっても,女性が「炊事・掃除・
くのは,男性の“リラックス”と“楽しい”の割
洗濯」に多くの時間を費やしているのに対して,
合の高さである。特に男30 代では“リラックス”
男性は「買い物」などに費やす時間が多いこと
が 3 割以上,
“楽しい”が 2 割以上となっている。
がわかる。
女性では,
“忙しい”のほか,特に気分を感
「炊事・掃除・洗濯」は,健康的な生活を維
じない時間も多いのが特徴である。気分を感
持する上で欠くことのできない行動であり,特
じない時間の割合は,おおむね年層が上がる
に家族のいる場合は,それなりの義務感をと
ほど多くなり,女 70 歳以上では 5 割近くにまで
もなう行動であるといえる。
「買い物」も必要
達している。
な食料や生活用品を買い揃えるという大事な行
以上のことを大まかにまとめると,日曜の家
動だが,基本的に家の中で行う「炊事・掃除・
事に関して,男性は肩の力を抜いて時に楽しみ
洗濯」に比べれば,外に出るというだけでも開
ながら,女性は忙しさを感じながらも淡々と家
放感を感じることができ,いい気分転換にもな
事を行っているという構図が浮かんでくる。
るだろう。
こうした実際に行う家事の内容の違いが,男
家事の内容の違いがもたらす気分の違い
5 年ごとに行っている定例の生活時間調査に
よると,男性の家事時間については,1985 年
以降,若干ではあるが平日も休日も増える傾向
にある 。家事の役割分担が多少なりとも進ん
4)
でいることがうかがわれるが,その内容にまで
踏み込んでみると,男女の担う家事の違いが浮
女の気分の違いをもたらす要因の1つと考えら
れる。
(2)会話・レジャーなど(自由行動)
日曜に長い「自由行動」
続いて,
「自由行動」についてみていきたい。
ここでは,主な「自由行動」として,
「友人との
APRIL 2009
55
会話」
「家族との会話」
「レジャー活動」を取り
“楽しい”が多いが,
“集中”も決して少なくない
ことに注目したい。
上げる。
曜日で比較すると,すべての行動の時間量が
月曜より日曜で長くなっていて,特にレジャー
活動は 2 倍以上になっている(図 12)。
男 30 ~ 50 代,日曜のレジャーの伸び顕著
レジャー活動と気分の関係についてもう少し
友人との会話・家族との会話の時間量の男
詳しくみていきたい。時間量が大幅に増える日
女・曜日別の特徴を簡単に述べたい。友人と
曜について,男女年層別に示したのが図 13 で
の会話は,月曜・日曜とも男性より女性で長い。
ある。
男性は月曜より日曜で長いが,女性は月曜も日
時間量からみていくと,女性より男性のほう
曜もほとんど変わらない。家族との会話も,月
が長くなっている。曜日差では,男女とも当然
曜・日曜とも男性より女性で長い。
ながら日曜のほうが長いが,女性より男性の伸
び率が高くなっている。男性の中でも,特に 30
“楽しい”友人会話,
“リラックス”家族会話
~ 50 代の増加が顕著である(月曜の時間量は
それぞれの行動の気分についてみる。どの
30 代 29 分,40 代 15 分,50 代 9 分)。
行動も気分の構成割合に曜日差はあまりないの
で,月曜・日曜の共通の傾向として話を進める。
友人との会話の気分では“楽しい”,家族と
趣味やレジャーに“集中”する男性
レジャー活動中の気分は,全体では“楽し
の会話では“リラックス”が多くなっている。同
い”が一番多く,次いで“リラックス”
“集中”
じ会話でも対象の違いによって気分に違いがあ
の順となっているが,この主な3 つの気分の割
ることがわかる。こうした傾向はどの年層にも
合を男女年層別にみると,その違いが浮き上
おおむね共通している。レジャー活動の気分は
がってくる。
男性は女 性に比
図 12 「友人との会話」
「家族との会話」
「レジャー活動」の時の“気分”
(全体)
忙しい
集中
<月曜・分>
友人との会話
楽しい
7
14
22
11
10
15
の割合が 高いのに
対して,女性は“楽
ドキドキ
<全員平均時間>
家族との会話
レジャー活動
リラックス
退屈
なし
べ て“ リラックス”
7
しい”の割合が高く
0:28
なっている。さらに
0:53
特 徴 的なのは, 男
0:42
性の“集中”の割合
が 女 性に比べてか
なり高くなっている
<日曜・分>
友人との会話
10
24
家族との会話
レジャー活動
39
24
20
42
14
0:39
ということである。
1:31
特 に 男 60 代 で は,
1:39
全体の3 割を
“集中”
