...

大学 COC 事業「空間デザイン研究」

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

大学 COC 事業「空間デザイン研究」
事例報告
KIT
Progress№23
№23
KIT
Progress
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
COC Project in K.I.T. ”Study of Space Design”
川﨑寧史・土田義郎・西村 督・宮下智裕・加藤未佳・
出原立子・桜井将人・池永訓昭・髙杉敬吾
Yasushi KAWASAKI・Yoshio TSUCHIDA・Toku NISHIMURA・
Tomohiro MIYASHITA・Mika KATO・Ritsuko IZUHARA・
Masato SAKURAI・Noriaki IKENAGA・Keigo TAKASUGI
平成 26 年度に実施した大学 COC 事業「空間デザイン研究」の実施概要を報告する。
この事業は建築系(空間デザイン・建築構造・光環境・音環境)
、情報フロンティア系
(メディア情報・情報デザイン)
、電気系(電気制御)
、機械系(形状加工・生産)の
学生や教員が専門横断的に融合し、地域ニーズに合わせた空間デザインを制作・設置
し、地域活性化を図る活動である。その概要について、専門融合におけるデザイン制
作、地域連携、産学連携、参加学生の成長等の視点から解説し、本事業の意義や発展
性について述べる。
キーワード:空間デザイン、専門融合、地域連携、産学連携
This paper shows COC project in K.I.T. “Study of Space Design”. The
students and faculty in Dpt. of Architectural Design, Architecture,
Media informatics, Electrical and Electronic Engineering, Mechanical
Engineering participate in this project. We have collaborated to make
space design for the activation of the regions in the center of Kanazawa
by cooperating between each professions. In this paper these activities
are described from the points of view of space and media design,
collaborations with regional people and industries, and growth of
students through this project.
Keywords: space design, cooperation between students of several
professions, collaboration with regional people, collaboration
with regional industries
1.事業概要
1.1 事業目的
金沢中心部の魅力や新たな都市アクティビティの創出を目的とし、照明や映像・音響を有する空間造
形と視覚メディアによる感性情報を共働させ、都市における体感型のデザイン空間の演出を実施する。
空間造形や感性情報は地域の環境を考慮したテーマでデザインし、調和性とともに先進・斬新性を感じ
させるものとする。この理由から、建築系(空間デザイン、構造、光環境、音環境)
、メディア情報系、
電気系、機械系の学生・教員が参加し、専門融合的な技術やデザインの開発を行うこととし、正課のカ
リキュラム活動では得られない教育研究成果を生みだしていくことも目的の一つとしている。
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
45
1.2 事業内容
空間造形は「部材の立体的かつ再帰的な組み合わせによる柔軟構造体」
、さらに「指定形状への形状変
