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特別支援学級担任のための
『 ハンドブック』
平成27年3月
宮崎県教育研修センター
はじめに
宮崎県教育研修センターでは、毎年、特別支援学級を初めて担任する教師を対象とした
研修講座を開講しています。研修の参加者からは、障がいのある子供のために教師力を少
しでも向上させたいという強い思いを感じると同時に、学級経営の在り方、時間割の作成
方法、子供一人一人の教育的ニーズに応じることの困難さ、教育課程の編成や評価の在り
方など、通常の学級では経験しなかった様々な悩みや不安を耳にしました。
この悩みや不安は「初担任」だけではなく、特別支援学級を担任している多くの教師に
共通していることだと思います。ところが、そのような悩みを抱え業務に困難さを感じた
時、
すぐに相談できる同僚が校内にいるとは限りません。
そのような課題を解決するため、
宮崎県教育研修センターでは、平成22年度に「特別支援学級・通級による指導の教育課
程の手引き」を作成し、特別支援学級の制度や特別な教育課程の在り方等の内容を示すな
ど特別支援学級担任のサポートに努めてきたところです。
そのような中、国においても「インクルーシブ教育システムを構築するため個別の教育
的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することの重
要性」が示され、
「障害者の権利に関する条約」が平成26年1月に批准されるなど、障が
いのある子供に対する支援や特別支援教育の一層の充実に向けて大きな動きが見られてい
ます。
また、本県においても、平成17年度から平成26年度の10年間で小学校・中学校の
特別支援学級に在籍する児童生徒数は約2.5倍に、特別支援学級設置数は約1.5倍と
なっており、中でも特に、自閉症・情緒障がい特別支援学級が在籍数・設置数ともに著し
く増加しています。
このように、特別支援教育に対するニーズが一層多様化・複雑化する中、宮崎県教育研
修センターでは特別支援学級を担任する教師が、日常的に活用できるような資料を作成し
たいと考え、前回の手引きでもお示しした「教育課程の編成」に、新たな内容の「学級経
営」や「授業づくり」等を加えたハンドブックとしてまとめたところです。
本ハンドブックが、特別支援学級担任の専門性及び学級経営等に関する実践的指導力の
向上、更には、各学校における特別支援教育推進のための資料として活用されることを切
に願っています。
平成27年3月
宮崎県教育研修センター
【 目 次 】
第1部 「特別支援教育推進の
核となる特別支援学級」
■ 特殊教育から特別支援教育への転換 ‥ 1
■ 特別支援学級の位置付け ‥‥‥‥‥ 2
■ 管理職のリーダーシップによる
特別支援教育の推進 ‥‥‥‥‥‥‥ 3
第2部 「個性を輝かせる教育課程編成」
■ 障がいの状態や特性の理解
○知的障がい ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5
○自閉症(自閉症スペクトラム障がい) ‥‥ 7
○情緒障がい ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 9
■ 特別の教育課程 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥11
○知的障がい特別支援学級 ‥‥‥‥‥13
○自閉症・情緒障がい特別支援学級 ‥15
■ 学習指導の基本
○各教科等を合わせた指導
・日常生活の指導 ‥‥‥‥‥‥‥‥16
・生活単元学習 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥17
・遊びの指導 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥18
・作業学習 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥19
○領域別の指導
・教科別の指導(知的障がい) ‥‥20
・総合的な学習の時間 ‥‥‥‥‥‥21
・道徳 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥21
・特別活動 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥22
・外国語活動 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥22
・自立活動 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥23
■ 個別の教育支援計画の作成と活用 ‥27
■ 個別の指導計画の作成と活用 ‥‥‥29
■ 視覚障がいの理解 ‥‥‥‥‥‥‥‥30
■ 聴覚障がいの理解 ‥‥‥‥‥‥‥‥31
■ 肢体不自由の理解 ‥‥‥‥‥‥‥‥32
■ 病弱・身体虚弱の理解 ‥‥‥‥‥‥33
■ 言語障がいの理解 ‥‥‥‥‥‥‥‥34
■ 学習障がい(LD)の理解 ‥‥‥‥‥35
■ 注意欠陥多動性障がい(ADHD)
の理解 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥36
■ 特別支援学級・通級による指導の
教育の対象 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥37
■ 特別支援学校の教育の対象 ‥‥‥‥39
第3部 「魅力ある学級づくり・授業づくり」
■ 学級経営に関すること
○特別支援学級担任になって ‥‥‥‥‥40
○1年間の主な学級事務 ‥‥‥‥‥‥‥41
○新学期の準備 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥42
○始業式・入学式での配慮 ‥‥‥‥‥‥43
○学級経営案 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥44
○教室環境 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥45
○ティーム・ティーチング ‥‥‥‥‥‥46
○保護者との連携 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥47
○学級通信等 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥48
■ 指導計画等に関すること
○実態把握 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥49
○年間指導計画 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥50
○時間割 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥51
○教科用図書 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥52
○教材・教具 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥53
■ 交流及び共同学習に関すること ‥‥‥54
○交流学級担任との連携 ‥‥‥‥‥‥‥55
○学年や全職員での共通理解 ‥‥‥‥‥55
■ 評価に関すること
○指導の評価(まとめ) ‥‥‥‥‥‥‥56
○指導要録 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥57
○通知表 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥59
○引継ぎ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥60
■ 各種教育に関すること
○キャリア教育 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥61
○進路指導・進路学習 ‥‥‥‥‥‥‥‥62
○性教育(せいの学習) ‥‥‥‥‥‥‥63
○情報教育(ICT活用) ‥‥‥‥‥‥64
■ 支援に関すること
○校内支援体制 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥65
○校内就学指導(教育支援)委員会 ‥‥66
○教育相談 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥67
○関係機関との連携 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥68
○各種援助制度 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥69
参考資料
◆
◆
◆
◆
◆
◆
諸検査 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥70
合理的配慮 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥71
相談支援ファイル ‥‥‥‥‥‥‥‥‥72
個別の教育支援計画(参考例) ‥‥‥73
個別の指導計画(参考例) ‥‥‥‥‥77
県の施策と相談できる学校 ‥‥‥‥‥78
学校経営・学級経営上の課題解決に向け、以下の点を御参照ください。
Q1 管理職として、学校経営上の留意点はどんな内容がありますか?
P1からを参照してください。
Q2 特別支援学級の児童生徒はどんな状態像ですか?
P5からを参照してください。
Q3 特別支援学級の教育課程編成はどうしたらいいですか?
P11からを参照してください。
Q4 特別支援学級の1年間の学級事務はどんな内容がありますか?
P41を参照してください。
Q5 新学期の準備や始業式、入学式での配慮はどうしたらいいですか?
P42からを参照してください。
Q6 特別支援学級の時間割の作成はどうしたらいいですか?
P51を参照してください。
Q7 指導要録の記入や通知表はどうしたらいいですか?
P57からを参照してください。
第1部
「特別支援教育推進の核となる特別支援学級」
県内には、知的障がい及び自閉症・情緒障がいを対象とした特別支援学級があり、障
がいのある児童生徒が、生き生きと元気に学んでいます。
小学校・中学校において、障がいの有無にかかわらず共に学ぶ児童生徒が、お互いを
理解し支え合っていく共生社会を目指して、特別支援学級が特別支援教育推進の核とな
る取組を考えていきましょう。
「特殊教育」から「特別支援教育」への転換
学校教育法の一部改正により、平成19年4月から、これまでの特殊教育に変わり特別支援教育
がスタートしました。特殊教育では、障がいの種類や程度に応じ、特別な場で教育が行われていま
したが、特別な支援を必要とする一人一人の教育的ニーズに応じた教育を行う特別支援教育に転換
しました。
また、この教育の対象として、新たに知的な遅れのない通常の学級に在籍する学習障がい(LD)
や注意欠陥多動性障がい(ADHD)、高機能自閉症等の発達障がいのある幼児児童生徒が含まれ
ることになり、従来の特別支援学級や通級指導教室に加え、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、
中等教育学校及び特別支援学校のすべての学校において実施されることになりました。
特別支援教育の理念
特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援する
という視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活
や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。
また、特別支援教育は、これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく、知的な遅れのない発達
障害も含めて、特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する全ての学校において実施される
ものである。
さらに、特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその
他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるも
のであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味を持っている。
文部科学省「特別支援教育の推進について(通知)
」
(平成19年4月1日)
学校経営上の留意点
Point
■ 教師一人による支援から学校全体での支援への意識の向上(意識改革)
■ 学級担任や障害のある児童生徒本人を組織として支えるために必要な校内支援
組織の構築(組織改革)
■ 個々の児童生徒の特性を理解し対応する教員の指導力の向上(資質向上)
■ 各教科・領域の指導計画作成に当たっての配慮事項の検討と具体化(指導改善)
■ すべての児童生徒にとって「分かる」
「できる」を実感できる教育環境の整備
(教育環境の整備)
■ 特別支援教育についての児童生徒や保護者への理解推進(理解推進)
■ 児童生徒の安全確保と対応方針の確立(安全確保)
■ 外部の専門機関等との連携の推進(地域連携)
文部科学省「小・中学校におけるLD(学習障害)
,ADHD(注意欠陥/多動性障害)
,高機能自閉症の
児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)
」
(平成16年1月)
1
特別支援学級の位置付け
特別支援学級での教育が、児童生徒・保護者・教職員に理解されるためには、学校における位置
付けが明確に示されていることが重要となります。このことは、学校が特別支援教育を大事にして
いると発信することにもなり、保護者や児童生徒に安心感を与えるとともに、学校が保護者からの
信頼を得ることにもつながります。
また、各学校において、特別支援学級の教育を明確に位置付けるためには、管理職が特別支援教
育に理解を示し、学校経営ビジョンの重点目標や重点項目の一つに設定することや、学校全体で取
り組む体制を整備するなど配慮が必要となります。
教育基本法(平成18年12月一部改正)
(教育の機会均等)
第4条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人
種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、
教育上必要な支援を講じなければならない。
学校教育法(平成18年12月一部改正)
(特別支援学級)
第81条 幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校においては、次項各号のいずれかに該
当する幼児、児童及び生徒その他教育上特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対し、文部科
学大臣の定めるところにより、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うもの
とする。
2 小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒の
ために、特別支援学級を置くことができる。
1 知的障害者
2 肢体不自由者
3 身体虚弱者
4 弱視者
5 難聴者
6 その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの
3 前項に規定する学校においては、疾病により療養中の児童及び生徒に対して、特別支援学級を設け、
又は教員を派遣して、教育を行うことができる。
特別支援学級の教育
Point
◆ 特別支援学級は、障がいのある児童生徒の教育的ニーズに応える教育の場です。
◆ 特別支援学級では、児童生徒の可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するための基盤
となる生きる力を育てます。
2
管理職のリーダーシップによる特別支援教育の推進
特別支援学級の教育は、校内教職員の共通理解の基に協力や支援、協働の体制ができてこそ、児
童生徒が確かに育つよりよい教育が実現できます。そのためには、校内の教職員が特別支援学級に
対する正しい理解と認識を深めることがとても大切になります。
特別支援学級の担任は、児童生徒の確かな成長と可能性を追求する専門性が求められ、また、通
常の学級担任は、発達障がいのある児童生徒に対する基本的な理解と実践的指導力が求められてい
ます。
そこで、管理職がリーダーシップを発揮し、管理職や特別支援学級の担任が校内の教職員に対し
て、理解・啓発を積極的に行うなどの取組が校内の特別支援教育を推進することになります。
校長の責務
校長(園長を含む。以下同じ。
)は、特別支援教育実施の責任者として、自らが特別支援教育や障害に関
する認識を深めるとともに、リーダーシップを発揮しつつ、次に述べる体制の整備等を行い、組織として
十分に機能するよう教職員を指導することが重要である。
また、校長は、特別支援教育に関する学校経営が特別な支援を必要とする幼児児童生徒の将来に大きな
影響を及ぼすことを深く自覚し、常に認識を新たにして取り組んでいくことが重要である。
文部科学省「特別支援教育の推進について(通知)
」
(平成19年4月1日)
小学校学習指導要領 第1章総則第4の2(7)
(中学校学習指導要領 第1章総則第4の2(8)
)
障害のある児童(生徒)などについては,特別支援学校等の助言又は援助を活用しつつ,例えば指導につ
いての計画又は家庭や医療,福祉等の業務を行う関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成する
ことなどにより,個々の児童(生徒)の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織
的に行うこと。
特に,特別支援学級又は通級による指導については,教師間の連携に努め,効果的な指導を行うこと。
校内教職員に対する理解・啓発
Point
◆
◆
◆
◆
◆
職員の研修(特別支援学級担任や特別支援教育コーディネーターが情報提供)
配付物の利用(学級通信、学年通信、学校便り、特別支援教育便りなど)
職員会議・打合わせ会等
公開授業、研究授業、研修報告等
特別支援学級の授業を担任以外の教師が担当
管理職のリーダーシップ、こんな視点から
Point
◆
◆
◆
◆
◆
◆
学校経営計画の中に特別支援学級や通級指導教室をしっかりと位置付ける。
特別支援教育の基礎的な知識を理解し、教育課程の編成を担任だけに任せない。
担任以外の教職員も特別支援学級の児童生徒のことを理解している。
日常的に特別支援学級の児童生徒とその保護者とふれあう。
校内の教職員や児童生徒に対して特別支援学級の話題についてもよく取り上げる。
校内における支援体制を機能させる。
3
文部科学省「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)
」
(平成25年10月4日)
3 小学校,中学校又は中等教育学校の前期課程への就学
(1)特別支援学級
学校教育法第81条第2項の規定に基づき特別支援学級を置く場合には,以下の各号に掲げる障害の
種類及び程度の児童生徒のうち,その者の障害の状態,その者の教育上必要な支援の内容,地域におけ
る教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して,特別支援学級において教育を受けることが適当で
あると認める者を対象として,適切な教育を行うこと。
障害の判断に当たっては,障害のある児童生徒の教育の経験のある教員等による観察・検査,専門医
による診断等に基づき教育学,医学,心理学等の観点から総合的かつ慎重に行うこと。
① 障害の種類及び程度
ア 知的障害者
知的発達の遅滞があり,他人との意思疎通に軽度の困難があり日常生活を営むのに一部援助が必
要で,社会生活への適応が困難である程度のもの
イ 肢体不自由者
補装具によっても歩行や筆記等日常生活における基本的な動作に軽度の困難がある程度のもの
ウ 病弱者及び身体虚弱者
一 慢性の呼吸器疾患その他疾患の状態が持続的又は間欠的に医療又は生活の管理を必要とする程
度のもの
二 身体虚弱の状態が持続的に生活の管理を必要とする程度のもの
エ 弱視者
拡大鏡等の使用によっても通常の文字,図形等の視覚による認識が困難な程度のもの
オ 難聴者
補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度のもの
カ 言語障害者
口蓋裂,構音器官のまひ等器質的又は機能的な構音障害のある者,吃音等話し言葉におけるリズ
ムの障害のある者,話す,聞く等言語機能の基礎的事項に発達の遅れがある者,その他これに準じ
る者(これらの障害が主として他の障害に起因するものではない者に限る。
)で,その程度が著しい
もの
キ 自閉症・情緒障害者
一 自閉症又はそれに類するもので,他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のも
の
二 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので,社会生活への適応が困難である程
度のもの
② 留意事項
特別支援学級において教育を受けることが適当な児童生徒の障害の判断に当たっての留意事項は,
ア~オについては2(2)と同様であり,また,カ及びキについては,その障害の状態によっては,医
学的な診断の必要性も十分に検討した上で判断すること。
Point
特別支援教育推進のポイント
級の理解
◆ 専門性のある特別支援学級担当教員の適正な配置
◆ 特別支援学級の教室配置
◆ 児童生徒の教育的ニーズに応じた教材・教具の整備
◆ 全校的体制の整備(校内委員会の機能向上、支援の組織化等)
4
第2部
「個性を輝かせる教育課程編成」
知的障がい及び自閉症・情緒障がいを対象とした特別支援学級で学ぶ児童生徒が、学
校や地域社会において、個性を輝かせ楽しく過ごしてほしいと願います。
特別支援学級に在籍する児童生徒が、どのようなことに困難さを感じ、どの程度の困
難を抱えているのか把握して、それぞれの児童生徒の実態に合った指導や支援の在り方
を考えていきましょう。
障がいの状態や特性の理解
知的障がい
知的障がいとは、一般に、同年齢の子供と比べて、
「認知や言語などにかかわる知的機能」が著し
く劣り、
「他人との意思の交換、日常生活や社会生活、安全、仕事、余暇利用などについての適応能
力」も不十分であるので、特別な支援や配慮が必要な状態とされています。日常的には、自分の気
持ちや考えをうまく伝えられなかったり、聞いた内容をすぐに理解できなかったりすることがあり
ます。一つのことについて、時間をかけてゆっくりと覚えていくタイプです。また、その状態は、
環境的・社会的条件で変わり得る可能性があるといわれています。
知的機能とは、認知や言語などに関係する機能であり、その発達に明らかな遅れがあるというこ
とは、精神機能のうち、情緒面とは区別される知的面に、同年齢の児童生徒と比較して平均的水準
より有意な遅れが明らかにあるとされています。
適応行動の困難性があるということは、
適応能力が十分に育っていないということです。
つまり、
他人との意思の交換、日常生活や社会生活、安全、仕事、余暇利用などについて、その年齢段階に
標準的に要求される能力の段階まで至っていないということであり、特別な支援や配慮が必要な状
態であるとされています。
このように知的障がいの状態は、全体的な発達の遅れとして現れるということになります。この
障がいの多くは、胎児期、出生時及び出生後の比較的早期に起こります。発達期の規定の仕方は、
必ずしも一定ではありませんが、成長期(おおむね 18 歳まで)とすることが一般的です。
知的障がい特別支援学級の対象となる児童生徒の状態像
◆ 年齢段階に標準的に要求される機能に比較して、他人との日常生活に使われる言葉を活用しての会話
はほぼ可能であるが、抽象的概念を用いて複雑で論理的な思考をすることが困難な程度。
◆ 単純な比較的長い文章を読んで全体的な内容を理解し短くまとめて話すことが困難な程度。
◆ 家庭生活や学校生活における年齢段階に標準的に求められる食事、衣服の着脱、排泄、簡単な片付け、
身の回りの道具の活用などにほとんど支障がない程度。
知的障がいのある児童生徒に見られる行動等の特性
Point
◆ 習得した知識や技能が偏ったり、断片的になりやすかったりする。
