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酪農地域における経済活性化に関する考察

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酪農地域における経済活性化に関する考察
『地域政策研究』(高崎経済大学地域政策学会)
酪農地域における経済活性化に関する考察
第 12 巻 第4号 2010 年3月 77 頁∼ 95 頁
酪農地域における経済活性化に関する考察
−岩手県岩手郡葛巻町の取組み−
河 藤 佳 彦
A Study on Economic Revitalization of Dairy Farming Areas
− The Challenge of Kuzumaki Town in Iwate County of Iwate Prefecture −
Yoshihiko KAWATO
要 旨
本稿は、酪農地域の経済活性化の方策について、第三セクターの活用により着実な成果を上げて
いる岩手県岩手郡葛巻町を事例として考察することを目的とする。
そのため、葛巻町の第三セクターの実態を中心に考察した。それにより、第三セクターが地域産
業政策に積極的な役割を果たすことによって、第 1 次産品の付加価値を高め地域経済の振興を図
るという方法が効果的であることが分かった。さらに、特産品を観光や交流事業と結びつけること
によって地域の総合的なブランド力を高め、地域の活性化を、量的側面と質的側面の両面から促進
することが期待できることが分かった。
キーワード:酪農地域、第三セクター、第 1 産品の付加価値、地域の総合的なブランド力
Summary
The object of this paper is to examine measures for economic revitalization of dairy farming
areas with a case study of Kazuramaki Town in Iwate County of Iwate Prefecture where active use
of the third sector bodies shows successful results.
For this purpose, we observed the realities by focusing on the third sector bodies in Kuzumaki
Town. The observations showed that it would be most effective if the third sector bodies playing
active role in local industry strategies could upgrade added value in primary products and boost
the regional economy. It also showed that efforts associating local specialties and tourism with
− 77 −
河 藤 佳 彦
exchange activities could be expected to improve overall brand power of the region and facilitate
regional revitalization in terms of both quantity and quality.
Key word: dairy farming area, the third sector bodies, added value in primary products, overall
brand power of the region
1.目的と背景
近年、少子高齢化が進展しており、その速度は都市部より地方において速い。そこで、何らかの
対策を講じなければ、地方のなかでもとり分け過疎地域の衰退が急速に進むことになる。しかし、
人々の価値観の多様化・個性化が進む今日においては、過疎地域であっても地域固有の優位性を活
用して、そのニーズに的確に対応することができれば、大きな市場を獲得できる可能性がある。重
要なことは、過疎地域に産業政策の視点を取り入れることである。
一般に過疎地域という特性を共通にもつ産業地域としては、主に農業地域、林業地域、漁業地域、
あるいはこれらが複合した地域を挙げることができる。また、農業地域としては、米、麦、野菜、
果物などの農作物の栽培のほか、酪農を営む地域も含まれる。本稿では、酪農を中心とした地域産
業の振興に積極的に取り組み、着実な成果を上げている岩手県岩手郡葛巻町(以下、
「葛巻町」と
する。
)を事例として、その経済活性化の方策について考えていく。
葛巻町はとりわけ、第三セクターの活用により経済活性化の成果を上げている地域として知られ
ている。第三セクターの事業活動を積極的に活用した過疎地域の産業政策に関しては、離島につい
て河藤(2009)が、島根県隠岐郡海士町について論じている。すなわち同地域では、地域の主要
産業である漁業について、第三セクターが高度な加工技術や商品企画、販路開拓により新規市場を
提供するなどしてブランド力を高め、付加価値をトータルとして増大させると同時に、個々の漁業
者の生産性を高めるという方法を積極的に取り入れていることの有効性について論じている。
葛巻町の産業政策の機能は、海士町と同様に地域の第 1 次産品の生産者、それは葛巻町の場合
は主に酪農家であるが、その酪農家の生産性を高め生産物のブランド力を高めることによって、地
域の優位産業である酪農の発展を促進している。第三セクターは、葛巻町によるこうした産業政策
を推進するために大きく寄与している。
葛巻町は酪農以外にも、第三セクターによる山ぶどうを原料としたワインの生産でも知られてい
る。これは、山ぶどうという地域に埋もれた資源を掘り起こし、ブランド形成にまで結び付けるこ
とに成功したものである。酪農のように既存産業の付加価値を高めることとは異なり、山ぶどうと
いう第 1 次産品の生産者を創出するという由来を持っているが、一般に付加価値の低い第 1 次産
品と市場との間に第三セクターが介在することによって、高度な加工技術により第 1 次産品の付
加価値を高めると同時に、市場開拓により販売力を高める効果を生み出すという点においては共通
− 78 −
酪農地域における経済活性化に関する考察
している。
このように、第三セクターが地域産業政策に積極的な役割を果たすことによって、付加価値の小
さな第 1 次産品の価値を高め地域経済の振興を図るという方法が、過疎地域としての性格をもつ
酪農地域においても有効性を持つのではないかと考えられる。本稿では、このことを、葛巻町の産
業の現状と課題、政策について確認することによって考えていきたい。そして、酪農地域の産業を
一層の発展に導くための方策について考えたい。
2.酪農における現状と課題
我が国の酪農経営は厳しい状況にある。福田
(2009)
は、
その状況について次のように述べている。
「わが国の酪農経営は今日、傾向的な乳価の低迷、2006・7 年度と 2 カ年続いた減産型計画生産、
飼料価格の高騰などの要因によって重大な局面を迎えている。飼養戸数は、1991 年の 5 万 9,800
戸から 06 年の 2 万 6,600 戸に減少しているが、中でも都府県の酪農家戸数は 4 万 5,200 戸から
