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ペルー共和国における地上デジタル放送導入

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ペルー共和国における地上デジタル放送導入
平成 21 年度
「ペルー共和国における地上デジタル
放送導入に関するレポート」
平成 22 年 3 月
日本貿易振興機構(ジェトロ)
本報告書に関する問い合わせ先:
日本貿易振興機構(ジェトロ)
海外市場開拓課
〒107-6006 東京都港区赤坂 1-12-32
TEL:03-3582-5313
FAX:03-5572-7044
【免責条項】
ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、あるいは懲罰的損
害および利益の喪失については、一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロが
かかる損害の可能性を知らされていても同様とします。
© JETRO 2010
本報告書の無断転載を禁ずる
アンケート返送先 FAX 03-5572-7044
日本貿易振興機構 海外市場開拓課宛
● ジェトロアンケート ●
「ペルー共和国における地上デジタル放送導入に関するレポート」
ジェトロでは将来の市場として、潜在的需要が高い可能性のある国や地域のマーケット情報を日
本の中堅中小企業の方々に紹介することを目的に本調査を実施いたしました。報告書をお読みいた
だいた後、是非アンケートにご協力をお願い致します。
■ 質問1:今回、本報告書で提供させていただきました「ペルー共和国における地上デジタル
放送導入に関するレポート」について、どのように思われましたでしょうか?(○をひとつ)
4:役に立った 3:まあ役に立った 2:あまり役に立たなかった 1:役に立たなかった
■ 質問2:上記のように判断された理由、また、その他、本報告書に関するご感想をご記入下さい。
■ 質問3:その他、ジェトロへの今後のご希望等がございましたら、ご記入願います。
貴社・団体名:
部署名:
★ ご記入いただいたお客様の情報は適切に管理し、本報告書の成果把握に利用いたします。
ご協力ありがとうございました。
はじめに
ペルーは 2009 年 4 月にブラジルに続き、日本方式の地上波デジタル放送規格(ISDB-T)の導入を
発表した。2010 年 3 月には試験放送も開始した。これに伴い、諸々の規格を現在定めている途中で
ある。
ただし、地上波デジタル放送導入の進捗状況は日本企業の多大な関心を集めているところである
ため、ジェトロとしても、定まらない点は多いものの、2010 年 2 月時点の現状について発表するこ
ととした。
また、本レポートはオリジナルがスペイン語であり、翻訳の過程で日本語が読みにくくなってい
る点も多いが、情報をできるだけ早く伝えることが肝要と考えここに発表する。
日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外市場開拓課
2010 年 3 月
目次
序文 ......................................................................................................................................................2
1. デジタル放送導入までのプロセス.............................................................................................2
1.1. 現在の放送事業許認可手続き ............................................................................................2
1.2. 現在のチャンネル構成 ........................................................................................................6
1.3. 導入にあたっての判断基準 ................................................................................................9
1.4. デジタル化の配当に関する調査 ........................................................................................9
2. 放送機材と関連機材市場...........................................................................................................10
2.1. 各局の機材購入計画 ..........................................................................................................10
2.1.1 Andina de Televisión(ATV)..................................................................................10
2.1.2 TVPerú ...........................................................................................................................11
2.1.3 América Televisión ...................................................................................................11
2.2. デコーダ販売予測(地上手時樽テレビによる需要) ..................................................12
2.2.1. ケーブル TV 非加入世帯の STB 需要........................................................................14
2.2.2. ケーブル TV 非加入世帯でのデコーダ内蔵 TV の需要 ..........................................15
2.2.3. デコーダ内蔵 TV の需要 ...........................................................................................16
2.2.4 チューナー内蔵テレビの市場....................................................................................17
2.3. ワンセグ・サービス開始にともなう携帯電話市場の変化(モバイル・デジタル TV
の需要) ........................................................................................................................................18
2.3.1. 需要ポテンシャル、定量調査..................................................................................18
2.3.2. 需要ポテンシャル、定性調査..................................................................................28
2.3.3. 携帯電話の供給 .........................................................................................................31
3. 結論 ..............................................................................................................................................32
参考文献 ............................................................................................................................................34
アネックス:フォーカス・グループ参加者の特徴 .....................................................................34
1
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序文
2009 年初頭、ペルーは、地上デジタル放送について日本・ブラジル規格の採用を決定した。
政府は、地上デジタルテレビ導入マスタープラン(RS N° 082-2009-PCM)を策定するに
当たり、運輸通信省(MTC)に提言を行う機関としてマルチセクター暫定委員会(以下、
「マルチセクター暫定委員会または CMT」)を立ち上げるとともに、個別の意思決定を各
担当省庁に委託した。
現在、政府は採用する規格に関する基本事項をとりまとめている段階であり、そのなかで、
地上波デジタルテレビ放送のメリットに関する需要、特に、携帯電話端末を使ってオープ
ン TV の画像を受信できるメリットに重点を置いた需要に関する調査の実施を依頼した。
これまでの調査では、アナログ、デジタル、固定機材(テレビ)またはモバイル端末(携
帯電話)を問わず、一般放送全般を無料化すること以外、民間企業が投資規模を判断でき
るような需要に関係する規定が定められていないことが判明した。さらに、携帯端末を使
ったワンセグ・サービスについて、ユーザーは無料かつ充実したコンテンツであれば利用
したいと一定の関心を示していることも判明した。最後に、当局はデジタル配当の利用方
法と使途について、国際的な動向に足並みを揃えるとしている。
1. デジタル放送導入までのプロセス
1.1. 現在の放送事業許認可手続き
デジタル放送事業は、放送事業の一種に分類される。放送は、通信サービスのひとつであ
り、そのコンテンツは一般市民が受信する。事業者は、自然人、法人のいずれでもよい。
放送事業を実施するためには、通信次官の決議書による許可の取得が必要である。申請者
は、MTCのホームページからダウンロードできる所定の様式で通信許可総局に申請書を提
出する。許可の有効期間は10年間以下である。なお、放送事業(教育または商業)を実施
する場合も、地上デジタル放送の試験放送をおこなう場合も、「暗黙の了承」のルールは
適用されない。すなわち、申請案件に対して行政機関は必ずその合否の判断をくださなけ
ればならず、申請者側は、当局による合否判断に時間がかかった場合も、これを了承され
たものと解釈することはできない。
許可の発行は、当事者の申請による、あるいは公開入札による。同一帯域あるいは同一地
域で使用可能な周波数またはチャンネル数が、申請数を上回る場合は当事者の申請による
方法で、同一帯域あるいは同一地域で使用可能な周波数またはチャンネル数に制約がある
場合2は公開入札による方法で許可が発行される。
許可の発行要件としては、以下の 4 つが挙げられる。
1. 法的要件
2
使用可能な周波数またはチャンネル数が申請件数より尐ない場合を言う。
2
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2. 技術的要件
3. 経済的要件
4. 通信
詳 細 な 要 件 に つ い て は 、 運 輸 通 信 省 ( MTC ) 統 一 行 政 手 続 規 則 ( Texto Único de
Procedimientos Administrativos:TUPA)に規定される。
法的要件を以下に示す。
a. 自然人の場合

身分証明書写し(公証人の認証を受けたもの、あるいは認証責任者の証明
を受けたもの)

個人情報シート

ラジオ・テレビ法第 22 条および同施行規則 25 条に規定される禁止・妨害
行為に関与していない旨の宣誓供述書。

無犯罪証明書の写し、または詐欺により 4 年以上の禁固刑を受けていない
旨の宣誓供述書。

裁判の判決により政府との契約不適格者となっていない旨の宣誓供述書。
b. 法人の場合

登記簿謄本および会社定款の写し(RRPP に登録し、公証人の認証を受けた
もの、あるいは認証責任者の証明を受けたもの)。会社の設立目的は放送
事業の提供とする。

法定代理人の権限の有効性証明書(申請日から 3 ヶ月以内のもの)。

法定代理人の身分証明書の写し(公証人の認証を受けたもの、あるいは認
証責任者の証明を受けたもの)。

共同経営者、株主、加盟者、権利者、幹部、代理人または理事の資格に関
する法的文書の写し(公証人の認証を受けたもの、あるいは認証責任者の
証明を受けたもの)

