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メタ言語否定と関連性理論
Nara Women's University Digital Information Repository Title メタ言語否定と関連性理論 Author(s) 吉村, あき子 Citation 英語青年, Vol.146, No.7, pp.438-439,441 Issue Date 2000-10-01 Description URL http://hdl.handle.net/10935/894 Textversion publisher This document is downloaded at: 2017-03-29T16:29:42Z http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace 438 r 特集:関連性理論 メタ言語否定 と関連性理論 吉 村 あき子 n( 1 9 85 )に よって、 ( 1 ) メタ言語否定 は、 Hor のよ うな真理条件的内容 を否定す る記述否定 とは 異 な り、( 2)のよ うな 「 先行発話 の持つ様 々な要 因に基づいて、その先行発話 に異議 を唱 えるもの ( IobJ e C tt OU)である」 として導入 された。 (1) W edl dn' ts e et hehl ppOpOt a ml -WeS a w t her hl nOC e r OS e S (2) a I ' m nothl Sda ug ht e r -he' smy f a t he r . b. The kl ng OfFr a nc ei s n' tba l dt he r eI SN' Ta nyki ngofFr a nc e. C. He rdi s s e r t a t l On l SnoteSOTe r i c; l t ' se s oTERI C. d. Idl dn' tma na get ot r a pt womonGEESE- Ima na ged t ot r a pt wo monGOOSES e Gr a ndmai s n' tf e e l l ngl ous y, Johnny, s hel Sl ndl S pOS ed 一方、Car s t on( 1 996,1 99 8a,b)は、一般 にメタ 言語否定の特徴 として挙げ られ る 5つの特徴、即 ち( A)対照強勢 を伴 う矛盾 のイ ン トネーシ ョンを 持 つ、( B)対応す る肯定発話 の返答 として機能す C)再解釈 がな され る、( D)字義通 りの意味 る、( E)notの作用域にある では論理的矛盾 になる、( ものは非明示的エ コー特性 を持つ、の うち本質的 E)だけであると主張す る。例 えば ( 3 )の なのは ( バ ー スデー カー ドの例 は、 発話 ではないので、 ( A)の矛盾イ ン トネーシ ョンも伴 わず ( B)の肯定 発話 の返答 で もない。( 4)の順序 が逆転 した例 で は( C)の再解釈 はな され ない。( 5 )の例 では ( D) の矛盾 も生 じていない。 (3) 表書 :Thl SBi r t hda yCa r dl SNOT f r om oneofyoura dml f e r s 中身:I t ' sf r om TW O ofyoura dm lrerS Ha ppy】 】 i r t hda yf r om bot hofus . (4) Maggl e ' spa t r l Ot l CAND qui xot l C;not pa t r l Ot l COR qul XOt l C (5) He does n' tne e d FOUR M ATS;he ne e dsM ORE FAでS そ して ( E)のエ コー特性 は、全てのメタ言語否定 2 2 の例 に当てはまる、 と Car s t on は主張す る。 本稿 では基本 的 に このエ コー分析 を採用 す る が、 この特徴付 けは、そのエ コー表示に伴 う何が 否定 されているのかについては、何 も述べていな いOそれは、綴 りや発音、前握 など多様 だが、エ コー表示に関わるものであれば何 でもメタ言語否 定の対象 になれ るわけではないO例 えば、真理条 6 )の よ うな先行 発話 の 件 に関 わ る もので も、 ( e xpl l C a t ur eのエ コー否定 は、普通 メタ言語否定 か ら排 除 され るが、 先 の ( 2b)のよ うな 「前提」 はメタ言語否定の対轟 になることができる。 (6) A. M a r ys e e msha ppyt he s eda ys B・ Shei s n' tHAPPY・ ,s hej us tput son abr a vef a c e. 一方、次 の ( 7A2 )が示 しているよ うに、i mpl l C a t ur eは、 メタ言語否定の対象 にはなれ ないo (7) A, ISml t hdoe s n' ts e em t oha veagl r l f r l e ndt he s eda ys B, Heha sbe e npa yl ngal otofvI S l t St O Ne w Yor kl a t e l y ( - Hehasa gi r l f r l e ndl nNe w Yor k. ) Heha s n' tbee npa yl ngal otofvISA2: l i t st oNe w Yor kl a t e l y;he ' sbe e n pa yl ngal otofvI S l t St he r el nOr de r t os e ehl Sa c c ount a nt . さらに、上記 ( 2a )のよ うな父 と娘 の例 な どにお いて否定 されているものは何 か。