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H22年度 実習生による座談会(PDF)
Ⅳ. 座 談 会 今年のインターンシップ支援事業は 20 名の規模で実施しました。「インターンシッ プ」の実施期間は 15 日間でしたが、実習開始の一番早い実習生は 7 月 16 日からスター トし、遅い人は 9 月 29 日に終了、実習期間は概ね2ケ月半に及びました。 実習生が、今回の「インターンシップ」でどのような技術等を習得し、今後の就職活 動にどう生かすか、そうした感想を相互に語っていただく場として、座談会を開催しま した。また、実習生を受入れていただいたデザイン事務所の方々にもご参加いただき、 実習生の 15 日間の足跡を語っていただきました。 当日は、実習生、受入事務所の方々とも学校や業務の都合等もあり、残念ながら全員 参加とはなりませんでしたが、それぞれの 15 日間、時間が限られた中でしたが、和気 あいあいに報告が行われ、座談会の後も相互交流を行いました。 [開催日時] 開催日時] 平成22年9月29日(水)午後3時00分~5時 00 分 [開催場所] 開催場所] ATC10階 大阪デザイン振興プラザ 多目的ルーム [主催者あいさつ 主催者あいさつ] あいさつ] 財団法人 大阪デザインセンター 越田 英喜 副理事長 [出席者] 出席者](学生17名、受入事務所代表者17名/発表順・敬称略) ① 岡野 和生(中央工学校OSAKA2年) 平井憲一建築事務所(平井憲一) ② 国本 麻樹(大阪市立デザイン教育研究所1年) キューベリー㈱(仲内美紀) ③ 吉田 有輝(中央工学校OSAKA2年) ㈱ピクデザイン事務所(山田悦央/代理 皿田亮朋) ④ 塩士 舞 (大阪工業大学3年) ㈲スタジオ・オオブ(章本明平) ⑤ 増田 充泰(大阪総合デザイン専門学校2年) ㈱ジーフロー(関本敦充/代理 作本道子) ⑥ 田中安理沙(清風情報工科学院2年) オフィス アイ(池田厚司) ⑦ 石﨑 友寛(大阪芸術大学2年) S&R FACTORY(梁 眞榮) ⑧ イメージプランニング(川井博文/代理 川井統治郎) ⑨ 杉若國太郎(京都精華大学3年) ㈱ダンブレイン(納田高昭) ⑩ 三好 宏実(京都精華大学3年) ㈲白井デザイン研究所(白井岳志) ⑪ 中平亜希子(大手前大学4年) ⑫ 谷 幸祐 (神戸芸術工科大学4年) アイディアルデザイン(谷口 靖) ⑬ 清水 亮人(大手前大学4年) ㈱ディ・フラット(竹中英二) ⑭ 古川 倫行(神戸芸術工科大学4年) オーディンデザイン㈱(井川喜市) ⑮ 森元 善之(大阪デザイナー専門学校) ケイフォルム(角谷日出男) ⑯ 古角 仁美(大阪芸術大学3年) adoria company(岩田浩司) ⑰ 安藤 詩織(大阪芸術大学2年) ㈲インターデザイン研究所(上田幸和) [座談会] 座談会] 司会 上杉博美(財団法人 大阪デザインセンター職員) 司会:本日は、お忙しい中、座談会にお集まりいただきましてありがとうございます。 司会 皆様が一堂に会したインターンシップ支援事業説明会より2カ月余りが経過し、学生 の皆さんの実習も完了しました。 本日は、皆様からお預かりした感想文、報告書を元に、実習中に学んだことや感じた こと、ご指導された中で気づかれたことなど、さまざまなご意見をお聞かせいただくと ともに、本年度の実習成果の発表の場として、実りあるものにしていきたいと思ってい ます。 本日、司会を務めさせていただく上杉博美です。よろしくお願いします。 まず初めに、主催者を代表いたしまして、財団法人大阪デザインセンターの越田副理 事長からごあいさつ申し上げます。 越田副理事長:皆さん、こんにちは。親子の関 越田副理事長 係のように見えて、とてもいい感じだと思って います。司会も緊張していますが、私も緊張し ています。 インターンシップの学生諸君も、学校が始ま って日常の学習ムードに戻ったところだと思い ます。また、秋季ですから文化祭等々で多忙だ と思いますが、この座談会にご出席いただきま してありがとうございます。この座談会で学生 諸君の意見を聞くのを楽しみにしてまいりまし た。また、親になっていただいた事業所の皆さん、本当にありがとうございます。大阪 デザインセンターは、モノのグッドをずっとやってきましたが、人材のグッドをしっか りつくっていかなければということで、人材育成には大変力を入れており、事業軸の一 つになっています。それに則って、このインターンシップ支援事業を行っています。 また、事業所の皆さん、学生諸君ですから大変なこともあったのではないでしょうか。 学生諸君も、現場は厳しいですから怒られたこともあったかもしれません。そういうや り取りの中で、社会の風を体一杯に受け止めて、クリエーターとしてこれから羽ばたい ていこうという意識が芽生えたのではないかと期待しています。 今日は、3時から5時までの2時間、発表しながら意見交換を行っていきます。 昨日、ODCが主催するデザイン塾の円卓会議がありましたので参加してきました。 デザイン塾には四つの塾があり、それぞれ塾長がいて、その下に5人の塾生が張りつい てプログラムをこなしていきます。3段階あります。最初は共同で講義を聞いて、次の 段階は円卓会議でディスカッションを行い、次の段階はアクションになります。 昨日の円卓会議は、エコをテーマに3人のゲストの講師が話をした後に、塾長と 20 人の塾生も含めて質疑応答がありました。実は質疑応答が非常に大事です。一方的な学 習は、わかりましたということで終わりですが、わかることとわからないこと、二つに 分けなければ本当に理解することはできません。わからないことを見つけることが重要 です。そういう意味でも質問は非常に大事になります。 インターンシップの学生諸君が発表するということで、面白い座談会になると期待し ています。長丁場ですが、肩の力を抜いて親子の関係で行きましょう。よろしくお願い したいと思います。 司会: 司会:それでは、早速ではございますが、進めさせていただきます。実習生の皆さんに 質問をし、その後に受入事務所様からのコメントやアドバイスを頂戴したいと思います。 実習生の皆さんより提出していただいた感想文についての質問はもちろん、私が個人的 に事務所を訪問させていただいた際に感じたことも含めて、いろいろお尋ねしますので、 よろしくお願いします。 まず、最初に、岡野和生さんにお願いしたいと思います。最初に簡単な自己紹介、受 入事務所名、ジャンル、15 日間の主な実習内容を簡潔に説明してください。ではお願 いします。 岡野:中央工学校OSAKA2年の岡野和生です。受入事務所は平井憲一建築事務所で、 名前のとおり建築です。主に古民家の再生を担当しまして、この2週間の実習内容は、 基本的な図面を描いたり、現場に行って実測をしたりという感じです。 司会:いただいた感想文の中で気に入った場所があったので、それをお尋ねします。デ 司会 ザインスキル、表現力の項目で、寸法は体で表現したほうが施主様に伝わりやすいと書 いていましたが、具体的に教えていただけますか。 岡野:建築業界では、寸法は基本的にミリで表 岡野 します。例えば1メートルであれば 1000 ミリ、 50 センチであれば 500 ミリですが、実際に寸 法を施主様に説明する際に、そのまま表現する とイメージできにくいので体やモノで表現し ます。 例えば、皆さんが座っているイスは、床から 座面までの高さは 420 ミリですが、実物がな いときに 420 ミリと言われもイメージできません。私が手を広げると小指から親指の 先まで約 21 センチあります。それを二つ合わせると 42 センチになるので、イスから 床までの寸法を手で表現するとわかりやすくなります。