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振幅変動振動の知覚特性に関する検討

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振幅変動振動の知覚特性に関する検討
40214
日本建築学会大会学術講演梗概集
(中国) 2008年 9 月
振幅変動振動の知覚特性に関する検討
-ランダム振動に対する振動感覚の評価に向けて(その6)-
環境振動
加速度ピーク値
振幅変動振動
ランダム振動
正会員
正会員
正会員
正会員
正会員
知覚
性能評価
§1 はじめに
本報では,前報で示した 3 つの過渡的振動を含む振幅
変動振動と連続正弦振動の知覚特性を比較し,振幅変動
振動の知覚特性について考察する.知覚特性に関する測
定は,前報に示したアンケートおよびスイッチを用いた 2
○笠松 徹*1
松本 泰尚*2
石川 孝重*3
野田千津子*4
国松 直*5
がある(図の破線楕円).これは,連続正弦振動の方が,
より低い加速度ピーク値の領域で「まったく感じない」
の回答率が 100%から 0%に減少することから生じるもの
と推察される.一方,25Hz では連続正弦振動と振幅変動
振動でほぼ等しい知覚特性を示している.また,1.6 Hz に
動の全体的な評価,スイッチにより時々刻々の評価を記
録することを意図している.また,振動に対する評価量
として,ここでは加速度ピーク値を用いている.
§2 連続正弦振動の知覚特性
図 1 に連続正弦振動に対するアンケートによる評価と
スイッチによる評価を比較して示す.アンケートによる
評価については「まったく感じない」と回答した被験者
の割合,また,スイッチによる評価についてはスイッチ
「まったく感じない」の回答率 [%]
種類の方法で実施している.アンケートにより一連の振
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
連続正弦振動, 1.6 Hz
同一ウィンドウ長
異なるウィンドウ長
1
を押さなかった被験者の割合(スイッチ OFF 率)を用い
順に知覚しやすかったことがわかる.
§3 振幅変動振動の知覚特性
図 2 にアンケートの回答と加速度ピーク値の関係を示
す.1.6 および 6.3 Hz においては,同程度の加速度ピーク
値の場合,連続正弦振動の方が振幅変動振動よりも振動
を知覚する被験者の割合が高くなる傾向が見られる場合
100
90
80
70
60
50
40
アンケート, 1.6 Hz
アンケート, 6.3 Hz
アンケート, 25 Hz
スイッチ, 1.6 Hz
90
スイッチ, 6.3 Hz
スイッチ, 25 Hz
50
80
70
60
40
30
30
20
20
10
10
0
スイッチOFF率 [%]
「まったく感じない」の回答率 [%]
100
「まったく感じない」の回答率 [%]
既往の研究 1,2)と同様に,被験者は 1.6 Hz, 6.3 Hz, 25 Hz の
10
連続正弦振動, 6.3 Hz
同一ウィンドウ長
異なるウィンドウ長
10
100
2
加速度ピーク値 [cm/s ]
0
1
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1
「まったく感じない」の回答率 [%]
たことがわかる.また,同程度の加速度ピーク値の場合,
100
2
て結果を示している.図より,アンケートによる評価と
スイッチによる評価との間に明確な差は認められなかっ
10
加速度ピーク値 [cm/s ]
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
連続正弦振動, 25 Hz
同一ウィンドウ長
異なるウィンドウ長
1
100
10
100
2
加速度ピーク値 [cm/s ]
2
加速度ピーク値 [cm/s ]
図 1 連続正弦振動の加速度ピーク値と「まったく感
じない」の回答率およびスイッチ OFF 率との
関係
図 2 連続正弦振動および振幅変動振動の加速度ピー
ク値と「まったく感じない」の回答率との関
係.上:1.6 Hz;中:6.3 Hz;下:25 Hz.
Characteristics of Perception of Amplitude Modulated Vibration - Toward the Evaluation of
Sensation Caused by Random Vibration: Part 6 KASAMATSU Toru et al.
―459―
4
加速度 [gal]
2
0
-2
-4
スイッチ
を図 3 に示す.この例では,2 番目および 3 番目の過渡的
振動を知覚していると判断する.図 4 に,過渡的振動に
0
対するスイッチによる評価の例として,同一ウィンドウ
5
含まれる過渡的振動の結果を示している.
80
かった被験者の割合が,他の 2 つの過渡的振動と比較し
て高い傾向があったことが図 4 よりわかる.1.6 Hz につ
いてもこれと同様の傾向が認められたが,6.3 Hz について
は 3 つの過渡的振動の間に明確な差は認められなかった.
25 Hz
60
40
2番目の過渡的
振動(スイッチ)
70
80
60
50
40
30
20
20
10
10
0
10
100
2
加速度ピーク値 [cm/s ]
100
100
6.3 Hz
90
スイッチOFF率 [%]
速度ピーク値 3.6 cm/s 付近(図の破線楕円))があった.