このよ うな側面 を予測するためには、 メタ言語否定の対象 になる ものの規定が必要であるよ うに思 われ るo Ca r s t on( 1 9 98 b)は、「 話者 によって communlc a t e され る想 定 は、 e xpl l C a t ur eと l mpl l C a t ur e の 2 つ に分 かれ る。 Sper be r良 W l l s on ( 以下 S&W 1 9 86 )による e xpl l C l tの定義は、『 発話 U によって communl C a t e され る想定は、それが U によって コー ド化 された論理形式 の発展 ( de ve 1 opme nt )であ るな らば、 そ してその時 に限 り、 e xpl l C l t( 即 ち expl l C a t ur e )であ る』 とい うもの で、 i mpl i c i tの定義 は、 発話 U によって c omxpl l C l tでない ものは、 munl C a t e され る想 定 で e l mpl l C l t【 従 って i mpl l Ca t ur e】である」 とまとめ て い るO そ して、 この e xpl i c a t ur eと l mpl l C a の区別 は 、c o mmu n i c a t e された想定 にのみ t ur e 適用 され るoS氏w ( 1 98 6 / 95 )は、 この c ommuOn とい う用語 で、( まわ りにあ nl C a t ed as s umpt l る様 々な情報 の中か ら)「 聴者 が取 り上げ て くれ るよ うに話者 が意図 していることを話者が明 らか THE RI SI NG GENERATI ON,Oc t o be r1 ,20 0 0 に した想定 を意味す る」。要す るに、聴者 に伝 え ようとしている意思 を、話者がはっき り示 した想 定のことである。 e xpr e s sされ た命題 は必 ず しも c ommunl C a t e され るわけではない.例 えば ( 8 )のメタフォ リカ ommunl C a t e してい るのは、「 息子 ルな発話 が c が子豚 である」 とい う e xpr e s sされた命題 ではな く、「汚 いけれ どかわいい」 といった よ うな 1m pl l C a t ur eである。裏切 った友人に関す る ( 9 )のア イ ロニカルな発話 について も同様 である。 (8) Mo t he rt os o n・Youar eapl le g t (9) Hel Saf inef r l e nd. 上記 のよ うな例 が示 していることは、関連性理 論が取 る発話解釈 の認知処理 プロセス とい う視点 か ら見 る と、何 らかの言語形式 を用 い るこ とに xpr e s s されていても、c ommunl C a t eさ よって e れていないもの、つま り話者 が聴音 に伝 えようと 意図 していないものが存在することが明 らかにな る。(ここで e xpr e s sは 「ある言語形式 を用 い る ことによって、必然的 に伴 われるものは、その言 xpr e s sされている」 とす るO ) 語形式 によって e メタ言語否定 によって否定 され るものは、 まさ にこのエ コーの元 になるものによって、e xpr e s s されているが c ommuni c a t e されていないもので ある, と規定できる可能性 を示そ う。便宜上、エ コーの元 になっている想定が先行発話 であるよ う な、典型的なメタ言語否定に議論 を限定す る。 例 えは先 の ( 2a )は、( 1 0 )のよ うな大学 の若手 教官 A と新入生 Bの会話 に典型的 に現れ る。 こ のよ うな B の反応 に直面 した A は、 自分 が明示 的に伝達 しよ うとした 「 恩師 と B が親子 である」 とい うポイ ン トと異 なる部分 に異議 を唱 えた B に少 し面 くらい、B の自立心 のよ うなものを感 じ ることだろ うO ( 1 0) A: You r e s e mbl eMr .Yos h1 0kave r y muc h,whot a ughtmeEngl l S hi n my hl gh s c hoolda ys You mus t behi sda ught e r . B: Ⅰ ' m nothl Sda ught e r -he' smyf a t he r . ( -2a ) この例 で B が否定 したのは, B を概念化す るの に A が用 いた参照点構造 ( 所有表現)であるO参 照点構造 とは、概念化者がある対象 に意識 を向け る場合、それに近接す るよ り際立 ちの高 い別 の対 象 を参照点 としてメンタル コンタク トを取 る認知 プロセスで、図示す ると( l l )のよ うになるQ Vol .CXLVI . -N0 7 A◎ A◎ B は、父親 を参照点 とす る ( ll a )の概念化 の仕方 を否定 し、B 自身 を参照点 とす る ( llb)を採用す るべ きだ と A に反駁 しているのである。