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ウナギ蛍光タンパク質

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ウナギ蛍光タンパク質
JP 2007-254371 A 2007.10.4
(57)【 要 約 】 ( 修 正 有 )
【課題】動植物細胞や生物個体における遺伝子マーカーとして、あるいは細胞内オルガネ
ラの可視化及びタンパク質間の相互作用の可視化のための、単量体で、かつ分子量が小さ
く、凝集が起こり難い、ウナギ由来の低分子量の蛍光タンパク質の提供。
【解決手段】ウナギから水性抽出物を得て、この抽出物から蛍光タンパク質を硫安塩析と
カラムクロマトグラフィーとの組合わせにより精製し、分子量が16kDa∼17kDa
であり、且つ蛍光波長480nm∼600nm、及び励起波長400nm∼540nmの
ウナギ蛍光タンパク質を単離する。
【選択図】なし
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JP 2007-254371 A 2007.10.4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウナギから水性抽出物を得る工程と、
前記抽出物から蛍光タンパク質を精製する工程と、
を 含 み 、 前 記 蛍 光 タ ン パ ク 質 が 分 子 量 16kDa∼ 17kDaで あ り 、 且 つ 蛍 光 波 長 480nm∼ 600nm及
び 励 起 波 長 400nm∼ 540nmで あ る こ と を 特 徴 と す る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 単 離 方 法 。
【請求項2】
上記水性抽出物はウナギの筋肉から得られるものであることを特徴とする、請求項1記
載の方法。
【請求項3】
10
上記精製が硫安塩析とカラムクロマトグラフィーとの組合せにより行われることを特徴
とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
上 記 分 子 量 が 16.5kDaで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 請 求 項 1 記 載 の 方 法 。
【請求項5】
上 記 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 蛍 光 最 大 波 長 が 527nmで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 請 求 項 1 記 載 の
方法。
【請求項6】
上 記 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 励 起 最 大 波 長 が 493nmで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 請 求 項 1 記 載 の
方法。
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【請求項7】
分 子 量 16kDa∼ 17kDaで 、 且 つ 蛍 光 波 長 480nm∼ 600nm及 び 励 起 波 長 400nm∼ 540nmで あ る こ
とを特徴とするウナギ蛍光タンパク質。
【請求項8】
上 記 分 子 量 が 16.5kDaで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 請 求 項 7 記 載 の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質
。
【請求項9】
蛍 光 最 大 波 長 が 527nmで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 請 求 項 7 記 載 の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質
。
【請求項10】
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励 起 最 大 波 長 が 493nmで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 請 求 項 7 記 載 の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ウナギ由来の蛍光タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
オ ワ ン ク ラ ゲ (Aequorea victorea)か ら 得 ら れ た 緑 色 蛍 光 タ ン パ ク 質 (green fluorescen
t protein :GFP)は 、 動 植 物 細 胞 や 生 物 個 体 に お け る 遺 伝 子 マ ー カ ー と し て 、 あ る い は 細
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胞内オルガネラの可視化、タンパク質の局在の可視化及びタンパク質間の相互作用の可視
化に活発に利用されている(非特許文献1∼3)。
【0003】
非 特 許 文 献 1 に は 、 例 え ば 、 オ ワ ン ク ラ ゲ 由 来 GFP等 の 蛍 光 タ ン パ ク 質 や そ の 変 異 体 を
目的のタンパク質と融合させることで、生細胞中でのタンパク質の配置、移動又は化学現
象の分析を行うことができることが開示されている。
【0004】
非 特 許 文 献 2 に は 、 様 々 な 花 中 類 (Anthozoa)由 来 の GFP様 タ ン パ ク 質 に つ い て 開 示 さ れ
ている。
さらに、非特許文献3には、光活性化可能な蛍光タンパク質の特性及びその用途につい
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て記載されている。
現 在 市 販 さ れ て い る オ ワ ン ク ラ ゲ あ る い は 花 虫 類 由 来 GFPの 分 子 量 は 、 26kDa程 で あ る 。
ま た 、 こ れ ら の GFPの 中 に は 、 2量 体 や 4量 体 を 形 成 す る も の が あ る 。
【0005】
一般的に、外来遺伝子を細胞に導入し、外来遺伝子からコードされるタンパク質を当該
細胞内で発現させる場合には、凝集が起こり難い点から、単量体で、且つ分子量の小さな
タ ン パ ク 質 が 有 利 で あ る と い え る 。 こ の よ う な 理 由 か ら 、 上 述 し た 様 々 な 用 途 で GFP等 の
蛍光タンパク質を使用する場合には、単量体で、且つ分子量の小さな蛍光タンパク質が有
利である。そこで、単量体で、且つ分子量のより小さな蛍光タンパク質が見出されること
が期待されている。
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また、脊椎動物由来の蛍光タンパク質については、従来知られていなかった。
【0006】
【 非 特 許 文 献 1 】 Jennifer Lippincott-Schwartz及 び George H. Patterson, 「 Science」
, 2003年 , 第 300巻 , p.87-91
【 非 特 許 文 献 2 】 Vladislav V Verkhusha及 び Konstantin A Lukyanov, 「 Nature Biotech
nology」 , 2004年 , 第 22巻 , p.289-296
【 非 特 許 文 献 3 】 Konstantin A. Lukyanov, Dmitry M. Chudakov, Sergey Lukyanov及 び V
ladislav V. Verkhusha, 「 Nature Reviews/Molecular Cell Biology」 , 2005年 , 第 6巻 ,
p.885-891
【発明の開示】
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【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した実情に鑑み、ウナギ由来の蛍光タンパク質を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ウナギから水性抽出物を得て、該抽出
物 か ら 蛍 光 タ ン パ ク 質 を 精 製 す る こ と で 、 分 子 量 16kDa∼ 17kDaで 、 且 つ 蛍 光 波 長 480nm∼ 6
00nm及 び 励 起 波 長 400nm∼ 540nmの ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 を 単 離 で き る こ と を 見 出 し 、 本 発
明を完成するに至った。
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【0009】