1 万 8,010 戸へ著しい減少を示しており、戸数シェアは同期間で 75.6%から 67.7%までに低下し、
頭数シェアに至っては 57.9%から 47.7%まで落ち込んでいる」
。
そして福田は同著書において、酪農経営の改善方策として次のような提案を行っている。農地を
団地化して効率良く集積するための方策を農地関係機関と連携して取り組むこと、水田を家族酪農
経営と結び付けて利用すること、農地以外の国内資源(河川敷、原野、エコフィールド)の有効利
用の促進、林産業、食品製造業、食品販売業者との連携など、また都府県酪農の対応として、畜舎、
施設、機械などを個別経営内ですべて装備するような重装備個別完結型経営を再度見直す必要があ
る。そのために、コントラクター組織 1) の構築と酪農経営の利用の重要性を指摘し、重装備の自己
完結型経営や雇用労働力に依存した経営ではなく、外部化、分業化を積極的に進める経営を、今後、
一層支援すべきであるとしている。
コントラクター組織については、鈴木(2009.2)も、自給飼料生産に割り振る労働時間を、搾
乳牛を増頭して購入飼料に依存し、出荷乳量を増やす方向に振り向けた方が経営全体としての総所
得は増加するということを踏まえ、その活用を提唱している。また、酪農家が経営選択として飼料
自給率の向上に乗り出すために、コントラクター組織の維持に必要な経費について十分な補てんを
準備することが不可欠である、としている。
清水・本田(2009)は、我が国の酪農経営の改善のため、牛乳の需給調整と価格安定のための
政府の役割、生産者が生産費に見合った正当な乳価を確保するための流通構造の改革、乳製品の国
境措置と WTO・FTA 交渉における国内生産者に対する配慮、牛乳・乳製品市場の成熟化への対応
のための消費者との協力関係の強化、自給飼料の拡大のために、飼料稲を生産する農家に助成金を
支給するなどインセンティブを与えるための補助金の必要性などを提示している。
このように、厳しい経営状況にある家族経営の酪農家が、自らの経営の効率化を図るため、農地
− 79 −
河 藤 佳 彦
の集積拡大や飼料づくりを外部に委ね搾乳を中心とした特定の作業に専念すること、様々な関係主
体との連携による新たな市場開拓など、生産性向上や需要拡大のための様々な方策が求められてい
る。こうした対応策については、更に広い視点から総合的な方策を検討する必要がある。
本稿で考察の対象とする葛巻町では、こうした課題に総合的に応え地域の主要産業である酪農を
積極的に地域活性化に活かすために、第三セクターである「社団法人 葛巻町畜産開発公社」によ
る事業を展開している。鈴木(2009.3)はその事業の特色について、
次のように紹介している。
「酪
農を地域の基幹産業に育てようと、酪農家を支援するため、昭和 51(1976)年、葛巻町や葛巻町
農業協同組合(現・JA 新いわて)などの出資で設立されたものである。牧場は町内 3 か所に分散
されており、計 1,774ha。乳牛のほか、めん羊など計 2,640 頭を飼養している。事業の柱は、夏
期放牧と哺育育成、酪農ヘルパー、飼料生産といった地域農家の支援である。さらに、
「食料生産
基地としての牧場の役割を果たしたうえで、時代のニーズに合った事業展開」を信条に、牛乳・乳
製品の製造・販売や和牛肥育、
酪農体験事業などを実施している。
(中略)地域の酪農家にとっては、
経営体質の強化やゆとりある営農が実現でき、
(中略)
「東北一の酪農郷」と呼ばれるまでになって
おり、1 戸当たり飼養頭数は(中略)40 年前の 10 倍に達している」
(括弧内の西暦表記は筆者に
よる加筆)
。
このように、第三セクター事業によって地域の酪農経営を総合的に発展させた葛巻町の取組みを
改めて検討することにより、酪農地域の発展の可能性について考察していきたい。また、葛巻町で
は酪農のほかにも、地域の農林産品を活用した独自の特産品を生み出したり、酪農も含め地域の産
業を活かした観光・交流事業の展開など、地域の総合的な活性化を図る取組みを行っている。この
点についても併せて考察に加え、過疎化の進んだ葛巻町が活力を取り戻し、新たな発展の途を歩み
始めることを可能にした要因について明らかにすると共に、課題も踏まえ酪農地域の振興のあり方
について考えたい。
そのため、2009 年 3 月 16 日から同 17 日にかけて実地調査を実施した。葛巻町総務企画課、
同総合政策室、社団法人 葛巻町畜産開発公社、葛巻高原食品加工 株式会社においてヒアリング調
査を実施し、併せて現地調査を実施した。以下、その結果と取得した諸資料により考察を進める。
3.葛巻町の沿革と地域の特色
葛巻町は、岩手県北部の北上高地に位置し、面積 435.0km2、人口 8,021 人(2005 年国勢の調
査)の町である。1955 年に岩手郡葛巻町、同江刈村、二戸郡田部村が合併して現在の町域となっ
た。盛岡から約 70km の位置にあり、高原的な気候である。中央部に馬渕川が流れており、流域
沿いに町が形成されている 2)。1960 年には 15,964 人いた人口が 2005 年には 8,021 人まで減少
した。また、2005 年における 65 歳以上の高齢者の人口比率は 35.2%、15 歳未満の年少人口率
は 11.0%であり、全国の値がそれぞれ 20.1%、13.7%であることと比べると、少子高齢化の進行
− 80 −
酪農地域における経済活性化に関する考察
が早いことが分かる。さらに、労働年齢人口(年齢 15 ∼ 64 歳の人口)は 53.8%と、全国の値の
65.8%に比べて低く、地域経済は厳しい状況となっている(国勢調査)3)。
しかし、現在の葛巻町は「ミルクとワインとクリーンエネルギーの町」のキャッチフレーズを掲
げて地域経済の活性化に積極的に取り組んでおり、
たいへん活気がある。その政策の特徴的な点は、
第三セクターを活用した地域経済の振興であり、4 つの第三セクターのうち 3 つは黒字経営を実現
している。また、1998 年頃からは新エネルギーの導入に取り組んでいる。このように、葛巻町の
活気は、近年 30 年間の一貫した地域資源を活かした取組みの成果であると言える 4)。
一方、産業構造は図 1 に示すとおりである。また、これを全国の産業構造と比較して特化係数
を捉えると図 2 に示すとおりである。この結果より、葛巻町において特化係数の値が大きく特色
ある産業は、林業(特化係数 24.4)
、農業(同 6.5)
、複合サービス事業 5)(同 3.8)
、建設業(同 1.7)
である。さらに、これらの産業のうち産業構造において占める割合が大きな分野を、地域の特色
ある「重要産業」として捉えると、葛巻町の重要産業は、農業(就業者割合 28.4%)
、建設業(同
14.8%)などとなる。
建設業が重要産業となる理由は、過疎地域であることから道路や河川の整備・維持管理など公共
事業が手厚く実施されてきたことを反映してきたものと考えられるが、国や自治体の厳しい財政状
況を踏まえると、今後は公共事業依存型の産業構造を変革していくことが必要となる。そのため、
地域の産業資源を活かした、地域外からの所得拡大による地域活性化が求められるのであり、葛巻
町では農業を主体とする産業振興の可能性を追求していくことが重要となる。葛巻町における農業
の主要分野とは、
次に述べるとおり「酪農」である。また、
産業構造においては直接表れないが、
サー
ビス関連産業を含めた複合的な産業である「観光産業」振興の可能性も検討する必要がある。
