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智頭農林高校

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智頭農林高校
鳥取県立智頭農林高等学校
研究テーマ
集団における個別の支援に関する研究
~発達障がいのある生徒への通常学級での支援のあり方、並びに特別支援教育の
視点に基づいた全体への支援~
1
研究の目標
発達障がいのある生徒に対する通常学級での支援のあり方を検討すると共に、発達障がいのある生
徒を含め、すべての生徒に有効な指導・支援として、特別支援教育の視点に基づいた学習環境の改善、
授業改善等の検討を進めることで、高等学校における特別支援教育の推進のあり方を探る。
2
研究の内容と方法
(1)生徒の実態把握方法の検討
複数の方法による気になる生徒の把握を行い、本校で有効な実態把握の方法を検討する。また、
全教職員で生徒実態の共通認識を図る。
(2)個別の教育支援計画、個別の指導計画作成方法の検討
職員研修会や教科担任会を開催し、支援内容等を検討すると共に、外部専門家より助言を仰ぎな
がら作成を進める。
(3)特別支援教育の視点に基づいた教室環境整備
県外先進校の実践に学び、本校の教室環境の見直し及び改善を行う。
(4)
「わかる授業」の実践への取り組み
特別支援学校特別支援教育高等学校担当者と共に授業観察を実施し、生徒の実態に即した授業改
善の方策を検討する。また、研究授業及び授業検討会を実施し、すべての生徒に「わかる授業」づ
くりの授業改善の視点を全教職員で共有する。
(5)就職(就労)や進学への支援の検討
進路指導部との連携を図り、就労支援の流れを明確にし、支援体制を整える。また、外部専門機
関や特別支援学校との連携を図り、就職や進学情報の収集を行い、生徒の進路決定に関わる支援に
生かす。
(6)教職員の研修
特別支援教育職員研修会を計画的に実施し、教職員の特別支援教育理解の深化を図る。また、県
外先進校訪問を行い、その実践を本校の取り組みに生かす。
3
研究の実際
(1)生徒の実態把握方法の検討
支援を実施するにあたり、まず生徒の実態、ニーズを把握することが必須である。そこで、以下
に示した複数の方法による実態把握を実施し、本校で今後も継続していける方法について検討した。
- 39 -
①中学校からの聞き取り
平成23年度入学生より、中学校からの情報の引き継ぎを実施している。引き継ぎには聞き取
り用の引継記録用紙資料1を準備し、教育相談部担当者が複数で対応する体制を基本としている。
聞き取った情報については、年度当初、特別支援教育に係る職員会議(可能な限り非常勤講師の
出席も依頼する)を開催し、支援を要する生徒についての特性や具体的な支援方法等についての
情報共有を図った。
②授業観察
特別支援学校特別支援教育高等学校担当者の来校日(平成23年度:25回、平成24年度:
18回)を設定し、校内委員と共に授業観察を通して生徒の実態把握を行った。観察においては、
生徒の言動を細かく見ることを心がけ、観察後には情報交換を行い生徒の実態の理解を深めた。
③口頭による情報交換
県外先進校の取り組みから、気になる生徒の捉え方資料2を全教職員に明確に示し、生徒に関
する日常的な情報交換を密に実施するよう努めた。また、保健室は、生徒の変化がよく見え、生
徒に係る様々な情報も含めて実態把握できる場所であるため、養護教諭との日々の情報交換にも
努めた。
④生徒状況記入シート資料3
生徒の気になる様子、及び支援実施状況等についての教職員間の情報共有化を図るために、パ
ソコンで管理しているサーバー内のデータベース(パスワード設定)に、教職員が自由に書き込
みでき、いつでも生徒状況を確認できるクラスごとの生徒状況記入シートを作成した。
⑤「特別な支援を必要とする生徒を把握するためのチェックシート」の活用
通常学級に在籍する特別な支援を必要とする生徒の実態を明らかにするために、学年会におい
て気になる生徒を挙げ、複数の教職員によるチェックシートを活用した実態把握を行った。チェ
ックシートの結果は、職員研修会における生徒の実態把握や具体的支援方法の検討に活用した。
⑥発達検査の実施
平成23年度1学期末に、中学校より引き継ぎを受けた生徒の個別の教育支援計画、個別の指
導計画を校内委員会で作成した。支援内容等について研究推進委員会で検討したところ、外部専
門家の方より生徒の知的アセスメントの必要性が指摘された。そこで、外部専門家の研究推進委
員に依頼し、本人・保護者の同意を得て、発達検査を本校で実施した。その後、検査結果を基に、
個別の教育支援計画、個別の指導計画の見直しを行った。
⑦生徒との面談
年度当初、長期休業明けに計画的に面接週間を設定し、
“学校生活での困り感”等について、担
任による面談を実施している。また、学校生活での生徒の気になる様子が見受けられた場合には、
その背景となる事柄を、面談により生徒から聞き取ることに努めた。
⑧保護者懇談の実施
平成23年度入学生より、合格者登校日に特別支援教育に関する資料を配付し、保護者に学校
への相談を促す呼びかけを実施している。当日は、相談ブースを設け、複数の職員で対応する体
制をとっている。中学校より引き継ぎを受けた生徒、及び引き継ぎを受けていないが子どもに気
になる状況のある保護者との面談が実施でき、早い段階での生徒の実態把握に繋がった。
- 40 -
年度が始まってからは、支援を要する生徒の保護者に対して、まず個別の教育支援計画や個別
の指導計画を作成するにあたってのニーズを聞き取るための面談を実施した。その後、学校にお
ける支援内容や支援目標等の説明や、家庭での状況、進路希望等について聞き取る面談を、1・
2学期末懇談時に実施し、生徒の実態把握の機会としている。
⑨医療・福祉等の外部関係機関との連携
生徒の指導方法や支援方法について、保護者の承諾を得て、医療機関や外部専門機関と情報の
共有を図った。また、教育センターの教育相談会を通じて医療と繋がった生徒については、医師
からの具体的なコメントを受け、生徒の実態を把握することができた。
生徒の実態を把握するためには、様々な方法を活用し、多様な視点から生徒を見ることが必要で
あることが検討できた。支援を要する生徒として中学校から情報を引き継いだが、本校入学後、時
間の経過と共に落ち着いた学校生活を送ることができている生徒もあり、環境により生徒の状況が
大きく変化することがわかった。生徒への支援を考える上で重要なのは、
“生徒本人へのアセスメン
トである”という助言を、外部専門家の研究推進委員より受けた。
“生徒の声を聞き、実態把握する
ことが支援のスタートである”ということを、今一度全職員で共通理解しておく必要がある。
2年間の取り組みの中で実施した実態把握方法のすべてを、今後も継続実施していく必要がある
が、
「生徒の状況記入シート」は、多くの教職員に活用されたとは言い難い状況であった。ただ、外
部専門家の研究推進委員より「生徒の実態は、特別な面談という場ではなく、日々の何気なく交わ
されている会話の中にあるので、その観点から『状況記入シート』は必要なツールである」という
指摘を受けたことから、
「生徒の状況記入シート」を今後より簡便に使えるツールとしていくために、
記入方法・記入内容等について検討する必要がある。
