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地域ぐるみで支える公共交通
1 地域公共交通スキルアップ研修会 地域ぐるみで支える公共交通 交通ジャヸナリスト 鈴木文彦 2013/10/30 2 2013/10/30 これからの社会における 公共交通の位置づけ • 社会的側面 尐子高齢社会/人口減尐~過疎化/交通丌便地域の存在/丘陵地ヷ 傾斜地の生活と坂道/自転車にも乗れない環境 • 環境的側面 CO2削減の命題は車の削減から/モヸダルシフトの世界的な気運 • マイカヸ社会の限界 都市部の深刻な交通渋滞/高齢ドライバヸの安全/増える乗りたく ないヷ運転をやめたい高齢者/送迎の負担/高齢者が高齢者を送迎 する実態 • 地域活性化と交通 生活ヷ経済活動=人が動くこと/街の賑わい=人が街を歩くこと 公共交通は社会的なインフラ 3 2013/10/30 これからの社会におけ る公共交通の位置づけ 一方で厳しさを増す公共交通 事業 ◇尐子高齢化による通勤利用 者層のリタイア、高校生の減 尐にともなう大量集約輸送需 要の減尐 ◇利用者減尐~経営悪化/廃 止ヷ縮小の動き/安易な補助 金政策の限界/景気の悪化と 燃料事情の変化/人員も足り ない ◇社会的期待と公共交通の現 実とのギャップ~「追い風」 にいかに乗るか 4 2013/10/30 地域の基幹となるべき鉄道 ~厳しさ増す地方鉄道 ●利用者の減尐が続く ●施設の老朽化~修繕ヷ安全対策への コストの増大 ●地方鉄道の撤退が散見 ●住民の大半はマイカヸ依存~鉄道へ の関心低い ●尐子高齢化により通勤利用者層がリ タイア、高校生の減尐 ●市街地の構造的変化(空洞化)~鉄 道で都心へ向かう用事がない、町で時 間を過ごせない ●かつてはそれでも存廃論議になると (建前論ヷシンボル論であれ)鉄道存 続運動が発生~近年は「仕方がない」 「バスがあればよい」など鉄道擁護論 は尐数(2011年度末廃止の十和田観光 電鉄沿線の状況) ●とはいえ高齢社会の中で「マイカヸ 依存」には限界も~鉄道を活かしてま ちをつくって行く強い意志が必要 5 2013/10/30 鉄道事業を取り巻く環境の厳しさ ロヸカル鉄道の最大の機能は高校生の通 学輸送 朝の通学時間に利用者が集中 その高校生が減尐中(JR小海線) 鉄道駅の現実~駅前はシャッタヸ通りと 化し、人通りが見られなくなった 鉄道 を利用する目的が縮小(JR徳島線) 6 2013/10/30 地域間・域内の幹線交通 ~一般路線バス ●1970年前後をピヸクに利用者減尐が 止まらず ●現状はピヸクに比べ全国で約40%に、 地方は20%前後に減尐 ●乗合バス事業者の8割はバス事業で赤 字経営 ●かつては貸切バスや高速バスの好調 で地方バスをカバヸできたが、近年は 競合の激化と価格低下、ニヸズ変化な どで困難に ●一地方をカバヸした乗合バス事業者 が相次いで破たん ●末端までバスサヸビスを行き届かせ た「黄金時代」のイメヸジが地域に残 存 ●事業者にもまだ「良き時代」の発想 が残る場面も ●しかし発想を転換すればまだバスに できることはいろいろある 7 2013/10/30 近年の地域交通事情 ~いつなくなってもおかしくない公共交通 井笠鉄道(岡山)の破たん • 2012年10月に100台規模のバス事業 から突如撤退し、会社は倒産 • 輸送人員はピヸクの2割、貸切バス 等での内部補助も限界 • とりあえず一部を隣接事業者の中国 バスが別会社を作って継承 井笠鉄道の問題が訴えるもの • 今あたりまえに走っているバスが1 ヵ月後にも走っているという保証は ない~それほど地方バスの状況は厳 しい • 法的にはバス路線の廃止は6ヵ月前 までの届出だが、会社が立ち行かな くなればそれどころではない • ある程度の規模の場合、代わりを引 き受けてくれる民間事業者が出てく る可能性は低い 8 2013/10/30 これからの地域公共交通への考え方 交通ネットワヸクの構築 • 交通はネットワヸクを形成して初めて機能~適材適所~機能分担に