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ニューズレター2013年1月号(PDF/1.36MB)
JICA France Office Vol. 1(2013) JICA France Office Newsletter JICA France Office Newsletter 2013年1月号 France Office Newsletter ~欧州の開発トレンドを読む~ 〖今月のトピック〗 目 次 Ⅰ.韓国援助審査 <今月のトピック> 韓国は 2010 年 1 月に DAC 加盟国となりましたが、本年 1 月 30 Ⅰ.韓国援助審査 日、OECD/DAC による韓国に対する援助審査報告書が発表され ました。気候変動分野などでイニシアチブを発揮する韓国援 助を概観しつつ紹介します。 ・・・Page 2 Ⅱ.開発援助に関する欧州の 世論調査 ・・・Page 5 Ⅱ.開発援助に関する欧州の世論調査 欧州委員会は毎年、EU 加盟 27 か国の国民を対象に開発援助に <パートナー紹介> 関する世論調査を行っています。今回の調査では、開発援助 フランス開発庁(AFD) の重要性、今後の援助はいかにあるべきか等の既定の質問に 対外関係・連携局次長、対外関係課長 加え、新興国支援の妥当性や途上国援助における民間企業の エマニュエル・デゥブロワーズ氏 果たす役割は何かといった質問も新たに盛り込まれました。 EU 経済危機が続く中での人々の ODA に対する世論調査の結果 ・・・Page 10 を紹介します。 Contact us ≪JICA フランス事務所より≫ 発行:JICA フランス事務所 JICA フランス事務所では、欧州における開発援助の議 論や動向について毎月ベースでニュースレターを発行してい ます。 8 rue Sainte-Anne 75001 Paris France TEL :+33-1-4020-0421 FAX :+33-1-4020-9768 皆様からのご意見・ご感想をお待ちしておりますので、 よろしくお願いいたします。 JICA France Office ~欧州の開発トレンドを読む~ ページ 1 1. DAC の韓国援助審査 2012 年 12 月 11 日、OCED の DAC(開発委員 2015 年までにその規模をさらに拡大し、GNI 会)本会合において、韓国の援助審査会 が開 催されました。今回の韓国援助審査では、ドイ ツとオーストラリアが審査国となり報告書案を取 りまとめ、これをもとに DAC メンバー国による審 査が行われました。2010 年 1 月の DAC 加盟 以降、初の審査となったものです。 韓国の援助システムは、先行するドナー各 国を参考にして自国の援助システムを構築し たといわれますが、その中には日本も含むこと から、日本の援助との類似点は多くみられます。 比 0.25%(ODA 総額 32 億ドル3)の達成という 目標を掲げています。この背景の一つには、 国民からの高い支持率があげられ、韓国国民 の 87%が ODA を支持しているという調査結果 があります。支持の理由としては、国際的な平 和と繁栄への貢献の意義が認識されているこ とや、韓国の世界経済における地位に比して ODA の供与額がいまだ尐なく、今後さらに国 際貢献を進めるべきとの世論の後押しがあると いわれています。 1 図1:韓国 ODA 推移 3500 0.3 3000 0.25 30% 2500 0.2 2000 0.15 30% 1500 30% 25% 70% 23% 1000 30% 500 33% 83% 70% 29% 17% 70% 67% 71% 2007 2008 2009 77% 75% 2010 2011 0.05 70% 0 2006 1.韓国の開発援助 Bilateral ODA に比べると低い水準にあります。しかし、韓国 の ODA 額は年々増加しており、2006 年から 2011 年にかけて ODA 額は 3 倍に増加。また、 1 各メンバー国は、定期的に(4~5 年に一回)援助実績 及び政策について審査を受ける。DAC 事務局とともに、 メンバーのうち 2 カ国が審査国として事前調査の準備に あたる。被審査国を調査団(DAC 事務局及びメンバー国 2 カ国)が訪問する本国調査と、被審査国が援助を実施し ている途上国を調査団が訪問する現地調査を踏まえ、 DAC 本会合の場で全メンバー国により審査が行われ、審 査結果は報告書として公表される。