(2)個別の教育支援計画、個別の指導計画作成方法の検討
①ケース会議(校内委員会)
〈平成23年度〉
中学校より引き継ぎを受けた入学生について1学期末を目標とし、下記の手順で作成を進めた。
ア 本人との面談を実施し、ニーズを聞き取る。
イ 保護者との面談を実施し、ニーズを聞き取る。
ウ 関係職員に生徒の状況を聞き取る。
エ 校内委員会にて、個別の教育支援計画、個別の指導計画の支援目標等について検討する。
オ 研究推進委員会で、設定した支援目標について検討し助言を受け、支援目標を修正する。
カ 1学期末懇談会時に保護者面談を実施し、学校の支援目標、具体的な支援方法について説明
する。
キ 2学期始めの職員会議にて、支援を要する生徒の支援目標と具体的な支援方法について説明
し、全職員へ支援の実施を依頼する。
ク 2学期中、支援の実施による生徒の様子を観察し、実態の変化から学期末には支援目標の修
正を行い、保護者に説明する。
- 41 -
②事例検討会
〈平成24年度〉
支援計画・指導計画の作成は、校内委員会だけでなく、より多くの職員の関わりで実施した方が
良いという、前年度の反省から、平成24年度は、インシデント・プロセス法を活用した事例検討
会資料4、支援ツールを活用した教科担任会を開催し、指導計画の作成方法を検討した。資料5
た
だ、本校の実態に合う作成の流れについては、現在も模索中である。
(3)特別支援教育の視点に基づいた教室環境整備
様々な特性を持つ生徒が多く在籍する本校の現状をふまえ、どの生徒にもわかりやすく、学
習に集中できる環境を作ることを目的とし、以下のように教室環境の構造化を図った。
①机位置の目印
平成22年度まで、机の配置が雑然としていて、学習環境とし
て教室が落ち着かないクラスが複数あった。
机の配置が整然としている、望ましい学習環境にするため、ま
た、自分の机の位置を確認するための目印として、全教室の床に
全ての机の前脚を合わせる位置をペイントした。
②ゴミ箱の種類と置き場
今までは教室前方入り口付近に多種類のゴミ箱が置かれていた。しかし、多動・衝動性のある生徒
にはこれらが刺激となり、授業中でもゴミを捨てるために立ち歩くといった状況が見られた。そのた
め、ゴミ箱を後方2種類のみとして刺激物が視界に入らないようにした。さらに、分別を意識できる
ように、ふたにはゴミの種類を示すラベル(イラスト入)を貼った。
③前面・背面掲示板
昨年度まで、教室内の掲示物の掲示の仕方
は、各クラス担任に任せている状況だったが、
今年度より、教室前面には長期に渡るもの、
教室背面には短期の期限付きのものを掲示
するよう、全クラスで掲示のルールを徹底し
た。また、必要な情報を自分で見つけ確認で
きるよう、見出しを作成しわかりやすくした。
- 42 -
④後方ホワイトボード
平成22年度まで、教室後方のホワイトボードは
活用方法がクラスによって異なり、あまり有効に活
用されていなかった。
掲示板と同様に、必要な情報を自分で確認できる
ようにするという意図や、急な予定変更に対応でき
ない生徒への支援の観点から、1週間の見通しを立
てられるように、全クラスに行事予定表を作成した。
⑤書き込み可能な前面スクリーン
教室前方のホワイトボードを左右に開いた部分に、
スクリーンがあり、今まではスクリーンに書き込みが
できなかった。
「わかる授業」の取り組みを進め、視覚的支援の充
実を図るために、スクリーン部分にホワイトボードシ
書き込み可
ートを貼り、映像を映し出すと同時に書き込みもでき
るように改善した。
⑥遮光カーテン
スクリーンに映し出した映像が、より見やすくなる
ように、全教室に遮光カーテンを設置した。
(4)
「わかる授業」の実践への取り組み
発達障がいのある生徒への通常学級での支援のあり方を検討した際、
「
(だれもが)わかる授業」の
実践が不可欠であり、また、教職員がそのような視点を持って授業に臨む“授業のユニバーサルデザ
イン化”が、学習に苦手感を持つ他の生徒にも有効な全体の支援であると考えた。
「わかる授業」の実
践で取り組んだ内容を以下にまとめる。
①授業観察・授業検討
まず、特別支援学校特別支援教育高校担当者及び校内委員での授業観察を実施した。観察において
は、教師の指示や説明に対して生徒の反応はどうか、生徒がどういう言葉を発しているか、生徒同士
の関わりはどうか、生徒の授業の理解はどうか等の視点から、座席表を活用して生徒の状況を詳細に
“見取る”ことを心がけた。観察後には、授業における生徒の状況を踏まえて、実施できそうな支援
- 43 -
について検討し、授業改善へと繋いだ。また、授業中気になる様子があった生徒については、授業後
に授業の理解度や授業中の態度等についての確認を行い、聞き取った内容も授業改善へ向けての具体
的課題として生かすこととした。
次に、特定の授業について、授業観察後に実施した授業検討会の内容を「特別支援教育通信」に掲
載し、全職員へ向けて授業改善の取り組み状況についての情報を発信した。資料6
さらに、全職員と研究推進委員による研究授業参観及び授業検討会を実施した。特別支援教育の視
点を取り入れた研究授業を参観し、その後の授業検討会では、生徒個々を観察した情報交換の内容か
ら授業内容を振り返り、生徒への支援の方策を検討する機会とした。
②授業における教育的効果を高める工夫
ア 視覚的支援の工夫
〈国語:教科書をPDF化して投影〉
〈英語:言葉+映像による説明〉
〈家庭:説明の映像とワークシートをリンク〉
映像等により教材を提示する視覚的支援を進めて、授業への興味・関心を持たせたり、言葉による説
明だけではイメージすることが難しい生徒に視覚情報を与えたり、板書を写す作業をスムーズに進めた
りする等の支援としている。映像を活用した説明と、テキストやワークシートとをリンクすることが「わ
かる授業」に繋がると考える。
このような工夫の実施による変化として、指示内容が具体的にわかる、顔を上げて映像を見る、テキ
ストやワークシートの該当箇所をすばやく見つける等、生徒が従来以上に授業内容に集中して取り組め
るようになってきている。
- 44 -
イ
実習授業における指示書等の作成
実習授業において、一斉指示の後、指示内容の理解を深め、一人で確認しながら作業を進められ
るようにするための支援として、
「視覚化→焦点化」した情報を提供する指示書の作成に取り組んで
いる。指示書は、誰でも何度でも見直しできるという利点があり、安心して実習に取り組むことが
できている。
以下に、授業での生徒の見取りを実施し、特別支援学校特別支援教育高校担当者からの助言を受
けながら作成した指示書の具体例を示す。
〈総合実習(野菜)
:インゲンの調整〉
1
インゲンのへた(丸印部分)を確認し、インゲンを写真の上に置く。
2
へたを折る。
へた
へたを折る。
この指示書は、昨年度インゲンの“へた”の判別が適切にできなかった発達障がいの診断のある生
徒のために、手順を覚え、主体的に活動するためのものとして作成した。
指示書があることにより、昨年度と比較すると、指示通りの作業を一人で進めることが、ほぼでき
るようになっていた。また、指示書を提示したところ、これを手に取って見た他の生徒から、
「そうい
うことか。わかった。
」という発言が聞かれた。指示書によって一斉指示の内容を確認し、作業をスム
