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Planner of Risk Management

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Planner of Risk Management
PRMのポイント
(Planner of Risk Management)
〈リスクマネジメント協会認定資格〉
目次
はじめに
I. 概論
1. リスクマネジメントの歴史
2. 企業のリスク
3. 自然災害・事故のリスク
4. 企業生活とライフリスク
II. 経営
1. 新しい企業のリスクと課題
2. 製造物責任(PL)法
3. 知的所有(財産)権
4. 株主代表訴訟・役員賠償責任
5. 企業のリスク対策と展望
III. 財務
1. 財務諸表の見方
2. 財務戦略
3. 財務諸表分析とリスク
4. 資本政策とリスク
5. オフバランス取引とリスク開示
IV. 人事
1. 経営者のリスク
2. 採用と人事制度のリスク
3. 退職金・年金
4. 労務管理リスクマネジメント
5. 福利厚生制度
6. 従業員のキャリア形成
V. 独立・創業
1. 独立開業の決断
2. ビジネスプラン
3. 各種融資制度
4. 会社設立の実際
5. ファイナンスと税務
VI. 対策と実践
1. リスク分析
2. 財産と人のリスクマネジメント
3. リスク調査と分析
4. 人材のリスクマネジメント
5. リスクコントロール
6. リスクファイナンス
はじめに
私とリスクマネジメントとの出会いは、勤務先での損害保険業務です。
損害保険の代理店のような専門的な仕事ではありませんが、保険会社や代理店の担当者と
ミーティングを行って、保険の契約内容を確定して保険料を支払うという仕事です。
火災保険や自動車保険は身近な保険ですが、会社が契約する保険には通常あまり耳にしな
い保険も多くあります。
会社の保険は規模も大きく、仕事の重みに責任も感じます。
社内外の関係者と十分なミーティングを行ったつもりでも、「保険の内容は本当にこれで
よいのか」という問いには、回答に窮することも多くあります。
リスクマネジメントそのものが理解できてなく、回答に困ります。
リスクマネジメントの重要性を痛感する瞬間です。
保険の見積もりも客観的にチェックできず残念です。
このような状況を打開しようと、取引先に相談し資料を取り寄せました。
ところが、用語の意味がわからずスタートラインに立てません。
リスクマネジメントを本格的に勉強しようと書籍も探しましたが、適当なものが見つかり
ませんでした。
当時(2000年頃)、リスクマネジメント協会(現在の一般財団法人リスクマネジメント
協会)という組織があり、そこに認定資格があることを知りました。
PRM(Planner of Risk Management、以下PRMといいます。)という資格が私のニー
ズに比較的近かったので、それを通信教育で学びました。
この資格は全社的なリスクを網羅しており、実務的なリスクマネジメントの知識としては
十分な内容でした。
ここで学習した内容について要点をまとめ、「PRMのポイント」を作成しました。
私がPRMの資格を取得したのは2002年12月であり、当時の知識をもとに「PRMのポイ
ント」を作成していますが、今回の発行にあわせ、その後の社会情勢の変化などを踏まえ内
容の見直しを行っています。
なお、「PRMのポイント」は一般財団法人リスクマネジメント協会の試験範囲に沿って
構成されています。
リスクマネジメントを学ぶみなさまにとって「PRMのポイント」が学習の一助になれば
幸いに思います。
2015年5月
リスクマネジャー 小林賢治
一般財団法人リスクマネジメント協会個人会員
資格 GRMI DIPLOMA(Diploma in Risk Management)
CRM(Certified Risk Manager)
PM(Professional Project Manager)
PRM(Planner of Risk Management)
I.
概論
1. リスクマネジメントの歴史
(1) 貿易と保険
a. 保険の原型は大航海時代のヨーロッパで生まれ、貿易の拡大とともに普及し、その
後、保険が組織的に取り扱われるようになり、保険市場はさらに拡大しました。
(2) ロイズ
a. ロンドンのエドワード・ロイドのコーヒーハウスに、海上保険業者が集まるように
なり、保険の取引所として使用されるようになりました。取引は次第に盛んになり、
1871年に保険引受人の組織が法人化され、ロイズ組合が誕生しました。
b. ロイズでは、会員(アンダーライター(ネームとも呼ばれます。))から構成され
るシンジケートごとに代理人(エージェント)が任命され、ブローカーが保険売買
の仲介を行っています。
(3) リスクマネジメントの発展
a. アメリカでは第2次世界大戦後、企業の保険契約担当者が増加し、リスクマネジャー
が保険購入の専門家として活躍しました。その後、同時多発テロ、エンロンの粉飾
決算などを契機に、リスクマネジャーの職務が大幅に拡張しました。
b. 安全、情報など異なる分野のリスクマネジメントが融合し始め、全社的なリスクマ
ネジメントへと変化し、リスクマネジャーも全社的なリスクを管理する担当者へと
職域を広げました。
(4) RIMS(Risk and Insurance Management Society,Inc.)
a. RIMSはアメリカ、カナダを中心とした世界最大のリスクマネジメント団体であり、
1950年に設立され本部はニューヨークにあります。
b. 金融、保険、製造、販売、サービス、公共団体など幅広い業種、領域の会員で構成
されています。
(5) 日本の動向
a. 2006年5月に会社法が施行され、これにより大企業に内部統制システムが義務化
され、リスクマネジメント体制などの整備が求められるようになりました。
b. 2007年9月に金融商品取引法が施行され、これにより有価証券報告書提出会社に
おいて内部統制報告書の提出が義務化され、「財務報告に係る内部統制」の整備・
運用が開始されました。(日本版SOX法(JSOX)と呼ばれています。)
1
2. 企業のリスク
(1) 企業のリスク
a. 事業活動では、自然災害、事故、政治・経済環境、社会情勢、法的なリスク、ITの
リスクなどさまざまなリスクに直面します。
【リスクの例】
自然災害・・・地震、洪水など
事故・・・火災、爆発、交通事故など
政治的リスク・・・戦争、輸入規制など
経済的リスク・・・為替変動など
社会的リスク・・・ボイコットなど
法的なリスク・・・製造物責任(PL)、知的財産、株主代表訴訟など
ITのリスク・・・データの改ざん、漏洩など
(2) 専門家のリスク
a. 医師、弁護士、税理士など専門的な職業では固有の損害賠償リスクがあります。
b. 損害保険会社から専門の賠償責任保険が販売され、それによって損失への備えが可
能ですが、自らリスク意識を高め、業界のネットワークを活用して情報交換を行う
などリスクに対処して、損害賠償に至らないようリスクマネジメントに努めること
が重要です。
c. 公益財団法人日本医療機能評価機構の「医療事故情報収集等事業 平成25年報」
によると、平成25年の報告義務対象医療機関からの報告数は2,708件であり、前
年を上回り過去最多になりました。
3. 自然災害・事故のリスク
(1) 火災
a. 出火元の責任
「失火の責任に関する法律」によって、重大な過失がある場合を除き民法の規定
は適用されず、出火元の責任は問われません。
(a) 民法の定め
『故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害し
た者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う』(第709条)
(b) 失火の責任に関する法律の定め
「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナ
ル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」
2
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b. 類焼により被った損害は、損害を被った人が契約している火災保険によって補償さ
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れます。
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(2) 交通事故
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a. 交通事故では運行供用者の責任を問われる場合があります。
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(a) 自動車損害賠償保障法の定め
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『自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生
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命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ず
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と、被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったことならび
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に自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことを証明したときは、
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この限りでない。』(第3条)
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(b) 「自己のために自動車を運行の用に供する者」は運行供用者と呼ばれ、従業
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b. 交通事故では刑事上の責任、行政上の責任、民事上の責任が発生します。
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(3)PD>‡:j1<'()*:£Y<QRSR6BCTU€ŠiW‹26¤V€ŠQWXYZ!
