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【化学的な水質調査】

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【化学的な水質調査】
川の自然(
自然(水質調査と
水質調査と水生昆虫)
水生昆虫)
上流域で見られる「カゲロウ目」「トビケラ目」「カワゲラ目」など水生昆虫をはじめとして,ミミズ類,ヒ
ル類,貝類,プラナリアなど川の中に棲む動物は,水の汚れの程度によって,その生息が大きく影響され,生息
地域が異なっています。したがって川の中の水生動物の種類構成や個体数を調べることによってその川の汚染の
程度も分かってきます。
また,化学的な方法でも,川の水の汚染度を知ることができます。いろいろな方法が考えられていますが,水
中に溶けている溶存酸素にかかわる BOD や COD の測定。また,植物プランクトンの栄養になる窒素やリンの栄
養塩類の量を調べる方法があります。
今回は,各調査地の川の水を最も簡単な BOD と COD を利用した測定とそれぞれの水系にどんな水生昆虫がい
るかを調べます。
【化学的な
化学的な水質調査】
水質調査】
1 水生生物による
水生生物による水質調査
による水質調査の
水質調査の利点と
利点と限界
「水生生物による水質調査」の方法は,環境庁(現環境省)と建設省(現国土交通省が「児童生徒の環境教
育の一環として,誰でも簡単にできるように」考案したもので,子供が行うのに適しています。また,この方
法では水質判定の際、一部の大型種や特徴のある種を除き,指標生物のほとんどを「○○のなかま」としてま
とめて調べています。検索表を用いるような種の同定は必要なく,比較的簡単に実施できるよさがあります。
その反面,簡単であるがゆえに「正確さ」を欠く場合があります。したがって,データに関する客観性は乏
しく「学会」などの発表には適さないものです。
2 化学的な
化学的な水質調査(COD
水質調査(CODパックテスト
(CODパックテスト)
パックテスト)について
化学的な水質調査の代表的なものに,
「COD(化学的酸素要求量)のパックテスト」があります。これは有
機物が酸化するのに必要な試薬の量から酸素の量を換算して表しています。値が大きいと酸化されたがってい
る有機物が多いことになり,汚れていると考えられます。
① 数値は
数値は絶対ではないこと
絶対ではないこと
水生生物は生き物による調査のため,長い時間の環境を反映しますが、パックテストはその瞬間の水質が反
映されます。そのため,雨による増水時の一時的な水量の変化やそれにともなう濁り等の影響を受けます。
また,他の物質が混じっていたり,反応時間を無視したりすると正しい値が出ない場合があります。そのと
きは繰り返し測定するか,別の方法で測定する必要があります。
② 目的をはっきりさせること
目的をはっきりさせること
簡単に測れるために,何を測定しているのか,何が分かるかを理解しないまま利用してしまうことがありま
す。子供の実態を把握している教師が,調査の目的を子供にとらえさせることが重要です。
③ パックテストは薬剤
パックテストは薬剤であること
薬剤であること
必要以上にこわがる必要はありませんが,中に入っているのは薬品です。パックの中で反応させた液に
触れないなど,薬品を扱う基本的な知識を子供に指導することが必要です。
1
さまざまな化学的
さまざまな化学的な
化学的な調査方法
(1) BOD(生物学的酸素要求量
BOD(生物学的酸素要求量)
生物学的酸素要求量)
河川などのよごれの程度を示す数値です。水中の好気性微生物(バクテリア)が有機物を酸化分解するのに使
った酸素量を示します。一定期間(一般には5日間)試料水を一定温度(20℃)で暗条件下の密閉容器に保っ
た時の溶存酸素の減少量で示します。値が大きいと汚れていると考えられます。
食 品 の 汚 れ 具 合
魚 が 住 め る 水 質 ( B O D 5mg/ç )
程 度 に す るた め に必 要 な水 の 量 は風 呂
(
)の量 を捨て たら
BOD ( m/ç )
使用済 み天ぷ ら油( 500 ã )
桶( 300 ã ) 何倍分 ?