部屋の面積でも、例えば9㎡の 部屋だと言われてもわからないので、そういうときは、9㎡は畳が6畳分ある部屋だと 表現したほうが伝わりやすくなります。 司会:では、受入事務所になっていただいた平井さんから、感想をお願いします。 司会 平井:平井憲一建築事務所の平井と申します。建築一般を設計していて、下は 1000 万 平井 円から上は6億ぐらいまで設計しています。その中で最近は、特に古民家の再生といっ て、100 年ほど前の家を再生する仕事が増えています。せっかく来てもらうので、でき れば建築に関する体験をしてもらいたいという思いがありましたが、たまたま今年は古 民家再生の仕事が多く、偏ってしまって申し訳ないと思っています。 その中で、学校の机の上で勉強すること以外に、できるだけ体で感じてもらいたいと 思っていました。設計には方法論もあると思いますが、図面的なことは学校で学ぶこと ができます。建築の設計では、寸法の概念が特に重要になってきます。例えば、テーブ ルの高さにしても、どの寸法であればゆったりするのか、狭く感じるのか。それがわか らないと設計はできないので、古民家再生で既設の建物を測りにいったときも体で空間 を感じてもらう。空間を体感することが大事だ、と伝えましたが、彼はそれを感じてく れたようです。 空間の場合は三次元になってくるので、三次元に対応する CAD の Vector Works を 使っていましたが、それを習得してもらうこと。また、プレゼンテーションをするため にはイラストレーターやフォトショップも体得して、トータルで自分を表現できるよう にしていく。ただ、15 日間では短いと感じました。彼の場合は、ほとんど現場実測ば かりでしたが、暑い中、大変な思いをさせましたが、文句も言わずによく頑張ってくれ たと思います。どうもありがとうございました。 国本:大阪市立デザイン教育研究所1年生 国本 の国本麻樹と申します。受入事務所はキュ ーベリー株式会社で、主に Web デザインを 手掛けている会社です。15 日間の実習では、 Web デザインなのでタグの打ち込みや写 真貼り、素材づくり、情報収集など全般的 にかかわらせていただきました。 司会:国本さんは、パソコン操作の項目の欄に、 「インターンシップに来て効率のよさ 司会 を考えるようになりました。」と書かれていましたが、具体的に説明いただけますか。 国本:今までは与えられた課題を自分の中で解決するという作業になっていて、自分の 国本 世界しか考えていませんでした。実際の仕事では、自分に来た課題はその後、別の人に 回りますが、次の人に渡ることを考えずに自分のペースで作業をしていました。実際の 会社では、いかに早く作業できるかが求められています。決められた期間内でどれだけ のことができるかということもあります。また、自分がつくったものを次の人に渡すと きに、次の方が編集しやすいようにしておく。そういう話を聞いて、今まで何も考えず にやってきたと反省していて、これからぜひ生かしていきたいと思いました。 司会:実は、国本さんの評価はすべてが良くて、仲内さんも感動されていたと思います 司会 が、特に優れていると思われるところはどこでしょうか。 仲内:パソコン操作も含めて全般的にできる方でした。 仲内 司会:今後、Web で求められる知識や必要とされる内容については、どんなことが求 司会 められますか。 仲内:デザイン専門学校の方は、学校でフォトショップやイラストレーターを習ってい 仲内 るので得意な方がたくさんいると思いますが、Web は英語ができないと難しいところ が出てきます。英語も勉強していただければ、さらに伸びると思います。 吉田:中央工学校OSAKA建築学科2年 吉田 の吉田有輝です。今回、株式会社ピクデザ イン事務所にお世話になりました。主に店 舗デザインを手掛けていて、15 日間だけで したが、現場に連れて行ってくれたり、ソ フトを使わせてもらったり、学校ではやっ たことのないことばかりだったのでついて いけないところもありましたが、有意義な 時間だったと思います。 司会:吉田さんは、表現力の欄に、パースの描き方を学んだと書いおられましたが、具 司会 体的に図法や彩色方法など、学校とは違うテクニックを教えてもらったところはどこで すか。 吉田:学校ではあまり詳しく手描きパースについて指導を受けていなかったので、今回、 改めて、一から教えていただきました。皆さん、優しくしてくれました。 司会:わかりました。事務所の方にお尋ねしますが、吉田さんは話し方がハキハキして 司会 いて、最初の日から大きな声で挨拶していて元気でいい子だと聞きましたが、実習中の 15 日間はどうでしたか。 皿田:体育会系のノリで、お客さまが来ると朝早くてもしっかりと挨拶していました。 皿田 店舗デザインのデザイン事務所ですが、現場に行ったりクライアントに会ったりするの で、人とのコミュニケーションが大事になります。そういうところをものにすれば伸び ると思います。 塩士:大阪工業大学工学部空間デザイン学科3回生の塩士舞です。今回、スタジオ・オ 塩士 オブさんにお世話になりました。スタジオ・オオブさんは主にパッケージデザインをさ れている事務所で、15 日間の実習ではお菓子のパッケージをつくりました。 司会:塩士さんは、報告書を小さな文字でたくさん書いていて、5回ぐらい読ませてい 司会 ただきましたが、特に力を入れて、プロデュースと情報収集の手法について細かく流れ を書かれていたので、それについて説明していただけますか。 塩士:普段、学校ではビジュアルデザインといっても、自分の好きな色や形でつくりた 塩士 いものをつくるので、作品が自分の好みに偏ってしまいがちになります。今回はターゲ ットを決めて、ターゲットが好みそうな色や形を集めて、例えば赤なら温かい感じがす る、明るい感じがするというように分けて、それから展開していきました。色の考え方 にしても、学校では学べないことが学べたのでとてもよかったと思います。 司会:章本さんの評価の中で、プレゼンテーションの技法について高い採点をされてい 司会 ましたが、飛びきりよかったのでしょうか。 章本:スタジオ・オオブの章本と申します。最初、大阪工業大学ということで理屈っぽ 章本 いイメージを持っていました。私どもはイメージのマネジメントが主で、お菓子や化粧 品など、主に女性が買う商品のパッケージをデザインしています。そこに塩士さんが来 たので、なぜうちに来たのかと思いましたが、やってみようということで始めてみると、 整理にしてもきちんと秩序をつけて並べ ていて、そういう分野は得意でした。 実際の仕事との関わりは難しかったの で個人授業のような形になりましたが、 自分が持っている感性を軸に、自分が思 ったターゲットに向けてパッケージと商 品マップを制作していただきました。情 報収集から取り組んでもらいましたが、 それまで情報収集はほとんどしていなく て、他人の仕事をそういう目で見ること はほとんどなかったようです。私どもの事務所に来てからその大事さと面白さをわかっ てくれたたようで、それがよかったと思っています。 それを繰り返しながらロゴやパッケージ、商品マップを一通り作り上げました。そこ で驚いたのは、デザインのイメージが決まると順序立てて取り組んでいくというか、仕 事の手際が良くて早い、そういうところは評価しました。右脳と左脳という話がありま すが、彼女の場合は右脳も左脳もポテンシャルを持っているので、立派な工業デザイナ ーになっていくと思っています。 増田:大阪総合デザイン専門学校インテリアデザイン学科スペースデザイン専攻で、こ 増田 のたび株式会社ジーフローさんにインターンシップさせていただきました、増田充泰と 申します。 ジーフローさんは、商空間が中心ですが、イベントや学祭の POP など手広く展開し ていて、限られた内容にとどまらず、さまざまな取り組みを見せていただきました。