労働災害
‹-;ŒibFO‡-'()*LWmPF%&89-Xi<TULY<f¥:EFZ[-¦
\]6^_PQFO‡:j1<'()*:œY<F`a§LbWcPF¤n¨E©9ª—a. 労働災害の死傷者数は昭和36年をピークに減少しています。
(「平成25年度リスクアセスメント研修事業 受講者用テキスト」より引用)
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「平成25年度リスクアセスメント研修事業 受講者用テキスト」より
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3
3
b. 平成26年の労働災害の死傷者数は106,674人で、前年に比べ0.9%増加していま
す。(厚生労働省公表値)
c. 労働災害発生の要因には物理的な要因、人的な要因、管理上の要因があります。
d. 労働災害の対策として法令遵守、安全衛生管理などがあります。
(4) 地震
a. 地震の損害には、人の死傷、財物の損壊、企業活動停止に伴う逸失利益などがあり
ます。
b. 大規模な被害が想定される地震ではリスクマネジメントではなく、クライシスマネ
ジメント(危機管理)が有効です。
(5) 風水害
a. 台風、集中豪雨では甚大な被害が想定され、クライシスマネジメント(危機管理)
の構築が重要です。
b. 風水害による損失は火災保険で補うことが可能です。
4. 企業生活とライフリスク
(1) 日常生活におけるリスク
a. 日常生活には病気やケガ、事故、教育・住宅の負担など多くのリスクが存在しま
す。
b. 日常生活において直面するリスクに都度対処しなければならないという点では、リ
スクマネジメントをライフマネジメントと考えることも可能です。
(2) 教育のリスク
a. 教育(特に子供の教育)には多額の出費が予想されます。
b. 教育は先行投資的な意味合いがあり、時代の流れを先読みすることが重要ですが、
経済環境の変化に伴う勤務先の倒産・業績不振によるリストラなど不安材料も多
く、先読みには限界があります。
(3) 住宅のリスク
a. 住宅取得には建物の欠陥、自然災害、地域の空洞化などのリスクがあります。
b. 住宅取得におけるリスク対処手段として、事業者の評判、候補地周辺の環境、イン
フラの整備状況の事前確認などがあります。確認は自ら行うことが重要です。
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(4) 病気のリスク
a. 長時間労働など雇用環境の悪化からストレスが増加し、健康面のリスクも増大して
います。
b. 自分の建康についてリスクを把握し、生活習慣病の予防など生活面をチェックして、
健康的な生活が送れるよう対処することが大切です。
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II. 経営
1. 新しい企業のリスクと課題
(1) 企業経営とリスクマネジメント
a. 企業を取り巻く環境(社会環境、経済環境など)の変化はめまぐるしく、先行きの
見通しは難しくなっています。このような状況から、企業ではリスクを正確に把握
して、それらに対処するために継続的なリスクマネジメントが不可欠になっていま
す。
(2) 経営者の意識
a. 経営者はリスクの存在を認識して、率先してリスクに対処する姿勢を示さなければ
いけません。
b. 経営者はトップダウンで全社的なリスクマネジメントを展開して、自ら組織的に取
り組むことが重要です。
(3) 新たなリスクの発生
a. 技術の進歩、社会環境の変化に伴う規制強化などによって、今までリスクでなかっ
た要素がリスクに変化したり、新たなリスクが発生したりします。
(4) 組織的な取り組み
a. リスクマネジメントでは組織的な取り組みが重要であり、専門部署の設置が望まれ
ます。
b. 指揮命令系統が独立している独立採算制の組織では、同じような事象が発生しても
情報が共有されず、各組織で異なった対応がなされ、巨額の損失を招く危険があり
ます。
(5) 人材の育成
a. リスクの把握、分析、評価、対応などリスクマネジメントについて社員への教育を
実施することが重要で、その中からコーディネーターとして活躍できる人材(リス
クマネジャー)を育成しなければいけません。
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2. 製造物責任(PL)法
(1) 製造物責任法
a. 1995年7月に製造物責任法が施行され、製品の欠陥によって生命,身体または財
産に損害を被った場合,製造会社などに対して損害賠償を求めることができるよう
になりました。
b. 製造物責任法施行前の損害賠償請求では、民法の規定により被害者が加害者の過失
を証明することが必要でしたが、製造物責任法の施行によって、製品の欠陥による
人の死傷、財物の損壊などが証明できれば、損害賠償を請求することができるよう
になりました。
(2) 安全性の取り組み
a. 製造物責任法の「欠陥」とは,製造物に関する事情(判断要素)を総合的に考慮し
て,製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。したがって、品質
上の単なる不具合などはこの法律の「欠陥」にあたりません。
b. 製品の安全性を確保するには、設計段階から安全に関するリスクを把握し、分析、
評価することが重要です。
(3) 消費者の意識
a. 製造物責任法の施行後20年が経過し、製品の安全性は当然確保されるべきもので
あるという意識が定着しています。企業には事故情報の開示、製品の回収、リコー
ルなど速やかな対応が求められています。
(4) ISO 9000シリーズとの関係
a. ISO9000シリーズの認証は法令遵守の上に成り立っており、この認証を取得した
からといって製造物責任法上の責任を免れることはできません。
(5) 企業の損失
a. 製造物責任法上の事故では、製品の回収、損害賠償だけでなく、製品の不買運動、
企業の社会的信用の失墜、株価の下落、株主代表訴訟なども懸念され、業績への影
響も見逃せません。
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3. 知的所有(財産)権
(1) 知的財産権とは
a. 知的財産権制度とは、知的創造活動によって生み出されたものを、創作した人の財
産として保護するための制度です。
b. 知的財産基本法では、『知的財産とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物
その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見または解明がされた自然
の法則または現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商
号その他事業活動に用いられる商品または役務を表示するものおよび営業秘密その
他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報をいう。』と定めています。
c. 知的財産基本法では、『知的財産権とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、
著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利または法律上
保護される利益に係る権利をいう。』と定めています。
(2) 知的財産権の種類
a. 知的財産権は、特許権、著作権などの創作意欲の促進を目的とした「知的創造物に
ついての権利」、商標権、商号などの使用者の信用維持を目的とした「営業標識に
ついての権利」に大別されます。
b. 特許権、実用新案権、意匠権、商標権および育成者権は、客観的内容を同じくする
ものに対して排他的に支配できる「絶対的独占権」といわれています。一方、著作
権、回路配置利用権、商号および不正競争防止法上の利益は、他人が独自に創作し
たものには及ばない「相対的独占権」といわれています。
c. 知的財産権のうち特許権、実用新案権、意匠権および商標権を「産業財産権」とい
い、特許庁が所管しています。
(3) 特許制度
a. 特許法の目的は、『発明の保護および利用を図ることにより、発明を奨励し、もっ
て産業の発達に寄与すること』(第1条)です。
b. 特許法で定める「発明」とは、『自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度
のもの』(第2条第1項)をいいます。
c. 特許を受ける権利は「発明者」にあります。この権利は発明の完成と同時に発明者
に帰属し、他人の発明を盗用した場合、特許を受ける権利はありません。
d. 職務発明については、従業者への給与、設備、研究費の提供など、使用者による一
定の貢献が不可欠であることを重くみて、使用者に無償の通常実施権(特許発明を
実施できる権利)を付与し(特許法第35条第1項)、さらに、あらかじめ従業者か
ら使用者に特許を受ける権利を譲渡するよう取り決めておくこと(いわゆる予約承
継)を認めています(同条第2項反対解釈)。
e. 特許権の存続期間は出願から最長20年です。
8
(4) 実用新案制度
a. 特許制度では、審査を行ってから特許権を付与するという「審査主義」を採用し、
実用新案制度では、早期権利付与の観点から形式的な審査のみを行う「無審査主義」
を採用しています。
b. 実用新案法の目的は、『物品の形状、構造または組合せに係る考案の保護および利
用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与すること』(第
1条)です。
c. 実用新案制度は、産業に役立つ技術的なちょっとした工夫、日常生活を便利にする
いわゆる小発明(考案)を保護する制度として設けられました。
d. 実用新案法で定める「考案」とは、『自然法則を利用した技術的思想の創作』(第
2条第1項)をいい、保護の対象は産業上利用できる『物品の形状、構造または組
合せに係る考案』に限定されます。
e. 権利の存続期間は出願から最長10年です。
(5) 意匠制度
a. 意匠法の目的は、『意匠の保護および利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、
もって産業の発達に寄与すること』(第1条)です。