本発明は以下を包含する。
【0010】
(1)ウナギから水性抽出物を得る工程と前記抽出物から蛍光タンパク質を精製する工
程 と を 含 み 、 前 記 蛍 光 タ ン パ ク 質 が 分 子 量 16kDa∼ 17kDaで あ り 、 且 つ 蛍 光 波 長 480nm∼ 600
nm及 び 励 起 波 長 400nm∼ 540nmで あ る こ と を 特 徴 と す る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 単 離 方 法 。
(2)上記水性抽出物はウナギの筋肉から得られるものであることを特徴とする、(1
)記載の方法。
(3)上記精製が硫安塩析とカラムクロマトグラフィーとの組合せにより行われること
を特徴とする、(1)記載の方法。
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( 4 ) 上 記 分 子 量 が 16.5kDaで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 ( 1 ) 記 載 の 方 法 。
( 5 ) 上 記 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 蛍 光 最 大 波 長 が 527nmで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 ( 1 ) 記
載の方法。
( 6 ) 上 記 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 励 起 最 大 波 長 が 493nmで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 ( 1 ) 記
載の方法。
( 7 ) 分 子 量 16kDa∼ 17kDaで 、 且 つ 蛍 光 波 長 480nm∼ 600nm及 び 励 起 波 長 400nm∼ 540nmで
あることを特徴とするウナギ蛍光タンパク質。
( 8 ) 上 記 分 子 量 が 16.5kDaで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 ( 7 ) 記 載 の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ
ク質。
( 9 ) 蛍 光 最 大 波 長 が 527nmで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 ( 7 ) 記 載 の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ
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ク質。
( 1 0 ) 励 起 最 大 波 長 が 493nmで あ る こ と を 特 徴 と す る 、 ( 7 ) 記 載 の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン
パク質。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分子生物学分野等で有用な蛍光タンパク質が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
10
本 発 明 に 係 る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 (以 下 、 「 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 」 と い う )の 単 離 方
法は、ウナギから水性抽出物を得て、該抽出物からウナギ蛍光タンパク質を精製する方法
で あ る 。 本 方 法 で 得 ら れ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 分 子 量 は 16kDa∼ 17kDa(特 に 16.5kDa)
で あ る 。 ま た 本 方 法 で 得 ら れ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 蛍 光 波 長 は 480nm∼ 600nmで あ り 、
特 に 、 蛍 光 最 大 波 長 は 527nmで あ る 。 ま た 、 励 起 波 長 は 400nm∼ 540nmで あ り 、 特 に 励 起 最
大 波 長 は 493nmで あ る 。 さ ら に 、 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 は 自 己 完 結 的 に 黄 緑 色 に 発 光 す る
。ここで、「自己完結的」とは、ウナギ蛍光タンパク質中の発色団形成に酸素以外の物質
(例 え ば 、 酵 素 な ど )を 必 要 と し な い こ と を 意 味 す る 。
【0014】
本 発 明 に 係 る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 単 離 方 法 (以 下 、 「 本 方 法 」 と い う )で は 、 先 ず ウ
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ナギから水性抽出物を得る。ウナギは、いずれの種類であってもよいが、例えば、日本ウ
ナ ギ ( Anguilla japonica) 、 ヨ ー ロ ッ パ ウ ナ ギ (Anguilla anguilla)、 及 び ア メ リ カ ウ ナ
ギ (Anguilla rostrata)等 が 挙 げ ら れ る が 、 日 本 ウ ナ ギ が 好 ま し い 。 水 性 抽 出 物 は 、 ウ ナ
ギ 全 体 か ら 、 あ る い は ウ ナ ギ の 臓 器 (例 え ば 、 肝 臓 )、 組 織 (例 え ば 、 筋 肉 )、 細 胞 等 か ら 得
ることができる。
【0015】
本方法における抽出方法として、ウナギの筋肉から水性抽出物を得る方法を以下に具体
的に説明する。
【0016】
先ず、ウナギから皮膚や骨を除いた筋肉を取り出し、肉挽き器で細切りする。次いで、
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細切した筋肉に、例えば抽出溶媒を加えてホモジナイズし、超音波処理を行い、遠心分離
に供することで得られた上清を水性抽出物とする。抽出溶媒としては、例えば、グリシン
-塩 酸 バ ッ フ ァ ー 、 酢 酸 ナ ト リ ウ ム バ ッ フ ァ ー 、 リ ン 酸 ナ ト リ ウ ム バ ッ フ ァ ー (Na-リ ン 酸
バ ッ フ ァ ー )、 ト リ ス -塩 酸 バ ッ フ ァ ー (Tris-HClバ ッ フ ァ ー )、 グ リ シ ン -水 酸 化 ナ ト リ ウ
ム バ ッ フ ァ ー 、 生 理 食 塩 水 及 び 水 等 が 挙 げ ら れ る が 、 好 ま し く は Na-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー で
あ る 。 例 え ば 、 抽 出 溶 媒 と し て Na-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー を 使 用 す る 場 合 に は 、 10∼ 50mM、 好
ま し く は 20mMの 濃 度 と す る 。 な お 、 抽 出 溶 媒 に は 、 EDTA(例 え ば 、 0.5∼ 2.0mM濃 度 )等 を 含
有していてもよい。
【0017】
なお、筋肉以外の臓器、組織又は細胞あるいはウナギ全体から水性抽出物を得る方法は
40
、筋肉からの抽出方法に準じて行うことができる。
【0018】
次いで、本方法では水性抽出物からウナギ蛍光タンパク質を精製する。精製方法として
は、例えば、硫安塩析、カラムクロマトグラフィー、透析、イオン交換クロマトグラフィ
ー、アフィニティークロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィーが挙げられるが、特
に 硫 安 塩 析 と 少 な く と も 1つ の カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー と の 組 合 せ が 好 ま し い 。 例 え ば
、 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に 使 用 す る カ ラ ム と し て は 、 SephadexG50カ ラ ム 、 SephadexG
75カ ラ ム 、 Source15Q PE4.5/100カ ラ ム 、 Superdex75 HR10/30カ ラ ム (い ず れ も GEヘ ル ス ケ
ア バ イ オ サ イ エ ン ス 株 式 会 社 (旧 社 名 : ア マ シ ャ ム バ イ オ サ イ エ ン ス 株 式 会 社 )製 )及 び ヒ
ドロキシアパタイトカラムが挙げられる。