ーズに進めていた。このように、指示書は発達障がいのある生徒だけでなく、他の生徒にも理解を図
る上で有効であることが確認できた。
〈家庭:エプロン製作〉
エプロン製作実習において、指示があっても実習が進まない生徒があまりに多く、授業担当者は個
別指導するものの十分な対応ができずにいた。生徒及び授業担当者の現状を改善するために、生徒が
主体的に活動するためのツールとして、指示書作成の助言を受けた。授業観察した次時に、ひも作り
の指示書を提示したところ、多くの生徒がそれを見ながら主体的に実習に取り組むという、実習状況
- 45 -
の変化が見られ、指示書の有効さが確認できた。
〈家庭:調理実習〉
調理実習においては、生徒を“見取る”ことにより、レシピ表記の仕方が変化してきた。発達障が
いのある生徒が、作業の終わりがわからず、延々と同じ作業を続けていた様子から、
「作業の終わりを
明確に示した方が良い」という助言を受けた。具体的には、
「卵を溶きほぐす」は、「卵をはしで20
回混ぜる」
、
「砂糖と塩と酢を混ぜる」は、
「砂糖と塩が溶けて見えなくなるまで酢と混ぜる」等のよう
に改善された。また、発達障がいのある生徒に対して、実習の予行演習を放課後に実施する中で、生
徒本人のレシピの理解度を見ながら、その生徒にわかるような表記に修正していった。このように、
発達障がいのある生徒に分かりやすいように表記に改めたレシピ資料7
は、他の生徒にも分かりや
すいものとなり、実習においては多くの生徒がレシピを見ながら作業内容の理解を図り、主体的に実
習する態度に変化した。
また、発達障がいのある生徒が、実習中一つ一つの作業が止まり、次の作業が自分で判断できず、
常に指示待ちだった様子から、
「
『やることリスト』を作成し、時間の流れに沿った作業内容を示した
指示書があれば、一人で実習を進めることができるのでは。
」
という助言を受けた。そこで、個別の指示書資料8
を作成し
提示したところ、実習態度が大きく変化した。授業担当者の声
かけや授業担当者への生徒からの質問が激減し、指示書内容を
確認しながら、一人で実習を進めていくことができていた。こ
のことから、生徒の実態を見取り、わかるための支援としての
レシピ
個別の指示書
個別の指示書の有効さが確認できた。
〈総合実習(加工)
:パンの製造〉
パン生地を 15cm 径に伸ばすための成型シート
- 46 -
シートの上で生地を伸ばす
この成型シートは、空間認知の力が弱く、感覚を頼りに行う実習を苦手とする、発達障がいのある生
徒のために作成したものである。数回の授業観察で“見取り”を実施したところ、教職員の「15cm
の直径にパン生地を伸ばす」という説明を聞き、示範を見ても理解できず、適切な大きさに生地を伸ば
すことができていなかった。このことから、
「感覚だけに頼るのではなく、はっきりとパン生地の大きさ
の目安になるものがあると良いのでは。
」という助言を受けた。そこで修正を加えながら成型シートを作
成し、実習で提示してみた。成型シートを活用すると、生地が明らかに以前より円に近い形で、大きさ
も適切に伸ばされ、シートの有効さが確認できた。また、適切な生地の大きさと形を最終確認する道具
として、他の生徒にも成型シートが活用され、すべての生徒に使えるシートであることが確認できた。
〈総合実習(野菜)
:種まき〉
1cm 間隔の目印
上記は、発達障がいがあり、手先を使う細かな作業を苦手とする生徒に対して、
「指示通りに種まきが
できるためには、どうすれば良いか」
「どんな物があったらよいか」という授業担当者の発想から、教具
を作成した実践である。
種まきの際にはピンセットを使用するので、授業担当者は
事前に生徒本人がピンセットを使えるかどうかの確認を行
い、小さな種をピンセットで扱えることを確認した。その後、
空間認知に困難さを持っている当該生徒に、どうすれば1c
m間隔の種まきができるかを考え、「1cm間隔の目盛りの
ついた定規のようなものがあればできるのでは」と発想し、
森林科学科の教職員の協力で、幅約1cm、長さ50cmの
木材に目盛りを付けた“種まきの目安棒”を作成した。
“目安棒”を用いて種まきの実習をしたところ、ゆっくりではあるが、適切な間隔で種まきができ、
失敗も少なかった。また、他の生徒も“目安棒”を活用し種まきを行ったが、
「慣れたら、棒を使わなく
てもいい」という授業担当者からの指示があったものの、生徒からは、
「使った方がわかりやすくて便利 」
という言葉が聞かれた。発達障がいのある生徒に対する個別の支援として作成した教具が、生徒全体へ
のわかるための支援になることが確認できた。
ウ 各教科で実施している配慮や支援(職員アンケートより)
昨年度・今年度と特別支援教育についての職員アンケートを実施した(結果は「7.総合考察」に掲
載)
。その際、授業や実習の場で実施している配慮や支援について、職員から記述形式で回答をしてもら
った。その結果を、以下にまとめる。
- 47 -
【教科で実施している配慮や支援】
国 語
・教科書・学習プリントをPDFにして、スクリーンに投影している。
・教職員が説明したことを、生徒自身の言葉で、他の生徒に説明させて定着を図る。
・二人組のペアで、発問の答えを話し合わせ、学習内容の共有化を図る。
数 学
・1年生全員に、A4版ノートを配布。B5プリントに板書の一部を記したプリントを作成し、ノー
トに貼ることで板書の補助を行った。
・こまめに様子を見て、つまずいている時には、アドバイスをするようにしている。
・簡単な記号でも、きちんと説明をする。
理 科
・進度をゆっくりにし、理解できるように努力する。
地理歴史
・具体的な話により、メタファー(比喩)やアナロジー(類推させる)を意識的に使うようにする。
英 語
・くせのある字を読みにくいと感じる(読み間違える)生徒がいることがわかったので、なるべく統
一して書くようにした。
家 庭
・指示書(写真等)を使用し、視覚効果で理解度が上がるよう心がけている。
・時間の流れに合わせた個別指示書の作成。
・クラスの生徒状況により、被服実習に使用する道具を出すタイミング、使用する用具を限定して出
している。(指示が終わってから道具を出す。)
農 業
・最初に板書内容を書かせる。実習で結果の出るところや重要なところは(
)や空欄を作る。
・板書内容を書く時間と、実習(作業)時間とを分ける。
・実習における補助的な器具を作成したり、一度にたくさんのことをしたりしないようにしている。
・播種時に渡す種の量を少なめにする。
・一定間隔で目印をつけた定規を作成した。
③テスト対策
ア ふりがな付きテスト
昨年度は、軽度の知的障害の診断のある生徒の保護者より、また今年度は、年度途中に読字障がい
の診断を受けた生徒及びその保護者より、
「テストにふりがなをつけて欲しい」という要望を聞き取っ
た。生徒、保護者のニーズを全職員に伝え、当該生徒の全教科担当者に、ふりがな付きのテスト作成
を依頼した。
イ 考査前補習
学習に苦手感を持つ生徒が多い本校においては、考査範囲が示されてもテスト勉強をしない(一人
- 48 -
では勉強できない、テスト勉強の計画を立てることができない)、また授業を十分に理解しないままテ
ストに向かい、欠点となってしまう生徒が多数いる現状であった。現状打破のためには、生徒にただ