1,000,000
3 30 杯
74,000
25 杯
牛乳( 200 ã )
78,000
10 杯
みそ汁 ( 200 ã )
35,000
おでん ( 500 ã )
米のと ぎ汁( 2 ç )
4.7 杯
4杯
3,000
ラーメ ンの汁 ( 200 ã )
日本酒 ( 20 ã )
25,000
3.3 杯
200,000
2.7 杯
(2) COD(化学的
COD(化学的酸素
化学的酸素要求量
酸素要求量)
要求量)
BODが水中の有機物を分解するのに必要な酸素量であるのに対し,CODは有機物プラス,亜硝酸塩・金属
塩・硫化物などの還元性物質の量を過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を使って,二酸化炭素と水などに酸化分
解するときに必要な酸素の量を示します。
通常は水中の還元性物質のほとんどは有機物であると考えられるので,
BODとCODはほぼ同値となります。CODの値は,酸素の量(mg/L,ppmの単位)で表される。
共立パックテスト目安 測定範囲0~100mg 0/L(ppm)
河川
0
きれいな水
台所排水
2~5
5~10
10~
汚染がある
汚染が多い
汚れた水
~10
10~50
50以上
比較的きれい
汚れが多い
汚れた水
(3) pH(水素
pH(水素イオン
水素イオン濃度
イオン濃度)
濃度)
試料水中の水素イオン濃度で,pHの計測をするなど様々あるが,pHメーターを使うと定量的な計測が容易
です。その他,ユニバーサル試験紙,複数の試薬の併用などが考えられます。
2
(4) NO2-(亜硝酸塩)
亜硝酸塩)
水中の窒素化合物としての有機物が微生物によって分解される過程で発生する物質です。つまり,NO2-の値
が大きいということは,近くに汚染源(窒素化合物としての有機物)の流入があると考えられます。
共立パックテスト目安 mg/l(ppm)
0
0.02~0.1
0.1~0.2
0.2~0.5
0.5~
きれいな水
少し汚染がある
汚染がある
汚染が多い
汚れた水
(5) PO4(リン酸
リン酸)
リン酸は一般的には河川水中にはわずかしか存在しません。家庭排水,肥料などが流れ込んでいると,リン酸
値が高くなります。リン酸は植物プランクトンや藻類の生長には大切ですが,過剰になると植物プランクトンが
増加し赤潮やアオコの原因となります。
共立パックテストの目安 mg/l(ppm)
~0.1
きれいな水
0.1~0.5
少し汚染がある
0.5~
汚染がある
【水生生物による
水生生物による水質調査
による水質調査】
水質調査】
1
はじめに ~ 水のきれいさの程度
のきれいさの程度と
程度と生物 ~
川の中にはたくさんの生物がすんでいます。
川の中にすむ生物の種類は,水の中に溶けている酸素の量(溶存酸素)と深
い関係にあります。
川の水に溶けている酸素の量は,水温と水の汚れの程度によって変わり,
水温が低いほど,たくさんの酸素が溶け,水温が高くなれば溶ける量は少な
くなります。
また,酸素は水中の植物によっても作られますが,汚れている川では水中
に溶けている酸素が細菌等によってたくさん使われることから,酸素の量が
少なくなってしまいます。
酸素の量が少なくなるときれいな水にすむ生物はすめなくなり,汚れたところの生物が多く見られるようにな
ります。
このように,水の中に溶けている酸素の量とそこにすむ生物の関係から,その地点にすむ生物を調べることに
より,水質など川の環境の状態が分かります。これらの川の環境の状態を私たちに教えてくれる生物を『指標生
物』といいます。
水のきれいさの程度をきれいな水(水質階級Ⅰ)
,少しきたない水(水質階級Ⅱ)
,きたない水(水質階級Ⅲ)
,
大変きたない水(水質階級Ⅳ)の4階級に分け,それぞれの水質階級にすんでいる指標生物(30種類)を下の
3
表1に示しました。これらの指標生物は,水の汚れに敏感なものの中から,目で見ることができる大きさで,日
本全国に広く分布している生物を取り上げています。
表1 指標生物と水質階級
きれいな水(Ⅰ)の指標生物
少しきたない水(Ⅱ)の指標生物
カワゲラ
ヘビトンボ
コガタシマトビケラ
コオニヤンマ
ヒラタカゲロウ
ブユ
オオシマトビケラ
スジエビ
ナガレトビゲラ
アミカ
ヒラタドロムシ
ヤマトシジミ○
ヤマトトビゲラ
サワガニ
ゲンジボタル
イシマキガイ○
ウズムシ
カワニナ
きたない水(Ⅲ)の指標生物
大変きたない水(Ⅳ)の指標生物
ミズカマキリ
ニホンドロソコエビ
セスジユスリカ
サカマキガイ
タイコウチ
タニシ
チョウバエ
エラミミズ
ミズムシ
ヒル
アメリカザリガニ
イソコツブムシ○