(外務省 HP より) 2 本稿では Korea DAC Peer Review 2012 をもとに記載。 JICA France Office 0.1 70% 0 韓国は、1996 年に OECD に加盟、2010 年 に DAC への加盟を果たし、2011 年には釜山 ハイレベルフォーラム4を成功裏に開催するな ど、自国の経済発展とともに開発援助の分野 におけるプレゼンスを向上させてきました。韓 国の人口規模は約 5,000 万人、世界第 15 位 の経済規模ですが、ODA 総額は約 13 億ドル、 GNI 比は 0.12%にとどまり、DAC 加盟国平均 ODA/GNI % 30% USD million なお、韓国の技術協力の実施機関である KOICA(韓国国際協力団)は、1991 年の事 業開始の際、JICA の援助手法や組織制度 を知るため、KOICA 職員を JICA に派遣して います。 この韓国の援助を概観しながら2、DAC に よって行われた援助審査の概要をご紹介し ます。(援助審査報告書は本年 1 月 30 日に DAC より公表されています。) Multilateral ODA 2012 ODA/GNI(%) 2013 2014 2015 ODA/GNI Projection(%) Sources: OECD statistics and peer review team estimates; MOSF (Ministry of Strategy and Finance of the Republic of Korea) (2008) Korea's ODA and the MOSF, MOSF, Seoul; GOK (2010) Strategic Plan for International Development Co-operation, GOK, Seoul(http://www.oecd.org/dac/peer-reviews/korea.htm) (1)援助実施体制 韓国の開発援助は、日本の外務省に相当 する外交通商部(Ministry of Foreign Affairs and Trade)が所掌する無償援助、また財務省 に相当する企画財政部(Ministry of Strategy and Finance)が所掌する譲許性借款(有償援 助)の 2 本柱で構成されています。また、外交 通商部の無償援助実施機関として韓国国際 協力団(KOICA)が、有償援助の実施機関とし て韓国輸出入銀行・対外経済協力基金 (EDCF)があります。これらの上に、全体を統 括する役割を担う国際開発協力委員会 (CIDC)が設置され、政策と実施の整合性を保 3 援助審査チームによる試算。GNI 比 0.25%の達成には、 32 億ドル規模に拡大する必要があると見込まれる。 ~欧州の開発トレンドを読む~ ページ 2 図 2:援助実施管理体制 (注)図2:DAC Peer Review 2012(http://www.oecd.org/dac/peer-reviews/korea.htm) より JICA フランス事務所加工 つメカニズムが構築されています(図2参照)。 また、韓国の開発援助に従事する人員は、 現時点で計 399 名との人員体制となっていま すが4、前述のとおり今後援助量が飛躍的に増 加することが見込まれるため、大幅な人員増を 計画しているとされています5。 また、人員増と共に海外事務所への配置を 段階的に増員し、海外での実施体制強化を図 っています。 (2)援助実施内容 韓国は、26 か国(インドネシア、ベトナム、フ ィリピン、カンボジア、ラオス、ネパール、モンゴ ル、バングラディシュ、パキスタン、東チモール、 ウズベキスタン、スリランカ、ソロモン諸島、アゼ ルバイジャン、カメルーン、コンゴ民主共和国、 エチオピア、ガーナ、モザンビーク、ナイジェリ ア、ルワンダ、ウガンダ、ボリビア、コロンビア、 パラグアイ、ペルー。