イ ンターンシップ中には、そのとき持っていた店舗の案件に対して、実習課題として条件 を変えていただき、どんなものができるかチャレンジしてみてはどうかという形で、ま ずコンセプトをつくり、そこから自分の形に持っていきました。 司会:増田さんは、 コンセプト立案に 司会 ついて面白い内容でしたが、土地につ いてのことなど、実習を通して学んだ ことを教えて下さい。 増田:コンセプトに関しては、 イベン 増田 トに限らず、すべてにおいてデザイン はコンセプトが出てきますが、コンセ プトをどう立てていくのか。学校での 課題は好きな条件やターゲットでつくっていけるところがあるので、伸び伸びと遊びの 感覚でできますが、仕事になると違ってきます。イタリアンレストランの案件でしたの で、イタリアンレストランの条件ということで気候や風土など、イタリアのサイトや観 光サイトを調べていましたが、実際に仕事に携わるデザイナーさんは、旅行記のブログ など実際に現地に行った人が個人的に撮影した写真を集めていました。一部のサイトだ けではよい部分だけに偏るので、実際に行った人の写真も見て、幅広い分野から集めて つくっていくんだよと。それを教えていただいたので、コンセプトの立て方はここに来 る前と今では 180 度変わりました。 司会:受入事務所のジーフローさん、印象的だったことはありますか。 司会 作本:ジーフローの作本です。今回、増田君には、実際に来ていたイタリアンレストラ 作本 ンの案件を、規模を縮小した形で取り組んでもらいました。その際に、情報を収集して いる中で、それ以外も知りたいと思ったのか、「次の休みに現地に行って見てきます。」 と言ってくれました。体験することで得られる自分だけの情報を求めていくところは、 とても前向きだと思いました。今は情報が溢れていますが、誰でも手に入れられる情報 と経験した人しか得られない情報があるので、実際に体験して自分だけの情報を増やし ていくことが重要だと思います。 田中:清風情報工科学院2年の田中安理 田中 沙です。受入事務所はオフィスアイさん で、15 日間の実習では、主に取材や撮影、 コンサルティングなどの一部を実習の中 でさせていただきました。 「デザインリン ク」という雑誌がありますが、その中で インターンの人たちにインタビューさせ ていただいたのが一番大きな仕事です。 司会:先ほど説明していただいた「デザインリンク」は、私も一緒に事務所を回らせて いただいてとても勉強になりましたが、編集を担当して大変だと思ったのはどんなとこ ろでしたか。 田中:インタビューは初めてだったので、最初は不安と緊張で、なかなか聞き出すこと 田中 ができずに大変でした。シンプルに文章をまとめなければならいないわけですが、いか に簡潔にわかりやすく編集するか、難しくて苦労しました。 司会:では、受入事務所のオフィスアイの池田さん、今回のインターンシップのご感想 司会 をお願いします。 池田:うちほど、怒号が飛び交い、学生が涙を流し、ともに苦労した事務所は多分、ほ 池田 かにはないと思います(笑)。私自身がそうですが、人にも厳しく、自分にも厳しくと いうところがあるので、決して和気あいあいという雰囲気のインターンシップではあり ませんでした。うちの場合、テーマや課題を与えて期間中それに取り組ませるというの ではなく、誌面の一部を担当してもらったりするなどしてあくまで実戦の現場ばかりだ ったので、こちらも本気モードになってしまった点は反省しています。でも総じて、よ く耐えたと思います(笑)。田中さんも、 「こんなはずではなかった」と度肝を抜かれた ことも多々あると思います。でも、これも「体験」。いつかきっと役に立つと確信して います。 インターンシップは今年で3回目になりますが、受入企業側がいかに学生と接するべ きか、年々難しさを痛感しています。学校機関として教育するわけではないし、新人社 員を指導しているわけでもありません。15 日間という期間が、短いような気がしない でもありません。難しく考えすぎなのかもしれませんが、少なくとも 15 日間を単なる 職場体験では終わらないような制度にしないといけないと実感しています。特にこの業 界がインターンシップ制度を導入しているのは珍しいケースなので、余計そう思います。 そういう点では、学生だけでなく私たち自身も大いに勉強になった 15 日間でもありま した。 石﨑:こんにちは。大阪芸術大学で プロダクトデザインを専攻している 石﨑友寛です。今回、受入事務所は S&R FACTORYさんで、主に 自転車のプロダクトをされています。 15 日間の実習では、市場にある問題 点を発見して、どんな提案をしてい けば自転車の利用者が増えるかを考 えて企画書を立てました。その後に 3Dで図面を描きました。 司会:感想文の中に、 「工場見学に行きました。 」という項目がありましたが、その内容 司会 を教えていただいてもいいですか。 石﨑:堺市にある自転車フレーム製造工場に行きました。堺は自転車で有名だと聞いて いましたが、自分たちが乗っている自転車の部品がつくられている現場を見て、一つの 部品をつくるのさえ、多くの工程を経てできているということがわかりました。驚いた ことは、工場が想像していた以上に劣悪な環境だったことです。その中で作業が行われ、 製品が出来上がります。近頃は自転車も手に入れやすい価格で販売されているせいか、 身近な交通手段になった代わりに、他人のものを簡単に盗んだり、乗り捨てたりされる 盗難や放置などの社会問題があります。誰もがもっとモノを大事にしなければいけない と思いました。また、商業的にはコストの安い海外製品がよく使われていることを知り、 ただ単に日本製だけを守っていればいい、という問題ではないということを感じました。 司会:受入事務所の梁さんにお伺いしますが、自転車は実際に人が乗る乗り物なので、 司会 設計において特に注意してご指導されたところはどういったところですか。 梁:S&R FACTORYの梁と申します。実際に商品を設計、製造する際は、安全 面をまず第一に優先してつくりますが、情報量が多くまた専門的な内容になるため、イ ンターンシップの期間内ではなかなか理解できないと思いました。そこで、石﨑くんに はとりあえず1台、企画立案から完成までの一連の流れを掴んでもらう実習に取り組ん でもらいました。そこでは安全面の詳細は省きましたが、乗る人の事を常に考え企画立 案するように指導しました。実際の設計では乗る人のことを考え、事故が起きないよう に材料選定からジオメトリ検討、JIS規格やBAA規格に基づく各種試験、また3D -CADやCAEでのシミュレーションを活用し、最善の注意を払ってつくります。 司会:次はイメージプランニングの川井さんにお願いしたいと思います。 司会 実習生の德井昌子さんは、今日は学校の関係上出席ができなくて、受入事務所のイメ ージプランニングの川井さんに出席いただいています。 德井昌子さんは、広島県の市立尾道大学の3年生ですが、 実家の兵庫県で応募していただいた経緯があります。イ メージプランニングさんが携わっている仕事はカラー マネジメントの分野が専門で、時々実習中にお二人で行 動されていたのが印象的でした。 川井さん、15 日間で携わったお仕事についてご説明 いただいてもよろしいですか。 川井:イメージプランニングの川井です。15 日間の中 川井 で、德井さんにはテーマを設けて関わってもらいました。 ちょうどインターンシップ期間と重なって、クライアントよりWEBの化粧品のカラー 表現の依頼がありましたので、その企画に参加してもらいました。德井さんは企画のタ ーゲットとも重なりますので、若い女性ならではの感覚で「自分が購入するなら」とい う視点で、資料収集から色の分析など手伝ってもらいました。 司会:実はサプライズがありまして、德井さんから川井さんへのメールが昨夜届きまし 司会 た。