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第 6 章 在タイの海外留学関係機関ヒアリング調査 〔1〕 ドイツ学術交流会

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第 6 章 在タイの海外留学関係機関ヒアリング調査 〔1〕 ドイツ学術交流会
第6章
〔1〕
在タイの海外留学関係機関ヒアリング調査
ドイツ学術交流会インフォメーション・センター、バンコク
German Academic Exchange Services, Information Center
実施日
:
2009 年 3 月 9 日
場
所
:
18/1 Soi Goethe, Sathorn 1, Bangkok 10120 Thailand
協力者
:
Information Center Bangkok
●
Director
Jan Stevener(責任者)
DAAD の概要
DAAD は Der Deutsche Akademische Austauschdienst (ドイツ学術交流会)のことで、
ドイツ連邦共和国の大学と学生組織が共同で設置している機関。大学間における国際交流
を促進する役割を担っており、国内外の研究者、大学教員、学生を対象にした多様なプロ
グラムやプロジェクトを実施している。財政基盤は外務省を中心に、教育・科学・研究技
術省、経済協力省といった連邦政府から拠出されている。本部はボンにあり、在外事務所
は、北京、カイロ、ハノイ、ジャカルタ、ロンドン、メキシコ、モスクワ、ナイロビ、
ニューデリー、ニューヨーク、パリ、リオデジャネイロ、東京、ワルシャワに設置されて
いる。この他、世界各地にインフォメーション・センターが設置されている。
タイの DAAD は約 50 年前から活動しているが、インフォメーション・センターとして
は 1999 年から始動。ドイツ人ディレクター1 名、秘書 1 名、スタッフ 1 名、合計 3 名の
少人数体制で、ドイツ留学を希望する学生や研究者への情報提供やカウンセリング、大学
間学術交流を促進している。基本的には、優秀な学生や研究者をできるだけ多くドイツに
誘導することを主な任務としている。
ドイツ学術交流会インフォメーションセンター・バンコクのサイト:
http://www.daad.or.th/
●
インタビューの目的
ドイツのワンストップセンターである DAAD における高等教育プロモーションに関す
る取り組みについて情報を収集するとともにドイツの留学生受け入れ事情について現状を
調査することを主な目的とした。
1.
タイからドイツへの留学動向
ドイツ国内にいる留学生は約 200,000 人で、タイからは毎年約 100 名の学生が留学して
おり、年間ベースで 960~980 名のタイ人学生が学部、修士、博士課程に正規留学生とし
て在籍している。タイ人学生 960~980 名の内、約 100 名の学生の両親がタイに滞在して
おり、それらは foreign student22としてのカテゴリーに入る学生で、越境することなく在
籍している正規学生の数字である。過去 3 年間に限れば、PhD プログラムへの入学生が激
22 タイ国籍でありながら、ドイツ生まれの 2 世や 3 世といった非ドイツ国籍のタイ人永住者。
141
- 140 -
増の傾向にある。当センターが開設された 1999 年は、ドイツにおけるタイ人留学生数は
200 名足らずであったが、英語授業の提供を開始した後、この 10 年間で約 5 倍という劇
的な増加をみた。
2. ドイツの大学数と学生数
2008 年の統計でドイツには 356 の大学があり、191 万 2 千人の学生が学んでいる。そ
の内訳は工業大学、教育大学、神学大学を含む総合大学が 109 校で学生数は約 133 万人、
音楽大学、美術大学は 55 校で学生数は約 3 万 2000 人、専門大学が 192 校で学生数は約
55 万人となっている。専門大学というのはアカデミックな職業教育を提供することを目的
としており、卒業生は主に学問以外の世界で活躍している。専門大学では博士号の取得は
できない。
3. 留学生ビザと授業料・生活費
留学生ビザの取得手続きは日本と同様にかなり厳しく、審査に 2~3 ヶ月かかる。必要
書類の主なものとしては、銀行残高証明書、卒業・成績証明書、推薦書(大学院)などが
あるが、銀行残高証明書に必要な預金額は、年間 9,000 ユーロである。その内訳は、授業
料 1 学期当り 500(修士課程 650)ユーロ23、生活費は月額約 700 ユーロである。一旦ビ
ザを入手して入国した留学生は、日本と違って留学生自ら市・区役所など政府機関に出頭
して外国人登録を行うことを要求されていない。因みに日本国籍の場合は、日本国内でビ
ザを取得して留学するのではなく、滞在地に到着後、最寄りの外国人局で直接申請するこ
とになっているように、ドイツでは出身国によってビザ申請方法が異なる対応をしている。
また、留学生の就労については、終日の場合は年間 90 日、半日の場合は年間 180 日の
パートタイム労働が認められている。
4. 大学への出願方法と大学教育
ド イ ツ の 大 学 へ の 窓 口 は 、 そ れ ぞ れ の 留 学 希 望 大 学 の 留 学 生 課 24 (Akademische
Auslandsamt/International Office (AAA))である。希望大学および語学研修機関への出願
については、それぞれ共通の申請書があり、いずれもインターネットで入手、出願できる。
正規留学生としての出願については、希望分野を問わず、一般的に非常に優秀な成績と高
い語学力(ドイツ語か英語)が求められている。MBA を目指す場合は、実務経験を問わ
れる場合もある。PhD プログラムはもっぱら英語のみで行われる非構造的な体制になって
おり、入学申請は直接指導教授に対して行わなければならない。語学能力としては、TOEFL
で pBT578(iBT91-92)点あるいは IELT6.5 が最低限のスコアである。
ドイツの大学には約 10,000 のプログラム25が開設されており、その中の約 3,000 は特に
留学生を対象として開設されている。学士課程の大半の授業はいまだにドイツ語で行われ
23 学部と修士課程の授業料は、国籍を問わず徴収されるが、大学や専攻により多少の変動があり、個別に調べること
が必要である。また、博士課程は無料である。
24 各大学の留学生課の連絡先は
http://www.daad.de/deutschland/wege-durchs-studium/einrichtungen/06098.en.html
の英語サイトで調べることができる
25 ここでいうプログラムとは約 4 人の教員によって構成される分野のことである。
142
- 141 -
ているが、タイからの留学生の内の約 80%は、英語による課程の授業を受講している。絶
対数からすればオーストラリアの IDP や British Council などには到底及ばないが、DAAD
は研究者や大学院への優秀な学生の獲得を主な目的としており、アメリカやオーストラリ
アとは違って、量より質を重んじることを第一義として活動している。