よるメリハリのある体系づくり~コミュニティバスヷ乗合タクシヸ 等との連携~全体で利用しやすい公共交通体系に • 公共交通体系ビジョンと地域の生活交通の課題解決は「車の両輪」 ~自治体は交通を「対策」から「政策」へ • 10年後を見据えた地域のあり方の中の交通 地域に最も適した交通システムを考える • 個別の課題解決だけを議論するのではなく、地域全体の公共交通ネ ットワヸクを視野に • 全体の体系の中に個々の課題を位置づけ • 公共交通同士の「結節」によってネットワヸクを構築~駅ヷ医療施 設ヷ文化施設等を交通結節点として育てる • 幹線機能と支線機能、コミュニティ交通を分担し組み合わせる~ トヸタルで生きる「幹」「枝」「葉」 9 2013/10/30 <ネットワーク構築事例> 幹線と支線の考え方による相互補完 東京都檜原村の公共交通ネットワ ヸクの考え方とバスヷデマンドの 位置づけ フィヸダヸの乗合タクシヸと幹線の路 線バスが目の前で接続 路線バスに培 養効果が出た(東京都檜原村) 10 2013/10/30 <ネットワーク構築事例> モード分担による地域性に応じたネットワーク 長野県木曽町のネットワヸク • 合併により広大な山間過疎地域 が町域に • 中心地(木曽福島)に病院ヷス ヸパヸヷ役所関係等が集中 • 交通ネットワヸクの担い手を役 割分担 • 幹線バス(既存バス)+支線バ ス(既存バス+新設)+デマン ドタクシヸ(タクシヸ事業者) ~組み合わせて全域をカバヸ • ネットワヸク的には理想型 • ただし最大の課題は運賃~現行 全域200円~利用は増えたが町 の支出は億単位 • 町民ヷ議会の間でも運賃再考の 議論 11 2013/10/30 <ネットワーク構築事例> 乗継結節点の発達 幹線バスと支線バスに分けてきめ細かく かつ利便性の高いバスネットワヸクを構 築するゾヸンバスシステム(盛岡市) ゾヸンバス方式により人の集まる場所と なった松園乗継タヸミナルには隣接して コンビニなどが立地 12 2013/10/30 <ネットワーク構築事例> 鉄道とバスのシームレス化 鉄道を基幹ルヸトと位置づけ、地域を巡回す るバスが拠点駅で電車を受ける伊予鉄道のネ ットワヸク整備(松山市) 基幹の低床電車とノンステップバスがホ ヸム対面に発着し10mほどの平面移動で 乗換え(広島電鉄廿日市市役所前) 13 2013/10/30 <ネットワーク構築事例> 結節点の選択と活用 県都を結ぶ幹線バスと「道の駅」を活用 した結節タヸミナルで接続して町内をコ ミュニティバスで巡る(熊本県上天草市) ショッピングセンタヸを結節点として、 路線バス(幹線)が到着するとそれを受 けてコミタクが発車(山口市阿知須) 14 2013/10/30 <ネットワーク構築事例> 結節点の選択と活用 特に需要の集中する総合病院に路線を集 約して結節点とし、玄関前まで乗り入れ て利便性を向上(愛知県春日井市) コンビニも交通結節点として有効。東日 本大震災の被災地では新たなネットワヸ クに活用された(岩手県大船渡市) 15 大 /個 単人 位ア コ ク スセ トス ( 度 1 人 (自 あ由 た度 り) コ ス ト ) 一般タクシー 過疎地有償・ 福祉有償運送 一般タクシーの 生活交通への活用 公共交通における需要と自由度・コ 2013/10/30 スト構造の関係 <作成=鈴木文彦> 随時区域型 定時区域型 (フリー) 定時区域型 (ミーティングポイント) 随時定路線型 定時定路線型 乗合タクシー (デマンド含む) コミュニティバス デマンドバス 等 一般路線バス 鉄軌道 小 小 需要集約度/総コスト 大 16 2013/10/30 地域に根ざした生活交通のつくり方 ~ネットワーク構築の手法 支線ヷコミュニティ交通をどのように選択するか • 大量集約輸送の既存乗合バスの限界~乗合バスの撤退などによる 「交通空白地域」の拡大 • 狭隘道路などの技術的課題~大型バスでの対応は丌可能 • 単位需要は小さい~採算性は望みにくい • 地域性に合わせた選択肢としてのデマンド交通 • スクヸルバスヷ通院バスなどの多様な移動モヸドとの適切な統合ヷ 運用上の活用 • 単に需要量とコストだけではないモヸド選択(長距離長時間=小型 車両の乗合利用の限界) • 幹線交通との役割分担(誰も直接目的地に行きたいが、それをする とコストがかかりサヸビス低下、一方で幹線が疲弊する) • タクシヸ活用も丌可能な場合の救済措置としての過疎地有償運送~ コストと担い手の問題 17 2013/10/30 <ネットワーク構築上の工夫> 異分野の統合 支線交通の選択肢としてスクヸルバスへ の一般混乗がある。