化が要求される折り畳み構造システム」などの開発による可変性能、展開・収納性能を有する設計とし、
夜間は照明効果を施したライトアップオブジェやフォリー(内部空間を有する簡易構造体)としても機
能させる。視覚・音響メディアは“キネクト”や“プロジェクション・マッピング”などの最新メディ
ア技術を利用して動的な変化をあたえ、体感する人々の振舞いに呼応しながら自在に変化させるものと
する。以上の効果を共働させ、昼夜における都市空間に対してアクティビティを創出させ、賑わい創出
とともに新たな都市の魅力へとつなげる。
1.3 事業の実施体制
本教育研究活動は、課外活動として継続されている金澤月見光路(広坂・香林坊地区、代表:川﨑寧
史)
、夜の賑わい創出事業(JR 金沢駅、代表:出原立子)
、タテマチアート(竪町地区、代表:川﨑寧史)
、
金沢駅通り線イルミネーション(金沢駅通り線地区、代表:加藤未佳)などを発表・公開のステージと
し、その成果を賑わい創出や活性化として地域還元する。この前提として、図1のような専門別グルー
プを形成し、グループ内およびグループ間でのミーティングを積極的に実施し、技術・デザイン融合に
ついて検討を図る。さらに、技術連携の申し出を受けたフレキシブル LED 電極シートの応用研究を立山
科学工業・小松精練と共同して進め、本活動における技術連携やデザイン融合、さらには LED 電極シー
トの発展的かつ実用的応用の検討やその試作を行う。
プロジェクトメンバーの教員は、これらの活動ステージに複数加わり、専門融合および産学連携を行
いながら学生とともに成果物の制作を行っていく。本活動は研究室所属学生のみならず、全学的な学生
参加を広く呼びかけ、プロジェクトデザインⅢ・修士研究に加え、専門融合的な課外活動としてそれぞ
れの成果を制作していく。
図1 事業の全体像と実施体制
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
46
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
1.4 事業価値と発展性
本活動の機軸となるテーマは、空間造形および情報メディアの可変性とこれにより生まれるデザイン
効果を探求するものである。その結果として自由で柔軟な空間造形が創出され、新しいアクティビティ
が連鎖的に創発されていく。さらに、空間造形の構築機構にはモビリティ性能(軽量・収納・移動・簡
易構築性)も十分探求されている。その意味から、本成果は上述した特定地域のみに発揮される特殊解
ではなく、賑わい創出を必要とする各地の状況にあわせて柔軟に応用され、それぞれの場の魅力を引き
出す普遍的なデザイン手法となりうるものである。
2.活動実績と成果
2.1 学習機会の内容と行動目標
金澤月見光路、夜の賑わい創出事業、金沢駅通り線イルミネーション、タテマチアートなどの活動が
主な学習機会となり、これらの活動における学内ミーティング、勉強会、地域との意見交換、ワークシ
ョップ、デザイン制作、企画実施という実践的な学習の場が提供される。さらに、正課科目においても
本活動が説明され、地域連携や産学官連携、専門融合といった内容を理解させ、知識や技術の地域還元
について学習させる。
<行動目標および行動内容>
① 各地区が抱える地域活性課題の整理とテーマの明確化
地域・行政との意見交換・勉強会、地域課題の抽出と問題構造の整理
② 文化・伝統に見るデザイン評価と応用・発展の可能性に関する探究
技術者・職人・デザイナーとの意見交換・勉強会
デザインサーベイと応用発展性の考察
③ 都市空間分析、環境資源の発見、デザインテーマの潜在性の発見
地域調査、アクティビティ調査、景観調査、空間演出のテーマの抽出
④ 問題解決策の提案とこれにともなうデザイン・技術開発の実施
造形・空間デザインの試作、空間構築機構の試作
映像デザインの試作、照明効果の試作、制御システムの試作
⑤ 地域・行政と連携したまちづくりの継続的活動
地域・商店街活性化の意見交換・勉強会の継続的開催、地域連携ワークショップ開催
⑥ デザイン・構造開発の試作およびモデル性能の検証
造形デザイン・映像デザインおよびシステム試作と性能評価
試作課題の抽出と解決策の探求
⑦ 実地における研究成果の適応と実施効果の検証
造形デザイン制作・設置
(材料選定、予算検討、材料加工・制作、運搬、現地設営・撤収)
