...

分 野:環境分野 テーマ③:資源のリサイクルに関する技術・製品の開発

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

分 野:環境分野 テーマ③:資源のリサイクルに関する技術・製品の開発
分
野:環境分野
テーマ③:資源のリサイクルに関する技術・製品の開発
1.現状と技術的課題
1.1.現状
○ 循環型社会の形成のためには、廃棄物の再資源化が重要な要素となる。
○ 特に、少資源国である我が国にとって、使用済小型電子機器からのレアメタル等のリサイクル技術や、食品廃棄物
をエネルギーに利用するためのリサイクル技術の重要性が増している。
1.2.テーマ共通の課題
○ 効率的なリサイクルには、回収量の確保から分別・処理・精製といった全体のスキームに加え、再資源化
技術開発、解体しやすい設計などに配慮した取組など総合的な対応が求められる。
2.代表的な技術・製品の例示
使用済小型電子機器からのレアメタルリサイクル技術、食品廃棄物のリサイクル技術等
3.技術・製品開発の動向と課題
3.1.レアメタルリサイクル技術
1)概要 (参考1)
レアメタルは、「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、工業需要が現に存
在する(今後見込まれる)ため、安定供給の確保が政策的に重要であるもの」と定義されている。
経済産業省では、今後の需要や供給リスクおよび使用済製品の回収量確保の見込みから、「リサイクルを重点的に
行うべき鉱種」として、タングステン、コバルト、タンタル、ネオジム、ジスプロシウムの5鉱種を提案している。しか
し、レアメタルのリサイクル技術は全体的に開発途上である。
図表1 レアメタルの主な用途 (出典1)
2)代表的な構成図 (参考2)
レアメタルのリサイクルプロセスの概要とパーソナルコンピュータに含まれるレアメタルのリサイクルプロセスを
示す。(図表2、3)
図中には破砕のみ示したが、リユースやマテリアルリサイクル可能なものを機械や人の手で分別する。また、
基板のようなものは破砕・溶解・抽出・精製処理を経て、金属として再利用する。リチウムイオン電池は、専業
のリサイクル事業者によってリサイクルが実施される。
図表2 レアメタルリサイクルプロセスの概要
42
図表3 PCに含まれるレアメタルリサイクルプロセス例
3)中小企業の技術的参入可能性 (参考2)
レアメタルのリサイクルには、回収した電子機器等を効率的に解体する技術、基板を分離回収する技術、基板から効
率的に素子を分離回収する技術、目的金属を分別する技術、目的金属の回収処理技術など、極めて広い範囲の要素
技術が必要とされる。
現状は大手企業も含めて、技術が発展途上にあるが、大学や研究機関のシーズを活用することも含めて、独自のノ
ウハウや固有技術を有する中小企業による以下のような取組が期待される。
・ リサイクルのための粉砕技術
・ 使用済み機器に組み込まれた小型リチウムイオン電池を簡便に取り出す技術
・ タンタルの処理プロセスおけるフッ素やアンモニア処理の低コスト化技術
・ ネオジムの後処理技術で安価な抽出剤
・ ネオジム等の分離性能に優れた抽出剤
3.2.食品廃棄物リサイクル技術
1)概要
食品自給率が低い我が国では、食品廃棄物の再生利用(肥料化、飼料化、油脂・油脂製品化、メタン化、エタノール
化、炭化)を高め、優れた燃料・エネルギー化などリサイクル技術の開発が望まれる。2007 年 12 月に改正された食品リ
サイクル法で、食品関連事業者が取り組むべき再生利用の手法に、肥料、飼料、油脂および油脂製品、メタンに加えて、
エタノールおよび炭化して製造される燃料および還元剤が追加された。(ただし、飼料の原材料としての利用が優先)
これらに関する技術としてBDF(バイオディーゼル燃料)化技術とバイオガス化技術がある。
図表4 食品廃棄物等の発生量及び再生利用等の内訳 (2012 年度実績) (出典2)
食品リサイクル法で規定している用途別の実施量
再生利用の
区 分
実施量(その
他を含む)
炭化して
小計
肥 料
飼 料
メタン
油脂及び
製造され
エタノー
その他再生
油脂製品
る燃料及
ル
利用以外
び還元剤
食品製造業
12,676
12,289
2,186
9,227
518
320
33
5
387
食品卸売業
127
114
52
34
3
24
0
0
13
食品小売業
456
446
160
202
12
68
4
0
10
外食産業
食品産業計
390
377
138
114
7
114
2
1
14
13,649
13,225
2,536
9,578
540
526
39
6
424
単位:千t
2)代表的な構成図
(1) BDF(バイオディーゼル燃料)化技術
廃食油をBDF(バイオディーゼル燃料)としてリサイクルするプロセス概要を図表5に示す。分解工程では一例とし
て熱化学的変換によるエステル化など、触媒などを活用した低分子量化、水素添加などの化学的反応を活用する。
廃食油を原料としたBDFは、ディーゼル自動車の燃料として軽油と混合するような利用が行われる。また、ガスタ