組織構成、株主構成または加入者の関係を示した宣誓供述書。

ペルー人および外国人の共同経営者、株主、加入者、権利者、法定代理人、
幹部、代理人および理事の個人情報シート。

ペルー人および外国人の共同経営者、株主、加入者、権利者、法定代理人、
幹部、代理人および理事がラジオ・テレビ法第 22 条および同施行規則 25
条に規定される禁止・妨害行為に関与していない旨の宣誓供述書。
3
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
ペルー人および外国人の共同経営者、株主、加入者、権利者、法定代理人、
幹部、代理人および理事の前科調書証明書の写し、または詐欺により 4 年
以上の禁固刑を受けていない旨の宣誓供述書。

ペルー人および外国人の共同経営者、株主、加入者、権利者、法定代理人、
幹部、代理人および理事が既判事項をともなう決議書により国との契約署
名資格を喪失していない旨の宣誓供述書。
技術的要件を以下に示す。

申請日において技師会に登録している現役の電子技師または通信技師が認
証する技術計画書

技術計画書を認証した技師に対し、ペルー工学技師会が発行する資格証明
書の写し(simple copy)。

事業対象地域を示した位置図(縮尺 1/100,000、WGS84 座標)。ただし短波
帯の申請案件は除く。

放送局の位置関係を示した地図(縮尺 1/10,000)、または市役所が発行す
る証明書。
経済的要件を以下に示す。

初年度に予定している放送局設置投資計画。

手数料の支払い。
なお、通信に関する要件は通信計画(の提出)である。
以下に許可取得手続きについて述べる。
a. 運輸通信省での手続き

TUPA が定めた申請要件を満たした上で申請書を提出する。

諸要件がすべて満たされていることを確認後、当該案件を通信許可総局に
送る。

いずれかの要件が満たされていない場合、申請者にその旨を通知し、48 時
間以内に提出を要請する。申請書とその写しに不足している書類の種類と
提出期限を記載する。

不足書類が提出されるまで、当該案件は保留され、DGAT には送達されない。

指定期限までに書類の提出がなされない場合、当該案件は提出されなかっ
た、あるいは申請が受理されなかったとみなされる。
b. 通信許可総局での手続き
4
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
申請された地域あるいは周波数帯域での周波数が使用可能か否かを確認す
る。

なんら制約がない場合には、手続きを継続する。

制約がある場合には、申請を却下する。

必要であれば申請者に追加情報を要請する。

処分や支払い状況について所轄機関に問い合わせる。

審査終了後、

申請を拒否する場合には、報告書(法的・技術的内容)および拒否決議案
を作成する。

申請を受諾する場合には、その旨の報告書(法的・技術的内容)および次
官決議案を作成し、法律顧問室にその確認を依頼し、問題がなければ通信
次官が決議書に署名する。
許可取得者に求められる経済的な義務を以下に示す。

許可・公示手数料および納付金の支払い(次官決議の通知日から 60 日以
内)。

スペクトル割当料の支払い(2 月)

商業利用料(毎月、最終的な清算は 4 月)
さらに、許可取得者には設置と試運転期間が定められる。この間に、許可取得者は、許可
された技術および諸要件を満たし、かつ必要な放送用設備機器を設置し、機能を確認する
ための試運転をおこなわなければならない。同期間は 12 ヶ月(延長不可)とする。
放送局の設置場所について、以下の制約(禁止事項)が定められている。

都市部

民間航空総局が指定する制限地区

通信管理監視総局全国スペクトル管理システム技術検証場付近

爆薬・石油製品・ガス製品の製造・貯蔵施設付近

ペルー国文化庁(INC)文化遺産指定地区内

農業省国立天然資源院(IRENA)指定の自然保護区内

地殻変動観測所、無線観測所付近

公用地内
以下のケースに該当する場合、許可は無効となる。
5
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
設置・試運転期間に関する義務の不履行による場合