○印は汽水域(川の水と海の水が混じっている場所)に生息している生物です。
2
調査をはじめる
調査をはじめる前
をはじめる前に
調査しようとする川と,川のまわりの様子が分かるような地図を
用意します。
3
まずは、
まずは、調査する
調査する場所
する場所を
場所を決める
みんなで相談し,調査する場所を決めます。
調査する場所を決めるときには,次のようなポイントに注意して
決めるようにします。
また,事前に下見することが大切です。
(1)調査場所に行くまでに必要な時間
調査には1時間~1時間半程度必要です。移動の時間も含めて,無理のない計画を立てるようにします。
(2)川への入りやすさ
観察用具をもって,安全に川岸におりられる場所を選びます。草が生い茂っていたり,土手が急になってい
たりするところは危険です。別の場所を選ぶようにします。
(3)川底の状態
川底にこぶしや頭位の大きさの石が多い場所が調査には適しています。なお,川底が一面コンクリートの場
所,ヨシなどが川全体をおおっているような場所,水の流れていない場所は調査する場所としてふさわしくあ
りません。
4
(4)川の流れの速さや深さ
調査は安全が第一です。川の流れの速いところは危険なので,調査場所としてはふさわしくありません(で
きれば流速30~40cm/秒位のところがよいです)
。また,川の深さが20~30cm くらいのところを選び
ましょう。浅すぎても,深すぎてもよくありません。
4
次のような道具
のような道具を
道具を準備しましょう
準備しましょう
(1)テキスト
このテキストや指標生物のカラー写真があるものを用意します。生物の絵や写真は水にぬれないようにビニ
ール袋でつつんでおきます。
(2)記録用紙
記録用紙は,必要な枚数を印刷し,現地では,風などでとばされないように,バインダーに,はさむなどし
ます。
(3)地図
事前の下見の際に使った地図を準備します。
(4)筆記用具
鉛筆(シャープペンシル)
、ボールペン、油性マジックなどがあると便利です。
(5)あみ
目の細かさが1~2㎜位のあみ(あみ戸のあみなど)を,2本の棒の間に張ったものが便利です。目の細か
さが同じ位であれば,ザル,フルイ,釣りに使う手あみでもかまいません。
また,
バットの中で水生昆虫をつかまえる際に,
料理で使う柄のついた金属製のあみがあると大変便利です。
(6)バケツ
あみで採集した水生昆虫や,採取の際にあみの中に入った枯れ葉などをいれるものです。
(7)水生昆虫を入れるバット
できれば白い色のものがいいです。イチゴのケース等でも代用できます。
(8)ピンセット
少し大きめのものがよいです。
(9)ルーペ、虫めがね
水生昆虫は、とても小さいので、その種類を決める際に
利用します。2~3倍のもので結構です。
(10)3mのビニールひも付きペットボトル
口に3mのビニールひもをつけたペットボトルを準備します。
これを使って川の流れの速さを測ります。
(11)時計
(12)温度計
川の流れの速さを調べるために使います。
川の水温を測るために使います。
【持ち物】
5
この他にも、準備しておいた方がよいものをあげておきます。参考にしてください。
(13)軍手
(14)ビニール手袋 (15)タオル (16)ティッシュ(17)傷テープ、傷薬 (18)虫除け
スプレー、虫さされの薬(19)水筒(20)フィルムケース (21)消毒用アルコール(80%)
(薬局で購入可)
※採取した水生昆虫は再び川に戻してあげましょう。フィルムケースと消毒用アルコールは,必要に応じて,採
取した水生昆虫を持ち帰る場合に使います。
持ち物チェックリスト
必要な持ち物
チェック
あった方が便利な持ち物
テキスト
(軍 手)
記録用紙
(ビニール袋)
地
(タオル)
図
筆記用具
(ティッシュ)
あ
み
(傷テープ・傷薬)
バ ケ ツ
(虫除けスプレー)
バ ッ ト
(虫さされの薬)
ピンセット
(水 筒)
ルーペ・虫めがね
チェック
(フィルムケース・アルコール)
ひも付きペットボトル
時
計
温 度 計
【服装】
服装】
川に出かけるときは,帽子は,
必ずかぶりましょう。
虫よけのため,長そで,
長ズボンを着用しましょ
う。
川底にはガラスの破片な
どもあり,大変危険です。
長靴をはきましょう。
6
5
自分でじっくり
自分でじっくり見
でじっくり見たり,
たり,手でさわったりして,
でさわったりして,川の様子を
様子を観察してみよう
観察してみよう
観察するポイントの例
※観察した内容は、記録用紙に記入しましょう。
(1)川の様子をよく
様子をよく見
をよく見てみよう
① 川の水の色は?
② 川幅,水の流れの速さは?
③ 川底の状態は?
④ 川の近くにいる動物はどんな動物(トンボ、チョウ、カエル、水鳥・・・)?