彼女と相談して、私が代読することになったのですが、ご披露させていただいても よろしいですか。 (以下代読) イメージプランニングの川井統治郎さま、先日はお忙しい中、私のためにインターン シップ研修を実施していただき、ありがとうございました。業務内容に対する事前学習 が足りなかった上に、基本的な操作もままならなくて、ご迷惑をおかけしたことが多々 あったかと思います。しかし、私の見当違いの行動や質問にも嫌な顔ひとつせず、丁寧 に物事を説明して下さり、また、熱心に指導していただきましたことに、感謝の気持ち で一杯です。 本日は、事情により座談会に出席できず申し訳ございません。川井さんに直接会って お礼できないことがとても残念です。また機会がありましたら質問や相談をしに事務所 にお伺いしたいです。インターンシップ期間中に学んだことを、これからの勉学にしっ かり活かしたいと思います。本当にありがとうございました。 司会:以上です。 司会 杉若:京都精華大学デザイン学部プロダクトデザイン学科3回生の杉若國太郎と申しま 杉若 す。受入先は株式会社ダンブレインさんで、主にグラフィックデザインやパッケージデ ザインをされている事務所です。実習中は、キャンディーの企画案や看板のデザイン、 アクセサリーのデザイン、イラストを描くなど、幅広く経験させていただきました。 司会:杉若さんの報告書は、日報に日々 司会 の実習内容の経緯を丁寧に書かれていた のが印象的で、最終日にプレゼンテーシ ョンをされたと書かれていましたが、ど のように行ったのか、教えていただいて もいいですか。 杉若:いろいろ仕事をいただきましたが、それを徹底的に突き詰めて、自分がしたもの 杉若 を見てもらおうと思って、最終日に時間をいただいてプレゼンテーションを皆さんの前 でやらせていただきました。 司会:自信の持てるプレゼンはできましたか。 司会 杉若:はい。 杉若 司会:納田さんにお尋ねしますが、リアルな実習活動を中心に、カリキュラム的に充実 司会 していた 15 日間だったようにお見受けしましたが、いかがでしたか。 納田:ダンブレインの納田です。弊社は主にグラフィックやパッケージが中心ですが、 納田 最近はお店のキャラクターの開発、商品化というテーマでやらせていただいています。 彼は、茶化す訳ではないですが、杉若國太郎、実資、弁慶、時代劇に出てくるような感 じで、非常に頼もしくて、若々しい感じがあります。私の事務所は女性が中心で、どち らかというと私も女性的ですが、女性のテイストで作品をつくるということを目指して います。そういう意味では、男らしくて頼もしい感じがしました。 最後のプレゼンは、トータルで 15 日間なので、具体的なテーマとしては、日々の仕 事の中でチャレンジしたものを発表してもらいました。成果としては、彼はプロダクト が中心だったということもありますが、パッケージデザインを提案したのが採用されて、 私どもに貢献していただきました。頼もしい男です。 コンピューターの前に座って、イラストレーターやフォトショップで描くだけではな くて、最初にラフスケッチを描いて、その中から具体的に煮詰めてコンセプトに沿った ものを制作していく。そういう作業の時間をつくりなさいと説明した経緯があります。 いずれにしても、頼もしくて、社員も新鮮な感覚と刺激を受けた 15 日間でした。あり がとうございました。 三好:京都精華大学デザイン学部プロダクトデザイン学科の三好宏実です。受入事務所 三好 は白井デザイン研究所さんです。白井デザイン研究所は、スポーツ用品と化粧品などの プロダクトとグラフィックを行っている事務所で、私は今回、ヘアーワックスのデザイ ンを自分なりに考えて、コンセプトからデザインまで起こしていくという作業をしまし た。 司会:三好さんは、個性的な文章を書かれていて、特に言葉の使い方が面白かったので 司会 すが、「自分の思う“感(カン)”を話すことが共感につながる。」とありましたが、こ のあたりのことを詳しく教えていただいてもいいですか。 三好:このインターンシップで目指したのはプロのデザイナーとしての力です。この 三好 15 日間、プロの視点でデザインすることを念頭に置いてデザインワークを考えました。 その中で、他社の製品や市場にある製品を見て、どのような切り口でコンセプトを立て ればいいのか、などを考えながら自分の制作に役立てました。制作していく中で、コン セプトに合った製品の構造や素材はどんなものがあるか、その場合のコストはいくらな のか、など学生の視点で考えるのではなくて、プロのデザイナーの視点で考えていきま した。 パソコンでのデザインワークは、クライアントが持ってくるデザイン案の制作方法を 提案して、イラストレーターの使い方など実際に行われている方法でしていきました。 クライアントと事務所とのミーティングの中で、話し方なども具体的にデザイナーのス ペックと実務を通して理解していきました。 モノをつくるために現実と向き合ってどうすべきかを考える、というデザイナーの本 質を知ると同時に、学生とプロとの違いは、そのために“感(カン)”を張り巡らせて 情報を敏感にキャッチすることにあると思いました。生活の中で、ファッションであっ たり環境であったり、すべての物事には“感”があって、デザイナーに役立つものであ ると実感して、それからデザイナーの視点で「ものを見る」ということがよくわかるよ うになりました。 司会:では、受入事務所の白井さんから、15 日間のご感想をお願いします。 司会 白井:白井デザイン研究所の白井です。プ 白井 ロダクトとグラフィック、パッケージ等の 仕事をしています。初めに、三好さんと 15 日間のテーマと流れを話し合いました。現 場でのデザイン手法を見せ、その方法でデ ザインを実践的していくということになり ました。 最終的には、何も知らない優秀な美大生 さんという感じでした。 私も美大を卒業してから二十数年が経ちますが、大学教育は、その当時とたいして変 わっていない印象を受けました。それは、実践が欠けているということです。実際の商 品が、なぜそのようなデザインになったのかを深く考えず、自分に都合のよいコンセプ トと理想だけを考えるという感じです。それでは、デザイン事務所レベルの現場では通 用しません。 そこで、現場でデザインしていくには、「現実を理解し、掘り下げていく」というこ とを考えなければならない。たとえば、商品に印刷すること一つとっても、シルク印刷 やグラビア印刷など、さまざまな印刷方法があり、メリット、デメリット、できること、 できないこと等、その効果を理解し、その制約の中で新しいデザインを考えるというこ とを理解することです。 制約の中で新しいデザインを創造することの難しさが解ったようです。今後は、可能性 があるかどうかも考えず、「ここに印刷したい」という言葉が出る前に、少し掘り下げ てみてほしいと思います。がんばってください。 司会:今年特徴的だったのは、4回生の学生が 司会 20 名のうち5名おられまして、今日の座談会 には4名の方が出席されています。就職も念頭 に置いて、忙しい時期に参加していただいたの が私の中では印象的でした。今後、下級生の方 たちが通る就職活動について、先輩たちの話を 聞ける機会も少ないと思いますので、特別にお 尋ねしていきたいと思っています。 4回生の方々は、中平さん、谷さん、清水さん、古川さんです。まず、中平さんにお 尋ねしようと思いますが、今回、受入事務所のタチバナデザインさんは仕事の関係上ご 欠席されていますので、中平さんから自己紹介をお願いします。 中平:大手前大学メディア・芸術学部4回生の中平亜希子です。受入事務所はタチバナ 中平 デザインさんで、タチバナデザインはチラシやカタログなど販促物を制作する会社です。 