映像・照明システム実装(映像・音響装置設置、電源確保・電気配線、灯具設置)
デザイン性能評価、アクティビティ創出効果の検証、振る舞い評価
⑧ 研究成果の整理およびプレゼンテーションの作成
学内研究(PDⅢ・修士研究)の成果発表、学協会・学術専門誌、地域などへの成果発表
研究報告書の作成および研究報告会の開催
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
47
2.2 活動成果
2.2.1 活動実績
平成 26 年度の各種活動実績は、その内訳として地域連携活動5、学会発表3、地域発表2、学内研究
会2の実績、このうち学会発表奨励賞1、総額 707 万円の外部資金獲得があった。
表1 平成 26 年度活動実績
<地域連携活動>
①金澤月見光路 2014
日時:平成 26 年 10 月 10 日~12 日
場所:香林坊アトリオ前・しいのき迎賓館・金沢 21 世紀美術館・石浦神社
主催:金沢工業大学月見光路プロジェクト・月見光路実行委員会・NPO 法人趣都金澤・広坂振興会
共催:石川県政記念しいのき迎賓館・
(株)大和香林坊店・香林坊アトリオ
後援:金沢市 特別協力:金澤まちなか宵市
協力:金沢 21 世紀美術館・立山科学工業(株)
・小松精練(株)
*平成 26 年度は金沢市観光交流課から 200 万円補助、立山科学工業から LED 電極シート提供
*北國新聞朝刊 平成 26 年 10 月 10 日(34 面)
・10 月 11 日(42 面)掲載
②夜の賑わい創出事業「JR 金沢駅もてなしドーム<鼓門>を彩るプロジェクション・マッピング KANAZAWA TSUKIMI GATE」
日時:平成 26 年 10 月 11・12 日 場所:JR 金沢駅前もてなしドーム
主催:金沢市 協力:金沢工業大学出原研究室
*平成 26 年度は金沢市企画調整課から 300 万円補助
*北國新聞朝刊 平成 26 年 10 月 11 日(42 面)掲載
③タテマチアート「ロマンティック・タテマチ」
日時:平成 26 年 11 月 1 日~12 月 24 日 場所:タテマチストリート・タテマチハーバー
主催:竪町商店街振興組合 協力:金沢工業大学タテマチアートプロジェクト 他:
(株)大広北陸
*平成 26 年度は竪町商店街振興組合から 150 万円委託事業
*北國新聞朝刊 平成 26 年 11 月 30 日(41 面)掲載
④金沢駅通り線イルミネーション「ほしあかり」
日時:平成 26 年 8 月 8 日~12 月 25 日・平成 27 年 3 月 1 日~3 月 31 日 場所:金沢駅通り線沿道
主催:金沢駅前第一ビル(株) 共催:金沢駅通り線まちづくり協議会
協力:金沢工業大学 加藤・川﨑・桜井・池永・高杉研究室 他:プレイリー(株)
*平成 26 年度はプレイリーから 55 万円、金沢駅通り線まちづくり協議会から 2 万円委託事業
*北國新聞朝刊 平成 26 年 8 月 9 日(26 面)掲載
⑤サイガワあかりテラス
日時:平成 26 年 10 月 30 日~11 月 2 日 場所:犀川大橋下流域
主催:金沢片町まちづくり会議
協力:金沢工業大学月見光路プロジェクト、米沢電気工業(株)
、
(株)日本海コンサルタント、金沢市、石川県、金沢まちづく
り学生会議 *北國新聞朝刊 平成 26 年 10 月 31 日(28 面)掲載
<学会・地域発表>
①「大学 COC 事業 地(知)の拠点整備事業「空間デザイン研究」
」
日時:平成 26 年 10 月 25 日 場所:金沢工業大学
*川﨑寧史、2014 年度日本図学会中部支部秋季例会、図学研究、第 48 巻 4 号通巻 144 号、p.36、2014
②「平板による仮設構造体の制作」
日時:平成 26 年 11 月 30 日 場所:東京藝術大学
*吉田麻以・小田啓太郎・川﨑寧史、大会学術講演論文集 2014 年度秋季大会(東京)
、日本図学会、pp.137-138
③「COC 事業 ロマンティック・タテマチ」
日時:平成 27 年 2 月 19 日 場所:大同大学
*浦口昂久・川﨑寧史、2014 年度日本図学会中部支部冬季例会、図学研究(掲載予定)
*第 11 回奨励賞受賞、日本図学会中部支部
④「HIROSAKA 2020」
日時:平成 26 年 12 月7日 場所:香林坊ラモーダ