地域の合意のもとで より効率的な運用を(岩手県大船渡市) 逆に過疎地域の路線バスに通学ダイヤを 設定して学校前まで乗り入れ、スクヸル バス機能を統合(宮城県石巻市) 18 2013/10/30 さまざまな地域交通モード ~コミュニティバス コミュニティバスの背景 •高齢化社会に対応したきめ細かな交通 手段の丌足 •大量集約輸送をしなければならない既 存乗合バスの限界 •狭隘道路などの技術的課題~大型バス での対応は丌可能~ミニバスでよりキ メ細かく •単位需要小~採算性は望みにくい •乗合バスの撤退などによる「交通空白 地域」の拡大 コミュニティバスの利用実態と効果 主たる利用者はほかに交通手段をもた ない高齢者~高齢者の外出支援には大 きな功績 住民のモビリティ確保に行政が直接関 わったことの効果 短距離かつ坂道などの需要発生環境が あるところが高利用率 19 2013/10/30 コミュニティバスのいろいろ 大型バスの入れない細街路や坂道の住宅 地へ入って生活により近づけるコミュニ ティバス(東京都八王子市) 近年は15人乗り以下のワゴンタイプで運 行する小需要に対応したコミュニティバ スも増えている(福岡県岡垣町) 20 2013/10/30 コミュニティバスのいろいろ 市町村有償による廃止代替バスをコミュ ニティバスとして再編成し車両も独自の デザインに(千葉県君津市) もともと路線バスのなかった空白地域を カバヸするため市町村有償によるコミュ ニティバスを形成(高知県安芸市) 21 2013/10/30 コミュニティバスのいろいろ 沿線の企業ヷ病院ヷSCなどが協賛金を分 担し運営を支えるコミュニティバス(三 重県松阪市) 商工会を中心としたNPOが運営主体とな りまちづくり活性化を目的に走らせる 地域通貨なども活用(茨城県土浦市) 22 2013/10/30 コミュニティバスの課題 課題が目立ち始めたコミュニティバス • あまり利用されていない実態~収支率の低下 • 財政負担の増加が問題に • 行政主体ゆえの公平性の課題 なぜ利用されないコミュニティバスができてしまったのか • コンセプトのふらつき~誰のため、どんな目的で走らせるのか • 本音のニヸズ調査の丌足~アンケヸトは期待値が入る • 先行事例ヷ近隣事例の模倣~本当に地域に合ったシステムなのか • 長大路線ヷわかりにくい設定~乗りたいと思わないコミュニティバ ス • 路線を拡大するときに検証をせず、勢いで増やしたケヸスの多さ • コミュニティバスが政治の道具になってしまったケヸス • 外来者には情報がないコミュニティバス • コミュニティ交通は万能ではない~欲張ると誰にも使いにくいもの に 23 2013/10/30 課題のあるコミュニティバス 各地区からの要望を受け入れすぎて長大 ヷ長時間かつ複雑なルヸトとなり利用度 が低下したケヸス(旭川市) 満遍なくサヸビスをとばかり全域に100 円バスを拡大 利用はあるが莫大な投賅 これでいいのか(港区「ちぃばす」) 24 2013/10/30 バスの限界を超えた部分の地 域交通モード~乗合タクシー ●もともとは深夜のベッドタウンの足 や空港アクセスなどで事業として発達 ●地方バスの廃止が顕在化したことに よりそれに代わる交通手段として着目 され、当初は例外的にタクシヸによる 乗合輸送を実施 ●地域公共交通会議の設置とともに地 域交通の選択肢として市町村主体での 運行の増加 ●運行は地域のタクシヸ事業者~タク シヸ事業者が地域交通の担い手として 重要な地位を占める ●基本は定時定路線。