努力を求めていても変わらないと考え、昨年度2学期より、考査前の放課後補習を学年ごとに実施し
ている。対象となる生徒は、前回考査で欠点保有の者、及び補習希望者である。保護者へは、補習実
施計画の案内文を送付し、欠点保有で補習対象となっている生徒の保護者には、必ず補習を受けるよ
う、その旨を伝えるようにした。
④その他
ア
ワークシート作成における工夫
授業の際に使用するワークシートの記入欄に外枠
や罫線を入れて、どのぐらいの量を記入すればよい
かの目安とした。
また、罫線があることで、文字の横幅が限定され、
結果として適切な大きさの文字を記入できるように
なった。
イ
週末課題の出題のしかた(国語)の工夫
それまでドリル形式だった漢字練習の週末課題を、
語彙力の向上を目指す形に変更した。問題集の問題
文全体を書くことで、書きとり問題となっている熟
語が、文の中でどんな語彙と結びついているかを意
識させ、語彙の意味理解を深めることをねらいとし
ている。
(5)就職(就労)や進学への支援の検討
①就労支援のための体制づくり
資料9
平成23年度は、就労支援の校内体制が整備されておらず、支援を要する生徒の対応は、担任一人
が試行錯誤しながら進めていたのが実態であった。その反省から、平成24年度は、年度当初に校内
の就労支援体制を明確にし、流れに沿った支援を実施できるよう教職員への理解と周知を図った。
②支援の実際
〈支援例1〉
小学校時 ADHD の診断もあるが、中学校から引き継いだ主な診断名は、本態性振戦(原因のわか
らない上肢のふるえ)であり、指先を使う細かな作業が困難な生徒である。
(身体障害者手帳有)
ア
3年生の4月、進路指導主任、担任、特別支援コーディネーターで、保護者に対する進路面談
を実施し、手帳活用の就職希望であることを確認した。
イ
本人との面談では保護者の考えとは異なり、当初、本人は「手帳を使いたくない」、「手帳のこ
とを人に知られたくない」
、「自分は何でもできる」と言っていた。しかし、面談を繰り返す中
で、手帳を活用し身体状況に理解のある職場への就職を希望するようになった。
- 49 -
ウ
1学期に、本人・保護者がハローワークを訪問し、障がい者担当者との面談を実施した。この
際には、教職員も同行した。面談の中で、どのような仕事ができ、どのような仕事に向いてい
るのか、本人、保護者、教職員も、本人の職業適性がわからないので、障害者職業センターで
の職業適性検査を受けることにした。
エ
8月に職業適性検査を受けた後、10月に関係者で検査結果の説明を聞き、今後の就職活動に
ついて検討した。履歴書については、手書きのものと、パソコン入力のもの2通を準備し、両
方提出することを進路指導主任がハローワーク担当者に確認をとった。
オ
10月に、ハローワーク主催の障害者就職面接会に参加し、保護者と特別支援コーディネータ
ーが同行した。学校における支援の状況を確認される企業もあり、その際には特別支援コーデ
ィネーターが説明した。
カ
障害者就職面接会での仮面接をきっかけに、本面接に至り、12月に就職が決定した。
〈支援例2〉
広汎性発達障がいの診断があり、本校入学時より保護者との面談を密に実施している、現在2年
生の生徒について、1年生の早い時期から進路に関する保護者面談を実施している。
将来は、見守りのある環境に向かうことを視野に入れ、複数の進路先を紹介してきている。これ
までに特別支援学校専攻科の見学(保護者)及び1日体験入学(本人・保護者)
、障害者職業リハビ
リセンターの見学(保護者)を実施している。高等技術専門校の情報を伝えたので、今後保護者は
見学を実施する予定である。
(6)教職員の研修
①特別支援教育に関する校内研修会
【平成23年度】
月
日
4月 5日
内
容 及 び 講 師
支援を要する生徒情報の説明、具体的な配慮・支援策の提示
進行:教育相談部
思春期のメンタルヘルスに悩む御家族へのエール10か条
4月23日
講師:鳥取県精神保健センター所長 原田 豊氏
(教育相談保護者研修会として実施)
5月19日
7月 1日
特別な支援を必要とする生徒の行動特性と支援のあり方
講師:鳥取県教育委員会 特別支援教育課 LD 等専門員 加藤 典子氏
Hyper-QU 検査結果の活用と事例検討
講師: 鳥取県教育センター 教育相談課 梶川 節美氏
Hyper-QU 検査結果・特別な支援を必要とする生徒を把握するためのチェック
10月 4日
シート結果を活用した事例検討
講師:鳥取県教育センター
LD等専門員 中島 康太氏
鳥取県教育センター 教育相談課
12月 1日
梶川 節美氏
アスペルガー症候群の特性、及び二次障がいを防ぐ具体的な支援方法
講師:鳥取大学 准教授 小林 勝年氏
- 50 -
ソーシャルスキルトレーニングLHRの振り返りと Hyper-QU 検査結果をも
12月 8日
とにした学級経営について
講師: 鳥取県教育センター 教育相談課 梶川 節美氏
12月26日
「自閉症の人が見ている世界」DVD視聴他 (自主研修会)
12月27日
進行:教育相談部
【平成24年度】
月 日
4月 5日
5月22日
6月 4日
6月22日
6月29日
内
容 及 び 講 師
支援を要する生徒情報の説明、具体的な配慮・支援策の提示
進行:教育相談部
インシデント・プロセス法による事例検討会
講師:鳥取県教育委員会特別支援教育課 LD 等専門員 加藤 典子氏
インシデント・プロセス法を活用したケース検討会
進行:校内委員会
研究授業(国語総合・家庭総合)及び授業検討会
Hyper-QU 結果から見たクラスの状況と今後の生徒指導について
講師: 鳥取県教育センター 教育相談課 梶川 節美氏
特別支援教育の視点に立つ「わかりやすい性教育の進め方」
7月 2日
講師:鳥取県精神保健センター所長 原田 豊氏
(性教育LHR事前研修会として実施)
10月23日
12月 4日
2月15日
研究授業(家庭総合)及び授業検討会(第2回研究推進委員会後に実施)
発達障がいのある生徒の就労支援について
講師:障害者就業・生活支援センター 玉木 明恵氏 小島 隆寛氏
Hyper-QU 結果から見た「気になる生徒」への今後の指導について
進行:教育相談部
②「特別支援教育通信」
(校内教職員対象)の発行
資料10
県内で本事業に取り組んでいる他校の実践に学び、昨年度2学期より、
「特別支援教育通信」を発
行することとした。通信は、全職員に事業の取り組み状況を周知し、特別支援教育への理解を深め
るための、情報発信ツールとして活用している。
③先進校視察等
【平成23年度】
月
日
視
察 校
10月 5日~6日
京都府立朱雀高等学校・滋賀県立日野高等学校
12月 2日
茨城県立結城第二高等学校:文部科学省特別支援教育総合推進事業実践報告会
- 51 -
【平成24年度】
月
日
9月14日
12月14日
4
視
察 校
佐賀県立太良高等学校
佐賀県立太良高等学校:文部科学省特別支援教育総合推進事業実践報告会
研究の成果
(1)特別支援教育の視点に基づいた教室環境の改善、学習環境整備を進めたことが、発達障がいのあ
る生徒のみならず、多くの生徒の学校生活全般の落ち着きに繋がってきている。
(2)教職員においては、生徒の言動を細かく観察することによる実態把握が、特別支援教育の視点に
基づいた授業改善や教材作りに生かされている。
(3)校内委員会(特別支援教育研究推進委員会)は、入学当初より、支援を要する生徒の保護者との