b. 意匠法で定める「意匠」とは、『物品(物品の部分を含む。)の形状、模様もしく
は色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの』(第2
条第1項)をいい、いわゆるデザインを指します。
c. 権利の存続期間は設定登録から最長20年です。
(6) 商標制度
a. 商標とは、事業者が自己(自社)の取り扱う商品・サービスを、他人(他社)のも
のと区別するために使用するマーク(識別標識)をいいます。
b. 商標制度の目的は、事業者が商品やサービスにつける商標を保護することにより、
商標を使用する者の業務上の信用の維持を図ることを通じて、産業の発達に寄与す
るとともに需要者の利益を保護することです。(商標法第1条)
c. 商標権の存続期間は設定登録の日から10年です。(商標法第19条)ただし、商標
の使用が続く限り商標権を存続させることができます。(更新登録の申請(商標法
第20条)により存続期間(10年)を更新)
(7) 著作権
a. 著作権法の目的は、創作された著作物に関してその公正な利用に留意しつつ、著作
者の権利の保護を図り、「文化の発展」に寄与することです。
b. 著作権法で定める「著作者」とは著作物を創作した人をいいます。小説家や画家や
作曲家などの創作活動を職業とする人だけでなく、創作活動を職業としなくても小
説を書いたり絵を描いたりすれば、それを創作した者が著作者となります。また、
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著作物の創作を他人や他社に委託(発注)した場合、料金を支払ったかどうかなど
に関係なく、実際に著作物を創作した「受注者側」が著作者となります。発注者側
が納品後に著作物を利用するには、その旨を契約で取り交わすことが必要です。
c. 著作権、著作者人格権は、著作物を創作した時点で「自動的」に発生します。権利
を得るための手続きは不要で、これを「無方式主義」といいます。(著作権法第17
条第2項)
d. 著作権法上の権利には、一定の存続期間が定められ、この期間を「保護期間」とい
います。著作権の保護期間は、著作者が著作物を創作したときから原則として著作
者の死後50年間までとなります。(著作権法第51条)
(8) 植物の新品種の保護(育成者権)
a. 育成者権は植物の新品種についての知的財産権で、種苗法にもとづく品種登録によ
り発生します。
b. 種苗法にもとづく品種登録制度(品種保護制度)の目的は、植物の新品種を育成し
た者に知的財産権のひとつである育成者権を付与することで、植物の新品種の育成
の振興を図り、農林水産業の発展に寄与することです。
c. 品種登録制度の保護対象は植物の「品種」です。
d. 育成者権を有する者(育成者権者)は、登録品種および登録品種と特性により明確
に区別されない品種の種苗(植物体の全部または一部で繁殖の用に供されるもの)、
収穫物(植物体の全部または一部であって繁殖に用いられないもの)および一定の
加工品(小豆の水煮およびあん、米飯、いぐさのござならびに製茶)を業として利
用する権利を専有します。
e. 育成者権の存続期間は登録日から25年または30年で、木本の植物(果樹、林木、
鑑賞樹など)は30年、その他は25年となります。
4. 株主代表訴訟・役員賠償責任
(1) 株主代表訴訟
a. 会社法では、6か月前から引き続き株式を有する株主は、株式会社に対し役員など
の責任を追及する訴えの提起を請求することができると定めており、これを株主代
表訴訟と呼びます。(第847条)
b. 株主代表訴訟は、「民事訴訟費用等に関する法律」の「財産権上の請求でない請求
に係る訴え」に該当し、訴訟の目的の価額は160万円とみなされ、手数料は13,000
円になります。
c. 株主代表訴訟の件数は、1993年の旧商法の改正により急増し、2000年から減少
傾向にありましたが、2007年から増加に転じています。
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(2) 取締役の義務
a. 取締役の義務には忠実義務、善管注意義務があります。
b. 善管注意義務は、民法の『受任者は、委任の本旨にしたがい、善良な管理者の注意
をもって、委任事務を処理する義務を負う。』(第644条)という定めにもとづく
もので、会社の取締役が当然負うべき義務になります。
c. 取締役は経営のプロとして法令などの専門的な知識を有し、公序良俗に反する行為
をしてはなりません。
(3) 経営判断の原則(Business Judgment Rule)
a. 経営判断の原則とは、取締役に要求される能力に照らして、判断に著しい不合理が
ない限り経営判断を誤ったとは判断できないというルールで、著しい不合理が認め
られない限り取締役は善管注意義務違反に問われません。
(4) 会社役員損害賠償保険(D&O保険)
a. 損害保険各社から「会社役員損害賠償保険(D&O保険)」が販売されています。
b. 「会社役員損害賠償保険(D&O保険)」は、株主代表訴訟において損失を補填す
るひとつの選択肢になりますが、リスク処理手段として、役員は盤石な経営基盤の
構築を優先しなければなりません。
(5) コーポレート・ガバナンス
a. 東京証券取引所の「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」では、『コーポレー
ト・ガバナンスは企業統治と訳され、一般に企業活動を律する枠組みのことを意味
する。』としています。また、『コーポレート・ガバナンスは株主を起点として構
成されている。会社には株主以外にも従業員、債権者、取引先、顧客、地域社会な
どさまざまなステークホルダー(利害関係者)が存在し、それらとの円滑な関係な
しには企業活動から継続的に利潤を生み出すことはできないが、資本市場の視点か
ら見ると、コーポレート・ガバナンスの要は、資本の提供者たる株主である。』と
しています。
5. 企業のリスク対策と展望
(1) リスクおよびリスクマネジメント
a. ISO31000(リスクマネジメント)では、リスクを『目的に対する不確かさの影
響』、リスクマネジメントを『リスクについて組織を指揮統制するための調整され
た活動』としています。
b. リスクには伝統的な分類としてつぎのような分類があります。
(a) 純粋リスクと投機的リスク
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(b) 静態的リスクと動態的リスク
(c) 主観的リスクと客観的リスク
(d) 人的リスクと物的リスク
(e) 自然的リスクと人為的リスク
c. リスクマネジメントにも経営管理と同様にマネジメントサイクルがあり、つぎのプ
ロセスから構成されています。
(a) リスク処理の計画
(b) リスク処理の組織
(c) リスク処理の指導
(d) リスク処理の統制
d. ISO31000(リスクマネジメント)では、リスクマネジメントのプロセスとして次
の項目を設けています。
(a) コミュニケーションおよび協議
(b) 組織の状況の確定
a)
外部状況の確定
b) 内部状況の確定
c) リスクマネジメントプロセスの状況の確定
d) リスク基準の決定
(c) リスクアセスメント
a) リスク特定
b) リスク分析
c) リスク評価
(d) リスク対応
a) リスク対応の選択肢の選定
b) リスク対応計画の準備および実践
(e) モニタリングおよびレビュー
(f) リスクマネジメントプロセスの記録作成
e. リスク処理手段には、リスクの低減(軽減)、リスクの回避、リスクの移転(転
嫁)、リスクの保有の4つの手段があります。
(2) 保険の活用
a. 保険によって被った損害を補填することができます。
b. 保険は保険料を支払うことで利用が可能です。
(3) キャプティブ
a. 親会社が、グループ企業の保険を引き受けるために子会社として設立した保険会社
をキャプティブといいます。
b. キャプティブには、ピュア・キャプティブ、グループ・キャプティブ、アソシエー
ション・キャプティブ、レンタ・キャプティブなどがあります。
12
c. キャプティブには、保険料を低く抑え、保険を自由に設計できるなどのメリットが
ありますが、グループ全体の業績が悪化した場合、大きなリスクを抱え込む危険が
あります。
(4) クライシスマネジメント
a. リスクマネジメントは、不確実性の影響に備えた「事前のマネジメント」になりま
すが、クライシスマネジメントは、大地震など大規模災害が発生したときに損害を
最小限にとどめ、業務を復旧させるための「事後のマネジメント」になります。
b. クライシスマネジメントでは、大規模災害など緊急時を想定してそこで必要とされ
る組織、指揮命令系統、人命の安全の確保などを検討し、それらを危機管理マニュ
アルなどに文書化します。また、緊急時を想定した訓練を実施し、システムの見直
しを実施します。
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III. 財務
1. 財務諸表の見方
(1) 財務諸表
a. 「財務諸表等の用語、様式および作成方法に関する規則」では、財務諸表を『貸借
対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書およびキャッシュ・フロー計算書』と
しています。
b. 財務諸表は会社の経営成績や財政状態を表します。
c. 株式会社には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書および個別注記表
の作成が義務づけられています。
(2) 貸借対照表
a. 貸借対照表は、決算期末における会社の財務状態を表す計算書類で、「Balance
Sheet(バランスシート)」を略して「B/S」と表記されます。
b. 財政状態とは、会社の資金の調達状況(お金の出所)と運用状況(お金の使い道)
をいいます。
c. 貸借対照表は、資産、負債、純資産から構成され、右側には調達状況を、左側には
運用状況を記載し、左右の金額は一致します。
d. 債務超過とは、負債の金額が資産の金額を上回っている状態(純資産がマイナス)
をいいます。
e. 貸借対照表のリスクマネジメント上のチェックポイントは保険料、借入金などで、
具体的にはつぎのようなになります。
(a) 前払保険料(流動資産)、保険積立金(固定資産)などが計上されていれ