割当料金または年間手数料を連続 2 年間にわたって支払わなかった場合

連続 3 ヶ月間、または 1 年のうち非連続的に 5 ヶ月間にわたりサービス
(運転)を中断した場合

放棄による場合

公開入札の入札図書に定められた義務の不履行による場合
さらに、以下に該当する場合も、許可の消滅の事由となる。

許可所有者の死亡、行方不明または破産宣告による場合

期限満了による場合。ただし、法に定められた期限までに更新申請をおこ
ない、これが拒否されなかった場合を除く。
1.2. 現在のチャンネル構成
現在のアナログ放送は、VHF(チャンネル 1~13)で放送されているが、今後地上デジタル
放送は UHF(チャンネル 14~59 で放送される予定である。当局は、これにともない、周波
数を VHF から UHF に移行するためのスケジュールを組まなければならない。スケジュール
が計画通りに実行されるまでの間、VHF 帯のスペクトルは他の目的で使用することはでき
ない。
表 1.2.1 に詳細なチャンネル割当表を示す。
表 1.2.1:テレビ放送サービスのチャンネル構成
チャンネル
#
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
チャンネル
#
31
32
33
34
35
36
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
周波数帯域(MHz)
54-60
60-66
66-72
76-82
82-88
174-180
180-186
186-192
192-198
198-204
204-210
210-216
470-476
476-482
482-488
488-494
494-500
500-506
周波数帯域(MHz)
572-578
578-584
584-590
590-596
596-602
602-608
614-620
620-626
626-632
632-638
638-644
644-650
650-656
656-662
662-668
668-674
674-680
680-686
6
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20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
506-512
512-518
518-524
524-530
530-536
536-542
542-548
548-554
554-560
560-566
566-572
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
686-692
692-698
698-704
704-710
710-716
716-722
722-728
728-734
734-740
740-746
出典:運輸通信省次官室決議書 N°268-2005-MTC/03
マルチセクター暫定委員会(CMT)は、最終報告書において地域格差を考慮して全国を 4
つの地域に分割して、それぞれのデジタル放送導入実行期限(サイマル放送開始時期とそ
の後のアナログ放送終了時期)を設定した。なお、国を 4 分割する際は、地方単位全体で
はなく、主要都市を基準とした。このように分割した 4 つの地方を表 1.2.2 に示した。
表 1.2.2:CMT によるゾーニング(地方と地域)
地方
地域*
人口(百万人)
人口に対する割合
1
リマ、カジャオ
8.5
31%
2
アレキパ、クスコ、トゥルヒジ
ョ、チクラヨ、ピウラ、ウアンカ
ヨ
3.9
14%
チンボテ、イカ、イキトス、フリ
アカ、プカルパ、プノ、タクナ、
3
アヤクチョ
2.2
8%
4
その他
12.9
47%
合計
27.5
100%
出典:地上デジタル放送導入マスタープラン策定に関する MTC への提言をおこなうマルチ
セクター暫定委員会の最終報告書
* 地域の分類では CMT は MTC のゾーニングを採用した。
上位 3 地域は、都市部にあたり、3 地域合わせた人口はペルーの総人口の 53%に相当する。
現在、ペルー国営放送協会(IRTP)、および主要な全国局、地方局、およびローカル局に
よるアナログ・テレビ・サービスが実施されている。
上記各地方について、CMT はサイマル放送申請期間を設けた。これは、アナログ信号で放
送する同一の内容をデジタル・フォーマット(固定・モバイル)で同時に放送する期間を
意味する。アナログ放送の終了をもってサイマル放送期間終了となる。上記 4 地方につい
て、それぞれの終了時期が定められたが、その結果を表 1.2.3 に示す。
7
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表 1.2.3:CMT によるゾーニング(地方と地域)
サイマル放送要請
地方
サイマル放送終了
=
1
2010~2013
2020
2
2010~2018
2025
3
2010~2023
2030
4
2010 以降
アナログ放送の終了
無期限
出典:地上デジタルテレビ導入マスタープラン策定に関する MTC への提言をおこなうマル
チセクター暫定委員会の最終報告書
表を見てもわかるとおり、CMT は長いスパンで期限の設定をおこなっている。CMT による
ゾーニングを示した地図を次ページに示す。CMT は主要都市(濃色部)を基準にゾーニン
グを行っており、地方まで(薄色部)はまだ網羅されているわけではない。
凡例
第 1 地方
第 2 地方
第 3 地方
第 4 地方
リマ、カジャオ
アレキパ、クスコ、トゥルヒジョ、チ
クラヨ、ピウラ、ウアンカヨ
チンボテ、イカ、イキトス、フリアカ、プカ
8
ルパ、プノ、タクナ、アヤクチョ
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出典:IEP、自社作成
1.3. 導入にあたっての判断基準
運輸通信省における周波数の割当に関するこれまでの決定事項や作業進捗状況について情
報を収集するために、通信規制・国際部部長 Patricia Carreño 氏、許認可総局部長
Manuel Cipriano 氏、およびコンセッション総局部長 Carlos Valdez 技師に面談調査をお
こなった。なお、Valdez 技師は、マルチセクター暫定委員会の技術委員を務めている。
本報告書が作成された時点では、MTC はまだリマ市における周波数やチャンネルの割当基
準を公表しておらず、2010 年 2 月末に公表を予定していた。既存放送局がデジタル TV 放
送を開始するためには、まず規格設定が不可欠であり、これがなければデジタル放送をお
こなうことができない。
関係者によると、周波数の割当は、放送許可を取得している既存放送局の信号出力を計測
し、スペクトルに落としていかなければならないため、技術的にきわめて複雑な作業をと
もなう。また、UHF 帯の一部が新たなデジタル信号用とされているものの、そのなかには
以前の割当分も含まれており、その取扱い、すなわち移行方法について決定しなければな
らない。したがって、周波数の割当を行うにあたっては、まずチャンネル割当マップを作
成する必要がある。幸い、類似の特徴を示すスペクトルの一部はすでに把握されているた
め、初期段階の割当は可能な状況である。
一方、規制総局では、現在、新規技術の導入基準および放送局に適用される新たな要件の
設定を含む地上波デジタルテレビ放送マスタープランを策定中である。現時点で決定して
いるのは、今後もテレビ放送を公共サービスとして無料で提供していくという点である。
すなわち、デジタル放送もアナログと同様の扱い(サイマル放送期間中)とし、同一の内
容をワンセグ・サービス(無料)でも提供する。
将来、MTC は TV 放送部門において新たな競合の参入を可能にする環境を整備する計画であ
る。しかし、既存の放送局はデジタル放送移行への投資が強いられることを考慮して、当
面は市場を現状のまま維持することが賢明であると判断されるため、新たな競合の参入を
検討するに当たっては、どのタイミングで新たな周波数を割当てるかを検討する必要があ
る。
1.4. デジタル化の配当に関する調査
MTC は、スペクトルの最適化に肯定的かつ積極的である。技術的に、デジタル放送の導入
は TV の周波数帯域の変更を意味し、デジタル TV 信号は UHF 帯を使用し、VHF 帯は他の使
途に解放されることとなる。諸外国では、テレビ信号に使用しなくなった VHF 帯域をモバ
イル・サービス、緊急放送、安全で豊かな暮らし支える用途に使われることになっている。
9
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また、米国と同様に UHF の 700MHz 周波数帯(52 チャンネル以降)を高度な第 4 世代モバ
イル・ネットワークに使用する可能性についても、周波数割当と関係していることから、
現在、MTC の検討項目に含まれている。現時点でのアプローチとしては、先進国のトレン
ドに倣って UHF ハイバンドのスペクトルをモバイル・サービス用に使用することが検討さ
れている。
実践的にみると、アナログ放送を完全に終了させる時期として 2030 年が設定されている
ため、当局としては解放されたスペクトルをどのように利用するかという点について、国
際的なトレンドを注視し、意思決定する上で、十分な時間的余裕があると判断される。た
だし、CMT が設定した期間について、当局としては国際的にも希なほど長期にわたること
を懸念している。
2. 放送機材と関連機材市場
2.1. 各局の機材購入計画
地上デジタル放送導入の進捗状況について Andina de Televisión(ATV)、ペルー国営放
送協会(IRTP、または TVPerú)および América Televisión の 3 局に関する情報収集をお
こなった。前者 2 局についは直接面談調査を実施し、América Televisión については二次
的な情報源より情報を入手した。
上記 3 局を調査対象とした理由を以下に述べる。まず、Andina de テレビ(ATV)は、こ
れまでペルーでの地上デジタル放送導入に積極的に関わり、技術的なテストや各種規格の
評価において MTC を支援してきた。現時点で、デジタルのテスト信号を発信する唯一の放
送局であり、新技術導入の牽引役を担っている。次に国営放送 TVPerú については、商業
的に魅力の小さい貧しい辺境地も含めて全国をカバーするという使命を負い、アナログか
らデジタル化への移行プロセスで重要な役割を果たしている。また、América Televisión
については、主要番組のランキングの観点から市場最大のテレビ局であることから調査対
象に含めた。
2.1.1 Andina de Televisión(ATV)
ATV ではリマ放送部長 Jean Vargas 技師およびテレビ局長 Jorge Chang Hernández 氏と面
談した。ATV は、2007 年にデジタル・システムの導入を開始し、すでにデジタル化が進ん
でいる。規格検討の初期段階で、同局はテスト用に低出力送信機を購入したが、今後、こ
れをリマ市内の放送用に使用することを計画している。これまでに同局がデジタル化に投
じてきた資金は 12 百万ドルで、今後 20~25 百万ドルに達すると予測している。
現在、高品位(HD)機材を整備する他、高品位カメラも保有し、重要なコンテンツや大規
模イベントの撮影に使用している。さらに、Non-Linear 編集装置、HD 対応のデジタルス
10
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イッチャー、信号の送信用マスターコントロールモジュールを整備しているため、HD での
番組製作・放送の準備は整っている。そのため、本年より、制作者には HD で番組製作が
できる規格を整備するよう要求しており、この技術を意識した映像(scenography)の使
用を開始予定である。
近い将来、同局は高品位カメラ、スイッチャー、プロセッサーおよび配信用設備一式を購
入予定である。さらに、送信所の拡張工事、アンテナ 1 基の新規購入、タワーの増設、出
力強化を実施する必要があるほか、デジタル・リンクも購入する予定である。こうした投
資計画は高額にのぼるため、段階的に実施していくとしている。
ATV は、Red Global との合弁企業であるため、同社と調整をはかりながら購入計画を実行
していく。合弁企業を形成していることから、メーカーに対する交渉力があり、割引や月
賦払い等の利便性が得られることが期待される。
ATV は、ペルー国内でサッカーのワールドカップの放映権を有している。今後、ワールド
カップの放送がデジタル放送対応テレビの導入の触媒となり、固定テレビ向けの HD 受信
装置やワンセグ対応携帯電話の購入においても需要の拡大になるのではないかと期待して
いる。
2.1.2 TVPerú
TVPerú では技術部長 José Aguilar 技師に面談調査をおこなった。同局は先の ATV とまっ
たく事情が異なり、現在保有している機材のほぼすべてはアナログ機材である。デジタル
化は、編集および CM 放送等、ごくわずかな業務に限定される。現在、撮影スタジオは 3