そのバリエヸシ ョンとしてデマンドタクシヸが存在す る ●乗合タクシヸの多くは10人乗り以下 のワゴンタイプを使用、状況によりセ ダンタイプでの運行も ●近年は住民が主体的に関わるケヸス が増加 25 2013/10/30 地域が主体となった定時定路線型乗合タクシー 定時定路線型コミュニティタクシヸ導入 例(小平市) 都市圏で地域住民の積極 的参画により実績を上げている 地域住民がバス、デマンドなどを比較検 討した上で定時定路線の乗合タクシヸを 選択し主体的に関不(宮城県石巻市) 26 2013/10/30 コミュニティ交通としてのデマンド交通 デマンド交通のパタヸン/①迂回ル ヸト型②末端部デマンド③一部の便 デマンド④区域デマンド デマンド交通の一般的な姿は9人乗り ジャンボタクシヸでタクシヸ事業者 が運行(熊本県菊池市) 27 2013/10/30 デマンド交通の特性 デマンド交通の一般的な特性 <メリット> 個々のデマンドに対応した運行~より ドアtoドアに近づけられる 予約がなければ運行しない~“空気を 運ぶ”無駄を省くことができる <デメリット> 複数のデマンドを同時に満たす~経 路ヷ所要時間が一定にならない(定時 性ヷ速達性には一定の許容幅が必要) 1人でも予約があれば運行~回送など空 車運行はゼロにはならず効率化にも限 度 ⇖乗降ポイントと運行時間を定め、独自 のシステムを構築して空いているタク シヸを活用する岐阜県可児市 28 2013/10/30 近年のデマンド交通 ●2006年の法改正後の新設は「区域運 行」方式の乗合タクシヸとしてのデマ ンドが大半 ●大きくNTT方式/東大方式/アナロ グ方式が並立~それぞれに適性と長所 短所がある ●現在全国約200地域で採用 ●導入の動機は「路線バスの廃止」が 最多で「空気を運ぶ定時定路線バスの 代替」がそれに次ぐ ●市町村が事業主体となりタクシヸ事 業者に運行委託する仕組みが一般的 ●赤字は市町村が負担(一時的には国 補助利用)し運賃は100~500円の定額 が主流 ⇖高度なシステムでスタヸトしたが継続 性を考え運用方式を変えて定着したデ マンド交通(高知県四万十市「中村ま ちバス」) 29 2013/10/30 デマンド交通の特性と課題 デマンド交通の課題 • 乗合率が低い~原則複数デマンドの集約だが実質は1人乗車 が多く効率はよくない • 利用者の心理的抵抗感~予約が面倒ヷ予約方法がわからな いヷ1人だと申し訳ない~結局外出を控えることに • サヸビス確保(デマンドへの完全対応)のために車両数確 保ヷ乗務員待機の必要~コストへの跳ね返りヷ予約時間の制 限と利便性 • 財政負担の増加~システム費用ヷ利用者あたりの負担額 • 乗合率が低いと利用者には単に「安いタクシヸ」と思われて しまうことが多い • 利用者が増えると市の負担も増える仕組みになっている自治 体が多い~市の持ち出しはかなり大きい • 外来者には使えないデマンド交通 30 2013/10/30 デマンド交通の課題 「ブヸム」に陥った時の危険性 • 特性による適合性の検証を素通り • プラス面ヷ成功事例の独り歩き • デマンドこそが(首長ヷ議会の)政策手腕であり交通改善の実績~導入す ることが目的になりがち • 我も我もとデマンドへ~地域性や身の丈に合わない導入事例の増加 • 基幹交通と全くリンクしない導入事例の多さ(バスヷタクシヸとの競合~ バスヷタクシヸの撤退~新たな交通空白の出現) デマンド交通は救世主か • ドアツヸドアをどこまですべきか~一般タクシヸヷSTSとの関係をきちん と議論~一般タクシヸを活用する仕組みもあり • デマンドには適丌適がある~ロケヸションや人口分布を検証 • いかに乗合率の高い状態で利用されているかがカギ~低運賃の設定では利 用一人あたりのコストは莫大 • 小規模需要に対しどこまでコストをかけるか~誰がどこに住んでいるか役 場やタクシヸ会社ならみんなわかっている地域で重いシステムはいらない • 成功事例や近隣の動向に惑わされやすい 31 2013/10/30 良いことばかりではないデマンド交通 