ば、保険がかけられていることがわかります。
(b) 短期借入金、長期借入金の金額によって借入金への依存状況がわかります。
(3) 損益計算書
a. 損益計算書は、企業の1会計期間内にいくら かったかを表す計算書類で、経営成
績を評価するものです。「Profit & Loss Statement」を略して「P/L」と表記さ
れます。
b. 利益は、収益(売上等)から費用(経費等)を差し引いた金額になります。
c. 利益には、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益、当期純利益があり、
計算式はつぎのとおりです。
(a) 売上総利益=(売上高)−(売上原価)
(b) 営業利益=(売上総利益)−(販売費および一般管理費)
(c) 経常利益=(営業利益)+(営業外収益)−(営業外費用)
(d) 税引前当期利益=(経常利益)+(特別利益)−(特別損失)
14
(e) 当期純利益=(税引前当期利益)−(法人税等)
d. 経常利益がマイナス、当期利益がプラスの場合、本業は赤字ですが、特別利益が計
上され、当期利益をプラスにしている可能性があります。
e. 経常利益がプラス、当期利益がマイナスの場合、本業は黒字ですが、臨時的な費用
が計上され、当期利益をマイナスにしている可能性があります。
(4) 株主資本等変動計算書
a. 株主資本等変動計算書は、1会計期間における貸借対照表の純資産の部の増減を表
した計算書類で、貸借対照表の純資産の部の内訳表とみることができます。
(5) キャッシュフロー計算書
a. キャッシュフロー計算書は、現金および現金同等物という「資金」が期首から期末
にかけてどのように変動したか、その原因を明かにするための財務諸表です。
b. キャッシュフロー計算書は、営業活動、投資活動、財務活動に関する資金の流れを
示すために作成されます。
2. 財務戦略
(1) 中小企業の財務リスク
a. 中小企業は大企業に比べ経営基盤が弱く、財務リスクの比率は高くなります。
b. 中小企業が抱える日常的なリスクに資金繰りがあり、これが日常的に実施されるリ
スクマネジメントの大部分を占めています。
c. 中小企業において不測の事態として考えなければならないのが経営者の死傷です。
経営者が死亡したり、重度の障害を負ったりして仕事に就けなければ、後継者がい
ても売上の減少は免れず、資金不足から経営危機に陥ります。
(2) 中小企業の事業保証資金
a. 中小企業において経営者が死亡したとき、業績が回復するまでの間経営をつながな
ければいけません。
b. 事業継承に備え事業保証資金の準備が必要です。なお、事業保証資金の計算式はつ
ぎのとおりです。
事業保証資金
=(短期の債務)+(事業を維持するための費用)
−(取り崩し可能な現預金の額)
短期の債務=(支払手形+買掛金+借入金)−(受取手形+売掛金)
事業を維持するための費用=(固定費) (回復に要する期間)
取り崩し可能な現預金の額=(現預金の額) (取り崩し可能の割合)
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c. 事業継承に必要な資金には、事業保証資金の他、遺族への弔慰金、死亡退職金など
があります。また、弔慰金、死亡退職金の支給の根拠となる規程類の整備も忘れて
はいけません。
d. 事業継承がうまくいかなければ会社の清算も考えなければいけません。会社を清算
する場合には、会社が保有する資産で負債をすべて返済し、税法で定められた税金
を支払います。
3. 財務諸表分析とリスク
(1) 財務分析
a. 財務分析には比率分析、実数分析、損益分岐点分析の3つの手法があり、そのうち
比率分析が最もポピュラーな分析手法になります。
b. 自己資本利益率(ROE)
(a) 自己資本利益率は、純資産(新株予約権は除きます。)に対する当期純利益
の割合(%)を示す指標です。
(b) 株主資本利益率は、株主から調達した資金と過去の収益のうち内部留保して
いた資金によって、どの程度の利益をあげたかを表しています。
(c) 当期純利益(分子)の増加、純資産(分母)の減少によって、自己資本比率
(ROE)は増加します。
(d) 自己資本比率(ROE)の計算式はつぎのとおりです。
c. 総資本利益率(ROA)
(a) 総資本利益率(ROA)は、総資本に対する利益の割合(%)を示す指標で
す。
(b) 総資本利益率(ROA)は企業の総合的な収益性を計る指標で、利益(分子)
の種類によって総資本営業利益率、総資本経常利益率などがあります。
(c) 利益の増加、総資本の減少によって、総資本利益率(ROA)は増加しま
す。
(d) 総資本利益率(ROA)の計算式はつぎのとおりです。
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(2) 安全性分析
a. 自己資本比率
(a) 自己資本比率は、総資本に占める純資産(新株予約権は除きます。)の割合
(%)を示す指標です。
(b) 自己資本比率が高ければ返済しなければならない負債(他人資本)が少なく、
健全性が高いと判断できます。
(c) 自己資本比率の計算式はつぎのとおりです。
b. 固定比率
(a) 固定比率は、自己資本に対する固定資産の割合(%)を示す指標です。
(b) 固定比率は資金調達源の安定性を示しており、固定長期適合率は長期借入金
などの固定負債も考慮した指標になります。
(c) 固定比率、固定長期適合率の計算式はつぎのとおりです。
c. 流動比率
(a) 流動比率は、流動負債に対する流動資産の割合(%)を示す指標です。
(b) 流動比率は短期的な支払能力を表します。
(c) 流動比率の計算式はつぎのとおりです。
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d. 当座比率
(a) 当座比率は、流動負債に対する当座資産の割合(%)を示す指標です。
(b) 当座比率は、流動比率と同様に短期的な支払能力を表しますが、流動比率に
比べより厳密な指標になっています。
(c) 当座比率の計算式はつぎのとおりです。
e. 手元流動性
(a) 手元流動性は、手元にある流動的な資金を示す指標です。
(b) 手元流動性の計算式はつぎのとおりです。
の
f. インスタント・カバレッジ・レシオ
(a) インスタント・カバレッジ・レシオは、支払利息に対する営業利益、金融収
益(受取利息、受取配当金など)の合計額の比率です。
(b) インスタント・カバレッジ・レシオは、通常の活動から生み出される利益が
支払利息をどの程度まかなっているかを表しています。
(c) インスタント・カバレッジ・レシオの計算式はつぎのとおりです。
(3) 収益性分析
a. 売上高利益率
(a) 売上高利益率には、利益(分子)の種類によって売上総利益(粗利)率、売
上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高当期純利益率などがあります。
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(b) 売上高利益率の計算式はつぎのとおりです。
b. 売上高総利益率
(a) 売上高総利益率は、売上高に対する売上総利益(粗利)の割合(%)を示す
指標で、粗利率ともいいます。
(b) 売上高総利益率の計算式はつぎのとおりです。
c. 売上高営業利益率
(a) 売上高営業利益率は、売上高に対する営業利益の割合(%)を示す指標で、
本業での利益率と表します。
(b) 売上高営業利益率の計算式はつぎのとおりです。
d. 売上高経常利益率
(a) 売上高経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合(%)を示す指標です。
(b) 売上高経常利益率の計算式はつぎのとおりです。
e. 売上高当期純利益率
(a) 売上高当期純利益率は、売上高に対する当期純利益の割合(%)を示す指標
です。
(b) 売上高当期純利益率の計算式はつぎのとおりです。
19
(4) 効率性分析
a. 総資産回転率(総資本回転率)
(a) 総資産回転率(総資本回転率)は、売上高が総資産の何回分にあたるかを示
す指標です。
(b) 総資産回転率(総資本回転率)の計算式はつぎのとおりです。
b. 固定資産回転率
(a) 固定資産回転率は、売上高が固定資産の何回分にあたるかを示す指標です。
(b) 固定資産回転率の計算式はつぎのとおりです。
c. 棚卸資産回転率
(a) 棚卸資産回転率は、売上高が棚卸資産の何回分にあたるかを示す指標です。
(b) 棚卸資産回転率の計算式はつぎのとおりです。
d. 売上債権回転率
(a) 売上債権回転率は、売上高が売上債権の何回分にあたるかを示す指標です。
(b) 売上債権回転率の計算式はつぎのとおりです。
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(5) 成長性分析
a. 売上高成長率
(a) 売上高成長率は、前年度の売上高に対する当年度の売上の増加率(%)を示
す指標です。
(b) 売上高成長率の計算式はつぎのとおりです。
b. 経常利益伸び率
(a) 経常利益伸び率は、前年度の経常利益に対する当年度の経常利益の増加率
(%)を示す指標です。
(b) 経常利益伸び率の計算式はつぎのとおりです。
の
の
の
c. 売上高研究費比率
(a) 売上高研究費比率は、売上高に対する研究費の割合(%)を示す指標です。
(b) 売上高研究費比率の計算式はつぎのとおりです。
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4. 資本政策とリスク
(1) 資本政策
a. 資本政策とは、株式公開に向けて、資金調達、株主利益・株主構成の適正化のため
に行う新株の発行、株式の移動などの作業をいいます。
b. 将来の経営権を確保するには安定株主比率の維持が重要な課題です。
c. 資金調達方法には、第三者割当増資、公募増資、新株予約権付社債の発行、株式分
割などがあり、公募増資、新株予約権付社債は不特定多数者を対象にした資金調達
方法になります。
d. 一般的に、株式を公開すれば株式の評価額は増加し、株主(特に創業者)は利益を
得ることができます。
(2) 資金調達方法
a. 株主割当増資
(a) 株主割当増資とは、既存の株主に持株割合に応じて株式を割当てることをい
います。
(b) 株主割当増資は既存株主の持株割合を変えずに、資本金と発行済株式総数を