◆ 習得した知識や技能が実際の生活に応用されにくい。
◆ 成功経験が少なく、主体的に活動に取り組む意欲が十分に育っていない。
◆ 実際的な生活経験が不足しがちである。
◆ 抽象的な指導内容より、実際的・具体的な指導内容が習得されやすい。
5
知的障がいのある児童生徒については、知的障がいの特性を踏まえて、次のような教育的対応を
基本とします。
① 児童生徒の実態等に即した指導内容を選択・組織する。
② 児童生徒が,自ら見通しをもって行動できるよう,日課や学習環境などを分かりやすくし,規則的で
まとまりのある学校生活が送れるようにする。
③ 望ましい社会参加を目指し,日常生活や社会生活に必要な技能や習慣が身に付くよう指導する。
④ 職業教育を重視し,将来の職業生活に必要な基礎的な知識や技能及び態度が育つよう指導する。
⑤ 生活に結び付いた具体的な活動を学習活動の中心に据え,実際的な状況下で指導する。
⑥ 生活の課題に沿った多様な生活経験を通して,日々の生活の質が高まるよう指導する。
⑦ 児童生徒の興味・関心や得意な面を考慮し,教材・教具等を工夫するとともに,目的が達成しやすい
ように,段階的な指導を行うなどして,児童生徒の学習活動への意欲が育つよう指導する。
⑧ できる限り児童生徒の成功経験を豊富にするとともに,自発的・自主的な活動を大切にし,主体的活
動を促すよう指導する。
⑨ 児童生徒一人一人が集団において役割が得られるよう工夫し,その活動を遂行できるよう指導する。
⑩ 児童生徒一人一人の発達の不均衡な面や情緒の不安定さなどの課題に応じて指導を徹底する。
文部科学省「特別支援学校学習指導要領解説総則等編(幼稚部・小学部・中学部)
」
(平成21年6月)
指導上の留意点
Point
① 興味・関心を取り入れた活動を準備し、意欲的に活動できるようにします。
② 活動の時間を十分にとって、達成感や成就感を味わうことができるようにします。
③ 手順や方法を分かりやすく示し、自分から進んで活動できるようにします。
④ 生活に結びついた具体的な活動を準備し、学んだことを生かせるようにします。
⑤ 繰り返しやスモールステップを大切にし、できることを増やし、自信をもたせます。
Point
授業構成のポイント
● 視覚的な資料提示
● 活動のルーティン化
● 全体像の提示
● 課題の精選
● 必然性のある課題設定
● 課題の難易度の調節
● 家庭と学校の双方における実践
● 地域の教育資源の活用
● 支援の軽減化
6
障がいの状態や特性の理解
自閉症(自閉症スペクトラム障がい)
自閉症とは、
「他人との社会的関係の形成の困難さ」「言葉の発達の遅れ」「興味や関心が狭く特
定のものにこだわる」ことを特徴とする発達の障がいです。その特徴は、3歳くらいまでに現れま
すが、小学生の年代まで問題がはっきりと見られないこともあります。中枢神経系に何らかの要因
による機能不全があると推定されています。
また、コミュニケーションや社会的な適応に困難を生じやすいことから、自分の状況を理解して
もらいにくく、表面的な行動に注目が集まりやすいため、誤解を受けることがあります。
なお、高機能自閉症とは、知的発達の遅れを伴わない自閉症のことです。アスペルガー症候群(ア
スペルガー障がい)は、知的発達と言語発達に遅れはなく、コミュニケーションの障がいが比較的
目立たない状態です。
【 自閉症(自閉症スペクトラム障がい)の特徴 】
● 他人との社会的関係の形成の困難さが見られる(社会性の障がい)
● 言葉の発達の遅れが見られる(コミュニケーションの障がい)
● 興味や関心が狭く特定のものにこだわる(反復的で常同的な興味・行動)
● これらの特徴が、3歳くらいまでに現れる
障がいの特性に配慮した指導上の留意点
Point
① 事前に学習の計画や活動内容を知らせておき、見通しをもてるようにします。
② 簡潔な言葉を遣ったり、視覚的な情報(具体物、写真など)を活用したりして、児童生徒
が理解しやすいように配慮します。
③ 児童生徒の言動には、多様な意味があることを理解し、意思を把握します。
④ 繰り返しのある活動をベースにしたり、活動内容と場所を一致させたりするなどして、
安心感をもたせます。
指導・支援の充実!こんな視点から
Point
◆ 刺激の少ない教室や場所を用意したり、個別指導や小集団による指導の場を適切に設け
たり、感情をコントロールできる場を設けたりするなど環境調整を図ります。
◆ 見通しをもたせ、活動の時間やきまり、順番等を意識する指導を行い、日常生活習慣の
形成を図ります。
◆ 具体物等の視覚的な教材を活用し、短文で表現して相手に伝えるなど、言葉の内容を理
解する活動を重視します。
7
自閉症のある児童生徒については、自閉症の特性を踏まえて、次のような教育内容・方法が考え
られます。
Point
【日常生活の技能を身に付けるための指導】
日常生活の技能を身に付けることは社会生活の基本であり、自閉症を対象とする特別支援
学級では、食事、排泄、衣服の着脱などの指導を学校生活の中で適切に行う必要があります。
特に、一日の学校生活の流れが理解できるようにしたり、日課等を分かりやすくしたりする
などして、児童生徒の心理的な安定を促し、固執性が目立たないように配慮しながら、生活
に必要な諸技能を習慣として身に付けるようにすることが大切です。
日常生活の技能は、特に、学校と家庭との連携を密にすることによって、より確実に身に
付けることができます。
Point
【運動機能、感覚機能を高めるための指導】
動作の模倣、遊具や道具を使った運動等により、自ら体を動かそうとする意欲を育て、協
応動作等、運動機能の調和的発達を図るよう指導を進めることが必要です。特に、視覚、触
覚などを正しく活用することにより、目的のある行動を身に付けることをねらいとし、さら
に教材・教具を工夫するなど、指導方法に留意していくことも大切です。
Point
【言葉の内容を理解するための指導】
人の言葉に注意を向ける、人の話を聞く、返事やあいさつをするなどの必要な態度を形成
し、人とのかかわりを深めるための基礎づくりをねらいとして指導を進めることが必要で
す。
また、注意力や集中力を身に付け、言葉を理解するとともに、実際の生活に必要な言葉を
適切に使用できるように指導していくことも大切です。例えば、模型の電話やマイクを使っ
て話すことなどの場面の設定、創意工夫された絵カードや文字カード等の教材・教具等を活
用していきます。
Point
【人とのかかわりを深めるための指導】
一日の生活リズムを体得することにより、情緒の安定を図り、友達や教師と一緒に活動す
る喜びや楽しさを味わい、集団の雰囲気に慣れることをねらいとした指導を行うことが必要
です。例えば、動作の模倣、遊び、劇、係活動などいろいろな活動を通じて、集団での役割
を理解し、相手の立場が理解できるようにすることなどです。
また、一人一人の児童生徒の学習の状況等に応じて、交流及び共同学習として、通常の学
級での授業(国語、音楽、図画工作、体育など)や特別活動に参加して、人間的なふれあい
を深め、集団参加が円滑にできるようきめ細かな配慮を行うことも大切です。
文部科学省「教育支援資料」
(平成25年10月)
8
障がいの状態や特性の理解
情緒障がい
情緒障がいとは、状況に合わない感情・気分が持続し、不適切な行動が引き起こされ、それらを
自分の意思ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に適応できなくなる状態
をいいます。
心理面で感情や気分の変化は、一般に、どの人にも起きることですが、多くは一過性であり、す
ぐに消滅するので問題にされることはほとんどありません。
しかし、
それが何度も繰り返されたり、
激しく現れたりするなどして、社会的な不適応状態をきたす場合があります。そのような状態にあ
る児童生徒については、特別な教育的対応が必要であることが多くあります。
また、情緒障がいの現れ方としては、自分でも何が原因か、何に自分がこだわっているのかにも
気付かず、家から外出しない状態が長期化することで、閉じこもるような傾向が強くなったり、適
切な対人関係が形成できなかったりする一方で、他人を攻撃したり、破壊的であったりするような
行動も見られます。さらに、多動、常同行動、チックなどとして現れる場合もあります。
主として心理的な要因によ
る情緒障がいのある児童生徒
◆ 食事の問題(拒食、過食、異食など)
◆ 睡眠の問題(不眠、不規則な睡眠習慣など)
◆ 排泄の問題(尿、失禁など)
の場合には、具体的には右の
◆ 性的問題(性への関心や対象の問題など)
ような状態が生じることが多
◆ 神経性習癖(チック、髪いじり、爪かみなど)
くあります。
◆ 対人関係の問題(引っ込み思案、孤立、不人気、いじめなど)
◆ 学業不振
◆ 不登校
◆ 反社会的傾向(虚言癖、粗暴行為、攻撃傾向など)
◆ 非行(怠学、窃盗、暴走行為など)
◆ 情緒不安定(多動、興奮傾向、かんしゃく癖など)
◆ 選択性かん黙
◆ 無気力
文部科学省「教育支援資料」
(平成25年10月)
これらの具体的な行動上の問題は、いくつかが組み合わさって現れることがほとんどです。例え
ば、日常的に失敗経験が多く、叱責を受けることが多い場合は、行動が抑制されて無気力な状況が
生じやすくなり、その結果、学校内での孤立や学業不振、あるいは怠学といった問題が生じること
があります。
また、児童生徒の年齢や周囲の状況によっても、生じる問題が異なってきます。そこで、具体的
に現れている状態だけでなく、環境との相互作用についても分析することが重要となります。
9
情緒障がい教育の主な対象とその状態
【選択性かん黙】
選択性かん黙とは、一般に、発声器官等に器質的・機能的な障がいはないが、心理的な要因により、
特定の状況(例えば、家族や慣れた人以外の人に対して、あるいは家庭の外など)で音声や言葉を出せ
ず、学習等に支障がある状態をいいます。
選択性かん黙は、自閉症等とは異なり、コミュニケーション能力の発達に軽微な問題がある場合が多
いことに留意する必要があります。
原因は、一般に、生来の対人緊張や対人不安の強さがあり、集団に入るとその不安が増強することで
身を固くして防衛しているということがあります。また、そうした対人緊張の強さの背景要因には、知
的障がいや自閉症があることも珍しくないため、多方面からの調査を基にした総合的な判断が必要であ
ることに留意する必要があります。
【不登校】
不登校の要因は様々ですが、情緒障がい教育の対象としての不登校は、心理的、情緒的理由により、
登校できず家に閉じこもっていたり、家を出ても登校できなかったりする状態です。そして、本人は登
校しなければならないことを意識しており、登校しようとするができないという社会的不適応になって
いる状態をいいます。
つまり、一般的に怠学や学校の意義を否定するなどの考えから、意図的に登校を渋る場合は、学校に
登校しないという状態は類似していますが、ここでいう情緒障がいの範ちゅうには含まないことに留意
する必要があります。
不登校には、生活リズムの安定や自我、自主性の発達を促し、家族間の人間関係の調整を図るための
指導等が必要です。
【その他の情緒障がい】
偏食、夜尿、指しゃぶり、爪かみなど様々な状態は、多くの人々が示すことではありますが、そのこ
とによって集団生活への適応が困難である場合、情緒障がい教育の対象となることがあります。
なお、広義の情緒障がいに含まれている非行は、従来、情緒障がい教育の対象となっていないことに
留意する必要があります。
文部科学省「教育支援資料」
(平成25年10月)
指導上の留意点
Point
集中することが難しい場合には、学習活動に際して、児童生徒の席から見える範囲に、特
に気をとられやすいものがないように留意します。
◆ 児童生徒を肯定的に認め、不安や緊張を軽減し、安心と自信をもたせます。
◆ 学習空白が生じている場合などは、下学年の学習内容に替え、基礎的・基本的な内
容を重視します。
◆ 段階的に集団の人数を増やして行う活動を取り入れるなど、通常の学級で活動でき
るような工夫を行います。
10
特別の教育課程
特別支援学級に在籍する児童生徒は、通常の学級の教育課程をそのまま適用することは困難にな
ります。そこで、特別支援学級では特別の教育課程を編成することになります。特別の教育課程を
編成する場合は、法令や学習指導要領等に基づき、児童生徒の状態や学校の状況を考慮して工夫し
て編成します。
特別支援学級は、学校教育法第81条の規定に基づき特別に編制された学級ですが、小学校又は
中学校の中に設置された学級であるため、教育課程は、小学校又は中学校の学習指導要領に基づい
て編成されることが原則となります。しかし、個々の児童生徒の障がいの程度や特性に応じた指導
を行うためには、学級の実態に応じて適切な教育課程を編成することが必要です。特別支援学級の
教育課程の編成については、学校教育法施行規則に次のように規定されています。
学校教育法施行規則
(特別支援学級に係る教育課程の特例)
第138条 小学校若しくは中学校又は中等教育学校の前期課程における特別支援学級に係る教育課程
については、特に必要がある場合は、第50条第1項、第51条及び第52条の規定並びに第72条
から第74条までの規定にかかわらず、特別の教育課程によることができる。
この規定で引用されている第50条第1項以下の各条項は、小学校又は中学校の教育課程にかか
る規定であり、小学校又は中学校の各教科等の授業時数及び各学年の総授業時数、教育課程編成の
基準等を定めています。特別支援学級においては、これらの規定にかかわらず、学級の実態に応じ
て特別の教育課程を編成することが法令上認められています。
しかし、この規定により特別の教育課程を編成するとしても、特別支援学級は小学校・中学校に
設置された学級であるため、学校教育法に定める小学校・中学校の目的及び目標を達成するもので
ある必要があります。
特別支援学級において、特別の教育課程を編成する場合には、児童生徒の障がいの状態等に応じ
て、特別支援学校の小学部・中学部の学習指導要領を参考として、例えば障がいによる学習上又は
生活上の困難を改善・克服するために、
「自立活動」を取り入れたり、各教科の目標・内容を下学年
の教科の目標・内容に替えたり、各教科を特別支援学校(知的障がい)の各教科に替えたりするな
どして、実情に合った教育課程を編成する必要があります。
「特別の教育課程」とは
1 「各教科の内容」を、下学年や知的障がい特別支援学校の各教科の内容に替えることができる。
2 「時数の取り扱い」では、授業の1単位時間など弾力的な取り扱いができる。
3 「各教科等を合わせた指導」として、領域や教科等を合わせて指導することができる。
4 「自立活動」の指導を、授業として設定することができる。
11
◇ 特別支援学校の教育課程
【小学部】
各 教 科
道
外国語
総合的な学
特別
自立
徳
活動※
習の時間※
活動
活動
※ 知的障がいのある児童を教育する小学部では、外国語活動、総合的な学習の時間は設け
なくてもよい。
【中学部】
各 教 科
道
総合的な学
特別
自立
徳
習の時間
活動
活動
◇ 特別支援学校において障がいの状態により特に必要がある場合の教育課程の取扱い
特別支援学校小学部・中学部学習指導要領 第1章第2節第5の1
1 児童又は生徒の障害の状態により特に必要がある場合には,次に示すところによるものとする。
(1) 各教科及び外国語活動の目標及び内容に関する事項の一部を取り扱わないことができること。
(2) 各教科の各学年の目標及び内容の全部又は一部を,当該学年の前各学年の目標及び内容の全部又
は一部によって,替えることができること。
(3) 中学部の各教科の目標及び内容に関する事項の全部又は一部を,当該各教科に相当する小学部の
各教科の目標及び内容に関する事項の全部又は一部によって,替えることができること。
(4) 視覚障害者,聴覚障害者,肢体不自由者又は病弱者である生徒に対する教育を行う特別支援学校
の中学部の外国語科については,外国語活動の目標及び内容の一部を取り入れることができること。
(5) 幼稚部教育要領に示す各領域のねらい及び内容の一部を取り入れることができること。
12
特別の教育課程
知的障がい特別支援学級
知的障がい特別支援学級においては、特別の教育課程を編成した上で、小集団により学習環境を
整備し、通常の学級に在籍する児童生徒との交流及び共同学習を適切に進めたり、個別対応による
指導を徹底したりしています。これらにより、児童生徒の教育上必要な指導内容を提供し、学校生
活が充実するようにしています。
知的障がい特別支援学級の教育課程は、原則として小学校及び中学校の学習指導要領に基づく諸
規定が適用されますが、児童生徒の障がいの状態等から、特別支援学校(知的障がい)の学習指導
要領を参考として、その内容を取り入れるなど、特別の教育課程を編成することが認められていま
す。したがって、教育課程編成や指導方法は、特別支援学校の場合と共通することも多くあります。
知的障がい者を教育する特別支援学校では、特に必要がある場合には、各教科、道徳、外国語活
動(小学校)
、特別活動及び自立活動の全部または一部について、合わせて授業を行うことができる
と規定されています。
また、知的障がい者を教育する特別支援学校では、従来から「各教科等を合わせた指導」と呼ば
れる日常生活の指導、生活単元学習、作業学習等が実践されています。
学校教育法施行規則
第130条 特別支援学校の小学部、中学部又は高等部においては、特に必要がある場合は、第126
条から第128条までに規定する各教科(次項において「各教科」という。)又は別表第3及び別表
第5に定める各教科に属する科目の全部又は一部について、合わせて授業を行うことができる。
2 特別支援学校の小学部、中学部又は高等部においては、知的障害者である児童若しくは生徒又は複
数の種類の障害を併せ有する児童若しくは生徒を教育する場合において特に必要があるときは、各教
科、道徳、外国語活動、特別活動及び自立活動の全部又は一部について、合わせて授業を行うことが
できる。
そこで、知的障がいのある児童生徒を教育する特別支援学級においては、各教科、道徳、外国語
活動(小学校)
、特別活動、自立活動の内容を選択・組織し、実際の指導の形態としては、
「各教科
等を合わせた指導」
「領域別の指導」
「教科別の指導」の組み合わせを工夫して、教育課程を編成す
る必要があります。
なお、総合的な学習の時間については、特別支援学級が小学校・中学校に設置された学級である
ことから、同様に設定することに留意する必要があります。
13
【 知的障がい特別支援学級の指導の形態 】
【小学校特別支援学級】
【中学校特別支援学級】
各教科等を
日常生活の指導
各教科等を
日常生活の指導
合わせた指導
生活単元学習
合わせた指導
生活単元学習
(遊びの指導)
教科別の指導
作業学習
国語、社会、算数
教科別の指導
理科、生活、音楽
音楽、美術、保健体育
図画工作、家庭、体育
技術・家庭、外国語
*選択教科
※特別支援学校(知的障がい)の各教科(小学部)
国語、算数、音楽、図画工作、体育、
(生活)
領域別の指導
国語、社会、数学、理科
*その他特に必要
な教科
※特別支援学校(知的障がい)の各教科(中学部)
国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、
職業・家庭、
(外国語)
道徳
特別活動
自立活動
領域別の指導
道徳
外国語活動
特別活動
総合的な学習の時間
自立活動
総合的な学習の時間
◆ 上記図中の「教科別の指導」は、対象となる児童生徒の実態により、当該学年又は下学年の各
教科、特別支援学校(知的障がい)の各教科の目標・内容により指導することです。
【 小学校・中学校の知的障がい特別支援学級の目標 】
【小学校の知的障がい特別支援学級】
心身の諸機能の調和的発達、基本的生活習慣の確立、日常生活に必要な基礎的な知識、技能及び態度
の習得、集団生活への参加と社会生活の理解などを目標としている。
【中学校の知的障がい特別支援学級】
小学校における目標を十分に達成するとともに、日常の経済生活についての関心を高め、将来の職業
生活や家庭生活に必要な知識、技能及び態度を身に付けることなどを目標としている。
文部科学省「教育支援資料」
(平成25年10月)
知的障がい特別支援学級における特別の教育課程
Point
① 各教科の内容
下学年や特別支援学校(知的障がい)の各教科の目標及び内容に替えることができる。
適切な教科用図書を使用できる。
② 各教科等を合わせた指導
知的障がいのある児童生徒を教育する場合には、必要に応じて、各教科、道徳、特別
活動及び自立活動の全部又は一部を合わせて指導することができる。
③ 「自立活動」の指導
学習上又は生活上の困難の改善・克服を目的とした「自立活動」を取り入れることが
できる。
14
特別の教育課程
自閉症・情緒障がい特別支援学級
自閉症・情緒障がい特別支援学級の教育課程編成においては、小学校・中学校の当該学年に準ず
る教育課程の編成を基準としながら、必要に応じて特別支援学校の小学部・中学部学習指導要領を
参考にして、学級や児童生徒の実態に応じた教育目標や教育内容を決定していくことになります。
特に、障がいによる学習上又は生活上の困難の改善・克服を目的とした指導の領域である「自立活
動」の指導を取り入れ、編成することが望まれます。
自立活動の授業時数は、児童生徒の障がいの状態に応じて適切に定めることとされていますが、
授業の総時間数は、各学年において定められているため、自立活動の授業時数分、他の教科等の授
業時数を削減することになります。このため、児童生徒一人一人の障がいの状態等に即した適切な
指導を行うためには、何が重要であるかを十分に考慮し、バランスのよい教育課程を編成すること
が必要です。
また、自立活動の指導に当たっては、指導の目標や指導の内容を明記した「個別の指導計画」を
作成することとなっています。
【 自閉症・情緒障がい特別支援学級の指導の形態 】
【中学校特別支援学級】
【小学校特別支援学級】
各教科等
各教科等
生活、国語、算数、社会
国語、社会、数学、理科
理科、音楽、図画工作
音楽、美術、保健体育、
体育、家庭
技術・家庭、外国語
道徳
選択教科等
外国語活動
道徳
総合的な学習の時間
総合的な学習の時間
特別活動
特別活動
自立活動
自立活動
自閉症・情緒障がい特別支援学級における特別の教育課程
Point
① 各教科の内容
下学年の各教科の目標及び内容に替えることができる。
② 「自立活動」の指導
学習上又は生活上の困難の改善・克服を目的とした「自立活動」を取り入れることが
できる。
15
学習指導の基本
知的障がい特別支援学級の教育課程は、特別支援学校(知的障がい)の学習指導要領を参考とす
ることが多くあるため、
「各教科等を合わせた指導」から「領域別の指導『教科別の指導(知的障が
い)
』
」まで特別支援学校(知的障がい)の教育課程について説明します。
各教科等を合わせた指導
知的障がいのある児童生徒の教育課程において各教科等を合わせた指導とは、各教科、道徳、特
別活動及び自立活動の全部又は一部を合わせて指導を行うことをいいます。この指導の形態では、
児童生徒の生活を充実させ、生活に役立つ生きた能力や資質の伸長を図ることを重視します。対象
とする児童生徒の年齢段階や発達の段階が低い場合や対象とする学級集団の実態に開きがある場合
は、この指導の形態での指導が効果的であるといえます。
各教科等を合わせた指導
『日常生活の指導』
日常生活の指導は、日常生活に必要な内容を学校の生活の流れに沿った形で指導し、一人ででき
ることを増やしていくことで、日常生活が充実し、高まるように日常生活の諸活動を適切に指導す
るものです。身の回りのことだけでなく集団生活に必要なことも含めて、児童生徒の実態に即した
内容を取り扱い、継続的に取り組みます。また、保護者の理解と協力を得ながら、連携して取り組
むことも大切です。
日常生活の指導は、生活科の内容だけでなく、広範囲に、各教科等の内容が扱われます。それら
は、例えば、衣服の着脱、洗面、手洗い、排せつ、食事、清潔など基本的生活習慣の内容や、あい
さつ、言葉遣い、礼儀作法、時間を守ること、きまりを守ることなどの日常生活や社会生活におい
て必要で基本的な内容を取り上げるものです。
日常生活の指導に当たっては、以下のような点を考慮することが重要です。
指導上の留意点
Point
■ 日常生活の自然な流れに沿い、その活動を実際的で必然性のある状況下で行うものであ
ること。
■ 毎日反復して行い、望ましい生活習慣の形成を図るものであり、繰り返しながら、発展
的に取り扱うようにすること。
■ できつつあることや意欲的な面を考慮し、適切な援助を行うとともに、目標を達成して
いくために、段階的な指導ができるものであること。
■ 指導場面や集団の大きさなど、活動の特徴を踏まえ、個々の実態に即していくものであ
ること。
※チェック ・指示の量やタイミングは適切ですか?
・難しい指示になっていませんか?
・失敗経験や注意された経験が多くなっていませんか?