室のみで、将来手狭になることも考えられる。今後、デジタル化を進めるに当たっては、
設備機器のみならず、施設改修、コンテンツ制作等に必要な投資は高額に達する。
TVPerú のネットワークは 280 ヶ所のステーションで構成されており、デジタル・システム
を導入する場合に必要な投資は 200 百万ドルと推定されるが、これより 20%増となる可能
性もある。資金源として、現在、ペルー・日本両国政府間で円借款の実施について交渉が
おこなわれており、日本政府から新たな機材供与を受けることが決定し、最初のロットが
すでにペルーに搬入されている。
2.1.3 América Televisión
América Televisión は、100 百万ドルを超える負債を抱えたまま 2001 年に INDECOPI3から
経営破たんの宣告を受け、現在、事業の立て直しとリポジショニングの過程にある。
Grupo Plural TV という新聞社 2 社(El Comercio 紙、La República 紙)から構成される
メディア・コングロマリットが América Televisión の負債の 55%を債権者から買い取った
結果、同社は Grupo Plural TV に吸収された。
3
知的財産権保護・競争防衛庁(INDECOPI)。破産した企業の財産の管理処分をおこなう機関。
11
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しかし、こうした困難な状況においても、同局はデジタル・システムの導入計画を有して
いる。2009 年 1 月に ISDB-T 規格の試験放送を実施し、これまでに設備機器に約 15 百万ド
ルを投じてきた。ただし、デジタル放送が試験的技術とみなされ、その導入について債権
者が反対する可能性もあるため、未だに不安定な状況にある同局で短長期的にデジタル・
システムを導入することには制約が多いと思われる。
一方で、Andina de Televisión と同様に América Televisión もサッカーのワールドカッ
プの放映権を有していることから、これがワンセグ・サービスを開始する好機になると思
われる。
2.2. デコーダ販売予測(地上手時樽テレビによる需要)
本項では、定量データにもとづくデコーダ(セットトップボックス
STB)およびデコー
ダ内蔵 TV の需要について記載する。
ケーブル TV にはデジタル信号を受信するデコーダが搭載されていることを考慮し、STB 購
入意思に関する分析では、ケーブル TV 非加入世帯のみを対象とした。また、デコーダ内
蔵 TV の購入意思については、ケーブル TV 非加入世帯および保有している世帯を対象とし
ている。これは、保有していることが必ずしもテレビの新規購入の可能性を否定するもの
ではないとの判断にもとづく4。
調査対象者を収入十分位階級で分類し、STB およびデコーダ内蔵 TV を購入する意思のある
世帯の分布を表 2.2.1 にまとめた。各世帯がそれぞれ STB とデコーダ内蔵 TV を 1 台ずつ
購入すると単純に推定し、表の数値は、1 年でデジタル放送に移行しなければならない場
合の両機材の潜在的需要を示す。
表 2.2.1:STB またはデコーダ内蔵 TV の購入意思のある家庭
(収入十分位階級別)
収入十分位 当該階級の
階級
世帯数
ケーブル
TV 非加入
世帯数
ケーブル TV 非 ケーブル TV 非加
加入世帯で 入世帯でデコーダ デコーダ内蔵 TV 購
STB 購入意思 内蔵 TV 購入意思 入意思のある世帯
のある世帯数
のある世帯数
数
1
661,110
241,301
152,823
21,027
52,057
2
657,382
454,451
278,186
45,564
59,484
3
656,483
471,798
277,496
45,064
64,510
4
659,566
502,517
321,890
61,929
82,256
4
ペルーにおけるデジタル TV 規格導入に関連して運輸通信省が 2008 年に実施したアンケート調査のデー
タを使用した。国内都市部および農村部の一般家庭を対象とした全国調査で、インフォーマントは主とし
て世帯主であった。実施に当たり、国内をリマ首都圏、リマ首都圏以外の海岸地帯(コスタ)、山岳地帯
(シエラ)、密林地帯(セルバ)の 4 つの地域に分割し、各地域、全国、都市部、農村部のデータを算出
した。
12
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5
652,475
430,316
298,020
45,917
81,603
6
658,856
415,257
269,858
56,432
86,507
7
657,265
352,823
254,674
33,113
79,036
8
660,130
313,120
213,100
45,064
107,691
9
652,816
242,030
177,610
31,103
97,971
10
657,343
233,369
182,101
28,118
97,075
6,573,426
3,656,982
2,425,758
413,331
808,190
合計
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタルテレビ放送開始にあたっての需
要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
INEI - ENAHO 2007
STB を購入する世帯が最も多いのは第 4 階級で、最貧階級は反対に最も尐ない。STB の潜
在的需要は約 2.5 百万台である。一方、ケーブル TV 非加入世帯のうち、デコーダ内蔵 TV
の購入意思のある世帯は、400,000 世帯強で、ここでも第 4 階級が最も多く、第 1 階級が
最も尐ない。ケーブル TV を保有しているか否かを問わず、デコーダ内蔵 TV の需要は
800,000 台以上で、第 8 階級の需要が最も多く(100,000 台以上)、最貧階級はわずか
50,000 台であった。
上記のデータでは、貧困度別の需要もみてとることができる。検討対象の 3 つのサブサン
プルにおいて、非貧困世帯の需要が最も大きく、STB が 1.5 百万台、デコーダ内蔵 TV はケ
ーブル TV 非加入世帯で約 300,000 台、ケーブル TV の有無を区別しない場合のデコーダ内
蔵 TV は約 600,000 台と推定される。
表 2.2.2:STB またはデコーダ内蔵 TV の購入意思のある世帯(貧困との関連)
ケーブル
TV 非加入
世帯数
ケーブル TV
非加入世帯
で、STB 購入
意思のある世
帯数
ケーブル TV 非加
入世帯で、デコ
ーダ内蔵 TV 購入
意思のある世帯
数
559,489
329,665
187,383
31,929
47,547
貧困
1,427,493
855,792
548,136
108,308
162,574
非貧困
4,586,442 2,471,528
1,690,238
273,096
598,070
合計
6,573,424 3,656,985
2,425,757
413,333
808,191
貧困度
極度の貧困
収入十分
位階級に
よる世帯
数
デコーダ内蔵 TV
購入意思のある
世帯数
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタルテレビ放送開始にあたっての需
要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
また、リマ市首都圏、リマ市首都圏以外の海岸地帯(コスタ)、山岳地帯(シエラ)およ
び熱帯雨林地帯(セルバ)の各地方におけるカテゴリー別の潜在的需要もこの表をみると
わかる。
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2.2.1. ケーブル TV 非加入世帯の STB 需要
ケーブル TV 非加入世帯の STB 需要は、主に山岳地帯(シエラ)に集中(41%)する一方で、
熱帯雨林地帯(セルバ)はわずか 13%であった。リマ市首都圏の需要は、それ以外の海岸
地帯(コスタ)よりも高かった。
図 2.2.1.1:ケーブル TV 非加入世帯で STB 購入意思のある世帯数(地方別)
45%
40%
35%
30%
25%
41%
24%
23%
20%
15%
10%
5%
0%
13%
Lima
リマ首都圏
Metropolitana
リ マ 首de
都圏
以外
Resto
Costa
山Sierra
岳地帯
Selva
熱帯雨林地帯
の海岸地帯
(シエラ)
(セルバ)
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタルテレビ放送開始にあたっ
ての需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
都市部および農村部別にみた STB 需要については、予想どおり、都市部のケーブル TV 非
加入世帯の割合が高く(80%以上)、農村部はわずか 18%であった。
図 2.1.1.2:ケーブル TV 非加入世帯で STB 購入意思のある世帯数
(都市部・農村部別)
18%
都市部
農村部
82%
14
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出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタルテレビ放送開始にあたっ
ての需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
2.2.2. ケーブル TV 非加入世帯でのデコーダ内蔵 TV の需要
同様に、山岳地帯(シエラ)におけるケーブル TV 非加入世帯のデコーダ内蔵 TV の需要が
最も高く(全世帯の 50%)、熱帯雨林地帯(セルバ)はわずか 4%と低かった。
図 2.2.2.1:ケーブル TV 非加入世帯のデコーダ内蔵 TV 購入(地方別)
60%
50%
50%
40%
32%
30%
20%
14%
10%
4%
0%
Lima
リマ首都圏
Metropolitana
リ マ 首 de
都圏
以外
Resto
Costa
山Sierra
岳地帯
熱帯雨林地帯
Selva
の海岸地帯
(シエラ)
(セルバ)
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタルテレビ放送開始にあたっ
ての需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
農村部と都市部のデコーダ内蔵 TV 需要については、都市部の割合が 76%と高く、農村部の
割合は 24%であった。
15
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図 2.2.2.2:ケーブル TV 非加入世帯のデコーダ内蔵 TV 購入状況
(都市部・農村部)
24%
都市部
農村部
76%
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタルテレビ放送開始にあたっ
ての需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
2.2.3. デコーダ内蔵 TV の需要
ケーブル TV 加入者であるか否かを問わず、デコーダ内蔵 TV の購入意思をみても山岳地帯
(シエラ)の割合が高く(43%)、熱帯雨林地帯(セルバ)で低いという同様の傾向を示
す。
図 2.2.3.1:デコーダ内蔵 TV 購入状況(地域別)
50%
45%
40%
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
43%
26%
26%
5%
Lima
リマ首都圏
Metropolitana
リResto
マ首都
以外
de圏Costa
山 Sierra
岳地帯
熱帯雨林地帯
Selva
の海岸地帯
(シエラ)
(セルバ)
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタルテレビ放送開始にあたっ
ての需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
16
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上記と同様、都市部の割合が高い(全世帯の 82%)。
図 2.2.3.2:デコーダ内蔵 TV 購入状況(都市部・農村部)
18%
都市部
農村部
82%
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタルテレビ放送開始にあたっ
ての需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
2.2.4 チューナー内蔵テレビの市場
調査期間中にコンタクトをとったパナソニックおよび LG は、一般放送用のチューナー内
蔵型テレビを輸入する計画を有している。2009 年以降、ブラウン管 TV の需要が激減し、
これと反比例してプラズマ TV や LCD の需要が伸びてきた。