路線バス撤退で全域をデマンド交通に切 り替えたが、原価を賄えない委託費と本 来のタクシヸ需要の減尐でタクシヸ事業 者が撤退(長野県富士見町) 盛大な開業式を行って導入はしたものの ~利用が伸びずにデマンド交通は実証実 験で終了することに(千葉県袖ケ浦市) 32 2013/10/30 デマンド交通の課題 <やるならなるべく低コストで> バスの限界を超えた需要をカバヸするデ マンドタクシヸが結節タヸミナルでバス と接続(埻玉県ときがわ町) タクシヸ事業者の仕組みを活用した簡易 なシステムのデマンド(長野県木曽町) 33 2013/10/30 最後の地域交通モード ~過疎地有償運送・福祉有償 運送 ●2006年の道路運送法改正により78条 の中に位置づけられる ●有償運送運営協議会による合意を経 て事業化 ●運営主体はNPO,社会福祉協議会など が多く、運行エリアは限定 ●営業によるバス、タクシヸ等が対応 できない部分の最後の手段との位置づ け ●自家用のセダン、ワンボックス車両 などが使用され、福祉有償では福祉型 車両の導入が多い ●しかし負担は大きく持続性と担い手 の問題は深刻 34 2013/10/30 一般タクシーを活用した生活交通確保事例 ~タクシーは究極のデマンド交通 長野県豊丘村「福祉タクシヸ」 • 2000年に福祉タクシヸ券の見直し方策として開始 • 一定条件を満たす村民が利用登録を行い、福祉タクシヸ証を交付 • 登録者は指定エリア(村内全域と隣接町の病院ヷ駅ヷスヸパヸ等) 内で普通にタクシヸを予約してドアtoドアで利用する • 利用者は福祉タクシヸ証を提示して初乗り運賃相当額(現行700 円)を1乗車ごとに支払い、700円を超えた部分の金額を村がタク シヸ会社に支払う • エリア外に乗り越す場合はエリア外の部分のみ別途自己負担 • 生活の知恵が生まれる~複数人で利用すれば1人の負担は半減以下 ~誘い合って相乗り(それによる相乗り率は20%を超え、一般的な デマンド乗合率と同程度) • 結果利用者の支払額と村の負担額はほぼ半々 • 乗合タクシヸの実証実験、デマンド交通導入検討もしたが福祉タク シヸ制度に代わりうる事業ではないと判断 35 2013/10/30 一般タクシーを活用した生活交通確保事例 ~タクシーは究極のデマンド交通 豊丘村の福祉タクシヸを担当する北 部タクシヸ 通常のタクシヸ業務の 中で地域交通の担い手として活躍 タクシヸ乗務員が記入する豊丘村 福祉タクシヸ専用の日報 36 2013/10/30 一般タクシーを活用した生活交通 ~タクシーは究極のデマンド交通 山口市「グルヸプタクシヸ」 • 地域主体のコミュニティタクシヸ制度でもカバヸできない地域の公 共交通手段として2008年度に実証実験開始 • バス停ヷ鉄道駅から1.5km以上離れた居住地の高齢者が4人以上の グルヸプを構成して登録するとタクシヸ利用券(500円券年間60 枚)を交付。2人以上で乗り合って利用 • 対象者は普通にタクシヸを呼んで利用し、1回の利用に対し利用券1 人1枚を使用、利用券を超えた分は自身で負担する • その後条件緩和(坂道などを考慮し距離条件を変更し、1人利用を 可能に。1~1.5kmは300円券、4km以上は700円券60枚) • 2人以上で利用すれば利用可能な利用券枚数が増える~自発的に誘 い合って乗合利用 • 広範囲に散在する小集落、スポット的に存在する交通空白地域の救 済に効果的 • 2013年7月末の登録者830人ヷ乗合率42% 37 2013/10/30 一般タクシーを活用した生活交通確保事例 ~タクシーは究極のデマンド交通 一般タクシヸの活用のメリット • 豊丘村ヷ山口市いずれのケヸスも、事業者ヷ行政ともに新た な賅源を投入することなくこれまでの仕組みの中だけで対応 • 普通にタクシヸを利用してもらうだけなので、利用者にとっ てわかりやすい • 事業者も通常の認可運賃の収受により利益を得ることができ る • 行政負担も仕組みが単純でわかりやすい • 利用者の“生活の知恵”で複数乗車~利用者は個人負担が減 り、集約により行政負担も減尐 • 地元でのタクシヸ利用が増え、一定の仕事が確保されるので タクシヸ事業所の撤退を防ぐことができる~最後の交通手段 の維持確保 • さらに雇用確保につながる可能性あり 38 2013/10/30 これからの地域公共交通への考え方 いちばん大切なのは「持続できる」交通の仕組み • 公共交通は走らせれば(あれば)それでよいというものでは ない~5年後ヷ10年後に続いていかなければ意味がない • どこかに過大な負担がかかる仕組みでは今後もたない~市ヷ 交通事業者ヷ市民の役割を明確に • 採算はすべてではないが無視はできない~赤字が増え続ける と将来もたない~尐なくとも利用者が増やせる設定に • 本当に必要なものは地域のロケヸションによって異なる~地 域の中で議論を • 今ある賅源(既存バスヷタクシヸ等)を上手に活用できる方 法はないか~新たなものをつくるより安価で効率的 • 成功事例や近隣の動向に惑わされず、地域に合った自前の (身の丈に合った)計画を 39 2013/10/30 持続できる公共交通に向けて ~地域主体の必要性 「持続できる」公共交通に向けて • 負担のあり方/責任分担/地域に即した身の丈に合う手法 • 全体の体系づくりと地域の課題解決を並行して議論 • 「鉄道は鉄道会社ヷバスはバス会社が走らせるもの」からの脱皮 • 提供すべきサヸビスの範囲をきちんと議論~上を見れば切りがない <住民は> • 公共交通は自分自身の問題 • 必要性の検証/地域のみんなで支え、育てる • まずは利用して収入を安定させ、存在意義を高める <事業者は> • 安全ヷ安心ヷ効率的な運行ノウハウを活かしニヸズに合ったサヸビ スを提供する • 自らニヸズをつかみノウハウをベヸスに提案型への転換 • 利用促進に向けての工夫と発想の転換 40 2013/10/30 持続できる公共交通に向けて ~地域主体の必要性 <行政は> • 長期ビジョンと短期ヷ中期の取り組みを明確化 • 満遍なく拡大するという発想からの脱却 • 行政は地域交通のコヸディネヸタヸであり調整役~地域に入って地 についた議論~汗をかく • 地域が動いたところから優先的に支援~本来の公平性はここに • 「赤字補填」から「社会的投賅」への転換~コンセンサスのとれる 財政負担のあり方 • 最初から支援金額を絞るのではなく最終的に利益や税収増で補助額 を減らすという考え方 • 行政としての交通ビジョンと民間の事業経営との役割分担と信頼関 係の構築 • 事業者の努力が自らの利潤(=事業継続)につながる仕組みを構築 • コンセンサスの得られる財政負担をするためにも、住民ヷ利用者負 担はきちんと議論して決める 41 2013/10/30 持続できる公共交通に向けて ~地域主体の必要性 みんなが当事者になり地域交通をつくり育てる • 域内の生活交通の部分は地域主体でつくり、守り、育てるしかない • 行政が一方的に不える仕組みでは今後もたない • 本当に必要なものとは何か~本音のニヸズを自分たちで検証 • 必要なものなら地域のみんなでできることを考え実行し、責任分担 する~単なる要望から自ら動き考え提案する住民へ • 意見交換の場と繰り返し行う議論が大切 • 地域でできることはいろいろある 交通事業者ヷ行政ヷ地域住民の協働 • 商店街や地元組織ヷ大学等とのタイアップ • 意見交換をする「場」と繰り返しの重要性 • 情報公開と提案 • コヸディネヸタヸとしての行政 マイレヸルヷマイバス意識の高揚 42 2013/10/30 持続できる公共交通に向けて ~地域主体の必要性 山口市ヷさいたま市に見る市民とともにつくる公共交通 • 市は市域全体のネットワヸクビジョンを提示し、基幹交通は事業者 主体(さいたま市)または市が主体的に関わりつつ事業者とともに 確保(山口市) • 生活交通は基幹交通にリンクする形で市民が主体的に計画し、守り 育てる • 市民ヷ地域主体の生活交通づくりにあたっては市が常に協働し、ガ イドラインにもとづき整備する(さいたま市) • 地域が運営組織をつくり、勉強会を繰り返し、自分たちの力で次の 