16
学習指導の基本
各教科等を合わせた指導
『生活単元学習』
国語・算数などの各教科、道徳、特別活動、自立活動の内容が含まれます。生活に必要な内容を
選び、実際的・総合的に学習しながら、生活上の課題に主体的に取り組み、解決する力を育みます。
生活単元学習の指導では、児童生徒の学習活動は、生活的な目標や課題に沿って組織されること
が大切です。また、特別支援学校小学部においては、児童の知的障がいの状態等に応じ、遊びを取
り入れた生活単元学習を展開している学校もあります。
生活単元学習の指導計画の作成に当たっては、以下のような点を考慮することが重要です。
指導計画作成上の留意点
Point
■ 単元は、実際の生活から発展し、児童生徒の知的障がいの状態等や興味・関心などに応じ
たものであり、個人差の大きい集団にも適合するものであること。
■ 単元は、必要な知識・技能の獲得とともに、生活上の望ましい習慣・態度の形成を図るも
のであり、身に付けた内容が生活に生かされるものであること。
■ 単元は、児童生徒が目標をもち、見通しをもって、単元の活動に積極的に取り組むもので
あり、目標意識や課題意識を育てる活動を含んだものであること。
■ 単元は、一人一人が力を発揮し、主体的に取り組むとともに、集団全体で単元の活動に共
同して取り組めるものであること。
■ 単元は、各単元における児童生徒の目標あるいは課題の成就に必要かつ十分な活動で組織
され、その一連の単元の活動は、児童生徒の自然な生活としてのまとまりのあるものである
こと。
■ 単元は、豊かな内容を含む活動で組織され、児童生徒がいろいろな単元を通して、多種多
様な経験ができるように計画されていること。
生活単元学習の指導を計画するに当たっては、1つの単元が、2、3日で終わる場合もあれば、
1学期間、あるいは、1年間続く場合もあるため、年間における単元の配置、各単元の構成や展開
について十分検討する必要があります。
Point
授業構成のポイント
級の理解
◆ 児童生徒の興味・関心に即した教材・教具の選定
◆ 活動内容や参加人数に適した場の設定
◆ 児童生徒の認知特性等に応じた支援内容・方法
17
学習指導の基本
各教科等を合わせた指導
『遊びの指導』
遊びの指導は、小学校低学年で多く実施されています。児童の発達段階に合わせた遊びを学習活
動の中心に据えて取り組み、身体活動を活発にし、仲間とのかかわりを促し、意欲的な活動をはぐ
くみ、心身の全体的な発達を促していくものです。
遊びの指導では、生活科の内容をはじめ、各教科等にかかわる広範囲の内容が扱われ、場や遊具
等が限定されることなく、児童が比較的自由に取り組むものから、期間や時間設定、題材や集団構
成などに一定の条件を設定し活動するといった比較的制約性が高い遊びまで連続的に設定されます。
また、遊びの指導の成果が各教科別の指導等につながることもあります。
遊びの指導に当たっては、以下のような点を考慮することが重要です。
指導上の留意点
Point
■ 児童が、積極的に遊ぼうとする環境を設定すること。
■ 教師と児童、児童同士のかかわりを促すことができるよう、場の設定、教師の対応、遊具
等を工夫すること。
■ 身体活動が活発に展開できる遊びを多く取り入れるようにすること。
■ 遊びをできる限り制限することなく、児童の健康面や衛生面に配慮しつつ、安全に遊べる
場や遊具を設定すること。
■ 自ら遊びに取り組むことが難しい児童には、遊びを促したり、遊びに誘ったりして、いろ
いろな遊びが経験できるよう配慮して、遊びの楽しさを味わえるようにしていくこと。
特別支援学校の「生活科」と「生活単元学習」の違い
Point
「生活科」は、特別支援学校(知的障がい)小学部の教科の一つであり、
「生活単元学習」
は、各教科等を合わせた指導の形態の一つです。
「生活科」の目標は、日常生活の基本的な習慣を身に付け、集団生活への参加に必要な態度
や技能を養うとともに、自分と身近な社会や自然との関わりについて関心を深め、自立的な生
活をするための基礎的能力と態度を育てることにあります。
指導内容には、基本的な生活習慣、健康・安全、遊び、交際、役割、自然、社会等生活する
こと自体を取り上げています。日常生活の指導や生活単元学習など、各教科等を合わせた指導
の形態で扱われ、
「生活単元学習」に「生活科」の内容が含まれるのが一般的です。
さらに、特別支援学校(知的障がい)小学部の教育課程にある「生活科」と小学校低学年の
「生活科」は、類似していますが、目標の程度や範囲において違いがあります。
前者の「生活科」は、生活活動そのものを指導するのに対して、後者の「生活科」は、具体
的な活動や体験をとおしてその内容を指導するといえます。また、前者の「生活科」の場合、
小学部教育の全期間を通して指導され、年間授業時数は定められていません。
これは、生活科の内容が生活単元学習や日常生活の指導などの各教科等を合わせた指導の中
で継続して行われるからです。
18
学習指導の基本
各教科等を合わせた指導
『作業学習』
作業学習は、作業活動を学習活動の中心にしながら、働く意欲や態度、知識技能、集中力、責任
感、根気などの「働く力」を育て、将来の職業生活や社会自立に必要な事柄を総合的に扱うもので
す。主に中学校段階で取り組まれています。
作業学習の指導は、単に職業・家庭の内容だけでなく、各教科等の広範囲の内容が扱われます。
作業学習で取り扱われる作業活動の種類は、農耕、園芸、紙工、木工、縫製、織物、金工、窯業、
セメント加工、印刷、調理、食品加工、クリーニングなどのほか、販売、清掃、接客なども含み多
種多様です。
【作業種:例】
〇農耕(業):野菜(畑)、花(花壇)の育成
〇木工:コースター、箱類等の製作
〇紙工:手漉き葉書、封筒、小物入れ等の製作
〇縫製:バッグ、布袋等の製作
実際の指導では、単に職業・家庭科の内容だけでなく、以下のような点を考慮することが重要で
す。
指導上の留意点
Point
■ 生徒にとって教育的価値の高い作業活動等を含み、それらの活動に取り組む喜びや完成の
成就感が味わえること。
■ 地域性に立脚した特色をもつとともに、原料・材料が入手しやすく、永続性のある作業種
を選定すること。
■ 生徒の実態に応じた段階的な指導ができるものであること。
■ 知的障がいの状態等が多様な生徒が、共同で取り組める作業活動を含んでいること。
■ 作業内容や作業場所が安全で衛生的、健康的であり、作業量や作業の形態、実習期間など
に適切な配慮がなされていること。
■ 作業製品等の利用価値が高く、生産から消費への流れが理解されやすいものであること。
目標設定のポイント
授業構成のポイント
◆ 目標は、作業態度や作業習慣の側面と、知
◆ 生徒によっては、補助具を使うことで、一
識、技能の面等から考えます。
人で作業に取り組めることもあります。必要
◆ 生徒が見通しをもって取り組むためには、
に応じて、準備しましょう。
作業内容や工程を整理し、具体的な目標を設
◆ 学校や地域の行事等を通して、製品が生活
定することが大切です。
の中で活用されたり、評価されたりする経験
※ 生徒自身が目標について自己評価をするこ
が大切です。次の意欲につながります。
とも大事にしていきましょう。
◆ 作業前後の活動を大切にし、安全の意識や
整理整頓などへの確認を習慣付けるようにし
ましょう。
19
学習指導の基本
領域別の指導
知的障がい者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校においては、各教科等を合わせて
指導を行う場合でも道徳等のいわゆる領域の内容の指導を行うことができますが、道徳、特別活動
及び自立活動の時間を設けて、それらを合わせないで、あるいは、それらと各教科とも合わせない
で指導する場合もあり、それは、
「領域別の指導」と呼ばれています。
『教科別の指導(知的障がい)』
教科別の指導は、各教科の時間を設定して教科ごとに指導することです。指導を行う教科やその
授業時数の定め方は、対象となる児童生徒の実態によって異なります。
学習指導要領において、知的障がい者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科
の名称は小学校等とほぼ同じではありますが、その目標や内容は、小学校等とは異なり、児童生徒
一人一人の障がいの特性に応じて、実際の生活に生かすことができる事柄を指導するようになって
います。
教科別の指導を計画するに当たっては、一人一人の児童生徒の実態に合わせて、学習内容を個別
的に選択・組織します。また、指導に当たっては、児童生徒の実態に合わせて、授業における指導
方法を創意工夫し、学習活動につながるねらいを設け、段階的に指導を行います。
また、他の教科、道徳、特別活動、自立活動及び総合的な学習の時間(小学部を除く)との関連、
また、各教科等を合わせた指導との関連を図り、習得したことを実際の生活に役立てるようにしま
す。
知的障がい者を教育する特別支援学校の各教科は、児童生徒が自立し社会参加するために必要な
知識や技術、態度などを身に付けるため、学部ごとに障がいの状態や学習上の特性などを踏まえた
目標、内容が示されています。
【 知的障がい特別支援学校の各教科の構成と履修 】
小学部
中学部
生活、国語、算数、音楽、図画工作、体育の6教科
第1学年から第6学年を通して履修する。
必修教科は、国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、職業・家庭の8教科で構成
・中学部外国語は、学校の判断で必要に応じて設けることができる。
・その他特に必要な教科を各学校の判断によって設けることができる。
指導上の留意点
Point
知的障がい特別支援学級において、知的障がい特別支援学校の教育課程を参考にした場合、
小学校は6教科、中学校は8教科に外国語を加えた各教科等を設定することができることにな
ります。
教科内容は、学年別の配列ではなく、各教科の内容が一括して組織されており、小学部は3
段階、中学部は1段階で示してあります。児童生徒の実態や興味・関心、生活経験等を考慮し、
各教科の段階の内容の中から実際に指導する内容を選定し、適切に組み合わせ、単元や題材と
してまとめ、配列します。指導に当たっては、児童生徒の実態に即して、生活に即した活動を
十分に取り入れつつ段階的に指導する必要があります。
20
学習指導の基本
領域別の指導
『総合的な学習の時間』
総合的な学習の時間については、小学校第3学年から中学校第3学年までの
知的障がい及び自閉症・情緒障がい特別支援学級においても、適切な授業時数
を定めるようになっています。
学習活動が効果的に行われるためには、個々の児童生徒の実態に応じ、補助用具や補助的手段、コンピ
ュータ等の情報機器を適切に活用するなどの配慮が大切です。また、体験活動を展開するにあたっては、
児童生徒をはじめ教職員や外部の協力者などの安全確保、健康や衛生等の管理に十分配慮することも求め
られます。
領域別の指導
『道徳』
特別支援学級においても、通常の学級と同様に、学校の教育活動全体を通して、道徳的な心情、
判断力、実践意欲などの道徳性を養うことをねらいとします。
また、障がいに基づく様々な困難を改善・克服して、強く生きようとする意欲を高め、明るい生
活態度を養うとともに、健全な人生観の育成を図ることが必要です。
さらに、経験の拡充を図ることによって、豊かな道徳的心情を育て、広い視野に立って、道徳的
判断や行動ができるように指導しましょう。
道徳の指導においては、児童生徒の興味・関心や生活に結び付いた具体的な題材を設定し、実際的な活
動を取り入れたり視聴覚機器を活用したりするなどの一層の工夫を行い、道徳的実践力が身に付くよう指
導をすることが大切です。
◆ 知的な遅れのある児童生徒の場合、抽象的な思考が苦手であることから具体的な指導場面を
通して、基本的な事柄を身に付けていく方が効果的です。
21
学習指導の基本
領域別の指導
『特別活動』
学級活動、学校行事などを通して、自分の役割を持ち、協力して友達と活動する過程で、集団や
社会の一員として自覚し、意欲的に責任を果たすことをねらいとします。
児童生徒の障がいの状態に応じて、活動の種類や時期、実施方法等を適切に定め、通常の学級の
児童生徒と交流する機会を通して、互いに協力し合う態度を養うことが大切です。
特に、一人在籍の特別支援学級の場合、経験を広めて積極的な態度を養い、活発な集団活動が行
われるような設定を考慮する必要があります。
特別活動の指導に当たっては、児童生徒の実態、特に学習上の特性等を十分に考慮し、適切に創意工夫
する必要があります。学習上の特性とは、成功経験が少ないことなどにより、主体的に活動に取り組む意
欲が十分に育っていない場合もあり、活動に取り組む意欲を育むことができる行事設定などのことです。
特別活動の指導を計画する際には、各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間及び自立活動や各
教科等を合わせた指導における指導との関連を図るとともに、小・中学校等の児童生徒及び地域の人々と
活動を共にする機会を設けるように配慮することも大切です。
領域別の指導
『外国語活動』
基本的には、小学校学習指導要領に示されている目標に準じて行います。ただし、指導計画の作
成と内容の取り扱いについては、配慮が必要です。
【 指導内容の精選 】
個々の児童の障がいの状態や興味・関心等を考慮して、適切な指導内容の精選に努めたり、重点の置
き方等の工夫をする必要があります。
【 自立活動の指導との関連 】
外国語活動の目標の一つは、外国語を用いて積極的にコミュニケーションを図ることができるように
なることですが、障がいのある児童の場合、様々な困難が生じることがあります。そこで、発語・聴覚
的・視覚的認知に関する指導との関連を図ることが必要です。
※ 知的障がい特別支援学校の小学部では、設定されていません。
22
学習指導の基本
領域別の指導
『自立活動』
自立活動は、児童生徒が自立した生活をすることができるよう、障がいからくる困難さを改善・
克服していくための知識や技能、態度、習慣を身に付けていく学習です。一人一人の障がいの状態
に応じて、適切に指導することが大切です。そのためには、個別の指導計画を作成する必要があり
ます。
WHO(世界保健機関)は、平成13年に、従来用いていた「国際障害分類(ICIDH)
」の改
訂版として「国際生活機能分類(ICF)
」を採択しました。
ICFでは、
「人間の生活機能は『心身機能・身体構造』
『活動』
『参加』の三つの要素で構成され
ており、それらの生活機能に支障がある状態を『障害』ととらえています。そして、生活機能と障
害の状態は、健康状態や環境因子等と相互に影響し合う。
」とされています。
自立活動が指導の対象とする「障がいによる学習上又は生活上の困難」を、ICFとの関連でと
らえるということは、精神機能や視覚・聴覚などの「心身機能・身体構造」
、歩行やADL(日常生
活動作)などの「活動」
、趣味や地域活動などの「参加」といった生活機能との関連で「障がい」を
把握することを意味します。その上で、生活機能と障がいに個人因子や環境因子がどのように関連
しているのか、相互の関連性についても十分考慮することが求められます。
健康状態
疾病、外傷、等
活 動
心身機能・
身体構造
ICD(国際疾病分類)
参 加
実行状況
能力
実行状況
能力
生
(している)
(できる)
(している)
(できる)
活
精神機能
歩行、
就労、趣味、
運動機能
各種ADL、
スポーツ、
視覚、聴覚、等
家事、職業能力、等
地域活動、等
環境因子
機
能
個人因子
物的環境:福祉用具、建築、等
年齢、性別、民族、生活感、
人的環境:家族、友人、等
価値観、ライフスタイル、等
社会環境:制度、サービス、等
構成要素間の相互作用(概念図)
(厚生労働省大臣官房統計情報部「生活機能分類の活用に向けて」より)
23
なお、ICFの特徴の一つは環境因子等を適切に考慮する点にありますが、成長期にある児童生
徒の実態は様々に変化するので、それらを見極めながら環境を構成したり整えたりする必要があり
ます。
自立活動の指導内容は6区分26項目で示されています。
1 健康の保持
2 心理的な安定
(1)生活リズムや生活習慣の形成に関すること。
(1)情緒の安定に関すること。
(2)病気の状態の理解と生活管理に関すること。
(2)状況の理解と変化への対応に関すること。
(3)身体各部の状態の理解と養護に関すること。
(3)障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服す
る意欲に関すること。
(4)健康状態の維持・改善に関すること。
3 人間関係の形成
4 環境の把握
(1)他者とのかかわりの基礎に関すること。
(1)保有する感覚の活用に関すること。
(2)他者の意図や感情の理解に関すること。
(2)感覚や認知の特性への対応に関すること。
(3)自己の理解と行動の調整に関すること。
(3)感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。
(4)集団への参加の基礎に関すること。
(4)感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に関する
こと。
(5)認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関するこ
と。
5 身体の動き
6 コミュニケーション
(1)姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。
(1)コミュニケーションの基礎的能力に関すること。
(2)姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関する (2)言語の受容と表出に関すること。
こと。
(3)言語の活用と形成に関すること。
(3)日常生活に必要な基本動作に関すること。
(4)コミュニケーション手段の選択と活用に関すること。
(4)身体の移動能力に関すること。
(5)状況に応じたコミュニケーションに関すること。
(5)作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること。
文部科学省「特別支援学校学習指導要領解説自立活動編(幼稚部・小学部・中学部・高等部)
」
(平成21年)
具体的な指導内容の設定に当たっては、自立活動の「内容」の中からそれぞれに必要とする項目
を選定し、それらを相互に関連付けることになりますが、その際の配慮事項は次の4点です。
指導内容を設定する際の配慮事項
Point
① 主体的に取り組む指導内容
興味をもって主体的に取り組み、成就感を味わうとともに自己を肯定的にとらえることが
できるような指導内容を取り上げること。
② 改善・克服の意欲を喚起する指導内容
障がいによる学習上又は生活上の困難を改善・克服しようとする意欲を高めることができ
るような指導内容を重点的に取り上げること。
③ 遅れている側面を補う指導内容
発達の進んでいる側面を更に伸ばすことによって、遅れている側面を補うことができるよ
うな指導内容も取り上げること。
④ 自ら環境を整える指導内容
活動しやすいように自ら環境を整えたり、必要に応じて周囲の人に支援を求めたりするこ
とができるような指導内容も計画的に取り上げること。
24
【自立活動の指導例:自閉症・情緒障がい】
自
閉
症
区分・項目
指 導 内 容
3-(3) 自己の理解と行動の調整
■ ゲームや運動課題を通して、自己欲求のコントロールの方法
に関すること
や、状況に応じた適切な言動の在り方の指導
6-(2) 言語の受容と表出に関す
ること
に関する指導、会話から必要な情報を得て整理する指導
2-(1) 情緒の安定に関すること
情
緒
障
が
い
■ 会話のルール指導や適切なコミュニケーションスキルの獲得
■ 構成を工夫した小集団において、十分にコミュニケーション
がとれるようにし、良好な人間関係作りや、緊張・不安の緩和
を図る指導
3-(1) 他者とのかかわりの基礎
に関すること
■ 相互にかかわり合う素地を作り、その上で、やりとりを徐々
に増やしていく指導
【自立活動の指導例:知的障がい】
区分・項目
指 導 内 容
1-(4) 健康状態の維持・改善に関す
■ 適切な運動や、食生活と健康について実際の生活に即して学
ること
習するなど、日常生活における自己の健康管理のための指導
4-(2) 感覚や認知の特性への対応に
関すること
■ 認知の特性に応じた指導方法を工夫し、得意な方法を積極的
に活用するとともに、不得意な課題を少しずつ改善する指導
知的障がいのある児童生徒の自立活動の指導
Point
知的障がいのある児童生徒には、知的発達から見て言語、運動、情緒・行動などの面で、顕
著な発達の遅れや特に配慮を必要とする様々な状態が、知的障がいに随伴して見られることが
あります。このような児童生徒には、知的発達の遅れに応じた教科の指導などのほかに、上記
のような随伴してみられる顕著な発達の遅れや特に配慮を必要とする様々な状態についての
特別な指導が必要であり、これらを自立活動で指導します。
知的障がいに随伴してみられる顕著な発達の遅れや特に配慮を必要とする様々な状態は多
くあり、例えば、言語面では、特異な言語の習得と使用、理解言語と表出言語の大きな差など
があります。運動面では、平衡感覚の未熟さ、上肢や下肢のまひによる不随意性、筋力の低さ
などがあります。行動面では、固執行動、極端な偏食、異食、情緒面では、情緒発達の未熟さ、
自信欠如などがあります。健康面では、てんかんや心臓疾患による生活上の影響などがあげら
れます。
指導上の留意点
Point
● 知的障がい特別支援学級では、特に時間を設けずに、学校教育活動全体を通して指導する
ことが多いかもしれません。しかし、知的障がいの児童生徒でも、発達の偏りが大きい場合
には、自立活動の指導が大切になります。また、自閉症・情緒障がい特別支援学級において
も、生活上や学習上の課題について指導することは大切です。
● 指導する内容によっては、専門的な知識や経験が必要とされますので、保護者や医療機関
等との連携を図る必要があります。
25
自立活動の指導は、個々の児童生徒が自立を目指し、障がいによる学習上又は生活上の困難を主
体的に改善・克服しようとする取組を促す教育活動であり、個々の児童生徒の障がいの状態や発達
の段階等に即して指導を行うことが基本となります。
個別の指導計画に基づく自立活動の指導は、個別指導の形態で行われることが多いですが、指導
の目標を達成する上で効果的である場合は、
集団を構成して指導することも考えられます。
しかし、
自立活動の指導計画は個別に作成されることが基本であり、最初から集団で指導することを前提と
するものではない点に十分留意する必要があります。
【例:自立活動の指導内容設定の流れ】
児童:小学部第1学年障がい名等:肢体不自由(脳性まひ)
,知的障がい(知的発達のレベル:0歳6か月未満)
発達の状態、発達や経験の程度、興味・関心、生活や学習環境などについての情報収集
課題となっている面だけでなく、よい面や指導内容
に生かせそうな情報も把握する。
収集した情報を自立活動の区分に即して整理
実
態
把
握
健康の保持
心理的な安定
人間関係の形成
環境の把握
身体の動き
コミュニケーション
・体調は安定して
いるが、刺激が
乏しくなると眠
ることがある。
・不安になりやす
いが、よく知っ
ている人がかか
わると落ち着
く。
・いつも接する教
師や家族とのか
かわりを喜ぶ。
・音の変化に気付
き、表情を変え
る。音源を探索
する様子も見ら
れる。
・触れた物をつか
むが、玩具に手
を伸ばそうとは
しない。
・機嫌のよいとき
によく発声する。
