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☆★平成22年度かながわ里地里山シンポジウム★☆ ~未来に引き継ぐかながわの里地里山~ ○開催日時:平成 23 年2月 12 日(土) ○開催場所:神奈川県民ホール 13:00 ~ 15:30 小ホール 【プログラム】 1 開会 13:00 開会あいさつ 主催者代表 2 神奈川県知事松沢成文 神奈川県里地里山条例の概要及び県の取組の紹介 神奈川県環境農政局農政部農地保全課農地活用グループ 3 基調講演 『農業体験で地域を元気に!』 講演講師 4 大桃 美代子氏(タレント) 大学生の活動研究発表会 〔参加大学〕神奈川大学 農業サークル KAS 上智大学 地球環境学研究科 東海大学 藤吉研究室 東京農業大学短期大学部 緑地生態学研究室 日本大学 造園・緑地学研究室 明治大学 応用植物生態学研究室 5 閉会 15:30 【平成 22 年度かながわ里地里山シンポジウム内容記録】 ◎司会/こんにちは。 あいにくのお天気ですが、お越しいただき、ありがとうございます。 それではこれから、『「平成 22 年度かながわ里地里山シンポジウム」~未来に引き継ぐか ながわの里地里山~』を開催します。 まず、開催に先立ちまして、主催者を代表し松沢成文神奈川県知事から、ごあいさつ申し 上げます。 それでは松沢知事よろしくお願いします。 ◎開会あいさつ 主催者代表 神奈川県知事松沢成文 ・知事/こんにちは。お元気ですか? ご紹介いただいた神奈川県知事の松沢成文です。 本日は外は寒いですね。小雪もぱらついています。 このような中で、大勢の皆様にご参加いただき、誠にありがとうございます。このシンポ ジウムは里地里山のすばらしさや大切さについて、広く県民の皆様に知っていただくことを 目的として開催します。今年で第 2 回目になります。 すでに里山で活躍されている方も多いと思います。里地里山は、農地や山林、集落が一体 となって、人々の生活の場として、長い時間をかけて形成されてきました。良好な景観、生 物多様性の保全や自然と触れあうことなど、多面的機能を発揮し、多くの恵みをもたらせて くれます。しかし、最近では産業構造や生活様式の変化、農家の減少、高齢化により里地里 山の適切な管理が行われにくくなっていて、多面的機能が失われています。 一方で地域住民や市民団体が里地里山に関心を寄せて、雑木林の管理、水源の復元など様 々な活動が広がりをみせています。 県では、多面的機能の復活、次世代への継承をはかり、県民の健康な生活に寄与するため に、保全・再生・活用の促進に関する条例を平成 20 年 4 月に施行しました。 記憶に新しいところですが、名古屋市で開催された生物多様性会議 COP10 において、里 山イニシアチブとして、全世界の注目を集めました。 世界各地にも存在する自然共生の知恵と伝統を現代において再考し、発展させ、活用する ものです。それが里山イニシアチブです。 世界の各地の条件に適した自然共生社会を実現しようと、生物多様性の保全における里地 里山の重要性が象徴的にクローズアップされました。 県内には、条例施行後、小田原市など県内 10 地域を指定し、面積は 5544 ヘクタールにな っています。8 つの地域団体が、里地里山の活動協定の認定を受け、県の助成を受けて、農 地の保全など里地里山の保全活動を行っています。 こうした取り組みを見ると、里地里山条例を契機に活動団体と地域の人が協定をし、地域 活動が活発化し、都市住民の交流も増加し、里地里山の保全再生の取り組みが前進していま す。 県では、県民の皆様に里地里山の大切さを理解していただくため、農作業を体験する「子 ども里地里山体験学校」や「シンポジウム」を開催しています。本日のシンポジウムでは、 県職員による条例の解説、保全活動を行っている団体の紹介、大桃美代子さんによる「農業 体験で地域を元気に」というテーマの基調講演、更に県内の大学生の活動の研究発表などを 予定しています。 このシンポジウムを契機にして、多くの県民の皆様が関心を持ち、保全活動に参加したり、 地場産の農作物やきのこなど山の恵みを購入するなど、県民ができることから行動を起こす ことで、里地里山が未来へと引き継がれることを期待したいと思います。 最後に私の紹介をします。昨年私は「二宮尊徳の破天荒力」という本を出版しました。神 奈川県には素晴らしい歴史があります。二宮尊徳は武家や藩の行財政政策で立て直し、最後 は幕臣に推薦されるなどしました。殆どの方は知りませんが、二宮尊徳について知っている 方でも江戸時代の徳のある人ということくらいです。 彼の哲学は大変参考になります。県知事としても大いに活用させてもらっています。尊徳 は農村を豊かにするために、里地里山を重要視しています。二宮尊徳像をご存じですか? 本を歩きながら読み、勉強する勤勉少年をイメージした像です。尊徳はなぜ薪を背負ってい るのか。尊徳は薪を集めて、小田原のまちに運び、換金商品となることに気づいたのです。 里山で大きな薪がでて、里山は腐葉土が多いので、それを肥料にして田畑を作り、小田原 で売って新たな苗を買って、松の苗を酒匂川に植えたりしました。 小田原や南足柄の農村開発の背景として、新たな農業などの改革を進めました。 ここまで話を聞くと、本を読みたくなったかたもいると思います。 「ぎょうせい」という出版社から 1600 円ででていますので、ぜひご一読ください。 出口にパンフレットを置いておきます。興味があればお持ち帰りください。 今日のシンポジウムに神奈川の自然を愛する方に集まっていただきました。 これからも里地里山の活動の実践と、おおいに宣伝普及をしていただき、県の自然や農村な ど、都市化の開発は進んでも、しっかりと保全をしたいと思います。 皆様のご支援、ご協力をよろしくお願いします。今後益々のご発展を祈念し挨拶とします。 本日はありがとうございます。 最後までよろしくお願いします。 ・司会/ありがとうございました。 この後のシンポジウムのご案内をしますが、その前にお願いがあります。1 つめは携帯電 話です。お切りになるか、マナーモードでよろしくお願いします。 本日は肖像権もあり、ビデオやカメラの撮影もご遠慮ください。では、スケジュールのご 紹介をします。この後すぐ県職員による神奈川県里地里山条例の概要及び保全活動の紹介が 行われ、続いて大桃美代子さんを講師に迎えての基調講演、最後に大学生における里地里山 での活動研究発表会を予定しております。終了は 15 時 30 分頃を予定しております。 最初に、神奈川県里地里山条例の概要や県の取組について、県農地保全課農地活用グルー プから説明していただきます。農地保全課の近藤さん、よろしくお願いします。 ◎神奈川県里地里山条例の概要及び県の取組の紹介 神奈川県環境農政局農政部農地保全課農地活用グループ ・近藤/農地保全課の近藤と申し上げます。よろしくお願いします。 それでは、これから神奈川県里地里山条例の概要及び県の取組の紹介をいたします。 その前に、皆さんは「里地里山」という言葉をご存じでしょうか。ご存じの方もいらっし ゃると思いますが、「里地里山」とはどのようなものか、ご説明いたします。こちらの図に ありますように、人が住み生活をしている集落・里、田んぼや畑といった農地、雑木林、竹 林といった山、これらが一体となったところ、地域のことをいいます。 こちらは、昨年の「県のたより」12 月号にも掲載された絵ですが、このように、田んぼ や畑といった農地や、雑木林や竹林などの山、集落、そして水路などが見られる地域です。 実際の里地里山の様子について、四季を追ってご紹介いたします。 こちらは、春の里地里山の風景です。あたり一面に黄色い菜の花が咲きほこり、この美し い風景が、私たちの心をなごませてくれます。 こちらは、夏の里地里山の風景です。田んぼに水が張られ、稲や周りの草木も青々と生長 し、里地里山の多くの生き物たちも、活発に活動しています。 こちらは、秋の里地里山の風景です。暑かった夏も過ぎ、涼しくなり、田んぼの稲も実り の時期を迎え、私たちに収穫の喜びをもたらしてくれます。 こちらは、冬の里地里山の風景です。木々の葉も落ち、里地里山の生き物たちの姿も見え なくなり、寂しい風景ですが、また巡り来る春の訪れの喜びを私たちに与えてくれます。 このような里地里山ですが、昔から農業や林業が営まれ、そこに住む人たちの生活の場と して、長い時間をかけて人が手を入れ、管理することで形づくられ、維持されてきたもので す。そして、最近ではこのような、人が自然に働きかけて作りあげてきた「里地里山」の持 つ色々な優れた機能が、注目を集めはじめています。 例えば、美しい風景ですとか、色々な生き物が棲んでいたりとか、お祭りなどの伝統行事 が行われたり、自然とのふれあいの場となっているなど、色々な優れた機能が、注目を集め ています。