増加させます。
b. 第三者割当増資
(a) 第三者割当増資とは、オーナー、役員、金融機関、取引先などの特定少数の
者に対し募集株式の割当を行うことをいいます。
(b) 第三者割当増資は株主割当増資に比べ自由度が高く、安定株主対策、特定の
者との関係強化など、株主構成の是正を目的とする増資、ベンチャーキャピ
タルなどからの資金調達の手段として用いられます。
c. 新株予約権付社債
(a) 新株予約権付社債とは、株式を一定価格で買い取る権利(新株予約権)がつ
いた社債をいいます。
(b) 新株予約権部分と社債部分を分離して譲渡できなくなり、利用の幅が狭くな
りました。
d. 株式分割
(a) 株式分割とは既存の株式を一定の比率で細分化することをいい、発行済株式
総数を増加させます。
(b) 株式分割は既存株主に平等に無償で行い、分割後の持株比率、純資産額を変
化させずに、発行済株式総数と既存株主の持株数を増加させます。
e. 株式移動
(a) 株式移動とは、同族間など特定の者の間で株式を移動させることをいいま
す。
(b) 株式移動には売買と贈与があります。
f. 公募増資
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(a) 公募増資とは、時価を基準にした価格で新株式を発行することをいいます。
(b) 公募増資は、広く一般に株主を募集するときの新株式の発行形態です。
(3) 資産運用リスク
a. 一般的に、ハイリターンが期待される運用はハイリスクを伴います。
b. 投資のリスクは、投資の結果(期待値)のバラツキ(標準偏差)によって判断でき、
バラツキが大きくなるほどリスクも高まります。
c. 異なる金融商品の組み合わせ(ポートフォリオ)によって運用することで、リスク
の分散が可能です。
(4) 資本コスト
a. 資本コストとは、企業が外部資金を調達するあたり支払わなければならないコスト
をいいます。
b. 借り入れ、社債発行における資本コストは、金利、借り入れおよび社債発行に伴う
各種コストの合計額から、税制上のメリット(課税所得から控除される金利)を差
し引いた額になります。
c. 株式における資本コストは、資金の調達者に支払わなければならない最低限の収益
率になります。
d. 株式において一般的に求められる期待収益率は、低リスクである預金などの金利以
上となることから、借り入れ、社債に比べ高くなります。したがって、実際の収益
率が資本コストを下回れば、投資家の期待に反する結果となり株価は下落します。
e. 債権者に対する税引き後の負債コストと株主への期待収益額の合計額を、負債と株
主資本の合計額で除した値は、加重平均資本コストと呼ばれます。なお、評価額を
時価にするか、簿価にするかによって収益率に差が生じます。
5. オフバランス取引とリスク開示
(1) デリバティブ取引
a. デリバティブ(金融派生商品)とは先物、先渡し、スワップ、オプションなどの取
引を商品化したものです。
b. デリバティブには為替リスク、金利リスクをヘッジする機能があります。
c. デリバティブによって少額の資金で高い収益をあげることができますが、リスクマ
ネジメントを誤れば大きな損失が発生します。
d. デリバティブを活用することによるリスク、活用しないことによるリスクを比較し
てどちらが得策か、総合的な判断を行わなければいけません。
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(2) オプション取引
a. オプションとは、所定の期間内に金利、株、通貨などの金融資産を特定の価格で売
買する権利をいいます。
b. オプションには、契約期間中のある一定の期日でのみ権利が行使できるヨーロピア
ン・オプション、一定の期日までのどのタイミングでも権利が行使できるアメリカ
ン・オプションがあります。
c. 特定の行使価格で原証券を買う権利をコール・オプション、売る権利をプット・オ
プションといいます。
(3) スワップ取引
a. スワップ取引は、外貨取引において直接取引と先物取引を同時に行うことで、為替
リスクをヘッジすること(為替スワップ取引)をいいますが、最近では、異なる通
貨や金利建ての支払い債務の交換取引を指すことが多くなっています。
b. 代表的なスワップ取引として、異なる種類の金利支払い債務(短期金利と長期固定
金利など)を交換する金利スワップ、異なる通貨建ての債権を交換する通貨スワッ
プがあります。
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IV. 人事
1. 経営者のリスク
(1) 経営者の人事に関するリスク
a. 経営者が病気や事故によって不在になったとき、意思決定が停滞したり、業務が停
止したりします。
b. 社長の意思決定に疑義を唱えることが難しい風土、環境では、経営者の暴走を抑制
する機能が働きにくくなります。
c. 経営者が後継者を誰にするかによってその後の事業展開が大きく変化し、規模が小
さい企業では事業継承を難しくします。
(2) 経営者の属性
a. 経営者のタイプは、事業展開(事業環境の変化、事業の多様性)によってつぎのよ
うに分類されます。
(a) 官僚型(事業環境の変化は穏やかで、事業の多様性が低い)
(b) 持株会社オーナー型(事業環境の変化は穏やかで、事業の多様性が高い)
(c) 起業家型(事業環境の変化は激しく、事業の多様性が低い)
(d) 変革リーダー型(事業環境の変化は激しく、事業の多様性が高い)
b. 官僚型は、単一の事業またはひとつの事業に収益を依存している企業に典型的に見
られるタイプです。トップになるまで特定の職能分野でキャリアを積むことが多く、
経営全体を見渡して判断するという経験を積むのは難しくなります。
c. 持株会社オーナー型は、ファミリービジネスや財閥に見られるタイプです。同族内
での継承によって後継者の育成を難しくします。
d. 起業家型は、事業環境の変化が激しいときでも、積極的にチャレンジしていくスタ
イルが特徴です。事業が軌道に乗った後、美術品や不動産を買いあさったり、手当
たり次第に新規事業に乗り出したりという行動が目立ちます。
e. 変革リーダー型は、事業環境の変化が激しい中、多様な事業を展開する企業が従来
の成功パターンから脱却して、一新するときに不可欠のタイプです。自分を取り巻
く環境につぶされない強いパワーとリーダーシップを有していますが、安定した事
業環境では、周囲から理解されにくく遊離しやすい存在です。
(3) ストックオプション
a. ストックオプションとは、会社役員、従業員などがあらかじめ定めた価格で自社株
式を購入できる権利をいいます。
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2. 採用と人事制度のリスク
(1) 採用のリスク
a. 求人を行う企業側で長期的な見通しがあいまいだったり、求める人材が不明確であっ
たりすると、求職者とのミスマッチが生じやすく、求める人材が集まらない、採用
した社員がすぐにやめてしまうなどの現象が現れます。
b. 採用時の労働条件の明示が不適切な場合、訴訟につながります。
(2) 在籍中のリスク
a. 社員の転職、引き抜きによって、機密情報が漏洩したり、教育費用が回収できなかっ
たり、後継者の育成計画が破綻したりします。
b. 人事制度、給与制度の不満から社員のモチベーションが低下して、業績の低迷、低
下など悪い影響を与えます。
c. 企業は公平な評価制度を適正に運用しなければいけません。社員の能力、適性を正
確に把握できなければ公平な処遇もできず、後継者の育成も見込めません。
d. 企業は、社員にどのような知識、経験が必要かというキャリアビジョンを示して、
社員の努力を促すとともに、計画的な異動を実施するなどキャリア形成の環境を整
備しなければいけません。
(3) 退職・解雇のリスク
a. 業績不振などを理由にリストラを実施する場合、労働基準法、労働契約法など関連
法規を遵守するとともに、権利の濫用にならないよう十分な注意が必要です。
(4) アウトソーシングのリスク
a. アウトソーシングによってコストの削減、業務の効率化などが期待できますが、委
託先への丸投げにならないよう注意しなければいけません。
b. 派遣労働者を受け入れる場合、労働者派遣法などの関連法規を遵守するとともに、
長期的なビジョンに立って派遣元との契約を確認し、派遣された労働者の就労を管
理しなければいけません。
3. 退職金・年金
(1) 企業年金制度
a. 確定給付企業年金
(a) 2002年4月に確定給付企業年金法が施行され、企業年金に関する積立義務、
受託者責任、情報開示など受給権保護のための統一的な基準が設けられまし
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た。これにより確定給付型の企業年金が再編され、厚生年金基金の代行の返
上が認められるようになりました。
(b) 新たな確定給付企業年金には、規約型企業年金と基金型企業年金の2種類が
あります。
(c) 規約型企業年金では、労使が合意した年金規約にもとづき事業主が信託会社
や生命保険会社などと契約を結び、企業の外で年金資金を管理、運用して、
年金給付を行います。
(d) 基金型企業年金では、企業とは別の法人格をもった基金を設立して、基金に
おいて年金資金を管理・運用し、年金給付を行います。
(e) 確定給付企業年金を実施する事業主は、労使の合意にもとづいて制度の内容
を規定した年金規約を作成し、厚生労働大臣の承認または基金の設立の認可
を受けなければなりません。
b. 確定拠出年金
(a) 2001年10月に確定拠出年金法が施行され、新たに確定拠出年金が導入され
ました。
(b) 確定拠出年金では拠出された掛金は個人ごとに明確に区分され、掛金とその
運用収益との合計額をもって給付額が決定されます。なお、給付額は積立期
間中の運用結果によって変動します。
(c) 確定拠出年金では、運用は個人の責任で行い、リスクは個人が負います。
(d) 個人ごとに管理された年金資産は離職、転職の際、他の確定拠出年金に移管
することが可能です。
(2) 厚生年金基金制度
a. 厚生年金基金制度は1966年に発足しました。
b. 厚生年金保険法などに定められた要件を満たし、厚生年金基金の設立認可を受ける
ことによって、企業が拠出する掛金は全額損金に算入でき、加入員の掛金は社会保