幾つかの指導目標の中で優先する目標として
指導目標
音を聞きながら玩具を目で追ったり、玩具を手に持ち、音を出して楽しんだりする。
指導目標を達成するために必要な項目の選定
選
定
し
た
項
目
健康の保持
心理的な安定
人間関係の形成
環境の把握
身体の動き
コミュニケーション
・生活のリズムや
生活習慣の形成
に関すること。
・情緒の安定に関
すること。
・他者とのかかわ
りの基礎に関す
ること。
・保有する感覚の
活用に関するこ
と。
・姿勢と運動・動
作の基本的技能
に関すること。
・コミュニケーシ
ョンの基礎的能
力に関すること。
選定された項目を関連付
け具体的な指導内容を設定
する。選定されていない項
目の中で指導内容に生かせ
る区分があれば、関連させ
ると効果的である。
具
体
的
な
指
導
内
容
・音の変化を楽しんだり、音のす
・玩具を振ったり、それに触った
・教師の言葉かけを聴いて、玩具
る玩具の動きを目で追ったり、
りして音を出し、笑顔になった
に手を伸ばして音を出したりす
音がする所を探索したりする。
り発声したりする。
る。
26
「個別の教育支援計画」の作成と活用
「個別の教育支援計画」は、障がいのある子供にかかわる様々な関係者が、子供の障がいの状態
等にかかわる情報を共有化し、教育的支援の目標や内容、関係者の役割分担等について計画を作成
するものです。
障がいのある子供が、生涯にわたって地域の中で自立し、社会参加していくためには、教育だけ
でなく、福祉、医療、労働等の様々な側面からの取組を含め、関係機関等の密接な連携協力の下に、
多様な支援が確保されることが不可欠です。平成14年12月に策定された障害者基本計画では、
子供のライフステージに応じて、関係機関、関係部局が連携して、ニーズに応じた支援を効果的に
実施するための「個別の支援計画」を作成することと提言しています。
そこで、障がいのある子供が教育の対象である時期に、学校が中心となって、教育の視点から適
切な対応をしていくという考えの下、作成されるものが「個別の教育支援計画」です。つまり、
「個
別の教育支援計画」の目的は、障がいのある子供に対し、一貫した長期的な視点で、関係機関が連
携して的確な教育的支援を行うことにあります。
個別の教育支援計画の作成においては、
保護者も重要な支援者であることから、
積極的に参画し、
その内容を十分に把握してもらうことが大切です。また、各関係者、関係機関で計画の受け渡しを
する場合には、その情報の共有について保護者の同意があることが前提となります。個別の教育支
援計画の様式に、保護者の同意の欄を設ける等の工夫を行っている学校もあります。
なお、本人に対しても内容を開示することが前提ですが、対象の子供の発達の段階や心理状態等
を十分に考慮しながら、保護者と十分協議して判断することが大切です。
Point
活用するためのポイント
するため留意点
個別の教育支援計画を活用していく上で、マネージメントサイクルの流れに沿って、目標や
指導内容、各関係機関の役割について確認をしていくことが大切です。
指導・支援を進めながら、子供の支援に必要な情報を付加したり、関係者による支援内容の
見直しを行っていきます。
次に、個別の教育支援計画をより一層活用するためのポイントをあげます。
① 子供への的確な支援を行うためには、保護者に適切な情報を提供し、前向きに参画でき
るよう環境を整えることが大切です。
② 個々のニーズに応じた支援の目標や内容に応じて、関係機関の連携を広げていきます。
地域の特別支援学校や活用できる機関を見つけましょう。
③ 保護者や本人の了承のもと、支援に必要な個人情報を共有することで、幼稚園、学校、
関係機関との信頼関係や支援へのつながりが高まります。
④ 個別の教育支援計画や個別の指導計画、授業の目標の関連を図ることで、一貫した指導
の方針が保たれます。
⑤ 障がいのある子供と障がいのない子供との交流及び共同学習を推進する上で、目的や意
義を明確にします。
⑥ 社会参加や自立を見通した長期・短期の目標設定を行い、幼稚園、小学校、中学校、高
等学校への引継ぎと一貫性した支援に結びつけます。
27
個別の教育支援計画の様式は、特に決まったものはなく、計画に盛り込まれる内容として、①本
人・保護者のニーズ、②支援の目標、③支援の内容や役割分担、④支援を行う関係者、関係機関、
⑤支援の評価、引継ぎ内容等の項目が考えられます。このような内容について、各学校や地域にお
いて適切な様式を定め、一人一人のニーズに応じた支援につないでいくことが大切です。
個別の教育支援計画は、次年度や進学先等での関係者、関係機関へと引き継がれることが重要で
す。その際、単に個別の教育支援計画を渡すだけではなく、十分な話し合いを行うことが望まれま
す。特に卒業等により、計画を作成する学校等が変わる場合には、次の関係者、関係機関を交えた
支援会議を開き、連携を図ることが大切になります。特別支援教育コーディネーターが各関係機関
と調整を行い、関係者とネットワークを広げていくことが重要となります。特別支援学級担任は、
一人で抱え込むことなく、保護者や特別支援教育コーディネーターと連携し、継続的な支援が実現
できるよう、互いの信頼関係を深めていくように努めます。
個別の教育支援計画に係る教育と福祉の連携については、改正児童福祉法等の施行(平成24年
4月)に伴い、平成24年4月18日付けで厚生労働省と文部科学省の連名による事務連絡「児童
福祉法等の改正による教育と福祉の連携の一層の推進について」が発出されており、これらを踏ま
え、障害児相談支援事業所等において作成される「障害児支援利用計画等」との連携を図ることも
重要です。
Point
活用による支援の効果
するため留意点
文部科学省がまとめた「教育支援資料」
(平成24年10月)には、
「 個別の教育支援計画の作成・活用を通して、①障がいのある子供の教育的ニーズの適切
な把握、②支援内容の明確化、③関係者間の共通認識の醸成、④家庭や医療、福祉、保健、
労働等の関係機関との連携強化、⑤定期的な見直し等による継続的な支援、などの効果が
期待でき、その取組を強力に推進していくことは、特別支援教育の理念の実現につながる
ものである。
これにより、これまでの就学指導中心の『点』としての教育支援から、早期からの支援
や就学相談から継続的な就学相談・指導を含めた『線』としての継続的な教育支援へ、そ
して、家庭や関係機関と連携した『面』としての教育支援を目指すべきである。
」
と示されています。
このように、
「個別の教育支援計画」の作成・活用を通して、一貫した支援の効果が期待さ
れます。
28
「個別の指導計画」の作成と活用
個別の指導計画は、
児童生徒一人一人の障がいの状態等に応じたきめ細かな指導が行われるよう、
学校における教育課程や指導計画、対象の児童生徒の個別の教育支援計画等を踏まえて、より具体
的に教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法等を盛り込んだ計画です。
個別の指導計画には、障がいのある児童生徒の教育的ニーズに応じた指導や支援が行えるよう、
①実態把握の情報、②長期的目標、③短期的目標、④指導や支援の内容・方法、⑤評価の観点等が
明記されます。校内委員会で計画を作成し、計画に基づいて実践、結果を評価して次の改善につな
げる一連の過程
(Plan-Do-Check-Action)
を繰り返していくことが大切です。
個別の指導計画の様式は、学校ごとに児童生徒の実態に応じて工夫したり、一定の地域で統一し
たものを使用したりしています。
対象となる児童生徒の状態や本人、保護者のニーズ等、あらゆる角度から情報を収集し、実態把
握を行います。実態把握では、児童生徒について最もよく理解している学級担任が中心となり、特
別支援教育コーディネーターと協力しながら、情報収集にあたります。これまでの指導の経過や入
学前の教育の状況、生育歴等について情報が必要な場合もあります。このとき、保護者との連携に
十分配慮し、必要な情報について共有しあうことが大切です。なお、実態把握の内容は、個人情報
であるため、その活用と管理には、教職員の共通理解を図る等、個人のプライバシーが損なわれな
いよう、十分な配慮が必要となります。
実態把握の結果から、どのようなことをめざすのか、長期的目標について検討します。次に、そ
の目標を達成するための具体的な計画を作成していきます。一般的には長期的目標を達成するため
の短期的な目標や指導内容の設定、指導の手立ての工夫、指導者や場面の設定等があげられます。
さらに、どのような場合に目標が達成されたとみなすか、具体的な評価の基準を明確にしておくこ
とも重要です。
児童生徒の障がいの状態や発達段階、特性等は一人一人異なりますから、個々の児童生徒の実態
に即して指導を行うためには、一人一人の児童生徒の指導目標、内容、方法、評価等を明らかにし
た個別の指導計画を作成することが必要となります。
Point
【様式等】
個別の指導計画の様式や内容は、各学校、学級において児童生徒の障がいの状態
や発達段階、特性等を考慮して、指導上最も効果があがるように工夫し、作成する
こととなります。
※ 「個別の教育支援計画」
「個別の指導計画」の様式は参考として巻末に掲載し
ています。
29
視覚障がいの理解
視覚障がいとは、視機能の永続的な低下により、学習や生活に支障がある状態をいいます。視機
能には、視力、視野、色覚、光覚などの各種機能があります。したがって、視覚障がいとは、視力
障がい、視野障がい、色覚障がい、光覚障がい(明順応障がい、暗順応障がい)などをいいます。
なお、視機能が低下していても、それが何らかの方法もしくは、短期間に回復する場合は視覚障
がいとはいいません。
■ 視力障がい
視力は、ものの形などを見分ける力をいいます。近視や乱視などの屈折異常がある場合、教育
上特別な支援を要するかどうかは、屈折異常を適切に矯正し、両眼で見た場合の視力によって決
まります。両眼の矯正視力がおおむね 0.3 未満の場合、教育上特別な支援が必要となります。
■ 視野障がい
視野とは、正面を見ている場合に、同時に上下左右などの各方向(耳側方向に90度、鼻側及
び上方に60度、下方に70度)が見える範囲です。この見える範囲が、周囲の方から狭くなっ
て中心付近だけが残ったものを求心性視野狭窄といいます。残った視野が中心部10度(60
cm 離れて半径10cm 円が視角10度の円)以内になると高度視野狭窄といい、視力が低下し
なくても歩行や周囲の状況把握に著しく不自由になります。逆に、周囲は見えるが、中心部だけ
が見えない場合を中心暗点といいます。
■ 光覚障がい
光覚障がいには、暗順応障がいと明順応障がいがあります。暗順応障がいは、暗いところでの
見えにくさがあり、夜道などを歩くのに困難さを感じます。明順応障がいは、明るいところで目
が慣れにくく見えにくさがあり、通常の光でもまぶしさを強く感じることがあります。
【 視覚障がいのある児童生徒に見られる行動等の特性 】
◆ 小さいものや細かい部分がわかりにくかったり、大きいものの全体像を把握しにくかったりすること
がある
◆ 境界がはっきりとつかみにくかったり、立体感や遠近感を把握しにくかったりすることがある
◆ 動くものの認知に乏しかったり、ボール遊び等や目と手の協応動作を苦手としたりすることがある
◆ 床に落ちた物をなかなか見つけにくかったり、足下の障がい物や多少の凹凸につまずいたりすること
がある
◆ 人や柱、開放されたドアに気付きにくかったり、物の位置が以前と変わったりするとぶつかることが
ある
◆ 衣服の汚れや服装の乱れに気付きにくかったり、身だしなみを整えることが不十分だったりすること
がある
◆ 視野狭窄がある場合は、横から近づいてくるものの把握が不十分になりがち
◆ 初めて経験する事柄や未知の場面での行動が消極的になることがある
◆ 見ようとするものに、極端に目を近づけて見ようとしがち
◆ 板書や教科書の理解に時間がかかるために、活動内容との時間差が生じることがある
※ 学習では、動作の模倣、文字の読み書き、事物の確認の困難等があります。また、生活では、移動の
困難、相手の表情等が分からないことからのコミュニケーションの困難等があります。
30
聴覚障がいの理解
聴覚障がいとは、聴覚機能の永続的低下と環境との相互作用で生じる様々な問題点の総称です。
身の周りの音や話し言葉が聞こえにくかったり、ほとんど聞こえなかったりする状態をいいます。
聴覚障がいがある子供たちには、できるだけ早期から適切な対応を行い、音声言語をはじめその他
多様なコミュニケーション手段を活用して、その可能性を最大限に伸ばすことが大切です。
また、聴覚機能の低下が乳幼児期に生じると、言語発達やコミュニケーション技能上、また、学
習の習得や社会参加に種々の課題を生じる一因となります。
■ 伝音性難聴
伝音性難聴は、外耳や中耳という音を伝える器官の障がいによる難聴です。一般に、伝音性難
聴は、外耳や中耳の障がいなので、音が小さく聞こえるだけです。
■ 感音性難聴
感音性難聴は、内耳あるいは聴神経に障がいがある難聴です。小さい音が聞こえないだけでな
く、大きな音がひずんで聞こえることが多くあります。
補聴器で音を大きくしてもはっきり聞こえているとはいえず、
大きな音がうるさく聞こえる
(リ
クルート)現象もあります。
■ 混合性難聴
伝音系、感音系の両方に障がいがある難聴です。
■ 難聴の程度
難聴の程度の規定の仕方は、必ずしも一定ではありませんが、以下のように分けられます。
・軽 度 難 聴:平均聴力レベル26~40dBHL
・中等度難聴:平均聴力レベル41~70dBHL
・高 度 難 聴:平均聴力レベル71~90dBHL
・重 度 難 聴:平均聴力レベル91dBHL~
【 聴覚障がいのある児童生徒に見られる行動等の特性 】
◆ 音やことばの聞き取りに困難さを抱えてしまうことがある
◆ ことばを理解することが難しく、言語の獲得に困難さを抱えてしまうことがある
◆ 自分の声を聞くことが苦手なため、発声が途絶えたり、大きすぎる声で話したりすることがある
◆ コミュニケーションの機会が少なくなる場合もあり、人とのかかわりなどの社会性が乏しくなりがち
◆ 誤った聞き取りや、重要な情報を把握できなかったりするためにトラブルになることもある
◆ 聞こえにくさから社会的孤立感を味わうことがある
◆ 大勢の人と交わることに労力を伴うため、そうした場面を避けようとすることがある
※ 学習では、言語の獲得、言語概念の形成、言葉の意味理解の困難等があります。また、生活では、情
報保障やコミュニケーションの困難等があります。
31
肢体不自由の理解
肢体不自由とは、身体の動きに関する器官が、病気やけがで損なわれ、歩行や筆記などの日常生
活動作が困難な状態をいいます。医学的には、発生原因のいかんを問わず、四肢体幹に永続的な障
がいがあるものを、肢体不自由といいます。肢体不自由の程度は、一人一人異なっているため、そ
の把握に当たっては、学習上又は生活上どのような困難があるのか、それは補助的手段の活用によ
ってどの程度軽減されるのか、といった観点から行うことが必要となります。
■ 形態的側面
先天性のものと、 生後、事故などによる四肢切断等があります。また、関節や脊柱が硬くなっ
て拘縮や脱臼・変形を生じているものがあります。
■ 機能的側面
中枢神経の損傷による脳性まひを主とした脳原性疾患が多く見られます。この場合、肢体不自
由の他に、知能の発達の遅れやてんかん、言語障がいなど、種々の随伴障がいを伴うことがあり
ます。脊髄疾患として、二分脊椎等があります。二分脊椎は、主として両下肢と体幹の運動と知
覚の障がい、直腸・膀胱の障がいが見られ、しばしば水頭症を伴います。また、末梢神経の疾患
による神経性筋萎縮があり、さらに筋疾患として、進行性筋ジストロフィーなどがあります。他
に骨・関節の疾患として外傷後遺症や骨形成不全症などがあります。
【代表的な疾患】
疾患区分
中枢神経性疾患
小脳・脊髄性疾患
脊髄性疾患
末梢神経性疾患
筋疾患
骨系統疾患
その他の疾患
(結合組織・皮膚)
疾 病 種 別
脳性マヒ、てんかん、脳炎・脳症・髄膜炎(後遺症)、頭部外傷後遺症、水頭症、
溺水・低酸素脳症 等
小脳炎・急性脳失調(後遺症)
、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症
二分脊椎、脊髄性進行性筋萎縮症、ポリオ、脊髄損傷、脊髄腫瘍
シャルコマリトゥース病
進行性筋ジストロフィー症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、
先天性福山型筋ジストロフィー、ミオパチー
骨形成不全症、多発性関節拘縮、先天性股関節脱臼、軟骨無(異)形成症、
クニスト症候群 モルキオ症候群
染色体異常、奇形症候群、ダウン症候群、ターナー症候群、
コルネリア・デ・ランゲ症候群、エーラース・ダンロス症候群、色素性乾皮症
【 肢体不自由のある児童生徒に見られる行動等の特性 】
◆ 起立、歩行、階段の昇降、食事、衣服の着脱、整容、用便等、日常生活の全部又は一部に困難さを抱
えてしまうことがある
◆ 運動・動作の制限による直接的経験の不足に伴い、社会や事物・事象等に対する理解が不十分になり
がち
◆ 周りの人々から支援を受ける場面が多く、結果として受動的になり、自発性が乏しくなりがち
32
病弱・身体虚弱の理解
病弱と身体虚弱は、医学用語ではなく一般的な用語ですが、学校教育においては、身体又は心の
病気のため継続して又は繰り返し医療又は生活規制(生活管理)を必要とする状態を表す際に用い
られています。また、身体虚弱も医学用語ではなく、一般的な用語であり、学校教育においては、
病気とは直接は関係なく不調な状態が続く、病気にかかりやすいなどのため、持続的に生活規制を
必要とする状態を表す用語です。
病気や障がいの状態によっては、厚生労働省の「小児慢性特定疾患治療研究事業」によって、治
療費が公費負担となっている病気に含まれます。しかし、近年では、心身症や肥満症が病弱教育の
対象として増加傾向にあります。
小児慢性特定疾患治療研究事業については、11群514疾患が対象となっています。以下の表
は代表的な疾患です。
【 小児慢性特定疾患の内訳 】
(H25年9月現在)
疾患区分
疾 病 種 別
悪性疾患
白血病、リンパ腫、神経芽腫、脳腫瘍
等
慢性腎疾患
ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎、水腎症
慢性呼吸器疾患
気管支喘息、気管狭窄
慢性心疾患
心房・心室中隔欠損、ファロー四徴、重症不整脈、心筋症
内分泌疾患
下垂体機能低下症、成長ホルモン欠損症、甲状腺機能低下症
膠原病
若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス
糖尿病
1型糖尿病、2型糖尿病
先天性代謝異常
アミノ酸代謝異常、骨形成不全症、色素性乾皮症
等
等
等
等
等
等
血友病等血液・免疫疾患 血友病、慢性肉芽腫症、原発性免疫不全症
等
等
神経・筋疾患
ウエスト症候群 結節性硬化症、亜急性硬化性全脳炎
慢性消化器疾患
胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症 等
等
病弱教育の対象として判断するに当たっては、
学校教育法施行令や通知等で示されているように、
医療や生活規制等の状態等により判断し、その上で個々の児童生徒の実態に応じた適切な指導と必
要な支援について検討することが必要です。
【 病弱・身体虚弱のある児童生徒に見られる行動等の特性 】
◆ 学習時間に制約を受けているほか、学習の空白や遅れ、身体活動の制限を受けてしまうことがある
◆ 病気による種々の制限により、体験が不足しがち
◆ 病気への不安や家族・友人から離れた不安を要因として、心理的に不安定になりがち
33
言語障がいの理解
言語障がいとは、
発音が不明瞭であったり、
話し言葉のリズムがスムーズでなかったりするため、
話し言葉によるコミュニケーションが円滑に進まない状況であることをいいます。また、そのため
本人が引け目を感じるなど社会生活上不都合な状態であることをいいます。
■ 構音障がい
構音障がいとは話し言葉の使用において、一定の音をほぼ習慣的に誤って発音する状態を指し
ています。口唇、舌、歯等の構音器官の構造や、それらの器官の機能の異常によるものが器質性
構音障がいといいます。また、聴覚、構音器官などに器質的疾患がなく、成長過程での構音の習
得において、誤った構音が固定したと考えられるものが機能性構音障がいといいます。
① 置換【例:
「さかな」を「たかな」
、[sakana]→[takana] [s]音が[t]音に置換】
② 省略【例:
「ラッパ」を「アッパ」
、 [rappa]→[ appa][r]音が省略】
③ ひずみ
ある音が不正確に発音されている状態で、日本語にない音として発音される。音声記号で表
すことは難しく、
「
[ta]と[ka]の中間」などの場合があります。
・舌を盛り上げたり、ねじったりして「キシチ・・・」等のイ列が歪む側音化構音
・前歯から舌先を出してサ行等が歪む歯間化構音
・舌先を挙げずにラ行を発音する前舌化構音
■ 言語発達遅滞
同年齢の子供と比較して、言語理解・表現が未熟であり、発音技術も未完成であるために話し
言葉の不明瞭さ等がある状態をいいます。
■ 吃音
吃音とは、構音器官のまひ等がないにもかかわらず、話そうとするときに、同じ音の繰り返し
や、引き伸ばし、声が出ないなど、いわゆる流暢さに欠ける話し方をする状態を指します。
① 語頭音の繰り返し(連発)
【例:
「ぼ, ぼ, ぼぼ, ぼくは・・・」
】
② 語頭音の引き伸ばし(伸発)
【例:
「ぼおーーーくは・・・」
】
③ 語頭音の阻止(難発)
【例:
「さ・・・かな」
】
■ 口蓋裂
生まれつき、口蓋(口の中の天井、場合によっては口唇)が一部分又は全体が裂けているため
に、話し言葉の呼気が鼻から抜けるなどする状態をいいます。口唇だけが裂けている状態を口唇
裂、口蓋の粘膜は正常だが筋組織に異常がある状態を粘膜下口蓋裂などといいます。
発語時に必要な口腔の内圧が得られないままで学習した結果、誤った構音が習慣化していたり
することがあります。
【 言語障がいのある児童生徒に見られる行動等の特性 】
◆ 自分の思いを素直に表現することを苦手とすることがある
◆ 話す場面を避けようとすることがある
◆ 言葉を介したコミュニケーションに困難さがあるため、学習上ばかりではなく心理的、対人的な問題
を抱えてしまうことがある
34
学習障がい(LD)の理解
学習障がい(LD)とは、基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書
く、計算する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を
指すものです。学習障がいは、その原因として、中枢神経系に何らかの要因による機能不全がある
と推定されています。視覚障がい・聴覚障がい・知的障がい・情緒障がいなどの障がいや、環境的
な要因が直接的な原因となるものではありません。
学習障がいの場合、個別の知能検査からは、総体的な知的な遅れは見られません。ただし、特定
の能力に落ち込みがあり、
「話している様子からは想像できないが、書くことは本当に苦手にしてい
る。
」というように、アンバランスさが見られます。その背景には、認知(情報処理)過程、つまり、
情報を「受けとめ、整理し、関係づけ、表出する過程」のどこかに十分機能しないところがあるこ
とが推定されています。このような認知過程の部分的な障がいであるため、学習面での得手・不得
手の差が大きく、また各々現れる状態像が一様でないゆえ気付かれにくいのです。
【 学習障がい(LD)のある児童生徒に見られる行動等の特性 】
