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半導体光増幅器チップへの注入電流増大を実現する 新しい温度制御方式

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半導体光増幅器チップへの注入電流増大を実現する 新しい温度制御方式
平成 22 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会
講演番号: 176
半導体光増幅器チップ
半導体光増幅器チップへの
チップへの注入電流増大
への注入電流増大を
注入電流増大を実現する
実現する
新しい温度制御方式
しい温度制御方式
C-3
A new temperature control method to increase injection current into SOA chip.
中原 康貴† グェン・トゥアン・アン† 杉浦 賢太† 坂野 将太† 上野 芳康†
Yasutaka Nakahara†Nguyen Tuan Anh† Kenta Sugiura† Shota Sakano†Yoshiyasu Ueno (E-mail: [email protected])
†電気通信大学 電子工学専攻
† Dep. of Electronic Engineering, Univ. of Electro-Communications
1. 序論
半導体光増幅器(SOA)を用いた全光ゲートは超高速光通
信を担うデバイスとして注目されている[1]。その中でもモジ
ュール化されていないチップ型 SOA は、汎用性が高いこと
などから研究が進められている。また、ゲート動作の高周
波化には高い位相シフト量と短いキャリア緩和時間を同時
に得られる点から、注入電流増大が効果的である。チップ
型 SOA を用いた全光ゲート実験では、
SOA 温度を一定に保
つため、温度調整器を用いて負帰還温度制御を行っている 。
しかし、実験中の SOA 注入電流増減時に、導波路への光カ
ップリングロスが長時間に渡り増大していた。またこの現
象は高注入電流時ほど顕著に現れ、高周波化の妨げとなっ
ていた[2]。本研究では、従来型温度制御方式でのカップリン
グロス増大の原因を解明し、新方式温度制御方式を用いる
ことでこの問題点を解消し、カップリングロスの増大を抑
制したので報告する。
2. 原理
従来型と新型の温度制御構成を図 1 に示す。両方式とも
SOA は台座(アルミ製)上部に固定され、下部に設置したサ
ーミスタで常時温度測定して負帰還制御している。負帰還
温度制御は、SOA からの発熱量(WSOA)をサーミスタで検出
し、その出力を温調機器でペルチェクーラの吸熱量に変換
し、サーミスタへ負帰還することで、SOA 近傍の温度を一
定に保つ。
従来型では SOA 注入電流の増減に伴い発熱量も増減し、
サーミスタ部へ負帰還するペルチェ吸熱量も増減する。そ
れに伴い台座へのペルチェ排熱量(WExhaust)が変動する。この
排熱量の増減により台座の熱膨張・収縮(Δl)を生じる(式 1)。
SOA 導波路への光カップリングには xyz 軸可変ステージに
固定された先球ファイバを用いている為、SOA 注入電流増
大による熱膨張が、カップリングロス増大の原因となり、
高注入電流の妨げとなっている。
∆l = α ⋅ l ⋅ ∆T
∆T ∝ W Exhaust ≒ W SOA + W peltier
…(式 1)
[ΔT:台座温度変動量, α:線膨張係数, l:台座長]
“新”温度制御方式では、SOA 近傍に発熱体として抵抗を
取り付け、抵抗の発熱量(WResistor)を調整し両者の総和発熱量
(WTotal)を時間的に一定に保つ。これにより、ペルチェクーラ
の排熱量が時間変動せず、台座が一旦熱平衡状態へ達する
と SOA 注入電流を増減しても熱膨張・収縮が生じずカップ
リングロス増大を抑制できる。
図 1 新・従来型温度制御方式構成図
側面図 (b)上面図
上面図]
従来型温度制御方式構成図 [(a)側面図
上面図
実験・
実験・結果
今回はカップリング精度を示す指標として、カップリン
グロスと反比例関係にあるSOA 導波路から先球ファイバへ
の自然放出(ASE)受光強度を用いる。また台座の上部・下部
計 4 点の温度上昇量を計測し、熱膨張量を算出した。ASE
受光強度と台座熱膨張量の時間変動量を図 2 に示す。また
実験中の WSOA, WResistor, WTotal を表 1 に表す。
WSOA を 100 から 430 mW(注入電流 100 から 300 mA)に増
大した時、従来方式では、Output 側の ASE 受光強度が平衡
状態に達するまで 150 分要し、ASE 受光強度は 28.9 dB 減少
しているのに対し、新方式では 5 分と短縮され ASE 受光強
度減少は 0.5dB 以下となった。
これは台座の熱膨張量が従来
型の3 µmに対し、
0.5 µmと1/6に抑えられている為である。
また SOA 発熱量減少時にも同様の結果が見られた。
3.
図 2 ASE 光強度・
従来型 (b)新方式
新方式]
光強度・台座熱膨張時間変動量 [(a)従来型
新方式
表 1 SOA・
左)従来型
従来型 (右
右)新方式
新方式]
・抵抗の
抵抗の発熱量と
発熱量と総発熱量 [(左
新方式
Time
[min]
WSOA
[mW]
WResistor
[mW]
WTotal
[mW]
Time
[min]
WSOA
[mW]
WResistor
[mW]
WTotal
[mW]
0–30
100
Non
100
0-45
100
430
530
31–140
430
Non
430
46-210
430
100
530
141-
100
Non
100
211-
100
430
530
4. 結論
新方式温度制御方式を用いることで従来方式よりも、実
験中のSOA 注入電流増減によるカップリングロス増大を抑
制することを実証した。以上より、本方式を用いることで
SOA への注入電流増大が可能である。今後は本方式を用い
た高周波ゲート動作実験を行っていく。
引用文献
[1] Y. Liu, E. et al., JLT, vol. 25, 103, (2007)
[2] 坂口淳氏 博士論文 chap.2, pp.23(2008)
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