A が所 有表現 を用 いている以上、 この参照点構造 による 概念化 は e xpr e s sされていると考 えなければな ら ommuni c a t eLよ ないが、それは A が意図的 に c うとした想定ではないO相手 が明示的に心的表示 す ることを意図 したものではないのであるo 2b)も同様 であるO例 え 「前提」取 り消 しの ( ば、帽子 のデザイナーAと Bが、注文 を くれた 国王 の髪型 を確認 しなが らデザイ ンを考 えている 1 2)で、( 2b)は適切 に現れる。 架空 の状況 ( ( 1 2 )A Thekl ngOfEngl a ndl Sl ongha l r ed. Thekl ngOfSwe de nl SVe r yS hor t ha l r edandhal f ba l d. Theki ngof Fr a nc ei sba l d. B: Theki ng ofFr a nc el S n' tba l dt he r el S n' ta nykl ngOfFr a nce ( -2 b) 関連性理論 では、「 前提」 とい う特別 な意味概念 e nt a l L を仮定せず、それ に相 当す るものは伴立 ( me nt )であると見なされ るo伴立は、当該 の言語 形式 を用 いる限 りにおいて必ず伴 われるものなの xpr e s sされていると考 えられ る。 で、e しか し、伴立は c ommunl C a t e されるときもあ 1 3 B)の伴立 Ibought るが、されないときもある。( s omef r ul tは、( 1 3 A)に対する答 えの役割 をはた mpl l C a t ur e として c ommuni c at eされるo すi ( 1 3 ) A: Di dyoubuya nyf ul r t ? B Iboughts omea pr l C Ot Sa ndac oupl eofa ppl e s 一方、( 1 2A)の Theki ngofFr a nc el Sba l d の伴 立( 「前提」 )Ther el Saki ngofFr a nc eは、その発 話 の蘇 埋形式 の発展ではないので e xpl l C a t ur eで はな く、l mpl l C a t ur eで もない。 この伴立 をわ ざ わざ引 き出 して表示 して も何 の認知効果 も得 られ ず、労力が相殺 されないか らである。つま り、 こ の「 前捷」 は c ommuni ca t e されていないことに なるO ( 25ページ下段 につづ く) 2 3 ( 2 3ペー ジよ りつづ く) 従 って、「 前提」取 り消 しのメタ言語否定 にお いて も、否定 されているものは、そのエコーの元 になるものによって express されているが communl Cat eされていないもの、 とい うことになる。 2C, d,e)についても言 える。 全 く同様 のことが、 ( 以上本稿 では、関連性理論の認知処理 プロセス の視点か ら、メタ言語否定 によって否定 され るも のは、エ コーの元 になるもの( 例 えは先行発話 )に よって expr es s されているが communi cat e され ていないものである、 とい う統一的特徴づけを与 える可能性 を示唆 したo VoI CXLVI . -N0.7 t on,A ( 1 9 96 )"Me t a l l ngulStlC ( 参 考 文 献) 【 1 ]Ca r s Ne ga t l On a nd Ec hoI C Us e, "J.o f Pr a g mat t C S25 , 3 09 -3 0 [ 2]- ( 1 9 9 8 a )"Ne ga t l O n,` pr e s 1 1 ppOS l t l On' l O n, " Jo fL a ndt heSe ma nt l C S / Pr a gma t i c sDI S t l nC t guZ s L I C S3 4,3 0 9 -5 0 [ 3 ]- ( 1 9 98 b)Pr a gmal l C Sand l 0 W,PhD dl S S e r t a t 1 0 n, t heEx pL I C L t / Zm♪l Z C I EDI S t l ' T I C E UCL. [ 41Hor n,L ( 1 9 85 )"Me t a l l ng ul S t l CNe ga t l O n a ndPr a gma t l CAmbl gul t y, "Lg. 61 ,1 21 7 4. [ 5 ]La nga c k e r ,R.( 1 9 93 ). ' Re f e r e nc e Poi ntCons t r uc t i o ns, " Co gnlll V eLl n gu2Sl l C S4,1-38 [ 6 ]S皮W ( 1 9 8 6,1 9 95 ) Re l e vanc e Co mmunl C aE 1 0 T land Co g 7 Z 2 t 1 0 n,0Ⅹf or d. Bl a c kwe l l [ 7 ]吉村あき子 ( 1 9 9 9 )『 否定極性現象』英 宝社O in - ( 奈 良女子大学助教書 受) 2 5