同センターでは、タイの 10~12 年生を対象とする学校のうち約 20 校でドイツ語(日本
語は約 300 校)が開設されていると理解しているが、高校までの間にドイツ語を学習した
者であっても、タイの教育だけではドイツの大学に進学するために必要な語学・学力レベ
ルに達していないという判断から、12 年間の教育を修了している学生でもドイツ到着後約
1 年かけて大学入学のための予備教育を受けることを条件としている。
5. DAAD の窓口業務とプロモーション活動
DAAD の主たる業務は、学部、大学院への留学を希望する学生に対するカウンセリング、
研究者交流に関する情報提供、大学間の学術交流に関する情報提供等である。
ドイツ留学に対する支援については、必要な各種情報の多くはホームページにもかなり
詳しいが、同センターはタイ人学生の場合、口コミや家族の影響がことさら強い土地柄で
あること、ビジュアル情報および個別面談型の情報収集を好む傾向があるという判断から、
業務の大半は当センターのカウンセリングやハードコピー情報の提供に加えて留学経験者
などからの情報提供を効果的に利用している。
留学カウンセリングを目的に当インフォメーション・センターを訪れる人数は、平均一
日 2~3 名で、電話による問い合わせが 10 件ほどであり、それほど多くない。その中から
何名がドイツのどの大学にどのレベルで留学しているかといったデータを当センターは持
っていない。ビザを発給する大使館においても留学の種類が学部や大学院への正規留学な
のか短期の語学留学なのかといった種別の数を掌握していないが、情報収集に訪れる内の
約 80%は英語圏諸国の大学に留学しているという感触を得ている。利用者の大半は大学生
で、ドイツ留学を真剣に考えている者が多い。
有望な学生には、学生個人の希望分野に最適と判断される複数大学を紹介し、大学申請
手続き全般と志望大学の要求している資格要件について説明している。また、その分野で
の就学に見合った語学能力についてアドバイスを行っている。ただし、個別の大学へのリ
クルートや申請あるいはビザ取得などの諸手続きを個別に支援することは業務の一環とは
していない。
また、DAAD はドイツ高等教育のプロモーション活動の一環として、タイの主要大学に
客員講師を配し、就業時間の半分を利用して海外留学に興味を持つ学生に対し、ドイツ留
学についてアドバイスさせている。
研究者に対しては、希望する研究分野に最適な受け入れ大学を探す段階で支援したり、
必要に応じて研究者の研究成果を導き出す可能性のある指導者を紹介することもある。ま
た、帰国留学生や研究者の同窓会に対しては、様々なプログラムを企画するとともにドイ
ツに関する各種情報を提供している。
両国において大学間交流の促進を担当している関係者に対しては、双方にベストパート
ナーを見つけるための仲介もしている。特にタイの大学との学術交流を希望するドイツの
大学が来タイする場合は、DAAD の担当者が打ち合わせ会議に同行して支援することもあ
る。
143
- 142 -
そうした積極的なプロモーション活動は、ドイツが英語を母国語とする諸国より留学生
獲得が不利であるとの明確な認識、タイは日本と同じアジア文化圏であり、物理的に近く、
幼少期から日本語や日本文化に触れる機会が多いことからドイツよりも日本に留学する学
生が多いのは必然であるとの分析に基づくものである。また、日本とタイの大学間協力は、
日本からの諸施設・設備や人材などの支援による日本式「物と人」の影響が大であり、例
えばタマサート大学のエンジニアリング分野などにおいてはドイツなどが入り込む余地が
ないほどの関係を既に築いているとの現状認識を持っている。
6.留学促進策
今回の DAAD における面接調査を通じて、日本の留学生誘致に関してかなり示唆的なヒ
ントがあったように思われる。今後日本が優秀な留学生をできるだけ多く誘致するには、
次のようなことが考えられるのではなかろうか。
① 総合的なサービスを提供できる“ワンストップセンター”を開設する。機能は、日本
文化や留学に関する一般情報提供、留学アドバイジング、語学教育、ビザ取得支援、
同窓会サービスなどを中心とし、「日本との出会い」を提供する官民教合同の組織。
② 官民教挙げた留学生リクルート戦略が必要であるが、とりわけ官においては官民教合
同のワンストップセンターとしての留学情報センターに対する関係省庁(外務省、経
産省、財務省、文科省、法務省、労働省)横断的な資金拠出が望まれる。民について
は、対象国における進出企業へのインターンシップ・就職といった日本理解の機会や
初等・中等教育課程における企業奨学金の提供、大学は留学生のために現地語あるい
は英語による授業科目情報提供をインターネットやハードコピーで最大限提供する。
③ ワンストップセンターには、最低でも 2 名以上の日本人スタッフが常駐する。国際交
流基金、JASSO、JICA、JETRO などとの連携を深め、総合的な対応のできる体制を
構築する。また、各大学から提供される情報については、英文あるいは現地語以外は
用をなさないことを説明し、今後の受付ができない旨を通知する。
④ 日本留学を希望する学生のために、全授業を網羅した英文の総合案内冊子を出版する。
その中には、大学名、大学所在地、科目名、使用言語、インターネット・E メール・
アドレスなどを含め、博士課程については指導教授名を加える。
⑤ ドイツの高等教育機関の場合、10,000 コースある中で 3,000 が留学生のために英語で
開設されているが、同様に日本の大学が現在開設している英語による正規科目や短期
留学科目を全て紹介するリソース本を出版し、海外の高校・大学の図書館や日本の在
外公館、さらにはワンストップセンターなどに配布する。
⑥ 大学に英語だけで修了できる国際教育(留学生のための教育)コース・プログラムを
開設する。
⑦ 日本に留学するために必要な資格要件や各種プログラムに関するできるだけ多くの情
報をそれぞれの教育機関のウエブサイトにアップし、常時更新するとともにワンスト
ップセンターでも自由に閲覧できるデータベースとしても構築、提供する。
⑧ タイの約 300 の学校で日本語を教えているように、外国の子供たちが、初等、中等教
育の段階で日本について学ぶことのできる機会や手段を官民教協力して提供する。
⑨ 受け入れ留学生の在籍している分野あるいは教育機関が果たして個人の希望とマッチ
しているかどうかを確認し、可能な限り希望に沿うように教育機関をあげて努力する。
144
- 143 -
その結果、留学を成功裏に終了した学生は日本あるいは日本の大学について後輩に対
してポジティブなフィードバックをすることが期待できる。
⑩ リクルートに当たっては、対象国の諸事情を勘案しつつ、日本のビジュアル・カルチ
ャーを最大限に利用する手段(映像や漫画などビジュアルなアプローチ等)で情報宣
伝活動を推進する。
⑪ 文化、経済、政治など様々な分野における統合的な交流の機会を日常的に維持展開す
ることで、日本に関する興味を拡大し、魅力を理解してもらうグループを育成する。
<文責
145
- 144 -
小林
明>
〔2〕 フランス政府留学局バンコク支部
Campus France
実施日:2009 年 3 月 10 日
場
所:タイ国バンコク都南サトーン通り 29