※グラフ中は「リラックス」
「楽しい」
「集中(一部)
」の分数のみ値を表示した。
56
APRIL 2009
が占めている。
図 13 「レジャー活動」の時の“気分”
(男女年層別・日曜・時間:分)
忙しい
リラックス
全体
48
10
女30代
14
女40代
2:12
1:56
32
1:46
9
1:09
1:45
7
1:14
1:29
8
1:05
1:45
9
56
1:12
13
29
1:22
7
34
22
8
2:22
25
27
18
11
2:03
28
16
32
女60代
25
44
33
女20代
1:39
30
26
8
<レジャー時間>
1:00
男40代
男70∼
なし
1:00
43
男60代
退屈
14
28
男50代
集中
42
男30代
女70∼
ドキドキ
24
男20代
女50代
楽しい
0:49
5
18
※グラフ中は「リラックス」
「楽しい」
「集中」の分数のみ値を表示した。
なぜ男性がレジャーに“集中”するのか
ジャーに集中できる「環境」が整っているとも
男性の“集中”の割合が女性より高いという
忙しい
リラックス
楽しい
ドキドキ
結果は,行っているレジャーや趣味の内容や,
集中
いえるのではないだろうか。
退屈
なし
もちろん,今回の“集中”の結果には,平日
<レジャー時間>
それらに取り組む姿勢の違いだと解釈すること
42
24
全体
に仕事で忙しい男性が,休日に趣味やレジャー
14
1:39
も可能である。しかし,趣味の内容や男女の
28
男20代
1:00
にのめり込むという側面もあるだろうし,男女
25
2:03
28
1:00
の性格や趣味の内容の違いも反映されている
43
男30代
姿勢の違いだけに言及してこの結果を解釈す
るのは少々乱暴なような気がする。
26
男50代
44
違いも,
“集中”の気分の発生状況に影響を及
これまでみてきたように,日曜の家事のほと
9
18
8
男70∼
ぼしていると考えられるのである。
んどは女性が担っていて,その主な気分は“忙
女20代
10
しい”だった。このことは,女性の日曜のレ
女30代
14
ジャー活動の時間量が男性より短いことにも無
女40代
32
だろう。しかし,家庭における男女の役割の
16
32
27
33
男60代
1:05
34
テレビに比べて多様な気分の会話やレジャー
9
56
7
2:12
1:56
1:46
1:09
1:29
8
女50代
2:22
1:45
7
1:14
13
29
11
関係ではないだろう。また,自身の趣味やレ
女60代
22
25
30
48
男40代
ここまで,会話などの「自由行動」の気分に
1:45
1:12
1:22
0:49
女70∼
5
18
8
ジャーの最中にも,家族への
「気遣い」
や家族
ついてみてきたが,ここで,
「自由行動」の代
からの「頼みごと」が男性よりも発生しやすいこ
※グラフ中は「リラックス」
「楽しい」
「集中」の分数のみ値を表示した。
表格のテレビ視聴時の気分をも
う一度振り返り
とも容易に想像できる。
たい(図 3と図 12)。
わかりやすくいえば,趣味をしていても食事
テレビ視聴時は,月曜・日曜とも“リラックス”
のことを気にかけなければならないだろうし,
の割合が 5 割程度を占めていた。これに対し
家にいるならば家族からさまざまなことで声を
て,ここで取り上げた会話やレジャーは,
“楽
かけられることもあるということである。こうし
しい”が多かったり,
“リラックス”が多いとし
たことを考えると,男性は女性より,趣味やレ
ても全体に占める割合はそれほど高くなかった
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りしている。つまり,同じ「自由行動」ながら,
“リラックス”の割合が高いテレビ視聴に比べ
て多様な気分で構成されているのである。
他の「自由行動」との比較からも,テレビは
まさに“リラックス”中心の行動ということがで
ビがこれらのメディアとは異なり,大多数の人
びとの生活時間に文字どおり“寄り添い”,欠
くことのできない役割を果たしているメディア
であることを再 確認できたのではないか,と
考える。
きよう。
男女の生活時間の構造と「気分」の関連
このほか 今回は,男女で 気 分の出方に相
5.考察
違がみられる結果がいくつかあった。たとえば
最後に現在の分析段階における行動と気分
の関連性をめぐる考察をまとめておく。
“集中”は男性で,
“楽しい”は女性で多かった。