⑤ 川の近くにはえている植物はどんな植物?
(2)手でさわってみよう
① 川の水の冷たさは?
② 川の中の石の手ざわりは?
③ 石の裏にいる水生昆虫をさわってみると?
(3)そぉーっと,
そぉーっと,においをかいでみよう
① 川の水のにおいはどんなにおい?
② 川の近くにはえている植物のにおいは?
【オオバギボウシ】
(4)静かに耳
かに耳をすませてみよう
① 水の流れる音は?
② どんな動物(水鳥、カエル・・)のなき声がしますか?
【ハグロトンボ(
】
ハグロトンボ(成虫)
成虫)
7
6
記録用紙を
記録用紙を準備して
準備して,
して,記入例を
記入例を参考にしながら
参考にしながら,
にしながら,次の手順で
手順で調査の
調査の記録をとりましょう
記録をとりましょう。
をとりましょう。
(1)調査場所を
調査場所を記入します
記入します。
します。
調査した場所がよくわかるように,具体的に「○○橋の上流」のように記入します。
(2)調査年月日、
調査年月日、時刻、
時刻、天気を
天気を記入します
記入します。
します。
(3)水温をはかりましょう
水温をはかりましょう。
をはかりましょう。
温度計を3分くらい,水の中に沈めて,目盛りを読みます。
(4)川幅を
川幅を目測ではかりましょう
目測ではかりましょう。
ではかりましょう。
見た目で何mくらいかでかまいません。
(5)生物を
生物を採取しようとする
採取しようとする場所
しようとする場所を
場所を記入します
記入します。
します。
「流れの中心」とか,
「右岸(あるいは左岸)
から何メートル」というように書きます。
※右岸(左岸)とは,川の上流から下流を見て右側(左側)の川岸のことです。
(6)生物を
生物を採取する
採取する場所
する場所の
場所の水の深さを記入
さを記入します
記入します。
します。
(7)川の流れの速
れの速さを求
さを求めましょう。(
めましょう。(難
。(難しいけど、
しいけど、チャレンジしてみよう)
チャレンジしてみよう)
ヒモ付きのペットボトルに少し水を入れます。そして,ヒモのはしを持って,足元の水面近くから静かに流
し,ヒモがピンと,はるまでの時間をはかります。そして,1秒あたりの流れの速さを求めます。例えば,3
m(300cm)のヒモを使って 10 秒であれば,
300(cm)÷10(秒)=約 30(cm/秒)となるので,下の表から普通と記入します。
『流れの速さの段階と目安』
段
階
流れの速さの目安
遅
い
1秒間に30cm 以下
普
通
1秒間に30~60cm 位
速
い
1秒間に60cm 以上
(8)川底の
川底の状態を
状態を記入します
記入します。
します。
(9)見たり,
たり,さわったり,
さわったり,においをかいだりして,
においをかいだりして,気づいた川
づいた川の様子を
様子を記入します
記入します。
します。
7
実際に
実際に川の中の水生生物を
水生生物を採取しましょう
採取しましょう。
しましょう。
※調査は3~5人を1グループとして行います。
(1)調査場所を
調査場所を探します。
します。
指導員の指示を守って川の中に入り,深さが30cm 位で,にぎりこぶしや自分の頭くらいの大きさの石の
ある場所を探します。川岸の小さな石,砂のところも調べましょう。
(2)川の中の水生生物を
水生生物を採取します
採取します。
します。
地点が決まったら,下流側にあみをおきながら,その場所の石のいくつ
8
かを静かに取り上げて,バットかバケツの中に入れます。
また,石を取り上げたあとの川底を手や足でかきまぜ,流れてくる生物をあみで受けます。
川底が砂や泥の場合はこの方法だけで生物をつかまえます。
川岸に運んできた石はバットか,白い敷物の上におき,よく見ながらピンセットなどを使ってその表面にい
る生物をつかまえます。
あみに残った生物もピンセットでつかまえます。なお,色々な大きさの生物がいますので,見落とさないよ
うに何人かでよく見てつかまえてください。
(3)捕まえた水生生物
まえた水生生物が
水生生物が指標生物かどうかを
指標生物かどうかを判断
かどうかを判断します
判断します。
します。
つかまえた生物は,水を少し入れた白いバットの中に入れて,テキストの写真や説明と『8、指標生物を見
分けるポイント』等を参考にしながら,判断します。つかまえた生物の中には,指標生物でない生物もいるは
ずです。それらについても,よく見かける生物は観察してメモしておきましょう。次に、調べた生物を記録用