フランス大使館・キャンパス・フランスデ
スク
協力者:フランス政府留学局バンコク支部
アンヌ・ソフィー・リベール(責任者)
Phennapa Tevid(シニア・スチューデント・
同
アドバイザー)
z
フランス政府留学局バンコク支部の概要:
フランス政府留学局バンコク支部(以下キャンパス・フランスと呼ぶ)は、フランスの
大学で学部教育および大学院修士課程教育を受けようとするタイ人学生に情報を提供し、
相談に応じることにより、フランスでの高等教育を受ける機会を促進するための機関であ
る。同支部のスタッフによれば、キャンパス・フランスの最も重要な目的は、留学希望者
が各自のニーズに沿った留学の時期、専攻を選択できるように学生一人一人に適切なサー
ビスを提供し、それによって学生の学習経験の質を向上させることである。
フランス政府留学局バンコク支部のサイト:http://thailande.campusfrance.org
z
インタビューの目的:
有力なワンストップセンターの 1 つであるキャンパス・フランスにおける留学生関連業
務の実情を、インタビューを通じて知るとともに、そこで得られた情報をわが国の運営す
る、あるいはこれから設置するワンストップセンターにおいて活用することを目的とした。
1. タイからフランスへの留学動向
現時点でフランスには 26 万 5000 人以上の留学生がいる。タイからの留学生の総数は
大学院生も含めて約 800 人である。フランス在住のタイ人留学生の 80%が修士課程、10%
が学部、10%が博士課程に在籍している。専攻分野では、フランス語、ビジネス、工学、
法律、デザイン・ファッションを専攻するタイ人留学生が多い。
2. スチューデント・ビザの発給について
スチューデント・ビザの発給を受けるには、留学希望者は、最初に、キャンパス・フ
ランスバンコク支部と同じ敷地内にあるフランス政府ビザ発給オフィスで面接を行う
ことが義務づけられている。面接の予約はインターネットで行うことができる。キャン
パス・フランスは、留学希望者がスチューデント・ビザ発給のための面接試験に臨む前
に、当該学生の学業評価(academic evaluation)を行い、申請書を点検する。すべての
必要書類が整っている場合には、スチューデント・ビザは、ビザ発給のための面接後 7
~10 日で発給される。
スチューデント・ビザには短期と長期の 2 種類がある。有効期間 90 日のものが短期
146
- 145 -
ビザ、90 日以上が長期ビザである。学生がフランス国内にとどまっている限り、短期ビ
ザを長期ビザに切り替えることはできない。長期ビザに切り替えるためには、基本的に
は一度タイに帰国し、長期ビザの申請をしなければならない。
語学学校には大学が運営している語学センターと独立・民間の語学学校がある。こう
した語学学校へ留学するためのビザの申請方法と要件は両者とも共通である。
フランス政府留学局バンコク支部入り口ドア
3. 大学への出願方法と履修
大学入学に関しては、キャンパス・フランスのスタッフからフランスの大学制度の概
要を示した 1 枚の資料を手渡された後、次のような説明を受けた。一般大学については
留学生に対しては入学試験がない。ビジネスや工学の修士課程に入学する場合は例外的
に入学試験がある。
出願は書類あるいはインターネットで行うが、どのような方法をとるかは大学によっ
てまちまちである。ただし、出願用の書式は全大学共通の統一的なものが作られており、
それはキャンパス・フランスの現地オフィス 100 箇所のうち 30 箇所で入手可能である。
入学を希望する学生はフランス語か英語のいずれかが堪能でなければならない。入学
後は、フランス語で授業が行われるコース、英語のみで授業が行われるコース、両者を
組み合わせたコースの 3 通りのコースの中から選択できる。
数年前、ヨーロッパ単位互換制度(ECTS)が制定され、それによって学生は大学入
学後、専攻を変えることが一層容易になった。累積単位は互換性をもち、ヨーロッパの
他の国の大学の他のプログラムでもそれは認定される。
4. フランスの大学の授業料と生活費
フランス国内には 90 弱の大学があり、そのうちの 95%が公立である。一般的な大学
の場合、学生の支払う年間の授業料は 160~300 ユーロである。実際に 1 人の学生にか
かる年間の学費は 9000 ユーロであるが、その大部分は政府が負担している。他方、ビ
147
- 146 -
ジネススクールの授業料は最も高額で、年間 7000~1 万 4000 ユーロである。
平均的な学生の 1 カ月当たりの生活費は 700~1000 ユーロである。
5. キャンパス・フランスの窓口業務とプロモーション活動
キャンパス・フランスの業務は月曜から金曜まで 3 人のスタッフによって行われてい
る。1 日平均約 10 名の留学希望者がオフィスを訪れる。少数ではあるが両親あるいは教
師を同伴でオフィスを訪れる留学希望者もいる。
同オフィスはフランス留学を促進するために外部で開催される留学フェアにも参加
し、啓蒙活動を行い、さらにフェアの参加者からの留学に関するさまざまな質問にも答
えている。留学フェアは年に 1~2 回コンベンション・センターで開催される。
複数の大学が資金を出して国際フェア(international days)を開催することがしば
しばあり、キャンパス・フランスはこうしたフェアに年間で 5~10 回に参加する。これ
に加えて、多くの大学の国際交流課に対して、年間 7 回~8 回程度キャンパス・フラン
スのプロモーションを行うよう要望している。
キャンパス・フランスはフランス大使館敷地内のビルの一室で業務を行っているが、
同オフィスはこの敷地内の一角にあるカフェテリアで 2 カ月に 1 度の割合で「親睦会」
(get-together)を開催している。夕刻に開催されるこの親睦会には 20~30 名の学生が
参加し、ビジネス研究や工学研究に関する話題について議論を行っている。また、フラ
ンスの大学への留学経験を持つタイ人 OB を招待し、関心のある留学希望者との交流を
図っている。
キャンパス・フランスのオフィスへの来訪者あるいは留学フェアでの同オフィスのコ
ーナーへの来訪者には登録用紙に必要事項を記入してもらうことにしている(必要事項
には e-mail アドレスも含む)。登録を済ませた学生は、e-mail でキャンパス・フランス
の活動状況や行事についてお知らせを行っている。
6. 留学促進策
留学生の質と量を確保するためにワンストップセンターが果たすべき役割について、キ
ャンパス・フランスのスタッフは以下の 5 点を指摘した。
① 留学希望者の語学力と一般的な学力を正確に把握することが、留学後の成功の鍵を
握っている。
② 経済的にも学力的にも可能性のある留学希望者にはできるかぎり留学機会を与える
ように心がけるべきである。これによって一層多くの学生が留学経験を持つように
なるだろう。
③ 申請書等の様式をできるだけ統一するとともに、インターネットを通じてどこでで
も入手できるようにしておくべきである。
④ 有望な留学希望者とできるだけ多くの接触機会がもてるように、留学生フェアさら
には懇親会などの種々の会合に出かけて行った方がよい。
⑤ 留学経験者を有望な留学希望者と接触させる機会を設け、留学についての知識を共