【聞くことが苦手】
【話すことが苦手】
【読むことが苦手】
・集団場面で話を聞き取れない
・適切な速さで話すことが難しい
・文字や行をとばしたり、繰り返し
・聞きもらしがある
・単語だけや短い文で話す
・指示の理解が難しい
・分かりやすく伝えることが難しい
・助詞や文末を読み違える
・聞き間違いがある
・筋道の通った話が難しい
・勝手な読みをする
たりして読む
・要点を読み取ることが難しい
【書くことが苦手】
・読みにくい字を書く
・独特の筆順で書く
【計算することが苦手】
【推論することが苦手】
・学年相応の数の意味や表し方
・量の比較や単位の理解が難しい
の理解が難しい
・事物の因果関係を理解すること
・細かい部分を書き間違える
・簡単な計算が暗算できない
・決まったパターンの文章しか書
・計算に時間がかかる
・図形を描くことが難しい
・文章題を解くのが難しい
・早合点や飛躍した考えをする
かない
が難しい
認知特性に配慮した指導
Point
学習障がい(LD)等のある子供の中には、見て理解すること(視覚的に情報を処理すること)
は得意でも、聞いて理解すること(聴覚的に情報を処理すること)が苦手な子もいれば、その逆
の傾向を示す子もいます。
視覚的な情報を処理することが得意な場合、言葉による説明だけでなく、絵や実物、実演(モ
デル)を提示することで理解が促される場合があります。逆に聴覚的な情報を処理することが得
意な場合、絵や図などだけでなく、言葉によって説明を加えると理解しやすくなったりします。
35
注意欠陥多動性障がい(ADHD)の理解
注意欠陥多動性障がい(ADHD)とは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、又は衝動性・
多動性を特徴とする障がいであり、社会的な活動や学校生活を営む上で著しい困難を示す状態をい
います。通常7歳以前に現れ、その状態が継続するものであるとされています。注意欠陥多動性障
がいの原因としては、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されています。
一定程度の不注意、又は衝動性・多動性は、発達段階の途上においては、どの子供においても現
れ得るものです。しかし、注意欠陥多動性障がいは、不注意、又は衝動性・多動性を示す状態が継
続し、かつそれらが社会的な活動や学校生活を営む上で著しい困難を示す程度の状態を指します。
注意欠陥多動性障がいには、不注意タイプ、多動―衝動性タイプ、混合タイプがあり、現れ方は
一様ではありません。すべき行動を分かっていても、自分でコントロールすることができにくく、
日常生活の中で困難さを感じてしまいます。
【 注意欠陥多動性障がい(ADHD)のある児童生徒に見られる行動等の特性 】
【 不注意 】
【 多動性 】
【 衝動性 】
注意の選択と配分がうまくで
無目的に動くことを意味しま
自己コントロールがうまくい
きないことです。
す。行動の自己統制が必要と
かず、判断より先に反応(行
される状況で最も顕著に現れ
動、発言等)が先行してしま
ます。
うことです。
・注意散漫で、指示や話を集中し
て聞くことができない
・不注意な過ちをおかす
・すぐ席を立ってしまう
・計画的にやれない
・着席していても手足やからだが
・順序立ててやれない
勝手に動く
・話を終わりまで聞かず口をはさ
む
・順番を待つことができない
・大切な物をなくす
・やたらと走り回ったりする
・必要な物を忘れる
・勝手にしゃべり、独り言も多い
・話しかけられても聞いていない
・会話やゲームに割り込んできた
り、じゃまをしたりする
・危険なことを考えなしにやって
ように見える
しまう
二次的障がい
Point
注意欠陥多動性障がい(ADHD)等のある子供等の一次的障がいである障がい特性が、状
況によっては、別の発達障がいの行動特性として見られる場合があります。二次的障がいは、
一次的障がいとの区別が難しい場合もありますが、判断に当たっては、見られる行動特性のす
べてを障がい特性である一次的障がいと考えて捉えるのではなく、二次的障がいの可能性も考
慮し、区別して判断することが必要になります。
36
特別支援学級・通級による指導の教育の対象
障がいのある児童生徒を小・中学校の特別支援学級及び通級による指導において教育する場合の
その教育の対象となる障がいの程度については、
「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫し
た支援について」
(平成 25 年 10 月 4 日付け 25 文科初第 756 号文部科学省初等中等教育局長
通知)に示されています。
1 特別支援学級の対象者
区 分
障害の程度
知的障害者
肢体不自由者
病弱者及び
身体虚弱者
弱
視
者
難
聴
者
知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通に軽度の困難があり日常生活を営む
のに一部援助が必要で、社会生活への適応が困難である程度なもの
補装具によっても歩行や筆記等日常生活における基本的な動作に軽度の困難が
ある程度のもの
一 慢性の呼吸器疾患その他疾患の状態が持続的又は間欠的に医療又は生活の管
理を必要とする程度のもの
二 身体虚弱の状態が持続的に生活の管理を必要とする程度のもの
拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が困難な程度
のもの
補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度のもの
口蓋裂、構音器官のまひ等器質的又は機能的な構音障害のある者、吃音等話し
言語障害者
言葉におけるリズムの障害のある者、話す、聞く等言語機能の基礎的事項に発達
の遅れがある者、その他これに準じる者(これらの障害が主として他の障害に起
因するものではない者に限る。
)で、その程度が著しいもの
一 自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困
自 閉 症 ・
情緒障害者
難である程度のもの
二 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適
応が困難である程度のもの
37
2 通級による指導の対象者
区 分
障害の程度
口蓋裂、構音器官のまひ等器質的又は機能的な構音障害のある者、吃音等話
し言葉におけるリズムの障害のある者、話す、聞く等言語機能の基礎的事項に
言 語 障 害 者 発達の遅れがある者、その他これに準ずる者(これらの障害が主として他の障
害に起因するものでない者に限る。
)で、通常の学級での学習におおむね参加で
き、一部特別な指導を必要とする程度のもの
自 閉 症 者
情 緒 障 害 者
自閉症又はそれに類するもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、
一部特別な指導を必要とする程度のもの
主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、通常の学級での
学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの
拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が困難な程
弱
視
者
度の者で、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要と
するもの
難
聴
者
補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度のもので、
通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とするもの
全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は
学 習 障 害 者 推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示すもので 、一部
特別な指導を必要とする程度のもの
注意欠陥多動性
障害者
肢体不自由者、
病弱者及び身体
虚弱者
年齢又は発達に不釣合いな注意力、又は衝動性・多動性が認められ、社会的
な活動や学業の機能に支障をきたすもので、一部特別な指導を必要とする程度
のもの
肢体不自由、病弱者又は身体虚弱の程度が、通常の学級での学習におおむね
参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの
38
特別支援学校の教育の対象
特別支援学校における教育の対象となる児童生徒の障がいの程度については、学校教育法施行令
第 22 条の 3(平成 19 年 12 月 26 日施行)に定められています。
学校教育法施行令
(視覚障害者等の障害の程度)
第 22 条の3 法第 75 条の政令で定める視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者
又は病弱者の障害の程度は、次の表に掲げるとおりとする。
区 分
障害の程度
両眼の視力がおおむね 0.3 未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもの
視覚障害者
のうち、拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可
能又は著しく困難な程度のもの
聴覚障害者
両耳の聴力レベルがおおむね 60 デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用
によっても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの
一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁
知的障害者
に援助を必要とする程度のもの
二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活
への適応が著しく困難なもの
一 肢体不自由の状態が補装具の使用によっても歩行、筆記等日常生活における
肢体不自由者
基本的な動作が不可能又は困難な程度のもの
二 肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的
観察指導を必要とする程度のもの
一 慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態
病
弱
者
が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの
二 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの
備考
一
視力の測定は、万国式試視力表によるものとし、屈折異常があるものについては、矯正視
力によつて測定する。
二
聴力の測定は、日本工業規格によるオージオメータによる。
39
第3部
「魅力ある学級づくり・授業づくり」
特別支援学級に在籍している児童生徒の夢や希望を自己実現するために、魅力ある学
級づくりに努め、楽しく分かりやすい授業づくりを実践することが大切です。
一人一人の教育的ニーズに応じた指導内容や指導方法を考え、児童生徒が取り組みや
すく、
「わかった」
「できた」と実感できるような支援の在り方を検討していきましょう。
学級経営に関すること
特別支援学級担任になって
特別支援学級の担任は、教育の専門家として求められる基本的な資質能力に加え、一人一人の児
童生徒の実態を的確に把握し理解して、教育課程の編成・実施・評価を適切に行うことや教育環境
の整備、保護者との連携等、特別支援教育の専門家として多くのことが求められます。
また、特別支援学級は、一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導と必要な支援を行う実践の
場として、児童生徒の輝く姿を発信していくことが求められており、このことが、特別支援学級に
在籍する児童生徒の学ぶ姿や学習の場の広がり、さらには、校内のすべての児童生徒への理解啓発
と共に活動できる学校づくりにつながっていきます。
教職員には学習指導や生徒指導等に関する専門的な指導力、社会人としての幅広い教養、高い倫
理観が求められています。障がいのある児童生徒の夢や希望の自己実現を図る支援者として、次の
ような力を高めていけるよう日々の教育実践に励んでいくことが大切です。
豊かな人間性
高い専門性
高い倫理観と
学び続ける探求心
児童生徒は、自分のよさや
障がいのある児童生徒一
障がいのある児童生徒と
可能性に目を向けてくれる
人一人を正面から見つめ、そ
ともに学び合うためには、児
人に対して心を開き、安心感
の特性やその障がいによる
童生徒と一緒に行動しなが
を抱き、信頼してくれます。
学習上又は生活上の困難な
ら、常に良識や倫理観を意識
そのためには、共感的な理解
どについて、できるだけ正確
する必要があります。
と態度に基づく豊かな人間
に知り、理解を深めることが
一人一人の指導の手がか
性が求められます。
大切です。そのためには、教
りを見出すためには、指導力
育の専門家としての高い専
の向上に努める学び続ける
門性が求められます。
姿勢が求められます。
このことは、保護者や関係
者に対しても同様です。
困ったときのヒント
Point
困ったときは、次のような取組から始めてみてはどうでしょうか。
◆ 児童生徒とともに過ごす時間を多くし、存在が認められていることを実感させ、安
心させるようにする。
◆ 児童生徒とともに校舎内外を探検したり、運動場等で一緒に遊んだりすることで、
楽しい時間を共有する。教師も楽しみましょう!
◆ 児童生徒の特性や実態に応じて、担任の得意な分野を中心に指導を始める。
『担任として困ったときに相談できる同僚をつくりましょう。
』
(一人で抱え込まないことが、チームとして取り組む第一歩!)
40
学級経営に関すること
1年間の主な学級事務
特別支援学級担任になって、4月当初は、当面の指導の計画を立てるとともに、1年間の学級の
事務を見通しておくことが必要です。ここでは、まず、1年間の主な学級事務を確認します。
【 1年間の主な学級事務 】
主な学級事務(3学期制にて作成)
4月
□指導要録の整備、出席簿の作成
□諸届出の確認と提出
□教育課程の編成、週時程表の作成
□教室環境の整備
□合理的配慮の内容について本人・保護者と確認
□実態把握
□参観日計画(年間を見越して)
、家庭訪問
□通学路、通学方法の確認
□個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成
□前担任との引継
□交流及び共同学習の打合わせ
5月
6月
7月
□就学奨励費等の手続き
□PTA・地域行事等の確認
□学級経営案の作成
□通知表の検討
□職場体験実習の打合せ
□宿泊学習
□プール指導
□次年度使用教科書の届出
□通知表と個別の指導計画の記入
□夏季休業中の課題
□1 学期の指導記録のまとめ
□作品の整理
□保護者会
8月
9月
□作品展等の準備
□修学旅行・遠足・校外学習等関連
□進路指導(個別面談等)
□個別の指導計画の見直し
□2学期の教室環境の整備
□他校特別支援学級との合同学習打合せ
□学習発表会・文化祭の計画
□運動会・体育祭の計画
□始業式
10月
□校内研究授業に向けて
11月
□就学時健康診断
12月
1月
2月
3月
□2学期の指導記録のまとめ
□作品の整理
□通知表と個別の指導計画の記入
□個別の指導計画の見直し
□冬季休業中の課題
□進路決定のための保護者との面談
□3学期の教室環境の整備
□文集づくり等
□始業式
□次年度の教育課程の検討
□卒業関連事務
□指導の評価
□一年間の指導の評価
□通知表と指導要録の記入
□次年度交流及び共同学習計画案の作成 □指導記録、次年度への引継ぎ事項の作成
□保護者会
※ 学校行事等は各学校で異なりますので、参考として活用ください
41
学級経営に関すること
新学期の準備
新学期を迎える児童生徒たちは、新しい担任の先生や新しい学級、新しい友達との出会いに向け
て、ワクワクした気持ちで期待している反面、ドキドキして落ち着かなかったり、不安だったりし
ます。先生と児童生徒との素敵な「絆をつなぐ」ために、丁寧な新学期の準備を心がけましょう。
Point
Point
『新学期の準備』の例です。
□ 学級(児童・生徒)名簿 ※なまえの漢字は正確に書きましょう!
□ 出席簿
□ 健康観察簿
※ 交流学級の観察簿にも名前を記入!(朝の会に参加する場合もあります)
□ 環境整備(机、椅子、ロッカー、フック、靴箱、傘立て等)
※ 交流学級にも設置!(使用の有無にかかわらず準備しましょう)
□ 連絡帳
□ 集金袋(給食等)
□ 電話連絡網
□ 教科書
□ 学級通信
□ 家庭調査票
□ 保健室関係(健康診断票、健康カード、身体測定記録簿)
□ 学級経営案
□ 年間指導計画
□ 時間割
□ 指導要録
□ 個別の教育支援計画
□ 個別の指導計画
確認事項
□ 児童生徒の様子
※ 特性や指導上の留意事項について確認する!(前年度の写真・VTR)
□ 通学路、通学方法
□ 登校後の動き
・ 担任の受け入れ方法
・ 玄関から教室への児童生徒の動きと支援の方法
・ 教室に入ってからの児童生徒の動きと支援の方法
□ 下校後の動き
・ 兄弟姉妹又は友達と下校
・ 保護者の迎え
・ 児童クラブ又は児童デイサービスの利用
□ 交流(協力)学級名、交流及び共同学習の内容や時間
□ 所属委員会・クラブ
□ 落ち着かない場合の対応方法
□ 担任一人で対応できないときの対応方法
など
42
学級経営に関すること
始業式・入学式での配慮
始業式、入学式に臨む児童生徒は、喜びや不安、期待や緊張でいっぱいです。それは、保護者も
同様です。できるだけ、児童生徒が安心して参加することができるよう、そして、担任との関係づ
くりの第一歩となるようにしましょう。
【 学校として確認しておくこと(入学式の例) 】
□ 児童生徒の様子
※ 特性や指導上の留意事項について確認する!(前年度の写真やVTR)
□ 通学路、通学方法
□ 登校後の動き(児童生徒・保護者)
□ 教師の迎え方
・ 玄関から教室への児童生徒の動きと支援の方法
・ 教室に入ってからの児童生徒の動きと支援の方法
□ 交流(協力)学級名
□ 式前後の動き
・ 待機の場所と待機の仕方
・ 特別支援学級と交流(協力)学級にいる時間の区分
・ 保護者の動き等
□ 入退場、呼名
『保護者への確認』
・ 支援者の有無
◆ 児童生徒の特性として、感覚の過敏な点に
・ 返事の仕方や支援の方法
ついては把握し、その対応を検討しておきま
□ 交流(協力)学級の座席
しょう。
・ 支援しやすい場所
◆ 見通しのもちにくい児童生徒の場合、どの
・ 視覚・聴覚的に刺激が少ない場所
ような支援が必要か事前に話合い、必要な支
援を準備しておきましょう。
・ 落ち着いて、安心できる場所
□ 式場の座席
・ 支援者が支援しやすい場所
・ 式場から離れやすい場所
・ 視覚・聴覚的に刺激が少ない場所
□ 担任一人で対応できないときの対応方法
※ どのようなときに、誰に、どのように
□ 新入児以外の特別支援学級の児童生徒への支援
□ 配布物
※ 通常の学級に入学してくる児童生徒への配布物、特別支援学級の児童生徒への配布物
新入学児童生徒への配慮
Point
特に、入学式に当たっては、児童生徒の障がいの特性や実態によって、入学式前
にリハーサルに来校していただいたり、就学前の幼稚園や保育所等での様子や医療
機関での情報を集めたりすることも必要です。
43
学級経営に関すること
学級経営案
学級は、
児童生徒の学校生活の基盤をなすものであり、
日々の学校生活を営む中心的な場所です。
学級経営とは、学級担任が、在籍する児童生徒のことをよく理解し、教育目標実現のために、望
ましい学習集団、生活集団としての学級に変容させる、学級担任による意図的・計画的な営みのこ
とです。
特別支援学級に在籍する児童生徒一人一人の具体的な指導目標の達成を目指して、学級担任とし
ての高い見識と創造性を発揮し、組織的に経営していくことが基本となります。
Point
学級・ホームルーム経営の主な内容
■ 児童生徒の理解
◇ 障がいの特性、性格・特徴、興味・関心、能力・学力、交友関係、希望・悩み等
■ 生活の指導
◇ 朝の会・帰りの会及び学級(HR)活動における指導、当番活動や係の活動の指導、
給食時における指導、清掃時の指導、その他機会をとらえた指導等
■ 教育環境の整備
◇ 学習しやすい教室の物的な条件の整備や安全管理、学級事務の管理運営等
■ 家庭や関係機関との連携・協力
◇ 学級通信、授業参観・懇談、家庭との連携、関係機関や地域社会との連携等
■ 教育活動の展開
◇ 教育目標、教育課程の編成・実施、指導内容・方法、児童生徒と教師のかかわり、児
童生徒の精神的・身体的な安全 等
学級経営案は、学級担任が、年間を通しての学級経営の目標や方針及び計画などを明確に示した
ものです。学級経営の方針や目標等については、学校経営ビジョンの重点目標や重点項目、学校及
び学年の目標などを踏まえて作成することが大切です。
また、特別支援学級の学級経営案は、校内の他の先生方に特別支援学級の理解を図るために、児
童生徒の姿がみえるような実態の記入や、具体的な指導の手立てがイメージできる表現を心がける
ことも大切です。
Point
学級経営案の項目の例です。
① 学級の目標(目指す児童生徒像、児童生徒の姿)
② 学級経営の方針(経営の方針、経営の重点項目、達成目標など)
③ 学級の実態(構成、障がいの状況)
④ 経営の具体的事項
(学習面、生活面、特別活動・学校行事・集会への参加の仕方、健康安全、教室環境・備
品、交流及び共同学習の方針、家庭・地域との連携、その他・特記事項等)
⑤ 児童生徒の実態(児童生徒個々の実態、目標、内容、方法、評価)
⑥ 家庭等との連携
※ ⑤と⑥は、個別の教育支援計画や個別の指導計画として作成される場合もあります。
44
学級経営に関すること
教室環境
教室は児童生徒の学校生活の中心となる場であることから、児童生徒の実態に応じて、健康で安
全に過ごせるような工夫と配慮が必要です。
教室内は、情緒的にも安定できる落ち着いた環境にすることが大切です。学級の掲示には、1日
の流れや、活動のヒントとなるような工夫も必要です。児童生徒が生き生きと主体的に活動できる
教室環境を整えていくことを心がけましょう。
例えば、集中することが難しい児童生徒の場合には、児童生徒の席から見える範囲に気を取られ
やすいものがないように留意しましょう(道具の置き場や教材等)
。
Point
自閉症の児童生徒への教室環境の例です。
■ 活動の内容と活動の場所の意味を一致させる
教室は、学習したり、着替えたり、休憩したりする等、多目的に使用されます。しかし、
このことが、自閉症の児童生徒のように、場所のもつ意味の理解を苦手とする児童生徒の
混乱を引き起こしている原因の一つと考えられます。したがって、教室環境の整え方の方
針として、対象となる児童生徒の実態によっては、一つの活動には一つの場所を確保する
ことを考えていきましょう。
例えば、室内を活動ごとにパーティション等で仕切ることで、「ここは、これを行う場
所」という意味を明確にすることが考えられます。
変化への対応に困難さのある児童生徒にとっては、好きなことや休憩時間の遊びから学
習に切り替えることが難しいので、場所を変えることによって切り替えやすくなるように
します。
例えば、学習エリアと余暇エリアを分けて設定し、学習に使わないものは余暇エリアの
方に置くようにする等です。
Point