学生発表(金澤月見光路)
:浦口昂久(建築都市デザイン学科 4 年)
パネルディスカッション:山出・元金沢市長、金沢 21 世紀美術館・秋元館長、金沢倶楽部・山田代表、広坂振興会・高橋理事長
川﨑寧史(コーディネータ)
*北國新聞朝刊 平成 26 年 12 月 8 日(19 面)掲載
⑤中部地区COC事業採択校「学生交流会」
日時:平成 27 年 3 月 5 日 場所:じゅうろくプラザ(岐阜)
学生発表 「空間デザイン研究:アクティビティを創発させる可変型空間装置と感性情報の共働」
、浦口昂久・高野翔・上原綾
太・高戸奈央子
<学内研究会>
①LED 電極シート応用研究会
日時:平成 26 年 4 月 30 日・5 月 26 日・6 月 13 日・7 月 25 日
場所:金沢工業大学アントレプレナーズラボ
主催:COC 事業「空間デザイン研究」 協力:立山科学工業(株)
・小松精練(株)
②COC 事業説明会 金澤月見光路実行委員会
日時:平成 26 年 8 月 1 日 場所:12 号館4F
主催:COC 事業「空間デザイン研究」 *COC 事業協力外部参加者 21 名
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
48
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
図2 LED 電極シート応用研究会
(金沢工業大学)
図3「HIROSAKA 2020」 学生発表風景
(香林坊ラモーダ)
2.2.2 活動成果
金澤月見光路
a. 専門融合によるデザイン制作
建築(空間デザイン・構造・光環境・音環境)
・メディア情報・電気系学生の専門融合があり、その活
動成果として以下のようなデザイン制作が行われた。
① 折り畳み型構造フレーム「あかりのテント」 (空間デザイン+建築構造)
② 面材による柔軟構造+プロジェクション・マッピング「あかり山」 (空間デザイン+メディア情報)
③ 面材による柔軟構造「つきみ café/BAR」
・石浦神社「あかり山」への LED 電極シート実装 (空間デ
ザイン+電気制御)
④ 五彩散歩「流れ星」のサテライトによる色と音のデジタル収集体験 (音環境+メディア情報)
図4 折り畳み型構造フレームをくぐり抜ける「花の小径」昼間(左)
・夜間のライトアップ(右)
図5 線材の組み合わせ構造の遊具
「波あかり」
図6 面材の組み合わせ構造
「つきみ café/BAR」
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
49
図8
図7 LED 電極シートを応用しデザインした
「流れ星」
センサーによる色と音のデジタル収集
b. 産学連携の活動
LED 電極シート応用研究会を学内で計5回開催し、立山科学工業・小松精練と連携し LED 電極シート
の空間オブジェなどへの規格仕様、さらに軽量電源の実装方法などが検討・開発された。ここでは毎回
学生からの応用提案があり、これに対して参加者全員で意見交換を行った。この成果は「つきみ
café/BAR」
、
「あかり山」
、
「流れ星」における LED 電極シートの実装というかたちで実用された。
面材ピース + LED 電極シート → 面材と照明のユニット化
面材の組み合わせ
図9 LED 電極シートを面材ピースに実装して組み上げた造形オブジェ
c. 地域連携の活動
金澤月見光路実行委員会、広坂振興会、香林坊大和、石浦神社と地域連携し、あかりオブジェのレイ
アウト、つきみ café/Bar の飲食提供、アトリオ前広場のコンサート、金澤宮遊(石浦神社)のデザイン
企画を個別に検討し、学生と地域が連携してそれぞれの企画を実施した。なお、平成 26 年 8 月 1 日に開
催した「COC 事業説明会 金澤月見光路実行委員会」では、金澤月見光路を含めた本 COC 事業関連の外
部協力者 21 名が参加し、全活動に対して学生9グループが企画構想を発表し、活発な意見交換を含めた
地域連携への相互理解が図られた。
図 10 金澤宮遊(石浦神社)の昭和レトロ市
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
50