紙に書き込みます。なお、記入方法は『記録用紙(記入例)
』を参考にしてください。
(4)調査が
調査が終わったら,
わったら,観察した
観察した生物
した生物や
生物や石は川にもどすようにします。
にもどすようにします。
川はみんなのものですから,ゴミを捨てたりして,川原を汚さないように気をつけてください。調査に使っ
た紙やテキストなどは必ず持ち帰ってください。身近な川を大切にしましょう。
8
指標生物を
指標生物を見分けるポイント
見分けるポイント
まちがえやすい指標生物について、下にその見分け方を示しておきます。指標生物を見分ける際の参考にして
ください。
(1)カワゲラのなかまとカゲロウのなかまの見分け方
【カワゲラのなかま】
【カゲロウのなかま】
腹部にうろこ状の
腹部にうろこ状の
えらがない。
えらがある。
※カワゲラのなかまは、すべてが
「きれいな水」の指標生物です。
※カゲロウのなかまのうち、ヒラタカゲロウ
のみが「きれいな水」の指標生物です。
9
(2)ヒラタカゲロウのなかまとその他のカゲロウの見分け方
【ヒラタカゲロウのなかま】
【その他のカゲロウのなかま】
眼(複眼)が頭部の
眼(複眼)が頭部の
側面についている。
背面についている。
(3)「ナガレトビケラのなかま・ヤマトビケラのなかま」と「その他のトビケラのなかま」との見分け方
注:見分けるためには、ルーペや双眼実体顕微鏡が必要です。
【ナガレトビケラのなかま】
【コガタシマトビケラ】
【ヒゲナガカワトビケラ】
【ヤマトビケラのなかま】
【オオシマトビケラ】
腹部の末端にキチン板
腹部の末端にキチン板
と呼ばれる部分がない。
と呼ばれる部分がある。
※「ナガレトビケラのなかま」と
※「コガタシマトビケラ」と
「ヤマトビケラのなかま」は,
「オオシマトビケラ」のなかまは,
「きれいな水」の指標生物です。
「少しきたない水」の指標生物です。
10
~ 参考 ~
「コガタシマトビケラ」や
「オオシマトビケラ」といった
「シマトビケラのなかま」は
き かんえら
右の図のように腹部に気管鰓が
き かんえら
気管鰓
あります。
9
水質階級の
水質階級の判定と
判定と結果の
結果のまとめ方
まとめ方
(1)調査結果については,記録用紙に記録した結果を,集計用紙に集計します。
①その地点で見つかった生物の種類は,それぞれの欄に○印をつけて記録します。
②見つかった指標生物のうち,数が多かった上位から2種類には●印をつけます。
もしも,3種類の指標生物がほとんど同じくらいの数だった場合には,3種類まで●印をつけます
(集計用紙・記入例の調査地点Ⅰ-①(3)がその例です)
。
(2)調査場所ごとに,次の手順で作業を進めて,水質階級を判定します。
①○印と●印の数の合計を,各水質階級ごとに,
「水質階級の判定」1の欄に書き込みます。
②●印だけの数の合計を,各水質階級ごとに2の欄に書き込みます。
③3の欄に1欄と2欄の合計を書き込みます。
④3欄の数字が最も大きい水質階級を,その場所の水質階級と判定し,一番下の欄にⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳの数字
で書き込みます。
(3)集計用紙・記入例の地点Ⅰ-①(3)のように,2つの水質階級が同じ数字になった場合には,数字の少
ない方の水質階級(例えば、水質階級のⅢとⅣが同点の場合はⅢ)をその場所の水質階級とします。
(4)調査結果を一覧できる図にまとめ,村落,住宅団地,市街地,工場などの位置などを比べたり,同じ場所
で調査した年ごとの変化を比べたりすると,身近な川の状況がわかり,汚れの原因などを考えるのに役立ち
ます。
11
【調査の
調査の計画と
計画と活用の
活用の仕方】<
仕方】<調査
】<調査を
調査を指導される
指導される方
される方々へ>
1.調査時期
1年間を通して調査をする場合には,各季節ごとに調査するのが理想的です。1回しか調査しない場合には
大きくなった水生昆虫の多い春(3月~5月ごろ)が最適ですが,夏でも適しています。
毎年調査をしようとする場合には,同じ時期に同じ場所で調査をするように決めておくと水質の経年変化が
分かります。な,
、調査の前の数日の間に雨が降って川の水が増えた場合には,危険ですし,川の中の生物が流
されてしまっていることがありますので,雨が降る前の状態に戻るのを待って調査をしてください。
2.調査場所
調査に
調査に適した川
した川とは?
とは?