面談を実施する体制をとった。家庭と学校との連携が密になることで、支援を要する生徒の学校で
の状況は徐々に落ち着き、進路についての検討も早い段階から実施できている。
(4)特別支援学校特別支援教育高校担当者と校内委員による授業観察を実施していく中で、生徒の実
態の見取り方、授業改善の方策等について助言を受け、授業実践に還元できている。
(5)本事業を推進していく中心となる校内委員会を、週1回のペースで定期的に開催できた。委員会
では、生徒の実態に基づいた様々な検討を進めることができ、実働する委員会となっている。
5
研究の課題
(1)学習環境のデザイン
教室環境は、2年間の取り組みでかなり改善された。今後、更に落ち着いた学習環境とするため
に、教室掲示物の精選・整備を検討していく必要がある。併せて、校内掲示物についても、同様の
検討を進めたい。
また、授業改善の取り組みについては、徐々に変化が認められつつも、全職員のものとはなって
いないのが現状である。今後は、1時間の授業の見通しを生徒に持たせるための支援や、生徒が安
心して授業を受けることのできる授業の流れのパターン化等、授業デザインについても検討を進め、
「
(だれもが)わかる授業」の実践をしていく必要がある。
(2)個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成
様々な方法を活用して作成を試みたが、本校の実態に合う作成の流れについては、現在も模索中
である。今後、活用できる計画を立てるために、いつ、だれが、どのような形で作成するか等、新
年度のできるだけ早い時期に、全職員に作成の流れを提示できるよう検討を進めていく必要がある。
(3)校内支援体制の整備
本校における特別支援教育への取り組みを、本事業の終了とともに終わらせることなく、本校で
必須の取り組みとしてこれからも長く継続させていくために、校内支援体制について検討し、整備
していく必要がある。
(4)支援を要する生徒と協調学習による学び
本校は、本事業と共に、昨年10月「高等学校学力向上推進モデル校」に指定され、学習理論に
基づく「協調学習」の授業を進めている。協調学習は、グループ内での会話を通して、それぞれの
- 52 -
学びを深めていく学習形態である。支援を要する生徒の中には、他人と関わることや、自分の考え
を人に伝えることを苦手とする生徒が少なからずいる。今後、このような生徒に対して、グループ
学習の中での、個別支援のあり方についての検討が必要である。
6
総合考察
この2年間、発達障がいのある生徒への通常学級での支援のあり方の一つとしての「わかる授業」
の実践に取り組んできた。本事業の取り組み期間における、授業担当者の支援実施状況及び変化は、
下表のようである。
特別支援教育職員アンケート 集計結果
番号
質問内容
2011 年度
2012 年度
比較
1
1つの説明で、1つの行動を指示する。
21.2%
47.2%
26.0%
2
短い言葉で伝え、ゆっくりと話す。
48.5%
47.2%
-1.3%
3
多くの内容を伝える時は、板書やプリントに書いて示す。
60.6%
66.7%
6.1%
4
難しい語句を避け、易しい言葉を使って説明する。
90.9%
77.8%
-13.1%
5
言葉の理解を補うために、授業の中で見本や実物を見せる工夫を行う。
60.6%
61.1%
0.5%
6
全体に指示を出した後、必要な生徒には個別に指示を出す。
66.7%
72.2%
5.5%
7
体験的に学べるように、身体を動かす活動を授業に取り入れる。
39.4%
58.3%
18.9%
8
話の内容がわからない時には、教職員や友達に自ら質問する態度を身につけさせる。
24.2%
38.9%
14.7%
9
質問に答えさせる時、答えを急がせない。
60.6%
61.1%
0.5%
10
答えを思い出しにくそうにしている時は、聞き手が質問して思い出す手助けをする。
75.8%
61.1%
-14.7%
11
選択肢のある質問をする。
51.5%
47.2%
-4.3%
12
支援が必要な生徒の得意なことが発揮できる活動を、授業に取り入れるよう工夫する。
18.2%
25.0%
6.8%
13
授業の振り返り(簡単な復習)の時間を作る。
42.4%
44.4%
2.0%
14
生徒の注目を促す工夫をする。(絵カード、サイン等)
15.2%
25.0%
9.8%
15
「学習の流れ」「学習の予定」「学習のねらい」など、授業の流れを視覚的に示す。
18.2%
38.9%
20.7%
16
授業に必要な物が、全員机上に準備されていることを確認してから授業を始める。
21.2%
41.7%
20.5%
17
授業に必要な物のみ机上に出すよう促し、関係のない物は片付けるように声をかける。
30.3%
47.2%
16.9%
18
大切な話をする前には必ず「今から大事なことを言います」など、声をかけてから話す。
36.4%
55.6%
19.2%
19
スケジュールの変更は事前に伝え、視覚的にもわかるように配慮する。
24.2%
30.6%
6.4%
20
肯定的な表現をできるだけ多く用いるようにする。(気になる行動をしなかった時にほめる)
33.3%
44.4%
11.1%
21
必要以上の叱責はしない。(叱った後は「これで終わり」と伝えて引きずらないようにする。)
54.5%
47.2%
-7.3%
22
生徒のテンションが上がった時には、教師はテンションをダウンして冷静に対応する。
36.4%
41.7%
5.3%
23
読みやすい文字の大きさで書く。
75.8%
75.0%
-0.8%
24
赤いペンを多用しない。
21.2%
27.8%
6.6%
25
大切な部分には線を引いたり色を変えたりする。
72.7%
77.8%
5.1%
26
貼り付ける教材を多くし、板書を多すぎないようにする。
6.1%
8.3%
2.2%
27
教科書や本を拡大コピーしたものを利用する。
9.1%
13.9%
4.8%
- 53 -
28
重要度に合わせてペンの色を使い分ける。
45.5%
50.0%
4.5%
29
本時のねらいや1時間の全体の流れがわかるような板書の書き方をする。
21.2%
38.9%
17.7%
30
「授業のめあて」「教科書のページ」を最初に板書する。
27.3%
36.1%
8.8%
31
配布プリントにふりがなをつける。
30.3%
22.2%
-8.1%
32
ワークシートを用意し、生徒の書く負担を少なくする。
48.5%
41.7%
-6.8%
33
行間を広くして読みやすくする。
21.2%
27.8%
6.6%
34
要点を太字にする。
39.4%
30.6%
-8.8%
35
記入する場所を明確にする。(枠や括弧をつくる、下線を引くなど)
57.6%
50.0%
-7.6%
36
1枚のプリントの中の問題数を少なくする。
12.1%
13.9%
1.8%
37
ヒントになることをプリントの隅に書いておく。(ヒント欄として使う公式を書いておくなど)
3.0%
13.9%
10.9%
38
文章にイラストを添えて、視覚的にイメージしやすくする。
15.2%
30.6%
15.4%
39
テスト問題にふりがなをつける。
36.4%
41.7%
5.3%
40
テストにおいて、問題用紙・解答用紙を別にしない。