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
図 11「つきみ café/BAR」での飲食サービス提供
夜の賑わい創出事業「JR 金沢駅もてなしドーム<鼓門>を彩るプロジェクション・マッピング
KANAZAWA TSUKIMI GATE」
メディア情報・出原研究室による鼓門へのプロジェクション・マッピングが実施され、多数の観客を
集めた。ここではメディア情報技術を駆使した鑑賞型と参加型のプロジェクション・マッピングが実演
された。参加型ではセンサー制御の技術も取り入れられている。この企画タイトルは「金澤月見ゲート」
と名付けられ、同時期開催の金澤月見光路とコンセプトを共有するものであった。さらに、金澤月見光
路の「星あかり」
・
「流れ星」や金沢駅通り線イルミネーション「ほしあかり」とのデザインイメージを
共有し、新幹線に乗り流星がやってくる映像デザインを制作した。この期間、金沢駅通り線イルミネー
ション「ほしあかり」が駅前広場にも設置され、センサーにより光色を変化させる星型オブジェとのコ
ラボレーションも実現した。なお、これらの活動は別稿にて詳しく報告する。
図 12 鼓門へのプロジェクション・マッピング(左)
(右)
金澤月見ゲートに合わせて設置された「ほしあかり」
金沢駅通り線イルミネーション「ほしあかり」
a. 専門融合によるデザイン制作
専門融合(光環境+メディア情報+電気制御)として「ほしあかり」の光色の変化、および機械系学
生による星形灯具の生産・加工の鋳型設計が行われた。平成 26 年度は駅通り線沿道の両側に 80 個の「ほ
しあかり」
が設置され、
8 月 8 日~12 月 25 日および平成 27 年3月のロングラン企画として実施された。
金沢駅通り線まちづくり協議会との連携活動では、8 月・10 月・12 月・3月の4期におけるあかりの配
色テーマの設定、およびこれに基づいた光色の変化を実施した。
「ほしあかり」の電気設計は、下記のコ
ンセプトに基づき、マイコン内蔵型フルカラーLED をユニット化(120 個直列に接続)した LED 装置を製
作した。またマイコンボード(Arduino)を LED 装置に組込むことで動作プログラムを簡単に変更できる
構造とした。
<電気設計上のコンセプト>
・調光・光色の自由な設定(マイコンボード・マイコン内蔵型フルカラーLED の使用)
・コンパクトな電気配線(マイコン内蔵型フルカラーLED の使用)
・長期間(数か月)の安定動作(LED 装置のユニット化)
b. 色変化の概要
<12 月クリスマスに向けての色変化>
・青色と白色を交互に発光し、明るさは各色が周期 4 秒で徐々に変化
・暗室実験で最も好ましい評価が得られた青⇔白、周期 4 秒の変化
・事前の街頭アンケート調査で、冬のイメージで回答の多かった色 2 色を使用
<3月北陸新幹線開業に向けての色変化>
・青色から徐々にピンク色,ピンク色から徐々に青色になるように色変化し各色への変化は 3 秒周期
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
51
・事前の街頭アンケート調査で、春のイメージで回答の多かった色ピンク色を使用
・新幹線を意識して青色を使用
・調整時若干周期が速い方が良いとの評価から 3 秒周期に設定
図 13 「ほしあかり」
沿道の設置風景(左)
・ 夜間の点灯(中)
・ ユニット化された LED 装置(右)
タテマチアート 「ロマンティック・タテマチ」
a. 専門融合によるデザイン制作
タテマチストリートの街路樹に設置したイルミネーション・オブジェは、雪の結晶をイメージした六
角形面材の組み合わせ構造とし、イルミネーション部分は雪玉をイメージした球体のデザインとした。
タテマチハーバーに設置した樹氷のツリーは面材の立体的組み合わせによる柔軟構造体で、高さ 3.5m
の造形として制作された。これに対するプロジェクション・マッピングでは、映像制作・投映ソフトの
使い方やその効果などについて空間デザインとメディア情報系の学生が連携して活動した。
図 14 街路樹のイルミネーション・オブジェ 昼間の風景(左)
・ 夜間のライトアップ(右)
図 15 タテマチハーバーの樹氷のツリー
・プロジェクション・マッピングの風景(右)
昼間の賑わい(左)
b. 地域連携の活動