これらは、少し難しい言葉ですが「多面的機能」と呼ばれています。 そして、この多面的機能がもたらす恵みは、多くの県民の皆さんに受け入れられています。 県民共通の財産です。 では、このように素晴らしい里地里山は、今どうなっているのでしょうか。昔から木を切 って炭を作ったり、薪(まき)に使ったり、肥料にするために落ち葉を集めていましたが、 生活様式や産業構造の変化により、利用されなくなりました。また、農家の減少や、高齢化、 集落コミュニティの弱体化が進みました。 その結果、農地や雑木林の手入れがされなくなり、管理が行き届かなくなったり、昔から あった伝統行事や郷土料理なども失われつつあるようになりました。 このようなことから、大切な里地里山の多面的機能が失われつつあります。 そこで、県では、「里地里山の多面的な機能の発揮」と「里地里山を次世代へ引き継いで いく」ことが重要であるという考えのもと、この 2 つのことを目的を掲げた条例を制定し、 平成 20 年 4 月から施行いたしました。 その条例の名前は、「神奈川県里地里山の保全、再生及び活用の促進に関する条例」とい いますが、長いので、縮めて「里地里山条例」と覚えてください。 そして、目的を達成するために、この条例では次のような基本理念を定めています。 1 つめは、里地里山の土地所有者や地域住民のみなさんを主体、中心にして、2 つめは、 これらのみなさんと、県民・県・市町村などがみんなでお互いに協力して、そして、3 つめ は、地域の農林業を大切にして、「保全」、「再生」、「活用」を継続的に進めていく、という ものです。 次に、県と県民の皆さんの役割ですが、まず、県は、県民の皆さまに里地里山に対する理 解を深めてもらえるよう、シンポジウムなどで条例についてお話をしたり、総合的に施策を 実施したりします。 次に、県民の皆さんの役割です。まず、県民の皆さんには、里地里山の多面的機能への理 解を深めていただきたいと思います。そして、里地里山の保全の中心となる土地所有者や地 域住民の皆さんと一緒に協力しながら、保全等の活動に積極的に参加するよう努めていただ きたいと思います。 次に、保全等を進めるための仕組みですが、まず、保全等の活動が行われていたり、保全 等の機運が見受けられる地域や、市町村が保全等を進める必要があると認める地域について、 県が「里地里山保全等地域」という、いろいろな施策を展開する場所として選定します。 さらに、その地域の中で、具体的に活動を行おうとする団体は、土地の所有者と協定を結 んでいただき、その協定が条例の趣旨に沿った適当なものであると認められる場合に、県は 協定を認定し、さらに活動が継続して続けられるように色々な支援を行います。 また、県民の皆様には、このような保全の活動に積極的に参加するよう努めていただきた いと思います。 こちらが「里地里山保全等地域の選定状況」です。平成 23 年 2 月 1 日時点で、合計 10 地 域、約 5550 ヘクタールとなっていますが、多くは県の西の地域にあります。 次に「里地里山活動協定の認定の状況」についてです。こちらも同じく平成 23 年 2 月 1 日時点で、合計 8 協定、約 14 ヘクタールで協定が締結され、活動団体による活動が行われ ています。 各団体の活動内容については、このホール入り口での展示を後ほどご覧いただければと思 います。そして、「里地里山活動協定に係る活動」に対し、県は支援を行っています。 田畑、雑木林をきちんと手入れして保全したり、使われなくなった田んぼを田植えができ るように復元・再生したり、小川の生き物を学ぶために活用したりすることなどに支援を行 っています。 また、県民のみなさまの里地里山へのふれあいの機会の提供も行っています。子どもとそ のご家族を対象にした「子ども里地里山体験学校」です。 昨年度は、相模原市の小松・城北地区で田植え体験や稲刈り体験、また秦野市菩提でそば 打ち体験を行いました。 今年度は、小田原市久野地区で、田植えや稲刈り体験を行いました。また竹馬づくり体験 も行い、こうした活動に参加した子どもたちは、里地里山で色々な発見ができたようです。 そしてもっと多くの県民のみなさまに里地里山に対する理解を進めていただくため、平成 20 年度に第 1 回目、今年度第 2 回目のシンポジウムを開催しているところです。 以上になりますが、県の取組を紹介させていただきました。 今後は、里地里山の保全などの活動が県内の色々なところで行われるようになり、次の世 代の県民の皆さんが、里地里山の多面的機能の恵みを受けることができるようになって欲し いと考えています。 ご清聴ありがとうございました。 ・司会/ありがとうございました。 かながわ里地里山の状況、県の取り組みについて担当の近藤さんから発表いただきました。 つづきまして、「農業体験で地域に元気を」をテーマに本日の基調講演として大桃美代子 さんに講演をしていただきます。 大桃さんは、新潟県出身で 07 より中越地震の復興のため、地元新潟で古代米(桃米)作 りを始め、かわいいパッケージのお米を作り始めました。昨年は地元の子どもたちと食を見 つめ直す活動として、生きもの調査をはじめ、環境問題や生物多様性の大切さを学びました。 また、食と農に関するイベントなどで講演やパネラーとして活躍されています。 知事からもお話がありましたが、更に今年度名古屋で開催された生物多様性条約国際会議 の COP10 においても、幅広く里地里山に関かかわっています。 テーマは「農業体験で地域に元気を」です。 それでは大桃さんよろしくお願いいたします。 ◎基調講演 『農業体験で地域を元気に!』 講演講師 大桃 美代子氏 ・大桃さん/こんにちは。 大桃美代子です。よろしくお願いします。 手話ができたら良かったのですが、あまりできないので、「よろしくお願いします」だけ しました。今日は農業の話しをさせていただきます。 私が農業をやり始めたきっかけですが、実は、地震がありました。新潟県では 2004 年 10 月 23 日に大きな地震がありました。そこから農業にたずさわることになりました。新潟県 はお米がおいしいところです。 ご飯のクイズです。お茶碗 1 杯に何粒くらいのお米が入っていると思いますか? 大学生もいて、いろいろ生物、環境の調査をしていると思いますが、ご飯粒までは数えた ことがないと思います。普通盛りですよ。 どれぐらいでしょうか?分かる方? 100 粒? 1000 粒? 1 万粒?どうでしょうか? 「1500 粒」ほ~という声がでましたが。前にいるボーダーの女性。「10000 粒くらい。」 ・大桃/正解は 3300 粒ぐらいです。 意外と知らないですよね。毎日みなさん食べていますが、意識しないとわかりませんね。 環境もそうですね。意識しないと自分の目にはいりません。 お米の種類はどれぐらいあるでしょうか? ご存じの方いますか?環境の方たちだとわかるかな?フードの彼女。何種類くらい、日本 では作られていると思いますか?「4 種類?」「150 種類。」いいところですね。もっと多い のです。およそ 300 種類作られています。これは、私が作っている桃米という古代米で、ア サムラサキという品種です。日本ではたくさんの種類が作られています。こうやって、自分 たちが意識をしないといろいろなことは頭に入りません。 次に、私がどうしてお米作りにはいったか。新潟県の魚沼市で 2004 年 10 月に大きな地震 がありました。山古志村というところが大きな被害があって、「マリーと子犬」という映画 がありました。私は東京に住んでいますが、新潟で仕事がありました。実家は魚沼市という ところです。新幹線で自宅に帰り、ご飯を食べようかといったとき、5 時 56 分、夕方にゴ ーという音がしました。なんだろう。飛行機が飛んでいるのか、と思った瞬間でした。最初 縦揺れがきました。そのうち 10 秒もしないうちに横揺れがしました。その時、隣町が震度 7でした。これが中越地震です。その時の映像がこれです。 自分が住んでいた家がこんなふうになってしまうのです。本当におそろしいと思いました。 このとき、 「ズームインスーパー」という朝の番組をしていました。テレビ局に電話をして、 新潟で大変な揺れが起きている、東京はどうなっているのか「どういう状況なのか、教えて 欲しい」と報道フロアへ電話をしました。 すると、「大桃さんがいるところが震源地に近いから、すぐにリポートしてください」と 言われました。「まだ余震がたくさんあるんです」と伝えました。 それがまず第 1 報でした。「電話リポートでしゃべってください」といわれました。この 電話リポートが私の人生を変えることになりました。上からバラバラという音がして、ヘリ コプターが飛んでいましたが、それが見えるだけで、町の明かりは消えていますし、停電で 真っ暗です。