有させることが有益である
⑥ 有望な留学希望者の最も重要な情報源は登録情報である。これが留学促進策を進め
る上でのデータベースになる。この情報を活用して各種の情報提供を行うこと。
148
- 147 -
フランス政府留学局バンコク支部スタッフと
<文責
149
- 148 -
新田
功>
〔3〕
IDP Education Australia
実施日:2009 年 3 月 10 日
場
所: 4th Floor, CP Tower
313 Silom Road, Bangrak
Thailand
Telephone: 02 638 3111
Fax: 02 231 0530
協力者:Manager, Student Services : Ms. Nadchanan Dangkhom
z
IDP Education Australia 概要:
IDP は今から約 40 年前に、38 の大学と Seek 社という企業が連合して設立した機関であ
る。現在 300 以上のオーストラリアの教育機関の要請を受け、35 カ国以上の国々でサービ
スを提供している。IDP は世界中の学生に対して、オーストラリアへの留学準備のどのよ
うな側面に対しても支援を提供する。そして、大学だけでなく、職業訓練のプログラムや
集中英語コースなどを含む全ての教育機関に学生を紹介しているる
z
インタビューの目的:
有力な留学生リクルート機関であり、かつ英語教育の拠点でもある IDP における留学生
関連業務の実情を、インタビューを通じて知るとともに、そこで得られた情報をわが国の
運営する、あるいはこれから設置するワンストップセンターにおいて活用することを目的
とした。
1.来訪者の情報
タイからは、年間およそ 1,000 人程度の学生がオーストラリアで学んでいる。そのほと
んどは大学への留学であるが、一部は高校あるいは職業訓練校で学ぶ。
海外留学する学生の多くは、タイのインターナショナル・スクールで学んだ学生であり、
それらの学生は英語を母語とする国で高等教育を受けたいと考えている。オーストラリア
は、英国や米国などに比べて、より手軽(安価)な留学機会を提供している。
タイから海外留学する学生のほとんどは、大学院の修士あるいは博士のプログラムでの
入学許可を得た者である。中でも、経営学は最も人気がある。
タイには、オーストラリアで学んで帰国した学生たちのアラムナイ組織が 2 つある。
2.学生ビザについて
IDP では、留学したい学生がビザ取得のために用意しなければならない経済支弁証明書、
学歴証明書、あるいは職歴などの書類を準備するための支援を行っている。IDP は、E Visa
オンラインシステムというネットのシステムを用いて、学生にかわってオーストラリアの
希望する教育機関から求められている書類を確認し、スキャンして当該機関に送るサービ
スを行っている。すべての経費はネット上で支払うことができ、10 日以内にビザが発行さ
れることが多い。
150
- 149 -
3.大学への申請プロセス
留学を希望する学生は、希望する機関が求める書類をまず IDP のオフィスに提出するよ
うに求められる。そこで、IDP の留学カウンセラーがきちんと書類ができているかどうか
をチェックして、その後希望する機関にネット上でその書類を提出するように支援する。
大学入学許可の結果は全て IDP のオフィスに送られてくるので、そこから学生にどのよう
な大学からのオファーがあるのかを伝え、学生が一番望ましい選択ができるように助ける
のである。
4.授業料と生活費
学生の年間生活費はおよそ 12,000 オーストラリアドルであり、授業料はおよそ 18,000
オーストラリアドルである。オーストラリア政府は留学生に対して学期中は 1 週間あたり
20 時間、休暇中は 1 週間あたり 35 時間まで働くことを許可している。
5.留学までのワンストップ・ショップのコンセプトに基づくサポート
海外留学を予定している学生に総合的な情報と全面的なサポートを提供する。最初の問
い合わせからビザやプログラムの申請、語学準備やテスト、そして選択したコースへの最
終入学まで、海外留学手続きにおいて段階的に学生を指導し相談に応じる。
“ワン・ストップ・ショップ”のコンセプトに基づき、学生がすべての留学申請手続き
を一つの場所で完結できる施設または場所を設置している。
8 人の専門アドバイザーがバンコクの IDP オフィスにて学生とその家族に対応すること
が可能である。タイ国中に 4 カ所のオフィスが存在し、最初の問い合わせからオーストラ
リア到着後の配置に至まで全ての段階で学生をサポートする。
学生はオンライン上でたくさんの情報を得ることができるのだが、IDP の専門アドバイ
ザーはタイの学生が最も効果的に将来の留学を行えるよう直接話し合って支援をする。バ
ンコクのオフィスではしばしば一日に 50 組以上の来訪者がある。多くの学生は留学の申
請を決定する前に 5~6 回訪れるのである。
学生は勉強の経験よりも優先して一定レベルの英語能力を身につけることを指導される。
もし学生の語学力が効果的な学習経験に結びつかないようであれば、彼らには IDP 施設内
にある英語学校が紹介される。
このほか、年間を通していくつかの国の留学フェアをコーディネートしている。日本の
教育機関からの参加も呼びかけている。
<文責
151
- 150 -
横田 雅弘>
アメリカ国際教育協会バンコク支部
Institute of International Education (IIE), Bangkok
〔4〕
実施日
:
2009 年 3 月 10 日
場
:
Maneeya Center North, 6th Floor, 518/3 Ploenchit Road
所
Pathumwan, Bangkok 10330 Thailand
協力者
:
Institute of International Education-Southeast Asia
Advising and Educational Services
Program Officer, Chutkeaw Ratanachamnong
Senior Program Officer-Scholarship Programs, Panut Javalkul
●
IIE の概要
Institute of International Education (IIE)は、1919 年の設立以来、米国における非営
利国際教育交流機関のリーダーとして、国境を越えた知識の交流を通じて平和と繁栄の実
現に寄与することを目的としている。 IIE は、世界に 20 の事務所を展開し、政府や民間
からの経費拠出により、200 か国 20,000 名の人々に対し 250 以上の交流プログラムを提
供している。対象は、学生、教育研究者など教育機関のみならず、企業、財団、政府機関
など多様で、国務省管理のフルブライト学生・研究者プログラムやハンフリー・フェロー
シップさらには企業提供の奨学金や訓練プログラム等を実施している。また、海外教育交
流の機会を拡充するため世界各地でアドバイジングやカウンセリングを提供している。
タイのバンコクに拠点をおく IIE-Southeast Asia は、1962 年にアジアで初の事務所と
して開設された。特に国務省の資金拠出で管理運営されている EducationUSA の留学アド