険料控除の対象になるなど、公的年金と同様の税制上の優遇措置が認められていま
す。
c. 特別法人として設立した基金が主体となって制度を運営、管理します。
d. 厚生年金基金では、厚生年金の一部を国に代わって支給する代行部分に一定水準以
上の上乗せ(プラスアルファ部分)がある他、プラスアルファ部分の一定割合以上
について終身年金が義務づけられるなどの措置が講じられています。
e. 下請け企業など特定の企業集団、都道府県などの特定の地域における事業協同組合、
商店街振興組合などによって設立された厚生年金基金では、業績不振や社員の高齢
化によって掛け金が支払えない企業が現れ、資金不足から解散に追い込まれる基金
が発生しています。
f. 2014年4月に施行された「公的年金制度の健全性および信頼性の確保のための厚
生年金保険法等の一部を改正する法律」によって、施行日以後の厚生年金基金の設
立は認められず、代行割れの基金は早期解散(5年以内)となるなど、厚生年金基
金の解散、代行返上の動きも顕著です。
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4. 労務管理リスクマネジメント
(1) 労働時間管理
a. 労働基準法では、労働時間を1日につき8時間以内、1週につき40時間(労働者が
10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業は44時間)以内と定め
ています。(労働基準法で定める労働時間を法定労働時間といいます。)
b. 変形労働時間制とは、一定の条件のもと一定の期間を平均して1週間の労働時間が
40時間を超えない範囲で、特定の日の労働時間が8時間を超えたり、特定の週の労
働時間が40時間を超えたりしても労働させることができる制度です。
c. 変形労働時間制には1か月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週
間以内の非定型的変形労働時間制、フレックスタイム制があります。
d. 裁量労働制には専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制があり、それぞれ見
なし労働時間が適用されます。
(2) 労災リスク
a. 労働災害には業務災害と通勤災害があります。
b. 労働災害は業務遂行性、業務起因性によって判断されます。
c. 労働災害は労働力を喪失させるだけでなく、職場環境を悪化させたり、企業の信用
力を低下させたり、損害賠償請求を招いたりします。
d. 労働災害の対策として社員への安全教育、機械装置の点検・改良、過労・ストレス
の予防措置、労災保険の加入などがあります。
(3) ハラスメント
a. ハラスメントとはいやがらせやいじめを指し、セクシュアルハラスメント(セクハ
ラ)、パワーハラスメント(パワハラ)、モラルハラスメント(モラハラ)などが
あります。
b. セクシャルハラスメントには対価型と環境型があります。
c. 対価型セクシャルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動に対して拒否
したり、抵抗したりした労働者が、解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・
昇格対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けることを
いいます。
d. 環境型セクシャルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動によって労働
者の就業環境を不快にしたり、労働者の能力発揮に重大な悪影響を与えたりして、
労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。
e. 厚生労働大臣の指針では、セクシャルハラスメントに関する事業主が雇用管理上講
ずべき措置として「事業主の方針の明確化およびその周知・啓発」などの10項目
を定めており、事業主はこれらの項目を必ず実施しなければなりません。
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(4) 男女雇用機会均等法
a. 男女雇用機会均等法では、つぎの項目において性別を理由とする差別を禁止してい
ます。
(a) 募集、採用
(b) 配置、昇進、降格、職業訓練
(c) 一定範囲の福利厚生
(d) 職種・雇用形態の変更
(e) 退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新
a. 男女雇用機会均等法では、セクシャルハラスメント防止のため事業主に雇用管理上
必要な措置を義務づけています。
(5) 出向
a. 労働契約法では、出向の命令がその必要性、対象労働者の選定に関する事情、その
他の事情に照らし、権利の濫用が認められる場合には無効とすることを定めていま
す。
b. 企業は出向者に十分な説明を行い、出向者とのトラブルを避けなければいけません。
特に海外勤務者には、現地の治安状況などカントリーリスクについても説明を行う
ことが重要です。
5. 福利厚生制度
a. 福利厚生費には法定福利費、法定外福利費があります。
b. 法定福利費とは社会保険料などの事業主負担分です。具体的には、健康保険料、介
護保険料、厚生年金保険料、労働保険料(雇用保険料、労働者災害補償保険料)、
児童手当拠出金、障害者雇用納付金、労働基準法にもとづく災害補償の費用などが
あります。
c. 法定外福利費は、法律によって義務づけられていない使用者が任意で行う福利厚生
に関する費用です。具体的には、住宅手当、家賃補助、社宅・独身寮、がん検診な
どの法定健康診断への上積み、法定の育児・介護休業への上積み、慶弔・災害見舞
金、運動施設・保養所などの余暇施設、文化・体育・レクリエーション活動の支援、
資格取得・自己啓発の支援、財形貯蓄制度、社内預金、社員食堂などがあります。
(1) 社会保険
a. 社会保険料には健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労働者災害補償保険料
があります。
b. 支給回数が1年につき3回以内の賞与には、健康保険、厚生年金保険の特別保険料
が課されます。ただし、年俸制で毎月12分の1ずつ均等に支給される給与は、その
対象になりません。
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c. 毎年4月から6月の賃金をもとに標準報酬月額の定時改定が行われます。この時期
の賃金が多ければ支払う保険料も多くなりますが、その後、賃金に著しい変動があっ
た場合には随時改定にて標準報酬月額の見直しが行われます。
(2) 住宅関連施策
a. 福利厚生の住宅関連施策には、社宅・寮の建設、住宅手当の支給、住宅取得に伴う
ローンの金利補助・低金利融資などがあります。
b. 社宅・寮などの自己負担分が市場の相場を大幅に下回っていれば、その差額が報酬
とみなされます。
c. 持ち家の有無、取得時期などが原因で社員に不平等感が生じることがあります。ま
た、住宅関連施策は金額も多く、人材の流動化を阻害する要因になります。
(3) 育児休業・介護休業
a. 育児休業、介護休業を取得する権利は法的に労働者に認められた権利であり、事業
主は労働者からの育児休業、介護休業の申し出を拒むことはできません。
b. 労働者の家庭環境は育児休業、介護休業後の復職に影響し、復職を難しくしていま
す。企業は職場環境の改善、休職中および復帰後のフォローなどを実施して、優秀
な人材をつなぎ止めるために制度の定着、改善に努めなければいけません。
(4) 団体定期保険
a. 団体定期保険は「グループ保険」ともいわれ、保険期間1年で加入形態は「全員加
入団体」、「任意加入団体」があります。
b. 「全員加入団体」(Aグループ、A契約)とは、契約の募集に際して従業員へ加入
の推奨を行うことなく、対象となる従業員を加入させる団体です。
c. 「任意加入団体」(Bグループ、B契約)とは、契約の募集に際して従業員に加入
の推奨を行い、希望者のみを加入させる団体です。
d. 「全員加入団体」(Aグループ、A契約)の契約では、従業員の知らない間に会社
が保険をかけたことを理由に遺族から訴訟が起き、「総合福祉団体定期保険」とい
う名称に変更され、従業員の同意のもと遺族の生活を保障する保険に変わりまし
た。
6. 従業員のキャリア形成
(1) キャリア・リスクマネジメント
a. 20歳台の従業員を戦力外として出向させる企業もあれば、30歳台で役員に就任さ
せる企業もあり、従業員の施策は企業によってさまざまです。企業が従業員のリス
クに対処するように、従業員も自分のキャリア形成についてリスクを把握し、対処
することが必要です。
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b. 従業員のタイプにはつぎのようなものがあります。
(a) 専門性をもたず、組織に依存して割り当てられた仕事に専念する一般的なサ
ラリーマンタイプ
(b) 特定の分野でキャリアを積んだ専門職タイプ
(c) 事業を運営できる総合的なキャリアをもつゼネラルマネージャータイプ
(d) 自分の専門性を活用して事業化に結びつけられるプロフェッショナルタイプ
c. 派遣社員、業務のアウトソーシングの拡大とともに、専門性をもつ社員、事業化に
つなげる力をもった社員への期待が高まっています。
d. キャリア形成では、自らの今までの仕事を振り返り、今後どの道に進むのかという
シナリオを描き、自分のキャリアを定期的に見直すことが重要です。また、シナリ
オを描くときには選択肢を絞りすぎず、環境の変化に柔軟に対応することが大切で
す。
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V. 独立・創業
1. 独立開業の決断
(1) 開業の時期
a. 独立・開業の時期に決め事はありません。常に「いま」が独立・開業のチャンスで
あり、積極的にチャンスをとらえることが大切です。
(2) 独立・開業に必要なもの
a. 独立・開業はゼロからのスタートになります。
b. 独立・開業には地道な努力が不可欠です。自分がやりたいこと、自分が好きなこと、
自分が興味をもてること、自分が納得できることをやることが努力を長続きさせる
秘訣です。
c.