「家の近くに火事はないですか?」と聞かれ、「火は見えてないです。」と答え ました。「大桃さん、気をつけて取材を続けてください」と言われました。それから外に出 ましたが、揺れが大きいため、潰れては大変なので車庫から車を出し、家が見えるところで、 車を止めて、状況を見守ることにしていました。車の中には両親と私がいました。父が運転 席、私が助手席、後ろには母がいました。唯一、安心できたのは、家族が自分の目の前にい る、見える範囲に一緒にいる、確認できるということでした。余震も多く大変でしたが、家 族と一緒にいられるということは、安心材料でした。 その時に見た景色は忘れられません。日が暮れて真っ暗になり、町がヘッドライトに照ら されるのですが、その姿が変わっていました。ふるさとは変わらないのが当たり前と思って いました。東京から帰ってきて、ここはのんびりできて、良いなと思うのが実家でした。1 回の揺れでいろいろなものが変わりました。道路が寸断されていました。避難所へ非難して いる人もいました。学校の体育館にゴザを並べて、布団を敷いて寒い生活をおくっている方 が多かったです。 そんな姿をもっと多くの人に伝えたいと思いました。日本は地震大国です。いつ地震がお こるかわかりません。この姿が日本の未来である。私たちが復興する姿が日本の姿である。 ここが明るく、元気にならなければ、日本の復興はないのではないか。モデルケースになる のではないかと思いました。しかし、どうしよう。家が壊れている人もいます。東京へ持ち 帰り、テレビで報道しました。 テレビ報道は時間が経つと段々伝えてくれなくなります。この土地から発信しないといけ ないと思いました。まだまだ地元の皆さんは大変です。心も壊れているし、家も再建できて いないといっても、テレビは新しい二ユースに移っていきます。ニュースが少なくなると、 終わったもののように思いませんか? 中越地震、中越沖地震という 2 つの大きな地震がありました。復旧はできましたが、復興 はできません。家や道の再建はお金があればできますが、人の心はどうでしょうか。 トラウマを抱えた人がたくさんいる中で、地域に元気を与えたい、私にできることは何か と思ったとき、魚沼という土地を見直してみました。 魚沼はこしひかりで有名です。ブランド米が取れるところです。お米がもっと売れるよう な、年配の方達が頑張っている小規模農家が、現金収入を得られるような支援ができないだ ろうか?タレントとして、農業を始めようと思いました。私が白いお米を作ったら他の人の 取り分をとってしまうかもしれません。周りの人に迷惑を掛けます、そうならないように、 私は白いお米と混ぜて炊ける雑穀を考えました。雑穀はひえ、あわ、きび、たかきびなどた くさんありますが、私が選んだのは、新潟の田んぼで出来るものでした。 それは赤米、黒米、緑米です。日本の雑穀協会で学び、新潟の田んぼでできる雑穀はこれ らでした。雑穀の定義は学術的と、市場でのものがありますが、学術的にいうと、今売られ ている 16 雑穀とかありますが、白米以外は雑穀と定義をしています。 私は古代米の黒餅米にしました。作る時に無農薬が良いと思いました。自分が食べたい、 安心して人にお勧めできるものが良いと思いました。田んぼを探しますが簡単ではありませ んでした。 私は東京でタレントをしています。父は兼業農家です。実家は農家の資格があるのですぐ に出来ると思っていました。父に田んぼを貸して欲しいと頼んだら、何を作るかと聞かれ、 「黒いお米を作る」といいました。でも、土地だけは貸せないと言われました。身内の父か ら断られました。 こんな時には、農協の営農課に行くんです。 この土地から発信しないといけない、環境を復興させるためだと説明しました。しかし、 「大 桃さん、無理ですね、農家じゃないから」と言われました。農家には資格がいることを知り ませんでした。私は小さい頃から 18 歳まで魚沼で育ったのに知りませんでした。 「お父さんは認定農家ですが、大桃さんは東京に住所があり、農業を 1 年に 150 日以上た ずさわれないでしょう」と言われました。私はできないのだ、とがっかりしました。農協職 員から 1 つだけ方法があると言われ、方法は農家である父がそれを借り受けるならできると 言われました。又貸しです。 これから農業を目指す人もここにもいるかもしれませんが、所有から利用へと言われてい ます。まだまだ敷居が高いのが日本の農政です。土地を借りようとした時、地域では高齢化 や耕作地放棄もあるのに、まだまだ借りることができません。 私は父に借りてもらって、なんとか自分でやろうと思いました。その土地がこれです。後 には山があります。写真は田んぼで雪が降っています。この年は雪が少なかったのですが、 今年は 2 メートルも雪が積もっています。この土地を借りて農業をすることになりました。 私がやりたかったのは、無農薬でお米を作ることです。その時も父に反対されました。無 農薬なんてとんでもない、農薬を使わなかったら米は取れない、と。無農薬でやったことが ないから嫌だ、と言われました。今までの農家は、どのようにして収穫量を増やすかで暮ら してきています。 その中で無農薬にすると、収量が下がります。それは収入が減ることに直結します。農家 にとって、そのことはすごく重要です。これから環境保全型の農業をする時に、農家に話し に行くと、反対されると思います。そんな趣味みたいなもの、と。 有機農法の耕作方法を、私は富山の農家の方から教えてもらいました。ヤギのふんを堆肥 にされていました。その人が方法を全部教えてあげるから 3 年は頑張りなさいと言いました。 私が農業で使った肥料は 3 つです。これは私が作った古代米です。苗興しをする農家を探 すのも大変でした。手前が古代米の苗で、うしろがこしひかりの苗で、色がまったく違いま す。 肥料は 3 つです。1 つは米ぬかです。ペレットと言われる粒状のものです。もう一つは炭 の粉です。多孔質で穴がたくさん空いていて、その中にバクテリアが繁殖しやすく、土壌改 良ができるのです。有機農業は草との戦いです。雑草を生やさないためには、米ぬかの油が 有効で、油が表面で膜を作り草がはえにくくなります。米ぬかは水と混じると色が濁ります。 すると太陽の光が入りにくくなり、草が生えにくくなります。とにかく、太陽の光が入った 途端に、雑草は生え始めます。日光をどう遮るかです。でも、苗には日光を与えなくてはな らない。これが有機農法では重要です。窒素、リン酸、カリも必要です。 私の先生はヤギの糞を使っていました。どうしようかと思ったら、家にシーズー犬がいま した。毎日糞をします。その糞を集めて持って行けるかなと思ったのですが、東京でそんな ことをしたら、臭いが大変です。苦情がきて、ワイドショーまで来てしまいます。 農協に行くと、有機肥料の本がありました。いろいろな糞がありました。鶏糞、牛糞など です。新潟県は地方競馬があります。ダイヤモンドホースという馬の糞があったので、それ を使おうかなと思ったのですが、父は「臭いぞ」といいました。私はタレントであり、ラジ オの仕事の時は、2~3畳くらい狭い部屋に入り、マイク 1 本を前にしてお客様と話します。 その時に、私から糞の匂いがしようものなら、「大桃美代子は糞臭い!」という噂が立って しまいます。芸能界は怖いところで、悪いうわさはすぐに広がります。良い噂は本当に広が りません。 この中は、私が農業をやっていることを今日、知ったという方が多いと思います。でも、 テレビを見て、ワイドショーで違うことで知っているという人もいると思います。良いこと って、テレビでは伝わりにくいのです。 噂がたってしまったら、私には死活問題だと思い糞はやめました。そのかわりに使ったの が魚です。粉砕し、乾燥させたものです。 農業をやる姿はファッショナルブ性がないため、女性が入っていくにはおしゃれでないの で、どうやったらおしゃれになるか、いろんなゴルフウエアを買い込んで、かわいくやるぞ と考えたのです。 その日は雨が降っていました。雨合羽を着て、作業した姿がこちらです。農協で売ってい るもので、ファッショナルブ性ゼロです。でも機能性 100 %。どんな風が来ても通しません。 自分が炭の粉をまくとき、風とともに付着しますが、最後に水で流すと、とてもきれいに 流れます。よくできたものです。 雨合羽では農業するとき、「おしゃれじゃないじゃん」と言われますが、ちゃんとした機 能があるのです。 このようにして田んぼを耕します。私は東京で乗っていた高級車を売りました。そして売 ったお金で、たくさんの農業機械を買いました。トラクター、田植機、稲刈り機などを買い ました。乾燥する機械が必要となり、それも買いました。すると、それらを入れる場所も必 要になり建物が必要となりました。 