バイジング・センターは、世界 450 センターの中の一つとして活動している。さらに同省
は、東アジア・太平洋地域教育助言コーディネーター(REAC-EAP)を置き、政府・非政府
関連諸機関と協力して当該国・地域とアメリカとの間の留学生移動を推進している。
アメリカ国際教育協会バンコク支部のサイト:http://iiethai.org/web/home.php
●
インタビューの目的
非営利法人である IIE が EducationUSA や REAC など政府機関と如何に連携しながら
アメリカへの留学生リクルートに取り組んでいるのか情報を収集するとともにタイにおけ
るアメリカへの留学生受け入れ事情について現状を調査することが主な目的である。
1.タイからアメリカへの留学動向
アメリカにおけるタイ人留学生数は約 9,000 名26となっており、全留学生数の約 1.4%を
構成している。1996 年以降 2001 年までは 10,000~15,000 人で推移していたが、2002-2003
年 度 以 降 は 9000 名 前 後 と な っ て お り 2001 年 以 前 の レ ベ ル を 回 復 し て い な い 。
IIE-Southeast Asia によるとタイから留学している 85%は修士課程に滞在している正規
留学生である。
そうした留学生を含め、タイの学生たちは公立、私立学校制度の区別なく幼稚園の頃か
26 Institute for International Education “Open Doors 2008”
< http://opendoors.iienetwork.org/page/131583/>
152
- 151 -
Country Facts Sheet
ら英語を学び始める。その授業は毎日 1 時間から 2 時間の文法と読解から構成されている。
こうした早期教育の成果は、後年留学しても英語中心のコミュニティへの快適な適応がほ
んの 3,4 か月で実現できていることで実証されている。
帰国留学生によるそれぞれの教育機関別に同窓会組織があり、同窓はお互いに友人やそ
れぞれの大学別同窓会によって発行されるニュースレターや会誌を通じて留学体験を共有
しつつ繋がっているようである。
2.スチューデント・ビザの発給について
ビザ申請手続きに関しては日本における諸手続と同様であるが、必要な情報はすべて
IIE-Southeast Asia ウエブサイトで維持管理されている他、申請に必要な書類などの情報
はカウンセラーから入手することもできる。アドバイスに基づき個々人で申請書類を取り
そろえた学生は、申請書類を提出するために自分で大使館面接の予約をしなければならな
い。この予約はオンラインで行い、面接が終了すればすべての申請書類が受理されたとい
うことであり、ほぼ 3 日後にはビザが発給される。
旅行者ビザ(travel visa)は一般的に短期プログラムや企業など民間機関によって主催
されるプログラム参加者に 6 ヶ月間有効なビザとして発給されている。学部学生のための
ビザは I-20 であり、同一の学位に対して 5 年間有効で上限 8 年間まで効力を維持できる。
3.IIE の主たる業務
バンコクに拠点を置く IIE-Southeast Asia は総勢 20 名のスタッフで、大別して次ぎの
3 つの機能を分担している。1 つは、アメリカ大学への留学アドバイジング・センター、2
つ目は、フルブライトなどの奨学金プログラム・センター、3 つ目がアメリカの大学に進
学する場合は要求される TOEFL, GRE, GED, USMLE, MCAT, DSST, PMI 等を実施する
各種テスト・センター、としての機能を果たすことで国際教育推進の役割を担っている。
留学アドバイジング・センターは、IIE-Southeast Asia の主要業務の一つである。アメ
リカ留学に興味を示す学生たちのために、センターでは高等教育制度、各種教育分野の入
学資格要件、ビザ申請など入国審査手続き、留学分野別のテスト及びスコア、さらには奨
学金に関する情報などを総合的かつ効率的に提供することでほとんどの留学関連情報が容
易に入手できるようになっている。タイの IIE-Southeast Asia 事務所には、毎月平均約
100 名の学生が留学相談に訪れる。
留学情報に限らず IIE-Southeast Asia のホームページの内容は先に述べたように非常
に充実しているが、タイの場合はまず本人が基本的な情報収集に何度か訪れた後、家族連
れで再度相談にくることも少なくないため、そうした状況を十分理解しているカウンセラ
ー3 名を配して対応している。
特に、ビザ申請を含む留学に関する様々な問い合わせに対応するために、IIE-Southeast
Asia アドバイジング・センターでは、EducationUSA が開発した 7 ヶ国語対応(アラビア
語、中国語、英語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語)Virtual Counseling
Office という双方向のオンライン情報提供およびカウンセリング・システムを導入してい
る。主な内容は、ビザの取得、アメリカの高等教育システム、出願手続き、テスト(TOEFL、
GRE 等)、学部留学生奨学金、大学院生奨学金、SEVIS、出発前オリエンテーション等で
あり、世界中の EducationUSA に寄せられた過去の質問などをデータ化した FAQ アーカ
153
- 152 -
イブや E メールによるカウンセリングなどが同センターを訪れなくても利用できるように
している。
4.プロモーション活動について
留学生リクルートについて IIE-Southeast Asia は、公的な機関であることを理由に、特
定大学のためにリクルート活動をしたり、個々の学生から料金を徴収して大学申請や査証
申請の支援をしたりすることはない。広く一般に対してアメリカの高等教育機関の優位性
を公報し、アメリカ留学を希望する優秀な人材をできるだけ多く発掘することを使命とし
ている。そのため EducationUSA の主催するタイ最大の「アメリカ高等教育フェア」に協
力参加するとともに、IIE としても独自の「アメリカ大学教育フェア」を年 1 回開催して、
アメリカ大学の売り込みを促進している。
情報発信の手段としては、アメリカにおける高等教育機関(学部、大学院、専門大学院、
各種学校、英語学校)に関する最新の情報を満載した Study in the USA という書籍を出
版、配布することでアメリカの高等教育について情宣活動を展開している。さらに具体的
な活動としては、タイの高校や大学に専門家を出向させるアウトリーチによりさまざまな
プログラムを有機的直接的に提供することで、アメリカの高等教育への強い関心を喚起し、
特に学部課程への正規留学生獲得に向けて継続的な努力をしている。
留学が決定している学生に対しては留学前オリエンテーションを年間 3 回開催している。
留学生の世界的な動向に対する理解を深めてもらうために、IIE は毎年 Open Doors とい
うアメリカへの留学およびアメリカから他国への留学の学生移動データを集積し、年報と