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【0019】
具体的に、硫安塩析とカラムクロマトグラフィーとを組合わせて、水性抽出物からウナ
ギ蛍光タンパク質を精製する方法を説明する。
【0020】
先 ず 、 硫 安 塩 析 で は 、 上 述 の 水 性 抽 出 物 に 硫 酸 ア ン モ ニ ウ ム (以 下 、 「 硫 安 」 と い う )を
添 加 す る 。 硫 安 は 、 60% の 飽 和 硫 安 溶 液 と な る よ う に 添 加 す る 。 次 い で 、 pHを 適 宜 (例 え
ば 、 pH7.5)調 整 し 、 低 温 (例 え ば 、 2∼ 10℃ 、 好 ま し く は 5℃ )下 で 2∼ 5時 間 (好 ま し く は 3∼
4時 間 )撹 拌 し た 後 、 遠 心 分 離 を 行 い 、 上 清 を 取 り 出 す 。 得 ら れ た 上 清 に 、 さ ら に 硫 安 を 、
90% の 飽 和 硫 安 溶 液 と な る よ う に 添 加 す る 。 さ ら に 、 pHを 適 宜 (例 え ば 、 pH7.6)調 整 し 、
例 え ば 8∼ 20時 間 (好 ま し く は 10∼ 14時 間 )撹 拌 す る 。 撹 拌 後 、 低 温 (例 え ば 、 2∼ 10℃ 、 好
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ま し く は 5℃ )下 で 、 20時 間 ∼ 48時 間 (好 ま し く は 24時 間 )静 置 さ せ る 。 次 い で 、 遠 心 分 離 に
供することで、回収した沈殿を次のステップのカラムクロマトグラフィーに使用する画分
とする。
【0021】
次に、硫安塩析で得られた画分を、透析後、カラムクロマトグラフィーに供する。例え
ば 、 SephadexG75カ ラ ム (カ ラ ム サ イ ズ 26 x 400mm)、 ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム (カ ラ ム
サ イ ズ 36 x 48mm、 Tiselius等 (A. Tiselius, S. Hjerten, and O. Levin (1956): Protei
n chromatography on calcium phosphate columns. Arch. Biochem. Biophys., 65, 132155)の 方 法 に 従 っ て 調 製 し た ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト を 使 用 )、 SephadexG50カ ラ ム (カ ラ ム
サ イ ズ 26 x 970mm)、 ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム (カ ラ ム サ イ ズ 10 x 125mm、 上 述 の ヒ ド
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ロ キ シ ア パ タ イ ト を 使 用 )及 び Source15Q PE 4.6/100カ ラ ム (カ ラ ム サ イ ズ : 4.6 x 100mm)
を順次使用したカラムクロマトグラフィーによって、最終的にウナギ蛍光タンパク質を含
有する画分を精製することができる。使用する溶出溶媒及びその濃度はカラムに応じて適
宜 選 択 で き る が 、 溶 出 溶 媒 と し て は 、 例 え ば Na-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー 、 リ ン 酸 カ リ ウ ム バ ッ
フ ァ ー (K-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー )、 Tris-HClバ ッ フ ァ ー 等 が 挙 げ ら れ る 。 Na-リ ン 酸 バ ッ フ ァ
ー を 使 用 す る 場 合 に は 、 濃 度 は 、 例 え ば 10∼ 50mM、 好 ま し く は 20mMと す る 。 K-リ ン 酸 バ ッ
フ ァ ー を 使 用 す る 場 合 に は 、 濃 度 は 例 え ば 200∼ 300mM、 好 ま し く は 250mMと す る 。 Tris-HC
lバ ッ フ ァ ー を 使 用 す る 場 合 に は 、 濃 度 は 、 例 え ば 15∼ 50mM、 好 ま し く は 20mMと す る 。 な
お 、 必 要 に 応 じ て 、 EDTA(例 え ば 、 0.5∼ 2.0mM)、 グ リ セ ロ ー ル (例 え ば 、 10∼ 20% )や 塩 化
ナ ト リ ウ ム (NaCl)(例 え ば 、 100∼ 300mM)を 溶 出 溶 媒 に 含 有 さ せ る こ と が で き る 。 ま た 、 流
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速 及 び 分 画 は 使 用 す る カ ラ ム に 応 じ て 適 宜 設 定 す る こ と が で き る が 、 流 速 は 、 例 え ば 0.1
∼ 1.5ml/分 、 好 ま し く は 0.2∼ 0.5ml/分 、 特 に 好 ま し く は 0.2∼ 0.4ml/分 に 設 定 す る 。 ま た
、 分 画 は 、 例 え ば 、 0.5∼ 5.0ml/画 分 、 好 ま し く は 1.0∼ 2.0ml/画 分 、 特 に 好 ま し く は 1.0
∼ 1.5ml/画 分 に 設 定 す る 。
【0022】
なお、各カラムクロマトグラフィーにおいて、ウナギ蛍光タンパク質を含有する画分を
、 例 え ば Na-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー や 炭 酸 水 素 ア ン モ ニ ウ ム 溶 液 を 用 い た 透 析 又 は 凍 結 乾 燥 に
供してもよい。
【0023】
以上のように、本方法によれば、ウナギ蛍光タンパク質を抽出・精製することができる
40
。 精 製 し た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 分 子 量 や 精 製 度 は 、 例 え ば SDS-PAGEや ウ エ ス タ ン ブ ロ
ッティング等によって確認することができる。あるいは、精製したウナギ蛍光タンパク質
の蛍光波長及び励起波長は、例えばスペクトル測定によって確認することができる。
【0024】
さらに、本方法によって得られた精製ウナギ蛍光タンパク質を用いて、例えば部分アミ
ノ酸配列を決定する。次いで、その部分アミノ酸配列に基づいて設計したプローブやプラ
イ マ ー を 用 い る ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン や PCRに よ っ て 、 ウ ナ ギ ゲ ノ ム DNAか ら ウ ナ ギ 蛍 光
タ ン パ ク 質 を コ ー ド す る 遺 伝 子 (以 下 、 「 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 遺 伝 子 」 と い う )を 単 離 す
ることができる。さらに、得られたウナギ蛍光タンパク質遺伝子を用いて、塩基配列を決
定することで、ウナギ蛍光タンパク質遺伝子の塩基配列及びウナギ蛍光タンパク質のアミ
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ノ酸配列を決定することができる。
【0025】
このようにして、得られたウナギ蛍光タンパク質又はウナギ蛍光タンパク質遺伝子は、
他 の GFP等 の 蛍 光 タ ン パ ク 質 と 同 様 に 、 例 え ば 、 動 植 物 細 胞 や 生 物 個 体 に お け る 遺 伝 子 マ
ーカーとして、あるいは細胞内オルガネラの可視化、タンパク質の局在の可視化及びタン
パク質間の相互作用の可視化に利用できる。
【0026】
本 方 法 で 得 ら れ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 は 分 子 量 16kDa∼ 17kDaで あ り 、 例 え ば 、 従 来 よ
り 使 用 さ れ て い る オ ワ ン ク ラ ゲ 由 来 GFP(26kDa)に 比 べ て 約 10kDa小 さ い 。 低 分 子 量 で あ る
ことは、蛍光タンパク質と融合したタンパク質の機能が損なわれないこと、凝集し難いこ
10
と、タンパク質合成が速やかに完了すること、の点から有利である。
【0027】
また、ウナギ蛍光タンパク質は単量体である。一方、オワンクラゲあるいは花中類由来
GFPの 中 に は 2量 体 や 4量 体 を 形 成 す る GFPが 存 在 す る 。 従 っ て 、 本 発 明 で 得 ら れ る ウ ナ ギ 蛍
光 タ ン パ ク 質 は 取 り 扱 い の 点 で 従 来 の GFPと 比 べ て 容 易 で あ る 。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実