葛巻町の産業の中心は、かつては林業であった。昔は木炭の集散地でもあり、現在も生産は続い
ているという。しかし、1892(明治 25)年にホルスタイン種を導入して以来、酪農が普及し、現
図 1 葛巻町の産業構造
複合
サービス
事業
4.2%
サービス業(他に分
類されないもの)
4.9%
分類不能の産業
0.0%
公務(他に
分類されな
いもの)
3.1%
教育,学習支援業
2.6%
農業
28.4%
飲食店,宿泊業
2.9%
不動産業
0.1% 金融・保険業
0.5%
医療,福祉
7.9%
林業
1.8%
漁業
0.0%
卸売・小売業
11.5%
運輸業
3.0%
情報通信業
0.1%
建設業
14.8%
製造業
13.8%
電気・ガス・熱
供給・水道業
0.2%
注:本図は就業者数による。総数は3,893
3,893 人。
注:本図は就業者数による。総数は
人。
出典:国勢調査(2005
年)より作成。
出典:国勢調査(2005
年)より作成。
− 81 −
鉱業
0.0%
河 藤 佳 彦
図2 葛巻町の産業の特化係数
7.00
6.00
農業:6.5
林業:24.4
5.00
4.00
3.00
2.00
1.00
0.00
業
農
業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 祉 業 業 ) ) 業
林 漁 鉱 設 造 道 信 輸 売 険 産 泊 .福 援 事 もの もの 産
建 製 水 通 運 小 保 動 .宿 療 支 ス い い の
・
・ ・ 不
給 情報
売 融
店 医 学習 ービ な な 不能
供
卸 金
食
. サ れ れ 類
熱
飲
育
さ さ
・
教 複合 類 類 分
ス
分 分
ガ
に に
・
気
他 他
電
業( 務(
ス 公
ビ
ー
サ
注:本図は就業者数による。
注:本図は就業者数による。
出典:国勢調査(2005 年)より作成。
出典:国勢調査(2005 年)より作成。
在では酪農が葛巻町の主産業になっており、農業産出額の 71% が生乳で占めている(2005 年)6)。
酪農の発展に大きく寄与したのは、
「北上山系開発事業」7) である。1975 年から 1982 年の 8 年間
が事業期間であり、大規模な人工草地や 75km ほどの農道が整備されたことにより、葛巻町の酪
農は一気に発展したのである。葛巻町の農家数 670 戸のうち 390 戸が牛の飼育農家(乳用牛 270
戸、肉用牛 120 戸)である。また、牛の飼育頭数は 10,088 頭(乳用牛 8,811 頭、肉用牛 1,277 頭)
であり牛乳は日量で約 110 t(年間 42,867 t )である(2005 年)8)。
4.第三セクターを活用した地域の活性化
葛巻町は、
先述のように
「ミルクとワインとクリーンエネルギーの町」
をキャッチフレーズとして、
まちづくりに取り組んでいる。その推進の中心となっているのが 4 つの第三セクターである。各々
の事業の内容を、主に 2009 年 3 月 16 日のヒアリング調査の際に葛巻町から恵与された資料に基
づいて見ていく。なお、法人概要に関する数値は、2007 年度のものである。
(1) 社団法人 葛巻町畜産開発公社(設立:1976 年)
(a) 法人概要 設立目的:北上山系開発事業で整備された公共牧場の管理と酪農経営の機能分担、
後継者の育成など、出資金:2 億 1,300 万円、出資者:葛巻町 1 億 8,900 万円(88.7%)
・新岩
手農業協同組合 2,400 万円(11.3%)
、職員数:100 名(正職員 18 名)
(b) 事業内容 9) 夏期放牧事業(711 頭:農家預かり 423 頭、
牧場所有 288 頭)
、
飼料生産事業(5,373t:
サイレージ 5,056 t 、干草 314 t )
、哺育育成事業(1,761 頭:町外 1,481 頭、町内 280 頭)
、肥
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酪農地域における経済活性化に関する考察
育事業、展示搾乳牧場事業(平均飼養頭数 83 頭)
、特用林産事業 10)
(生椎茸、干し椎茸)
、交流・
製造事業(施設利用・レストラン・焼肉ハウス・乳製品製造)
、山地酪農研修センター運営
(c) 経営状況(2007 年度)
総収入 10 億 7,674 万円、当期経常利益 538 万円、当期利益 171 万円
また、
社団法人葛巻町畜産開発公社(以下、
「葛巻畜産公社」とする。
)の役割は、
次のとおりである。
① 育成牛の預託事業等による酪農家の経営の安定化・効率化:預託事業(機能分担方式)によっ
て、酪農家は規模拡大や経営の効率化が可能になるなど、酪農家の経営の安定化に貢献している。
② 雇用の場の創出:各種の事業展開により約 100 名を雇用し、町内有数の雇用の場となっている。
③ 交流・体験事業の実施による交流人口の拡大:牧場内に交流体験施設の整備、特色ある酪農体
験システムの構築により、子供から学生、社会人、家族を対象としたものまで、短期・中期・長期
の研修、体験学習の受け入れを行って、交流人口の拡大に貢献している。これにより、年間の来訪
者数は約 30 万人となっている。④ 町のイメージアップへの貢献:牧場の施設や景観、生産物など
牧場の持つ資源素材を最大限に活用した多角的な事業展開と積極的な情報発信により、町の魅力と
イメージアップに貢献している。
(2) 葛巻高原食品加工 株式会社(設立:1986 年)
(a) 法人概要 設立目的:森林資源(山ぶどう、山菜、茸など)を活用した、農林家の所得向上、
ワインやジュースなどの特産品開発による地域産業の振興と雇用の場の創出、資本金:9,800 万
円、株主:葛巻町 4,000 万円(40.8%)
・葛巻町森林組合 3,750 万円(38.3%)
・新岩手農業協同
組合 250 万円(2.6%)
・個人株主 1,800 万円(107 名 18.4%)
、職員数:29 名(正職員 14 名)
(b) 事業内容 ワイン・ジュースの製造・販売、売店・レストラン営業、山ぶどうの栽培指導(直
営圃場 2.3ha、山ぶどう農家 31 戸 7.35ha)
(c) 経営状況(2007 年度)
売上高 3 億 8,174 万円、当期経常利益 485 万円、当期利益 240 万円
また、
葛巻高原食品加工株式会社(以下、
「葛巻食品会社」とする。
)の役割は、
次のとおりである。
① 町の特産品開発:原料の山ぶどうの安定確保が図られ、
「くずまきワイン」は品質向上や販路拡
大に努めた結果、健康食品やワインに対するブームにも乗り、町の特産品になっている。② 雇用
の場の創出:28 名を雇用し、町民の新たな雇用の場となった。③ 町財政に対する貢献:1999 年
度および 2002 年度に合わせて 2,000 万円の寄付、2000 年度から 2004 年度に合わせて 880 万
円の株式配当を行っている。
(3) 株式会社 グリーンテージ(設立:1992 年)
(a) 法人概要 設立目的:都市との交流促進による交流人口の増大と若者定住を促進するため「ふ
れあい交流プロジェクト構想」により、1990 年から 3 カ年で「ふれあい宿舎グリーンテージ」
と総合運動公園が整備された。この「ふれあい宿舎グリーンテージ」の管理運営主体として設立、
資本金:2,200 万円、株主:葛巻町 1,985 万円(90.2%)
・葛巻町森林組合 100 万円(4.5%)
・
− 83 −
河 藤 佳 彦
新岩手農業協同組合 100 万円(4.5%)
・個人株主 15 万円(3 名、0.7%)