パナソニック
パナソニックが輸入するチューナー内蔵型 TV の最初のロットは、本年 3 月末~4 月にかけ
て到着する予定であり、当面、42 インチの LCD TV、50 インチのプラズマ TV をブラジルか
ら輸入し、一切の仕様に変更を加えることなくペルー国内で販売することになっている。
これら TV の価格は、チューナーを内蔵していない TV より 10~15%高い。
ペルーの規格は最低限の仕様が定められているのみで、これらの仕様に基づき弊社はテレ
ビ受像機を製造してきている。しかし、未解決の[=懸案となっている]ある種の技術的
仕様が未だ残っている。例えばペアレント保護機能ソフトウエアの配備の要否や、あるい
は(消費者保護のために)ペルー国内で販売されるテレビ受像機はすべてチューナ内蔵型
であるべきとする義務が導入されるか否かなどの課題が解決されれば、ペルーの規格が持
つ不安定性も減尐するだろう。
17
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これらの新型 TV の需要について、マーケティング部長 Jorge Takechi 氏の見解では、高
品位 TV に対する消費者の認知度が高まるにつれて需要も伸び、HD と現在の標準 TV との差
異が認識されればチューナー内蔵型 TV の購入意欲も高まると思われる。さらに、オープ
ン TV のコンテンツが充実すれば、デジタル化や TV 機材の買い替えも進むと予想される。
■LG
本年以降、40 インチ以上の LG 製テレビの全モデルにチューナーが内蔵される。価格は、
受信機を搭載していない従来の TV より 300 ソール高い。40 インチ以下のモデルの一部に
ついても受信機が搭載される。現在、LG はブラジル、中国、韓国、メキシコに製造プラン
トを有している。
ATV を使ったサッカーのワールドカップの放送により、受信機内蔵型 TV の購入意欲が高ま
ることを同社は期待している。
2.3. ワンセグ・サービス開始にともなう携帯電話市場の変化(モバイル・デジタル TV の
需要)
2.3.1. 需要ポテンシャル、定量調査
本項では、携帯電話を経由したワンセグ放送について記載する。ここでも前項までに使用
した MTC のアンケート調査のデータを使用した。
まず、ペルーにおける携帯電話の需要からみると、先述アンケート調査のデータによれば、
表 2.3.1.1 に示すように、全世帯の 62%(約 4 百万世帯)が現在携帯電話を保有している。
表 2.3.1.1:携帯電話保有状況(全国)
携帯電話保有状況
世帯数
割合
保有している
4,055,782
62%
保有していない
2,517,642
38%
合計
6,573,424
100%
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジ
タル TV 規格採用にあたっての需要調査、およびモバ
イル・サービスにおけるその意義
次に、全国、地方別、都市部/農村部別にデータを解析した。
18
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2.3.1.1.携帯電話経由のデジタル TV アクセス
全国でみた場合、表 2.3.1.1.1 に示すように、全世帯のうち 55%が携帯電話を経由してデ
ジタル TV を試聴すると思われる。
表 2.3.1.1.1: 携帯電話経由でデジタル放送にアクセスする意向(全国)
携帯電話経由でデジタル TV にア
クセスする意思
世帯数
割合
ある
3,591,476
55%
ない
2,964,333
45%
不明
17,615
0%
合計
6,573,424
100%
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 規
格採用にあたっての需要調査、およびモバイル・サービスにお
けるその意義
地方別にみると、図 2.3.1.1.1 に示すとおり、サービスにアクセスする意思が最も高いの
はリマ市首都圏(60%)で、それ以外の海岸地帯(コスタ)のレベルは最も低い。
図 2.3.1.1.1:携帯電話経由でデジタル放送にアクセスする意向(地域別)
100%
80%
60%
No
indica
不明
No
ない
Sí
ある
40%
20%
0%
リマ首都圏
Lim a
Metropolitana
リマ首都圏以外
Res
to de Cos ta
の海岸地帯
山岳地帯
Sierra
(シエラ)
熱帯雨林地帯
Selva
(セルバ)
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 放送開始にあたっての
需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
都市部/農村部別に見ると、デジタル放送にアクセスする意向は、実質的に両者に大きな
差異は見られない。
19
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図 2.3.1.1.2:携帯電話経由デジタル TV にアクセスする意向
100%
90%
80%
70%
60%
不明
50%
40%
ない
ある
30%
20%
10%
0%
都市部
農村部
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 放送開始にあたっての
需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
2.3.1.2. デジタル TV にアクセスするために携帯電話を購入する意思
全国で見た場合、表 2.3.1.2.1 に示すように、全世帯の 48%がデジタル TV にアクセスする
ために携帯電話を購入する意思を示した。
表 2.3.1.2.1.:デジタル TV にアクセスするために携帯電話を購入する意向
(全国)
デジタル TV にアクセスするた
めに携帯電話を購入する意思
世帯数
ある
3,143,007
48%
ない
3,430,417
52%
合計
6,573,424
100%
割合
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV
放送開始にあたっての需要調査、およびモバイル・サービス
におけるその意義
地方別にみると、リマ市首都圏でデジタル放送にアクセスするために携帯電話を購入する
意思を示し割合が最も高く(50%以上)、熱帯雨林地帯(セルバ) およびリマ市首都圏以
外の海岸地帯(コスタ)での割合は 40%であった。
20
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図 2.3.1.2.1.:デジタル放送にアクセスするために携帯電話を購入する意向
(地域別)
100%
90%
80%
70%
60%
ない
50%
ある
40%
30%
20%
10%
0%
リマ首都圏
リマ首都圏以外の
海岸地帯
山岳地帯
(シエラ)
熱帯雨林地帯
(セルバ)
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 放送開始にあたっての
需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
都市部/農村部別に見ると、予想どおり、デジタル放送にアクセスするために携帯電話を
購入する意思を示した割合は、農村部よりも都市部の方が高かった(約 50%)。ただし、
図 2.3.1.2.2 に示すように農村部/都市部に大きな差異はない。
図 2.3.1.2.2:デジタル TV にアクセスするために携帯電話を購入する意向
(都市部・農村部)
100%
90%
80%
70%
60%
ない
ある
50%
40%
30%
20%
10%
0%
都市部
農村部
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 放送開始にあたっての
需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
21
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2.3.1.3. デジタル放送アクセスに支払える携帯電話料の意識調査
デジタル放送を見る目的で携帯電話する意向を示した世帯は約 3 百万戸に達する。意思が
あると回答した人に、1 台当たりどの程度の価格であれば購入するかを訊ねた。回答は
「400 ヌエボ・ソール以下」、「401~600 ソール」、「以上 600 ソール」の 3 ランクから
選択式とした。全国で見た場合、全体の 78%が「400 ソール以下」、6%が「600 ソール以
上」と回答した。
表 2.3.1.3.1.:デジタル放送アクセスに支払える携帯電話料(全国)
デジタル TV にアクセスに支払える携帯電話料
400 ソール以下
世帯数
割合
2,435,837
78%
401~600 ソール
505,624
16%
600 ソール以上
201,547
6%
3,143,008
100%
合計
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 規格採用にあたっての需要調
査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
地域別にみた場合、図 2.3.1.3.1 が示すように、「400 ソール以下」という回答が最も多
かったのが熱帯雨林地帯(セルバ)で約 90%あった。この地方ではデジタル TV を見るため
に携帯電話を「600 ソール以上」支払って購入する意思を示す人はゼロであった。
反対に、リマ市首都圏では、「600 ヌエボ・ソール以上」と回答した割合が他の地方と比
較して最も高かった(約 10%)。
22
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図 2.3.1.3.1:デジタル TV にアクセスに支払える携帯電話料