施例に限定されるものではない。
【0029】
20
〔実施例1〕 ウナギ蛍光タンパク質の抽出及び精製
1. 材 料 及 び 方 法
1-1. 実 験 材 料
養 殖 さ れ た 日 本 ウ ナ ギ ( Anguilla japonica) を 使 用 し た 。
【0030】
1-2. 試 薬 等
コラゲナーゼは、新田ゼラチン株式会社製のものを使用した。
ま た 、 SephadexG50、 SephadexG75、 Source15Q PE4.5/100カ ラ ム 及 び Superdex75 HR10/3
0カ ラ ム は 、 GEヘ ル ス ケ ア バ イ オ サ イ エ ン ス 株 式 会 社 (旧 社 名 : ア マ シ ャ ム バ イ オ サ イ エ ン
ス 株 式 会 社 )よ り 入 手 し た 。
30
【0031】
1-3. ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 抽 出 方 法
0.25% 2-フ ェ ノ キ シ エ タ ノ ー ル 水 中 で 麻 酔 し た ウ ナ ギ か ら 皮 膚 及 び 骨 を 除 い た 筋 肉 を
肉挽き器で細切した。
次 い で 、 細 切 し た 筋 肉 100gに 対 し て 以 下 の 操 作 を 行 っ た 。
ま ず 、 細 切 し た 筋 肉 100gを ミ キ サ ー に と り 、 こ れ に 500mlの 20mM Na-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー (
pH7.5)-1mM EDTAを 加 え 、 ホ モ ジ ナ イ ズ し た 。 得 ら れ た ホ モ ジ ネ ー ト を 1Lビ ー カ ー に と り
、 一 方 、 ミ キ サ ー を 同 バ ッ フ ァ ー 100mlで 洗 浄 し 、 得 ら れ た 洗 浄 液 も ホ モ ジ ネ ー ト に 合 わ
せた。
【0032】
40
次 い で 、 ホ モ ジ ネ ー ト を 、 約 200mlず つ 超 音 波 (Ultrasonic Generator 4280, KAIJO DEN
KI)処 理 に 供 し た 。 超 音 波 処 理 後 、 ホ モ ジ ネ ー ト の pHを 7.5に 調 整 し た 後 、 6,000xg、 5℃ で
30分 間 、 遠 心 分 離 を 行 っ た 。
【0033】
遠 心 分 離 後 、 上 清 を 2Lビ ー カ ー に と り 、 一 方 、 沈 殿 を 300mlの 20mM Na-リ ン 酸 バ ッ フ ァ
ー (pH7.5)-1mM EDTAに 懸 濁 し 、 ミ キ サ ー で 再 度 ホ モ ジ ナ イ ズ し た 。 再 度 遠 心 分 離 後 、 得 ら
れ た 上 清 を 先 の 遠 心 分 離 で 得 ら れ た 上 清 と 合 わ せ 、 こ れ を 抽 出 液 (水 性 抽 出 物 )と し た 。
【0034】
1-4. ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 精 製 方 法
ウナギ蛍光タンパク質の精製を以下の手順に従って行った。
50
(7)
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(1) 硫 安 塩 析
上 記 1-3で 得 ら れ た 抽 出 液 に 、 60% 飽 和 硫 安 溶 液 と な る よ う に 硫 安 を 加 え た 。 硫 安 添 加
後 の 溶 液 の pHを 7.5に 合 わ せ た 。
次 い で 、 溶 液 を 低 温 室 (5℃ )に お い て 150∼ 250rpmで 3時 間 撹 拌 し た 後 、 6,000xg、 5℃ で 3
0分 間 、 遠 心 分 離 を 行 っ た 。 遠 心 分 離 後 、 得 ら れ た 上 清 に 90% 飽 和 硫 安 溶 液 と な る よ う に
硫 安 を 添 加 し 、 pHを 7.6に 調 整 し た 後 、 一 晩 150∼ 250rpmで 撹 拌 し た 。 そ の 後 、 撹 拌 を 止 め
、 溶 液 を 24時 間 低 温 室 に 静 置 し た 。 24時 間 の 静 置 後 、 溶 液 を 6,000xg、 5℃ で 60分 間 遠 心 分
離 し 、 集 め た 沈 殿 を 60∼ 90% 飽 和 硫 安 画 分 と し た 。
【0035】
(2) SephadexG75カ ラ ム (カ ラ ム サ イ ズ 26 x 400mm)を 用 い た カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー
10
上 記 (1)で 得 ら れ た 60∼ 90% 飽 和 硫 安 画 分 を 、 20mM Na-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー (pH7.5)-1mM E
DTA-10% グ リ セ ロ ー ル -0.15M NaClに 溶 解 し た 後 、 同 バ ッ フ ァ ー 中 で 透 析 を 行 っ た 。 透 析
し た 試 料 を 、 同 バ ッ フ ァ ー で 平 衡 化 し た SephadexG75カ ラ ム に 添 加 し 、 流 速 0.36ml/分 で 3m
lず つ 分 画 を 行 っ た 。
【0036】
(3) ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム (カ ラ ム サ イ ズ 36 x 48mm)を 用 い た カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ
フィー
ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト は 、 Tiselius等 (A. Tiselius, S. Hjerten, and O. Levin (1956
): Protein chromatography on calcium phosphate columns. Arch. Biochem. Biophys.,
65, 132-155)の 方 法 に 従 っ て 調 製 し た も の を 用 い た 。 具 体 的 に は 、 以 下 の 操 作 に よ り ヒ
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ドロキシアパタイトを調製した。
【0037】
先 ず 、 2Lビ ー カ ー に 水 を 約 150ml入 れ た 。 次 い で 、 ス タ ー ラ ー で 撹 拌 し な が ら 、 0.5M Na
2
HPO4 500mlと 0.5M CaCl2 500mlと を 上 記 ビ ー カ ー に 滴 下 添 加 し 、 そ の 後 、 約 20分 間 静 置 し
た。静置後、上清を吸引除去した。
【0038】
次 い で 水 を 約 1L添 加 し 、 ガ ラ ス 棒 で ゆ っ く り 撹 拌 し た 後 、 約 3分 間 静 置 し た 。 静 置 後 、
上 清 を 吸 引 除 去 し た 。 こ の 約 1Lの 水 の 添 加 か ら 上 清 の 吸 引 除 去 ま で の 操 作 を 計 4回 繰 り 返
した。
【0039】
30
そ の 後 、 水 を 約 1L添 加 し た 後 、 撹 拌 機 で 撹 拌 し な が ら 40% (w/w)NaOH 25mlを 添 加 し た 。
次 い で 、 撹 拌 機 で 撹 拌 し な が ら 、 ガ ス バ ー ナ ー で 加 熱 し 、 1時 間 煮 沸 し た 。 煮 沸 後 、 火 を
消 し 、 さ ら に 約 5分 間 撹 拌 し 続 け 、 そ の 後 約 3分 間 静 置 し た 。 静 置 後 、 上 清 を 吸 引 除 去 し た
。
【0040】
次 い で 、 水 を 約 1L添 加 し 、 ガ ラ ス 棒 で ゆ っ く り 撹 拌 し た 後 、 約 3分 間 静 置 し た 。 静 置 後
、 上 清 を 吸 引 除 去 し た 。 こ の 約 1Lの 水 の 添 加 か ら 上 清 の 吸 引 除 去 ま で の 操 作 を 計 4回 繰 り
返した。
【0041】
そ の 後 、 1Lビ ー カ ー 中 で 0.01M Na2 HPO4 500mlと 0.01M NaH2 PO4 500mlと を 混 合 し た 混 合
40
液 を 、 上 記 2Lビ ー カ ー に 加 え 、 撹 拌 機 で 撹 拌 し な が ら 、 ガ ス バ ー ナ ー で 加 熱 し 、 沸 騰 直 前
で 火 を 消 し た 。 な お 、 撹 拌 は 火 を 消 し た 後 、 さ ら に 5分 間 行 い 、 そ の 後 約 3分 間 静 置 し た 。
【0042】
次 い で 、 静 置 後 、 上 清 を 吸 引 除 去 し 、 0.01M Na2 HPO4 500mlと 0.01M NaH2 PO4 500mlと を
混 合 し た 混 合 液 を 加 え 、 撹 拌 し な が ら 5分 間 煮 沸 し た 後 、 火 を 消 し た 。 火 を 消 し て か ら 更