この 15 日間、シールのデザインと刊行物の中の編集を手伝わせていただきました。 なぜ就職活動中にインターンシップに応募したかというと、正直なところ、就職活動 に自信がなくて、本当の現場はどんなことをしているのかという思いがあって、インタ ーンシップに応募しました。大学で勉強していることとは実際はまったく違って、自信 に繋がったかというと、自信には繋がらなかったのですが、身には付きました。何も知 らなくても、実際に仕事の中に入ってしまえばやらなければいけない。責任感という面 で、学生気分が抜けていないところがあったので、今回のインターンシップで学生と社 会人では考え方が違うと実感しました。 司会:中平さんの報告書は、小さな字で埋め尽くされていて、まじめさが出ていた報告 司会 書だったと思いますが、プロデュースの欄に「社長が社員を育成するのも一つのプロデ ュースではないか。」と書かかれていました。そういう視点で書かれている学生さんは めずらしいと思いますので、実習中に感じたことだと思いますが、ご説明いただければ と思います。 中平:今回、携わった仕事の中に、プロデュースに関 中平 する仕事は一切なかったのですが、社長がかなり熱い 方で、社員をプロデュースしていく。タチバナデザイ ンには9名の社員がいて、一人は経理の方ですが、そ れ以外は制作者の方です。営業はいなくて、自分たち から営業していくのではなく、人と人との繋がりを通 して仕事をいただくということで、繋がりを大事にし ています。今ある仕事も飽きられたら終わりで、いか に継続していくか、難しいことであり、大事なことだ と教えられました。 社長が社員をプロデュースしていると感じたのは、毎朝、朝礼で社員の一人が3分間 スピーチを行っているところです。長年スピーチしている人は面白い内容で、人に聞か せられる内容が考えられていて、魅力的な話し方も身につけています。入ってすぐの方 は、話の内容も組み立てもできていません。営業担当がいないという点では自分が売り 物で、デザインもしなければいけませんが、デザインがうまいだけでは次の仕事に繋が らないと教えてもらいました。いかに自分を魅力的に表現するかということで3分間ス ピーチをされているのを見て、社長が社員をプロデュースしているのではないかと実感 しました。 司会:わかりました。これから、残りわずかな大学生活の中で就職活動も進めて行かれ 司会 ると思います。大変だと思いますが、チャンスをつかむことを願っていますので頑張っ て下さい。 谷:神戸芸術工科大学プロダクトデザイン学科4回生の谷幸祐です。工業デザインをさ れているアイディアルデザインの谷口さんのもとで 15 日間、インターンシップをさせ ていただきました。15 日間では、打倒iPhone というテーマで、スマートフォンの提 案を行いました。スケジュールから、調査、アイデア展開、スタイリングなど、3Dの テクニックを教えてもらいながら進めていきました。 司会:受入事務所以外のところも自分から自発的に訪問されていて、いろんなアドバイ 司会 スを受けられたと思いますが、どうでしたか。 谷:谷口さんに紹介してもらって、この中のいろんな事務所の方とお話をさせてもらっ て、デザイナーとして働く上で何が大切なのかを教えていただきました。特に心に残っ ているのは、会社の中での立場や環境のつくり方を教えてもらったことで、大きな経験 になりましたので、就職活動でも大いに生かすことができるのではないかと考えていま す。 司会:谷さんは、実家の香川からこちらに 司会 仮住まいをしてまで参加してくれて、私も 心を打たれました。忙しい中、今日も来て いただいて、実習と就職活動と両立してが んばっておられると思いますが、就職活動 をしながら特に感じたことはありますか。 谷:一番は就職活動の厳しさです。プロの デザイナーとして働く上で、考え方も甘いし、できていない部分が多いと感じたので、 一から鍛え直そうという気持ちでインターンシップに参加しました。就職活動も、また 一からという形です。 司会:では、受入事務所の谷口さん、ご感想をお願いします。 司会 谷口:アイディアルデザインの谷口と申します。谷君に限らず、皆さんもクリエイティ 谷口 ブな仕事に就きたいということで頑張っていると思います。デザイン関係の学校が増え てきましたが、実際の社会には開発関連の仕事はそれほど多くはありません。また、昨 今は不況でもありますので、本当に仕事を見つけたいのであれば、常に切磋琢磨して自 分を高め、自ら追い求めていただきたいと思います。 清水:大手前大学メディア・芸術学部4年生で、彫刻を専攻している清水亮人です。受 入事務所は株式会社ディ・フラットさんで、主に産業機器のデザインワークと製図、G UIをされている会社で実習しました。活動内容は、大手前大学にはプロダクトデザイ ン科がないので、事務所では製図、3Dの作業が必要になりますが、ソフトを扱ったこ とがなかったので実務はほとんどできませんでした。そこで、学生向けのコンペを実習 課題としていただき、一から照明器具の企画、アイデア、デザインワーク、プロダクト デザインを中心に実習をさせていただきました。 司会:清水さんは、実習の期間が少し前に終わって、この座談会の報告も、郵便よりも 司会 直接持ってきたほうが早いということで直接持ってきていただきました。大学では彫刻 を学んでいて、今回はプロダクトの実習ということで、学ぶことが真新しかったと思い ますが、表現力についてはどんな指導を受けられましたか。 清水:プロダクトデザインに関しては右も左もわからない状態だったので、手取り足取 清水 り教えてもらいました。教えてもらったことで印象に残っているのは、“見えるところ すべてがデザインだ”という言葉です。その一言で深く考えさせられました。プレゼン をするにあたっても、何を発表するにあたっても、妥協できないというプレッシャーを 感じた一言でした。 司会:今後、就職活動の時期に入っていくと思いますが、夢や目標、進みたい分野があ 司会 れば教えていただけますか。 清水:彫刻を専攻しているので、就職活動をしているときに大学の先生に、彫刻では就 清水 職の入口はとても狭いと言われ、就職の幅を広く持つべきだということでインターンシ ップに応募しました。将来的にはモデラーという仕事で、じかに自分の手を動かしてモ ノをつくっていきたいと思います。インターンシップ中は、就職活動はしていなかった のですが、今回のインターンシップでコミュニケーションの大切さ、自分の実力のなさ もありましたが、人とのつながりを大切にして自分から活動することが重要だと痛感し ました。 司会:大変だと思いますが、頑張って就職活動をして下さい。 司会 では、受入事務所の竹中さん、ご感想をお願いします。 竹中:ディ・フラットの竹中と申します。清 竹中 水君は彫刻科なので、プロダクトデザインの 知識がまったくない。ベースがないというこ とで、実務をしてもらおうと思っていました が、事務所もドタバタしていたので、これで は無理だということになりました。そこで、 コンペを探してもらって、コンペで、コンセ プトワークやアイデアの出し方、2D-CA Dや3D-CAD、CG、パネルまで仕上げ る作業を 15 日間で行い、最後はみんなの前でプレゼンをしていただきました。これも 経験だということで、コンペまでには時間があるようですから、さらに精査していただ ければと思います。 古川:神戸芸術工科大学4年の古川倫行と申します。受入会社はオーディンデザイン株 古川 式会社で、主にプロダクトデザインをされています。15 日間、井川さんから課題を与 えられたわけではなくて、自分で課題を設定してスケジュールを組んでいきました。そ の中で、自分の課題として3D-CGの技術が必要ではないかと考えて、それを習得す るための 15 日間にするためにスケジュールを立てていきました。 