この調査を行う川は,大きくても小さくてもかまいませんが,水の深さが30cm 位で,川底にこぶしや頭
位の大きさの石が多くあり,流れのある(流速30~40cm/秒位)川が適当です。ただし、川底が泥で覆わ
れているところしか見つからない場合には,そこで調査してもかまいません。なお、川底が一面コンクリート
でおおわれている場所,ヨシなどが川全体に繁っているような場所,水の流れがない場所は避けてください。
また,生物の調査は川岸から少し離れたところで行うのが原則ですが,岸に近いところでも調査してくださ
い。
適切な
適切な調査区間とは
調査区間とは?
とは?
調査地点は、川の流れに沿って適当な距離をおいて決めます。その距離は,川の大きさや調査の目的によっ
ても違いますが,調査したあとで川全体の調査結果の地図(水質階級地図)を作るような場合には,川の長さ
と調査地点数を考えて,ほぼ同じ間隔になるようにします。支流や,工場,処理場などから水質の著しく異な
る水が流入するところでは,できるだけ流入点の上流側と,下流側の水がよく混じり合った地点とを調べて比
較します。さらに、川幅が広く,右岸寄りと左岸よりの水質が違うことが予測されるような川では,そのこと
も考えに入れて調査地点を選ぶことも大切です。
危険を
危険を伴う場合は
場合は?
適当な場所であっても,調査に危険を伴うような場合には,別の場所を探してください。危険防止にはくれ
ぐれも注意してください。
3.危険防止のための注意事項
調査にあたっては,危険防止のため,次の基本的事項に十分注意するように指導してください。
(基本的注意事項)
①調査は3~5人のグループごとに行って下さい。
1人だけでの行動は大変危険なので十分配慮してください。
②川の流れは見ため以上に速いものなので,流れの速さをよく確認してから川に入るようにしてください。
③調査は,川底が見えるところで行って下さい。水深としては30cm 位までのところとし,これよりも深い
ところは危険ですから入らないようにしてください。
12
④川底に空きカンやガラスビンなどが落ちていて,川の中に裸足で入るのが危険な場所もあります。長ぐつを
はくか,ぬれてもよいクツをはいて調査してください。
⑤川底が急に深くなったり,やわらかい泥で足を取られたりすることがありますので,十分に気をつけて歩い
てください。
⑥川底が,コケなどで大変すべりやすくなっている場所もありますので,ころんだり,すべったりしてケガを
しないように十分注意してください。また,川の中に入るときには,壊れやすいものや先のとがったものは
身につけないようにしてください。
⑦大変きたないと思われる場所で調査する場合には,
ビニール手袋やゴム手袋などをはめて調査してください。
⑧万一ケガをしたときのため,病院の場所や連絡方法について,事前に確認しておいてください。また、救急
薬品等は,忘れずに準備しておいてください。
4.指標生物について
川の中には多くの水生生物が生息していますが,その中には,その生物の存在から水の汚れを判定できる指
標生物がいます。このパンフレットでは,それらの水生生物の中から,以下の点を考慮して指標生物を選定し
ています。
①全国的に見つけることができ,ある程度の個体数がいて,夏の期間は必ずいる種であること。
②だれにでも見つけることができ,似ている種が少なく,区別が簡単であること。
③水温が0~30℃位の所にいる生物を対象に,水温に対しては幅広く生きることができるが,
『水のよごれ』
に対しては敏感で,指標性の高い生物であること。
④水深の浅いところに生息している生物であること。
(具体的には水深30cm 程度以下)
⑤原則として,指標生物には,昆虫類,貝類,エビ類,カニ類から,それぞれの水質階級に対応した生物を選
定すること。なお,ここで示した指標生物については,以下の事項に留意する必要があります。
指標生物は,原則として全国的に生息している(沖縄を除く)ものですが,オオシマトビケラは,東北地方以
西に,サワガニは北海道以南に生息しています。なお,指標生物が分布していない地域では代わりになる地
域にあった指標生物を選定する必要があります。
②河川延長の短い河川では出水によりすべての生物が流されてしまうことがあり,そのような河川では,水生
生物による水質評価が困難であることが多いです。
③指標生物に,トンボ類やカゲロウ類が少ないですが,その理由は,これらの生物が水の汚れに対する水質階
級の広い範囲に生息しており,
、指標性が乏しいためです。
13
5.水生生物調査結果の活用について
川の上流から下流まで続けて調査した場合や,一定の地域内にある川を全面的に調査したような場合などに
は,調査結果を一覧できる図にまとめ,村落、住宅団地,市街地,工場などの位置と比べたり,同じ場所で調
査した年ごとの変化を比べたりすると,身近な川の状況が総合的にわかり,川の汚れの原因などを考えるのに
役立ちます。従って,この調査結果については,より多くの人々に知ってもらうとともに,様々な機会を通じ
て情報交換を行い,その内容について共に考えていくことは重要です。このような調査結果のまとめ方,表し
方には一定の決まりはありませんので,目的に応じて,いろいろと工夫してみましょう。
また,この調査を手がかりとして,
「身近な自然環境」と「人間の生活や活動とのかかわり」について,気づ
き,
「環境保全のために,自分にできることは何か」を考えていくことが,調査本来の目的です。
身近な自然環境の実態を知り(Act Locally)
、そこから,地球規模の環境問題を考えていく(Think Globally)
、
そんな活動が展開できればと思います。
14
記 録 用 紙
調査場所名
日付・時刻
天
気
水
川
幅
水の深さ
年
月
日(
)
:
温
m
採取場所
cm
川の流速
m / 秒
川底の状態
川の様子について気づいたこと
見た目は?