図3参照)を優先パートナ 図 3:韓国援助の優先国 4 出典:GOK(2008)OECD-DAC Special Peer Review Memorandum of the Republic of Korea, GOK, Seoul(http://www.oecd.org/dac/peer-reviews/korea.htm) 5 出典:DAC Peer Review 2012, The Main Findings and Recommendations(http://www.oecd.org/dac/peer-review s/korea.htm) JICA France Office ~欧州の開発トレンドを読む~ ページ 3 ー国として位置づけ、重点的な支援を行って います。この 26 か国の選定においては、当該 国のニーズや援助受入能力の有無をクライテ 及 び Development Experience Exchange Partnership Programme (DEEP)を立ち上げ、 首相府によるイニシアチブのもと、韓国の開発 リアとしつつ、韓国の外交方針を考慮している とされています。また、これらの国に対する援 助方針や事業内容は 2013 年中頃に公開され る予定です6。 韓国の無償援助は、教育、保健医療、ガバ ナンス、農水産業、産業・エネルギー、を援助 優先分野としており、譲許性借款は相手国の 経済インフラの整備に焦点を当てています。横 断的課題としては、ジェンダーと環境保護・気 候変動を優先課題に掲げており、特に後者の 経験を共有するためのアクションプランを発表 しました。前者の KSP では、韓国の経験を対 象地域・国の状況にあてはめ、共同制作研究、 ワークショップ、研修、フィールド視察、普及セ ミナーを行うもので、主に「経済開発」に焦点 が当てられており、後者の DEEP では「社会開 発」を中心とした活動が行われています。 2.韓国援助審査の概要 DAC 本会合における韓国援助審査におい 環境保護・気候変動については、国際協力の 世界における牽引役を担うとの高い意識を有 しています。例えば、途上国における気候変 ては、参加国から、ODA 実施制度の構築や援 助規模の拡大(2015 年までに GNI 比 0.25%達 成を目標)に向けた国内調整の努力と実績に 動対策を支援するスキームとして、2008 年に 「東アジア気候パートナーシップ」を立ち上げ たほか、各国との連協力により Global Green Growth Institute (GGGI)を構築し、グリーン成 長の研究と、途上国の環境に配慮した持続可 能な開発への研究成果の活用を行っています。 対し高い評価がなされるとともに、国際的な開 発課題に対する議論(気候変動等)における 韓国のイニシアチブや積極的な貢献を称賛す る声がありました。 さらに、韓国の経た経験を、新興国や中進 国との間で共有(Knowledge Sharing)する意義 また、2020 年までに、“グリーン ODA”を 30%ま で高めるとの目標を立てています。 また、韓国の援助政策では、ODA 資金を活 用して韓国及び相手国の民間企業が開発援 助に従事する機会を提供しており、韓国企画 財政部は、開発においてどのように PPP モデ ルを促進するかを議論する場として、政府機 関、民間企業、相手国等からなる Global Infra と重要性が確認され、これに対し韓国側からも 新興国のグッドプラクティスとして上述のような 知識共有の分野での貢献にコミットする旨の 発言がなされました。 他方、韓国援助の2つの柱である無償と借 款の実施体制については、コントロールタワー として前述の CIDC が設置されているものの、 政策と実施の双方の連携が必ずしも適切に機 Development Forum を立ち上げました。 1990 年代半まで被援助国であった韓国は、 能していない面があるとの指摘がなされまし た。 2010 年には DAC への加盟を果たし、比較的 短期間でドナー側に発展・転換した経験を背 景に、G20 においても BRICs(ブラジル、ロシ ア、インド、中国)等の新興国との知識共有を 目的とした、Knowledge Sharing Program (KSP) また、無償と借款の配分については、供与 国の状況(特に低所得国、脆弱国等)への配 慮を巡って議論があり、引き続き検討となった ほか、アンタイド化やプログラム化(Program Based Approach)の推進等についても指摘が あり、韓国側からはこれらへの取り組みへのコ ミットメントが示されました。 (END) 6 現在、26 の優先国中、9 か国においてカントリーパー トナーシップ戦略(CPS)が策定されているが、韓国は、 本年(2013 年)中頃を目途に全 26 か国の優先国に対する CPS を完成させる予定。