に 5分 間 撹 拌 し た 後 、 約 3分 間 静 置 し た 。
【0043】
静 置 後 、 上 清 を 吸 引 除 去 し 、 0.01M Na2 HPO4 500mlと 0.01M NaH2 PO4 500mlと を 混 合 し た
混 合 液 を 加 え 、 撹 拌 し な が ら 15分 間 煮 沸 し た 後 、 火 を 消 し た 。 火 を 消 し て か ら 更 に 5分 間
撹 拌 し た 後 、 約 3分 間 静 置 し た 。
50
(8)
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【0044】
さ ら に 、 静 置 後 、 上 清 を 吸 引 除 去 し 、 0.001M Na2 HPO4 500mlと 0.001M NaH2 PO4 500mlと
を 混 合 し た 混 合 液 を 加 え 、 撹 拌 し な が ら 15分 間 煮 沸 し た 後 、 火 を 消 し た 。 火 を 消 し て か ら
更 に 5分 間 撹 拌 し た 後 、 約 3分 間 静 置 し た 。 静 置 後 、 上 清 を 吸 引 除 去 し た 。 こ の 0.001M Na2
HPO4 500mlと 0.001M NaH2 PO4 500mlと を 混 合 し た 混 合 液 の 添 加 か ら 上 清 の 吸 引 除 去 ま で の
操 作 を 計 2回 繰 り 返 し た 。
【0045】
次 い で 、 0.5mM Na2 HPO4 350mlと 0.5mM NaH2 PO4 350mlと を 混 合 し た 混 合 液 を 加 え 、 撹 拌
し た 後 、 500mlメ ス シ リ ン ダ ー に 移 し 、 一 晩 静 置 し た 。
一 晩 の 静 置 後 、 上 清 を 除 き 、 得 ら れ た ゲ ル (ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト )を 0.02% NaN3 溶 液 中
10
で保存した。
【0046】
このようにして調製したヒドロキシアパタイトを用いて、以下で使用するヒドロキシア
パタイトカラムを作製した。
上 記 (2)に よ り 得 ら れ た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 画 分 を 、 20mM Na-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー (pH7.
0)中 で 透 析 し た 後 、 同 バ ッ フ ァ ー で 平 衡 化 し た ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム に 添 加 し た 。
【0047】
ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム か ら の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 溶 出 は 、 20mM Na-リ ン 酸 バ
ッ フ ァ ー (pH7.0) 300ml、 0.25M K-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー (pH7.0) 300mlの 直 線 濃 度 勾 配 に よ り
行 っ た 。 流 速 を 1.16ml/分 と し 、 5mlず つ 分 画 を 行 っ た 。 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 画 分 を 集 め
20
、 10mM NH4 HCO3 中 で 透 析 し た 後 、 真 空 凍 結 乾 燥 を 行 う こ と で 凍 結 乾 燥 さ せ た 。
【0048】
(4) SephadexG50カ ラ ム (カ ラ ム サ イ ズ 26 x 970mm)を 用 い た カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー
上 記 (3)で 得 ら れ た 凍 結 乾 燥 試 料 を 、 20mM Tris-HCl(pH7.5)-1mM EDTA-0.15M NaClに 溶
解 し た 後 、 18,000xg、 5℃ で 30分 間 、 遠 心 分 離 し た 。 遠 心 分 離 後 、 得 ら れ た 上 清 を 、 同 バ
ッ フ ァ ー で 平 衡 化 し た SephadexG50カ ラ ム に 添 加 し た 。 流 速 を 0.21ml/分 と し 、 3mlず つ 分
画を行った。
分 画 後 、 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 画 分 を 集 め 、 10mM NH4 HCO3 中 で 透 析 し 、 真 空 凍 結 乾 燥 に
供した。
【0049】
30
(5) ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム (カ ラ ム サ イ ズ 10 x 125mm)を 用 い た カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ
フィー
上 記 (4)で 得 ら れ た 凍 結 乾 燥 試 料 を 、 少 量 の 20mM Na-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー (pH7.0)に 溶 解 し
、 再 度 ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム (10 x 125mm)に 添 加 し た 。 な お 、 ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ
ト は 上 記 (3)で 調 製 し た も の と 同 様 で あ っ た 。
【0050】
ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム か ら の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 溶 出 は 、 0.25M K-リ ン 酸 バ
ッ フ ァ ー (pH7.0)の 直 線 濃 度 勾 配 に よ り 行 っ た 。 流 速 を 0.3ml/分 と し 、 1.5mlず つ 分 画 を 行
っ た 。 溶 出 後 、 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 画 分 を 集 め 、 10mM NH4 HCO3 中 で 透 析 し 、 真 空 凍 結 乾
燥を行うことで凍結乾燥させた。
40
【0051】
(6) Source15Q PE 4.6/100カ ラ ム (カ ラ ム サ イ ズ 4.6 x 100mm)を 用 い た カ ラ ム ク ロ マ ト グ
ラフィー
上 記 (5)で 得 ら れ た 凍 結 乾 燥 試 料 を 、 少 量 の 20mM Tris-HCl(pH7.5)に 溶 解 し 、 15,000xg
で 2分 間 遠 心 分 離 し た 。 遠 心 分 離 後 、 得 ら れ た 上 清 を Source15Q PE 4.6/100カ ラ ム に 添 加
し た 。 な お 、 Source15Q PE 4.6/100カ ラ ム は 、 予 め 同 バ ッ フ ァ ー で 平 衡 化 し た 。 流 速 を 1m
l/分 と し 、 溶 出 を 20mM Tris-HCl(pH7.5)-0.25M NaClの 直 線 濃 度 勾 配 に よ り 行 い 、 1mlず つ
分画した。
【0052】
な お 、 上 記 (5)及 び (6)の 操 作 で は 、 AKTApurifier(GEヘ ル ス ケ ア バ イ オ サ イ エ ン ス 株 式
50
(9)
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会 社 )の 装 置 に カ ラ ム を セ ッ ト し 、 UNICORN(V. 3.00)の ソ フ ト ウ ェ ア を 用 い て 行 っ た 。
【0053】
1-5. 蛍 光 測 定
蛍 光 測 定 は 、 日 立 分 光 蛍 光 光 度 計 (F-2000)に よ り 行 っ た 。
【0054】
1-6. SDS-PAGE
SDS-PAGEは 、 Laemmliの 方 法 (U. K. Laemmli (1970): Cleavage of structural protein
s d u r i n g t h e a s s e m b l y o f t h e h e a d o f b a c t e r i o p h a g e T 4 . N a t u r e , 2 2 7 , 6 8 0 - 6 8 5 )に 従
って行った。
【0055】
10
1-7. タ ン パ ク 質 定 量
タ ン パ ク 質 定 量 は 、 Smith等 の 方 法 (P. K. Smith, R. I. Krohn, G. T. Hermanson, A.