教室環境の視点の例です。
■ 活動しやすい動線
児童生徒が登校してから、どのように動いていくと朝の活動をスムーズに行うことがで
きるかをイメージしながら、活動に応じたスペースを配置していくことが大切です。
■ 分かりやすい置き場所、理解しやすい表示
ロッカーや棚の一つ一つに、中に入れるものを分かりやすく表示(名前のラベルや写真
を貼る等)しておきましょう。
■ 片付ける場所の区分け(仕切りやかご等)
机の中には、例えば、入れ物で作成した引き出しを入れます。プラスチックかごや箱で
仕切り、小物を入れる場所にします。
■ 活動の流れの提示
朝、教室に入ってからすることをリストにして、提示する等しておきます。
45
学級経営に関すること
ティーム・ティーチング
ティーム・ティーチングとは、複数の教師が役割を分担し、協力し合いながら教育計画を立て、
実践指導する方式のことです。ティーム・ティーチングによる授業では、事前と事後に次の手続き
をとることが重要です。
複数の指導者で協力するときには
① ティーム全員で、題材・単元の指導計画を検討する。
② 指導計画に基づいて、共同で教材教具を作成する。
③ 題材、単元等の終了後、指導の評価について共に協議し、反省する。
授業においては、チーフとなる教師が授業をリードし、サブとなる教師がチーフとなる教師の指
導を補充するなどの役割を担うことが必要です。
授業を行う以前に、それぞれの教師がどの児童生徒にどのような働きかけをするのかなど、役割
を分担し、共通に確認しておきましょう。
ティーム・ティーチングによる授業には、次のような利点があります。
複数の教師が協力するティーム・ティーチングの利点
① 児童生徒の実態を、多くの視点から理解することができる。
② 個々の教師の専門性や特性を生かし創造的な授業を実施することができる。
③ 学習グループを多様に編成することができ、一人一人の能力や特性に応じた
指導が可能になる。
④ 教員同士の連携を深めることができる。 など
一方、ティーム・ティーチングが不適切に運用された場合、陥りやすい問題点が指摘されていま
す。
ティーム・ティーチングの陥りやすい問題点
① 教員の責任の所在が不明確になる場合がある。
② 教師が他者に依存的になり、児童生徒への働きかけを滞る場合がある。
③ 役割や支援の方法が共通理解されていない場合がある。
④ サブとなる教師の働きかけが児童生徒の補助や管理だけに終始する。
⑤ その場限りの対応をする。 など
これらの問題に陥らないようにするためには、事前の打ち合わせの時間をとり、授業や児童生徒
についての意思疎通、意見交換を通じて、共通理解を図っておくことが重要です。
46
学級経営に関すること
保護者との連携
保護者や家庭との連携・協力は教育の基盤です。その重要性は、特別支援教育においてもかわる
ものではありません。保護者と学校が共に子供の成長を願い、喜び、将来について語り合える関係
をつくり、家庭を含め生活全体をとおした教育を進めることが大切です。
家庭との連携は、まず、保護者の気持ちや願いを担任がしっかりと受け止めることから始まりま
す。その上で、保護者と担任が互いの気持ちを正しく伝え合うことによって、お互いの信頼関係が
高まります。また、児童生徒の将来像を見据え、障がいの状態と発達の程度に応じた指導や支援、
配慮について話合いを深めることで共通理解を図っていきます。保護者の願いを聞き取るだけであ
ったり、学校での指導方針を単に保護者へ伝えたりすることで終わらないよう、十分に留意する必
要があります。
障がいの理解と受容
保護者が自分の子供の障がいや発達の状態をどのように認識し、受け止めてい
るか把握することが大切です。場合によっては、保護者が子供の実態を客観的に
とらえることができるよう支援することも必要になります。
家庭との連携の方法
連絡帳、学級通信、授業参観、学校行事、学級懇談会、学習会、家庭訪問、各
種通信の工夫等
連絡帳
小さな成長でも見のがさず、どのような場面でどのような成長が見られたかを
わかりやすい文章で書きます。また、問題となる行動だけでなく、保護者を励ま
すような記述をするように心がけたいものです。
保護者の気持ちや願いに共感
Point
まず、保護者の気持ちや願いを共感的に受け止めることで、保護者との連携の第一歩が始ま
ります。保護者には、これまで、大きな苦労や悩み、不安があったことが想像されます。場合
によっては、保護者自身が周囲の理解を得られず、苦しい状況であったことも予想できます。
担任は保護者に対して、これまでの子育てに敬意とねぎらいの気持ちをもって接するととも
に、これからは、共に児童生徒の可能性や能力を伸ばしていきたいという思いを伝えることが
最も大切です。いきなり、保護者に要求や考えを押しつけるような話し方で接することは、必
ずしもよい結果につながるとは限らないと考えられます。
47
学級経営に関すること
学級通信等
児童生徒の活動や学級の様子などを、定期的に、積極的に伝えていきましょう。保護者や他の児
童生徒、教職員等に「特別支援学級」を知ってもらう貴重な機会となります。
特に、保護者は大きな関心を持って読んでいます。様々な立場の読み手を意識して、学級通信を
作成してみましょう。
学級通信の内容については、担任の考えや意見の一方通行にならないように、保護者や他の教職
員と共に考え合える学級通信を工夫しましょう。
● コラム的に担任や保護者、他の教職員などの思いや考え、記事などを取り上げまし
ょう。
● 全校の児童生徒や教職員、地域の人たちの理解やかかわりに広がりが図れるように、
配り方を工夫したり校内掲示を工夫したりしましょう。
● 児童生徒の作品等を掲載するなど、学級通信の作成にも児童生徒が積極的に参加で
きるように工夫しましょう。
学級通信の発行に際して、作品等を掲載する場合の配慮など、次のことに注意しましょう。
● 外部に情報を公開することになりますので、プライバシーの保護には十分配慮しま
しょう。また、内容や文章表現について、学年主任や教頭に確認してから出すように
しましょう。
● 特に、名前や顔写真については、事前に保護者の了解を得る必要があります。
● 児童生徒の作文の誤字脱字などは、学習指導の一環として訂正させてから載せまし
ょう。
● 配り方や掲示の仕方を工夫して、他の児童生徒や教職員等に学級理解が進むように
しましょう。
わたしの夢は
○○○○…
ぼくの夢は
○○○○…
48
指導計画等に関すること
実態把握
実態把握とは、児童生徒にとって適切な指導や必要な支援を導き出すために、児童生徒自身や本
人を取り巻く環境等の情報を収集し、一人一人を詳細に理解することです。
児童生徒の障がいの状態は一人一人異なっているので、必然的に一人一人の指導内容や指導方法
も異なります。的確な実態把握のためには、様々な情報を収集し、目標設定に向けて整理すること
が大切です。
【 実態把握の内容 】
(特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編より)
○病気などの有無や状態
○人やものとのかかわり
○コミュニケーションの状態
○身体機能
○興味・関心
○学習上の配慮事項
○特別な施設・設備
○進路
医学的な情報
○生育歴
○心理的な安定の状態
○対人関係や社会性の発達
○視機能、聴機能
○自己の理解(自己肯定)
○学力
○補助用具の必要性
○家庭や地域の環境
状態、病気の有無等
○知的発達や身体発育の状態
【 実態把握の情報 】
心理学的な情報
知的発達の状態、社会性の発達
身体発育の状態、身体機能・視
機能・聴機能及び情緒の安定の
○基本的な生活習慣
教育的な情報
基本的生活習慣、興味・関心、
の状態、運動機能の発達の状態、
心理的な安定の状態等
学習上の配慮事項や学力、人や
物とのかかわり、対人関係、コ
保護者からの情報
生育歴、家庭環境、生活の流れ、
その他
ミュニケーション力の状態、身
体の動き、心理的な状態等
障がいの受容の程度、進路等
本人・保護者の願い、配慮事項
等
Point
知的障がいの状態の把握
知的障がいの状態の把握に当たっては、障がいの有無、学校生活における援助や配慮の必
要性について実態を把握する必要があり、
① 知的機能
② 身辺自立(日常生活の行動や習慣:食事、排泄、衣服着脱、清潔行動など)
③ 社会生活能力(ライフスキル:買い物、乗り物の利用、公共機関の利用など)
などの状態を把握します。このほか、必要に応じて、
④ 運動機能(協調運動、体育技能、持久力など)
⑤ 生育歴及び家庭環境(生育歴上の特記すべきことなど)
⑥ 身体的状況(てんかん、麻痺、アレルギー性疾患など )
⑦ 学力
などについて、検査や調査を行い把握することも大切です。
49
指導計画等に関すること
年間指導計画
年間指導計画は、各教科、道徳、外国語活動、特別活動、自立活動及び総合的な学習の時間につ
いて、学年ごと、あるいは学級ごとに指導目標、指導内容、指導方法などを定めたより具体的な計
画です。
特別支援学級の年間指導計画の作成に当たっては、児童生徒の実態をよく把握した上で、教育目
標を達成するのに最も適切な指導の形態を考えることが大切です。
そして、それぞれの指導の形態ごとに、小学校学習指導要領、中学校学習指導要領、特別支援学
校の小学部・中学部学習指導要領の内容を参考にした教育内容をもとに、指導内容を決定します。
次に、学習集団の構成や教材・教具、必要な授業時数などを決め、より具体化していくことが大
切です。
1
実 ・一人一人の障がいの状態や発達段階、特性を十分に把握する。
態
把 ・多面的に捉える。
握 ・子供の姿が見えるように整理する。
2
教 ・学校の教育目標に沿って設定する。
育
目 ・実態に即し、特に生活年齢を考慮し、強調する点や留意する点を明らかにする。
標 ・保護者の意向や教師の指導観を反映させる。
3
指 ・目標を達成するためには、どのような指導内容が必要か明らかにする。
導
の ・各教科等の指導内容を考える。
形
「各教科等を合わせた指導」の内容を考える。
態 ・
4
指 ・指導の形態ごとに、指導内容を明らかにする。
導
計 ・年間総授業時数との関連において、指導の形態ごとにおおよその配当時間を決める。
画 ・学期別、月別の指導計画を作成する。
▲ 道徳は、学校の教育活動全体を通して行われるものですが、道徳の時間については、各教科や
外国語活動(小学校の場合)
、総合的な学習の時間及び特別活動における道徳教育との密接な関連
を図りながら、計画的、発展的に行うことが大切です。
▲ 自立活動は、児童生徒の実態に応じて時間を設定したり、各教科等の指導など学校の教育活動
全体を通じて実施したりすることができます。
年間指導計画作成の留意事項
Point
■ 「各教科等を合わせた指導」と「教科別の指導・領域別の指導」との関連を図る。
■ 目標はできるだけ具体的に示し、重点を明らかにする。
■ 学習活動を学習能力の個人差に応じて展開できるように工夫する。
■ 学習状況の変化に応じて指導計画を変更できるように弾力的な運用を行う。
■ 学習活動を校内において展開するだけでなく、校外においても具体的な生活経験を積
み重ね、生活技能を高めたり、生活習慣を身に付けたりするように配慮する。
■ 教育の効果をあげるために、家庭との連携を緊密にする。
50
指導計画等に関すること
時間割
時間割を作成するに当たっては、児童生徒の実態から指導目標を設定し、指導形態(領域や教科
等)の決定や時数配分を行ってから作成することが望ましいです。前年度の時間割の作成理由等を
把握した上で、そのよさは引き継ぎ、一人一人の実態に即しながら柔軟に修正していきましょう。
小・中学校の特別支援学級は、障がいのある児童生徒を対象としていますので、通常の学級で行わ
れる教育課程をそのまま適用できないケースがあります。そこで、学校教育法施行規則において、
特別な教育課程を編成することが認められています。特別な教育課程を編成することにより、主に
次のことが可能になります。
概
内 容
各教科の内容
知的障がい特別支援学級
下学年の内容や知的障がい特別支援学校の各教
科の内容に替えることができる
各教科・領域等の授業時数は、弾力的な取扱いが
できる
授業時数、
総授業時数
要
自閉症・情緒障がい特別支援学級
下学年の内容に替えることができる
小・中学校各学年の授業時数を基本とする
※自立活動との調整が必要
◆総授業時数は、小・中学校の各学年と同じ
各教科等を
合わせた指導
各教科等を合わせた指導(生活単元学習、作業学
習等)ができる
自立活動の指導
教科用図書
◆特別に設けられた領域の指導ができる
他の適切な教科用図書を使用できる
当該学年の教科用図書
【小学校知的障がい特別支援学級 時間割の例】
<4年生の場合>
月
1
火
水
木
【中学校自閉症・情緒障がい特別支援学級 時間割の例】
<3年生の場合>
火
水
木
金
1
国語
社会
英語
理科
数学
国語
国語
国語
国語
2
英語
数学
技・家
★保体
国語
★音楽
生活単元
算数
★理科
3
数学
★保体
理科
数学
道徳
図工
3
月
金
日常生活の指導(朝の会、係活動等)
2
当該学年に準ずる教育課程を基本とする
4
★体育
算数
学習
★体育
算数
4
★音楽
自立活動
社会
自立活動
社会
5
総合的な
道徳
★理科
算数
★音楽
5
理科
★美術
★保体
総合的な
英語
6
学習の時間
学級活動
6
社会
学習の時間
特別活動
※ ★印は交流及び共同学習
※ 国語(1)、英語(1)を自立活動(2)に充当
※ ★印は交流及び共同学習
※ 知的障がい特別支援学校の各教科の内容を取り入れ
ている。
Point
時間割作成上のポイント
するため留意点
■ 総合的な学習の時間(小学校第3~6学年、中学校)は、特別支援学級においても児童生徒
の実態に応じて適切な時間を設定することになっています。ただし、時数は適切に定めるこ
とができます。
■ 小学校の知的障がい特別支援学級の各教科を特別支援学校(知的障がい)の各教科に替え
ている場合、外国語活動を行う必要はありません。ただし、外国語活動のねらいや学習内容
等から実施が可能と判断される場合には、交流学級での外国語活動の授業への参加や特別支
援学級での指導時間の設定など行うことができます。
51
指導計画等に関すること
教科用図書
小・中学校の特別支援学級で使用する教科用図書については、特別な教育課程の編成により、当
該学年の教科書を使用することが適切でない場合は、他の適切な教科書を使用することができます
(学校教育法施行規則第139条)
。
この場合、原則として下学年用の文部科学省検定済教科書又は特別支援学校用の文部科学省著作
教科書及び学校教育法附則第9条の規定に基づく教科用図書(一般図書)の中から、選択すること
ができます。
ただし、特別支援学級においては、同学年の学級と一緒に学習を行うことが多いので、下学年の
文部科学省検定済教科書、特別支援学校用の文部科学省著作教科書等を選択する場合は、十分な検
討が必要です。また、文部科学省検定済教科書と学校教育法附則第9条の規定に基づく教科用図書
(一般図書)を同時に無償給付することはできないので、留意することが必要です。
【教科用図書の採択】
① 各教科の該当学年を選定
文部科学省著作「特別支援学校知的障害者用教科書(☆印教科書)
」
小学部用
教科名
使用学年
国 語
1~6年
算 数
1~6年
音 楽
1~6年
(文部科学省検定済教科書)
② 各教科の下学年を選定
(文部科学省検定済教科書)
③ 文部科学省著作教科書から選定
(国語、算数・数学、音楽)
④
①~③までの中で適当なものが
ない場合、学校教育法附則第9条に
規定する教科用図書(絵本等)から
書
こくご
こくご
こくご
さんすう
さんすう
さんすう
さんすう
おんがく
おんがく
おんがく
名
☆
☆☆
☆☆☆
☆
☆☆(1)
☆☆(2)
☆☆☆
☆
☆☆
☆☆☆
発 行 者
東京書籍株式会社
東京書籍株式会社
東京書籍株式会社
中学部用
教科名
国 語
数 学
音 楽
使用学年
1~3年
1~3年
1~3年
書
国語
数学
音楽
名
☆☆☆☆
☆☆☆☆
☆☆☆☆
発 行 者
東京書籍株式会社
東京書籍株式会社
東京書籍株式会社
選定
■ 学校教育法附則第9条に基づく教科用図書
学校教育法附則
第9条 高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校並びに特別支援学級においては、当分の
間、第34条第1項(第49条、第62条、第70条第1項及び第82条において準用する場合を含
む。)の規定にかかわらず、文部科学大臣の定めるところにより、第34条第1項に規定する教科用
図書以外の教科用図書を使用することができる。
52
指導計画等に関すること
教材・教具
教室には、学習に必要な教材・教具をはじめ多くの物品が用意されることになりますが、常に整
理整頓を心がけ、安全に留意した教室環境の整備が必要です。
学習場面では、児童生徒が見やすい位置にはっきりと示し、興味・関心を高めるようにすること
が大切です。
特別支援学級でそろえる備品は、対象とする児童生徒の障がいの種類や程度及び教育内容や方法
によって異なります。効果的な教育が行えるよう、必要な備品を整備しましょう。
【教材・教具とは】
● 児童生徒と指導目標達成のための媒体になるもの。
● 学習課題にそって、教師と児童生徒との教授・学習の関係を深めるもの。
● 教育計画に基づいて、児童生徒の学習を効果的に進めるもの。
【教材・教具を準備するときには】
● 児童生徒一人一人の発達の状況と学習の状況に即して準備する。
● 授業での働きかけや児童生徒の反応などを想定しながら準備する。
● 効果的に使用するために学習環境を整備する。
【教材・教具を作製するときには】
● 児童生徒一人一人の障がいの状態及び能力・適性等に即して創意工夫する。
● 児童生徒の発達段階と指導目標に合わせて工夫する。
● 有効な活用をとおして改良するなど、児童生徒の発達段階や学習課題に合わせて
工夫する。
教材・教具の開発と活用
Point
学習活動において、児童生徒が自主的、主体的に学習を進め、基礎的・基本的な内容を確
実に身に付けるようにするために、教材・教具を適切に活用することが必要です。
特別支援学級では、市販されているものについて、利用、活用ができるか十分に吟味する
必要があります。適切なものがない場合は、教材カタログや近隣の特別支援学級、特別支援
学校等を参考にしながら、児童生徒の興味・関心、実態に応じた手づくり教材・教具を開発
し、活用していくことが効果的です。
53
交流及び共同学習に関すること
障がいのある児童生徒が地域社会の中で積極的に活動し、その一員として豊かに生きる上で、障
がいのない児童生徒との交流及び共同学習を通して相互理解を図ることが極めて重要です。
また、交流及び共同学習は、障がいのある児童生徒にとって有意義であるばかりではなく、小・
中学校等の児童生徒や地域の人たちが、障がいのある児童生徒とその教育に対する正しい理解と認
識を深めるための絶好の機会でもあります。
特別支援学級と通常の学級との間で行われる交流及び共同学習は、障がいのある児童生徒にとっ
ても、障がいのない児童生徒にとっても、共生社会の形成に向けて、経験を広め、社会性を養い、
豊かな人間性を育てる上で、大きな意義を有するとともに、多様性を尊重する心を育むことができ
ます。
特別支援学校学習指導要領解説総則等編(幼稚部・小学部・中学部) 第3編第2部第1章第5節6
【 交流及び共同学習の目的 】
障害のある子どもと障害のない子どもが一緒に参加する活動は,相互の触れ合いを通じて豊かな人間性
をはぐくむことを目的とする交流の側面と,教科等のねらいの達成を目的とする共同学習の側面があるも
のと考えられる。「交流及び共同学習」とは,このように両方の側面が一体としてあることをより明確に
表したものである。したがって,この二つの側面は分かちがたいものとしてとらえ,推進していく必要が
ある。
【 交流及び共同学習の方法や内容 】
○
○
○
○
○
給食、係活動、清掃等を交流学級や特別支援学級等で共に活動
特定の教科(音楽、図画工作、保健体育等)を交流学級で共に学習
学年や交流学級の行事に学年・学級の一人として参加
興味・関心のもてる特定の単元や題材を選んで共に学習
学年や交流学級が行う総合的な学習の時間に交流学級の一員として参加
【 交流及び共同学習を行う際の留意点 】
○ 通常の学級や地域の人たちに対しては、障がいについての正しい知識、適切な支援や協力の仕方
等について理解を促すことが必要です。
○ 特別支援学級の子どもに対しては、積極的な行動や支援・協力の求め方、断り方、自分の気持ち
の表現の仕方等について一緒に考えたり励ましたりすることが大切です。
○ 活動の際は、児童生徒が主体的に取り組めるようにすることが大切です。
○ 事故の防止に努め、活動が児童生徒の負担過重にならないようにします。
【 交流及び共同学習を
推進していくためのポイント 】
★ 事前の打ち合わせによる関係者の共通理解
・ 両者のねらい
・ 対象となる児童生徒の様子について
★ 無理なく継続的に続けるための指導計画
・ 参加しやすい環境づくり
・ 事前の理解
・ 対象となる児童生徒の様子について
★ 交流及び共同学習の実践
・ 安全確保はもっとも大切
・ 主体的に取り組める活動や環境設定
★ 事後学習
・ お互いの理解やお互いへの関心の深化と期待
54
「交流教育」から「交流及び共同学習」へ
以前は、特殊教育の対象となっている障がい
のある児童生徒と、障がいのない児童生徒とが、
学校教育の一環として活動を共にすることを交
流教育と呼んできました。
平成16年の障害者基本法の一部改正に伴
い、平成20年の学習指導要領改訂において「交
流及び共同学習」とその呼称の変更が行われま
した。
交流及び共同学習に関すること
交流学級担任との連携
特別支援学級に在籍する児童生徒の保護者は、
「我が子を友だちと一緒に学ばせたい、友だちに我
が子のことを理解してほしい。
」と願っています。この願いに応えていくためには、特別支援学級担
任と交流学級担任との思いが同じになるように、協働の体制に向けた連携を進めていくことが重要
です。
学級担任として受け持っている児童生徒が、複数の学年にまたがっていたり、学校生活において
頻繁に支援を必要としたりするなど、児童生徒の実態や学校の状況によって交流及び共同学習の進
め方には大きな違いがあります。
どのような状況におかれていても、
共に学ぶ場を追求することで、
児童生徒が、集団の中で、お互いを理解しながらたくましく成長していくと考えています。
学年や全職員での共通理解
特別支援学級に在籍する児童生徒がもっている能力や個性を、校内や地域で発揮できるようにす
るためには、校内の全職員や全校の友だち、地域の方々が、特別支援学級の児童生徒のよさを理解
することが大切です。
そのためには、学級通信や写真等を掲載した授業の様子などを、全職員や全校の児童生徒が見る
ことができる場所に掲示したり、学校の PTA 新聞や学校便りなどを、地域の方々に見ていただい
たりする工夫が大切になります。
まずは、特別支援学級に在籍する児童生徒の障がい特性や実態、学習上又は生活上の困っている
状況、特に行動面やコミュニケーション面での配慮及び具体的な支援の方法等について、学年の先
生方に加え全職員に対して、児童生徒の顔が思い出されるような共通理解を図ることが重要です。
【共通理解のための活動例】
職員会
子供の学習や生活の様子を説明。
学年会
対象の学年で学習等の様子を説明。
特別支援学級の懇親会
交流学級の先生を招待。
校報の活用
子供の記事を掲載し、地域に回覧。
学年通信の活用
対象の学年で、子供の記事を掲載。
廊下掲示の工夫
学習の様子を廊下に掲示。
教室の開放
異学級の子供と遊べるように工夫。
交流学級の友だちを招待
収穫祭等に招待。
地域人材の活用