(地域別)
100%
90%
80%
70%
600 ソール以上
401~600 ソール
400 ソール以下
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
リマ首都圏
リマ首都圏以外
の海岸地帯
山岳地帯
(シエラ)
熱帯雨林地帯
(セルバ)
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 放送開始にあたっての
需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
図 2.3.1.3.2.に示すように農村部には、「600 ソール」と回答した世帯は実質的におらず、
400 ソール以下という回答が高い割合を占めている。一方の都市部における、携帯電話価
格は、主に「400 ソール以下」であったが、それ以上と回答した世帯もあった。
図 2.3.1.3.2: デジタル放送のアクセスに支払える携帯電話料
(都市部・農村部)
100%
90%
80%
70%
600 ソール以上
60%
50%
401~600 ソール
40%
30%
20%
10%
400 ソール以下
0%
都市部
農村部
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 規格採用にあたっての
需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
23
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2.3.1.4. 携帯電話経由でデジタル放送へのアクセス料(月額)
デジタル TV アクセス料(月額)の支払いに関するデータについて分析した。デジタル TV
配信サービス対応の携帯電話購入意思があると回答した 3,143,007 世帯のうち、29%はサ
ービス料を支払う意思がないと回答し、54%は 50 ソール以下と回答している。月額別に支
払う意思のある世帯の割合を表 2.3.1.4.1.に示した。
表 2.3.1.4.1:デジタル TV 対応携帯電話アクセス料月額(全国)
ジタル TV 対応携帯電話アクセス料
月額
世帯数
割合
支払えない
897,310
29%
50 ソール以下
1701035
54%
51~100 ソール
505,833
16%
101~200 ソール
37,368
1%
200 ソール以上
1,461
0%
3,143,007
100%
合計
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV
規格採用にあたっての需要調査、およびモバイル・サービス
におけるその意義
地方別にみると、山岳地帯(シエラ)における携帯電話のデジタル TV アクセス料月額に
関する質問に対して、世帯の割合が最も多かった回答は「支払う意思なし」であった。熱
帯雨林地帯(セルバ)では、「50 ソール以下」という回答が最も多く、「200 ソール以
上」は尐なかった。
24
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図 2.3.1.4.1:デジタル放送対応携帯電話月額アクセス料(地域別)
100%
90%
80%
70%
200 ソール以上
60%
101~200 ソール
50%
51~100 ソール
50 ソール以下
40%
支払えない
30%
20%
10%
0%
リマ首都圏
リマ首都圏以外
の海岸地帯
山岳地帯
(シエラ)
熱帯雨林地帯
(セルバ)
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 規格採用にあたっての
需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
都市部で携帯電話のデジタル TV アクセス料に関する質問に対して、最も世帯の割合が多
かった回答は、「50 ソール以下」と「101~200 ソール」であった。
25
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図 2.3.1.4.2:デジタル放送対応携帯電話月額アクセス料
(都市部・農村部)
100%
90%
80%
70%
200 ソール以上
60%
101~200 ソール
50%
51~100 ソール
50 ソール以下
40%
支払えない
30%
20%
10%
0%
都市部
農村部
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 放送開始にあたっての
需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
2.3.1.5. 携帯電話のデジタル TV が無料の場合の関心度
最後に、携帯電話のデジタル TV が無料だった場合の関心度について情報を収集した。全
国で見た場合、表 2.3.1.5.1 に示すように、全世帯の 98%が関心を示した。
表 2.3.1.5.1:携帯電話のデジタル放送が無料の場合の関心度(全国)
携帯電話のデジタル TV が無料の場合の関心度
世帯数
割合
ある
3,094,625
98%
ない
48,382
2%
合計
3,143,007
100%
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 規格採用にあたっ
ての需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
地方別にみると、調査対象 4 地方のいずれにおいても実質的に 100%の世帯が無料であれば
デジタル TV に関心を示した。ただし、リマ市首都圏と熱帯雨林地帯(セルバ)では、携
帯電話のデジタル TV への関心が若干低くなっている。図 2.3.1.5.1 にこれらのデータを
示した。
26
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図 2.3.1.5.1:携帯電話のデジタル放送が無料の場合の関心度(地域別)
100%
80%
60%
ない
ある
40%
20%
0%
リマ首都圏
リマ首都圏以外
の海岸地帯
山岳地帯
(シエラ)
熱帯雨林地帯
(セルバ)
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 放送開始にあたっての
需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
都市部と農村部を比較しても、図 2.3.1.5.2. に示すように実質的に全世帯が無料のデジ
タル TV に関心を示している。
図 2.3.1.5.2:携帯電話のデジタル放送が無料の場合の関心度
(都市部・農村部)
100%
80%
60%
ない
ある
40%
20%
0%
都市部
農村部
出典:Cuanto S.A.(2008)、ペルーにおける地上デジタル TV 放送開始にあたっての
需要調査、およびモバイル・サービスにおけるその意義
27
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2.3.2. 需要ポテンシャル、定性調査
前項までの定量調査を補足する意味で、携帯電話ユーザーによるワンセグ・サービスの潜
在的需要および受容性、今後の展望に関する定性データも併せて示す。データ収集では、
リマ市首都圏における男女混合の 2 つのフォーカス・グループ(18~24 歳の若者と、30~
40 歳の成人)を抽出した。両グループも中高所得者層(A2/B1)で、高等教育を受け、ケ
ーブル TV に加入している。詳細データは添付資料を参照されたい。
所得が多く新しいテクノロジーが早い時期から浸透しやすいと言う理由でこの社会経済層
を選んだ。ワンセグ導入を前提にこの仮定を採用した。
周知のとおり、定性分析ではより大きな母集団の代表的な回答を得るのが目的ではなく、
調査対象者の考え方や意見を深く掘り下げることが重要である。ここでも、各フォーカ
ス・グループの参加者との会話を通じて、(i)携帯電話の重要性と利用方法、(ii)携帯電
話のテレビ機能に対する潜在的受容性、(iii)携帯電話のテレビ機能の潜在的利用方法と
いった、本調査で重要と思われる点について情報を得ることができた。
2.3.2.1. 携帯電話の重要性と利用法
2 つのフォーカス・グループのいずれも日常生活での携帯電話の重要性はきわめて高いと
回答しているが、なかでも 30 歳以上のグループの方が点数が高かった(若者グループは
10 点満点中 7~8 点、成人グループは 7~10 点)。若者は、物心がついたときには既に携
帯電話が近くにあったが、成人にとっては携帯電話の出現により業務調整や家族とのコミ
ュニケーション等それまでの日常生活が激変した。
若者は、何年も前から携帯電話が近くにあり、なかには幼尐の頃から携帯電話を見てきた
ものもいる。彼らは、まず遊び道具として使う、あるいは両親との通信手段として利用し
てきた。現在の使途は、通話またはテキスト・メッセージの送受信等、主に通信手段とし
て利用している。また、目覚まし機能を利用している。若者が保有する携帯電話は成人の
ものよりも低機能のものが多い。
携帯電話機能の利用状況について、両グループの参加者各人にランク付けをするよう依頼
し 、 そ の デ ー タ を も と に ラ ン キ ン グ を 年 齢 別 に ま と め た 。 表 2.3.2.1.1 お よ び 表
2.3.2.1.2 にその結果を示す。
28
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表 2.3.2.1.1:携帯電話機能の利用状況
フォーカス・グループ(若者:20~24 歳)
機能
テキストメッセージ
得点
最終結
果
平均点
10
8
8
8
8
8
10
5
8.1
1
ゲーム
8
8
5
5
7
4
