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【高等学校の部】 熱と音のエネルギーの相互変換について 県

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【高等学校の部】 熱と音のエネルギーの相互変換について 県
【高等学校の部】
熱と音のエネルギーの相互変換について
県
熊本県立熊本工業高等学校 物理部 1 研究の動機
レイケ管とよばれ、写真のように、数枚重ねた金網をチューブ内に入れて加
熱すると、非常に大きな音を発する現象が知られていた。音が出る原因は管の
中に生ずる対流であるとして説明されていた。しかし、加熱中には音は出ず、
加熱をやめて数秒後に音が出ることや、金網の両面に温度差があるときに音が
出ることが分かり、対流ではなく金網の中の熱サイクルが原因ではないかと疑
問を抱き、詳しい実験をして音が出る原因を調べた。
2 研究の方法
実験は、はじめ積層金網をバーナーで加熱して行ったが、音が出
たり出なかったりと不安定であった。試験管のような閉管を横にし
ても発振することがわかったので、定量的で再現性のある測定が出
来るように、多数の細管があるセラミックを熱交換器として、電熱
線で加熱する装置を作り、試験管を使って発振と温度勾配の関係を
詳しく調べた。温度変化は、熱電対によるデジタル温度計で、発信
波形はマイクでコンピュータにリアルタイムで取り込み解析した
(実験Ⅰ)。また、熱サイクルが発振の原因であるのならば、その逆
サイクルとして、レイケ管に音波を送り込むことにより、熱交換器
の両端に温度勾配を生じるはずだと考えた。右の写真のように、レ
イケ管の実験で使ったガラス管の一端をゴム栓で閉じ、他端にトランペット
スピーカー用の 30W のドライバーを取り付けて正弦波を送り出す装置をつくっ
た。この中に、細いビニールチューブを多数束ねて円柱状にしたものを熱交換
器として入れ、その両端の温度を熱電対で測定した(実験Ⅱ)。
3 研究の結果と考察
9 / 1 3 No1 太 試 験 管 L1 9 5 m m 気 温 2 5 ℃ 5 0 V電 流 3A
60 0
実験Ⅰの結果、レイケ管の中では、熱エネル
ギーが音の振動エネルギーに変換されていること
が確認できた。たとえば、右のグラフは、一定の
温 度 (℃ )
50 0
40 0
高温側
低温側
温度差
30 0
20 0
電流をヒーターに流したときのセラミックの高温
10 0
側と低温側の温度変化を示している。このグラフ
時 間 (秒 )
0
1
31
61
91
1 21
15 1
181
211
と、発信波形の図を比較すると、発振開始直後か
ら温度上昇が緩やかになっていることから、ヒー
ターに加えている熱エネルギーの一部が音のエネ
ルギーとして持ち去られたためと思われる。また、
開管を横に倒しても発振させることに成功し、管の中の対流が発振の直接の原因ではないことを証
明できた。この際、セラミックの温度勾配は、定常波の節に近い側が高温になっている必要がある
ことも確認できた。さらに、レイケ管の発振部の構造と温度勾配があることが、スターリングエン
- 128 -
ジンの構造によく似ていることから、レイケ管の発振部では、スターリングエンジンと同じ熱サイ
クルによって熱エネルギーが、音の振動エネルギーに変換されているのではないかと考えた。すな
わち、レイケ管の発振部では、温度勾配がある細管の中の空気が熱エネルギーをもらって、加熱-
膨張-冷却-圧縮の熱サイクルをくり返しているものと思われる。また、セラミックの位置を試験
管の底から口の位置まで移動させてみると、試験管の閉端から、1/3 付近でしか発振しないことが
わかった。熱サイクルが発振の原因だとすると、節から 1/3 付近で熱サイクルの効率が最もよく、
熱エネルギーが音のエネルギーに効率よく変換されていると推測できる。実験Ⅱでは、予想どおり
音波の振動で熱交換器の両端に温度差を生じた。その原因が実験Ⅰの逆熱サイクルであることをく