63.6%
66.7%
3.1%
回答項目に該当するような授業・実習場面がないため、実施の割合が低い項目もあるが、2年間の
データ比較をしてみると、40項目の質問のうち、30項目において「取り組んでいる」とする回答
の割合が増えており、支援の実施が確実に拡大していることがわかる。特に質問番号1、7、15、
16、17、18、29、38の8項目においては、15%以上の増加率であり、特別支援の視点に
基づいた支援の実施に対する、教職員の理解が進んでいると言える。
教職員は生徒の状況を理解しながら、
「わかる授業」のための支援実施をしているが、生徒自身は授
業をどう捉えているのか。次に、生徒の授業に対するわかりやすさや興味についての評価を、学校評
価アンケート(過去3年間)の結果から分析してみる。
- 54 -
「授業のわかりやすさ、興味」についての結果は前頁グラフの通りであり、本事業への取り組み前
後で、授業に対する生徒の捉え方に明らかな変化が見える。肯定的な評価が確実に増加し、今年度結
果では70%強となっていると共に、本事業に取り組んだこの2年間の比較でも、
「わかりやすく興味
がある授業が多い」に「そう思う」と回答している生徒の割合が倍増している。教職員が、様々に授
業を工夫することが、確実に生徒の「わかる」に繋がっていると分析できる。上記の2つのアンケー
ト結果より、要支援生徒への取り組みが、生徒全体への有効な支援となる、いわば“授業のユニバー
サルデザイン化”が図られたと言える。
一方で、様々な工夫をしても、授業に対して否定的な評価をしている生徒が30%弱いるのも事実
である。この点についても真摯に受け止め、教職員自らが授業を振り返り、さらに工夫や改善を進め
ていく必要がある。今後、授業に興味が持てず、わからなさを感じている生徒に対して、教職員は生
徒の言葉を聞き、出来そうなことを一緒に考え、小さな成功体験を積ませながら、学習に対して前向
きな気持ちを持てるような支援を行っていく必要がある。
また、小・中学校で、学習についていけない、不登校等、様々な経験をしてきている生徒が少なく
ない本校において、高校入学後、本校に対してどのように感じているのかという、学校に対する評価
を、学校評価アンケート「本校に入学して良かったと思う」という質問(過去3年間)の結果から分
析してみる。結果は、以下のようである。
本事業への取り組み前後で生徒の肯定的な評価が確実に増加し、今年度結果では肯定的評価が80
%強となっている。本事業に取り組んだこの2年間の比較でも、
「そう思う」と回答している生徒の割
合が確実に増加している。また、本事業取り組み前の22年度と今年度を比較してみると、
「そう思う」
と回答している生徒の割合が2.5倍も増加している。
教職員が積極的に生徒理解を図ろうと、授業のみならず学校生活の様々な場面で、生徒への声かけ
を行い、生徒と教職員の関係が良くなってきていることなどが、生徒が「本校に入学して良かった」
と感じことに繋がっているのではないだろうか。
- 55 -
また、教職員が特別支援教育の視点に基づいて、授業をよりわかりやすく興味が持てるようにと改
善に取り組んできた“授業の質的変化”も、この結果と関連性があると考えられる。
2年間の「高等学校における発達障がいのある生徒支援事業」の取り組みを進めていく中で、本校
においてどのような支援が実施できるのか、またどのような支援が有効なのか、模索しながら研究を
進めてきた。2年間の期限付きの事業ではあったが、この研究に取り組むことが、本校における特別
支援教育のあり方を考える大きな契機となった。そして、様々な実践の積み重ね、生徒の学校評価ア
ンケート結果から、特別支援教育の視点に基づいた教育実践は、多くの生徒にとって極めて有効であ
ることが立証できたのではないだろうか。
今後も、様々な特性を持った生徒たちが本校に入学してくると予想される。それだけに、この2年
間の取り組みを事業終了とともに終わらせることなく、本校では当然かつ必然の取り組みとして、こ
れからも継続させていく必要がある。そのために、最も重要となるのは、教職員の“生徒理解”であ
るということを、本研究の考察のまとめとして最後に述べておきたい。
かつて、同和教育に“差別の実態に学ぶ”という“言葉”があった。その言葉を借りて言えば、特
別支援教育は“生徒の実態に学ぶ”ところからスタートすると言えるだろう。研修会や講演会で繰り
返し聞かれる言葉の一つに“子どもの行動には意味がある”というものがある。大人(教職員)にと
ってはわけのわからないような子どもの振る舞いであっても、その子にとっては大事な“意味”をも
った行動なのだ。教職員は、子ども(生徒)に寄り添うことにより、その子(生徒)の置かれている
状況や、その子(生徒)が抱えている困り感を理解し、その振る舞いの持つ“意味”を理解すること
ができる。そして、そのことは特別支援教育のみならず、広く教育という営みに携わる者が持たなけ
ればならないものでもある。
発達障がいについては、マスコミで取り上げられる機会も増え「自閉性スペクトラム障害・AD/
HD・LD・アスペルガー症候群・広汎性発達障害」といった言葉の社会的な認知度も上がってきて
いる。しかし、現場の教職員にとってみれば、何より大事なのは、自分たちの目の前にいる生徒であ
り、診断名ではない。一人一人の人間の顔が違うように、一人一人の頭の中(中枢神経の発達の状態)
も違っていて当然である。その結果として、一人一人の行動も異なった意味を持つものになってくる。
診断の有無に関係なく、生徒はそれぞれ異なる特性を持ち、異なる困り感を抱えながら学校生活を送
っている。だからこそ教職員は生徒一人一人に対して、教育的支援や配慮を意識的・無意識的に常に
行っている。そして、
「特別な支援や配慮を要する」のは、その中でも際立った特性を持ち、そのこと
を要因とする強い困り感を抱えている生徒であると考えることはできないだろうか。
そうした生徒に対する手立ては、文献に当たればたくさん見つけることができるようになってきて
いる。しかし、目の前の生徒の実態を理解しないで定型的な“支援”をしても、生徒に達成感や満足
感、自己肯定感といったもの、つまりは“手応え”を感じさせることは多くはないだろう。メガネは
基本的にはオーダーメードである。使う人の視力の度合いに合ったものでなければ意味がない。特別
支援教育も、当該生徒に本当にフィットした支援や配慮でなければ、ただの“おせっかい”になりか
ねない。だから教職員は、生徒の実態から学び、生徒を理解しようとする意識を持ち続けることが重
要なのだ。
今後も本校では、
“生徒理解“をキーワードとし、試行錯誤を重ねながら、特別支援教育を定着・発
展させていきたい。
- 56 -
引 継
資料1
記 録
年
性別
ふりがな
生徒氏名
月
出身中学
相 談 者
診断名又は傾向
中学校での状況
(支援内容等)
好きなこと
嫌いなこと
得意なこと
苦手なこと
得意な教科
苦手な教科
【本人】
将来の夢・希望
【保護者】
家庭状況
進学後も継続して
欲しい配慮事項等
(具体的支援等)
関係機関等
(医療・福祉)
- 57 -
日 記録者:
中学校
資料2
特 別 支 援 教 育 だより
No.2
2011.10.24
特別支援教育研究推進委員会
2 学期中間考査が終わって…その結果は?