竪町商店街振興組合・大広北陸と連携し、11 月 1 日~12 月 25 日までの期間を3段階に分けて雪のデ
ザインが増殖していく企画の立案および具体的なデザイン内容について協議し、
デザイン制作を行った。
竪町商店街振興組合・大広北陸はこの企画に対応して、この3期の各初日にコンサートやワンドリンク・
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
52
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
フードの振る舞い提供を実施し、サービス面からの企画の充実に協力した。
図 16 コンサートとドリンクサービス(左)
・期間中の各種企画の広告(右)
3.まとめ
3.1 今後の課題
本稿で紹介した活動内容は、建築・メディア情報・電気・機械系学生が主体となって専門横断的に共
同活動したものである。これに地域連携や産学連携の活動が加わり、正課の教育カリキュラムでは到底
なしえない専門融合型の活動成果を生み出すとともに、専門融合ならではの知識の共有や技術の向上が
図られた。また、これらの複数の活動成果は、金沢中心部の賑わい創出の面的な広がりや実施期間の連
携に大きく貢献した。今後の課題として、
「部材の組み合わせによる柔軟構造体」や「折り畳み構造シス
テム」については実験的制作の段階であり、部材・加工・接合・重量などの面で検討の余地を残してい
る。これらの課題を探求し、さらに規模の大きな架構システムを検討していく予定である。この構造シ
ステムと LED 電極シートをさらに効果的に組み合わせ、より演出性が高く実用的な照明方法を開発して
いくことも必要となる。感性情報となる動的映像や音響については、さらに多くの人の振る舞いに迅速
に感応し、街全体の感性を向上させるためのセンサー制御や投映技術などの技術革新が求められる。
3.2 緊急時における社会ニーズへの対応
本事業で制作する柔らかな構造体や動的な映像メディアは、街中空間に多様な彩りと機能を発揮し、
新たな感性と賑わいのある振る舞いを生み出すことが期待される。加えて、このような柔軟構築物は、
LED 電極シートの応用も含めて非常・緊急時に大きな効果をもたらすと想定している。これは屋外にお
けるシェルターのみならず、大型避難所での柔らかな領域分割の空間装置+家具としても機能するもの
と考えている。LED シート実装の小部材の組み合わせ構法は、必要な空間スケールに応じて領域確保が
でき、電源供給がない状況での簡易照明の役割も有する。屋内外では、平板小ピースの部材も使い分け
が可能で、屋内ならばプラスティック系の軽量材でも十分対応でき、大幅なコスト削減が図れ、取り扱
いも簡単な利点もある。何よりも、200~300mm の平板小ピースは極めて収納性が高く、小スペースに
保管が可能であり、平板を展開した際には簡易な作業で大きな空間領域がつくれることが最大のメリッ
トとなる。次年度は、以上の内容も含め、実験実証を行う予定としている。
図 17 避難場所の簡易間仕切り・棚および照明設備として LED 電極シートを実装した
平板構造体が応用できる。必要に応じてスケールや形態を自在に変化させ利用する
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
53
[受理 平成 27 年 3 月 18 日]
川﨑寧史
教授・博士(工学)
環境・建築学部
建築系
建築デザイン学科
出原立子
准教授・博士(芸術工学)
情報フロンティア学部
情報フロンティア系
メディア情報学科
土田義郎
教授・博士(工学)
環境・建築学部
建築系
建築学科
桜井将人
講師・博士(工学)
情報フロンティア学部
情報フロンティア系
メディア情報学科
西村 督
教授・博士(学術)
環境・建築学部
建築系
建築学科
池永訓昭
講師・博士(工学)
工学部
電気系
電気電子工学科
宮下智裕
准教授・博士(工学)
環境・建築学部
建築系
建築デザイン学科
髙杉敬吾
講師・博士(工学)
工学部
機械系
機械工学科
加藤未佳
講師・博士(工学)
環境・建築学部
建築系
建築学科
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
54
大学 COC 事業「空間デザイン研究」
Fly UP