わしく確かめるために、次の実験をした。
⑴ 熱交換器の位置と温度差の関係を調べる ⑷ 音波の振動数と温度差の関係を調べる
⑵ 定常波の節の左右で温度勾配の向きが逆 ⑸ 熱交換器の長さと温度差の関係を調べる
転することを確かめる ⑹ 熱交換器の細管の断面積と温度差の関係
⑶ 音の強さと温度差の関係
逆サイクルも節から 1/3 付近のところで最も
効率よくはたらき、熱交換器の内部で効率よく
熱交換器の位置と温度差の関係のグラフ(赤左端 青右端 緑平均
34mm X=30mm 290Hz 24V 1.2A
温度変化(℃)
10
熱輸送が行われ、両端の温度差が最も大きくな
10
8
8
6
6
4
2
4
2
0
るはずである。このことを、⑴の実験で熱交換
-2
0
-2
-4
-6
-4
-6
-8
-8
-10
器の位置を少しずつ移動させながら調べた。そ
180秒間)
34mm X=150mm 290Hz 24V 1.2A
温度変化(℃)
0
20
40
60
80
100
120
140
160
-10
180
0
時間(S)
節から3cm
20
40
60
80
100
120
140
160
180
時間(S)
節から15cm
の結果、節と腹の間隔の約 1/3 付近で両端の温
節
度差が最も大きくなっているのが確認できた。
腹
34mm X=60mm 290Hz 24V 1.2A
温度変化(℃)
⑵の実験では、熱交換器を、節をはさんで 2cm
にあるときと、左にあるときとでは、温度差の
10
8
6
8
6
節から24.5cm
4
ずつ移動させて、熱交換器の左右の面の温度
差を測定した。その結果、熱交換器が、節の右
34mm X=245mm 290Hz 24V 1.2A
温度変化(℃)
節から6cm
10
4
2
2
0
-2
0
-2
-4
-4
-6
-6
-8
-10
34
-8
-10
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
0
20
40
60
80
100
120
時間(S)
節に近い側の面の温度が、腹に近い側より高く
なっていることが分かった。すなわち、予測し
たとおりに逆の熱サイクルによって、腹側から
節側に向かって熱の輸送が起こっていると思わ
れる。⑶の実験では、音の強さに応じて温度差
も大きくなることが確かめられた。⑷の実験で
160
180
時間(S)
2 節の左右で温度勾配の向きが逆転することを確かめた
プラス・マイナスが逆転して、常に熱交換器の
140
37
逆カルノーサイクルによって、定常波の腹から節に向かって熱輸送が行われ、
熱交換器の節側が高温、腹側が低温になる
節の左右での熱交換器両端の温度差と平均温度
温 度 差 及 び 7 0 7 H z λ = 4 9 .2 c m 節 の 間 隔 2 5 c m
熱交換器両端温度差
平均温度℃
熱交換器の平均温度
30
20
10
0
-1 0
-8
-6
-4
-2
0
2
4
6
8
10
12
14
-10
-20
-30
腹
右面が高温
節
左面が高温
腹
右面が高温
-40
節 の 位 置 を 原 点 と し た 熱 交 換 器 の 位 置 cm
3倍振動のスチロール写真
は、共鳴振動数で温度差が最大になることが確
かめられた。⑸の実験では、熱交換器の長さは、
熱サイクルが最も効率のよい場所に収まるほどの長さがあればよいことが分かった。⑹の実験から、
振動する空気と、細管壁との熱のやり取りで熱輸送が起こるので、熱交換器の細管の断面積が小さ
くて、空気との接触面積が大きい方が温度差は大きくなることが確認できた。以上の実験Ⅰによっ
て、レイケ管から音が出るのは、熱交換器の中の空気に熱サイクルによる振動が起こるためである
と言えることと、実験Ⅱによって、音波を送り込むと、逆の熱サイクルによる熱輸送も起こること
が確認できた。
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