ービンエンジンの燃料として利用することも可能である。ボイラーで灯油や重油との混合利用により発電または熱とし
て利用することもある。
43
図表5 BDFリサイクルプロセスの例
BDFは時間と共に劣化することが課題となっているが、この解決に向けて第二世代バイオディーゼル燃料化技術
の開発が進められている。次世代BDFでは廃食用油に加え、ラードや魚油などの動物油も原料として利用すること
が可能となる等、今後は活用範囲が広がることが見込まれる。(参考3)
(2) メタン(バイオ)ガス化技術
食品廃棄物等を、種々の嫌気性微生物の働きによって分解(メタン発酵)し、生成したメタンガスをガスエンジンや
ボイラーで都市ガスと混合または代替利用し、発電または熱として利用する。
図表6 メタン(バイオ)ガスリサイクルプロセスの例(参考3)
3)中小企業の技術的参入可能性
すでに、化学系のノウハウを持つ中小企業による取組が見られる。コストの低減を含めた、より付加価値の高い技術開
発への取組が期待される。また、コストの低減のためには、材料の安定的な確保が必要であり、そのためのビジネスモ
デルの構築が重要となる。
4.市場動向
○ レアメタルのリサイクル
国は、今後レアメタルを含む使用済み製品の排出量が大幅に増加することを見据え、現段階から使用済み製品の回
収量確保やリサイクルの効率性の向上といった課題の対応策を講じることにより、2010 年代後半にはレアメタルのリサイ
クルが経済的に成り立つ状況を目指していくこととしている。(参考4)
また、2013 年 4 月には、使用済小型電子機器等の再資源化を促進するため、小型家電リサイクル法が施行された。
同年 5 月に環境省が実施した自治体アンケートによると、74.9%の市区町村(人口割合で 89.7%)が参加を前向きに検
討しており、うち 19.6%の市区町村(人口割合で 26.1%)がすでに実施中である。(参考5)
○ 食品廃棄物のリサイクル
2009 年 9 月に施行されたバイオマス活用推進基本法に基づき策定された国の「バイオマス活用推進基本計画」
(2010 年12 月に閣議決定)では、食品廃棄物の利用について、飼料や肥料等への再生利用推進の継続に加え、メタン
発酵等によるエネルギー利用を拡大することにより、利用率を2007 年の27%から 2020 年に40%に高めることを目標に
している。
5.関係する主な法令
○ 循環型社会形成推進基本法
○ 資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)
○ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
○ 使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)
44
○ 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)
○ バイオマス活用推進基本法
など
6.参考文献・引用
○ 参考文献
参考1) レアメタルのリサイクルに係る現状(経済産業省、2011 年 11 月)
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0003198/015_04_00.pdf
参考2) 産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会 レアメタルのリサイクルに係る中間取りまとめ
(経済産業省、2012 年9月 25 日) http://www.meti.go.jp/committee/summary/0003198/report_01.html
参考3) 廃棄物系バイオマス活用ロードマップ(環境省、2013 年6月)
https://www.env.go.jp/recycle/waste/biomass_roadmap/katuyo_roadmap.pdf
参考4) 資源循環ハンドブック 2013 法制度と3Rの動向(経済産業省、2013 年6月)
http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/pamphlet/pdf/handbook2013.pdf
参考5) 小型家電リサイクル法に関する自治体アンケート調査結果(環境省、2013 年6月 28 日)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=22548&hou_id=16831
○ 引用
出典1) 資源循環ハンドブック 2013 法制度と3Rの動向(経済産業省、2013 年6月)
http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/pamphlet/pdf/handbook2013.pdf
出典2) 食品廃棄物等の発生量及び再生利用等の内訳〔平成 24 年度実績〕(農林水産省、2014 年3月 31 日)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syokuhin/pdf/h24_zentai_suikei.pdf
45
Fly UP