もともと KOICA 及び ECDF ではそ れぞれに援助重点国を有していたが、これを統一させると いうもの。 JICA France Office ~欧州の開発トレンドを読む~ ページ 4 2.開発援助に関する欧州の世論調査 (1)EU の世論調査 欧州委員会は、毎年、EU 加盟 27 か国の国 民を対象に開発援助に関する世論調査を行 っています。2012 年の調査は各国の 15 才以 上の国民、2 万 6 千人を対象とし7、2012 年 6 月に実施され、同年 10 月に発表されました8。 以下にその結果を紹介します。 結果1 【EU 援助一般】「途上国の人々を助け ることは、①きわめて重要、②どちらかというと 重要、③それほど重要でない、④まったく重要 でない、⑤わからない、のうちどれか?」 回答者の 85%(各国平均)が途上国援助は 重要(きわめて重要 + どちらかというと重要)と 回答しており、回答者の大多数が開発援助を 支持する結果となりました。前年 2011 年の調 査9でも 85%であり、欧州の財政危機が継続し ている状況においても、開発援助を重要とする 結果となりました。重要(きわめて重要 + どち ークとイギリスが 4 パーセント・ポイント増、アイ ルランドとチェコで 3 パーセント・ポイント増とな っています。 結果2 【EU 援助一般】「EU のアクションのうち、 途上国にもっとも大きなインパクトを与えるのは、 次のどの分野か?」 (①気候変動、②移民、③貿易・金融、④エネ ルギー、⑤環境、⑥運輸、⑦農業、⑧平和構 築、⑨その他、⑩皆無、⑪わからない、からひ とつ選択) 「貿易・金融」との回答がトップで 29%(各国 平均、以下同様)、気候変動(7%)、エネルギ ー(5%)、環境(5%)等のグローバルイシュー の分野でのインパクトがあると考える回答は相 対的に尐なく、前年よりも 1~2 パーセント・ポイ ント減尐しています。 らかというと重要)の回答率が高かったのは、ス ウェーデン(97%)、デンマーク(94%)、ドイツ とポーランド(90%)だったのに対し、イギリスは 85%、フランスは EU 値を若干下回る 82%でし た。 前年に比べ、15 か国で重要(きわめて重要 + どちらかというと重要)の回答が減尐したもの の、1~3 パーセント・ポイントの微減に留まり、 重要(きわめて重要 + どちらかというと重要)と の回答が増加した国は 8 か国あり、リトアニアと ルーマニアが 6 パーセント・ポイント増、デンマ 7 回答者は無作為に抽出され、EU の委託を受け た調査団が直接回答者の自宅を訪問し、聞き込み を実施したもの。 8 « Solidarity that spans the Globe: Europeans and development aid » Special Eurobarometer 392 (October 2012), http://ec.europa.eu/public_opinion/archives/ebs/ ebs_392_en.pdf 9 フランス事務所「欧州援助の潮流」24 号 (2011.12)参照。 JICA France Office 結果3 【EU 援助一般】「途上国の開発におい て主要な障害となり得るのは何か?」 (①途上国政府の悪いガバナンス、②ドナーの 政策の不適切性、③汚職、④外国による天然 資源の濫用、⑤途上国による天然資源の濫用、 ⑥インフラの未整備、⑦天然資源の欠如、⑧ ~欧州の開発トレンドを読む~ ページ 5 資金不足、⑨自然災害、⑩紛争、⑪その他、 ⑫皆無、⑬わからない、のうちから 3 つまで選 択可) を支援すべき、③わからない、からひとつ選 択) 27 か国中、ルーマニアとリトアニアを除く 25 汚職(各国平均 53%)がトップ。次いで途上 国政府の悪いガバナンス(41%)、紛争(33%)、 資金不足(26%)、ドナーの政策の不適切性 (24%)、外国による天然資源の濫用(19%)、 インフラの未整備(19%)、自然災害(16%)、 天然資源の欠如(10%)、途上国による天然資 源の濫用(9%)との結果が出ました。 か国において、回答者の過半数が脆弱国を優 先して援助すべきと回答しています(各国平均 61%)。 