K. Mallia, F. H. Gartner, M. D. Provenzano, E. K. Fujita, N. M. Goeke, B. J. Ols
on, and D. C. Klank (1985): Measurement of protein using bicinchoninic acid. Ana
l. Biochem., 150, 76-85)に 従 っ て 測 定 し た 。 な お 、 標 準 タ ン パ ク 質 に は ウ シ 血 清 ア ル ブ
ミ ン を 用 い た 。 測 定 に は 日 立 分 光 光 度 計 (U-2001)を 用 い た 。
【0056】
1-8. ウ ナ ギ 筋 肉 及 び 筋 細 胞 の 蛍 光 観 察
ウ ナ ギ 遊 離 筋 細 胞 の 調 製 は 、 Alam等 の 方 法 (N. Alam, K. Nakamura, and S. Hayashi (2
004): Lipoprotein metabolism in a coculture system with eel skeletal muscle cell
20
s and hepatocytes. Fisheries Science, 70, 326-335)に 従 っ て 、 コ ラ ゲ ナ ー ゼ を 用 い て
調 製 し た 。 ウ ナ ギ 筋 肉 断 面 、 遊 離 筋 細 胞 の 蛍 光 観 察 は 、 蛍 光 実 体 顕 微 鏡 (Leika MZ FLIII)
を用いて行った。
【0057】
2. 結 果
2-1. ウ ナ ギ 筋 肉 及 び ウ ナ ギ 筋 細 胞 の 蛍 光 観 察
ウ ナ ギ 筋 肉 横 断 面 の 白 色 光 に よ る 写 真 (上 の 写 真 )及 び 蛍 光 写 真 (下 の 写 真 )を 図 1 A に 示
す 。 下 の 蛍 光 写 真 は 、 励 起 フ ィ ル タ ー (450∼ 490nm)及 び 蛍 光 フ ィ ル タ ー (500∼ 550nm)で 観
察した蛍光写真である。図1Aに示すように、背骨の周辺に黄緑色の蛍光が見られた。
【0058】
30
一 方 、 ウ ナ ギ 遊 離 筋 細 胞 の 白 色 光 に よ る 写 真 ( 上 の 写 真 ) 及 び 蛍 光 写 真 (下 の 写 真 )を 図
1Bに示す。下の蛍光写真は、上述した励起フィルター及び蛍光フィルターで観察したも
の で あ る 。 筋 細 胞 の サ イ ズ は 、 長 さ 2.5∼ 3.0mm及 び 幅 15∼ 25μ mで あ っ た 。 図 1 B に 示 す
ように、筋細胞の中には、蛍光を持つ筋細胞と持たない筋細胞とが存在することが分かっ
た。このことは、図1Aに示す筋肉横断面の蛍光写真が蛍光を持つ部分と持たない部分と
が存在することと一致している。
【0059】
2-2. ウ ナ ギ 筋 肉 か ら の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 精 製
下 記 の 表 1 は 、 400gの 筋 肉 か ら ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 を 精 製 し た 結 果 を ま と め た も の で
あ る 。 具 体 的 に は 、 上 記 1-3及 び 1-4の 各 ス テ ッ プ 後 に 得 ら れ た 試 料 に つ い て の 結 果 を 要 約
している。
【0060】
40
(10)
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【表1】
10
20
30
40
【0061】
50
(11)
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表 1 中 、 「 容 量 (ml)」 は 各 ス テ ッ プ 後 に 得 ら れ た 試 料 容 量 (ml)で あ る 。 「 タ ン パ ク 質 (m
g/ml)」 は 各 ス テ ッ プ 後 に 得 ら れ た 試 料 中 の タ ン パ ク 質 濃 度 (mg/ml)で あ る 。 「 全 タ ン パ ク
質 (mg)」 は 各 ス テ ッ プ 後 に 得 ら れ た 試 料 中 の 全 タ ン パ ク 質 量 (mg)で あ る 。 「 Em/ml」 は 溶
液 1ml当 た り の 527nmで の 蛍 光 強 度 で あ る 。 「 Em/mg」 は タ ン パ ク 質 1mg当 た り の 527nmで の
蛍 光 強 度 で あ る 。 「 全 Em」 は Em/ml × 全 容 量 (ml)又 は Em/mg × 全 タ ン パ ク 質 (mg)で あ る
。 「 % 」 は ホ モ ジ ネ ー ト の 総 蛍 光 強 度 (全 Em)に 対 す る 各 ス テ ッ プ の 総 蛍 光 強 度 の 割 合 で あ
る。
【0062】
表 1 に 示 す よ う に 、 Source15Q PE 4.6/100カ ラ ム を 用 い た 最 終 精 製 後 の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン
パ ク 質 の 比 蛍 光 強 度 (Em/mg タ ン パ ク 質 )は 、 抽 出 液 の 約 3200倍 と な っ た 。 抽 出 の 際 、 超 音
10
波 処 理 を 行 う こ と に よ り 、 60∼ 90% 飽 和 硫 安 画 分 へ の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 回 収 率 を 高
くすることができた。なお、硫安塩析におけるウナギ蛍光タンパク質の回収率を上げるた
め に 、 60% 以 下 の 飽 和 硫 安 画 分 を 加 え る と 、 SephadexG75カ ラ ム に よ る 精 製 効 率 を 著 し く
低下させた。
【0063】
図 2 に 、 SephadexG75カ ラ ム に よ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 精 製 時 の 吸 光 度 (A 280 nm)又
は 蛍 光 強 度 (Em 527 nm)を 各 画 分 毎 に 示 し た 。 図 2 に 示 す よ う に 、 60∼ 90% 飽 和 硫 安 画 分
を SephadexG75カ ラ ム に よ り 精 製 し た 場 合 、 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 (画 分 番 号 43∼ 54)と 他
の 大 半 の タ ン パ ク 質 と を 効 率 良 く 分 離 す る こ と が で き た 。 し か し 、 60% 以 下 の 飽 和 硫 安 画