2 学期中間考査が終わり、先週は成績に関わる各学年会が開かれました。どの学年も欠点保有
生徒は多数で、180 人中ほぼ 1/3 程度の生徒が欠点保有という状況でした。考査前でも、
「自宅
学習が計画的にできている」という生徒が1割に満たないのが、本校生徒の現状です。
(基礎学力
診断テストアンケート結果より)
“生徒の努力不足”だけを理由にせず、一方で「テスト勉強のしかたがわからないのでは?」と
いう見方はできないものどうでしょうか?そのように考えると、本校の新たな取組の必要性を感
じませんか?
気になる生徒とは? ~京都府立朱雀高等学校の実践より~
現在、担任の先生方には、教育相談部でピックアップした気になる生徒の情報をまとめていた
だくようお願いしているところです。
「A先生は“とても気になる”と感じても、B先生は“全く
気にならない”」。生徒の授業に対する興味関心が違えば、生徒の見せる姿も違ってくるので、こ
のようなことは良くあることだと思います。しかし、今後、職員間での生徒状況把握の差を小さ
くするために参考にしていただきたい“気になる生徒”の捉え方の指標内容を以下に示します。
これは、先日学校訪問した朱雀高校の実践内容の中に示されていたもので、非常にわかりやすい
ものなので、本校でも活用していきましょう!
「気になる生徒」とは?
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
欠課・欠席・遅刻・早退が多い。
さぼっていないが成績が良くない。
提出物が提出できない。
授業中いつも落ち着きがない。
授業中いつも寝ている、伏せっている。
体調不良等での保健室対応が頻繁。
一人で行動していることが多い。
HR活動・部活動等、集団の活動を避ける。
家庭に学校生活で支障が起りそうな問題をかかえている。
その他
- 58 -
- 59 -
インシデント・プロセス法によるケース検討会 C班(実習)のまとめ
・クラスの生徒(特定の生徒以外)に、話しか
けるのが苦手。
・他者との協力が難しい。
・人との距離感がない。
・教員の顔色をうかがっているところがあった。
・失敗を恐れすぎているところがあるのでは?
・いつも木下さんと一緒にいる。
・自分の話はしたがるが他者の話は聞かない。
・指示をしても場面が変わるとなかなかできな
い。
・社交性がある。
・下級生の世話を良くする。
・何にでも意欲的。積極的。
・講演会等では、うなづきながらしっかりと聞く。
・元気な声を出す。
・登校時のあいさつの声が大きい。
・歌が大好き。
・優しい。
・シャープペンが使えるようになり、文字も枠内に
おさまるようになった。
気になるところ
困っているところ
・集中力が続かない。
良いところ
優れているところ
・休憩時間を教室で過ごせるようになった。
・いちいち質問しなくなり、できることが増えてきた。
2 見本(写真)を作成する。
1 作業の単純化を図る。(1つの作業を連続的にさせる)
具体的な支援や手立て(実施できそうな順)
にさせる。
・いろいろな作業をするのではなく、1つの作業を連続的
・口答指示だけでなく、見本(写真)を作成する。
報告させる。
・スモールステップで作業を考える。1つの作業ができたら
・得意なものをさせる。
考えられる具体的な支援や手立て
本人にわかりやすい形で見本を示し、
自力でできたら報告するようにする。
目指す姿(少し頑張ったらできそうな目標)
《事例》 農業実習の場面で、指示・見本を見せても、作業を一人で正確にすることができない。
資料4
・一生懸命取り組む。
- 60 -
2012.6.4
資料5
*佐賀県教育センターHPからダウンロードできる支援ツールを活用して作成
【個別の指導計画】
生徒名
A
さん
・資格を取りたいが、自分は不器用だから難しいかも。
本人のニーズ
(夏休みに講習を受けるだけで取得できる、「食品衛生責任者養成
講習」を取得。)
・在学中、自分に取れそうな資格はどのようなものがあるか。
保護者のニーズ
・社会の中でしんどさを感じないような環境で生活させたい。
・見守りのある進路選択を考えたい。
・座学では、全く問題ない。癒される存在である。
・大きな文字を書くのは相変わらずだが、枠にはまる字を書くこと
ができている。
・他人との距離感は、昨年よりも取れるようになってきている。た
だ、場面によっては、特定の生徒や教員に近寄りすぎることがある。
・実習では、指示した内容を示範しても同じようにできない。
反復練習でも、技術の習得が難しい。(保護者より)
・仕事を見るようになった。どんな仕事が自分に合うか意識してみ
生徒の現状
ている。
(コカコーラの販売、掃除の仕事、列車のシーツ換えの仕事なんか
どうかな?)
・人の評価を気にするようになってきた。
(球技大会は休もうかな…自分は下手だから迷惑をかける。話した
いことを話した後に、自分の発言に対して「今言ったこと変じゃな
い?」と聞き返してきた。)
・汗かきなので、身だしなみを整えることに気を遣うようになった。
(制汗剤、着替え)
(高)
注意、多動・衝動、書く、読む
(低)
粗大運動、微細運動、計算・推論
チェックリスト結果
ツ
ー
ル
の
活
用
に
よ
る
気になること
話を聞いて理解することが難しい
予想される課題
聞いたことを覚えておくことが苦手
短期支援目標
実習授業において、一人でできることを増やす。
具体的支援内容
指示の仕方を工夫する。(指示書の作成)
- 61 -
資料6
特別支援教育通信
No.5
2012.2.14
特別支援教育研究推進委員会
「わかる授業」の実践に向けて
~授業改善の取組~
授業参観を行った、OCⅠの授業(1A:後半)における実践を紹介します。
状況1 本時の学習内容、目標を伝える場面。
支援1 “待ち合わせの約束をする時の表現を覚える”と、大きく板書する。
⇒前時の学習を思い出し、どのような表現があったか、積極的に発言する生徒あり。
*板書することにより、授業の見通しを持つことができる。
状況2
教師がフレーズを発音した後、リピートする場面。
支援2
「大きな声で発音できた人には、次回プリントにはんこを押します。」の声かけ。
(頑張っていた生徒には“はんこを押す”ということを先週から実施。)
⇒生徒は、大きな声でリピートしている。
⇒声を出す事に拒否感を持ち、これまでの数時間、OCⅠの
授業中顔を伏していることが多かったD君の顔が上がって
いた。
*こまめに評価し、「できる」という感覚を持たせるための工夫。
*小さな「できる感覚」の積み重ねが、生徒の中に自信を生む。
状況3
授業の目標である、“待ち合わせの約束をする時の表現を覚える”場面。
支援3 「今から1分で、少なくともプリントの中の表現を1個は覚えましょう。」の声かけ。
英語が得意な生徒には、近づき「あなたは、頑張って5個覚えてみよう。」と個別に
声かけをする。
「覚えにくい人は、○○の表現を覚えましょう。」という声かけを全体にして、苦手な
生徒へのさりげない促しをする。
⇒読み書きを苦手とするD君は、先生が指定したものと、もう1つ自分で選んだ表現
の2つを覚えていた。
*自分の力に応じた内容を選べたので、苦手な生徒も意欲を低下させず取り組むことがで
きた。
- 62 -
状況4
教師の質問に対して、覚えた表現を英語で答える場面。
順番が回ってきたが、
