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戸外における俳句活動支援のためのアプリケーション

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戸外における俳句活動支援のためのアプリケーション
107
戸外における俳句活動支援のためのアプリケーション開発1)
高田
伸彦2)・鈴木
雅実3)・柳澤
良一4)・吉田
一誠2)・春名
亮5)
The Development of a Smart-Phone Application to Support Haiku Activity Outside1)
Nobuhiko TAKADA2),Masami SUZUKI3),Ryoichi YANAGISAWA4),
Issei YOSHIDA2)and Ryo HARUNA5)
概
要
近年スマートフォンの発展は目覚ましく,爆発的な勢いで世界各地に普及している.また,スマートフォンのア
プリケーションの開発も頻繁に行われている.これらを背景にして,我々の主要な研究テーマである「文学とメデ
ィアデザイン」の融合という命題のもと,文学の世界を十分に生かし,最先端技術を取り入れ,俳句活動を支援す
るアプリケーション開発を目指した.今回の研究では,スマートフォンの機能を活用し俳句活動を総合的(位置情
報,ネットワーク,コミュニケーション,ナビゲート,検索など)に支援する俳句活動支援アプリケーションのプ
ロトタイピングを開発した.このスマートフォンを用いて実際に大学から兼六園公園まで出向き芭蕉の句牌を基準
して句を詠む実験も実施したのでここに報告する.
1.はじめに
近年,「スマートフォン」の普及には目を見張るも
の研究で試みた(2).今回は、それをより充実した俳句
アプリケーション開発を実施した.
俳句は,室内で詠む場合と戸外で詠む場合があるが,
のがある.スマートフォンは,以前の Zaurus に代表
今回は,戸外においてスマートフォン1つで俳句を詠
される携帯情報端末(PDA : Personal Digital Assistant)
むことができる環境を提供することを目指した.携帯
時代の機能を遥かに超えた多機能携帯情報端末を指す
世代の若者たちに俳句の面白さを理解してもらうため
場合が多い.「スマートフォン」は,各社独自で開発
には有効なツールと考えて,Android OS を中心に開
を試みたフィーチャーフォンをより汎用的で多機能携
発環境の調査・分析を行い,俳句活動支援において必
帯情報端末といえる.このスマートフォンは,従来の
要な機能を抽出した.それを基に,プロトタイピング
フィーチャーフォンと比較して機能はよりパソコンに
としてアプリケーションの開発を行った.また,それ
近く,アプリケーションの実行に関してもいくつかの
を活用した簡易な実験を行い評価した.
付加価値をもって動作可能である環境を提供してい
る(1).
我々は,「文学とメディアデザイン」の融合という
継続した命題の中で,最先端機器であるスマートフォ
2.関連研究とアプリケーション開発の動向
2.1
俳句に関する研究
ンを用いて,俳句を題材にした Android OS での開発
俳句の実施に関しては,社会人は一箇所に集合し,
環境の整備と俳句関連のアプリケーション開発を前回
共同でそれらを詠む形態で,各地区で継続的に実施さ
1)
:平成2
4年1
0月1
0日受付;平成2
4年1
0月3
1日受理。
Received Oct. 10, 2012 ; Accepted Oct. 31, 2012.
2)
:金沢学院大学 美術文化学部;Faculty of Fine Arts and Informatics, Kanazawa Gakuin University.
3)
:KDDI 研究所;KDDI R&D Laboratories, Inc.
4)
:金沢学院大学 文学部;Faculty of Literature, Kanazawa Gakuinn University.
5)
:金沢学院大学 経営情報学部;Faculty of Business Administration and Information Science, Kanazawa Gakuin University.
金沢学院大学紀要「経営・経済・情報科学・自然科学編」 第1
1号(2
0
1
3)
1
08
)4)
れている(3(
.また,学校では,授業において学生た
俳句活動を支援するためのアプリケーション開発なら
ちが実際に俳句を詠みゲーム感覚で学習しているケー
びに利用に関しては,まだ報告されていない.
(5(
)6)
.また,近年,インターネット
スがよくみられる
の発達とともに,容易に非同期的に俳句を詠むことが
でき,異なった空間の作品が生まれている.詩,短歌
および俳句などにおいて,文字の表現だけでなく,詠
3.俳句活動支援アプリケーションの開発
3.1
伝統的な手法と今回の手法の比較
んだ句をより引き立たせるために,絵画との相乗的な
俳句活動支援アプリケーションの開発を行うために
表現(句+絵画)をすることがある.特に,俳句では
必要な機能を明確にし,伝統的な手法と今回の手法と
俳画(与謝野蕪村によって確立)という手法を用いて
の相違に関して比較検討した.従来の手法である情報
絵画教室など各地で実施されている.この俳画を用い
機器を用いない伝統的な手法を用いて俳句を詠む場合,
た研究論文として,体験共有型のコミュニケーション
必要になる道具を中心に文学部の教員へのインタービ
・メディアを実現するために,俳句と絵画を結びつい
ューにより表1にまとめた(13).
たマルチメディア俳句の研究論文がある(7).
また,俳句の母体となった連句のアニメーションで
の表現は,
松尾芭蕉が蕉風俳諧を築くもとになった
「芭
表1
従来の手法と情報機器使用の場合との道具に関
して
蕉七部集」の「冬の日」を題材にして世界屈指のアニ
メーション作家3
5人のコラボレーションの DVD 作品
が発表され高い評価を受けている(8).
