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日本における浸水対策の現状と関連技術

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日本における浸水対策の現状と関連技術
日本における浸水対策と関連技術
-都市型水害への対応-
公益社団法人
常務理事
日本下水道協会
佐伯謹吾
1
内容
1. 日本の下水道の現状
2. 浸水被害の現状
3. 浸水対策の現状
4. 浸水対策技術
5. 今後の浸水対策
2
1.日本の下水道の現状
日本の下水道普及率
日本における下水道整備は1960年代に本格化した。
下水道処理人口普及率
: 75.8%
汚水処理人口普及率
: 87.6%
(2012年3月末)
Percentage of Population
人
口
普
及
率
(
%
)
99.4%
98.9%
91.8%
85.2%
90.9%
86.7%
82.7%
Percentage of Access to Sanitary System
全国平均汚水処理人口普及率 87.6%
Percentage of Sewered Population
全国平均下水処理人口普及率 75.8%
80.2%
73.9%
74.6%
集落排水施設
Rural Sewerage
60.5%
48.0%
(
%
)
都市規模
(人口:万人)
Population of
Municipality
(Unit: Thousand)
コミュニティプラントプラント
Privately owned
sewerage
合併処理浄化槽
Combined
Household
Wastewater
Treatment Facility
公共下水道
Public Sewerage
System
more than
100
50
|
100
30
|
50
10
|
30
5
|
10
less
than
5
3
日本の下水道の現状 (2)
日本の下水道事業
① 汚水・雨水を集める
(集める:管渠 など)
② 汚水は適正に処理し、雨水は安全に排除する
(処理する:処理場、ポンプ場 など)
③ 処理生成物を環境に無害なものとして、 あるいは国民生活や社会活動
に有益なものとして還元する
(処分・活用する:資源化施設 など)
①~③を成し遂げることが下水道事業の責務である
4
日本における水害被害額等の推移
浸水による被害形態の変化
・1960年代以降の急激な都市化に伴い水害の被害額が増大した
被害額(10億円)
死者・行方
不明者(人)
5
都市型水害の概念
都市部では雨水は下水道
を通して川や海へと流れ
る。
しかし、大雨が降ると下水
道が大量の水をさばき切
れなくなり、浸水被害が起
こる。
また川が増水し、下水道
の水を流せなくなり、雨水
が地表にあふれ出ること
もある。
平成11年(1999)6月 博多駅博多口
6
2.浸水被害の現状
・
・
・
・
・
日本における浸水被害の原因
1960年代以降の急激な都市域の拡大、土地利用の高度化が進んだ
流域開発により雨水流出量が増加し、流出時間が短くなった
都市化の進展に比較し、都市計画施設(河川整備、下水道整備等)の建設
が遅れた
豪雨の発生回数が増大した
古くに建設された下水道施設には能力不足をきたしている
東京都練馬区の土地利用の変遷
1960年頃の状況
2010年頃の状況
流出 50%
浸透 50%
流出 75%
浸透 25%
集中豪雨の発生状況
過去30年にわたり集中豪雨の
発生件数は増加傾向にある
7
浸水被害の現状 (2)
都市型水害による被害の特徴
・ 都市に発生する都市特有の水害であり、世界中の大都市で発生している
・ 一般資産や都市インフラへ多大な被害を及ぼす
・ 地下空間やアンダーパスへの浸水により事故を誘発
2000年9月
東海豪雨による浸水(名古屋市)
2003年7月
福岡市での地下浸水
2009年8月
茨城県 日立市
8
浸水被害の現状 (3)
雨水排除は下水道の役割
・ 都市に降った雨水(いわゆる内水)の排除は下水道の基本的な役割
・ 頻発する都市型水害から国民の生命・財産を守るため、ハード、ソフト対策
等の取り組みを推進
河川と下水道の浸水に対する役割
内水による被害額の割合
全国
河川氾濫の防止は河川
の役割 (外水対策)
外水等の内水以外
による被害額
52% 約1.3兆円
内水による被害額
48% 約1.2兆円
東京
雨水の排除は下水道
の役割 (内水対策)
外水等の内水以外
による被害額
22% 約220億円
内水による被害額
78% 約790億円
9