、職員数:19 名(正職
員 4 名)
(b) 事業内容 宿泊、売店、レストラン、各種宴会(結婚披露宴・法事など)
(c) 経営状況(2007 年度)
売上高 1 億 5,106 万円、当期経常利益 29 万円、当期利益 10 万円
また、
株式会社 グリーンテージ(以下、
「グリーンテージ」とする。
)の役割は、
次のとおりである。
① 交流人口の拡大:体験学習、小中高・大学までのスポーツ合宿および各種研修会などで利用さ
れている。② 町民の交流の場:町主催の行事やイベントなどをはじめ、各種宴会、温泉利用、さ
らには町民の多様な企画による施設の有効活用が図られるなど、町民の交流の場となっている。③
雇用の場の創出:19 名を雇用し、町民の新たな雇用の場となった。
(4) エコ・ワールドくずまき風力発電 株式会社(設立:1998 年)
(a) 法人概要 設立目的:まちづくりの理念である「自然と人間との共生」を踏まえ、クリーンエ
ネルギーとして注目される風力発電の事業化を推進するため、風力発電の採算性、稼働率、将来
性や電力の販売、地域活用のための調査研究の実施、資本金:1,000 万円、出資者:葛巻町 250
万円(25.0%)
・民間企業 3 社 750 万円(75.0%)
、職員数:1 名(兼務)
(b) 事業内容 風力発電施設 3 基の実証研究および発電事業、今後は観光資源として活用、農林業
への活用研究、採算性の実証
(c) 経営状況(2007 年度)
売上高 1,086 万円、当期経常損失 1,251 万円、当期損失 1,225 万円
また、エコ・ワールドくずまき風力発電株式会社(以下、
「エコ・ワールドくずまき」とする。
)
の役割は、次のとおりである。
① 観光や町のイメージ発信の資源:1999 年から風力発電機 3 基が稼働。② 電源開発株式会社に
よる事業促進:葛巻町による先進的な取組みが奏功し、電源開発株式会社が 100% 出資する現地法
人「株式会社グリーンパワーくずまき」を設立し、年間約 5,400Kwh を発電、約 16,000 世帯分の
電気をまかなえる
「グリーンパワーくずまき発電所」
が完成し 2003 年 12 月から稼働を始めている。
5.産業振興に重要な 2 つの第三セクター事業
既述のように、葛巻町の地域振興は第三セクターを活用して進められてきた。本章では、ヒアリ
ング調査の結果を踏まえ、4 つの第三セクターのうち特に地域の第 1 次産品を高付加価値化して販
売を拡大することで地域経済の振興に貢献している葛巻畜産公社と葛巻食品会社について、その特
色や課題、今後の方向性などについて考察する。
(1) 葛巻畜産公社
(a) 事業の特色(ヒアリング調査を実施した 2009 年 3 月 17 日現在の状況)
− 84 −
酪農地域における経済活性化に関する考察
(ⅰ)事業の状況
葛巻町では、従前は町営牧場で夏期放牧のみが行われていたが、北上山系開発事業を契機に周年
の哺育育成 11) を 500 頭で始める事業が、牛舎の建設と並行して進められた。その事業実施のため
に葛巻町と農業協同組合で出資して設立されたのが葛巻畜産公社である。事業の立ち上げに当たっ
ては、小岩井農場 12) から獣医やオペレーターなどの人材派遣を受け、これが事業発展に大きく貢
献した。また、葛巻町役場と農業協同組合からも人材が派遣された。
既述のように従来の町営施設では、酪農家からの乳牛の預託は夏期だけであり、2 年間にわたり
周年で預託を受けることはなかったことから施設の稼働率は低かった。この課題に対処するため、
新たに乳牛を購入するという方法がとられ、さらに町外からの乳牛の預託も受け入れるようになっ
た。町外からの受入れについては異論もあったが、施設の稼働率を高めることが重要であることか
ら実施された。しかし、町内の酪農家からの受け入れを優先にすることが基本であり、その方針は
堅持されている。
当初は 500 頭であった育成牛が、
2005 年度から 2006 年度にかけては 2700 ∼ 2800 頭に増えた。
夏期だけ他の牧場に預けている牛もいる。また、町外にも越冬施設が数カ所あり、そのなかには岩
手県からの借用施設もある。2006 年度頃から酪農を取り巻く状況が厳しくなったが、その後増加
傾向に転じた。しかし乳価の上昇などもあり、その影響についての懸念があるなど、不安要因を抱
えた状況でもある。そのため、1 頭当たり 1 日 500 円の預託料について、2008 年度からは 200
円の補助金が出されている(葛巻畜産公社と葛巻町で各々 50 円、農業協同組合で 100 円)
。
(ⅱ)交流事業の推進
運営する牧場内においては、新たな機能としてイベントや学習、宿泊などができる様々な交流施
設が整備されていった 13)。牧場の敷地は一部葛巻町の所有地であり、これらの施設の多くも葛巻
町が国の補助金を活用して整備したものである。以前は、牧場への一般人の立ち入りはできなかっ
たが、こうした施設の整備により交流事業の展開が可能となった。
主な交流事業としては、葛巻畜産公社の主要牧場である「くずまき高原牧場」において、1997
年から 6 月に「くずまき高原牧場まつり」を実施している。また、小中学生を対象とした、衣・食・
住を共にする協働型の暮らしや、酪農体験を軸とした「人と人」
「人と動物」との交流体験を通し
て仲間との関わり方やいのちの大切さについて学ぶ「サマーワンダーランド」
、バター作り体験な
どの食づくり、クラフトなどの木工あそび、牛の乳搾り体験などの動物ふれあいなど、体験学習を
積極的に実施している。こうした取組みにより年間約 30 万人の来客があり、地域外からの貴重な
収入源にもなっている。
(ⅲ)ブランド化の進展
葛巻畜産公社には約 100 人の人達が働いており、畜産による収入は 3 億 5 千万円から 4 億円に
なる。葛巻畜産公社の当初の目的は、地域の第 1 次産業である酪農を支援することであった。牛
乳の生産については、1日の生産量が約 110 トンあり、そのうち約 10 トンは関東方面に販売さ
− 85 −
河 藤 佳 彦
れている。また、約 30 トンは他の製品の原材料になっている。生産物の市場としては盛岡を重視
しており、盛岡で牧場体験も実施している。
しかし今では、それに止まらず、雇用確保や小中学校の交流・体験学習など地域間交流の場にも
なっている。こうした取組みによって「くずまき高原牧場」のブランド化が進んでおり、町外の企
業から、
「くずまき高原牧場」で製造されたクリームチーズを自社製品の原材料に使いたい、とい
う申し出などもある(写真 1・2)
。
写真 1 くずまき高原牧場牛舎 写真 2 くずまき高原牧場チーズ製造施設
撮影:筆者による(2009 年 3 月 16 日)
撮影:筆者による(2009 年 3 月 16 日)
(b) 課題と方向性
(ⅰ)糞尿処理 牧場は、糞尿処理施設が十分ではない。施設整備に対しては、国からの助成があるが岩手県から
はないという。糞尿処理は原則として事業者の責務であるが、堆肥化により資源の再利用が可能と
なり経済的効果と環境的効果が得られることから、事業者の努力を前提としたうえで堆肥化施設へ
の適切な支援が求められる。
(ⅱ)飼料価格の上昇への対応
既述のように、飼料価格の上昇は深刻な課題である。国は農家の経営に対しては助成するが、公
共事業主体である葛巻畜産公社に対しての助成はないという。酪農家を支援する葛巻畜産公社への
支援も、事業担当者からは期待されている。
(ⅲ)町内酪農家による預託の促進