して出版しており、Project Atlas は他の主要留学生受入国のデータから学生の世界的な移
動について調査結果を纏めているが、その作業にあたってはタイを含む世界各地の IIE 事
務所が直接間接的に協力している。
5.効率的かつ効果的留学生リクルートへの提案
今回の IIE における面接調査においても、日本留学を希望する学生を獲得するための示
唆的なヒントがあったように思われる。今後日本が優秀な留学生をできるだけ多く誘致す
るには、次のようなことが考えられるのではなかろうか。
① 相談のために訪れる学生には、熟練した専門スタッフを擁するセンターが必要であ
る。そこでは単に大学情報や申請手続きに関するハードな情報を与えるだけではな
く、本人は当然のことながら家族に対しても情報に関する理解を促し、要求される
情報を満足度の高いレベルで提供する。
② 有望な学生の把握に努め、有効な財政支援や奨学金について的確な情報提供をする。
留学が決定した学生に対し、できるだけ多くの教育フェアを紹介し、総合的な出
発前オリエンテーションへの参加を強く促す。
③ 留学が決定した学生を支援するために、大使館、財団・社団法人、政府教育関係機
関など重要かつ協力可能な諸機関との協同支援体制を組む。
④ 可能な限り時と折に触れて、Open Door や Project Atlas といった出版物を利用し
ながら、世界的な学生移動の傾向などに関する比較可能な情報を提供することで、
留学の必要性に関する教育現場や家族など学生周辺の理解を深める。
<文責
154
- 153 -
小林
明>
〔5〕
在タイ日本国大使館
実施日:2009 年 3 月 11 日
場
所:タイ国バンコック都パトゥムワン区ルンピニ町ウィタユ路 177 番
協力者:在タイ日本大使館
z
石丸成人一等書記官
在タイ日本大使館の概要:
在タイ日本大使館は、日本政府がアジア諸国に開設している大使館としては在中国日本
大使館に次ぐ規模である。同大使館は政治・経済・社会・文化の分野で総合的な活動を行
っており、日本国政府奨学金支給者の選定もその業務の 1 つとしている。
在タイ日本大使館のサイト:http://www.th.emb-japan.go.jp
z
インタビューの目的:
タイの留学事情と日本の大学による留学生募集活動についての情報を入手するために、
日本留学説明会をはじめとする各種の活動に携わってきた石丸成人一等書記官にインタビ
ューを行った。
1. タイの留学事情・日本語教育事情について
石丸氏からは、タイの留学事情・日本語教育事情についての資料を頂戴した。この項で
は、インタビューに関する結果を示すに先立って、配付資料に基づいて、タイにおける留
学事情・日本語教育事情に関する要点を、執筆者の責任において示すことにしたい。
表 6-1 に示されているように、1995 年を基準年にすると、12 年後の 2007 年にはタイ
から日本への留学生の総数は約 2 倍へと増加した。留学生を日本政府(文部科学省)奨学
金留学生と私費・外国政府派遣留学生とに区分して両者の増加の程度を比較すると、日本
政府奨学金留学生が同期間中に 470 人から 576 人へと 1.23 倍しか増加しなかったのに対
して、私費・外国政府派遣留学生は 530 人から 1514 人へと 2.86 倍増えた。このように私
費・外国政府派遣が大幅に増えたことから、両者を併せた留学生総数は 1010 人から 2090
人へと 2.07 倍へと倍増した。
外国から日本に留学している留学生数を出身国別に見ると、タイ人学生は 2006 年では
1734 名で 7 位、2007 年は 2090 名で 6 位であった。留学生総数に占めるタイ人学生の比
率は 2006 年が 1.5%、2007 年が 1.8%であった。ちなみに、ユネスコのデータを用いて 2001
年と 2006 年の時点でのタイ人留学生の留学先を国別に調べてみると、表 6-3 のように示
すように、留学先としての日本の順位は両年時とも 4 位であり、日本がタイ人にとって人
気のある留学先の 1 つであることが確かめられた。ただし、いずれも英語圏に属する上位
3 カ国へのタイ人留学生数に比べると、わが国へのタイ人留学生数は絶対数ではかなりの
差がある。
次に、タイにおける日本語学習の状況を同じく石丸氏の資料によって見ていくことにし
たい。表 6-4 に示すようにタイにおける日本語学習者数は趨勢的に増加している。初等中
等教育での日本語学習者数の増加割合が著しく、1990 年を基準時点とすると 2006 年には
10 倍弱にまで増加している。また、学校外での日本語学習者の増加もめざましく同期間中
155
- 154 -
表 6-1 タイ人日本留学生の推移(単位:人)
年
日本政府(文部科学
省) 奨学金留学生
私費留学生
外国政府派遣留学生
1995年
480
530
1996年
474
544
1997年
457
535
1998年
490
569
1999年
508
599
2000年
529
716
2001年
556
855
2002年
561
943
2003年
622
1019
2004年
622
1043
2005年
611
1123
2006年
572
1162
2007年
576
1514
(出所)在タイ対日本大使館・石丸成人一等書記官作成資料
合 計
1010
1018
992
1059
1107
1245
1411
1504
1641
1665
1734
1734
2090
表 6-2 出身国別人日本留学生数
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
国・地域
2006年(人) 2007年(人) 増減率(%)
中 国
74292
71277
▲ 4.1
韓 国
15974
17274
8.1
台 湾
4211
4686
11.3
ベトナム
2119
2582
21.8
マレーシア
2156
2146
▲ 0.4
タ イ
1734
2090
20.5
アメリカ
1790
1805
0.8
インドネシア
1553
1596
2.8
その他
14098
15042
6.7
計
117927
118498
0.5
(出所)在タイ対日本大使館石丸成人1等書記官作成資料
表 6-3 タイ人留学先上位 8 カ国
<2001年>
<2006年>
順位 タイからの留学先
人数
順位 タイからの留学先
人数
1 アメリカ
9,703
1 アメリカ
9,076
2 オーストラリア
2,720
2 オーストラリア
5,014
3 イギリス
2,693
3 イギリス
4,206
4 日 本
1,147
4 日 本
1,623
5 ドイツ
487
5
ドイツ
1,023
6 ニュージーランド
336
6
フランス
744
7 フランス
333
7
マレーシア
731
8 インド
259
8
ニュージーランド
453
その他
532
その他
1,129
計
18,210
計
23,999
注)表1に使用された原データと表3で使用したデータは一致しない
(資料出所) URL:http://stats.uis.unesco.org/unesco/TableViewer/tableView.aspx?ReportI
に 5 倍に増加している。他方、高等教育においては 1990 年から 1998 年の期間に約 5 倍