3.浸水対策の現状
総合的な浸水対策の推進
今日の浸水対策は雨水排水管やポンプ場の整備(ハード対策)と民間企業、市
民、コミュニティーによる災害対応(いわゆる自助)を支援する降雨情報等の提
供(ソフト対策)を組み合わせた、総合的な浸水対策を進めている
ハード対策
ソフト対策
10
浸水対策(ハード対策技術 1)
浸水対策施設整備による対策(ハード対策)
・雨水排水管渠、雨水排水ポンプ場の整備 : 雨水を安全に排除
・雨水貯留施設の整備 : 下流の雨水管渠の排水能力の不足を補う施設
・雨水浸透施設の整備 : 地域からの雨水流出を減少させる施設
大口径シールド工法による雨水貯留管
新しいシールド技術の例
東京都 和田弥生幹線
直径 8.5m
到達地点の異なる2本のシールド
を同時施工
11
浸水対策(ハード対策技術 3)
ポンプ場運転の合理化
・ ポンプ場運転の合理化と安全性の確保のため、管渠、放流河川などの水
位を監視し、運転操作に活用
・ ポンプ場への急激な雨水流入に対応する、先行待機運転ポンプの設置
水位情報を活用したポンプ場運転
光ファイバー水位センサー
光ファイバー水位計の管内設置
ポンプ場
13
浸水対策(ハード対策技術 4)
先行待機運転ポンプ
・ 先行待機運転ポンプとはどのような吸水位でも全速運転できるポンプである。
・ 雨水が流入する前に吐出弁全開で全速の先行待機運転ができ、急激な雨水
流入に対応し、迅速な排水を行うことができる。
14
浸水対策(ハード対策技術
5)
雨水貯留・浸透施設
・ 雨水貯留施設の整備 : 下流の雨水管渠の排水能力の不足を補う施設
・ 雨水浸透施設の整備 : 地域からの雨水流出を減少させる施設であるが、
河川放流量に制限を受ける場合や、地下水の涵養
(浸透施設)の目的で建設される事もある。
野球場の下に建設された雨水貯留池
貯留量 15,000m3
散水等 1,000m3
再生プラスチックを用いた
雨水浸透施設
貯留量10,000m3
雨水貯留池の内部 高さは3.85m
(広島市)
中央の円形部分が雨水貯留池
(武蔵野市)
15
浸水対策(ソフト対策技術 1)
民間企業、市民、コミュニティーの災害対応(自助)を支援する対策(ソフト対策)
・ 降雨情報の提供
・ 浸水予想区域図の作成・公表
・ 幹線水位情報
降雨情報の提供
水防活動や避難行動を支援するために、下水道維持管理用レーダー雨量計シ
ステムによる降雨情報をリアルタイムで提供している。(東京都)
(東京都公式ホームページ用)
(携帯電話用)
16
浸水対策(ソフト対策技術 2)
浸水予想区域図の作成・公表
河川の整備水準を上回る豪雨による水害の危険性を市民に知らせ、事前の予防策
を進めてもらうために、浸水予想区域図の作成・公表を行っている。
(凡例:浸水深)
17
浸水対策 (ソフト対策技術 3)
幹線水位情報の提供
河川を下水道幹線とした土被りの浅い溢水し易い幹線の水位情報を市民に提供
し、水防活動に役立ててもらう。
↓ 幹線内水位情報の表示例(中野区)
↓ 電光掲示板の設置
(中野区:桃園川幹線)
18
浸水対策 (自助対策技術)
住民自らの対応(自助)
・ 住民自らの災害対応、いわゆる自助を促進
・ 効果的な自助を導くためには、住民の的確な対応を促すため情報提供
市民が設置した浸水多作施設の例
地下室入口に設置した
止水版
雨水浸透ます
雨水浸透トレンチ
19
5.今後の浸水対策
(1) 「人(受け手)」主体の目標設定への転換
・ 浸水対策の目標設定は、これまでの「降雨(外力)」主体から、「人(受け手)」
主体に転換することが必要
・ 対象とする地区の浸水に対する特性を考慮し、「人(受け手)」の視点から目
標を立てていくべき
(2) ハード対策の着実な推進とソフト対策の強化、自助の促進
・ ハード対策の強化を着実に進める一方で、住民自らの災害対応、いわゆる
自助を促進することにより被害の最小化を図ることが必要
・ 効果的な自助を導くためには、住民の的確な対応を促すため情報提供等の
ソフト対策が重要
(3) 浸水対策の重点化(選択と集中)
・ 全ての地区の整備を同じペースで進めるのではなく、まず重点的に投資する
地区を設定し、期限を決めて集中投資を行うことが必要
(国土交通省:下水道総合浸水対策計画策定マニュアル(案) 2006年より)
(4) 既存施設の有効活用のための技術開発
・ 既存施設の連結・ネットワーク化及びICTを用いた効率的運用・運転・管理技
術の開発
20
ご静聴
有り難うございました
21
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