結果4 【今後の EU 援助】「EU(欧州委員会 +EU 加盟国政府)がコミットした援助増額公約 いるが、このような国は引き続き援助を受け取 について、現在の経済状況を踏まえた、あな たの意見はどれか?」 (①公約した額よりも更に増額すべき、②援助 (①完全に賛成、②どちらかと言うと賛成、③ど ちらかと言うと不賛成、④完全に不賛成、⑤わ からない、のうちからひとつ選択) 増額の公約は順守すべき、③コミットしたもの の、増額すべきではない、④公約を守れない ので、援助額を削減すべき、⑤わからない、か らひとつ選択) 各国平均 61%が援助額を増加すべき(公約 した額よりも更に増額すべき + 援助増額の公 新興国への援助については、55%(各国平 均)が援助を継続すべきではない(どちらかと 言うと不賛成 + 完全に不賛成)と考えており、 このうち 24%が「完全に不賛成」と回答してい ます。「完全に不賛成」との回答率が高かった のは、スロベニア(73%)、オランダ(71%)、デ ンマーク(69%)、ドイツ(67%)、エストニア 約は順守すべき)と回答しており、前年の 62% と同様、高水準を維持する結果となりました。 国別に見ると、援助増額に好意的なのはスウ ェーデン(80%)、デンマーク(76%)、次いで オーストリア(74%)、ルクセンブルグ(73%)、 フランス(68%)、ドイツ(66%)、逆に「公約を 守れないので、援助額を削減すべき」の回答 率が高かったのは、ブルガリア(38%)、スロベ ニア(32%)、ギリシャ(30%)でした。前年と比 較すると、「援助予算を維持・増加すべき」から 結果6 【今後の EU 援助】「新興国経済(中国、 インド、ブラジルなど)は急成長を遂げたもの の、その国民の一部が貧困生活を強いられて るべきと考えるか?」 (67%)、フランス(66%)の順でした。 他方、新興国は貧困層を抱えているため援 助を引き続き受け取るべきとの回答が過半数 を超えたのは、ギリシャ、ポーランド、スウェー デンの 3 国で、次いでアイルランド、イタリア、イ ギリスでした。また新興国の貧困層支援の必要 性を世代別(15-24 才、25-39 才、55 才以上) に見ると、若い年齢層ほど理解が高いとの傾 向が示されました。 「援助額は増額すべきでない」への転向が認 められたのは、イタリア、オランダ、チェコ、スペ イン、フィンランド、スロバキア、ルクセンブルグ の 7 か国となっています。 結果5 【今後の EU 援助】「EU の途上国援助 に関し、あなたの意見により近いのは?」 (①途上国のうち脆弱国を優先的に支援すべ き、②EU は脆弱性の有無を問わずに途上国 JICA France Office ~欧州の開発トレンドを読む~ ページ 6 結果7 【今後の EU 援助】「開発政策において、 どのセクターを優先すべか?」 (①農業・食糧安全保障、②エネルギー、③教 雇用創出(各国平均 57%)、貧困から脱するた めの成長(42%)との回答がトップを占めまし た。 育、④社会保護、⑤保健、⑥上下水、⑦ジェン ダー、⑧貿易、⑨人権、⑩民主化支援、⑪経 済成長、⑫インフラ、⑬気候変動、⑭その他、 ⑮皆無、⑯わからない、から 3 つまで選択可) 人権(各国平均 34%)、教育(33%)、保健 (32%)が僅差で上位を占めました。一方で気 候変動(8%)、ジェンダー(8%)、エネルギー (10%)、貿易(10%)、インフラ(12%)を優先 すべきと考える国民は尐ないとの結果が出て います。 結果9 【民間企業の役割】「先進国の民間企 業が途上国に投資する際、社会的・倫理的な 責任を負っていると考えるか?」 (①完全に賛成、②どちらかと言うと賛成、③ど ちらかと言うと不賛成、④完全に不賛成、⑤わ からない、のうちからひとつ選択) 各国平均で 81%の回答者が賛成(完全に賛 成 + どちらかというと賛成)と回答しています。 国別に見ると、フィンランド、スウェーデン、オラ ンダ、キプロス、デンマークの回答者の 90%以 上が企業には社会・倫理責任があると認識し ています。 結果10 【民間企業の役割】「EU 各国は、民 間企業が開発途上国でビジネスを行う際の社 会・倫理規範の遵守に向けて、より取組みを強 化すべきと考えるか?」 (①完全に賛成、②どちらかと言うと賛成、③ど 結果8 【民間企業の役割】「途上国において 民間企業の果たす役割は次のうちどれか?」 (①途上国政府の有益なパートナー、②(人・ 資金・モノ等の)交流や技術進歩に貢献、③脱 貧困につながる成長に貢献、④雇用創出、⑤ 汚職に加担、⑥途上国を搾取、⑦その他、⑧ 皆無、⑨わからない、から 3 つまで選択) ちらかと言うと不賛成、④完全に不賛成、⑤わ からない、のうちからひとつ選択) 各国平均 87%が賛成(完全に賛成+どちらか というと賛成)と回答しており、民間企業の社会 的・倫理的規範遵守に関し、ドナーの努力も 必要であるとの回答が大多数を占めます。 結果11 【民間企業の役割】「一国の成長と開 発のためにもっとも重要なのはどのタイプの企 業か?」(①現地の零細企業、②現地の中小 企業、③国内レベルで事業を実施する現地の 大企業、④地域・大陸レベルで事業を実施す る現地の大企業、⑤多国籍企業、⑥その他、 ⑦皆無、⑧わからない、から 2 つまで選択可) 現地の中小企業(各国平均 50%)がトップで、 地域・大陸レベルで事業を実施する現地の大 企業(30%)、多国籍企業(28%)、国内レベル で事業を実施する現地の大企業(24%)、現地 の零細企業(21%)との結果でした。 JICA France Office ~欧州の開発トレンドを読む~ ページ 7 結果12 【個人のコミットメントの度合い】「途上 国の人々を助けるために、(フェアートレード等 上記の EU の世論調査の発表とほぼ同じ時期 に、フランス外務省とフランス開発庁(AFD)が の)途上国産の食品や製品を購入するために より多く支払う用意があるか?」 出費を増やす用意があると回答したのは各 国平均 44%で、昨年(47%)から 3 パーセント・ ポイント減尐しました。前年比で減尐が著しい 国は、ギリシャ(11 パーセント・ポイント減)、ポ ルトガル・リトアニア・チェコ(9 パーセント・ポイ ント減)でした。他方、途上国支援のために出 費の用意があるとの回答率が高かったのは、 スウェーデン(76%)、オランダ(76%)、ルクセ 共同で自国民を対象とするオンライン・アンケ ートを実施しました。対象は 15 才以上の 1, 007 名を対象としています10。以下にその結果を紹 介します。 ンブルグ(70%)でした。 結果13 【個人のコミットメントの度合い】「自国 評価は賛否両論で、「効果がある(きわめて効 果的+かなり効果的)」が 51%、「効果がない」 が 49%という結果となりました。 の援助・EU 援助が何に使われているか知って いるか?」 (①良く知っている、②尐し知っている、③まっ たく知らない、④わからない、からひとつ選択) 各国平均 44%の回答者が自国の開発援助 が何に使われているか「まったく知らない」と回 結果2 【フランスの開発援助一般】「開発援助 は有益であるが、課題の難しさに照らし合わせ ると不十分、という考えに賛成か?」 (①完全に賛成、②どちらかと言うと賛成、③ど ちらかというと不賛成、④完全に不賛成、のい 答しており、53%の回答者が EU の開発援助 がどう供与されているか「まったく知らない」と 回答。国別にみると、自国援助の使途を認識 (良く知っている + 尐し知っている)している 国民の数が多いのは、オランダ(81%)、デンマ ーク(80%)、フィンランド(79%)、スウェーデン (75%)、ドイツ(74%)、ポーランド(62%)、イギリス (58%)の順で、逆に使途をまったく知らない国 ずれかを選択) 回答者の 74%が賛成(完全に賛成 + どちら かというと賛成)しています。 結果3 【フランスの開発援助一般】「途上国の 汚職はあらゆる開発援助を無益にする、という 考えに賛成か?」(選択肢は上記2と同様) 回答者の 70%が、途上国の汚職はあらゆる 開発援助を無益にするとの考えに賛成してい 民の数が多いのは、ハンガリー(68%)、フラン ス(67%)、ブルガリア(63%)との結果が出まし るとの結果が出ました。 た。 この傾向は、EU 援助の使途の認識とほぼ同 じで、フィンランド(62%)、ポーランド(61%)、ドイ ツ(60%)、デンマーク(56%)、スロベニア(56%)、 イタリア(53%)が使途の認識度が高く、使途を 全く認識していない傾向が高いのは、フランス (71%)、ハンガリー(69%)との結果でした。 