農業を始めることで出費が 1500 万円以上掛かり、設備投資が掛かることを知りました。 今も大赤字で進んでいます。 去年から「田んぼの学校」を始めました。小学生と一緒に田植えをします。田植えにはマ スコミの方がきます。田植え機を出そうと思いましたが、「大桃さん、手植えがいいな」と 言われました。マスコミでは絵になるかならないかが重要です。自分が楽しんで、田植え機 が植えているのでは絵になりません。子どもたちと一緒に田植えを行いました。地元の小学 生です。新潟県魚沼市というと、子供たちは農業体験をしていると思われがちですが、実は 農家の子は少なくなっています。実際田んぼに入ったことがない子どもが多いのです。そん な農業地域でもあるのに、学校では教育用の田んぼがありませんでした。 私の田んぼは、4 年間無農薬をしているので、生き物がとても多いです。その田んぼで一 緒に田植えしますか。というと、先生が、ぜひうちの生徒にも体験をさせてくださいと、子 どもたちと一緒に昨年はいろんな経験をしました。 田植え後 1 週間もしないうちに雑草がたくさん生えてきました。雑草との戦いです。たく さん草を抜きました。「草が生えてこないはずだったんじゃないの」と草の写メールを送っ たところ富山から先生が飛んできました。 「富山にない草だっちゃ」といいました。隣の県、 同じ日本なのにそんなことがあるのかと思いました。「クログアイ」という草でした。茎の 下に球がついていて、それを根こそぎとらないと、また草が生えてくるのです。 どうしよう、と聞きましたら、先生は「手でぬくっちゃ」と言いました。草取り作業を 5 月から 4 か月間行うことになりました。最初は小さいですが、苗が大きくなると目に刺さる ようになるのです。 雑草はこれだけでなく、いろいろな種類があります。ネコグルマという一輪車で 24 杯ほ どになりました。増えてきたものは雑草だけではありません。おたまじゃくしが一杯になり ました。私の田んぼは無農薬ですが、隣は低農薬です。生き物が明らかに違うのです。あぜ を1本はさんで、私の田んぼの方はおたまじゃくしで一杯です。たった 1 年で生き物が戻っ てくることにびっくりしました。草取りのとき、とても邪魔で気持ち悪く、トトロのマック ロクロスケのようでした。おたまじゃくしがとても嫌だったのですが、手が出て、足が出て、 私の稲に悪さをする害虫を食べてくれると思うと可愛くなり、触れられるうになりました。 カエルは朝株と株の間で寝ています。カエルは低温動物なので、温度があがるまで自分で 動くことが出来ないのです。動けずにいる可愛い姿も見ることができました。姿を見るだけ でニホンアマガエルとわかる人がいました。特徴として目の所に隈取りがあるのです。カエ ルが増えただけでなく、土壌改良のおかげでミミズも増え、するとモグラも増え、蛇も増え、 イタチやタヌキもやってきて、最後にトキが私の田んぼの 1 ㎞の範囲までやってきました。 生き物ってすごいなと思いました。あそこにはエサがあると分かると、皆がお話をしたかの ように、生き物が増えてきました。 生き物がどれだけいるのか調査をしました。ドジョウが水路に一杯でした。無農薬で変わ ったのは田んぼだけでなく、水路も変わりました。ヤゴ、フナ、コイも私の田んぼの周りに 沢山いました。子どもたちと一緒に生き物調査をしました。子どもたちは目に稲が刺さるの で、ゴーグルをしながら手伝ってくれました。 私の田んぼを調査をしましたが、隣の普通の農薬を使っている田んぼでは、6 月後半の一 番生き物の少ない時で 17 種類いましたが、私の田んぼでは 33 種類の生き物がいました。お よそ倍でした。これくらい違うのだと実感しました。 環境保全型を目指すと生き物があっという間に帰ってきます。絶滅危惧種もたくさんあり ますが、生き物に配慮をすると、すぐに戻ってくると感じました。 次に稲の開花です。1 つの稲が咲く時間はたった 2 時間です。小さく白く咲きます。この 姿が私は大好きです。7 月から 8 月頃によく見られます。それを狙ってやってくる生き物は スズメです。その対策にテグスや CD をぶら下げたりしましたが、とても足りずに、1 俵や 2 俵は食べられたと思います。 そして、実りの時期を迎えました。「大変だね、イモチが出たね」と言われました。稲が 黒くなる病気です。しかし「これは古代米の色です」と説明をしました。周りの人に迷惑を 掛けないと決めていました。上流の人が使った用水が流れてきます。用水は共有です。 もしイモチなどが出ると、用水と一緒に菌が移ります。イモチではないと証明するのは大変 でした。受粉したらどうするかと言われました。10 日間早めに植え、時期をずらして米作 りを行いました。それだけずらすと殆ど受粉をしません。 そして、稲刈りです。稲刈りの機械も買ったのですが、手刈りをしました。小学校の皆さ んと写真を撮りました。昔の人は苗半作、田んぼでできたものは田んぼに返せ、といいまし た。米ができて、籾殻を田んぼに戻し、来年の堆肥にして 1 年が終わります。 収穫した古代米は「桃米」という名前で販売しています。私に故郷で作り、売上の一部を 地震の義援金にしていましたが義援金は終了したので、今は災害対策本部に寄付をしていま す。「桃米」は日本一高いお米だと思います。私が東京と新潟を新幹線で往復して、作って いるお米です。200 グラムで 1500 円です。白米 2 合に対し、桃米スプーン 1 杯でまるでお 赤飯のようなおにぎりになります。 お赤飯の原形とも言われていて、2500 年前に日本に入ってきたお米とも言われています。 プチプチとした食感がたまらないのです。アンチエイジング(抗老化)にも効果があり、抗 酸化作用があります。アントシアニンが活性酸素を除去してくれます。食物繊維も多いので、 便秘の方にはお奨めです。 これは小松空港でみかけたほたる米です。ホタルは弱い生物ですが、ホタルが生きられる 環境でつくっているほたる米というコシヒカリは 5 キロで 2432 円で売られていました。近 年価値が高くなってきていますが、生き物が多いことが食の安心とも言われています。 お米は田んぼで作ることができます。田んぼは食料の生産基地と言われます。日本人のお 祭りはお米を中心として、その時期に何をするかなどを考えています。お正月は、お米で作 ったお餅が神様とのつなぎ役になり、そのパワーをいただくために、鏡餅を作り、15 日に 感謝を込めて食べます。 田んぼは生き物の住み家でもありました。たくさんの生き物が生きていて、私たちの生活 を支えてくれています。 自然のための役割もしています。田んぼの多面的機能で、田んぼは水を蓄え、流す浄化作 用もあります。また見ているだけで「ほっ」とできます。 私は皆様に分かっていただきたいのは、用水路の管理の重要さです。用水路が荒れるとも う一度元に戻すことは大変です。春にも秋にも用水路の管理をしています。だから、私たち は美味しいお米を食べることができるのです。 魚沼は美味しいお水があるから美味しいお米ができます。越後三山があり、そこからの雪 解け水で作るお米が美味しいのです。 また、山の保全にもなります。里を荒らさないためにも、森を観察することも必要です。 田んぼお米作りすることで、自分のエネルギーというか、育っていく物を食べて、自然の 循環を感じることができました。自分というのは、自然の一部でしかない、お天道様にはか なわないと思いました。 農業をすることにより、環境の大切さ、子ども達とのふれあいによって、つないでいくこ との大切さを感じました。 私の農業は地震の復興の姿を見ていただくことから始まりました。今は、それを超えて、 地域のものになってほしいと思います。 桃米を使ってケーキを作ったり、蕎麦を作ったり、六次産業化の流れもでてきました。も っと地域を元気にすることが私の願いです。そのためにタレントとして努力をしていきたい のです。 今日は、私の体験した農業の話とそれによって戻ってきた生き物の話しをしました。 どうもありがとうございました。 ・司会/ありがとうございました。 初夏の頃、花の緑があり、ツバメが飛んでいたり、そんな風景を美しいと思います。気持 ち良いとも思っていました。その風景を心に刻み、何かきっかけがあったら、その風景を取 り戻せたらいいなと思います。 つづきましては、大学生の里地里山での活動研究発表でございます。 今回の参加大学は、神奈川県内の里地里山で地域の方々と一緒になって活動されている学 校や里地里山の生物や植物などの研究をしている学校など、さまざまな里地里山での活動・ 研究を各学校の代表者に発表していただきます。 このコーナーのコーディネーターをご紹介します。 神奈川県内の里地里山において保全・再生に取り組んでいる、NPO 法人横浜里山研究所 主任研究員 吉武美保子さんです。よろしくお願いします。 ◎大学生の活動研究発表会 〔参加大学〕神奈川大学 農業サークルKAS、上智大学 地球環境学研究科、 東海大学 藤吉研究室、東京農業大学短期大学部 緑地生態学研究室 日本大学 造園・緑地学研究室、明治大学 応用植物生態学研究室 ・コーディネーター/大桃さんのお話はリアリティがあり、私たちの応援にもなったと思い ます。 ・司会/この後、学生の皆さん、よろしくお願いします。 ・コーディネーター/改めてこんにちは。 横浜までお越しいただきありがとうございました。今ご紹介いただきましたが、私も神奈 川のいろいろなところを歩かせていただいています。私自身は横浜の街中の里山に、普段は 携わっています。 早速ですが、最初は「神奈川大学の農業サークル KAS」から、平塚市土屋で地域の方と 一緒になり行った里地里山活動についてです。 ・神奈川大学/こんにちは。 私たちが所属している農業サークル KAS です。 まずは、KASの紹介からします。KAS は、Kanagawa Agricultural Society の頭文字からと りました。みんなで農業をしようと、集まった仲間で作りました。発表内容は、日頃の活動 についてです。平塚キャンパスの土地で野菜を作り、皆で食べています。 里山活動というのは、大学周辺でおこなわれている里山を蘇らせたいという、里地里山再 生プロジェクトの 1 つです。その内容としては、年間 4 回のイベントがあり、6 月、10 月に 稲刈り、脱穀、11 月中旬には収穫祭でもちつきなどしています。 田植えは里山にある 3 面の田んぼでおこないます。そのうち 2 面はお米、1 面はもち米で す。すべて手作業です。土の感触がとても良いです。どんな作業で田植えをしているかとい うと、みんなで列を作り向かい合わせになって作業を進めていきます。植える時、苗は数本 で良いのです。端から端へロープをつなぎ、それを目安に皆で呼吸をあわせ、1 列ずつ植え ていきます。そんな列の中には、カンザス大学の留学生もいます。実は手植えでも意外と列 は曲がりません。きれいにできるんです。手作業は大変ですが、終わった後の達成感がたま りません。 次は稲刈りです。黄金色の穂をつけた稲を刈ります。10 ㎝ぐらいだったのが 1m ぐらいに なって、5株位束ねてわらで結び運んでいき竹の竿をつないだやぐらに、天日干しにします。 大変な作業ですが、皆でやるとあっという間に終わり楽しいものです。 次は脱穀です。教科書で見たことがないような脱穀機をつかいます。「千歯こぎ」という ものですが、いくつもの鉄や竹の刃が付いていて穂をひっかけて実を落とします。 隣は、「足踏み式の脱穀機」です。ドラムを回転させて実を落とします。取れた実を唐箕 (とうみ)という、風をおこし、草とかもみを分別する機械です。手作業だと効率はよくな いと思いますが、けっこう楽しいです。動力のほうがあっという間に進みます。昔の機械、 千歯こぎ、足ふみ式の脱穀機はあっという間にやってしまいます。 最後は精米器にかけます。できたての新米をみんなで試食します。皆、「うまい!」と言 って食べます。本当においしいです。 最後に収穫祭です。私たちの通っている平塚キャンパスに集合し、収穫の成果を祝います。 メインの餅つきの準備ができるまで、キャンパス内を散策したりします。散策地は土屋の森 といいますが、この森では野鳥や平家蛍(ヘイケボタル)も見られます。6 月には平家蛍が 見られます。また背負っ子で薪を運んだりします。薪を背負って勉強する人はすごいと思い ますね。 皆が協力し、餅をつきます。若いといっても、終わったときは手も足もがくがくです。 それを越えて食べる餅は、本当においしいです。きなこ、あんこを付けて食べます。里山で 採れた野菜、きのこの入ったスープを里山のお母さんたちが作ってくれます。これもまたお いしいです。自分が関わって作ったものはとてもおいしく感じます。 次に、プロジェクト以外でも里山で活動しています。2008 年に生態系を保全するビオト ープという池をつくりました。一緒に作業してくれた研究室の人を呼んでいるので、ビオト ープについて紹介します。 ビオトープはもともとその地に生きていた生態系の空間をいいます。私たちは池を利用し たビオトープをつくることになりました。生き物が集まりやすく観察するために、5 メート ルくらいの浅い池を作りました。 里山は多くの生物がいるため、この池に生物が集まるようになりました。今では子どもた ちと生物のふれあいの場、観察をする場として使用、活用されています。 私たちが里山体験を通じて思ったのは、昔の人たちは自然との関わり方がすごく上手だっ たということです。薪を利用したり、ビオトープのようにため池を作ったり、生物との関わ りがとてもうまかった。 昔は手作業でおこなっていたので、人どうしのつながりも大切にしていたかのなと思いま す。私は卒業しますが、こういう活動を広めるため、少しでも参加したいと思います。私た ちの発表を終わります。 ・コーディネーター/ありがとうございました。 今の活動は地域の人たちと一緒になり、小さな子どもたちや海外の人たちとの活動が本当 に楽しそうでした。そういうところから、一緒、共に学ぶということがすごく良かったと思 います。多くの生き物をはぐくむ活動に期待したいと思います。 続きまして、「上智大学保健体育研究室」から秦野キャンパス内の里地里山フィールドで 行われている野外体験学習と環境教育について発表があります。 よろしくお願いいたします。 ・上智大学/「秦野キャンパス内の里地里山フィールドで行われている野外体験学習と環境 教育について」です。活動の主体としては地球環境学研究所という文科省から事業を受け、 持続可能な社会の環境教育の推進しているところです。 この取り組みがどのようなことか最初にお話しします。具体的には、体系的なグローバル 体験教育、様々な角度からの問題へのアプローチ、エコキャンパスの実現、体験型の導入、 シンポジウムの開催などであります。今回秦野での里地里山保全は、体験型の導入になりま す。 大学は四谷にキャンパスがありますが、実は秦野にも上智短大があり、そこに里山があり ます。7 ヘクタールくらいあり、そこを実際に「野外活動」という演習科目として授業が開 講されています。そのねらいがここにあります。 実際にどんなことをしているのかというと、四谷キャンパスでまず講義を 8 回受け、その 後 2 泊 3 日で野外体験型学習をします。その一環として、キャンパス内の里山の保全活動が 入っています。 1 日目はテント設営をし、里山内の動植物の調査、野外炊事をします。 2 日目は野外炊事、保全活動などです。雑木林の下草狩り、除伐や間伐、薪割り、チップ 作りもします。野外炊事、キャンプファイアなどを通し、ビバークをする人もいます。 3 日目は牛乳パックを利用したホットドック作り、最後はテントの撤収をします。 間伐や野外での調理を通し里山体験をします。私はこの事業に TA(ティーチングアシス タント)として参加しましたが、2 人(スタッフ)はお手伝いなどで活動に参加しています。 間伐などの里山整備を行い、間伐材で木のチップを作ります。実際には、里山整備をする前 と整備後では見た目もかなり変わります。 草刈りをした所にテントを張ります。間伐した木は沢山あり、これらの木はご飯を作るた めの薪にするのに、次の年まで乾燥させます。ネイチャーゲームは、秦野市森林づくり課や 葛葉の団体の方に教えていただきました。夜はナイトゲームやキャンプファイヤーを実施し ました。地元の方から葉っぱや木の実から、どの木なのか種類を教えていただきました。 この授業を受けた学生がどんな活動をしているかというと、1 つはソフィア祭実行委員会 で、エコな文化祭を目指しています。文化祭で排出される CO2 を考え、カーボンニュート ラルを目指し、どんぐり植林プロジェクトや整備をしています。これは秦野市の NPO の所 有の土地に、文化祭での収益の一部で苗木を購入し植樹をしました。また、エコ容器などを 学祭で採用したり、キャンドルナイト(照明を消しろうそくを灯す)をしています。 ソフィアローバースでは、体験型授業を通し、興味をもった学生のさらなる活動の場とし て、里地里山の授業で整備した授業とは別にしいたけの種付け、管理、収穫をしています。 会は OG や OB で作っているので、彼らも参加しています。また環境報告書も作っています。 ローバース活動はボーイスカウト、アメリカンの活動で森林整備などの経験も活かしていま す。 秦野市の植樹祭の取材もしました。環境学生会議もあり、学生が環境について話し合った りします。秦野キャンパスでの環境教育から得られたことです。実績として更なる学生の活 動を進め、興味のある学生を増加させました。今後は地域との活動が期待されます。 ・コーディネーター/持続可能な社会づくりとして、昨年開かれた COP10 でも良さをもっ と発信していこうとなりました。 皆さんの活動は体験型活動で、文化祭でも取り入れたそうですね。 これからの活動に広がりが期待できると思いました。 つづきまして、「東海大学藤吉研究室」から秦野市弘法山の雑木林での保全・管理活動と間 伐材の活用について発表があります。よろしくお願いします ・東海大学/こんにちは。 私たち、東海大学教養学部の秦野市弘法山における雑木林の保全活動についてお話ししま す。主な活動内容については、里地里山野外調査、間伐材の利用、啓発活動の4つです。 これらの活動を行うことで、自然と触れ合うことの大切さを学び、それを伝える活動をして います。 活動内容について、まずは雑木林の管理活動についてです。私たちは定期的な林内整備を 行い、良好な林内環境を整備することにしています。下草刈り、間伐などを行っています。 私たちは管理地などで動植物の生態調査を行っています。哺乳類と鳥類の 2 種類の調査結果 について報告します。 弘法山に生息する哺乳類は、ニホンジカ、イノシシ、アナグマ、狸、狐、ニホンザル、リ スなどです。 鳥類について、弘法山には多くの鳥が確認できます。メジロ、シジュガラ、モズ、アカハ ラ、オオタカ、カケスなどです。これらの調査結果は神奈川自然誌の研究報告として発表し ました。論文は展示会場に用意してありますので、よろしかったらご一読ください。 次に間伐材の利用についてです。弘法山に存在する樹木は、くぬぎ、コナラ、ミズキなど です。私たちは管理活動でこれらを伐採しています。ただ燃やすのではなく、新たな需要を 見い出すため、おもちゃづくりも行いました。木彫りの人形は樹木の幹や枝をつくり、私た ちが木を彫って形づくりました。羽子板は厚木市森林組合で板にしてもらいました。コマは 自分たちで形作りが難しかったので、外注でコマの形にし色付けしました。 これらのおもちゃ作りを行ったのは、近年減少している子どもたちの外遊びや、価値の低 くなった間伐材の復活を願って行いました。 その他にも、一般的なシイタケのホダ木としての利用や燃料として使う薪もあります。 啓発活動について説明します。調査の結果や制作物は啓発活動を用いて、より多くの人に 知ってもらうように活動しています。まず、自然観察会では、野外に生息する動植物の説明 や、実際に草花祭りをおこない、自然の楽しさを教えています。展示活動では、羽子板やコ マを作りを行い、自ら間伐材を利用して作ったおもちゃの楽しさを味わってもらいます。 また、管理地に設置した掲示板で弘法山ニュースを掲示してあります。このニュースは飾 るだけでなく、配布もあり多くの方が自然に興味を持ってもらえるように活動しています。 私たちの研究室ではこのような活動をこれからも継続し、自然から多くのことを学び、里 地里山保全の大切さを訴えています。 今回、間伐材を使って作った羽子板の実演を行います。 ~~羽子板遊びの実演~~ 羽子板はミズキやイヌシデなどで作り、樹木の種類によって音が違います。その音の違い も楽しんでください。これらのおもちゃの他にも展示にはガラガラや積み木もあります。 よろしかったら後ほどご覧ください。 ・コーディネーター/ありがとうございました。 羽子板を触らせてもらいましたが、重さが木によって全く違います。ムクロジの種を羽に しているようですが、それもつく時に音が違う、それを実感できました。また、雑木林の手 入れ、調査啓発活動という計画的活動をされているのが参考になる活動だったと思います。 続きまして、「日本大学造園・緑地学研究室」から横浜市の谷戸地において 10 年間行って きた希少植物の保全活動について発表があります。よろしくお願いします。 ・日本大学/よろしくお願いします。 私たちの研究室では自然保全などさまざまな研究活動をしていますが、今日は研究室の学 生が主体的におこなっている横浜市都築区の谷戸での活動を紹介します。動物園の計画が持 ち上がった際、保全方法は、開発予定地でシードバンク(植物種子の収集)を書き出すこと から始めました。 谷戸の位置は横浜市の市街地から 10km、多摩丘陵の南側にあります。土壌をまいて、復 元しようとしています。整備前は葦が沢山ありました。湿田を挟んで、水は 1 番田んぼの横 から側面を流れています。主な作業は除草、畦作り、枝打ちです。単純作業ですが、継続す ることが重要です。 これが作業風景です。研究室の関係者だけですので、大変ですが力を合わせています。先 生や先輩から、生物や植生管理についての説明を受け、道具の使い方を教わっています。現 場で実際に教えてもらうので、わかりやすく貴重な体験になりました。 楽しむことは沢山ありますが、継続することが大変です。これからもいろいろな企画を盛 り込みたいと思います。私は流しソーメンが楽しかったです。竹も自分たちで切り出してい ますが、途中でソーメンが詰まってしまいました。 この他、冬の焼き芋、夏のお茶会など、自分たちが企画するイベントがあります。 グラフは年別の活動回数です。平均すると 1 年 9 回、90 人ほど参加しています。今まで の活動で延べ 975 人の方に参加していただきました。活動内容は、谷戸の田んぼ、水路など にいる動植物の調査をしました。種類は 260 種ありました。 次に動物です。種類は 34 種、72 科ありました。ホトケドジョウやニホンアカガエルなど 希少種がいます。 谷戸の調査研究の一覧です。この他にも卒業研究が行われ、私も希少植物の研究をしまし た。ミズニラを研究する目的でしたが、やっていくうちにいろんな研究に発展していきまし た。 谷戸を管理して見えたことをまとめてみました。多くの植物が生存していたことは、土壌 まきだしにより分かりました。また 900 人あまりの学生は、谷戸管理のフィールドワークを 行いました。多用な生き物が生息していることは、谷戸環境に適した在来の動植物の保全に 寄与していることになります。希少種保全は難しい言葉ですが、この谷戸に出会ったことで 身近な問題と捉えられました。 これからも広範囲に地域のすばらしさを伝えていきたいと思います。 ご清聴ありがとうございました。 ・コーディネーター/ありがとうございました。 里山は人が適度に手を入れることで生物の多様性が育まれます。研究室で息の長い研究を することはとてもありがたいので、今後も調査をして教えてほしいです。 続きまして、「東京農業大学短期大学部緑地生態学研究室」から秦野市名古木の研究発表 があります。よろしくお願いします。 ・東京農業大学短期大学部/東京農業大学短期大学部から発表をします。 研究室と里地里山の関わりは大きく分けて 3 つあります。卒業研究、2 年次の演習、地域 の人や行政との協働で、小学生対象の自然観察も行っています。 卒業研究における過去の事例を紹介します。ほ乳類の調査は、ビオトープにセンサーカメ ラをしかけ、種数は名古木では 11 種確認されその中にクマもいました。 次に鳥類の調査で、5 科 60 種でした。 調査地は、畑が一番多く、針葉樹が少ないです。また、オープンスペースなのでチョウが 飛んでいます。ジャノメチョウの仲間が多かったです。アカハライモリは減少しているよう ですが、名古木の水辺では 400 種が確認されました。 次にクモ類の調査です。狭いところで神奈川県で確認されているクモの 4 分の 1 くらいが 確認されました。 かたつむり類の調査です。管理されている雑木林、されてない雑木林、杉林など 40 種近 く確認しました。一番多いのは放棄された果樹園内です。その要因として、下草やつる植物 におおわれていること、土壌水分でじめじめしたカタツムリの好む環境だということがいえ ます。 次に地域団体との共同、名古木と里山を守る会とビオトープを造成しました。イノシシが ほかの体についた寄生虫を落とすために泥浴びをする場所です。そこをビオトープとして造 成しました。ビオトープは名古木の生き物の里として、神奈川県に指定されています。アカ ハライモリ、アメリカザリガニなどの外来種はいません。 研究室としては、定期的に生き物調査などしています。今後、名古木地域で新たに 2 か所ビ オトープに指定される予定です。 名古木はトンボ類、水性昆虫、水辺環境がよくないと見られない生き物が多いです。生き 物の里の目的は、希少な水辺の生き物の環境教育の場、地域の自然景観への財産、住民の理 解です。また、シマゲンゴロウという生き物はビオトープで確認されました。もともとこの 地域には生息していたようですが、減少し、見られなくなりました。ビオトープの造成が進 めば、昆虫も戻ってくるのではないかと思われます。 里山での大学の授業、演習の結果です。今までの調査では哺乳類は 12 種、鳥類は 34 種、 など原種を確認しました。演習を実施した学生の感想です。