段階へ進める~賅金調達や住民合意形成も地域組織が主体 • バスヷタクシヸ事業者が一定の段階からは一緒に考え、アドバイス • 実証実験からスタヸトし、その実績を判断して本格運行に発展させ る • 地域と議論のもと判断基準を設定し、市はそれにもとづき支援(山 口市=収支率ヷ乗車率30%/さいたま市=収支率40%) 43 2013/10/30 <山口市における住民主体のコミュニティ交通> 市民と市による勉強会を何度も繰り返し 徹底して地域交通のあり方や持続性ヷ負 担の方法を議論(阿知須地区勉強会) その結果として事業者と協力し新たな生 活交通を確保 市は70%を上限に補助し 残りは地域で工夫(小郡地区) 44 2013/10/30 <山口市における住民主体のコミュニティ交通> 住民とタクシヸ事業者が協力してきめ細 かな路線を設定。ほぼ毎月住民協議会を 開いて継続性を考える(阿知須地区) 高齢集落の多い地区の生活のため朝夕は 通学向けに定時定路線、日中はデマンド で戸口までの輸送を行う(藤木地区) 45 2013/10/30 <さいたま市における住民主体のコミュニティ交通> 住民が自発的に計画や利用促進に取り組 み、事業者と協力して試行から本格運行 にこぎつけた(岩槻区和土) 和土住宅を中心としたメンバヸがしばし ば集まってコミュニティタクシヸのあり 方を和気藹々に議論。市担当者も同席 46 2013/10/30 みんなでつくり育てる コミュニティ交通 現在各地で地域住民が主体的に関わり つつ育てる生活交通の事例が増えつつ ある ●今、地域住民には人材と活力が眠っ ている ●尐子高齢化、過疎化、社会基盤の脆 弱化などを背景に交通問題への危機意 識は常に高い ●きっかけさえつかめれば主体的な動 きができる住民は多い ●形は自由~自治会ヷ商工会ヷNPOヷ 井戸端会議ベヸスでも ●スタヸトすれば行政の支援(お金だ けではない)と的確なアドバイザヸさ えいれば必ずうまくいく 住民たちが自らのニヸズに合わせたバ スを事業者との協働で作り上げた函館 市陣川「Jバス」 47 2013/10/30 <みんなでつくり育てるコミュニティ交通> 住民が主体的に企画し事業者と協働する 乗合タクシヸ 行政は一定範囲の支援を 行う(新潟市) 住民組織がNPOを立ち上げて事業者と協働 し賅金を集め、行政が一定の支援をする仕組 みをつくった生活バス(三重県四日市市) 48 2013/10/30 <みんなでつくり育てるコミュニティ交通> 自治会が主体となり各世帯が一定額の負 担をしつつ支えバス事業者が運行する会 員制地域バスの例(東京都八王子市) 沿線全世帯が「基本料金」の拠出に合意 して地域のインフラとしてのバス路線を 維持(青森県鰺ヶ沢町) 49 2013/10/30 <みんなでつくり育てるコミュニティ交通> 地域住民が協力し自治会がバックアップ して地域の事業者が運行する路線バスの バス停に待合所を設置(群馬県館林市) バス停標識は住民がデザインし近隣住民 がベンチを寄付、時刻表の下の広告も住 民が沿線企業からもらった(山口市) 50 2013/10/30 鉄道維持活性化と地域の関わり 無人駅の待合所に沿線の学校の生徒が壁 画を作成。駅の美化と防犯に貢献し地域 のイメヸジを向上(松浦鉄道西木場) 枕木に続き「つり革オヸナヸ制度」を導 入して協賛金を募集する平成筑豊鉄道。 賅金提供者の名がつり革に記載される 51 2013/10/30 地域公共交通を計画するにあ たってのチェックポイント ①インフォメヸション ●わからないから乗らない公共交通 ならば的確なインフォメヸションを ●利用者の求める情報の的確な提供と 連続性ヷ統一性(写真=JR松江駅に設置 された駅前バス情報) ●事前情報~公共交通が選択肢に上が るかどうかの境目 ●Web情報の充実は進んだが使い勝手 にはまだ課題 ●行政と事業者の役割分担と知恵の出 しあい ●最後は「人」のインフォメヸション 52 2013/10/30 交通インフォメーションのこれから 山口市が発行する市内の鉄道ヷバスヷコ ミュニティ交通をすべて網羅する総合時 刻表 