かるビジネスは何か、楽に
けられる方法はないかなど初めから金
けが目当て
では、戦略面、戦術面に目を奪われ、思考が短絡的になり、事業を長続きさせるこ
とが難しくなります。
(3) 独立・開業分野の選択
a. 独立・開業の方向性にはつぎのようなものがあります。
(a) 新しい分野で新しい市場を開拓する。
(b) 今まで自分が経験してきた分野で、スキルやノウハウを生かして独立・開業
する。
(c) フランチャイズチェーンの本部からノウハウを学び、独立・開業する。
b. サラリーマンの独立・開業では、未知の分野でハンデを負うより自分の知識、経験
が生かせる分野で独立・開業を模索した方がメリットがあります。
(4) 独立・開業の注意点
a. 独立・開業はひとりがベストです。
b. 複数のメンバーが共同して独立・開業する場合には、各自の役割分担、責任の所在、
上下関係(職位)などを明確にして、メンバー同士で責任転嫁に陥らないよう注意
しなければいけません。
c. サラリーマンには所定の給与が保証され、仕事の仕上がりに関係なく定期的に給与
が支給されますが、独立・開業ではこのようなサラリーマンの感覚は捨て、「タイ
ム・イズ・マネー」で効率的な運営を心がけなければいけません。
d. 自分が得意な分野、好きな分野であっても顧客の意見、苦情に素直に耳を傾け、独
りよがりにならないよう注意しなければいけません。
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2. ビジネスプラン
(1) 独立・開業のタイミング
a. 独立・開業には、仕事のスキル、仕事を遂行するための能力、体力、気力の他、資
金調達など必要な環境を整備しなければいけません。これらが整備されたときが、
最も適した独立・開業のタイミングであるといえます。
b. 会社に勤務していても独立・開業の準備は可能です。在職中に仕事を通じ知識、ス
キル、ノウハウを積極的に身につけることによって、独立・開業に必要な知識、経
験を蓄積することができます。
(2) 独立・開業のスケジュール
a. 独立・開業までには次のようなステップがあります。
(a) 独立・開業の意思決定を行う。
↓
(b) 独立・開業の業種を選定する。
↓
(c) 家族など周囲の同意を得る。
↓
(d) 独立・開業資金を準備する。
↓
(e) 事業計画を検討、決定する。
↓
(f) 事務所、店舗など事業拠点を決定する。
↓
(g) 名刺、パンフレットなどを準備する。
(3) 事業計画の作成
a. 事業計画は、自分の力でどれくらい稼げるのかという観点で作成します。
b. 事業計画は、事業がうまくいった場合とうまくいかなかった場合を想定して作成し
ます。
c. 単年度の事業計画、中期の事業計画の2つの計画を作成します。
d. 事業計画は慎重に検討し、必要な経費を正確に把握して金額的には少し多めに見積
もり、売上は最低水準あるいは少なめに見積もります。
(4) 資金の準備
a. 独立・開業では、独立・開業までの準備資金、独立・開業後の運転資金を調達しな
ければいけません。
33
b. 資金の調達手段として自己資金、身内からの借金、金融機関からの融資などがあり
ます。
(5) スタッフの採用
a. 独立・開業の多くが夫婦2人からのスタートになります。
b. 家族の協力なしでは事業も成り立ちません。家族は精神的、肉体的な支えになりま
す。
c. 従業員を雇用する際、個人事業であることを忘れてはいけません。また、従業員に
気持ちよく働いてもらうために努力を惜しまず、率先して働かなければいけません。
3. 各種融資制度
(1) 公的資金
a. 株式会社日本政策金融公庫(日本公庫)の開業などを対象とした融資、自治体の融
資制度、創業支援のための補助金制度などを活用することによって、低利の資金調
達が可能です。
b. 株式会社日本政策金融公庫(日本公庫)は、株式のすべてを国が保有する株式会社
日本政策金融公庫法にもとづく特別な株式会社として平成20年に発足しました。
なお、国民生活金融公庫(旧国民金融公庫)、農林水産金融公庫、中小企業金融公
庫は既に解散し、これらの事業が統合され、国民生活事業、中小企業事業、農林水
産事業として株式会社日本政策金融公庫(日本公庫)に引き継がれました。
4. 会社設立の実際
(1) 法人成り(法人化)
a. 個人事業者が株式会社などの法人に移行することを「法人成り」といいます。
b. 法人化には次のようなメリットがあります。
(a) 社会的信用の向上
(b) 負債に対する無限責任から有限責任への移行
(c) 所得税から法人税への移行
事業主に集中していた所得を複数の社員に分散させることによって税負担の
軽減が可能です。
c. 個人の事業用財産、負債は通常個人から法人に引き継がれます。なお、この引き継
ぎはつぎのような手段で行われます。
(a) 現物出資
(b) 売買
(c) 賃貸借
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(2) 会社の資本金
a. 旧商法では、株式会社、有限会社の資本金の最低額を定ていましたが、会社法では
この規定が廃止され、資本金の制限はなくなりました。
(3) 会社の仕組み
a. 旧商法では、株式会社の取締役の人数、取締役会の設置について定めがありました
が、会社法では、取締役の人数制限はなく、取締役会の設置も任意になりました。
(ただし、公開会社は除きます。)
b. 会社法では監査役の設置が任意になりました。(ただし、監査役会設置会社、会計
監査人設置会社ではこの規定は適用されず、監査役を設けなければなりません。)
(4) 会社設立の手続き
a. 会社(法人)設立の主なプロセスはつぎのとおりです。
(a) 類似商号の調査
↓
(b) 許認可の確認
↓
(c) 定款の作成
↓
(d) 出資金の払い込み
↓
(e) 設立登記申請
↓
(f) 官公庁などへの届出
5. ファイナンスと税務
(1) 資金調達
a. 会社の創業期の資金調達手段には、金融機関からの借り入れ、ベンチャーキャピタ
ルなど外部資本の導入などがあります。
b. 会社の成長期では手形の割り引き、ファクタリングなどの手段によって資金を調達
することが可能になり、株式会社では公募増資、第三者割当増資などによって資金
を調達することができます。
(2) 株式公開
a. 株式会社では株式を証券取引所(1部・2部)、その前段階としてのマザーズ(東
京証券取引所)などに上場することによって、株式の売買が可能になります。
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b. 証券取引所では上場基準を定め、それにしたがい審査が行われ、上場の可否が決定
されます。
c. 株式公開によって企業の知名度・信用力の向上、社内体制の整備促進、資金調達の
選択肢の拡大などのメリットが得られる反面、業績の適時開示義務、それに伴う経
費の増大、株式の買い占めの懸念などが新たに発生します。
(3) 法人税の仕組み
a. 法人税は会社の所得に課税されます。税法上の所得は益金から損金を差し引いた額
になります。
b. 会社法上の利益と税法上の所得は異なります。
c. 会社の事業年度が法人税計算の対象期間になります。
d. 法人税の他、法人事業税、法人住民税が会社の所得に課税されます。
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VI. 対策と実践
1. リスク分析
(1) リスクマネジメントの定義
a. ISO31000では、リスクを『目的に対する不確かさの影響』、リスクマネジメント
を『リスクについて、組織を指揮統制するための調整された活動』と定義していま
す。
b. ISO/IEC73:2002では、リスクを『事象の発生確率と事象の結果の組み合わせ』、
備考として『一般に少なくとも好ましくない結果を得る可能性がある場合にだけ使
われる』と定義していました。
c. ISO31000では、ISO/IEC73:2002の定義で使用されていた「好ましくない結果」
という表記がなくなり、マイナス面だけでなくプラスの影響も含めたリスクの概念
に変更されました。また、ISO31000では、リスクの定義に「目的に対する」とい
う表記が使用され、リスクはあくまでも「目的」に対して生じるという理論建てに
なりました。
(2) リスクマネジメントの概念
a. ISO31000では、リスクマネジメントの枠組みとしてつぎの項目を設けています。
(a) 指令およびコミットメント
(b) リスクを運用管理するための枠組みの設計
(c) リスクマネジメントの実践
(d) 枠組みのモニタリングおよびレビュー
(e) 枠組みの継続的改善
(3) リスクマネジメントサイクル
a. 一般的に経営管理のプロセスないし要素は計画、組織、指導、統制といわれ、リス
クマネジメントも同様につぎのプロセスから構成されます。リスクマネジメントに
おいても循環的なマネジメントが行われ、これらはリスクマネジメントサイクルと
呼ばれています。
(a) リスク処理の計画
↓
(b) リスク処理の組織
↓
(c) リスク処理の指導
↓
(d) リスク処理の統制
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(4) リスクマネジメントプロセス
a. ISO31000ではリスクマネジメントプロセスにつぎの項目を設けています。
(a) コミュニケーションおよび協議
(b) 組織の状況の確定
(c) リスクアセスメント
(d) リスク対応