分を加えるとウナギ蛍光タンパク質がかなりの割合で前の大きなピークに重なって現れ、
20
図 2 に 示 す よ う に 分 離 す る こ と が で き な か っ た 。 SephadexG75カ ラ ム に よ る 精 製 に 用 い た
バ ッ フ ァ ー 中 に は グ リ セ ロ ー ル を 10% 加 え た 。 10% グ リ セ ロ ー ル を 添 加 し な か っ た 場 合 は
、 カ ラ ム 操 作 中 に 不 溶 性 タ ン パ ク 質 が 生 じ 、 以 後 の カ ラ ム 操 作 を 不 可 能 に し た 。 Sephadex
G75カ ラ ム に よ り 分 離 さ れ た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 は 不 溶 化 す る こ と は な か っ た 。
【0064】
一 方 、 図 3 に は 、 1度 目 の ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム に よ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 精
製 時 の 吸 光 度 (A 280 nm)又 は 蛍 光 強 度 (Em 527 nm)を 各 画 分 毎 に 示 し た 。 図 3 に お い て 、
斜 線 は K-リ ン 酸 バ ッ フ ァ ー の 直 線 濃 度 勾 配 を 示 す 。 ま た 、 図 4 に は SephadexG50カ ラ ム に
よ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 精 製 時 の 吸 光 度 (A 280 nm)又 は 蛍 光 強 度 (Em 527 nm)を 各 画 分
毎 に 示 し た 。 さ ら に 、 図 5 に は 、 Source15Q PE 4.6/100カ ラ ム に よ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク
30
質 精 製 時 の 280nmに お け る 吸 光 度 (上 の パ ネ ル )及 び 蛍 光 強 度 (Em 527 nm)(下 の パ ネ ル )を 各
画 分 毎 に 示 し た 。 図 5 の 上 の パ ネ ル に お け る 左 の 縦 軸 は 280nmに お け る 吸 光 度 、 右 の 縦 軸
は NaClの モ ル 濃 度 (0.25M(100% )に 対 す る 割 合 (% ))を 示 し 、 ま た 、 横 軸 は 溶 出 開 始 後 の 溶
出 位 置 (ml)を 示 す 。 さ ら に 、 図 5 の 上 の パ ネ ル に お け る 斜 線 は NaClの 直 線 濃 度 勾 配 を 示 す
。
【0065】
図6A及びBは、抽出及び精製の各ステップ後に得られた精製ウナギ蛍光タンパク質の
SDS-PAGEの 写 真 を 示 す 。 ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 濃 度 は 17% 均 一 で あ っ た 。 各 レ ー ン は 、
以下の通りである。
a: SephadexG75カ ラ ム に よ り 精 製 し た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 (10μ g)
40
b: 1度 目 の ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム に よ り 精 製 し た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 (2μ g)
c: SephadexG50カ ラ ム に よ り 精 製 し た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 (2μ g)
d: Source15Q PE 4.6/100カ ラ ム に よ り 精 製 し た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 (1.5μ g)
マ ー カ ー : phosphorylase b 94kDa、 albumin 67kDa、 ovalbumin 43kDa、 carbonic anhyd
rase 30kDa、 trypsin inhibitor 20.1kDa、 α -lactalbumin 14.4kDa
【0066】
ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム 及 び SephadexG50カ ラ ム の い ず れ も 効 率 よ く ウ ナ ギ 蛍 光 タ
ン パ ク 質 (ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム で は 画 分 番 号 50∼ 67、 SephadexG50カ ラ ム で は 画 分
番 号 87∼ 96)を 精 製 す る こ と が で き た (図 3 及 び 4 並 び に 表 1 )。 し か し 、 こ の 段 階 で は な
お 数 種 の タ ン パ ク 質 を 含 ん で い た (図 6 A )。 ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム に よ る 精 製 を 再
50
(12)
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度 行 っ た 後 、 Source15Q PE 4.6/100カ ラ ム で 精 製 さ れ た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 (画 分 番 号 7
)は 、 SDS-PAGE上 均 一 な タ ン パ ク 質 と し て 精 製 さ れ た (図 5 及 び 6 B )。
【0067】
2-3. 精 製 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 性 質
(1) 分 子 量
図 7 に は 、 SDS-PAGEに よ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 分 子 量 測 定 結 果 を 示 す 。 各 記 号 は 以
下 の 通 り で あ る 。 a) phosphorylase b 94kDa、 b) albumin 67kDa、 c) ovalbumin 43kDa、
d) carbonic anhydrase 30kDa、 e) trypsin inhibitor 20.1kDa、 f) α -lactalbumin 14.