しかし,仕事では男性が“忙しい”と感じる割
合が高いのに対し,女性は“集中”の割合が
テレビという「生活行動」の現在値
高かった。テレビは男性は“リラックス”を感じ
今回初めて生活時間調査で“気分”を調査
ているのに対し,女性は“忙しい”状態や“楽
した結果,
“リラックス”
“忙しい”とその他の
しい”視聴もあった。レジャー活動においては
気分で行為者率・時間量の出方が大きく異な
男性で“集中”が多く,女性はもっぱら
“楽しい”
ることが明らかになった。
“リラックス”や“忙
が多かった。
しい”は大多数が 1日のどこかで感じており,
こうした違いを,単純に性差としてとらえる
いわば生活のオン・オフのバイオリズムを表し
こともできよう。しかし 3・4 章でも触れたよう
ているのに対し,
“楽しい”や“集中”などは特
に,1日の生活時間の使い方の男女差が気分
定の行動や状況との結びつきがより強い気分・
の形で表れた結果とも解釈できる。まだ分析
状態と考えることができる。そのことを踏まえ
が十分ではないが,仮説として考えてみたい。
て改めてテレビ視聴の気分をみると,
“リラッ
男女間には,仕事で長時間拘束される男性
クス”して視聴する時間が非常に長いという特
と,家事による負担で曜日を問わず拘束時間
徴は,テレビが生活のオフの時間の過ごし方
が一定にある女性,という生活時間の構造の
に適合したメディアであることを如実に反映し
決定的な違いがあり,特に女性は家事を中心
ているといえよう。
にさまざまな行動を「同時並行」で進める傾向
もちろん“リラックス”している時にテレビを
が強い。こうした慌しい日常だからこそ,女
見ていることもあれば,見ているテレビ番組で
性は仕事をより集中してこなし,ゆっくり視聴
“リラックス”している場合もあろう。テレビと
できるテレビや家族・友人との会話,レジャー
気分の因果関係までは今回の調査ではわから
などをより積極的に楽しみたい意識が強いと
ないのだが,たとえば目的をもって利用される
も考えられないだろうか。一方オン・オフの区
ビデオや活字メディア,インターネット,その
別が女性よりはっきりしている男性は,気分も
他の自由行動などの気分の出方はテレビとは
“忙しい”⇔“リラックス”の軸を中心に動く傾
対比的であった。今回の気分の結果で,テレ
向が強く,同じ仕事やテレビ,家族との会話
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などでも気分の傾向が女性と異なるのではな
いか。
“集中”については,オン時は仕事,オ
フ時はレジャーにそれぞれ専念状態で取り組
める環境にあることを反映した側面もあるかも
しれない。
このように考えると,行動と気分は一方がも
う一方を普遍的に規定するといった単純な関係
にはとどまらないことが想像できるし,その解
釈の可能性も多様で,正解が見出しにくいこと
がわかってきた。両者の関連性についてより豊
かな知見をまとめるために,今後もさまざまな
角度からの分析を試みていかなければならな
い,と考えている。
(なかの さちこ/こばやし としゆき/もろふじ えみ)
注:
1)生活行動と気分の関連性については,最近では
2005 年国民生活時間調査と 2006 年「曜日に関
する意識調査」の結果を合わせた分析を行った。
今回の分析もこうした知見をベースにして行わ
れている。詳細は,中野佐知子・諸藤絵美「平
日でも曜日で異なる生活時間と気分」
『放送研究
と調査』2008 年 12 月号を参照のこと。
2)全員平均時間はその行動を行った人の数と時間
量をかけ合わせた数値を全体で割った平均値で
あり,行為者率の少ない行動ではしばしば生活
実感に合わない値となる。
3)
「インターネット(趣味・娯楽)
」は,趣味や娯楽
といった自由行動としてのインターネット利用に
限っている。仕事や学業上の利用は含まれてい
ない。文中では以下,
「インターネット」と略記
する。
4)詳しくは,NHK放送文化研究所編,2006,
『日
本人の生活時間・2005』NHK出版,を参照の
こと。
5)たとえば「炊事をしながら子どもの世話」といっ
た複数の家事が同時に行われている場合,
「炊事・
掃除・洗濯」と「子どもの世話」それぞれの行
動として計算するが,
「家事」時間としては1つ
にまとめて計算している。このため,家事の各
項目の合計と「家事」時間がイコールにはなら
ない。男性も同様。
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