野菜作り、凧作りの講師依頼等。
「交流及び共同学習」設定上の留意点
Point
通常の学級の授業に多く参加させるということと、交流及び共同学習を積極的に実施する
ということは同じ意味ではありません。特別支援学級に在籍していることの意義が失われる
ことのないように、適切にその方法や時間を定め、実施することが必要です。
55
評価に関すること
指導の評価(まとめ)
個別の指導計画には、一人一人の指導目標が記載されています。目標には長期的なもの、短期的
なものがありますが、評価の時期をあらかじめ設定して指導目標に対して評価を行い、目標を修正
するなど、次の指導への改善につなげていく取組が重要となります。
このことは、各教科等の指導計画についても同様です。さらに、一人一人の評価から、学級とし
ての指導計画の改善につなげていく取組が必要です。
また、
児童生徒の学習の評価を行うと同時に、
指導者側の指導の成果や課題も明らかになります。
指導者が自らの指導を自己評価、自己点検することにより、指導の改善、教育課程の改善・充実に
つながる評価にしていくことが大切です。
具体的には、目標及び指導内容、活動内容、手立て、児童生徒の変容、評価等について、個別の
指導計画を基に整理し、まとめます。児童生徒の実態や学習の達成状況、活動内容、効果的な手立
てなどを具体的で簡潔にまとめていきます。
評価の留意点
Point
◆ 指導計画の指導目標に合わせて評価する。
◆ 目標に対応し、具体的で客観性のある評価をする。
◆ 評価の活用方法を明確化して評価する。
◆ 学習過程における取り組み方や意欲など情意面を重視して評価する。
自己評価の視点
Point
■ 一人一人が自分の力で取り組める多様な活動の種類や量が適切か
■ 卒業後の生活につながる教育内容の選択が適切か
■ 指導の手順や支援の工夫が適切か
■ ティーム・ティーチングの計画・実施の状況は適切か
■ 保護者との連携、協力の状況は適切か
56
評価に関すること
指導要録
特別支援学級に在籍する児童生徒の指導に関する記録については、基本的には通常の学級と同じ
です。ただし、必要がある場合には、特別支援学校の指導要録に準じて作成することとされていま
す。
特別支援学校の指導に関する記録については、小・中学校における指導に関する記録に記載する
事項に加えて、自立活動の記録について学年ごとに作成するほか、入学時の障がいの状態について
作成することとされています。
特別支援学級では、個別の指導計画を作成する必要があることから、指導に関する記録を作成す
るに当たっては、個別の指導計画における指導の目標、指導内容等を踏まえた記述となるよう留意
することが必要です。また、知的障がい特別支援学級において、児童生徒の障がいの状態等に応じ
て、各教科等を合わせて授業を行った場合や重複障がい者等に関する教育課程の取扱いを適用した
場合は、各教科等を合わせて記録できるようにするなど、必要に応じて様式等を工夫して、その状
況を適切に記入する必要があります。
自立活動の記録については、個別の指導計画を踏まえ、以下の事項等を記入します。
① 指導の目標、指導内容、指導の結果の概要に関すること
② 障がいの状態等に変化が見られた場合、その状況に関すること
③ 障がいの状態を把握するため又は自立活動の成果を評価するために検査を行った場合、その検
査結果に関すること
総合所見及び指導上参考となる諸事項については、児童生徒の成長の状況を総合的にとらえるた
め、以下の事項等を文章で記述します。
【小学校】
① 各教科や外国語活動、総合的な学習の時間の学習に関する所見
② 特別活動に関する事実及び所見
③ 行動に関する所見
④ 児童の特徴・特技、学校内外におけるボランティア活動など社会奉仕体験活動、表彰を受けた
行為や活動、学力について標準化された検査の結果等指導上参考となる諸事項
⑤ 児童の成長の状況にかかわる総合的な所見
【中学校】
① 各教科や総合的な学習の時間の学習に関する所見
② 特別活動に関する事実及び所見
③ 行動に関する所見
④ 進路指導に関する事項
⑤ 生徒の特徴・特技、部活動、学校内外におけるボランティア活動など社会奉仕体験活動、表彰
を受けた行為や活動、学力について標準化された検査の結果等指導上参考となる諸事項
⑥ 生徒の成長の状況にかかわる総合的な所見
57
記入に際しては、児童生徒の優れている点や長所、進歩の状況などを取り上げることに留意しま
す。ただし、児童生徒の努力を要する点などについても、その後の指導において特に配慮を要する
ものがあれば記入しておきます。
知的障がい特別支援学級の各教科の学習の記録については、以下のとおり
です。
教育課程編成に応じた評価
Point
小学校・中学校の知的障がい特別支援学級の教育課程は、
「当該学年の教科」
、
「下学
年代替の教科」
、
「知的障がい特別支援学校の教科」にて編成されています。この「下
学年代替の教科」と「知的障がい特別支援学校の教科」の評価の考え方について、以
下にまとめました。
「下学年代替の教科」では、当該学年より下の学年の教科目標・内容により指導し
ています。この場合の評価は、指導している学年の教科の目標に照らし、その学年の
評価規準で評価を行います。
※ 「下学年代替の教科」の評価については、中央教育審議会初等中等教育分科会
教育課程部会がまとめた報告「児童生徒の学習評価の在り方について」
(平成 22
年 3 月 24 日)を参考にしています。
「知的障がい特別支援学校の教科」は、小・中学校とは別の、独自の目標・内容が
示されています。この場合の評価は、特別支援学校小学部・中学部の各教科の目標、
内容に照らし、具体的に定めた指導内容、実現状況等を文章で記述することになりま
す。特別活動の記録についても、小・中学校及び特別支援学校における特別活動の記
録に関する考え方を参考としながら文章で記述します。
「指導に関する記録」の様式追加
Point
知的障がい特別支援学校の「指導に関する記録」の様式を追加することができます。
その場合、市町村立小学校・中学校の指導要録の様式は、各市町村教育委員会が規
定しています。
そのため、指導要録の様式を追加したい場合、所管する教育委員会に問い合わせ、
確認する必要があります(各学校の判断で様式を追加することは避けるべきです)
。
※ 知的障がい特別支援学校の指導要録の様式は各特別支援学校に問い合わせるこ
とで、確認できます。
※ また、
「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習
評価及び指導要録の改善等について(通知)
」
(平成 22 年 5 月 11 日)の文部科学
省ホームページ下方にある、
「別紙一覧」
「指導要録(参考様式)
」を参考にしてく
ださい。
58
評価に関すること
通知表
通知表とは、学習や生活の様子を家庭に伝え、子供の成長につなげようとするものです。法定表
簿ではありません。様式等については、学校独自で決めることができます。
学校で使われている通常の通知表を使用する場合と特別支援学級で独自に作成したものを使用す
る場合があります。
特別支援学級において、どのような目標を設定し、どのような学習を行ったか、学習への取り組
み方や成果、課題などを保護者にわかりやすい文章で具体的に記述することが大切です。
【通知票の記入について】
■ 保護者に分かっていただくために
→ 専門的な用語を使用しないで、具体的に伝える
→ 伝えたいことを精選して、適切な文章量で伝える
→ 子供が見ても分かるような工夫をする
■ 学んだことを家庭生活につなげるために
→ 家庭での支援が必要な場合は、具体的な支援方法や支援の度合い、ポイント等を伝える
■ 子供の成長を喜び合うために
→ 「できる」、「できた」ことを中心に伝える
→ 良い点を中心に伝える
→ 記入しきれないとき、言葉で直接伝えたいときは、面談や電話で伝える
※ これから取り組むべき内容は、学級懇談等で伝えるようにしましょう!
保護者への配慮点
Point
通知表の見方について書いておくことで、内容が保護者に伝わりやすくなります!
< 例 >
※ 「生活面」には、対人関係、集団参加、係活動、食事、清潔、交通安全、役
割などのことを書いています。
※ 「学習面」には、日常生活の指導、遊びの指導、生活単元学習、作業学習で
学んだことを、各教科、特別活動、自立活動に置き換えて記入しています。
※ 「記入内容」としては、他の児童生徒との比較でなく、個人として頑張った
ことや来学期への期待などを記入しています。
※ 「通知表」は、
「認める」
「誉める」
「励ます」という本人への言葉がけの参考
としてください。
59
評価に関すること
引継ぎ
年度末になったら、まとめの作業をします。新年度の活動がよりスムーズに展開されるよう次年
度への引き継ぎを考えましょう。
また、特別支援学級における引継ぎ資料は、法定表簿類以外にも必要となるものがあります。引
継ぎ資料には、個人情報に関することが多く含まれますので、利用と保管には十分な配慮をしまし
ょう。
法定表簿は適切な時期に記入しま
す。また、養護教諭等の関係職員と
連携し、保管場所等についても確認
しておきます。
◇法定表簿類に関すること
■指導要録
■出席簿
■健康診断票
◇児童生徒に関すること
■家庭調査・生育歴調査の記録
■諸検査の記録
■その他の情報
(相談支援ファイル、個別の教育支援計画)
「個別の教育支援計画」
としてま
とめている場合もあります。また、
就学指導委員会の結果等とも合わ
せて保管している場合もあります。
関係機関と連携し、
児童生徒を継続
的に支援していくためには重要な
情報です。
※ 個別の指導計画に記入されている場合は、それを活用できます。
◇学級経営に関すること
■教育課程
■学級経営案
■年間指導計画
■児童生徒名簿 ■通知表のコピー ■時間割
年度当初に教育委員会に提出する
教育課程は、次年度の教育課程の編
成や学級経営の参考として重要にな
ってきます。
■学級通信
◇学習指導に関すること
■個別の指導計画
「個別の指導計画」によって、こ
れまでの指導のねらいと評価が引き
継がれ効果的な指導が継続されてい
きます。
■使用した教材・教具(プリント類含む)
■授業や生活の様子の写真
■授業研究会の指導案や記録
■その他学習活動に参考になるもの
◇その他
入学前の相談の記録は、児童生徒
の実態や保護者の願い等を把握する
のに役立ちます。
■校内就学指導委員会等の記録
■個人調査書
等
引継ぎの工夫
Point
資料だけでは分からないこともあります。後任者と直接会って、引継ぎ・
打合せをしましょう。
活動で使用したプリントや写真、ビデオがあれば子どもの様子がよく分
かり参考になるでしょう。
60
各種教育に関すること
キャリア教育
キャリア教育とは、児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、
それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・
態度を育てる教育です。
進路決定や出口指導に偏りがちだった進路指導や、専門的な知
識・技術の習得が目的となりがちだった職業教育をキャリア教育の
視点からとらえていくことが大切です。
特別支援学級の児童生徒にとってのキャリア教育とは、社会生活を主体的に生きる力の育成とい
う生き方についての教育ということもできます。
国立特別支援教育総合研究所「知的障害のある児童生徒の『キャリアプランニング・マトリックス(試案)
」
(平成22年)
キャリア発達の段階
キャリア発達段階の解説と発達課題
小
学
校
(
小
学
部
)
・職業及び家庭・地域生活に関する基礎的能力の習得と意欲を育
て、後の柔軟性に必要な統合する能力習得の始まりの時期
職業及び生活にかかわ
・遊びから目的が明確な活動へ、扱われる素材が身近なものから
る基礎的な能力獲得の
地域にある素材へ、援助を受けながらの活動から自主的・自立
時期
的活動へと発展しながら全人的発達をとげる時期
・働くことに対する夢や意欲を育てる時期
中
学
校
(
中
学
部
)
職業及び生活にかかわ
高
等
学
校
(
高
等
部
)
る基礎的な能力を土台
に、それらを統合して
働くことに応用する能
力獲得の時期
職業及び卒業後の家庭
生活に必要な能力を実
際に働く生活を想定し
て具体的に適用するた
めの能力獲得の時期
・小学部段階で積み上げてきた基礎的な能力を、職場(働くこと)
や生活の場において、変化に対応する力として般化できるよう
にしていく時期
・職業生活に必要な自己及び他者理解(自らのよさや仲間のよさ)
を深め、実際的な職業体験を通じて自らの適性に気づき、やり
がいや充実感の体感を通して、職業の意義、価値を知ることを
学んだり、自己の判断による進路選択を経験したりする時期
・中学部段階で培ってきた能力を土台に、実際に企業等で働くこ
とを前提にした継続的な職業体験を通して、職業関連知識・技
術を得るとともに、職業選択及び移行準備の時期
・自らの適性ややりがいなどに基づいた意思決定、働くことの知
識・技術の獲得と必要な態度の形成、必要な支援を適切に求め、
指示・助言を理解し実行する力、職業生活に必要な習慣形成、
経済生活に必要な知識と余暇の活用等を図る時期
61
各種教育に関すること
進路指導・進路学習
進路指導は一人一人の児童生徒の学校卒業時の進路選択の援助にとどまらず、卒業後の生活が豊
かになるように、自立的に生活する力や働く力を教育活動全般を通して育てるものです。また、社
会の仕組みや職業に応じて、
人間としてより良い生き方ができるように指導・援助することであり、
いわば生き方の支援でもあります。
特に、特別支援教育における進路指導においては、一人一人の障がいの状態及び発達段階、特性
等を十分に把握した上で、進路学習(生徒の進路に関する意識や認識を育て、主体的な進路選択を
促す学習)
、産業現場等における実習や進路相談を通して自立的に生活する力を育てるとともに、進
路先の自己決定にむけての助言や援助を、組織的・継続的に行うことが大切です。
学級担任は、児童生徒の障がいの状態や発達段階の把握とともに、特性(よさ)の発見や、本人
の将来に対する夢や希望等の理解に努め、情報交換を深めながら、次のようなことに留意して保護
者と連携した進路指導を進めることが必要です。
指導上の留意点
Point
<小学校特別支援学級の場合>
● 一人一人の児童の、卒業後の生活につながる自立的な生活力(身辺処理、通学等)が
高まる教育活動を計画して行うとともに、将来の進路について保護者と協議する。
<中学校特別支援学級の場合>
● 生徒の卒業後の進路(就職、高校・高等部進学等)を見通して、3年間(年間、月間)
の進路指導計画を立て、実施する。
● 進路に関する各種情報(実習先、進学先、就職先等)を、近隣の特別支援学級や関係
機関と連絡を取り合いながら収集し、活用する。
● 卒業後の追指導(アフターケア)を充実するために、職場訪問、進路学習や学校行事
への招待等を積極的に行う。
● 進路に関する情報(卒業生の社会生活の状況等)を保護者や本人に知らせ、将来の展
望を明らかにして、主体的な進路選択ができるように一貫した指導や援助を行う。
【 進路学習の中で確認しましょう! 】
【高等学校】
【特別支援学校】
高等学校の学校生活(1日の流れ等)や、学科の
授業内容、取得できる資格、進路(進学・就職先等)
について学習しておきましょう。
また、入学後の学校生活に適応できるよう進学ま
でに準備しておきましょう。
特別支援学校の学校生活(1日の流れ等)や、授業
内容、進路(進学・就職先等)について学習しておき
ましょう。オープンスクールに参加し学校の雰囲気に
触れることも大切です。また、入学後の学校生活に適
応できるよう進学までに準備しておきましょう。
【職業能力開発校】
【就職】
県内には、県立産業技術専門校(西都・高鍋)が
あります。各職業に必要な技能や知識修得のための
訓練を行っています。
中学校卒業者は募集していない訓練科があります
ので、ホームページを参考にしましょう。
中学校を卒業して就職することも考えられますが、
求人は厳しいのが現状です。
【家事従事】
家庭の事情や障がいの状態により自宅生活を送る場
合もあります。
62
各種教育に関すること
性教育(せいの学習)
障がいのある児童生徒の性的な成熟や性行動の現れ方は、障がいのない児童生徒とほとんど違い
はなく、人間の成長に伴う自然な現象です。特別支援学級の児童生徒の性教育では、本人の実態に
応じた配慮が大切となります。
そこで、将来の社会生活を見越しながら、児童生徒の発達段階や生活年齢を踏まえて、性に関す
る内容について、適切な指導を行うことが大切です。
以下の内容をポイントとして指導しましょう。
【 指導内容 】
・成長の自己認識、男女の違い
・生命の誕生、生命の大切さ
・男女の人間関係、マナーとエチケット
・清潔と衛生(感染症の予防)
・性情報への対応と性犯罪の防止
等
【 指導方法 】
・わかりやすい学習(指導内容の精選、視聴覚機器等の活用)
・ロールプレイを取り入れた体験的な学習の導入
・仲間と協議、活動する機会の設定
・対話の重視(気付きや表現を大切に)
【 かかわり方 】
・大人になることを歓迎する。
・生活年齢にあったかかわり方をする。
・プライバシーを尊重する。
指導上の留意点
Point
以下の点に、十分留意して指導しましょう。
・ 日常生活の中での具体的な指導
・ 生活年齢を踏まえた指導
・ プライバシーの尊重
63
各種教育に関すること
情報教育(ICT活用)
近年、発達障がいなどによって学習に困難を抱える子供たちの可能性を高める手段として、IC
T(情報通信技術)を効果的に活用した実践に大きな期待が寄せられています。
特別支援教育におけるICT活用方法については、各教科の理解を促進するための活用、認知特
性や感覚機能障がい、運動機能障がいを補う機器としての活用、意思疎通の補助的・代替的手段と
しての活用などがあります。このような方法を児童生徒一人一人の実態に応じて適宜活用し、効果
的な ICT 活用を検討していくことが求められます。
特別支援学級が通常の学級や通級指導教室と異なる点として、児童生徒一人一人の障がい特性や
発達段階を考慮した学習と、小集団の特性を活かした学習の両方が求められる点にあります。IC
Tは個別の指導にも、小集団の指導にも活用することができます。
ただし、特別支援学級で個別の指導や小集団の指導にICTを利用する際の留意する点は、IC
Tは児童生徒の困難さをサポートしたり、自信をつけたり、あるいは学習意欲を高めたりする便利
な道具であるということです。全てをICTにより解決するのではなく、ICTを「可能性を広げ
てくれる道具」と捉え、有効に活用することが重要です。
【 個別での活用 】
【 小集団での活用 】
個別の学習を支援するための手段
プレゼンテーションを支援するための手段
子供に応じた ICT を選択することで、学習
ICT をつかうことで、活動の振り返りや、
を効率的に進めることができます。
情報の整理などができます。
困難さを支援するための手段
小集団での活動の手段
子供の実態に応じて ICT 機器を組み合わせ
子供の困難さを減らすツールの一つとし
て、ICT が期待されています。
ることで、集団活動の可能性が拡がります。
学習の意欲を高めるための手段
集団全体の意欲を高めるための手段
ICT を上手く活用することで、子供達の意
ICT を使うことで、喜びや達成感を、他の
欲を高めることができます。
子供達と一緒に味わえます。
国立大学法人兵庫教育大学「ICT活用ハンドブック~特別支援学級編~」
(平成26年3月)
※ 平成25年度文部科学省委託事業「情報教育指導力向上事業」
ICTの活用による学習に困難を抱える子供たちに対応した指導の充実に関する調査研究事業
64
支援に関すること
校内支援体制
特別支援学級の児童生徒が、学校生活の中で、一人一人の個性を発揮し、健やかな成長・発達を
促すためには、
校内において温かく理解される中で安心して学習に取り組める状況が求められます。
そのためには、校内の全職員が特別支援学級の児童生徒や特別支援教育について十分に理解し、協
力し合える体制を作ることが大切です。
『 校内での理解・協力の工夫 』
『 担任不在時の補充等 』
① 児童生徒の実態について、全職員の共通
理解を図ります。
② 学校行事の参加についての学校として
の方向性を確認します。
③ 同学年の通常の学級とのかかわり方に
ついて、保護者の願いを含めながら話合い
ます。
④ 特別支援教育についての理解を深める
ための校内研修を推進します。
学級担任が出張等で不在の場合の補充体制
や遠足などの学校行事に学級の児童生徒がど
のように参加するのかを校内で確認しておき
ましょう。児童生徒が普段通りに学習できる
状況を保つためにはどのようにかかわるのが
適当であるか等についての検討を積極的に行
いましょう。また、休み時間の行動について
も全職員の理解と協力が求められます。
校内支援体制の構築
Point
校内の支援体制を確立するに当たっては、系統的な支援を行うための組織と仕組みを構築す
る必要があります。具体的には、次のような体制の構築を目指します。
◆ 校内委員会を設置して、校内全体で支援する体制を整備する。
◆ 特別支援教育コーディネーターを指名し、校内の教職員や、校外の専門家、関係機関と
の連絡調整に当たる仕組みを整備する。
◆ 当該学級の学級担任だけでなく、同学年の担当教員、専科担当教員、その他のティーム・
ティーチング担当教員、少人数指導担当教員等、学校内外の人材を活用して個別や小集団
での指導体制を整備する。
◆ 巡回相談員、特別支援学校の教員など専門知識を有する教員、スクールカウンセラー等
心理学の専門家等による支援体制を整備する。
なお、LD 等の児童生徒がいじめや虐待の被害を受けている場合や、周囲との人間関係がうまく
構築されない、学習のつまずきが克服できないといった状況が進み、不登校に至っている場合など
においては、例えば、校内の生徒指導体制との連携を図るなど、総合的に児童生徒への対応を図る
必要があります。学校の状況等によっては、このような総合的な取組を円滑に行えるような体制が
重要となります。
65
支援に関すること
校内就学指導(教育支援)委員会
校内には就学指導委員会を組織している学校も多くあります。
特別支援教育の体制整備を進める中で、この組織は特別支援教育の校内委員会の機能に包括され
る場合が多いと考えられます。組織としての在り方は変わっても、就学前から就学後までの一貫し
た支援を行うための校内での検討を進めていく場をもつことは、これからも必要なことです。
今後は、特別支援学級や特別支援学校での教育が望ましいかどうかというだけでなく、専門家チ
ームや巡回相談員等の支援を受けながら、どのような支援がどの程度必要なのかを明らかにし、本
人・保護者の意向を踏まえた上で、一人一人の教育内容を検討することが大切です。
校内就学指導委員会の役割と内容
Point
校内就学指導委員会は、小・中学校に在籍する児童生徒や入学予定者のうち、教育上特別な
配慮を要する場合に、障がいの状態等について調査し、適切な教育的対応を検討します。そし
て、保護者や担任を含む関係職員に対して、対象となる児童生徒の教育内容等に関する提案や
助言を行う組織です。
1 対象となる児童生徒に適した教育環境を検討するための情報収集
できるだけ早い時期から、必要に応じて関係機関との連携を図りながら、必要な情報を
収集します。
2 保護者との就学相談
保護者の要望を十分考慮しながら、相談を進めます。校内で対応することが難しい場合
には、必要に応じて専門機関の助言を得ながら、適切な対応を心がけます。
3 市町村教育委員会、地域の幼稚園や保育所、小・中学校との連携
地域の関係機関と連携し、組織的で一貫性のある就学への支援が行われるようにします。