に増えたものの、その後漸減傾向にある。今回のインタビュー調査において、タイの留学
希望者の 80%前後が大学院進学希望者であるとの知識を複数のインタビュー先から得た
が、高等教育での日本語学習者数の頭打ち傾向は、将来的に日本への留学希望者数の伸び
悩みを暗示するものと言えるかもしれない。
156
- 155 -
表 6-4 タイにおける日本語学習者数の推移(単位:人)
1990年
1993年
1998年
2003年
2006年
初等中等教育
3,234
4,247
7,694
17,516
31,679
高等教育
5,065
10,853
24,218
22,273
21,634
学校外
3,570
7,052
7,910
15,095
17,770
計
11,869
22,152
39,822
54,884
71,083
(出所)在タイ日本大使館石丸成人1等書記官作成資料[原資料は国際交流基金調査
表 6-5 には日本語学習者上位 10 カ国の国名と学習者数が示されているが、この一覧表
から明らかなようにタイは 2003 年、2006 年とも日本語学習者数が第 7 位であり、しかも
増加傾向にある。タイの総人口は 2006 年時点で 6530 万人であったから、同年の日本語学
習者数を総人口で割ると、人口 1 万人当たりの日本語学習者数は 10.9 人となり、これは
韓国、オーストラリア、台湾、ニュージーランド、香港、インドネシアを下回る数字であ
る。
表 6-5 日本語学習者数上位 10 カ国(単位:人)
順位
国・地域
2003年
(単位:人)
2006年
(単位:人)
増減率
(単位:%)
人口1万人当たり
日本語学習者数
(2006年、単位:人)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
韓 国
894,131
910,957
1.9
189.0
中 国
387,924
684,366
76.4
5.2
オーストラリア
381,954
366,165
▲ 4.1
176.9
インドネシア
85,221
272,719
220.0
11.8
台 湾
128,641
191,367
48.8
86.2
アメリカ
140,200
117,969
▲ 15.9
3.9
タ イ
54,884
71,083
29.5
10.9
香 港
18,284
32,959
80.3
48.1
ベトナム
18,029
29,982
66.3
3.4
ニュージーランド
28,317
29,904
5.6
71.5
計
2,137,585
2,707,471
26.7
注)人口1万人当たり日本語学習者数は筆者が追加した。
(出所)在タイ日本大使館石丸成人1等書記官作成資料[原資料は国際交流基金調査]
日本語教育のもう一つの指標は日本語能力試験の受験者である。図 6-1 に示すように、
図 6-1 タイにおける日本語能力試験応募者数の推移(単位:人)
(資料)在タイ日本大使館石丸成人 1 等書記官作成資料から作成[原資料は国際交流基金調査]
157
- 156 -
図 6-2 日本国内の日本語教育機関に在籍するタイ人学生数の推移(単位:人)
(資料)在タイ日本大使館石丸成人 1 等書記官作成資料から作成[原資料は日本語教育振興会
調査]
日本語能力試験の応募者数は増加傾向にあり、1998 年を基準年にすると 2007 年には 5 倍
に増加している。また、日本国内の日本語教育機関に在籍するタイ人学生数は絶対数こそ
少ないものの、これも増加傾向にあることが図 6-2 から窺える。
2. 在タイ日本大使館と政府関係機関の活動状況
自己紹介の後、われわれ訪問グループ側からブリティッシュ・カウンシル、ドイツの DAAD、
キャンパス・フランス、オーストラリアの IDP の各現地オフィスを訪問済みであり、とく
に
ブリティッシュ・カウンシルのオフィスの規模に驚かされたことを伝えると、石丸氏
からは次のような回答があった。いずれの出先機関もよく知っているが、とくにブリティ
ッシュ・カウンシルは企画と実行をすべて自前で行っている。これに対して、日本サイド
表 6-6 日本留学説明会参加者数と参加機関数の推移
2005年度
参加者数
92
開催地
大使館の出席者 竹林書記官
2007年度
854
新美次席公使
日本学生支援機構
大阪大学
コン
日本学生支援 日本学生支援
京都大学
参加機関
ケーン
機構
機構
東京工業大学
早稲田大学
参加者数
119
89
205
開催地
大使館の出席者 竹林書記官
石丸書記官
新美次席公使
ピサヌ
ローク
開催地
参加機関
2006年度
618
石丸書記官
2008年度
977
小町大使
日本学生支援機構
国際交流基金
大阪大学
早稲田大学
253
隈丸次席公使
日本学生支援機構
日本学生支援機構 日本学術振興会
国際交流基金
日本学生支援 日本学生支援 日本学術振興会
タイ国元日本留学生 大阪大学
機構
機構
京都大学
協会
早稲田大学
参加者数
154
大使館の出席者 竹林書記官
173
石丸書記官
207
石丸書記官
ウボン
日本学生支援 日本学生支援
ラチャ
参加機関
日本学生支援機構
機構
機構
タニー
(出所)在タイ日本大使館石丸成人1等書記官作成資料
158
- 157 -
218
石丸書記官
日本学生支援機構
国際交流基金
は予算が前年比 5%減という状況であり、公的機関は全体的にマインドが冷え込んでいる。
しかし、こうした状況の中でも、大使館が中心となって現地の JASSO、JAFSA、国際交流基
金と協力し、資金や役割の分担を通じて留学生募集活動の足腰を強くすることを心がけて
いる。
大使館としては日本政府奨学金の選抜に携わるほか、バンコク都で行われる留学フェア
への参加、さらには大使館が中心になって表 6-6 に示すように毎年 3 つの地方都市で日本
留学説明会を開催している。2005 年度と 2006 年度は参加機関が日本学生支援機構のみで
あったが、2007 年度からはバンコクに現地オフィスをもつ日本の大学や国際交流基金、日
本学術振興会も参加するようになり、参加者数そのものも増加傾向にある。
3. タイにおける日本の大学の現地オフィスの状況
タイに駐在員をおき、現地事務所を設けている日本の大学は、大阪大学、京都大学、東
京工業大学、三重大学、東海大学である。このうち大阪大学は教官2名、事務官1名の3名
の陣容であり、同大学の現地事務所は対政府の現役の大臣と直に話ができる関係を構築し
ている。大阪大学、京都大学、九州大学はいずれもJASSOの事務所の近くのビルにオフィ
スを構えている。一方、東京工業大学はバンコクの北30kmに位置するサイエンスパーク
に、2002年10月にTokyo Tech Office (Thailand)を設置し、活動を開始した。同事務所に
は60代前半の教官が駐在員として派遣されている(インタビュー時)。三重大学は提携校
であるタマサート大学内に現地事務所を設けている。東海大学も三重大学と同様にモンク
ット王工科大学ラカバン校(KMITL)内に2003年に現地事務所を開設し、現在に至って
いる。
早稲田大学は現地事務所ではなく、同校とタイ・サハグループによる共同出資会社とし
て 2003 年に設立されたタイ早稲田日本語学校を運営している。この日本語学校は語学教
育をビジネスとしており、独立採算制になっている(タイ国内最大の日本語教育機関であ