手ざわりは?
においは?
耳をすませてみると
水 質
指 標 生 物
指標生物の数
水 質
1.アミカ
指 標 生 物
指標生物の数
1.イソコツブムシ
き
水
2.ウズムシ
き
水
2.タイコウチ
れ
質
3.カワゲラの仲間
た
質
3.タニシ
い
階
4.サワガニ
な
階
4.ニホンドロソコエビ
な
級
5.ナガレトビケラの仲間
い
級
5.ヒ ル
水
Ⅰ
6.ヒラタカゲロウの仲間
水
Ⅲ
6.ミズカマキリ
7.ブ ユ
7.ミズムシ
8.ヘビトンボ
大
水
1.アメリカザリガニ
9.ヤマトビケラ
変
質
2.エラミミズ
1.イシマキガイ
汚
階
3.サカマキガイ
少
水
2.オオシマトビケラ
い
級
4.セスジユスリカ
し
質
3.カワニナの仲間
水
Ⅳ
5.チョウバエ
き
階
4.ゲンジボタル
※指標生物以外で観察できた水生生物など
た
級
5.コオニヤンマ
な
Ⅱ
6.コガタシマトビケラ
い
7.スジエビ
水
8.ヒラタドロムシ
9.ヤマトシジミ
15
記録用紙(
記録用紙(記入例)
記入例)
調査場所名
天
気
川
幅
○○○橋下流Ⅰ-①(1)
日付・時刻
晴 れ
水
8 m
水の深さ
20 cm
川底の状態
△△年××月●●日(□)☆☆:★★
温
18.5℃
採取場所
流れの中心
川の流速
普通(31cm/秒)
頭大の石が多い。水あかが石の表面についていた。
川の様子について気づいたこと
見た目は?
手触りは?
水はすんでいた。川の近くにハグロトンボが飛んでい 川の中の石をさわったら、ヌルヌルしていた。
た。川の中には5cm 位のウグイがたくさんいた。
石の下にいたトビカラをさわったら、やわらかかった。
カワセミという青い鳥が飛んでいた。
においは?
耳をすませてみると
川の水はほとんどにおいがしなかった。
川の近くでカエルのなき声がした。
(何というカエルな
川の近くの花のにおいをかいだら、いいにおいがした。 のだろう?)
水 質
指 標 生 物
1.アミカ
指標生物の数
水 質
5
指 標 生 物
1.イソコツブムシ
き
水
2.タイコウチ
8
た
質
3.タニシ
4.サワガニ
10
な
階
4.ニホンドロソコエビ
級
5.ナガレトビケラの仲間
5
い
級
5.ヒ ル
Ⅰ
6.ヒラタカゲロウの仲間
水
Ⅲ
6.ミズカマキリ
き
水
2.ウズムシ
れ
質
3.カワゲラの仲間
い
階
な
水
7.ブ ユ
8
8.ヘビトンボ
12
9.ヤマトビケラ
指標生物の数
7.ミズムシ
大
水
1.アメリカザリガニ
変
質
2.エラミミズ
1.イシマキガイ
2
汚
階
3.サカマキガイ
3
い
級
4.セスジユスリカ
Ⅳ
5.チョウバエ
少
水
2.オオシマトビケラ
し
質
3.カワニナの仲間
水
き
階
4.ゲンジボタル
※指標生物以外で観察できた水生生物など
た
級
5.コオニヤンマ
・ガガンボというトビケラに似た水生生物がいた。
な
Ⅱ
6.コガタシマトビケラ
・ヒラタカゲロウではないカゲロウのなかまがたくさ
い
7.スジエビ
水
8.ヒラタドロムシ
んいた。
9.ヤマトシジミ
16
市町村名
集計用紙
河川名
学校(団体)名
調 査 者 名
調査場所名(No.)
