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1 - 91 3)災害時に利用するための課題と解決策 制約条件等 解決策(内
3)災害時に利用するための課題と解決策 表1.3-9 バイオガスの運搬利用の課題と解決策 制約条件等 解決策(内的条件) 解決策(外的条件) 施設の被害を最小限に抑 制 ■施設の耐震化 ■沿岸部、軟弱地盤地帯、土石流危 険地帯等を避けること ■体制整備 ・災害時の連絡・行動体制整備 ・点検・復旧マニュアルの整備 ・代替部品等の保管 ・災害訓練の実施等 ■メーカーや電気関係事業者と の協力体制 早期に復旧できること 需要施設へのエネルギー 供給が容易にできること ■バイオガスを利用可能な機器 の整備 ■運搬用車両及び燃料の確保 ■道路の復旧 外部電源 ■予備電源の確保 ■停電からの復旧 バイオマス資源の確保 ■数日分のバイオマス原料のストッ クの確保 ■ガスホルダーの大型化とホルダー 内のストックが一定量以上となる ような運転管理 ■バイオマス資源の供給産業の 復旧 ■バイオマス資源の確保(地域内 外の畜産農家、食品関連事業者 との災害時の資源供給に関す る協定等) 1 - 91 1.3.5 小水力発電 小水力発電には、照明用等の数kW規模から数100kWクラスの発電所まで様々である。 山間部等のような大きな出力が得られる場所は、避難所等が存在する地域から離れていることが予 想される。常時は発電した電力を電力会社に売電し、災害時に電力会社の供給能力が低下した際には 同様に売電して供給能力確保に貢献する。 また、街中では落差工等を活用した小規模な発電が可能である。常時は街路灯や電気自動車の充電 等に利用し、災害時には誘導灯の電源や緊急用車両の充電等に活用することが考えられる。 ここでは、以下の6モデルを提案する。 段 階 エネルギー需要 小水力発電の活用モデル 1.避難時、停電中の誘導灯 ・夜間避難等の安全確保対策が必要である。 ・自立運転可能な発電システムからの誘導 等への電気供給が望まれる。 避難時・停電時の安全確保モデル ◇ミニ水力発電による誘導灯 2.緊急用の車両 災 害 直 ・負傷者の救出や搬送、被害状況確認、支 援物資の運搬等のための緊急車両が必要 である。 ・燃料確保が困難となる恐れもあるため、 バイオディーゼル燃料車や電気自動車も 利用できることが望まれる。 後 3.重要施設(病院等)や避難所 等への最低限の電気・熱供給 ・治療器具等への電源・熱源の確保が必要 である。 ・非常用電源は、数時間分の容量しか確保 されていない場合もあることから、自立 運転可能な発電システムからの優先度の 高い機器への電気・熱供給による応急処 置等の効率化が望まれる。 緊急用車両の燃料確保モデル ◇マイクロ水力発電による電気自動車充電 重要施設への電気・熱供給モデル (自立運転) ◇小水力発電による電気供給 4 . 避 難 所 や家 庭等に お け る 電 気・熱の安定的な確保 応 急 段 ・エネルギーの復旧の遅れや不足が予想さ れることから、冷暖房、給湯、炊事、入 浴等のエネルギーが必要である。 ・避難所となる公共施設や家庭等にバイオ マス等を利用した電気・熱供給システム を導入しておくことで避難所の生活環境 を向上させることが望まれる。 階 5.個人の電気利用 ・避難所生活等の環境向上のために、個人 が自由に利用できる電気の確保が必要で ある。 ・電気自動車から電力を確保するための充 電場所の整備が望まれる。 復旧段階 6.電力会社の供給能力が不足 ・東日本大震災後、電力会社の供給能力が 低下しており、電源確保が必要となって いる ・バイオマス等による発電電力の系統への 供給や自家利用による節電が望まれる。 停電時・電力不足時の電気供給モデル ◇マイクロ水力発電による電気自動車への充電 地域電力不足対策モデル ◇小水力発電による電気供給 図1.3-25 災害時のエネルギー需要と小水力発電の活用モデル 1 - 92 (1)重要施設等への電気・熱供給モデル(停電時に自立運転) 1)モデルの概要 ①常時 地域内の河川、農業用水路、上下水道等の余剰落差を活用した小水力発電を行い、病院等の重要 施設や公共施設に電気を供給する。 ②災害時 発電所を自立運転に切り替え、病院等の重要施設に電気を供給する。 ※基本的には外部電源不要のシステムとするが、必要があれば蓄電池等から電源を確保する。 発電所 発電所 電力系統 停 電 外部電源 電気供給 電気供給 必要電力 病院等重要施設 公共施設等 負傷者治療 避難所 ・蓄電池 ・非常用電源 ・ディーゼル発電機 ・太陽光発電 ・小水力発電等 図1.3-26 小水力発電による重要施設等への 電気供給(常時) 図1.3-27 小水力発電による重要施設等への 電気供給(災害時) 1 - 93 2)参考事例 ■馬曲川発電所(長野県木島平村) 馬曲川発電所は、木島平村馬曲温泉公園の専用電源設備として昭和63年に建設された発電所である。 本発電所には出力95kWのターゴインパルス水車が1台設置されており、温泉水揚湯、送湯ポンプ、温 湯上昇用ヒートポンプ、売店、その他公園設備等のすべての電力を供給する自立運転式のシステムを 形成していた。 