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オリンピック開催の年に想う

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オリンピック開催の年に想う
オリンピック開催の年に想う
大阪高等学校体育連盟柔道専門部
部 長
亀元 政志
本年 4 月 1 日より部長を引き受けることになりました茨田高校校長の亀元 政志です。微力な
がら高体連柔道専門部の発展に少しでもお役に立てればと考えております。よろしくお願い申し上
げます。
さて、みなさんベラルーシー、スロベニア、ジョージアといった国々をご存知でしょうか。2015 年世界柔道
選手権でメダルに届いた国々です。もちろん日本・フランス・ロシアなどもメダルを取っています
が男女合わせて 20 ヶ国にメダルが散らばっています。日本で生まれた柔道は世界に広まり、近年
の国際大会は組手系格闘技世界一決定戦の様相を呈してきています。このような中で日本柔道は大
苦戦していますが、そもそも日本選手ばかりが優勝していたのでは、世界に広まったスポーツとは
言えずオリンピック種目からとうの昔にはずされている事でしょう。そのオリンピックが 31 回目を迎え、本
年 8 月にブラジルのリオデジャネイロで開催されます。柔道競技は 8 月 6 日~12 日にかけて行わ
れ、日本で柔道が最も注目される期間となることでしょう。さらに 2020 年には前回開催の 1964
年から 56 年の時を隔て東京でのオリンピック開催も決まっています。1964 年の東京大会についてはご
存知の方も多くいらっしゃいますが、それ以前に 1940 年に日本でオリンピック(夏季:東京、冬
季:札幌)を開催することが決まっていたことはあまり知られていません。残念ながら戦争による
影響で開催されず幻の開催となりましたが、この時の日本招致に活躍されたのが、柔道の創始者嘉
納治五郎先生でした。当時、すでに国際連盟から脱退し国際社会から孤立していく日本に対する反
感が渦巻く中、得意の英語と嘉納先生の人徳で何とか招致に導いたそうです。当時の IOC 委員か
らの人望も厚かった嘉納先生ですが、「あなたがやっている柔道もオリンピック種目に加えてはどうか」
という意見に対して「オリンピック競技に加える議論が進めば、敢えて反対はしないが、自ら求めてオリ
ンピックの仲間に加わることは欲しない」と答えています。理由として柔道は単に競技として見るよ
りは更に深く広いものだから、柔道に基づいた世界的組織を見ることに心を向けているということ
でした。柔道は単なる西洋的なスポーツやゲームではなく人生哲学であり、
「精力善用」
「自他共栄」
の言葉どおり、柔道を通して人間性を高め、世の中の役に立つ人になることが目的だからです。特
に我々がたずさわる高校柔道は学校教育の中で行われており、競技で一番を目指す鍛錬をすると同
時にその教育的意義を大切にし、柔道を通した人間教育を目指していきたいものです。今や日本を
しのぐ柔道人口を持つフランスで親が子供に柔道をさせる一番の理由は「哲学があり、教育的なス
ポーツだから」だそうです。柔道の技術、試合の形は随分変わりましたが、その精神はどこの国が
一番になろうとも受け継がれています。柔道誕生の国としていつまでも諸外国の手本となるように
ありたいものです。
昨年、奈良で行われたインターハイで審判をさせて頂きました。私が主審をした女子個人の 1 回戦で優
勝候補同士の対戦がありました。指導を取られ、有効を奪いリードしていた選手が残り 15 秒ほど
で有効を取り返され指導1の差で負けてしまいました。とても悔しい敗戦だったと思いますが、私
が驚いたのは試合後の礼で負けた選手が大きな声で「ありがとうございました」と言ったことです。
負けてふてくされる選手もいる中、全国の大舞台でしっかりと自分の負けを受け入れたその態度は
とても立派でした。彼女はその後の全日本ジュニアで見事に優勝しています。大阪の選手からもこ
のような立派な選手が多く育ってくれることを切に願って、巻頭の挨拶といたします。
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