年 月 日 (時刻)
天
気
水
温(℃)
川
幅(m)
生物を採取した場所
生物採取場所の水深(cm)
流れの速さ
川底の状態
水のにごり、におい、その他
魚、水草、鳥、その他の生物
水 質
指 標 生 物
1.アミカのなかま
2.ウズムシのなかま
き
水
3.カワゲラのなかま
れ
質
4.サワガニ
い
階
な
級
水
Ⅰ
5.ナガレトビケラのなかま
6.ヒラタカゲロウのなかま
7.ブユのなかま
8.ヘビトンボ
9.ヤマトビケラのなかま
1.イシマキガイ
少
水
2.オオシマトビケラ
し
質
3.カワニナのなかま
汚
階
4.ゲンジボタル
い
級
水
Ⅱ
5.コオニヤンマ
6.コガタシマトビケラ
7.スジエビ
8.ヒラタドロムシ
9.ヤマトシジミ
1.イソコツブムシ
見つかった指標生物の欄に○印、数が多かった上位から(最大3種類)に●印をつける。
汚
水
2.タイコウチ
い
質
3.タニシのなかま
水
階
4.ニホンドロソコエビ
級
5.ヒルのなかま
Ⅲ
6.ミズカマキリ
7.ミズムシ
大
水
1.アメリカザリガニ
変
質
2.エラミミズ
汚
階
3.サカマキガイ
い
級
4.セスジユスリカ
水
Ⅳ
5.チョウバエのなかま
水 質 階 級
水質階級 1.○印と●印の個数
の判定
2.●印の個数
3.合計(1.欄+2.欄)
その地点の水質階級
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
集計用紙(記入例)
市町村名
学校(団体)名
河川名
調 査 者 名
調査場所名(No.)
○○○橋下流Ⅰ-①(1)
△△川合流部Ⅰ-①(2)
△△橋上流Ⅰ-①(3)
年 月 日 (時刻)
△△年××月●●日(□)☆☆:★★
△△年××月●●日(□)☆★:☆★
△△年××月●●日(□)★☆:★☆
晴 れ
晴 れ
晴 れ
天
気
水
温(℃)
18.5℃
20.5℃
21.0℃
川
幅(m)
8 m
8 m
10 m
生物を採取した場所
流れの中心
左岸側
右岸側
生物採取場所の水深(cm)
20 cm
15 cm
20 cm
流れの速さ
普通(31cm/秒)
普通(31cm/秒)
普通(31cm/秒)
川底の状態
頭大の石が多い
こぶし大の石が多い
こぶし大の石が多い
水のにごり、におい、その他
水はすんでいた
少しにごっていた
少しにごっていた
魚、水草、鳥、その他の生物
ウグイ、カワセミ
ハグロトンボ
ウグイ
水 質
指 標 生 物
1.アミカのなかま
見つかった指標生物の欄に○印、数が多かった上位から(最大3種類)に●印をつける。
○
2.ウズムシのなかま
き
水
3.カワゲラのなかま
○
れ
質
4.サワガニ
●
い
階
5.ナガレトビケラのなかま
○
な
級
水
Ⅰ
○
6.ヒラタカゲロウのなかま
7.ブユのなかま
○
8.ヘビトンボ
●
9.ヤマトビケラのなかま
○
1.イシマキガイ
○
●
○
○
少
水
2.オオシマトビケラ
し
質
3.カワニナのなかま
○
汚
階
4.ゲンジボタル
●
い
級
5.コオニヤンマ
○
水
Ⅱ
6.コガタシマトビケラ
7.スジエビ
8.ヒラタドロムシ
9.ヤマトシジミ
1.イソコツブムシ
汚
水
2.タイコウチ
い
質
3.タニシのなかま
水
階
4.ニホンドロソコエビ
級
5.ヒルのなかま
Ⅲ
○
○
●
6.ミズカマキリ
7.ミズムシ
○
●
大
水
1.アメリカザリガニ
変
質
2.エラミミズ
汚
階
3.サカマキガイ
い
級
4.セスジユスリカ
水
Ⅳ
●
5.チョウバエのなかま
水 質 階 級
Ⅰ
Ⅱ
水質階級 1.○印と●印の個数
6
2
の判定
2
2.●印の個数
3.合計(1.欄+2.欄) 8
その地点の水質階級
Ⅲ
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
2
5
1
Ⅳ
Ⅰ
Ⅱ
2
2
2
Ⅰ
7
1
Ⅱ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅳ
3
2
1
2
4
4
Fly UP