埼玉大学大学院 大学院生
埼玉大学大学院 准教授・Ph. D.
日本女子大学住居学科 教授・工学博士
日本女子大学 学術研究員・修士(家政学)
産業技術総合研究所 工学博士
90
同一ウィンドウ長
(アンケート)
30
1
2
*1
*2
*3
*4
*5
1番目の過渡的
振動(スイッチ)
0
動がより知覚されやすい傾向が見られる場合(図 4 の加
§5 振幅変動振動と過渡的振動の比較
個々の過渡的振動とそれら 3 つの組み合わせによる振
幅変動振動との知覚特性を比較するため,図 4 には振幅
変動振動とアンケートによる回答の関係も示している.
図より,3 つの過渡的振動の組み合わせによる振幅変動振
動の方が,個々の過渡的振動より知覚した被験者の割合
が高くなる傾向が見られる.これは,例えば,同一ウィ
ンドウ長の 3 つの過渡的振動の組み合わせによる振幅変
動振動であっても,必ずしも 3 つの過渡的振動すべてを
知覚しているわけではなく,3 つのうちいずれかの過渡的
振動を知覚することにより,振幅変動振動を知覚したと
回答した被験者が少なからずいたことを示している.
§6 おわりに
連続正弦振動と振幅変動振動の知覚特性について,加
速度ピーク値を用いて比較すると,同程度の加速度ピー
ク値の場合,1.6, 6.3Hz においては被験者が連続正弦振動
の方を知覚しやすい傾向が見られたが,25Hz においては
両者の知覚特性はほぼ等しくなった.また,振幅変動振
動に対する被験者の知覚には,振幅が変動する早さ(ウ
ィンドウ長),振動が発生する順番が影響する可能性があ
20
3番目の過渡的
振動(スイッチ)
50
渡的振動については,最もウィンドウ長が長い過渡的振
ではウィンドウ長の影響は明確ではなかった.
15
100
70
図 4 に示した異なるウィンドウ長を用いた 6.3 Hz の過
1.6 Hz でも同様の傾向が見られる場合があったが,25 Hz
ON
「まったく感じない」の回答率 [%]
90
スイッチOFF率 [%]
100
よび異なるウィンドウ長による 6.3 Hz の振幅変動振動に
ついては,1 番目の過渡的振動に対してスイッチを押さな
10
時間 [s]
OFF
図 3 スイッチによる回答と入力振動との対応の例
長による 25 Hz の振幅変動振動に含まれる過渡的振動,お
同一ウィンドウ長を用いた 25 Hz の 3 つの過渡的振動に
ON
OFF
80
70
60
ウィンドウ長:短
(スイッチ)
90
ウィンドウ長:中
(スイッチ)
70
80
60
ウィンドウ長:長
(スイッチ)
異なるウィンドウ
長(アンケート)
50
40
30
50
40
30
20
20
10
10
0
「まったく感じない」の回答率 [%]
ついては,同一ウィンドウ長のハニングウィンドウを用
いた振幅変動振動と,異なるウィンドウ長のウィンドウ
を用いた振幅変動振動の知覚特性に大きな差はなかった
が,6.3Hz では同一ウィンドウ長と異なるウィンドウ長で
振幅変動振動の知覚特性に差が見られた.
§4 過渡的振動の知覚特性
個々の過渡的振動に対するスイッチによる回答の一例
0
1
10
100
2
加速度ピーク値 [cm/s ]
図 4 過渡的振動の加速度ピーク値とスイッチ OFF
率の関係,および対応する振幅変動振動の加速
度ピーク値と「まったく感じない」の回答率と
の関係.上:同一ウィンドウ長(25 Hz);下:
異なるウィンドウ長(6.3 Hz)
.
ることを示唆する結果も得られた.
【引用文献】
1) 国松直,他:正弦波複合振動の知覚および心理量に関
する実験の概要-ランダム振動に対する振動感覚の評
価へ向けて(その1)-,他 3 編,2007 年度日本建築
学会大会(九州)学術講演梗概集,pp.377-384,2007.
2) 石川孝重,野田千津子:広振動数範囲を対象とした水
平振動感覚の評価に関する検討,日本建築学会計画系
論文集,第 506 号,pp.9-16,1998.
*1 Graduate Student, Saitama Univ.
*2 Assoc. Prof., Dept. of Civil and Env. Eng., Saitama Univ., Ph. D.
*3 Prof., Dept. of Housing and Architecture, Japan Women’s Univ., Dr. Eng.
*4 Research Fellow, Japan Women’s Univ., M.H.E.
*5 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Dr. Eng.
―460―
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