「わからない」と言って、答えようとしないF君(比較的英語
はできる生徒)。本当にわからないのではなく、意欲が低下しているように見受け
られる。
支援4
F君に近づき、「どれなら言える?」とプリントを見せ、答えられるものを選ばせ
る。
⇒教師の質問に、F君は答えた。
*“授業からはずさない”支援を行ったことで、授業への意欲がゼロにならず、後半の活
動に積極的に取り組むことにつながった。
状況5
グループに分かれ、発音されたフレーズを表しているカードを順番に並べる活動の
場面。
支援5
1人の生徒だけの活動にならないよう、「これは競争ではなく、チームワークで並
べる事が大事です。」の声かけ。
⇒読み書きは苦手であるが、英語のリスニングは少
しできるD君もしっかりと活動に参加していた。
自分の得意とするフレーズが発音されると、いち
早くカードを動かしていた。
⇒意欲の低下が見受けられたF君も、グループで話
をしながら活動していた。
*支援を要する生徒の得意な活動を取り入れることで、学習意欲を保つことができた。
~集団における個別の支援~
今回は、OCⅠの授業における5つの場面について紹介しましたが、45分授業の
中で、特別支援教育の視点に基づいた全体への支援がさりげなく実践されていました。
その中でも状況3の場面のかかわりは、全体指導の中に個別支援の指導を組み入れた、
すばらしい実践であると感じました。本校の研究テーマである“発達障がいのある生徒
への通常学級での支援のあり方、並びに集団における個別の支援のあり方“そのものを
実感した場面でした。
同時に、生徒個々の状況をしっかり把握した上での、少人数による分割授業であるか
らこそできた実践であるとも感じました。
毎回、授業参観後には白兎養護学校の中原先生を交えた検討会を実施し、内容の振り返りをす
る中で気づき等が生まれ、授業担当の山内先生は、それを次時の授業に生かす工夫をされていま
す。今後も、先生方に情報発信をしつつ、情報の共有化を図っていきたいと思います。
m(_ _)m
- 63 -
資料7
第5回調理実習
ぎょうざ
餃子2 人分
具
豚ひき肉・・・75g
調味料
白菜・・・130g
しょうゆ・・・大さじ1/2
にら・・・50g
こしょう・・・少々
おろしにんにく・・・少量
ごま油・・・大さじ1
しょうが・・・1かけ
餃子の種づくり
白菜
ニラ
豚ひき肉
フライパンに湯を沸かす。沸騰
洗う
大きめのボールに、肉と調味
した湯で白菜を 1 分間ゆがく。
→5mm程度の大きさに切る。
料・ニンニク・しょうがを入れ
↓
肉に粘りがでるまで手で混ぜ
ザルに白菜をあげ、水をかけて
る。
冷ます。
↓
ニンニク・しょうが
皮をむいてから、すりおろす。
白菜の水をしっかりしぼる。
↓
↓
みじん切りにする。
白菜・ニラを入れて10回混ぜ
(しっかり水を切る)
る。
包む前に準備
餃子を包む
小さじ
ミニボール(水を半分入れる)
バット(包んだ餃子を入れる)
○餃子の皮の真ん中に小さじ
1杯の具をのせる。
↓
○手前から奥へ皮を折り、
手前の皮にひだをつくっ
ていく。
餃子の皮の周りに指で水を塗
る。
- 64 -
○手前から奥へ皮を折り、
手前の皮にひだをつくっ
ていく。
できあがった餃子はバッ
トにおく
資料8
第5回調理実習
餃子・中華スープ
〈やることリスト〉
①中華風コーンスープを作る。
②餃子を包む
①必要な道具を準備
●ミルクパン(小さな鍋)①
●計量カップ(大きいもの)①
●しゃくし①
●食器(2人分)
さいばし
●穴あき玉じゃくし①
●菜箸①セット
●包丁①
●まな板①
●こさじ①(片栗粉を溶く用)
①が出来たら先生にチェックしてもらう。
②中華風スープのレシピを見る。
③餃子を包むレシピを見る。
④道具を洗う。
⑤試食をする。
⑥後片付けチェックリストを見る。
- 65 -
- 66 -
任
ケース検討会
関係職員による
担当
特別支援
担
進路主任
(就業面、生活面支援)
障害者就業・生活支援センター
②手帳取得の検討
①本人・保護者との面談
(専門相談部門)
(学卒ジョブサポーター)
ハローワーク
(職業評価など)
障害者職業センター
就労支援の流れ
手帳取得
*見学
障害者職業能力開発校
*見学、体験
企業(障害者枠)
企業(一般就労)
特別支援教育研究推進委員会
企業、訓練校での見学及び体験には、学校担当者の同行を求められる場合もある。
注 ハローワークへの相談を、早い段階(2年時)でしないと、手帳取得での就労・訓練校入校などの選択肢はどんどん狭くなっていく。
○
生徒及び保護者
支援を要する
資料9
資料 10
【校内職員対象】
00
特別支援教育通信
2013.1.15
特別支援教育研究推進委員会
「保護者のニーズ」~2学期末の保護者面談より~
支援を要する生徒の保護者を対象に、2 学期末も担任との懇談の後、教育相談部でも面談を実施しま
した。2 日間で 13名の保護者と面談し、様々な話を聞くことができました。本人・保護者も、“本校
での学校生活に満足している”等の、プラスのコメントを聞きましたので、それらを以下にまとめます。
・学校が楽しいと言っている。学校の様子を家庭でもよく話してくれる。
・「学校が楽しく、農林に来て良かった」と本人が言っていた。保護者としても良かったと思って
いる。
・小・中学校は少人数クラスだったので、入学当初、高校の多人数での集団生活が心配だった。
しかし、その不安は今では100%解消された。
・家で学校行事のこと等をよく話すようになり、高校になって学校生活に対して積極的になってい
るように感じる。(中学校時は話さなかった。)
・高校に、子どもの様子を理解してもらいとても感謝している。
・一時期、部活の同級生との関係に悩んでいたが、学校の先生から「何かあれば言ってくれば良い」
と言われたことが、本人の支えになっているようだ。保護者として、とてもありがたかった。
また、「 本校の支援に関する保護者のニーズ(要望)」 も、聞き取りました。
・テストにふりがなを付けて欲しいと要望していたが、2 学期末考査で付いていたのは、1教科だ
けだった。語彙が少ないので、ふりがなを付けても意味がわからず点数が上がらない可能性もあ
る。しかし、「この字はこんな風に読むんだ」というような、本人の学びがそこにあるかもし れ
ないので、 今後は他の教科でも、ふりがなをお願いしたい。
・週末課題の未提出については、放課後残してでもやらせて欲しい 。また、
未提出だった場合は、家庭に連絡が欲しい。(週末課題が提出できて
いない状況があり、「提出物が苦手である」という中学校からの引継があっ
た生徒の保護者)
・考査前補習を欠席していることを、懇談に来て初めて知った。補習の実施、
課題の提出状況について家庭へも連絡が欲しい。
・考査前の補習は、親としても参加させたいので、 家庭にも情報を伝えてもらいたい。
・コミュニケーション面で心配があるので、3 年になったら 早い段階から面接の特訓をして欲
しい。
保護者は、特に“学校との繋がり”を切望しています。ニーズとして語られたことは、いずれも
“実践可能なこと”ではないでしょうか。 生徒のために、また子どもを思う保護者の思いに
応えるために、より良い方法を考え、それを実践する3学期にしていきましょう 。
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