4kDa。 縦 軸 の MWは 分 子 量 (kDa)を 示 し 、 横 軸 の Rfは 、 泳 動 中 の ゲ ル の 最 先 端 の 距 離 に 対 す
る各タンパク質の泳動距離の比を示す。
10
【0068】
還 元 剤 (DTT)存 在 下 で 17% 均 一 濃 度 の ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 上 で の SDS-PAGEか ら 、 ウ
ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 分 子 量 を 測 定 し た と こ ろ 、 16.5kDaで あ っ た (図 7 中 矢 印 の 箇 所 )。
【0069】
ま た 、 未 変 性 の ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 分 子 量 を 測 定 す る た め に 、 Superdex75カ ラ ム を
用 い た 。 図 8 は 、 Superdex75カ ラ ム に よ る 未 変 性 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 分 子 量 測 定 の 結
果 を 示 す 。 バ ッ フ ァ ー に は 50mM Tris-HCl(pH7.5)-0.15M NaClを 用 い 、 流 速 は 0.5ml/分 で
あ っ た 。 標 準 タ ン パ ク 質 は 、 Transferin(75kDa)、 Ovalbumin(43kDa)、 Myoglobin(17.6kDa
)及 び Ribonuclease(13.7kDa)で あ っ た 。 上 の パ ネ ル は 、 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 溶 出 位 置
(ml)を 示 し 、 一 方 、 下 の パ ネ ル は 、 各 標 準 タ ン パ ク 質 の 溶 出 位 置 (ml)を 横 軸 に 、 分 子 量 を
20
縦軸にとり作製した検量線を示す。
【0070】
図 8 に 示 す よ う に 、 未 変 性 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 分 子 量 は 16.5∼ 17kDaで あ っ た (下 の
パ ネ ル 中 、 矢 印 の 箇 所 )。 こ れ ら の 結 果 か ら ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 は 単 量 体 で あ り 、 且 つ
そ の 分 子 量 は 約 16.5kDaで あ る こ と が 分 か っ た 。
【0071】
(2) 励 起 ・ 蛍 光 ス ペ ク ト ル 及 び 吸 収 ス ペ ク ト ル
SephadexG50カ ラ ム に よ り 精 製 し た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 を 20mM Tris-HCl(pH7.5)-1mM
EDTA-0.15M NaClに 溶 解 し 、 ス ペ ク ト ル 測 定 を 行 っ た 。 ス ペ ク ト ル 測 定 結 果 と し て 、 ウ ナ
ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 蛍 光 ス ペ ク ト ル (EM: 上 の パ ネ ル )及 び 励 起 ス ペ ク ト ル (EX:下 の パ ネ ル
30
)を 図 9 に 示 す 。 図 9 に 示 す よ う に 、 蛍 光 最 大 波 長 は 527nm、 励 起 最 大 波 長 は 493nmで あ っ
た 。 こ の 特 性 は オ ワ ン ク ラ ゲ GFPの 改 変 体 で あ る EYFPに よ く 類 似 し て い る 。 EYFPの 蛍 光 最
大 波 長 は ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 と 同 じ 527nmで あ り 、 励 起 最 大 波 長 は 513nmで あ る 。
【0072】
さ ら に 、 Source15Q PE 4.6/100カ ラ ム に よ り 精 製 し た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 (20mM Tris
-HCl(pH7.5)中 )を 用 い て 吸 収 ス ペ ク ト ル の 測 定 を 行 っ た 。 220nm∼ 550nmに お け る ウ ナ ギ 蛍
光 タ ン パ ク 質 の 吸 収 ス ペ ク ト ル を 図 1 0 に 示 す 。 図 1 0 に 示 す よ う に 、 極 大 吸 収 波 長 は 28
0nm及 び 500nmで あ っ た 。 前 者 は 全 て の タ ン パ ク 質 に 共 通 に み ら れ る も の で あ る が 、 後 者 は
GFP特 有 の 吸 収 と 考 え ら れ る 。 す な わ ち 、 オ ワ ン ク ラ ゲ 由 来 GFPで は 、 蛍 光 を 示 す 発 色 団 が
明 ら か に さ れ 、 -X(65)-Tyr(66)-Gly(67)-が 環 状 構 造 を と る こ と に よ り 発 色 団 が 形 成 さ れ
40
る こ と が 分 か っ て い る 。 環 状 構 造 中 の Tyr由 来 の フ ェ ノ ー ル 基 の 水 酸 基 が イ オ ン 化 さ れ た
状 態 の 時 、 500nm付 近 に 吸 収 が 現 れ る こ と が 知 ら れ て い る (宮 脇 敦 史 、 安 藤 亮 子 (2003):
新 規 蛍 光 タ ン パ ク 質 Kaedeを 用 い た 光 技 術 。 細 胞 工 学 、 22, 316-326)。 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ
ク 質 の 吸 収 ス ペ ク ト ル に お け る 500nmの 吸 収 は 、 オ ワ ン ク ラ ゲ 由 来 GFPと 同 じ よ う な 発 色 団
を持つことによると考えられた。
【0073】
(3) 加 熱 、 90% ア セ ト ン 又 は 5% ト リ ク ロ ロ 酢 酸 (TCA)に よ る 処 理
下 記 の 表 2 に は 、 SephadexG50カ ラ ム に よ り 精 製 し た ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 を 95℃ 、 5分
間 の 加 熱 処 理 、 90% ア セ ト ン 処 理 又 は 5% TCA処 理 に 供 し た 後 の 上 清 の 残 存 蛍 光 強 度 を 求 め
た 結 果 を 示 す 。 残 存 蛍 光 強 度 は 、 未 処 理 (対 照 )に 対 す る 相 対 的 な 蛍 光 強 度 (% )と し て 表 す
50
(13)
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。
【0074】
【表2】
10
【0075】
表2に示すように、処理後の上清に残った蛍光強度は、いずれの処理の場合も消失して
いた。表2の結果はウナギ蛍光タンパク質自体が蛍光を持つことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【 図 1 A 】 図 1 A は 、 ウ ナ ギ 筋 肉 横 断 面 の 白 色 光 に よ る 写 真 (上 の 写 真 )及 び 蛍 光 写 真 (下
の 写 真 )を 示 す 。
20
【図1B】図1Bは、ウナギ遊離筋細胞の白色光による写真(上の写真)及び蛍光写真(
下 の 写 真 )を 示 す 。
【 図 2 】 図 2 は 、 SephadexG75カ ラ ム に よ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 精 製 時 の 吸 光 度 (A 280
nm)又 は 蛍 光 強 度 (Em 527 nm)を 各 画 分 毎 に 示 し た 図 で あ る 。
【 図 3 】 図 3 は 、 1度 目 の ヒ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト カ ラ ム に よ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 精 製
時 の 吸 光 度 (A 280 nm)又 は 蛍 光 強 度 (Em 527 nm)を 各 画 分 毎 に 示 し た 図 で あ る 。
【 図 4 】 図 4 は 、 SephadexG50カ ラ ム に よ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 精 製 時 の 吸 光 度 (A 280
nm)又 は 蛍 光 強 度 (Em 527 nm)を 各 画 分 毎 に 示 し た 図 で あ る 。
【 図 5 】 図 5 は 、 Source15Q PE 4.6/100カ ラ ム に よ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 精 製 時 の 280n
mに お け る 吸 光 度 (上 の パ ネ ル )及 び 蛍 光 強 度 (Em 527 nm)(下 の パ ネ ル )を 各 画 分 毎 に 示 し た
30
図である。
【図6A】図6Aは、抽出及び精製の各ステップ後に得られた精製ウナギ蛍光タンパク質
の SDS-PAGEの 写 真 を 示 す 。
【図6B】図6Bは、抽出及び精製の各ステップ後に得られた精製ウナギ蛍光タンパク質
の SDS-PAGEの 写 真 を 示 す 。
【 図 7 】 図 7 は 、 SDS-PAGEに よ る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 分 子 量 測 定 結 果 を 示 す 。
【 図 8 】 図 8 は 、 Superdex75カ ラ ム に よ る 未 変 性 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 分 子 量 測 定 の 結
果を示す。
【 図 9 】 図 9 は 、 ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 蛍 光 ス ペ ク ト ル (EM: 上 の パ ネ ル )及 び 励 起 ス ペ
ク ト ル (EX:下 の パ ネ ル )を 示 す 。
【 図 1 0 】 図 1 0 は 、 220nm∼ 550nmに お け る ウ ナ ギ 蛍 光 タ ン パ ク 質 の 吸 収 ス ペ ク ト ル を 示
す。
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(14)
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
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(15)
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
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(16)
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
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