司会:感想文を読んだ中で、技術的なことを聞こうと思って読んでいたら、文面の中に、 「お互いが気持ちよく付き合うためにどうしたらよいかを考えることを学び、心理学の 本を読みました。」というところに引っ掛かりましたので、実践の中で本を読んだ知識 が生かされたのか聞いてみようと思いますがいかがでしたか。 古川:クライアントがいて自分がいる中で、気持ちよく交渉するためには相手の気持ち 古川 を理解することが一番重要になると井川さんに教えていただいたので、それを学ぶため に心理学の本を読みました。参考になったというか、相手を否定せずに、肯定して褒め て相手を乗せるのが、コミュニケーションとしては一番いいのかと思いました。 司会:古川さんも4回生で、これから就職活動をされると思いますが、進みたい方向が 司会 あれば、教えていただけますか。 古川:デザインといっても幅があって、製造から販売、広報もデザインだと思います。 古川 自分の手でつくって販売まで自分の手で行っていく。一つのものをつくったと実感が持 てる仕事に就きたいと思っています。企業に入って、営業であったり製造であったり、 モノをつくり続けていきたいと思っています。 司会:わかりました。受入事務所の井川さん、よろしくお願いします。 司会 井川:オーディンデザインの井川で 井川 す。私が思っていた以上に彼は立派 な報告をしてくれました。私は何も 教えません。最初の条件は自分で学 ぶ人。これは最初から最後まで徹底 したつもりです。その代わり、何が したいのか、何が必要なのか、自分 で見つけて下さいということで、事 務所にある資料は、丸秘のもの以外 は全部オープンにしています。好き なものを好きに見て、分からなければそのときに聞いて下さいということで、 一切教えていません。 金儲けの本や人を動かす本、生き方の本など、いろいろある中で、彼は心理学の本を 引っ張り出したので、読む以上は報告書を書きなさいと指示しました。やったことに対 して、どうなったかを自分でまとめなさいということで、テクニックはほとんど教えて いません。困ったときにどうすればいいか、質問に対応するのがほとんどでした。 質問する中で、この人に聞けば教えてくれるからと、梁さんのところへ電話だけは入 れておきましたが、休みの日に梁さんに教えてもらいに行ったようです。とりあえず自 分でアクションを起こしなさい。知識は、自分がそう思えば学べるもので特別に教える ことはないと思っています。私の考え方やいろんなところで話をしたデータもあるので、 パソコンを開いて見ていたようです。それはそれでいいことなので、それについて何も 言っていません。 彼が大丈夫だと思っているのは、少々のことではめげないところです。言葉は悪いで すが、図々しさ、厚かましさ、済んだことは割り切ることができる神経の図太さは、こ れからの時代、特に競争の中で生きていくことにおいては、天分というか、必要な生命 力です。彼は大丈夫だと思います。 もし何か足りないとすると、2D・3Dソフトでの図面作成力。正直、私も話を聞い て唖然としたのですがその教育を受けていないとのこと。しかしそれは学校教育の問題 であって、本人がそう思ってチャレンジすれば、そんな遅れなんてすぐに取り戻せると 思います。それと、いまだに私自身が良く分からない事を、なぜ、若い人に偉そうに言 えるのか。何が天職かわかりません。その時々を精一杯生きていれば、そのうち見えて くるから、気にせずに楽にいけばという話をしました。就活のポイントについては何度 か話をしましたが、その程度です。 森元:大阪デザイナー専門学校1年の森元です。受入事務所はケイフォルムさんで、15 森元 日間で、自分が何をしたいか、何を学びたいかということで、3D-CADを教えても らいました。3D-CADをやる上で、ちょうど「エコ・プロダクツデザインコンペ」 を開催していたので、それに向けてスケッチからデザインまで考えて、それを3D-C ADでやっていきました。 司会:角谷さんから、 「いろんなことに興味を持つように」と言われたそうですが、具 司会 体的にはどういったことですか。 森元:日々話を聞かせてもらいましたが、一番心に残ったのは、いろんなことに興味を 森元 持って、それに対して自分の考えを持つことが重要だと教えてもらったことです。私は 車が好きですが、このフォルムだったらもっとカッコいいとかこんなライトならもっと よくなるとか、普段から友達同士で話をしています。吊り革広告を見ても、なぜ赤い文 字なのか、黄色なのか、もっと文字を大きくしたほうが目立つのではないか。そういう ことを考えるようになりました。いろんなものを見て興味を持つことが重要だと思いま した。 司会:もう一つ聞きたいことがありまして、森元さんは社会人を経験されて、デザイン 司会 の勉強をするために専門学校に入り直しておられますが、これから進んでいきたい仕事 としてどんな方向を希望していますか。 森元:大学を出て今年 25 歳になりますが、ほかの学生は 18 歳と若いので、就職する 森元 際にハンディキャップになると考えました。でも、角谷さんに、大学では工学部で機械 科を専攻していたので、それも含めて現在学んでいることの両方を生かした上での就活 をすれば、もっといい就活ができるのではないかと言われました。 司会:では、受入事務所の角谷さんにお尋ねします。森元さんの個性や特性を生かして 司会 指導されていると思いますが、15 日間いかがでしたか。 角谷:ケイフォルムの角谷と申します。 角谷 この 15 日間、社会に出て経験すること や学ぶことなど、学校ではできないこと を知ってもらいたいと考えていたので、 デザイン界の現状についても話をしまし た。 インターンシップに参加した学生にと って、この経験が今後の就職に役立ち、 社会と繋がることで就職に一歩でも近く なればいいと思います。実習内容として は、テーマはざっくりとしか決めておらず、本人と会って相談し、できれば就活の後押 しになればという考えでした。“プロのデザイン事務所で教えてあげることのできる最 大の特徴”ということで、実務だけでなく広範囲にわたって彼の現状も含め、ストレー トに伝えたつもりです。自分の特長が何かを見極め、それを認めてくれる会社を積極的 に自分で探していく。自分から攻めて行くことで道を切り開いていかなければならない、 とアドバイスしました。今の時代に果たして何人が就職できるのか心配です。実習生の 個性や特徴を見極めて、それに向けて後押ししていく。この想いは、今日お集まりの受 入事務所の皆さんもきっと同じ気持ちでいると思います。 古角:大阪芸術大学でプロダクトデザインを専攻している3回生の古角仁美です。受入 古角 事務所はアドリアカンパニーです。アドリアカンパニーは家具を中心にプロダクトデザ インをされていて、デザインだけではなくて、プロデュースやプランニング、マネジメ ントもされている会社です。この 15 日間は、大学ではプロダクトデザインで、車や家 電などカチッとしたものの授業が多かったのですが、雑貨をデザインすることになり、 千趣会コンペにアドバイスをいただきながら応募することができました。 司会:古角さんは、はみ出すぐらい満杯に作文を書いて下さいました。その自由作文の 司会 中からですが、 「この 15 日間で、人と繋がって、何かをすることへの責任、そこで生ま れる価値、自分がどうあるべきか、今の自分に何が足りないのか、を学ぶことができま した。」と、とても真摯なお考えを今回をきっかけにして持たれたのだと思いますが、 具体的に説明していただけますか。 古角:学校の授業では自己完結で終わる物事を、インターンシップでは他の人にお世話 古角 になりながら一緒に取り組んでいく中で、コミュニケーションの面でたくさん学ばせて いただいたと思います。具体的には、自己管理の大切さがあります。