葛巻畜産公社の役割は、酪農家との機能分担による効率化であるが、両者が共に自立して各々の
役割を果たすことで、生産性向上の効果が生まれる。しかし、町内の酪農家であっても、葛巻畜産
公社への子牛の預託制度を活用していない者が多い。預託制度を活用していない酪農家は、預託の
ための料金を払うことに抵抗感を持っている場合が多いという。自らの作業にもコストがかかって
いることから、機能分担で哺育育成を葛巻畜産公社に任せ、搾乳に専心した方が効果的であり収入
− 86 −
酪農地域における経済活性化に関する考察
も増えるのであるが、その理解を得ることが難しいという。
鈴木(2006)は、この状況について次のように述べている。
「現在、町内酪農家の 25%にあた
る 68 戸が預託しているが、全てが 30 頭以上の飼養農家である。この制度を利用することで、搾
乳飼養管理に労働を振り向けることができ、規模拡大を図ることができたことを示している」
。こ
の数字を見ると、預託を行っている酪農家の数は、町内としてはまだまだ少ないと言える。葛巻町
における酪農の生産性の一層の向上を図るためには、町内の酪農家による、葛巻畜産公社への子牛
預託制度の利用促進が求められる。
(2) 葛巻食品会社
(a) 事業の特色(ヒアリング調査を実施した 2009 年 3 月 16 日現在の状況)
(ⅰ)事業の状況
葛巻食品会社は、おもに山ぶどうを主原料としたワインづくりを行っている(写真 3・4)
。現在、
資本金は 9800 万円で、葛巻町はその 40.8% を出資している。また、山ぶどうは特用林産物であ
ることから、森林組合も出資している(38.3%)
。農業協同組合と個人の株主の出資も 18.4% ある。
社長は町長であり、副社長を森林組合長が務めている。森林組合長は町議会の議長でもあり、地域
が一体となって取り組んでいると言える(表1)
。また、職員の特徴は、一旦町外に出た後、葛巻
町に戻ってきた U ターンによる者が多いことである。
2007 年度におけるワインとジュースの生産量は約 184 キロリットル、720 ミリリットル瓶(4
合瓶)にすると約 26 万本であり、売上は約 3 億 8 千万円となっている。この事業は、地域資源で
特用林産物である山ぶどうを活用して新たな産業を興す、という考え方で取り組んでいる。また、
葛巻町には山の幸も豊富にあるので、山菜加工も葛巻食品会社の事業として位置付けられている。
すなわち、山菜の付加価値を高めて地域外に販売し農家の所得向上にもつなげていくことが目的の
1 つとされている。しかし、現在はワインの生産が主となっており余力がないことから、山菜加工
は休止状態になっている。
事業形態については、葛巻食品会社は葛巻町の施設を使用して事業を実施している。一般に、第
三セクターが自治体の施設を借りて事業を実施している場合には、家賃は支払わない方法による場
合が多いが、葛巻食品会社は支払っている。使わなくなった葛巻町の給食センターなども賃借して
いる。経営が赤字だった頃には町から運営経費を補填してもらっていた時期もあるが、既に、町か
らの補填の累計額より、
寄付や株式配当により町に貢献した累計額の方が大きくなっているという。
生産した商品の主なマーケットは、岩手県、秋田県、青森県の北東北 3 県であり、そのなかで
販売戦略を展開している。徐々に仙台にも市場を拡大しているが、東京では岩手県の銀河ショップ
(アンテナショップ)で販売する程度に止まっている。その他は個人の顧客である。個人顧客には、
インターネット、ダイレクトメール、東京の故郷会を通じての葛巻出身者への情報提供などにより
アプローチしているという。
− 87 −
河 藤 佳 彦
(ⅱ)山ぶどうの特徴
山ぶどうは、昔から地域の人々によって山から採取され、その果汁が大事に飲まれてきた。冬の
貴重なミネラル分の確保に役立ち、薬にもなってきた。山ぶどうは、健康によい成分を含有してい
る。例えば、鉄分が豊富で造血作用があることから、出産を終えた女性などに飲まれてきた。経験
的な先人の知恵である。現在でも、山ぶどうの成分については研究が進められており、岩手大学と
も共同研究を行っている。ポリフェノールも豊富である。また、酸味はリンゴ酸である。一般のワ
インでは、酸味は酒石酸であることから、結晶化する段階で酸が落ちるが、リンゴ酸は結晶化しな
いで残っていることから酸味が持続する。また、リンゴ酸にはクエン酸と同様に乳酸を分解する効
果があるという。疲労回復にも効果のある成分を持っていることから、サプリメントのようなもの
も検討されている。
写真 3 くずまきワイン工場 写真 4 くずまきワイン直売店
撮影:筆者による(2009 年 3 月 16 日)
注:当該直売店は、くずまきワイン工場に隣接して
設置されている葛巻町の施設「森のウッディ館」 にある。
撮影:筆者による(2009 年 3 月 16 日)
(表 1)葛巻食品会社の主な経過
1985 年度 ・葛巻食品会社 設立(資本金 5,100 千円、その後増資)
・果実酒類果実酒製造内免許取得
1986 年度 ・山菜加工場竣工(212 m2)
1987 年度 ・食品部門操業 ジャム、山菜、茸など加工品の製品化
1988 年度 ・果実酒製造期限付き免許取得(1993 年永久免許取得、1995 年免許条件緩和:白ワイン
製造も可能、1997 年免許条件緩和:ぶどう全般のワイン製造が可能)
・ワイン部門操業
1989 年度 ・森の館ウッディの管理委託を受け直売店の設置
2006 年度 ・岩手県椎茸農業協同組合より事業を譲受
出典:「葛巻高原食品加工株式会社」提供資料(2009 年 3 月 16 日取得)より作成。
− 88 −
酪農地域における経済活性化に関する考察
(ⅲ)栽培農家の振興と地域間連携
葛巻町では、
栽培農家により生産された山ぶどうを葛巻食品会社が買い取っている。山ぶどうは、
農作物にとって条件が良くない場所でも栽培が可能である。したがって、葛巻町においては、土地
を有効利用して山ぶどうを栽培したいという農家は今後も増えることが見込まれる。また、葛巻町
だけでなく、盛岡以北の県北地域でも山ぶどうの生産量が増えており、葛巻食品会社はその多くを
買い取っている。岩手県も、山ぶどうの生産を振興してきた。その結果、生産が予想以上に伸びて
きたことから、葛巻町も岩手県と一体となって消費拡大に取り組んでいる。そのため、商品の多様
化にも取り組んでおり、ワインだけでなくジャムなども生産している。
しかし、葛巻食品会社においては、葛巻町内の農家からの仕入れが基本であり優先される。原材
料が足りなくなった場合は、町外から調達するという考え方である。一方、山ぶどうを生産する他
地域の生産過剰分については、その地域が特産品を作るのであれば、葛巻食品会社が加工を引き受
けるという考え方で臨んでいる。これは委託加工の考え方であり、山ぶどうを生産する地域が互い
に連携しながら、山ぶどうワインの消費を拡大していこうという取組みである。ワイン生産施設を
持たない地域にとっては、自ら多額の資金を投入してワイン生産施設を整備することに伴うリスク
は回避したいということが一般的であり、逆に、既に生産施設と確立した生産技術を保有しており、
それを活かして収益を上げる機会が委託加工によって得られる葛巻町とは互いに利点がある。こう
した視点からの地域連携も推進し、全体として岩手県のブランド力を高めていくことを目指してお
り、実際に生産施設はほぼフル回転の状況にあるという。
(b) 課題と方向性
(ⅰ)販売と交流の拡大
くずまきワインの販売量を拡大するには、応援者を全国に増やすことが重要である。そのため、