「経験や知識を得ることができ た。」「根強い調査が必要と感じた。」「秦野の名古木を体験して自然をより好きになれた。」 これらのように、里地里山の教育的効果も表れているといえます。これからの課題として、 名古木の里山は放棄されている樹林が残っています。休耕地の管理が必要になっています。 しかし、生き物について、価値の高い里山管理と考えるとさまざまな生息環境や、それを いかした情報が必要です。 カタツムリ類の種類を確保するとしたら、放棄果樹園をどうするかが今後の課題です。 以上です。ありがとうございました。 ・コーディネーター/きめ細かな生物調査をしていただけるのは良いと思います。生き物が 増えることが、活動の中の楽しみにつながると言いと思います。調査結果がこれからの活動 にも反映されると良いですね。 最後になります。「明治大学応用植物生態学研究室」から川崎市黒川の耕作放棄地で行われ ている「黒川谷戸プロジェクト」について発表があります。よろしくお願いします。 ・明治大学/よろしくお願いします。 研修地のフィールドとしている黒川は川崎市麻生区にあります。小田急線はるひ野駅の近 くですが、住宅街が広がり、開発が広がりつつあります。黒川地区ではイチゴ、乳牛、導入 が盛んにおこなわれています。2007 年度から地元の方に協力いただきプロジェクトをおこ なっています。目的は地元農家と里山との関わりを学び、耕作放棄されている水田の再開と 水田環境など維持管理して利用することです。また、黒川の生物など環境の変化を調査して います。 黒川谷戸プロジェクトは大きく 2 つに分かれます。 プロジェクト1では、年間を通して活動しています。月 1 回、田んぼの作業と周辺での生 物調査をしています。 谷戸プロジェクト 2 は、昨年から始めた試みで全部で 3 回行いました。里山における生物 多様性が専門でない一般の学生に参加してもらい、里山の価値を認識してもらうことを目的 にしています。 田んぼでの作業です。6 月に田植え。水面に張った麻ヒモをたよりに、ハニ植えという植 え方をします。お米の品種は「祭り晴」です。病気につよく、倒れにくいという特徴があり ます。8 月頃は手作業で雑草を取ります。今年は猛暑の影響で雑草が多く、水田の外へ持ち 出すほどでした。10 月に収穫です。刈り取った稲を束ねることの難しさも実感しました。 12 月には収穫の祝い。お世話になった農家の方を招き、お祝いします。研究発表時には関 心を持っていただき、さまざまな意見をいただくことができました。 また、年明けには落ち葉たきをおこないます。近隣の雑木林から田んぼ一面を覆うほどの 落ち葉を集めました。落ち葉を集めることで里山を支えています。 ここから生物調査ニュースです。黒川に生息する植物・生物の知識を付けるために、春と 秋に植物の勉強会を行いますが、その際いろいろな発見があります。生物層の変遷を明らか にするために、水生生物調査をします。生物が多い 5 月に実施します。初夏にはホタルの調 査をします。4 つの地区をまわり、ホタルの詳細を記録します。ゲンジボタルが観察できヘ イケボタルもたまに確認できます。 冬と夏に 2 回専門家を招いて、鳥類の調査をします。4 つの班に分かれて調査をします。 次は谷戸プロジェクト2の説明を行います。このプロジェクトは専門でない一般学生も参 加します。第 1 回目は農業について、地元の農家に話してもらい、第 2 回目では農場建設と ホタルの関係を調べました。また黒川上地区と黒川下地区との違いも調べます。最後には地 元農家の方々が作った「お焼き」を食べながら終えました。 これまでのプロジェクトを通じ、研究室の活動フィールドを持つことで、里山の生態系に 対する関心が強まりました。継続調査で生物像の変遷と現状が分かりました。黒川における 里山と地元農家との関わりも理解できました。 今後に向けては、谷戸プロジェクトは 5 年めになるので、過去 5 年間の振り返りとデータ の整理をします。農場建設が周辺環境や生物層に与える影響を調べ、さらなる黒川の自然と 地元に対して考えていきます。 ・コーディネーター/ありがとうございました。 川崎でも耕作されている谷戸は少なくなっています。郊外部に残っている里山が都市部の オアシスとして、農業のあり方に踏み込んで地域の方と共に活動が続けられることをこれか らも期待したいと思います。 6 大学すべて終わりました。普段の活動ではなかなか地域住民や NPO でもじっくり観察 することはできません。しかし、大学生が関わることで、活動に広がりや深みが増すと思い ます。何より、若い世代の人が関わることで、里山が活気が溢れると思います。 続きまして、今発表していただいた学生さんたちに再登場していただき、シンポジウムの サブタイトルでもあります「未来に引き継ぐかながわの里地里山」をテーマに、発言してい ただきます。 準備の都合がありますので、少しお待ちください。 コーディネーター/それでは準備ができましたので、始めます。基調講演をしていただいた 大桃さんにも参加いただきます。 大桃さん/よろしくお願いします。 コーディネーター/これからは皆さんに短い時間ですが、2 つの質問を聞いてみたいと思い ます。今日たくさん里地里山の調査・活動などの発表をしていただきましたが、なぜこうい った活動に参加してみようと思ったのか。大学の研究室でも活動は選べます。なぜこういう テーマで活動をしてみようと思ったのか。また、参加した感想も各大学 1 分くらいでご紹介 ください。最初は神奈川大学からお願いします。 神奈川大学/きっかけは、神奈川大学平塚キャンパスには広大な土地があり、自然林があり、 自然豊かなところで活動しているが、以外と有効利用出来ていなかったからです。 大学に通っていても自然にふれあうことがない。そういう活動をやってみよう、面白そう だと。地方出身者も多いのですが、意外と体験したことがない人も多く、新鮮な体験ができ て面白そうだし、サークル活動の延長というか、一環として、地域の方との交流も含め初め てみました。 コーディネーター/いろいろな機具がありましたが、トウミなんか今、ないですよ。 神奈川大学/プロジェクトの 1 つとして、昔体験をしています。 コーディネーター/ありがとうございました。上智大学の方、お願いします。 上智大学1/僕はボーイスカウトをやっていて、日頃から課外活動を通じて、自然に関わる ことが多いです。環境問題にも関心を持ち、大学ですることがないかなと思っていたら、四 谷キャンパス以外に秦野にもキャンパスがあり、そこでやっていると知り、自分にもできる と思い、参加しました。 コーディネーター/他の方は? 上智大学2/もともと研究のプログラムで授業化される前のお試し、という形から入りまし た。それが良いと思ったので続けました。 コーディネーター/お試しは大事ですね。では、東海大学。 東海大学/東海大は発表も異色だったと思いますが、活動の根本は、楽しく活動をおこなう ことです。 近年では雑木林の管理の低下、間伐材の価値の低下、子どもの外遊びが減少している中、 子どもたちが楽しく活動できることと、間伐材の需要を高めることを両立し、何かできない かと考え、今年度は間伐材を利用した昔のおもちゃ作りを行いました。 子どもたちが楽しく遊べ、私たちも楽しく活動でき、継続できるように考えています。 コーディネーター/楽しいのね。 東海大学/はい、楽しんでいます。 東京農業大学/きっかけというか、授業のプログラムにありました。昔から環境などが好き だったので、そういう授業が受けられればとも思っていました。実際の演習では昆虫、植物、 動物に分かれます。自分は昆虫でした。昆虫がどういう場所に住んでいるのか、どうしたら それを保全できるか、1 年間をとおしてやった授業として非常に勉強になりました。授業で は、地元の小学校で環境教育もやっていて、参加はできませんでしたが、今後機会があれば 参加したいと思っています。 コーディネーター/昔から虫が好きだった? 東京農業大学/はい、ずっとです。 日本大学/私たちの活動は 12 年前に先輩がはじめました。先輩に誘ってもらったのがきっ かけです。先輩たちがつくったものを下につなげることが大切なことだと思っています。次 は僕が次の代につなげたいと思います。 コーディネーター/教科書のようなコメントですね。でも、大変だと思いませんでした? 日本大学/大変なんですが、研究室でやっているので、そこで仲良くなる人もいて、その意 味でも楽しい場です。 コーディネーター/チームワークですね。ありがとうございます。 明治大学/黒川谷戸プロジェクトは、研究室でのプロジェクトですが、放棄されつつある里 山の管理を自分たちのフィールドとして管理再開したら、環境にどのような影響があるのか を考えることがきっかけです。 コーディネーター/どうしてそれに入ろうと思ったの? 