夏休み期間中は学 校の課外活動として、奈良の大型照明をつくっている工場に入っていたので、インター ンシップと両立するのが難しく、岩田さんにはスケジュールを合わせていただいたり、 徹夜明けで眠たそうに事務所に入ったり、ご迷惑をかけたり心配していただいたりしま した。自己管理ができなければ、周りに迷惑をかけるし、物事が進んでいかないと思い ます。 もう一つは、アイデアに詰まったときは、自分できっちり出来上がってから岩田さん に見せたいと思いましたが、そうではなくて、先になぜ詰まっているのか、どんな考え 方をしているのかを聞いてもらって、アドバイスをもらうことが大切だと思いました。 そうすることで、たくさんアイデアをもらいましたし、自分にはないことを考えること ができると思いました。 司会:それでは受入事務所の岩田さ 司会 ん、ご感想をお願いします。 岩田:アドリアカンパニーの岩田で 岩田 す。15 日間というのは、デザインで インターンシップを受けるには短い と考えていて、短い期間の中でどれ だけのことが学べるか、私自身の課 題でもありました。広い範囲を知っ てもらうというよりも、一つのことが今以上にできるようになればと考えて、重要な部 分の一つ、プランニングに集中してもらうよう進めました。 技術的な部分は学校で教えてくれるし、教わらなくても本を読んで独学で出来るもの はあえて教えていません。仕事つまり、ご飯を食べていかなければいけないわけですか ら、プロ意識を持ってもらえるよう、その中で特に商品価値を上げていくアイデアを、 実際の仕事に近いリアルなものとして取り組んで実践してもらいました。 彼女は理解も早かったので、少し背中を押してあげれば今まで滞っていたものがスラ スラと進められる状態になったので、少しは貢献できたのかもしれません。 安藤:大阪芸術大学の安藤詩織です。 安藤 司会:15 日間、主にどんな実習をしました 司会 か。 安藤:15 日間の前半は、歯磨きと歯ブラシ 安藤 のセット、口臭ケアのデザインということ で、デザインするにあたっては、チューブ の大きさもきちんと測って、今はどういう ものがあるのかを見てから実際のデザインに入っていきました。後半は電気ドリルの仕 事で、最初はうまくいかないことも多かったですが、上田さんに教えてもらいながら少 しずつ習得することができたので、とても勉強になりました。 司会:感想文の中で、 「会話だけのコミュニケーションではなく、デザイン自身にも会 司会 話があると思います。」と書いていますが、実習中にリアルな体験というか、実感した ことはありましたか。 安藤:デザインするにあたって、コミュニケーションは大切だと思いますが、デザイン 安藤 画は伝えるためにあると思います。デザイン画1枚だけで、このデザインはこういうこ とだと物語ってくれるので、コミュニケーションは必要ではありますが、いくら自分が 話しても、デザイン画がきちんとなっていなければ伝わらないということがよく分かり ました。 司会:では、受入事務所のインターデザイン研究所の上田さん、お願いします。 司会 上田:インターデザインの上田と申します。2週間のうち前半は自分のアイデアを具体 上田 的に表現するために2D-CADを勉強してもらいました。それで必要なステップはほ ぼ理解してもらえたと思います。後半は、成果物として見せられるように3D-CAD を学んでもらいました。学校では2回生なのでCADは触っていなかったのですが、こ の2週間で2Dと3Dはほぼできるようになったと思います。まだ我々が使うレベルで はありませんが、実用として差支えないところまではできたと思います。最近の学生さ んはパソコンスキルが非常に高いと実感した次第です。 司会:15 日間の実習内容を振り返って、ほんの数分でお話していただくのはとても難 司会 しいことだったかと思います。せっかくの機会ですので、相互に質問等がございました ら、どなたでも結構ですのでご発言していただければと思います。 いかがでしょうか。 岡野:あらためまして、中央工学校OSAKA建築学科2年の岡野和生です。13 番の 岡野 ディ・フラットの清水さんに質問がありますが、自己紹介のときに、産業デザインのG UIと言われましたが、GUIとはどういうことなのか、説明していただけますか。 清水:グラフィカルユーザーインターフェイスの略称です。 清水 Windows などで当たり前になっている、画面上にアイコンやメニューで操作対象や 選択項目を表示し、それをマウスなどで操作できるユーザー・インターフェースのこと です。直感的に操作することが可能で、ほかの例として携帯電話や銀行の現金自動預け 払い機、切符の自動販売機など画面にタッチして操作する機械などもGUIになります。 岡野:ありがとうございます。 岡野 司会:私も GUI がわからなくて、調べたことがあります。 司会 いろいろなご意見を聞かせていただいて大変参考になりました。 それでは、主催者を代表しまして、財団法人大阪デザインセンターの越田副理事長か ら総括をお願いします。 越田副理事長:皆さん、ありがとうございました。事業所の皆さんは、私が知っている 越田副理事長 方もずいぶんおられて仲間のような方もおられますが、第一線で活躍されている事業所 ばかりなのでインターンシップの学生諸君は幸せ者です。 ずっと聞いていて、学生当時のことを思い出していました。皆さんの学校がズラッと 並んでいますが、当時はほとんどなくて、私がデザインを志そうと思っていたころは数 校しかなかったので、選択肢がなかったわけです。デザインというワードも出始めたこ ろです。そういう状況で勉強してきました。当然、卒業した段階でもデザイン事務所は 少なかったです。学校には、書籍にしても、最先端のデザインの洋書は少なく、百貨店 の宣伝部に行ったり、どこかのデザイン室に行ったり、そこで資料を調べるということ が多かったように思います。そのころからするとまったく変わりました。 私は学校を出て、すぐにフリーターになりました。46 年前に学校を出て、デザイン 事業所を 46 年前からやってきました。私の時代は、クライアントにテーマがあり、テ ーマを消化することで勉強ができました。いわゆる仕事が与えられました。そういう意 味では恵まれていました。クライアントは頼みごとがたくさんあります。頼みごとを引 き受けるということは、その条件を消化していくわけですから学ぶことにつながります。 ところが今はそうではない。皆さんもそうだと思いますが、今はテーマが少ないのでク リエーター自らが出していかなければならない。与えられたものに対して回答するので はなくて、クライアントに対してデザイナーが提案していく。まったく逆のビジネスモ デルになりました。これは大きな流れだと思います。 デザイン事業所の皆さんには釈迦に説法ですが、インターンシップの学生には聞いて ほしいと思います。なぜそうなったかということです。デザイン事業所のビジネスパタ ーンを類型すると4つに分かれています。一つは、誰がリスクを抱えるかという視点で、 クライアントがリスクを抱えて、デザイナーがつくっていく。テーマもお金のリスクも 全部クライアントが持っていて、デザイナーは与えられた課題に対して最適解を出して いく。 私たちの時代は、リスクは全部クライアント が抱えていました。ところが最近は、デザイン 事業所がクライアントに提案していく。この場 合は、デザイン事業所がリスクを抱えます。問 題提起をするわけですから、クライアントはよ ければやろうという話です。お金のやり取りが 違うので、ビジネス形態がまったく違います。 その次にあるのは、クライアントと事業所が パートナーシップを組んで、お互いにリスクを 抱えていきます。