る泰日経済技術振興協会のスタッフによると、タイ早稲田日本語学校の授業料は同協会の
授業料よりも 20~30%程度高く設定されているとのことである)。
タイで事務所を運用するための費用は年間で 1000 万円から 2000 万円であるが、この拠
点を、年間を通じて有効に活用できるかどうかは大きな課題である。というのは、日本の
どの大学がタイのどの大学から留学生を受け入れるかということは大枠がだいたい決まっ
ている、いわば縄張りが確定しているからである。
このように留学生の募集という点に関しては制約が大きい中で、石丸氏は前項で取り上
げた日本留学フェアの活用の効用を説く。参加費用 5 万円で、タイの地方大学での 15 分
間のプレゼンテーションが可能になり、さらに地方大学の実情も知ることができるからで
ある。
4.日本の大学がタイ人留学生のリクルートを行う方向性について
石丸氏は、タイから日本へ留学するためのコストと、その負担力等について次のように
語った。留学生が日本で生活するためには月 13 万円の費用がかかるが、13 万円のうち 8
万円をアルバイトで稼いだとしても月当たり 5 万円の仕送りが必要である。この仕送りを
行えるのは年収 200 万バーツ(日本円換算で 1000 万円)以上の層であるが、両親の年収
がこのレベルに達しているのは、タイの大学生 43 万人の中の 10%である。
159
- 158 -
日本の大学が留学生に対して支給している奨学金は充実しているが、それにもかかわら
ずタイ人の留学希望者に膾炙していない。前述のように、タイから日本への私費留学生は
増加傾向にあり、日本の大学の充実した奨学金制度を周知徹底することが課題である。
タイ人留学生の獲得は労働力の活用という点でも重要性を持つと考えられるが、この点
から見ても、留学生のフルサポートの体制を築くことが必要であろう。
次に、タイ人留学生のリクルートを個々の大学が行う方向性について、石丸氏から以下
のような意見とアドバイスをいただいた。
日本の学生にとってさえ魅力のない大学はタイ人の留学希望者に対して宣伝できない。
タイ人留学生を確保する方法として、現地事務所を構える方法以外に、いくつかの大学
が連携してリクルート活動を行う方法と、アウトソーシング(代理店契約方式)による方
法とがある。複数の日本の大学が連携している具体例として、関西の 6 つの教育系の大学
によるコンソーシアムがある。これは京都教育大学を代表校とする関西地区国立教員養成
系大学 6 校(京都教育大学、大阪教育大学、奈良教育大学、滋賀大学、和歌山大学、兵庫
教育大学)とタイ国で教員養成を主に担っている 41 の地域総合大学(ラジャパット・ユ
ニバーシティ:RU と略称)とが 2003 年に交流協定(RU 交流協定)締結したもので、今
日まで継続している。この協定に参加する大学は年間 100 万円の負担をすることになって
いる。協定はある程度の成果を挙げているが、コンソーシアムを運営していく上で、メン
バー間の体力差が問題になるが、体力のあるが大学がリーダー的な役割を果たしていけば
いいのではないか。また、モチベーションをどのように高めるかも難しい問題である。
留学生を確保するもっとも効果的な方法は、日本の大学のタイ人 OB でしかもタイの大
学で教官になっている人をプロモーターとすることである。その好例が東京工業大学であ
り、同校のタイ人 OB が勤務する大学の学生たちに日本政府の国費留学生に応募すること
を勧め、さらに日本での留学先として同校を選択するようアドバイスしている。
<文責
160
- 159 -
新田
功>
〔6〕
日本学生支援機構(JASSO)
バンコク日本国際教育交流情報センター
実施日:2009 年 3 月 11 日
場
所:タイ国バンコック市アソック路 159 番
サミットタワー10 階
協力者:Educational Advisor : Ms.Nuttawan Tanpaibule
Ms. Kanpirom Yodwong
JASSO バンコク日本国際教育交流情報センターの概要:
JASSO バンコク日本国際教育交流情報センターは、日本学生支援機構が海外事務所とし
て開設している 4 箇所(他はインドネシア・ジャカルタ、韓国・ソウル、マレーシア・ア
ラルンプール)のうちの一つである。同センターはバンコクのビジネス街の一つであるア
ソック路に国際交流基金のバンコク日本文化センターと同じビルの同じフロアーに位置し
ており、約 60 ㎡ほどの広さを有している。
TEL:02-661-7057
http://www.jeic-bangkok.org/
z
インタビューの目的:
タイにおける日本の留学情報提供の拠点としての役割、情報提供活動の現状を把握する
ため、センターのスタッフにインタビューを行った。
1. JASSO バンコク日本国際教育交流情報センターにおける留学事情提供
来訪や電話に加え、E メールでの問い合わせに対し、現地採用のタイ人 2 名の職員で対
応している。タイ語のホームページや掲示板などでも情報提供している。日本の大学をは
じめ、日本語学校、専門学校、日本留学試験(EJU)などの資料が開架で閲覧できるように
なって入るが、日本から送付される印刷物等は、ほとんど日本語のものであり、日本語を
学習中のタイ人には利用が難しいとのことであった。
JASSO バンコク日本国際教育交流情報センター
(JASSO ホームページ http://www.jasso.go.jp/exchange/magazine_jeic.html#bangkok)
161
- 160 -
2.人員配置の状況
日本人スタッフは駐在しておらず、2 名のタイ人スタッフが配置されている。1 名は交
換留学で 1 年の日本留学経験があるものの、ここ数年間は日本での研修の機会もなく、最
新の日本留学事情、情報がスタッフに実感をもって蓄積されているとはいえない状況であ
った。
3.他の機関等との連携の状況
事務所はバンコクの中心地アソーク通りに位置し、同じ階には国際交流基金があるので、
基金で日本語を勉強する人もこの事務所を利用する。他は日本の国費留学制度に関心のあ
る者がよく利用している。タイ国内各地の大学で、バンコクに事務所を置いている日本の
大学を集めて合同説明会を開催したり、バンコク最大の日本語教育機関であるタイ日経済
技術振興協会(TPA)での日本留学説明会にも参加している。
4.他の国の留学情報機関との比較
ドイツの DAAD やキャンパス・フランス、オーストラリア IDP などの教育機関のオフ
ィスでは、本国から派遣された専門家と現地スタッフである当該国留学経験者によって各
国の国の留学生受入れ政策、ビザ政策などの詳細な説明を受けることができる。これらの
国々のオフィスと比較すると、人的な配置での弱さは否めない感がある。また、英語での
情報が整備されていないので、日本の国費留学に関心のある者がそのための情報を入手す
る以外は利用しにくい施設である。
政策上では、常に日本留学情報提供の重要性が謳われているものの、現地の現場は他の
ライバル国のそれと比較して明らかに見劣りする。今後の抜本的な拡張が望まれる。
<文責
162
- 161 -
横田 雅弘>
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