明治大学/生態学とかに興味がありました。授業でもやっていますが、生態学をやってみた いと、この研究室に入ることになり、黒川谷戸プロジェクトに携わることになります。 コーディネーター/頑張ってね。ちょっと伺います。皆さんが、これまで歩んできた人生の なかで、里山がそばにあるという環境で育った人はいますか。 里地里山の環境で育ってはいないけど、里地里山に興味を持って始めたのですね。こちら の会場にる地元の活動団体の方々と、そこが大きく違うかもしれませんね。参加者で 50、60 代の方々にとっては、懐かしいとか、自分たちが暮らしてきた環境だからやってきたという こともあるでしょう。若い世代はどちらかというと、体験を懐かしがるというよりは、勉強 から入っている人が増えているのかと思いました。大桃さん、若い世代の話を聞いてどうで すか? 大桃さん/農業系など自然環境系に進もうととすると、「君たち、えらいね」と言われませ んか?私も農業をやっていると言うと、「えらい!」と言われます。今、農業や環境という 言葉にくくられていますが、みんな楽しみながらやっていると思います。皆さん、すごく真 面目な人が多くありませんか。学校にいるもっと「はっちゃけた人」にもこの活動に入って きて欲しいです。茶髪で鼻ピアスをしているような、そういう人もどんどん入ってきて、こ ういう「はっちゃけた人」たちが参加しているんだ、と周りから言ってもらえるような、興 味深いイベントを企画して欲しいと思いました。 コーディネーター/ありがとうございます。でも、大学に行くとはっちゃけた人がいるので は?感想をいただきましたが、皆さんは学生ですね。まだまだ長い人生があります。社会人 になったり、学術を極める人もいるかもしれません。 次の質問は、新たな道を歩んでいくにあたり、里山と関わった日々を思い出し、これから どういう形で、あるいはどういう思いをもって、里地里山と関わっていきたいと思っている のか。できないかもしれないが、そういう思いを持って進んでいきたいという気持ちをぜひ、 聞いてみたいと思います。 明治大学/私は月並みですが、研究室の研究課題の谷戸プロジェクトで田んぼに入って活動 したいという気持ちがありました。もともと里山の自然に関心を持っていましたが、活動を 通しより興味を持ち、里山の生物多様性の大事さや活動する楽しさを、広く伝えたいと強く 感じるようになりました。 人々に関心を持ってもらうためには、正確な知識や興味ありそうな情報を出して、関心を 持ってもらうことが大事だと思います。大学や外部との交流なども必要だと感じたので、卒 業後はもっと普及活動に専念したいと思います。 具体的には、現在インターネットが情報の主流ですので、自分の工夫次第でインターネッ トで発信できるので、それらを使った発信をしたいと思います。また、地元で地域の方と情 報を共有したり、一緒に学ぶ活動が出来れば、楽しい人生が送れるのではないかと考えてい ます。 コーディネーター/ありがとうございます。次は日本大学の方どうぞ。 日本大学1/自分は里山が好きですが、他の方にも体験して欲しいです。将来、子供ができ たら同じ日本大学に入り、研究し、同じ感動を味わってくれれば良いなと思います。 日本大学2/将来は教師として、生徒たちに体験学習を行うにあたって、里地里山、谷戸な どで活動し、自然を身近に感じられる授業にできたら良いなと思います。 コーディネーター/ありがとうございます。次は東京農業大学です。 東京農業大学短期大学部1/将来は環境保全活動を通し、間伐作業や落ち葉焚きなどをやり、 少なくなっている生物のカタクリ、一輪草などを保全し、そこにくる岐阜蝶などの昆虫を保 全したいと思います。 東京農業大学短期大学部2/将来の目標はインタープリター(自然解説員)、自然観察指導 員など、環境分野に興味を持っているため、そちらに進みたいと思います。 そこで活動することで、人々に里地里山の自然環境に興味を持ってもらえるように頑張り ます。 コーディネーター/ありがとうございました。次は、東海大学です。 東海大学1/私は中学の理科の教員を目指しています。里地里山の活動体験から得たことを 学校教育に楽しく取り入れられたら良いと思います。ゆくゆくは私から影響を受けた子ども たちが世界中に広がり、どこかで行動に移してもらえたら良いと思います。 東海大学1/私が研究室で学んだことは、自然を楽しむことです。今後社会に出た時、揉ま れてストレスが溜まることがあると思います。そういう時に心の拠り所として自然を活用で きたらいいと思います。 コーディネーター/ありがとうございました。次は、上智大学です。 上智大学/私は大学院進学が決まっているので、里山を研究のフィールドにしたいと思いま す。上智大学は秦野キャンパスを整備してキャンプ場を作りました。「キャンプに行こう」 といえば友達は来るので、キャンプに誘って里山保全整備をさせたいと思います。 コーディネーター/ありがとうございました。次は、神奈川大学です。 神奈川大学1/進路としては考えていませんが、将来家庭を持ち子供ができたら、一緒に活 動し、自分も新たに学びつつ、子どもにも教えられたらと良いと思います。 神奈川大学2/私は里山でたくさんのことを学びました。里山には幼稚園生や小学生などの 小さな人材もいます。彼らが大きくなったとき、里山を保全できるよう私がこれからも感化 していきたいと思います。 神奈川大学3/里山活動は大人が中心でやっていますが、子供達につなげる火だね役として の活動に参加できたらと思います。 コーディネーター/ありがとうございます。力強い言葉で、里山活動に夢を与えてくれたよ うな気がします。では、大桃さん、みなさんにメッセージをお願いします。 大桃さん/今の話で感じるのは、価値観が変わってきているのだなということです。今まで は経済一辺倒で、高いものを豊に多く所有するという時代でしたが、それが変わり、自然で 何も持たなくても幸せと感じる人が増えています。 私は農業で感じていますが、自分が作った新米を炊いて、仏壇にそなえて食べるときは涙 がでるほどの喜びがあります。幸せって遠くにあるものではないと思いました。 自然の中で、それを感じられた人が多かったので、この活動が続いているのだと思います。 これからこの方々が世の中に出て、自然のすばらしさを感じ、魚沼にも来て、その前にちょ っと農作業をしてみるのはどうでしょうか。スイカを自分で割って食べると美味しいですよ。 その前にちょっと作業するだけで良いのです。そういう楽しみがあってもいいんじゃない か。今、女性たちで農業をやりたい人が増えてきています。職業として成り立つまでには、 いろいろな壁がありますが、楽しみとして、人生を豊かにする 1 つのツールとして里山、農 業があって良いのではないでしょうか。 それを感じられるような世の中が、多くなると良いなと思います。みなさん里山のことを 頼みましたよ。よろしくお願いします。 コーディネーター/力強いメッセージをありがとうございました。これにてシンポジウムは 終了となりますが、大学生の皆さんに大きな拍手をお願いします。ここに集まってくださっ ている方には、地域で活動されている方も多いです。これから里地里山を未来へつなぐ活動 に多くの方々が参加し、これからも活動が進むことを、私たちも期待しています。また、私 自身も参加して、このような場でお話をしていきたいと思います。会場で活動している方々 に対して、皆さん同士で拍手をお願いします。 大桃さん/棚田でお米を作りたいという人もいるので、よかったら今後は棚田の整備もよろ しくお願いします。地域の人とつながって世代を超えて、絆づくりもできると思います。里 地里山を整備するだけでなく、自分の心を鍛える訓練にもなります。ぜひ皆様もよかったら 新潟へ遊びにきてください。ありがとうございました。 ・司会/お誘いがありましたね。思わず「うん」と言ってしまった?すばらしいことですよ。 今日の発表も分かりやすく、好感が持てました。これからも新たなたくさんの発見と発表 を楽しみにしたいと思います。 今後のコーディネーターの行動、あるいは研究所としてはどうですか? ・コーディネーター/私たち横浜里地里山研究所では「里山と関わる暮らし」をテーマにし ています。それは町中では里地里山のことを考えるのは大変です。でも、食べている物、使 っているもの、暮らしの中から関わりを見つけていかないと、自然環境を残していくことが 難しい時期にきています。 これから暮らしの中で、みなさんも近くの野菜を食べるとか、国産の木を使うとか、でき る一歩を進めてください、私も取り組んで行きたいと思っています。 ・司会/これをもちまして、「平成 22 年度かながわ里地里山シンポジウム」はすべて終了し ました。長時間にわたり、皆様にもご協力いただきありがとうございました。