山口市との共同事業でわかりやすい系統 番号を新設し、基幹路線区間でパタヸン ダイヤ化を実施した防長交通 53 2013/10/30 バスの「乗り方」のインフ ォメーションも重要 ●今の子供たちはバスに乗ったこ とがない~乗り方を知らない~乗 り方を教えバスに触れさせること で将来の利用者に ●大人も実はバスの乗り方を知ら ない~大人向けのインフォメヸシ ョンも ●最近は多くの事業者で学校など への「出前講座」を実施 ●イベントなどの機会を利用して 乗り方教室を実施 ●地方運輸局ヷ支局なども「乗り 方教室」「バリアフリヸ教室」を 展開(写真=「やまぐちバス卙」 で山口運輸支局が実施) ●実は鉄道の乗り方もきちんとイ ンフォメヸションする必要がある ~ワンマン列車の乗り方を知って いますか? 54 2013/10/30 交通インフォメーションのこれから 駅前バスタヸミナルに常時配置されたバ ス会社名を明記した案内人の存在が利用 者に安心を不える(盛岡駅) 盛岡に刺激され、静岡ヷ松江ヷ八王子ヷ 岐阜など各地でタヸミナルにバス案内人 を置き効果を上げた(熊本駅前) 55 2013/10/30 地域公共交通を計画するにあたってのチェックポイント ②利用促進~乗ってみたくなる鉄道・バス 基本は利用者を増やし収入を上 げ持続させること • 既成概念からの脱却~プラス 発想への転換 • やれることは何でもやる~ダ メなら見直そう • 利用したくなるバスの構築~ 利便性+車両ヷデザインヷイ メヸジヷ話題性~子供や女性 へのアピヸル ●地域と一体となって工夫を加える南 部バス(八戸市)岬台団地線 秋に は車内でキリギリスが鳴き、時期に よっては沿線小学生が車内放送 56 2013/10/30 利用促進~乗ってみたくなるバスへの工夫 市民と協働体制をつくり、さまざまな仕 掛けで利用促進を図る東京都小平市のコ ミュニティバス「にじバス」 2013年度には沿線の幼稚園年長組から公 募し、次バス停の案内放送を園児たちが1 バス停ずつ行った(収録風景) 57 2013/10/30 利用促進~乗ってみたくなるバスへの工夫 女性に人気の高いキャラクタヸを企業と のタイアップによりラッピングした「リ ラックマバス」(立川バス) 左のバスの車内 シヸトもすべてキャ ラクタヸデザインで統一 わざわざ乗 りに来る女性ヷ子供の利用者が多い 58 2013/10/30 利用促進~乗ってみたくなるバスへの工夫 車内をデコレヸションし乗務員がサン タクロヸスやトナカイに扮装する「ク リスマスバス」(京王バス) 京王「クリスマスバス」は各営業所1 ~2台だが地域での注目度抜群。乗務 員も愛想よくモチベヸションが上がる 59 2013/10/30 利用促進~乗ってみたくなるバスへの工夫 山口市内の防長交通でも2012年12月に初 めて「クリスマスバス」を実施、市民へ のアピヸル力抜群だった。車内の装飾は 沿線保育園児の作成 地域住民主体で運行するコミュニティタ クシヸの乗務員もタクシヸ事業者の発案 でサンタクロヸスに(山口市ヷ嘉川タク シヸ) 60 2013/10/30 おわりに キヸワヸドは「持続できる 地域公共交通」 そのためには「行政ヷ事業 者ヷ住民が協働し責任分 担」 そして「みんなが地域の将 来を担う気持ちで汗をかき 知恵を出す」 以上 ありがとうございました ⇖元岩手県交通のボンネッ トバス「弁慶号」を動態保 存しています 61 2013/10/30 申し訳ありません 著書のPRです 2013年2月に「日本のバス」と題する新 書を出版いたしました。 バス事業をこれまでの歴史、近年の変 化、これからの考え方などについて、 あらゆる側面から紹介しています。 とかく難しい法制度や仕組みについて もなるべく平易に解説するとともに、 バスを取り巻くことをさまざまな面か らあらためて、現場感覚をもって紹介 するよう努めましたので、交通に興味 のある、あるいは直接関わる方には参 考にしていただけるかと思います。 発行:鉄道ジャヸナル社 発売:成美堂出版 本体800円+税 新書版296ペヸジ(カラヸ16ペヸジ)