結果4 【フランスの開発援助一般】「フランスの 財政状況が厳しくとも、途上国を援助するのは (2)フランス国民の世論調査 JICA France Office 結果1 【フランスの開発援助一般】「総体的に みてフランスの開発援助は、①きわめて効果 的、②かなり効果的、③あまり効果的でない、 ④まったく効果的でない、からひとつ選択」 フランス援助の効果に対するフランス国民の « Enquête AFD/IPSOS : Les Français et l’aide au développement, novembre 2013 » disponible sur AFD.fr http://logi4.xiti.com/go.click?xts=284366&s2=13 &clic=T&type=click&p=Francais_aide_au_deve loppement_Novembre%202012%20V2%20VA.p df&url=http://www.afd.fr/webdav/site/afd/share d/ELEMENTS_COMMUNS/pdf/Francais_aide_ au_developpement_Novembre%202012%20V2 %20VA.pdf(英語版) 10 ~欧州の開発トレンドを読む~ ページ 8 当然、という考えに賛成か?」(選択肢は上記 2と同様) 回答者の 65%が、フランスの財政状況が厳 「目標2:普遍的初等教育の達成」 12% 「目標3:ジェンダーの平等の推進と女性の地 位向上」 5% しくとも途上国支援をするのは当然という考え に賛成。 「目標4:乳幼児死亡率の削減」 8% 「目標5:妊産婦の健康の改善」 2% 「目標6:HIV/エイズ、マラリア及びその他の 疾病の蔓延防止」 10% 「目標7:環境の持続可能性の確保」 10% 「目標8:開発のためのグローバル・パートナー シップの推進」 7% 結果5 【フランスの開発援助一般】「開発援助 は 単 な る金 の 無 駄遣い 、 と い う 考 え に 賛成 か?」(選択肢は上記2と同様) 回答者の 72%が「開発援助は単なる金の無 駄遣い」という考えに反対。 結果6 【フランスの開発援助一般】「フランス援 結果9 【フランスの開発援助一般】「経済開発 と環境への配慮の両立を途上国に求めること 助が優先的に援助すべき地域はどこか?」 (①サハラ以南アフリカ、②北アフリカ、③南米、 ④アジア、⑤中東からひとつ選択) は、①当該国の経済開発にブレーキをかける こととなる、②天然資源を保護しつつも開発を 達成する手段となる、のどちらか?」 サブサハラ・アフリカを優先すべきとの回答が トップで 56%、次いで北アフリカ(17%)、南米 (13%)、アジア(9%)、中東(5%)の順でした。 回答者の 87%が、「開発と環境保護の両立 を途上国に求めることは、天然資源保全のた めの手段」との結果。 結果7 【フランスの開発援助一般】「開発援助 においてフランスが優先すべき目標は?」 結果10 【途上国における開発援助のアクタ ー】次のドナーのうち、正当性、信頼性、効果 (①最貧の人々を対象とする貧困削減、②民 主化・人権への貢献、③貧困国の経済成長と 世界経済成長、④地球レベルの環境保全と気 候温暖化対策、⑤開発援助を通じたフランス の知見・フランス企業支援、⑥国際レベルでの フランスの影響力向上のうち、3 つまで選択 可) 「貧困削減」が 56%でトップ、次いで「民主化・ 的、公平、リソースがあるのは誰か? (①先進国ドナー、②国際機関、③新興国ドナ ー、④EU、⑤民間ドナー、⑥NGO 等の団体、 ⑦地方自治体、⑧わからない、の中から選択) 人権」(41%)、「貧困国の経済成長と世界経 済成長」(38%)、「地球レベルの環境保全と気 せると、①同レベルを維持すべき、②援助予 算を削減すべき、③援助予算を増加すべき、 候温暖化対策」(30%)、「開発援助を通じたフ ランスの知見・フランス企業支援」(25%)、「国 レベルでのフランスの影響力向上」(13%)との 結果が出ました。 の中からひとつ選択せよ」 ①現レベルで維持すべき:38% ②援助予算を削減すべき:18% ③援助予算を増加すべき:44% 結果8 【フランスの開発援助一般】「MDGs の 8 つのゴールのうち、どれがもっとも重要と考え るか?」 「目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅」 46% 結果12 【フランス ODA の目標達成に必要な 手段】「EU 加盟国のうち 11 か国が金融取引税 の導入を準備しているが、同税の税収は以下 のどれに優先的に充当すべきと考えるか? 