発行物やダイレクトメールなどのほか、販売店を回って説明をしたり各地でワインパーティーを開
催して普及に努めるなど、多様な取組みを展開している。また、ドイツのワイン産地との交流も実
施され醸造技術の指導も受けている。
基本において重要なことは、山村の優れた特産品を都会の人達によく知ってもらうことであり、
そのために都市との交流を拡大することである。そして、こうした交流事業のなかで都市の人々に
認められる、新たな商品開発・事業展開を推進する必要がある。また、くずまきワインの普及は、
単独で進めるのではなく葛巻町の活性化全体のなかで位置づけ、効果的な役割を与えていくことも
必要であり、葛巻町の町民と事業者がその共通認識を持つことが求められる。今後ともさらに良い
ワインを作れるよう、努力を積み重ねていく必要がある。
(ⅱ)新事業の展開
葛巻食品会社では近年、新たに椎茸事業部を立ち上げた。これは、農家から干し椎茸を集荷して
市場に出し、手数料を受け取るという事業である。椎茸も山ぶどうと同様に特用林産物であり、葛
巻食品会社が取り扱う商品として適している。
− 89 −
河 藤 佳 彦
この事業は、
もともと国の助成を受けて整備された施設を使って、
椎茸の生産者が生産組合を作っ
て実施していたものであるが、立ち行かなくなったことから、葛巻食品会社が継承することにした
ものである。この事業は、既にある事業システムや販路・市場を継承するものであるため、参入リ
スクが小さくて済む。岩手県からも、同じ特用林産物の事業を展開しているという理由から葛巻食
品会社に事業継承の要請があり、次の事業展開も視野に入れて実施することになった。事業施設は
盛岡市近郊にあり、土地・建物を葛巻食品会社が買い取るかたちで事業を継承した。
事業の仕組みは、生産者と市場を結びつける仲介をすることによって手数料を得るものである。
新規市場拡大については、農家の意見も踏まえ、直接市場に出して販路に乗せることが効果的であ
ると考えているという。仲買のマージンが省ければ生産者の利益が増え、また生産農家も市場の競
りで付く値段を楽しみにしており生産への励みになる。この新規事業については、くずまきワイン
の生産を中心とした現在の事業と組み合わせて実施していくことが重要であるという。
6.葛巻町の産業振興政策に関する考察
葛巻町の産業振興は第三セクターを活用して進められており、そのなかでも葛巻畜産公社と葛
巻食品会社という2つの第三セクターの担う役割が特に注目される。そこで、この2つの第三セク
ターの事業を、産業政策の原則を踏まえつつ改めて評価したい。産業政策の原則とは、河藤(2008)
によれば次のように示される。
「自由競争を前提とした市場メカニズムが健全に機能し、産業全体
ひいては経済全体が望ましい方向に発展していけるよう、規制や支援を行っていくのが産業政策で
あると言える。したがって、企業の自助努力を前提とし自立を促すことが原則であり、経営指導や
アドバイス、限定的な期間や資金の範囲内での金融・資金的支援などが行われる」
(p12)
。この基
準に照らして、以下、葛巻町の 2 つの第三セクターについて評価する。
(1) 葛巻畜産公社
葛巻畜産公社は、なだらかで広大な牧草地など、伸び伸びと乳牛を育てることができる中山間地
域としての環境や、その恵まれた環境のなかで蓄積されてきた経験や技術など、酪農に適した地域
優位性を最大限に活用して、その優位性を更に地域経済の発展のために有効活用しようとする取組
みである。そのために、国の補助金も導入されて整備された施設を活用し、畜産関係の事業や人材
交流・育成事業を展開している。
こうした事業の中でも最も基本的なものは、酪農家から子牛を預かり周年の哺育育成を行う事業
である。すなわち、酪農家は、周年の哺育育成という手間のかかる難しい作業を、手数料を支払っ
て葛巻畜産公社に任せる。これによって、自らは搾乳作業に専念することができるようになり、牛
乳生産の生産性が高まる。すなわち、分業によるメリットを得ることができるのである。
しかし、酪農家のなかには、手数料を支払ってまで子牛を葛巻畜産公社に預けるよりも、家族労
− 90 −
酪農地域における経済活性化に関する考察
働によって哺育育成と搾乳を一体的に実施する方が経費節減になるとして、この方法を選択する者
も少なくないという。手数料の支払いが余分な負担になると考える者が多いということだが、家族
労働には、手数料は支払っていなくても賃金に換算できるコストが発生している。分業による生産
性向上のメリットが活用できれば、さらに地域全体の酪農業の生産性が向上し付加価値の増大が期
待できる。
民間企業の自立性を高めるための側面的な支援という産業政策の原則から判断すると、事業のた
めの敷地と施設を、公共主体である葛巻町とその町が主な出資である第三セクターが所有(一部は
借用)し、事業をその第三セクターが行うという方法はかなり踏み込んだものである。地域内に事
業内容が競合する企業がある場合には、民業圧迫にもなりかねない存在となり政策手段として妥当
であるとは言えない。しかし、葛巻畜産公社の場合は、周年哺育育成という、充実した施設と高度
な技術とノウハウが必要なシステムを、地域の酪農業者の誰もが公平に利用できる機会を確保する
ものであることから、酪農経営効率化のための「共同利用施設」として捉えることができる。
すなわち、民業圧迫の危険性を持つ競争的な事業体ということではなく、地域における個々の酪
農業者の生産性を高め、地域全体の付加価値を増大させる仕組みの要となるものである。したがっ
て葛巻畜産公社による事業展開は、産業政策が目的とする民間企業の自立性向上の促進という趣旨
に適合した政策手段であると言える。
この政策の実施と効果との直接の因果関係を証明することは容易なことではないが、葛巻町に
おける乳用牛の飼養戸数・飼養頭数の推移(図 3)
、牛乳生産量の推移(図 4)を見ると、飼養戸
数は大幅に減少しているにも拘わらず、飼養頭数と牛乳生産量は増加傾向にあり、酪農家 1 戸当
たりの生産性が高まっていることが分かる。具体的には、1 戸当たりの乳用牛の飼養頭数について
見ると、1975 年には 5.0 頭であったものが 2005 年には 32.6 頭と 6 倍以上になった。同様に、1
戸当たりの牛乳生産量(集荷量)について見ると、同時期に 10.2t から 157.9t と 15 倍以上、乳
図 4 牛乳生産量(集荷量)
図 3 乳用牛の飼養戸数・飼養頭数
戸数
1,200
頭数
10,000
t
9,000
1,000
8,000
30,000
6,000
600
400
5,000
戸数
4,000
頭数
3,000
15,000
0
0
1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005
1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005
出典:葛巻町(http://www.town. kuzumaki.
出典:葛巻町(http://www.town.
iwate.jp,
2009.12.6 取得)kuzumaki.
出所:農林業センサス
iwate.jp, 2009.12.6 取得)
出所:農林業センサス
20,000
5,000
1,000
0
25,000
10,000
2,000
200
40,000
35,000
7,000
800
45,000
− 91 −
出典:葛巻町(http://www.town. kuzumaki.