8
1
5.8
2
MP3/MP4
4
9
4
1
10
9
7
1
5.6
3
カメラ
7
10
5
1
7
10
3
1
5.5
4
FM ラジオ
9
6
1
1
6
7
9
1
5.0
5
動画再生
3
5
2
1
8
5
6
1
3.9
6
動画
6
5
4
1
5
6
2
1
3.8
7
マルチメディア
2
3
1
1
4
3
5
1
2.5
9
Eメール送受信
5
1
9
1
1
1
1
1
2.5
8
インターネット
1
1
7
出典:アドホック・フォーカス・グループ
自社作成
1
1
2
4
1
2.3
10
表 2.3.2.1.2:携帯電話機能の利用状況
フォーカス・グループ(成人:30~40 歳)
機能
テキストメッセージ
得点
最終結
果
平均点
8
10
9
9
9
9.0
1
カメラ
10
8
9
8
7
8.4
2
インターネット
10
10
9
7
5
8.2
3
Eメール送受信
5
10
7
7
9
7.6
4
10
5
9
5
8
7.4
5
7
8
7
6
5
6.6
6
MP3/MP4
10
5
8
4
6
6.6
7
動画再生
10
5
7
5
5
6.4
8
FM ラジオ
4
2
7
6
8
5.4
9
ゲーム
2
2
出典:アドホック・フォーカス・グループ
5
4
6
3.8
10
動画
マルチメディア
自社作成
利便性が高いという理由でテキスト・メッセージ・サービス(TMS)が携帯電話の最も利
用度の高い機能であった。ユーザーは、声を出せない空間(会議、授業中)で短いメッセ
ージで通信ができ、かつコストも安いという理由で、通話よりもメール送受信を好む傾向
がみられた。
一方、携帯電話からのインターネット利用については、年齢差がでた。若者グループでは
最もランキングが低い一方、成人グループでは 3 位であった。成人はさまざまな機能を駆
使し、支払いはポストペイド方式で行っている。若者は携帯からのインターネット利用に
29
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同様の価値は見出していない。その理由は、携帯端末にインターネット機能がない、料金
が高い、若者の多くが利用している「残高限定」のプリペイド式料金プランに適していな
い等が挙げられる。若者は、インターネットにアクセスするのは主にコンピュータであり、
携帯電話は決して理想的なアクセス端末ではないと考えている。
成人グループでは、ランキング第 2 位にカメラ機能が挙げられた。若者グループも同様の
結果が得られた。カメラを携帯していない時やとっさの時に便利である、カメラを携帯す
るのが煩わしい、あるいは危険が伴うので携帯電話だけを持ち歩く等の理由が挙げられた。
2.3.2.2. 携帯電話 TV の受容レベル
全般的に、ワンセグ・サービスに対する関心は低かった。地上波 TV 提供するコンテンツ
の品質が高くないことが理由として挙げられた。すなわち、地上波 TV が高品位の画像で
配信しても、この意見は変わらないことを意味している。フォーカス・グループが指摘し
た最も大きな理由はコンテンツにあるからである。
さらに、主に大きさや携帯画面の画像品位等の携帯端末の物理的制約、公共交通機関や街
中で安心して安全に利用できないという意見もあった。そのため、携帯端末用に製作され
た番組やコンテンツを配信して欲しいという要望があった。携帯端末用のコンテンツとは、
携帯画面の技術的要件に見合うような時間の短いもの、サマリー的なものを言う。
携帯端末の価格も重要な要素である。ワンセグへの関心が低いことから、当面、ワンセグ
対応の携帯電話に高い対価を支払う意思はない。したがって、高いコストは大きな障害と
なり得る。サービスへの関心が低ければ低いほど障害は大きい。
最後に、参加者に新たに地上波テレビ機能を加えた場合の携帯電話機能のランク付けを改
めておこなうよう依頼した。その結果を表 2.3.2.2.1 および表 2.3.2.2.2 に示したが、こ
の新たな機能を追加してもしない場合と比較してランキングには大きな差異が見られなか
った。若者グループではテレビ機能は第 6 位、成人グループでは 9 位であった。
表 2.3.2.2.1:携帯電話の機能に TV 機能をつけた場合のランキング
フォーカス・グループ(若者:18~24 歳)
機能
テキストメッセージ
得点
平均点
最終結
果
10
8
8
8
8
8
10
5
8.1
1
ゲーム
8
8
5
5
7
4
8
1
5.8
2
MP3/MP4
4
9
4
1
10
9
7
1
5.6
3
カメラ
7
10
5
1
7
10
3
1
5.5
4
FM ラジオ
9
6
1
1
6
7
9
1
5.0
5
TV
6
5
6
1
7
4
2
1
4.0
6
動画再生
3
5
2
1
8
5
6
1
3.9
7
動画
6
5
4
1
5
6
2
1
3.8
8
Eメール送受信
5
1
9
1
1
1
1
1
2.5
9
30
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マルチメディア
2
3
1
インターネット
1
1
7
出典:アドホック・フォーカス・グループ
1
4
3
5
1
2.5
10
1
1
2
4
1
2.3
11
自社作成
表 2.3.2.2.2:携帯電話の機能に TV 機能をつけた場合のランキング
フォーカス・グループ(成人:30~40 歳)
機能
得点
テキストメッセージ
平均点
最終結果
8
10
9
9
9
9.0
1
カメラ
10
8
9
8
7
8.4
2
インターネット
10
10
9
7
5
8.2
3
Eメール送受信
5
10
7
7
9
7.6
4
10
5
9
5
8
7.4
5
7
8
7
6
5
6.6
6
MP3/MP4
10
5
8
4
6
6.6
7
動画再生
10
5
7
5
5
6.4
8
TV
8
5
5
6
5
5.8
9
FM ラジオ
4
2
7
6
8
5.4
10
5
4
6
3.8
11
動画
マルチメディア
ゲーム
2
2
出典:アドホック・フォーカス・グループ
自社作成
2.3.2.3. 携帯電話の利用方法
携帯電話のテレビ機能に対する参加者の関心は決して高いものではなかったが、「暇つぶ
し」に見る、あるいはニュースや情報番組のコンテンツを見る等の新たな利用法について
いくつか意見が聞かれた。利用したいコンテンツは、主にニュース、あるいは外出時に放
送される番組やイベントであった。
さまざまな場所や環境でこのサービスを利用する時の条件として、参加者はどこでも良質
の画像と音声が受信できるという点を挙げた。
また、ペルーが採用した規格にはある番組やイベントを試聴すると同時に双方向な情報に
アクセスする機能が含まれているものの、これについて参加者は大きな関心を示さなかっ
た。
最後に、本年開催される南アメリカのワールドカップを携帯端末で観戦する可能性につい
ては、大きな関心を示した参加者がいた。当初、関心の低かった参加者のうち 2 名は、職
場でワールドカップを観戦するのにワンセグ対応の携帯端末を買ってもよいと途中で意見
を変えている。
2.3.3. 携帯電話の供給
ISBD-T 規格では、ワンセグと呼ばれる携帯端末向けに TV 信号を配信することができるが、
サービスが導入された場合の市場の供給についてパナソニック社と LG 社から情報を得た。
31
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2.3.3.1
パナソニック
パナソニックは、ペルーに代理店を持ち、家電製品、通信機器、AV 機器等を輸入・販売す
るほか、電池工場も有している。LCD TV、プラズマ TV、携帯電話のメーカーである同社は
デジタル TV についても重要であると判断した。さらに、今回ペルーが ISBD-T を採用した
ことから、固定型およびモバイル型 TV の販売に高い関心を有していると判断した。調査
では、マーケティング部長 Jorge Takechi 氏と面談した。
パナソニックのワンセグ対応の携帯電話は、日本市場で大きなプレゼンスを維持している
が、同社は日本以外の市場でこの製品を販売することは計画していない。こうした会社の
決定の裏には、同社の携帯端末が日本仕様であり、外国仕様はないという事情がある。こ
うした決定が今後変更する可能性はあるものの、2010 年現在ではパナソニック製のワンセ
グ対応の携帯電話が(ペルーに)導入される計画はない。
ペルーが日本ブラジル規格の採用を決定したことは、ブラジルでワンセグ対応の携帯端末
を製造し、まだペルー市場に参入していない日本のメーカーにとって大きなビジネス・チ
ャンスとなる。
2.3.3.2
LG
韓国メーカーLG 社は、ペルーで TV およびワンセグ対応の携帯電話等、のデジタル対応製
品の販促を精力的に開始した最初のメーカーである。同社は、ブラジルでのワンセグ対応
の携帯端末の販売で最大手で、Samsung がこれに次ぐ。本調査では、携帯電話販売部長
Felipe Hughes Pardo 氏、および営業部長 Javier Ugarte 氏と面談した。
同社にとって、デジタル TV 機能は、メールや通話と同様に携帯電話に搭載される機能の
ひとつであるが、ここに新たなニッチ市場を開拓する可能性を見出し、関心を示している。
ペルーでも、ワールドカップの放映がきっかけになって携帯テレビがブームになり、多く
の携帯電話のユーザーが利用するようになることを期待している。ただし、当面、デジタ
ル信号の配信範囲がリマ市内に限定されることが、ビジネス拡大の阻害要因になると思わ
れる。
現在、LG 社は、ワンセグ対応の携帯端末 3 機種をペルーに導入することを 2 社の携帯電話
会社(オペレーター)と交渉中である。2 機種を 1 社、残り 1 機種をもう 1 社で販売する
ことを計画している。これまでに試験的に 3 台を輸入しているが、本年 2~3 月にペルー
市場で販売を開始する予定である。ワンセグ受信装置は高価ではないため、携帯端末価格
は従来品と比べても高くはない。
3. 結論