」 JICA France Office 結果11 【フランス ODA の目標達成に必要な 手段】「フランス政府予算の 3%が開発援助に 充てられているが、現在の状況に照らし合わ ~欧州の開発トレンドを読む~ ページ 9 (①経済成長の活性、②公共財政赤字の削減、 ③途上国の貧困削減とエイズなどの流行病対 策、④気候温暖化対策から、2 つまで選択可) フランス国民の大半が、金融取引税の税収を 経済成長の活性に充てるべきと回答しつつ、2 人に 1 人は途上国の貧困削減と流行病対策 に充てるべきと考えています。 ①経済成長の活性(34%)、 ②公共財政赤字の削減(29%)、 ③途上国の貧困削減とエイズなどの流行病 対策(27%)、 ④気候温暖化対策(10%)。 (END) パートナー紹介 今月号より、開発に取り組む様々なパートナーを紹介します。今 回は、フランス開発庁(AFD)の対外関係・連携局次長、対外関係 課長エマニュエル・デゥブロワーズ氏です。 1) 現在、どのような業務に取り組んでいますか? AFD の対外関係・連携局次長として、マルチ・バイドナー、国連、EU の各種機関及びフランスの援助アクター(地方自治 体、大学、研究所、民間財団)等、様々なパートナーとの関係を管轄しています。特に EU 加盟国の開発実施機関として、 EU 諸機関との関係構築はとりわけ重要な意味を持ちます。また AFD の説明責任の一環としてフランス議会との窓口でも あり、透明性の観点から AFD 融資の情報公開にも携わっています。 2) ODA・開発協力について、どのような展望をお持ちですか? 国際公共財の重要性が増大する中、開発協力は不可欠ですが、中所得国には資金投入そのものは最早目的となり得ない一 方で、低所得国の状況はその逆といったように、途上国の状況に応じて目標と手段を使い分けなければならないと考えま す。譲許性借款のみならず、長期融資(非 ODA) 、リスク・シェア(保証) 、能力強化、技術移転等、民間の市場では難し い商品をオファーすることが、AFD の開発協力政策の核です。パートナーである途上国政府・地方自治体・企業等のそれ ぞれのニーズに応えるためには、こうした支援ツールの多様化は不可欠で、まさに JICA、AFD、KfW は有償支援や新しい 融資ツールを発展させてきました。しかし開発援助と言うと現在の ODA に限定されており、上記の多様な支援ツールは ODA として計上されていません。開発援助の概念をどのように再構築してゆくかが課題と考えます。 3) JICA へのメッセージ JICA は KfW に次ぐ 2 番目のバイの協融相手であり、AFD にとって戦略的なパートナーです。過去 10 年間の JICA との協調 融資累計は 880 百万ユーロに達しました。その内訳はインドネシアやベトナムの気候変動対策、ケニアの地熱発電事業等 で、いずれも AFD にとり象徴的な重要な事業での協調融資です。昨年 12 月 6~7 日にパリで開催された第 3 回 JICA-AFD リトリート会合では、両機関の協力強化のための新たな協力の可能性を見出すことができたと思います。私個人として、 これらの可能性が現地ベース(特にアフリカ)において早期に具体化することを願っています。 AFD と JICA のパートナーシップは、両機関の戦略的分野にも関係しており、両機関が協力することで、援助アーキテク チャーにおける影響力を確立することが可能であり、両者の協力関係は国際的な議論の場においても参考とされ、敷衍さ れるものと考えます。例えば両機関は OECD、及び IDFC(International Development Finance Club1)のメンバーとして、 これらの場において、両機関が開発における貸付の有用性(市場が対応しないケースにおいて、公的な資金協力が果たす 役割)を高めていくことが可能です。この議論は、ポスト 2015 年の協力の将来に向けて重要なポイントとなると考えま す。 (注 1)2011 年 9 月にドイツ KfW 開発銀行グループの主導の下に設立された相互協力のためのネットワーク。19 の先進国 ・新興国・地域開発金融機関により構成される。先進国開発金融機関としては、KfW、AFD、JICA が参加。 JICA France Office ~欧州の開発トレンドを読む~ ページ 10