出典:葛巻町(http://www.town.
iwate.jp,
2009.12.6 取得)kuzumaki
出所:新岩手農業協同組合葛巻中央支所
iwate.jp, 2009.12.6 取得)
出所:新岩手農業協同組合葛巻中央支所
河 藤 佳 彦
用牛 1 頭当たりでは 2.0t から 4.8t と 2 倍以上になっている。
(2) 葛巻食品会社
葛巻食品会社の事業は、葛巻町の地域が生産する自然の恵みとしての山ぶどうや山菜を、地域経
済の一層の発展に活用しようとする取組みである。その中でも特に力を注いで取り組んできた事業
が、ワインの製造である。
昔から自生していた山ぶどうについて農家栽培による量産を可能にしたこと、またワイン製造
の技術については、葛巻町が職員を東京都国立市の農業科学化研究所 14) に研修(2 年課程)に出
して習得させたということであり、必要な技術やノウハウを内製化することによって完全に自分達
の地域のものとしたうえで生産に踏み切ったこと、取扱商品の多角化の一環としての白ワイン製造
のために苦労して免許を取得したことなどが、生産面における成功要因であったと言える(亀地、
2006、pp.79-106, 161-189)
。また、需要面においては、ワインパーティーの開催やインターネッ
トを活用した直販戦略の展開など、市場開拓においても先進的な取組みを積極的に推進した。
このように、葛巻食品会社の取組みは、地域に潜在的にあった地域資源を掘り起こして光を当て、
優れた技術とノウハウによって付加価値を高めて新たな特産品へと育て上げたものである。
同時に、
市場開拓にも積極的に取り組むことによって生産された商品に対する収益性を高め、ひいては原材
料である山ぶどうの生産農家を創設するという新産業創出の効果を生み出したものである。
新たに始められた椎茸事業部の事業は、葛巻町の地域資源を有効活用したものではないが、葛
巻食品会社の事業ノウハウを活かし他地域の地域資源である椎茸を市場に橋渡しをすることによっ
て、その生産地域の活性化を支援すると同時に、葛巻食品会社の事業の多様化と事業力の強化に貢
献するものである。
葛巻食品会社の事業は経営体として採算性を確保できており、成功企業として評価することがで
きるが、地域産業政策の視点からすると、その意義は、ワイン製造という新たな地域産業の創出と
それを支える山ぶどう生産農家の創出、両方の営みによる雇用創出効果にあると言える。
7.地域ブランドと地域交流による地域活力の創出
葛巻畜産公社と葛巻食品会社の役割と意義について、各々の中核的な業務に注目して考察してき
たが、特産品の創出によって地域ブランドの形成に貢献してきた両法人の活動は、地域活性化に更
に幅広い効果を創出している。それは、都市部を中心とした他地域との交流の創出による地域活力
の増大とその地域経済への波及効果である。この効果は観光産業として捉えることができるが、葛
巻町については、安定的な人的交流に基盤を置く更に幅広い効果として捉えることができる。
既述のように、葛巻畜産公社が運営する牧場においては、乳製品製造施設のほか観光交流のため
の施設として宿泊施設、レストラン、焼肉ハウスなどがあり、観光客の受け入れや地域交流のため
− 92 −
酪農地域における経済活性化に関する考察
の様々な事業を実施している。また、山地酪農研修センターでは、町外の酪農家の研修を受け入れ
ている 15)。また、葛巻食品会社が運営するくずまきワイン工場の隣接地には、製造されたワイン
を数多く取り揃えて販売する直売店がある。また、同様にくずまきワイン工場に隣接して、岩手県
の設置した交流施設である「森のこだま館」16) が立地している。
このように、葛巻町は地域産業としての酪農とワインづくりを核とした地域全体のブランド化を
実現することに成功していると同時に、将来を期待された子供・若者達の交流事業が育ちつつある。
こうした交流事業は、
多くの地域と葛巻町との将来にわたる長い信頼関係を築き上げるものであり、
地道ではあるが葛巻町の着実な発展の基盤を形成する重要な意義を持つものである。また、観光を
含む地域交流事業を地域全体でバックアップするための宿泊・交流施設が、グリーンテージの運営
する「ふれあい宿舎グリーンテージ」である。葛巻町という地域全体のブランド力を高めるために、
他地域との交流を促進する重要な機能を持つものと言える。
葛巻町では、
もう一つの取組みとして、
風力発電、
太陽光、
バイオマスといったクリーンエネルギー
によるまちづくりを推進している。
この取組みのために葛巻町が出資して設立した第三セクター
「エ
コ・ワールドくずまき」が、その代表的なものである。この法人は小規模なものであるが、この事
業に取り組む葛巻町の熱意が、
国の事業を誘致するまでに至ったものと言える。採算面においては、
クリーンエネルギー事業は厳しい状況にあると言わざるを得ないであろう。しかし、世界的に大き
な課題となっている環境問題の解決に地域として取り組んでいるという姿勢は、地域イメージの向
上に大きく貢献するものと考えられる。また、風力発電の施設はゆったりと拡がった高原の風景と
マッチしており、観光資源としても有望である。
おわりに
葛巻町は、酪農という既に地域の主要産業となっている産業の新規展開を図ること、山ぶどうの
ような埋もれた地域資源を掘り起こして新たな特産品とすること、そしてその特産品を核として幅
広い交流事業を展開することによって、地域外から地域に所得を導入することに積極的に取り組み
成功を収めている。葛巻町のように、中山間地域という厳しい立地条件により外部からの企業誘致
が困難な地域においては、地域資源である第 1 次産業や食の特産品を大事に育てていくことが重
要となる。とり分け、価値観の多様化と個性化が進む今日においては、山村で産み出される美味し
いものや、自然、雰囲気といったものが地域の魅力を創出し地域ブランドの形成を先導する。
葛巻町ではこうした事業を、町が大きな出資割合を占める第三セクターと密接に連携し実施する
ことによって推進している。家族経営による小規模事業者が多く、地域の酪農家や農業者だけでは
大規模な施設や高度な技術が集約された施設を整備することが困難である場合、地域の酪農家や農
業者などにとって身近な存在である市町村が、第三セクターを活用することによって、事業者の生
産性を高めるために事業プロセスの一部を専門的な方法によって引き受けて分担したり、高度な加
− 93 −
河 藤 佳 彦
工施設を整備・運営することによって生産物の付加価値を高めること、さらには有望な市場の開拓
を担うことなどにより地域産業全体の生産性の向上や付加価値の量的拡大を図ることは、地域産業
政策の方策の一つとして積極的に評価できる。さらに、こうして産み出された特産品を地域観光資
源や交流事業と結びつけることによって地域の総合的なブランド力を高め、地域外からの収入と人
流を拡大し、地域の活性化を、量的側面と質的側面の両面から促進することが期待できることを、
葛巻町を事例とした考察により知ることができた。
地域産業政策の効果を期待することが困難と考えられてきた農林漁業地域について、今後はさら
に、
酪農地域以外の地域においても地域産業政策により地域経済活性化が期待できることを確認し、
その実現のための具体的な方策を提示することが必要であると考えられる。
(かわとう よしひこ・高崎経済大学地域政策学部准教授)
注
1) コントラクター組織とは、農家から圃場作業を中心に受託する組織で、オランダなど酪農先進国において家族経営におけ
る飼養規模拡大にあわせて、その飼養頭数限界が明らかになるにつれて発展した。我が国においても、北海道を中心に飼
料生産作業を受託する組織として増加している。その担い手は、営農集団、農業協同組合、農事組合法人、有限会社、株