(e) モニタリングおよびレビュー
(f) リスクマネジメントプロセスの記録作成
b. ISO31000では、「リスクアセスメント」を『リスク特定、リスク分析およびリス
ク評価を網羅するプロセス全体を指す』としています。
c. ISO31000では、『リスク特定のねらいは、組織の目的の達成の実現、促進、妨
害、阻害、加速または遅延する場合もある事象にもとづいて、リスクの包括的な一
覧を作成することである。』としており、好ましくない影響だけでなく、目標達成
を促進する事象も含んでいます。また、『ある機会を追求しないことに伴うリスク
を特定することが重要である。』としており、何もしなかったことで得られるはず
の利益を見逃すというリスクを特定することの重要性を示しています。
d. ISO31000では、『リスク分析には、リスクの原因およびリスク源、リスクの好ま
しい結果および好ましくない結果、ならびにこれらの結果が発生することがある起
こりやすさに関する考慮が含まれる。』としており、リスク分析の際考慮すべき要
素を示しています。
e. ISO31000では、『リスク評価の目的は、リスク分析の結果にもとづき、どのリス
クへの対応が必要か、対応の実践の優先順位はどうするかについて意思決定を手助
けすることである。リスク評価には、組織の状況を考慮して選定されたリスク基準
と、リスク分析プロセスで発見されたリスクのレベルとの比較が含まれる。この比
較にもとづいて、対応の必要性について考慮することができる。』としており、リ
スクの分析結果とリスク基準の比較による評価が示されています。
(5) リスク処理手段
a. リスク処理手段はリスクコントロールとリスクファイナンスに大別されます。
b. リスクコントロールに属するリスク処理手段にはリスクの回避、リスクの分散があ
ります。
c. リスクの回避とは、リスクにかかわる行動を一切とらないという処理手段です。た
だし、この手段では利得を得るチャンスもすべて失います。
d. リスクの分散とは、工場、事務所などの事業拠点を地理的に分散させたり、商品、
原材料の保管を分散させたりして、リスクが発生する可能性のある事象を分散させ
ることをいいます。
e. リスクファイナンスとは、経済的損失を補填するための資金繰りをいいます。
f. リスクファイナンスにはリスクの移転(転嫁)、リスクの保有という手段がありま
す。
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g. リスクの移転には、火災保険、自動車保険などの保険による移転、契約による第三
者への移転があります。
h. リスクの保有には、自家保険、キャプティブによる意識的、積極的な保有と、リス
クに気づかず保険の手当てなどの対応ができない消極的な保有があります。
2. 財産と人のリスクマネジメント
(1) 企業財産
a. リスクマネジメントの対象となる企業の財産には、不動産、動産などの有体財産、
知的財産権などの無体財産、社員などの人的資源、商圏、取引関係などの外部資源
などがあります。
b. 企業は偶発的な事故が経営に及ぼす影響を予測し、これを未然に防止するための具
体的な対策を講じなければいけません。
(2) 製造物責任
a. 製造物責任法が平成7年に施行され、企業には、製品被害の未然防止の努力、被害
が発生した場合の迅速な救済が求められるようになりました。
b. 製造物責任法上の事故では、損害賠償金の支払いの他、被害者との和解交渉費用、
被害者への見舞金、弁護士費用、交通費、宿泊代などの出費、社会的信用・評価の
著しい低下などの影響が予想されます。
3. リスク調査と分析
(1) リスクの調査
a. チェックリスト、財務諸表、フローチャートなどのツールを活用して効率化を図り
ながら、会計資料、経営資料、業務資料、契約書ファイル、過去のリスクマネジメ
ントに関する記録、IT情報などをもとに会社全体を調査して、リスクを特定し、分
析・評価します。
(2) リスクマネジャー
a. リスクマネジャーはリスクマネジメントの専門職で、主たる業務はリスクの調査、
分析・評価、処理になります。
b. リスクマネジメントは「保険の調達」というイメージが強く、外部にリスクの判断
を委ねる傾向がありましたが、自らの責任においてリスクを調査し、分析・評価し
て、処理するというスタイルが一般的になっています。
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(3) 外部の専門家の活用
a. 外部の専門家の活用は、リスクマネジメントにおいて有効な手段になりますが、専
門以外の領域では懸念があり、専門家を活用することによる新たなリスクに対して
も、対処を忘れてはいけません。
4. 人材のリスクマネジメント
(1) 企業におけるリスクマネジメント
a. 「企業は人なり」という言葉どおり人は企業にとって重要な存在ですが、つぎのよ
うな問題によって人材の流出が発生します。
(a) 経営上の問題・・・企業の倒産、リストラなど
(b) 経営方針、経営戦略上の問題・・・人事制度、給与制度に対する不満など
(c) 人の身体上の問題・・・長期欠席、傷病、死亡など
(d) 経営者、社員の不祥事の問題
(e) 人の活用に関する問題・・・後継者不足など
b. 人材の流出によって事業や業務の停滞、中断が発生して、結果的に業績の悪化、信
用の失墜などに至ります。
(2) 中小企業におけるリスク
a. 中小企業では経営者への依存度が高く、経営者に万が一のことがあれば企業の存続
が危ぶまれる事態に陥ります。
b. 中小企業では後継者の育成、事業継承が経営上の最大の課題になります。
5. リスクコントロール
(1) リスクコントロールの定義
a. リスクコントロールとは、リスクの発生を防止し、損害を最小限にするための手段
を採用することをいいます。
(2) 諸理論
a. ハインリッヒの法則
(a) ハインリッヒの法則とは、「1件の重大な災害事故の背景には29件の軽度な
災害事故があり、さらにその背景には300件の傷害を伴わない事象が存在す
る。」という法則です。
(b) 29件の軽度の災害事故、300件の傷害を伴わない事象は重大な災害事故の
予兆であるといえます。
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(3) リスク処理手段
a. リスクコントロールに属するリスク処理手段にはリスクの回避、リスクの分散があ
ります。
6. リスクファイナンス
(1) リスクファイナンスの方法
a. リスクファイナンスにはリスクの移転(転嫁)、リスクの保有という手段がありま
す。
(2) リスクの保有と保険
a. リスクを保有するのか、保険に転嫁するのか、保険以外の手段で処理するのか、あ
るいは、複数の手段を組み合わせて処理するのか、状況に応じ適切に判断すること
が重要です。
b. リスクの保有によって保険料を節約することが可能です。保険料に相当する金額を
内部留保した方が、企業にとって得策かどうか検討します。リスクと損失について
企業の想定と保険会社の想定を比較して、保険会社の見積もりの方が高ければその
部分が節約の対象になります。
c. 自社でリスクを保有した場合、損失処理が迅速にできる、損失の評価に納得感が得
られるというメリットがありますが、税法上の準備金や引当金に該当しなければ内
部留保は課税対象になります。保険は客観的で公平な基準により算定され、経費と
して控除対象になりますので、どちらが得策か十分な検討が必要です。
(3) リスク保有における資金調達
a. リスクの保有に必要な資金はつぎのような方法で調達します。
(a) 必要経費として処理する。
(b) 準備金として処理する。
(c) 自社またはグループ会社のリスクを専門に引き受ける保険会社(キャプティ
ブ)を子会社として設立する。
(d) 金融機関から借り入れる。
(e) 財政的な負担や法律上の責任を第三者に契約により転嫁する。
(4) 保険の機能
a. 保険の主な機能はつぎのとおりです。
(a) 損失を補填する機能
(b) 損失発生の不確実性を減少させる機能
(c) 小規模の企業に対する経営面の支援機能
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(d) 支払われた保険料をもとにした投資運用機能(保険会社の機能として)
(e) 保険業界において損失減少の活動を促進させる機能(2次的な機能として)
(5) 保険の対象
a. つぎのような性質を有するリスクが保険の対象になります。
(a) 事象の発生が偶然、不確定であること
(b) 事象の発生に大数の法則が適用できること
大数の法則とは、サンプリングによって得られる統計上の発生率(確率)は、
サンプリング個数の増加にしたがい母集団の理論的な発生率(確率)に近づ
くという法則をいいます。
(c) 人の意思によってリスクの発生率が左右されないこと
b. 保険の対象には、財物、人など実際に存在するもの、事業活動による人的行為に伴
う責任などあります。ただし、保険として成立するリスクに限られます。
(6) 保険選択の意思決定
a. 保険の選択はつぎのような項目をもとに検討され、意思決定されます。
(a) 自社のリスク評価結果にもとづくリスク処理方針
(b) 自社の財務状況、収益性
(c) 保険内容(保険金額、てん補限度額、免責事項、免責額など)と保険料
(d) 自社の損失発生時の過去の経験
以上
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