発電機は自立運転が可能な同期発電機であり、出力の制御はダミーロードで行っていた。 なお、利用客増大等に伴う電力需要の増加により、平成7年からは中部電力と系統連系している。 1 - 94 ■住友共同電力株式会社(特定電気事業者) 2か所の小水力発電で発電した電力を愛媛県新居浜市内の別子山地区の集落に電気を供給している。 小美野発電所 旧別子山村の森林組合から譲り受けた小水力発電所で、別子ダム 下流の銅山川の水を取水し、最大1,000kWの発電を行う。 ・水系 吉野川水系銅山川 ・発電方式 水路式 ・許可出力 1,000kW ・完成年月 1959年10月 別子山発電所 旧別子山村の森林組合から譲り受けたマイクロ水力発電所で、71kWの発電 を行う。発電後の水は、銅山川へ流れ込み、下流の小美野発電所に導水され 更に発電に利用される。 ・水系 吉野川水系銅山川小支 ・発電方式 水路式 ・許可出力 71kW ・完成年月 1955年1月 1 - 95 3)災害時に利用するための課題と解決策 表1.3-10 小水力発電による重要施設等への電気供給の課題と解決策 課題 解決策(内的条件) 施設の被害を最小限に ■施設の耐震化 抑制し、発電を止めな ■沿岸部、軟弱地盤地帯、土石流危険 いこと 解決策(外的条件) ■発電地点に至るまでの水路、河川等 地帯等を避けること の耐震対策 (石積み水路や液状化しやすい区間 の水路等) 早期に復旧できること ■体制整備 ■メーカーや電気関係事業者との連携 ・災害時の連絡・行動体制整備 ・点検・復旧マニュアルの整備 ・代替部品等の保管 ・災害訓練の実施等 自立運転のための課題 ■発電機 ■停電からの復旧 ・同期発電機等を採用する ・誘導発電機を採用している発電所で は予備電源を確保 ■負荷変動対策 ・ダミーロードで調整する ・流量変動に対応できる水車の採用※ や水車発電機を複数台配置して運 転台数で制御する ※流量、落差によっては採用できな い場合がある 電気の利用先 ■需要施設が遠方にあると、配電線の 整備費用が嵩むことや災害時に断 線する確率が高くなることから極 力近傍に設置 ■ただし、必要電力量に応じた発電量 が得られる場所は限定される 1 - 96 (2)地域電力不足対策モデル 1)モデルの概要 ①常時 地域内の河川、砂防堰堤、農業用水路、上下水道等の余剰落差を活用した小水力発電を行い、電 力会社の系統に電気を供給する。 ②災害時 (外部電源が必要な場合は停電から回復した時点で) 、施設の稼働を再開し、電力会社の系統に電 気を供給する。 発電所 発電所 外部電源 外部電源 停電復旧 電力系統 電力供給 電力供給 図1.3-28 小水力発電による電力会社への 図1.3-29 小水力発電による電力会社への 電気供給(常時) 電気供給(災害時) 1 - 97 2)参考事例 ■中里水力発電所(茨城県日立市) ・本発電所は、日立鉱山の動力源として明治41年12月に整備された茨城県内で最も古い発電所である。 ・施設の老朽化等に伴い改修工事を行うこととなったが、水圧管については引き続き利用可能と判断 され水車との接続部のみの交換となった。 ・また、高効率の誘導発電機の導入等により低コスト化と発電効率の向上を実現した。 改修前の状況 改修後 改修前 改修後 使用水量 3.06m3/s 3.06m3/s 有効落差 36.06m 34.30m 出力 700kW 850kW 水車 横軸フランシス水車×1 横軸フランシス水車×1 発電機 同期発電機 誘導発電機 SS34 水車接続部以外既設利用 木造煉瓦平屋(221.5m2) 鉄骨造平屋(128.0m2) 水圧鉄管 発電所建屋 参考:第 90 回中小水力発電技術に関する実務研修会資料((財)新エネルギー財団) ■照井発電所(岩手県一関市) ・農業用水路を利用した小水力発電施設である。一関市では東日本大震災において震度 を記録し、 本地点では約10日間の停電が生じた。 ・本地点周辺では全半壊した家屋も多い中、小水力発電施設への被害は水圧管周辺の盛土の崩壊のみ であった。 ・停電期間中は外部電源の供給が停止し発電できなかったが、停電回復後は通常通り稼働している。 上流側より全景 盛土の崩壊 水車発電機 発電所諸元 ・流量:1.087m3/s ・水車:横軸羽根固定式水車 ・有効落差:6.88m ・発電機:誘導発電機 1 - 98 ・定格出力:50kW ・電気の利用:売電 3)災害時に利用するための課題と解決策 表1.3-11 小水力発電による電力会社への電気供給の課題と解決策 課題 解決策(内的条件) 施設の被害を最小 ■施設の耐震化 限に抑制 ■沿岸部、軟弱地盤地帯、土石流危険 解決策(外的条件) ■発電地点に至るまでの水路、河 地帯等を避けること 川等の耐震対策 (石積み水路や液状化しやすい 区間の水路等) 早期に復旧できる ■体制整備 ■メーカーや電気関係事業者との こと ・災害時の連絡・行動体制整備 連携 ・点検・復旧マニュアルの整備 ・代替部品等の保管 ・災害訓練の実施等 発電場所 ■電力会社の系統に接続できる場所 であればよいため、山間部で大きな 出力が得られる場所等も考えられ る(電力会社との協議が必要) 1 - 99