式会社など様々である。 出典:中国四国農政局(http://www.maff.go.jp/chushi/press/1911/071119a.html, 2009.10.18
取得)
、農林水産省(http://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/pdf/ contractor_h2007.pdf, 2009.10.18 取得)に
よる。
2) 葛巻町(http://www.town.kuzumaki.iwate.jp, 2009.10.18 取得)による。
3) 葛巻町(http://www.town.kuzumaki.iwate.jp, 2009.10.18 取得)、岩手県(http://www3.pref.iwate.jp/webdb/view/outside/
s14Tokei/top.html, 2009.10.18 取得)による。
4) 前掲 2)
5) 複合サービス事業とは、郵便局(一部事業を除く)
、協同組合(農業協同組合、漁業協同組合、水産加工業協同組合、森林
組合など)である。 出典:日本標準産業分類(2007 年 11 月改訂)
6) 岩手県(http://www3.pref.iwate.jp/webdb/view/outside/s14Tokei/top.html, 2009.12.6 取得)による。出所:農林水産省
東北農政局岩手農政事務所
7)「北上山系開発事業」とは、次のような事業である。北上山地の山稜部には傾斜の緩い小起伏地が至る所に存在し、それが
大部分、未・低利用地のままに残されていたため、1969 年の「新全国総合開発計画」では、北上山地が大規模畜産開発
プロジェクト地域の一つに選定された。それを受け、1975 年には、畜産を基軸とする大規模生産団地の創設を目ざした
「北上山系開発事業」が開始され、山稜部の小起伏地を中心に、8 地区約 1 万ヘクタールの開発が進められた。この事業は
1987 年にすべて完了し、山稜部のシバ草地を中心に 5,665 ヘクタールが大規模な人工草地へと姿を変えた。 出典:農
業環境技術研究所(http://www.niaes.affrc.go.jp/jspace/map12.html, 2009.12.6 取得)
8) 葛巻町(http://www.town.kuzumaki.iwate.jp, 2009.10.18 取得)による。出所:農家数、家畜飼養頭数飼育農家数…農林
業センサス、牛乳生産量(集荷量)…新岩手農業協同組合葛巻中央支所
9) 社団法人 葛巻町畜産開発公社の事業地は、くずまき高原牧場、袖山高原牧場、上外川高原牧場、玉山牧場、大野牧場であり、
その総面積は 1,774ha(同公社所有地 380ha, 葛巻町所有地 138 ha, 借地 1,256ha)となっている。 出典:2009 年 3 月
17 日に実施した社団法人 葛巻町畜産開発公社へのヒアリング調査の際に恵与を受けた資料による。
10) 特用林産事業における「特用林産物」は、山林から生産される産物のうち、木材以外産物であり、次のようなものがあ
る。燃料(木炭、練炭など)
、樹実類(銀杏、胡桃など)
、山菜類(蕗、筍など)、茸類(生椎茸、エノキタケなど)、特
用樹(三俣、楮など)
、薬用植物等(マタタビ、オウレンなど)、樹脂類(漆、木蝋など) 出典:日本特用林産振興会
(http://www.nittokusin.jp/01_1gaiyou01.html, 2009.12.9 日取得)
11) 哺育育成事業とは、
乳牛雌子牛を生後0歳から分娩2ヵ月前までの約 24 ヵ月間、周年で預託育成する事業である。 出典:
鈴木(2006)
12) 小岩井農場の概要は次のとおりである。商号:小岩井農牧株式会社、創業:明治 24 年(1891 年)、設立:昭和 13 年(1938
年)、資本金:2 億 5 千 6 百万円(現在)
、従業員数:約 250 名(現在)。また、事業内容(現在)は、動植物の育種・改良・
増殖、および販売、農畜産品の生産・加工、および販売、林産品の生産・加工、および販売、観光事業などである。 出
典:小岩井農場(http://www.koiwai.co.jp, 2009.12.6 取得)
13) 葛巻畜産公社が運営する中心的な施設である「くずまき高原牧場」では、子牛や羊の世話、椎茸栽培、アイスク
リームづくりなど自然に触れる様々な体験ができる。また、牧場内にはミルクハウス、パンハウス、チーズハウ
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酪農地域における経済活性化に関する考察
ス と、 宿 泊 施 設 の く ず ま き 交 流 館 プ ラ ト ー や シ ュ ク ラ ン ハ ウ ス( コ テ ー ジ 村 ) が あ る。 出 典: 葛 巻 町(http://
www.town.kuzumaki.iwate.jp/index.php?topic=kanko_010_010_010, 2009 年 12 月 3 日取得)
14) 農業科学化研究所について、亀地(2006)は次のように紹介している。農業科学化研究所は、1945 年に誕生した。東京
都国立市に所在しており、2 万平方メートルの広さがあった。同研究所は、日本興業銀行のゲストハウスであったところ
を借り受ける形でスタートした。
15) 山地酪農研修センターについて、鈴木(2006)は次のように紹介している。1980 年、町が農業後継者を養成する目的
で公社に葛巻町立山地酪農研修センターを設立し、施設の維持管理および養成研修や実習等の業務を、同時に県からも県
内の公共牧場管理者の研修を目的とする業務を受託したのがきっかけである。現在の研修内容は、家畜飼養管理、草地管
理、機械整備から特産品の生産、製品管理、販売ノウハウ等まで多岐に渡っている。また、研修は期間によって、長期研
修、短期宿泊研修、日帰り研修がある。
16)「森のこだま館」は、岩手県が整備した施設で、
「平庭高原体験学習館」の愛称である。施設の主な機能は、次のとおり。
体験ホール:自然環境や地域資源を活かした各種体験教室を開催(そば打ち、つる細工、木工など)、地産地消コーナー:
地域の食材を活用した郷土料理等を提供・販売する、ふれあい交流館:利用者の交流の場を提供。なお、当該施設の運営は、
葛巻食品会社が指定管理者となって行われている。 出典:岩手県「いわて体験交流施設の概要(管理運営計画)」2008
年1月
参考文献
亀地 宏『株式会社「岩手県葛巻町」の挑戦:ミルクとワインとクリーンエネルギーの理想郷』秀作社出版、2006 年
河藤佳彦『地域産業政策の新展開:地域経済の自立と再生に向けて』文眞堂、2008 年
河藤佳彦「離島振興における産業政策の役割に関する考察:島根県隠岐郡海士町を事例として」高崎経済大学附属産業研究所
『産業研究』第 45 巻第 1、2009 年 9 月、pp.13-29
鈴木重男「三セクによる町の活性化:山村の持っている多面的な機能を最大限に利用した町の活性化を目指して」『東海畜産
学会報』第 17 巻、2006 年、pp.12-16
鈴木重男「放牧や技術普及で地域を先導 酪農の多角経営で町おこし」『月刊 JA』2009 年 3 月、pp.40-42
鈴木宣弘「地盤沈下に対して検討すべき政策対応」
『酪農ジャーナル』2 月号、2009 年 2 月、pp.18-22
清水哲朗、本田敏裕「酪農・乳業の現状と展望:酪農経営の悪化と乳業再編」『農林金融』2009 年 3 月、pp.36-51
福田 晋「深まる府県酪農の地盤沈下」
『酪農ジャーナル』2 月号、2009 年 2 月、pp.12-14
〔付記〕本研究は、
「平成 20 年度高崎経済大学特別研究奨励金」により実施したものである。
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