Point
「教育支援」への捉え直し
するため留意点
文部科学省がまとめた「教育支援資料」
(平成24年10月)には、
「 障害のある子供一人一人のニーズを把握し、適切な指導及び必要な支援を図る特別支援教
育の理念を実現させていくためには、早期からの教育相談・支援、就学支援、就学後の適切
な教育及び必要な教育的支援全体を一貫した「教育支援」と捉え直し、個別の教育支援計画
の作成・活用の推進等を通じて、一人一人のニーズに応じた教育支援の充実を図ることが、
今後の特別支援教育の更なる推進に向けた基本的な考え方として重要である。
」
と示されています。
このことから、年度末には、校内委員会又は校内就学指導委員会において、教育上特別な配
慮を要する児童生徒について検討を行います。例えば、1年生の場合、入学時に合意した教育
内容(学級種や教育課程、配慮内容等)について、児童生徒の成長の状況等も踏まえて評価し
ます。そして、評価の内容に基づき、次年度の教育内容を検討します。検討した結果(次年度
の教育内容)については、保護者に確認し、保護者と学校が合意することが重要です。また、
学級種の変更を伴う場合は、所管する教育委員会との連携を密に図ることが大切です。
66
支援に関すること
教育相談
保護者は、子供の学校生活や将来の生活について、様々な願いや悩みをもっています。特別支援
学級では、子供へのかかわりだけでなく、保護者の気持ちを受け止め、必要な支援を行うことが大
切です。
また、情報が不足している保護者が不安に思うこともあります。関係機関と連携し必要な情報が
いつでも提供できるように準備をしておきましょう。
【保護者と面談する際の配慮事項】
Point
Point
Point
● 保護者の心情への配慮
我が子に障がいがあると分かって、保護者の気持ちは様々に揺れ動いてい
ます。相談に当たっては、保護者の気持ちを共感的に理解することが大切で
す。保護者の話に十分に耳を傾け、保護者の不安を和らげましょう。また、
子供のために精一杯努力をしてきたことをねぎらい理解しましょう。
● 保護者の願いの確認
学校や家庭での生活、学習、進路などについて、保護者の願いを確認しま
しょう。下学年のうちは、学校生活に慣れることに重点を置いた話が中心に
なるかもしれませんが、何回も相談を重ねながら保護者の気持ちを引き出し
ていきましょう。
また、保護者のとらえている子供像が、学校での様子と大きくかけ離れて
いることもあります。毎日の保護者とのやりとりの中で、子供の様子を丁寧
に伝えていきましょう。そして、「〇〇ができませんでした」ではなく「〇
〇のことで△△してみましたが、本人がとまどっていました。お家ではどの
ように進めていますか」等家庭での様子を聞いたり協力をお願いしたりし
て、保護者が子供の状況をきちんととらえることができるようにしていき
ましょう。
● 最終的には保護者(本人)の自己決定
相談にあたっては、学校から一方的に「このようにしてください」と指し
示すのではなく、保護者や本人の気持ちを大切にして、どのような方向で進
めたいのか、最終的にはどうしたいのかなど確認していきましょう。また、
情報提供や相談をこまめに行い、気持ちを整理できるようにしていきましょ
う。
67
支援に関すること
関係機関との連携
特別支援学校
児童生徒の教育のために、特別支援学校との連携を図り、効果的にその機能を活用することが
不可欠です。例えば、児童生徒の実態把握、個別の指導計画等の作成、児童生徒の理解やその対
応についての助言を得ることなどが考えられます。
学校間
幼稚園・保育所、小学校、中学校及び高等学校への長期にわたる一貫した支援のために、保護
者の了解を得た上で、各学校段階での発達の段階や指導体制などの特性を踏まえた有効な支援内
容や手立ての情報を提供するなど、個別の指導計画等を活用して学校種間で連携を図っていくこ
とが大切になります。
医療機関
特別支援学級の児童生徒は、てんかんや心臓疾患などを有している場合があります。必要に応
じて、保護者の了解のもとに主治医と服薬や症状につて情報を交換することが大切です。また、
行事などでは学校医との意見調整を図るほか、宿泊学習などでは現地の医療機関との連携も必要
になります。
福祉機関等
教育活動の円滑な運営を図るためには、教育相談機関、児童相談所、作業所、福祉施設、福祉
事務所、障害者職業センター、公共職業安定所、親の会などの団体、事業所などとの連携が必要
となります。
地域
学習活動を進めていく上で、買い物や交通機関の利用など児童生徒の社会性を広げていくため
には、地域の人々の教育力に負うところが大きくあります。また、今後地域社会の一員としてと
もに生きることを考え、地域の人々とともに児童生徒を育てていくという視点に立ち、地域との
連携を深め、学校内外を通じた児童生徒の生活の充実と活性化を図ることが大切です。
関係機関との連携を進める留意事項
Point
○ 関係機関と連携するに当たっては、対象となる児童生徒の個人情報の扱いには十分留意
しましょう。
○ 関係機関への情報提供や情報提供を求める場合については、保護者の許可をとることが
必要です。
68
支援に関すること
各種援助制度
子供の障がい種別や障がいの状態によって、本人や家族を援助するために、教育、福祉等におい
て各種援助制度があります。保護者や関係機関との連携を図る上でも、主なものについて知ってお
くことが大切です。
■ 特別支援教育就学奨励費
障がいのある幼児児童生徒が特別支援学校や小学校・中学校の特別支援学級等で学ぶ際に、保護者が
負担する教育関係経費について、家庭の経済状況等に応じ、国及び地方公共団体が補助する仕組みです。
なお、平成 25 年度より、通常の学級で学ぶ児童生徒(学校教育法施行令第 22 条の3に定める障がいの
程度に該当)についても補助対象に拡充しています。
対象とする経費は、通学費、給食費、教科書費、学用品費、修学旅行費、寄宿舎日用品費、寝具費、
寄宿舎からの帰省費などがあります。
◆ 支給項目
① 学校給食費
② 交通費(通学費,職場実習交通費,交流及び共同学習交通費)
③ 修学旅行、校外活動参加費
④ 学用品等購入費
⑤ 新入学児童生徒学用品費等
◆ 窓口
各学校の事務担当者が窓口になって事務を担当しています。
◆ 支給窓口
小・中学校においては、各市町村の教育委員会より支給されています。
■ 特別児童扶養手当
身体に障がいを有する児童について、その児童の看護に当たる父若しくは母,又は父母に代わる養育
者に対して、この手当が支給されます。
◆ 対象
20才未満の障がい児であって、「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」に定められた障がい
状態である者。所得制限があります。
◆ 手続き
市役所・町村役場に認定請求書及び必要な書類(戸籍謄本、診断、住民票等)を提出します。審査
の上、申請した日の翌月から郵便局で支給されます。
Point
各種手帳について
■ 療育手帳
【対象】知的障がいのある者
【内容】公共交通機関の運賃割引、税金等の減免等
【窓口】居住地の市町村の福祉担当課
■ 身体障害者手帳
【対象】身体に障がい(視覚、聴覚、身体、病弱等)のある者
【内容】公共交通機関の運賃割引、税金等の減免等、日常生活用具(車椅子)購入時の補助など
【窓口】居住地の市町村の福祉担当課
■ 精神障害者保健福祉手帳
【対象】精神障がいのため長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある者
【内容】公共交通機関の運賃割引、税金等の減免等
【窓口】居住地の市町村の福祉担当課
69
参考資料
諸検査
諸検査は、児童生徒の発達の状態を把握するのに有効です。しかし、多くの種類があることから、
その目的や対象年齢を考慮して使用を検討することになります。
チェックリストのものは、学校職員や保護者が行うことができますが、個別式のものは、検査に
習熟した者が実施することになります。検査を実施する機関としては、特別支援学校、教育研修セ
ンター、発達障害者支援センター、医療機関、児童相談所などがありますが、検査目的によって関
係機関を選択することになります。検査に際しては、保護者の同意が必要です。また、検査結果に
ついては、守秘義務に十分留意する必要があります。
検査名
種別
対象
概要
S-M 社会生活
乳幼児~中学生
・社会生活に必要な基本的な生活能力に関して、身辺自立、移
能力検査
約 20 分
動、作業、意志交換、集団参加、自己統制の領域について把
握できます。
LDI-R
LD判断のため
の調査票
PRS
小学校1年~
チ
ェ
ッ
ク
リ
ス
ト
LD児・ADH
・基礎的学力について、LD のある子供の状態とどの程度一致
中学校3年
しているかが把握できます。チェックは 10 領域(基礎的学
20 分~40 分
力;聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する・英語・
数学、行動、社会性)です。
5歳~中学生
約5分
D 児診断のた
・
「言語性LD」
「非言語性LD」等のタイプを把握することが
できます。子供が必要としている援助や、日常の不適応、学
習上の困難を解決する糸口をつかむことができます。
めのスクリーニ
ングテスト
田中ビネー知能
2歳0ヶ月~
検査Ⅴ
成人
ての年齢的な指標を把握できます。各問題の内容を指導に活
90 分~120 分
かすことができます。
WISC-Ⅲ知能
5歳0ヶ月~
検査
16歳11ヶ月
60 分~90 分
個
別
式
・年齢に応じて分けられた問題構成となっており、発達につい
・言語性、動作性、全検査の IQ と評価点プロフィール(個人内
差)により、発達を分析的に把握できます。
・因子分析から得られた4つの群指数(言語理解、知覚統合、
注意記憶、処理速度)を、子供の指導に活かすことができま
す。
K-ABC 心理・
2歳6ヶ月~
教育アセスメン
12歳11ヶ月
面から評価し、得意な認知処理様式を見つけ、指導に活かす
トバッテリー
30 分~60 分
ことができます。
・子供の知的能力を、認知処理過程と知識・技能の習得度の両
・K-ABC -Ⅱでは、認知処理を、継次処理と同時処理に学習能
力と計画能力を加えた4つの能力から測定できます。適応年
齢の上限が 18 歳 11 ヶ月に拡大されています。
70
合理的配慮
教育についての障がい者の権利を認め、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として
実現するため、個人に必要とされる合理的配慮が提供されることが必要です。
合理的配慮の事例については、国立特別支援教育総合研究所ホームページの「インクルーシブ教
育システム構築支援データベース」を参考にしてください。
「合理的配慮」とは、
「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使
することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適切な変更・調整を行うことであり、障害
のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要なもの」であり、
「学校の
設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は、過度の負担を課さないもの」と
定義した。なお、障害者の権利に関する条約において、
「合理的配慮」の否定は、障害を理由とする差別
に含まれるとされていることに、留意する必要がある。
障害のある子どもに対する支援については、法令に基づき又は財政措置により、国は全国規模で、都道
府県は各都道府県内で、市町村は各市町村で、教育環境の整備をそれぞれ行う。これらは、
「合理的配慮」
の基礎となる環境整備であり、それを「基礎的環境整備」と呼ぶこととする。これらの環境整備は、その
整備の状況により異なるところではあるが、これらを基に、設置者及び学校が、各学校において、障害の
ある子どもに対し、その状況に応じて、
「合理的配慮」を提供する。
中央教育審議会初等中等教育分科会報告(平成24年7月23日)
Point
Point
基礎的環境整備
① ネットワークの形成・連続性のある多様な学びの場の活用
② 専門性のある指導体制の確保
③ 個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成等による指導
④ 教材の確保
⑤ 施設・設備の整備
⑥ 専門性のある教員、支援員等の人的配置
⑦ 個に応じた指導や学びの場の設定等による特別な指導
⑧ 交流及び共同学習の推進
学校における合理的配慮の観点
① 教育内容・方法
①-1 教育内容
①-1-1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮
①-1-2 学習内容の変更・調整
①-2 教育方法
①-2-1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮
①-2-2 学習機会や体験の確保
①-2-3 心理面・健康面の配慮
② 支援体制
②-1 専門性のある指導体制の整備
②-2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮
②-3 災害時等の支援体制の整備
③ 施設・設備
③-1 校内環境のバリアフリー化
③-2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮
③-3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮
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相談支援ファイル
宮崎県教育委員会では、
「発達障がい等特別支援教育総合推進事業」において、発達障がいを含む
障がいのある子どもの乳幼児期から成人期に至るまで一貫した支援方策について検討するため、小
林市(平成20年度から平成23年度)と延岡市(平成22年度から平成23年度)をグランドモ
デル地域に指定し事業を展開してきました。そこで開発されたのが「相談支援ファイル」です。
「相談支援ファイル」は子どもと保護者に寄り添いながら支援をつないでいくためのツール(道
具)です。
「相談支援ファイル」に子どもについての情報を整理し積み重ねていくことで、これまでどのよ
うな支援を受けてきたのか、そして今どのような支援を必要としているのか、新たに関わる支援者
に正確な情報を伝えやすくなります。そのことを通して、医療・保健・福祉・教育・行政機関等の
各関係機関が子どもの特性やニーズを共通理解し、互いに連携し合って子どものライフステージに
寄り添った支援を行うことができるようになることをねらいとしています。
また、個別の教育支援計画を策定する際の貴重な資料として活用していただくことも期待してい
ます。
■「相談支援ファイルきずな」
小林市で研究、開発された相談支援ファイルです。
「相談のき・ろ・く」は携帯版となっており、母子手帳に挟んで使用できるように工夫さ
れています。
まずは「相談のき・ろ・く」を使っていただきながら、継続して支援を希望される保護者
の方に「相談支援ファイルきずな」をお渡しします。段階を設けることによって、保護者の
方がお子さんの特性に気づかれるきっかけを作り、徐々に向き合うことができるようにして
います。
■「さんさんリレーファイル」
延岡市で研究、開発された相談支援ファイルです。
Q&Aが掲載されているなど、使いやすいように工夫されています。この他、延岡市では
「さんさんリレーファイル」の補助的なツールとして、子どもの特性を正確に把握するため
に、5歳の時点での発達状態を確認するためのシート「わかばシート」と、乳幼児期の発達
を運動、社会性、言語の3領域について細かに観察するためのシート「育ちのあしあと」を
活用できるようにしています。
※ 上記内容は宮崎県ホームページ「発達障がいを含む障がいのある子どもの『相談支援ファイル』
」より
「相談支援ファイル」等の電子データが必要な方は、宮崎県ホームページ「発達障がいを含む障
がいのある子どもの『相談支援ファイル』
」からダウンロードすることができますので、ぜひ活用し
てください。
※ HPアドレス http://www.pref.miyazaki.lg.jp/ky-tokubetsushien/kurashi/kyoiku/page00047.html
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個別の教育支援計画(参考例)
平成25年度「
『支援をつなぐ』特別支援教育エリアサポート構築事業」の一環で、宮崎東諸県エ
リアの先生方が作成された様式を参考として掲載します。
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個別の指導計画(参考例)
平成25年度「
『支援をつなぐ』特別支援教育エリアサポート構築事業」の一環で、宮崎東諸県エ
リアの先生方が作成された様式を参考として掲載します。
参考例「個別の教育支援計画」
「個別の指導計画」の様式等の電子データが必要な方は、
「みやざ
きの特別支援教育」のホームページからダウンロードすることができますので、ぜひ活用してくだ
さい。
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県の施策と相談できる学校
本県では、小・中・高等学校等に在籍する発達障がい等のある児童生徒への支援の充実や特別支
援教育担当者の専門性の確保、全教職員を対象にした特別支援教育に関する基本研修の推進など、
新たに取り組むべき課題に対応するため、
平成24年12月に
「みやざき特別支援教育推進プラン」
を策定しました。
このプランに基づき、
平成25年度から
「
『支援をつなぐ』
特別支援教育エリアサポート構築事業」
に取り組んでいます。この事業は、発達障がいを含むすべての障がいのある子どもの多様な学びに
対応するため、幼稚園・保育所等、小・中・高等学校等それぞれの校内支援体制の充実、及びそれ
らをつなぐ一貫した地域支援体制の構築を図ることを目的としています。
具体的には、県内を障がい保健福祉圏域に準じて7つのエリアに分け、各エリアの拠点校にエリ
アコーディネーターを配置し、小学校・中学校での指導の経験を生かした実践に基づいたアドバイ
スを行っています。
特別支援学級に在籍する児童生徒の指導・支援のことについて相談したい場合、地域のエリアコ
ーディネーター又は特別支援学校のチーフコーディネーターに連絡してください。
なお、チーフコーディネーターが配置されていない特別支援学校でも、相談を受けています。
【エリアコーディネーター配置校(平成26年度)
】
エリア名
宮崎東諸県
南 那 珂
西 都 児 湯
都城北諸県
西 諸 県
日 向 入 郷
延岡西臼杵
市 町 村 名
宮崎市、国富町、綾町
日南市、串間市
西都市、高鍋町、新富町、西米良村、木城町、川南町、都農町
都城市、三股町
小林市、えびの市、高原町
日向市、門川町、諸塚村、椎葉村、美郷町
延岡市、高千穂町、日之影町、五ヶ瀬町
学
校
名
宮崎市立宮崎小学校
日南市立飫肥小学校
高鍋町立高鍋東中学校
都城市立明道小学校
小林市立小林小学校
日向市立富高小学校
延岡市立延岡小学校
【特別支援学校とチーフコーディネーター配置校(平成26年度)
】
エリア名
宮崎東諸県
〃
〃
〃
〃
南 那 珂
西 都 児 湯
都城北諸県
〃
西 諸 県
日 向 入 郷
延岡西臼杵
〃
学
校
名
県立明星視覚支援学校
県立みやざき中央支援学校
県立赤江まつばら支援学校
県立みなみのかぜ支援学校
県立清武せいりゅう支援学校
県立日南くろしお支援学校
県立児湯るぴなす支援学校
県立都城さくら聴覚支援学校
県立都城きりしま支援学校
県立都城きりしま支援学校小林校
県立日向ひまわり支援学校
県立延岡しろやま支援学校
県立延岡しろやま支援学校高千穂校
※ ●印がチーフコーディネーター配置校を示します。
78
連 絡 先
0985-39-1021
0985-39-1633
0985-56-0655
0985-85-7851
0985-85-6641
0987-23-9212
0983-33-4207
0986-22-0685
0986-25-1878
0984-23-5177
0982-54-9610
0982-29-3715
0982-73-1077
配置校
●
●
●
●
●
●
●
●
●
【 引用・参考文献 】
■文部科学省「特別支援学校学習指導要領解説自立活動編(幼稚部・小学部・中学部・高等部)
」2009
■文部科学省「特別支援学校学習指導要領解説総則等編(幼稚部・小学部・中学部)
」2009
■文部科学省「特別支援学校幼稚部教育要領特別支援学校小学部・中学部学習指導要領」2009
■全国特別支援学校知的障害教育校長会編著「新しい教育課程と学習活動Q&A」 東洋館出版社 2010
■文部科学省「小・中学校におけるLD(学習障害)
,ADHD(注意欠陥/多動性障害)
,高機能自閉症
の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)
」2004
■中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)
」2005
■中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善につ
いて(答申)
」2008
■中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)
」
2010
■文部科学省「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要
録の改善等について(通知)
」2010
■中央教育審議会初等中等教育分科会「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のた
めの特別支援教育の推進(報告)
」2012
■文部科学省初等中等教育局特別支援教育課「教育支援資料」2013
■秋田県総合教育センター「特別支援学級新担任の手引」2008
■山梨県教育委員会「特別支援学級担任・通級指導教室担当者ハンドブック」2009
■徳島県立総合教育センター「特別支援学級ハンドブック」2010
■熊本県教育員会「特別支援学級及び通級指導教室担当者のためのハンドブック」2010
■北海道立特別支援教育センター「特別支援学級担任のハンドブック(改訂版)
」2010
■栃木県教育委員会「特別支援学級及び通級による指導 教育課程編成の手引」2010
■鳥取県教育委員会「特別支援教育担任のための手引」2010
■岡山県総合教育センター「特別支援学級担任のためのハンドブック」2012
■山口県教育委員会「自立活動の指導の手引き」2013
■岩手県総合教育センター「特別支援学級経営の手引き」2014
■宮崎県教育庁特別支援教育室「特別支援教育コーディネーターハンドブック」2009
■宮崎県教育研修センター「特別支援学級・通級による指導の教育課程の手引き」2011
■宮崎県教育委員会「みやざき特別支援教育推進プラン」2012
■宮崎県教育庁特別支援教育室「障がいのある児童生徒の就学事務の手引(平成 26 年度改訂版)
」2014
特別支援学級担任のためのハンドブック
平成27年3月
宮崎県教育研修センター
〒880-0835
宮崎市阿波岐原町前浜4276番地729
電話:
(0985)24-3122
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