主要関係者から得た情報によると、本報告書が作成された時点でリマ市における周波
数やチャンネルの割当基準が定められていなかった。既存放送局が地上波デジタルテ
32
Copyright © 2010 JETRO. All rights reserved.
レビ放送を開始するためには、まず規格設定が不可欠であり、これがなければテレビ
放送をおこなうことができない。MTC によると近々に基準を発表するとのことであった。

当局は、デジタル放送、アナログ放送、ワンセグ・サービスのいずれも無料で提供す
ることを決定している。

既存の放送局がデジタルテレビ移行に新たな投資の実施を強いられ、その回収に一定
期間必要なことを考慮して、どのタイミングで新たな競合の参入を許可するかを見極
めることが MTC にとって課題となる。

UHF の 700MHz 周波数帯(52 チャンネル以降)を高度な第 4 世代モバイル・ネットワー
クに使用する可能性について、周波数割当と関係していることから、現在、(MTC で)
協議中である。当面、アナログ放送の完全終了のタイミングも含め、先進国のトレン
ドに倣うことが検討されている。現在のスケジュールではアナログ放送を完全に終了
させる時期として 2030 年が設定されているため、国際的なトレンドを見ながら必要な
調査を実施する上で十分な時間的余裕がある。

テレビ局がデジタル化にともなって必要となる投資額は ATV 局で 25 百万ドル、TVPerú
で 200 百万ドルと推定される。

静態分析によると、ケーブル TV に加入していない世帯 3.5 百万戸以上のうち、STB を
購入する意思がある世帯は 2.5 百万戸、受信機またはデコーダ内蔵 TV を購入する意思
がある世帯は 400,000 戸強であった。

動態分析によると、STB の購入時期について約 1 百万世帯が 5~10 年の間、約 1.5 百万
世帯が 10~15 年の間、約 400,000 世帯が 15~20 年の間、約 200,000 世帯 20~25 年の
間と回答した。受信機内蔵 TV については、10~15 年の間に購入するとの回答が最も多
かった。

携帯電話によるデジタル TV サービスについて、55%の世帯がアクセスしたいと回答し
た。48%の世帯がワンセグ対応の携帯電話を購入する意思があり、78%が新たな携帯端
末に支払える価格を 400 ヌエボ・ソール以下と回答している。この 48%のうち、54%は
サービス料金として月額 50 ヌエボ・ソール以下であれば支払えると回答した。

フォーカス・グループを対象とした調査では、携帯電話を利用している若者も成人も、
携帯電話で最も利用頻度の高い機能はメールの送受信(TMS) であると回答した。

ワンセグ・サービスに対するユーザーの関心は、主に地上波のコンテンツの品質がど
の程度改善されるかによる。

携帯電話のテレビ機能に対する参加者の関心は、主に「暇つぶし」を目的とし、見た
いコンテンツは、主にニュース、情報番組や特別なイベントであった。どこからでも
33
Copyright © 2010 JETRO. All rights reserved.
ワールドカップの試合が見られるというのは、携帯電話の購入と(TV)サービス利用
のモチベーションになりうる。

ワンセグ対応機種の供給についてはパナソニックと LG 社の情報しか入手できなかった。
このうち、LG 社は、現在ワンセグ対応 3 機種の市場投入に向けて交渉を進めている。
参考文献
MTC 許可取得方法。サイト:
http://www.mtc.gob.pe/portal/comunicacion/concesion/radiodifusion/GuiaBasicaCuestionarioRadiodifusionNov2008.pdf、2010 年 1 月 12 日
INDECOPI-N°111-2007/GEE レポート
アネックス:フォーカス・グループ参加者の特徴
以下に示す 2 つのフォーカス・グループに対してアンケート調査を実施した。
グループ 1

中高所得者層(A2/B1)

18~24 歳

参加者計 8 名(男性 4 名、女性 4 名)

全員がケーブル TV の加入者、携帯電話を所有。
グループ 2

中高所得者層(A2/B1)

30~55 歳

参加者計 5 名(男性 3 名、女性 2 名)

全員がケーブル TV の加入者、携帯電話を所有。
グループ 1
18~24 歳
氏名
NSE
地区
年齢 成人 学歴
Daniela
A2
La Molina
23
F
高等教育
ケーブル
TV の種類 PC の種類
携帯電話
プラン
CM
Estelar
プリペイ
ド
34
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PC
Sebastián B1
Jesús María 23
M
高等教育
CM
PC
プリペイ
ド
Percy
B1
Miraflores
24
M
高等教育
CM
Estelar
Laptop
ポストペ
イド
Julio
A2
Miraflores
23
M
高等教育
CM
PC
プリペイ
ド
Mirna
B1
Surco
21
F
高 等 教 育 CM
(工学)
PC
プリペイ
ド
Rosa
B1
Chorrillos
21
F
高 等 教 育 不明
(工学)
PC
プリペイ
ド
Juan
Carlos
A2
San Isidro
23
M
高等教育
Telmex TV Laptop
Sat
プリペイ
ド
Carmen
A2
La Molina
22
F
高等教育
CM
Estelar
プリペイ
ド
PC
出典:アドホック・フォーカス・グループ
自社作成
グループ 2:成人(30~40 歳)
氏名
NSE
地区
年齢
性別 学歴
ケーブル
携帯電話プ
PC の種類
TV の種類
ラン
Ricardo
B1
San Miguel
30
M
高等教育
CM
Estelar
Iván
B1
Jesús María 29
M
高等教育 CM
Tomás
A2
San Isidro
35
M
高等教育
Isabel
B1
Surco
36
F
Mabel
A2
San Borja
38
F
Laptop
ポストペイ
ド
PC
ポストペイ
ド
Laptop
ポストペイ
ド
高等教育 CM
PC
プリペイド
高等教育 CM
PC
プリペイド
CM
Estelar
出典:アドホック・フォーカス・グループ
自社作成
以上
35
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