例えば、Aというデザイン事 業所にクライアントが相談に来たときに、クラ イアントはお金がないので、これをデザインしてもうまくいかないということになれば、 クライアントはBとCの企業を巻き込んでパートナーシップを組んでいく。 これが3つの類型ですが、あと1個、類型があります。最近は、審査会に出てもかな り増えていますが、事業所がデザインノウハウを生かした事業を立ち上げるという世界 です。わかりやすく言えば、プロダクトデザイナーが商品をつくるということです。 もう 10 年ほど前になりますか、太平洋デザイン会議がありました。上海、北京、香 港、シンガポール、台北など、各国のデザイナーを招いて私がコーディネートしました が、香港のデニス・チャンというデザイナーから、越田のブランドはどれかと聞かれて 愕然としました。クライアントのブランドづくりはしましたが、自分のブランドはなか ったのです。 彼は時計をつくっていました。時計の中の部品は安いものです。共通部品ですから、 素人でも時計がつくれます。コンピューターでも、中国から部品を買ってくれば自分で つくれます。水平のプロダクトだからです。 次のステージとして、いかにつくるかではなくて、デザイナーがいかにつくらせるか、 こういうビジネスが発生しています。今、突如年間 100 万台、パソコンのメーカーが 出てきているのはそういうことです。工場を持っていません。今までプロダクトは垂直 統合型で、アイデアも出し、デザインも考え、技術を開発し、生産部門があって、商品 を自分たちのネットを使って販売していく。そこまでやっていましたが、これが通用し なくなりました。今、通用するのは、いかにつくるかではなくて、いかにつくらせるか。 これを考えるデザイナーにビジネスチャンスがあります。生産工場は必要ありません。 生産工場はどこにでもあります。テレビもすべて共通部品です。そのメーカーにしか合 わないようなオリジナルな部品はつくっていません。コストダウンできるので、全部合 うようにつくっています。 デザイナーも、デザインするだけではなく、自分のビジョンや夢を事業化できるとい う話です。最近、よくブランドと言われますが、製品とブランドは違います。製品計画 と商品化計画はまったく違って、ブランドとは商品化、いかに売るか。モノ売りではな くて、モノにサービスを付加して売るので、サービスの価値がブランド価値になります。 デザインの原価率がいくらで、人件費と固定費がかかっているから、30%乗せましょ うといって商品を売っていますが、ワインを見ればわかるでしょう。1000 円のワイン もあれば 100 万円のワインもあります。ここには売り方のマーケティングがあります。 歴史がある、こだわりがある、ラベルはピカソが描いた。いろいろあります。 変わってきたと思います。私の時代は、クライアントが仕事を与えてくれて、いろん なクライアントとの体験を通して成長してきました。これからは、そうはいきません。 デザイナー自らがクライアントに事業化提案をしていくという話です。これが大きな動 向とビジネスの類型であるといえます。 では、どういう人材が必要なのか。学校教育がいけないのではないかと白井さんも言 われていましたが、私も同感です。学校教育に関係していますが、そうだと思います。 では、どんな人材が必要かということです。これは基本的なパターンで、以前も言いま したが、一つは「問題発見力」です。与えられないのですから、何をテーマに選び出す か、これを見つける力、目利きが必要になります。これには感性も必要になってきます。 次は、それを構築していく能力、「構築力」です。これは感性が必要になります。コ ンセプチュアルなものをしっかりつくる能力、これは「仮説提示力」とも言います。わ かりやすく言えば万有引力、ニュートンがリンゴはなぜ落ちるのかと言ったときに、面 白いと思いませんでしたか。言っていることが面白い。理屈ではなくて理屈を超えたも の、これが仮説定義力です。そういう提示力が大事で、これは構築しなければ出てこな い。 もう一つは「推進力」です。リーダーシップをとってクリエーターとして推進してい く。 「言われたことをやります。」では無理です。推進力、リーダーシップが必要になり ます。最後は「プレゼンテーション力」です。プレゼンテーション力は、モノ発想では ダメで、事業化計画が伴わなければならない。モノの色や形ではなくて事業化計画、サ ービスやさまざまなものが付加されて、こうすれば利益が得られて世の中にも役に立つ。 そういうプレゼンテーション力が問われます。最後に「マネジメント力」が必要です。 4つに分けて、真ん中にマネジメント力。これが人材として問われてくるのではないか。 私もまだ一線でがんばっています。先週、古希を迎えたので引退しなければいけませ んが、まだ一線でいます。事業所の方と同じようにがんばっていますが、最前線で苦戦 しているわけですから、事業所の皆さんも同じことを共有されているのではないかと思 います。 インターシップの学生諸君に言いたいのは、仮説提示力、人に提案していける力。そ して、ものづくり思考で考えるのではなくて裏から見る。そういう目線が必要です。ブ ログのことも言われていましたが、ブログから取るという話は面白かった。統計学を見 れば誰でもわかります。電通や博報堂が出してくる分析を見れば書いています。もっと 大事なのは、社会を洞察する力、生活を洞察する力、これがポイントになると思います。 フリーになって、大波小波はありましたが、結果として苦労したとは思っていません。 皆さんは、インハウスになるのかフリーになるのか、わかりませんが、インハウスにな らなくても、これから「一人社長」時代に突入するのでいくらでもフリーになれます。 インターネット社会ですから、アイデアがあれば小売業までできます。勉強にしても、 今ほど勉強しやすいときはありません。一番大事な情報がタダです。昔は、情報を加工 して売る商売がありました。学校もそうです。学校も、しょうもない情報を提供するよ うな教授はクビです。それほど情報は安いです。だからナレッジをした人が勝ちます。 そういうことが大事だということです。 皆さん、あきらめないことです。やると決めたら絶対にあきらめない。私の経験では、 あきらめなければ必ずチャンスがあります。追い込まれてどうにもならなくても、あき らめない。あきらめなければ必ずキャッチアップできます。あきらめたら終わりです。 せめぎ合いで、非常に厳しい世界ですが、あきらめないことが大事だと思います。 事業所で、応用学、現場学を学んだと思いますが、もう一度、基本に返ってください。 一つ言いたいことは、難しいことを覚えるのではなく、易しいことを正確に覚えてくだ さい。易しいことを正確に覚える、これが一番大事です。 もう一つ、わかったと言うのなら、わからないことを見つけてください。きっとわか ります。多くの体験をしたので、わかったこともあったと思いますが、わからないこと もたくさんあったと思います。そこが大事です。それをフィードバックしていただけれ ば、有意義な経験をしたことになります。学生諸君には、可能性が広がっていますから、 一生懸命がんばってください。私も、できることならその年齢に返りたいと思いました。 事業所の皆さん、15 日間というと長いと思います。15 日あれば相当なことができま す。その中でご指導いただいて、深く感謝申し上げたいと思います。最後になりました が、これにて私の御礼にしたいと思います。ありがとうございました。 司会:ありがとうございました。 司会 本日、皆様より頂戴しましたご意見は今後の運営に活かし、より一層の事業の充実に 努めてまいりたいと考えております。 また、今回参加された実習生の皆さん同士が、このインターンシップをきっかけにし て、勉強や就職の面で情報交換や交流を深め、デザイン業界でお互いに切磋琢磨してい かれる人材になることを願っております。 本日は誠にありがとうございました。