2.2 Android OS 上での開発に関する研究
現在 Google は,Android SDK(開発ツールキット)
を無料配布しており,Java を用いた Android OS プラ
ットフォーム向けのアプリケーション開発に必要なツ
ールと API を提供している.それを利用した Android
俳句活動を行う詠み手は,最初に,書籍,地図およ
OS におけるアプリケーション開発は Java を中心とし
び季語辞典(歳時記)などを参照して目的地を決め,
て Android OS を基盤にした研究論文よりも実用的に
持参する道具をバッグに入れ,現地へ移動する.到着
利用できるアプリケーションプログラムが多い.例え
した現地では,俳句を詠む場所や方向を決め,俳句を
ば俳句創作関連では,歳時記や語句集などを持参し,
詠む.詠んだ句を鉛筆やペンまたは筆などでメモ帳な
書籍から語句を検索する必要がない俳句作成支援アプ
どに書き留める.これらの伝統的な手法の一連の行動
(9)
リケーション「細石」 や,撮影した写真に俳句や詩,
のフローを図1に示す.これに対して,携帯情報端末
川柳などの言葉を添えて,絵手紙やポスターのような
を持参して俳句を詠む場合,この伝統的な手法である,
(1
0)
な
雰囲気を出せるアプリケーション「フォト一句」
どがある.
「情報を取得する」,「現地へ移動する」,「詠むため
の位置と方向を決定する」
,および「俳句を詠み書き
スマートフォンを活用した研究では,自然科学の分
留める」の4つに分類して対応することを試みた.携
野において,昆虫の音声による種の識別手法を提案し
帯情報端末を用いて俳句活動をするフローを図2に示
ている「昆虫音声を用いたスマートフォンで投稿可能
す.具体的には,俳句を詠むために必要な情報はイン
(1
1)
な環境モニタリングシステム−Chu−lingual」がある
.
ターネットの検索機能を使用することで対応し,目的
また,スマートフォンの OS として Android OS を用
地への移動は,Web 上の情報や地図アプリケーショ
いた研究では,Android 端末相互間における情報の交
ンを参考にすることによって代替可能である.俳句を
換に関して,「Android 端末を用いたアプリケーショ
詠み書き留める場合も,携帯情報端末のメモ帳などの
ン層での遠隔サービス呼び出し機能」の実現に取り組
データ記憶機能を用いることで記録可能となる.
(1
2)
んだ論文がある
.近年,Android OS に関する研究
3.2
アプリケーションに必要となる機能
論文は,研究報告レベルは,いくつかの分野でかなり
今回,俳句活動アプリケーションを開発するには,
急速に多くなってきている.しかし,どちらかという
図2のフローを基に必要となる主要な機能は,下記の
と先端技術の活用を主眼としない文学の世界に属する
4つの機能で実現できると考えた.
高田・鈴木・柳澤・吉田・春名:戸外における俳句活動支援のためのアプリケーション開発
図1
伝統的な手法のフロー
(1)メインビュー
アプリケーション起動時に表示される最初の画面で
図2
109
携帯情報端末を使用した手法のフロー
目的地への地図や道順を示して移動方法を支援する機
能である.イメージとしてはカーナビのようなシステ
ある,俳句を詠みに行くフローを図2に示したが,こ
ムと同様である.
れは事前に俳句を詠むという行為を意識している場合
3.3
開発環境の構築
を考えた.しかし,旅行に行き景色を見て言葉として
今回の俳句活動支援アプリケーションを開発するた
残したいと考え俳句を詠む場合などもあるので,その
めには,開発環境が必要であり,その作業環境を図3
場合も考慮し対処できるような UI(ユーザインター
に示す.図3に示す通り,今回,Eclipse を用いてア
フェイス)にした.また,語句検索機能,俳句投稿機
プリケーションの開発を行うこととした.この理由は,
能,目的地検索機能,目的地詳細検索機能を管理し,
俳句活動支援アプリケーションを開発するために,次
それぞれの機能へ任意に遷移可能にする必要がある.
の5点を考慮する必要があったからである.
(2)語句検索機能
・4つの個々の機能とそれらを統括するメインビュー
俳句活動支援アプリケーションからキーワードを検
索する機能である.俳句を詠む際に季語や現地の俳句
情報が必要となることがあるため,Web ページを通
じてキーワード検索を行うことができる機能である.
(3)俳句投稿機能
詠んだ俳句(通常は5−7−5)をエディタで編集
し自身の携帯情報端末に保存し,Web サーバに詠ん
を制御する.
・パターン化したレベルではなく木目細かい作成がで
きる GUI 形式での開発を行う.
・ハードウェア含めた独自の UI の作成など精細な動
作を制御する.
・豊富なプラグインを活用する.
・コンパイラ環境と実機へのデータ送受信,クロス開
だ俳句を転送させ登録する機能である.
発をサポートする.
(4)目的地検索機能
また,3.2で示した必要な機能を稼働させている
スマートフォン上に地図を表示し,俳句の詠み手に
時に,携帯情報端末のカメラ,GPS,センサなどのハ
1
10
金沢学院大学紀要「経営・経済・情報科学・自然科学編」 第1
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0
1
3)
図3
PCと実機の開発環境の概念図
ードウェアを任意に使用可能とすることができるマル
チタスクの方法で実現する.そのため,アプリケーシ
ョンとして効率的にハードウェアを使用するためには,
ネイティブアプリケーションで開発することが望まし
いと判断した.
4.俳句アプリケーションの機能
4.1
アプリケーションの概要
3章の機能設計を基に,Java 言語を用いて俳句活
動支援アプリケーションの開発を行った.その結果,
図4
俳句活動支援アプリケーションの各機能の画面
高田・鈴木・柳澤・吉田・春名:戸外における俳句活動支援のためのアプリケーション開発
111
図4に示すようにスマートフォン上で動作するネイテ
本機能は,GPS データと Google Map を用いて,現
ィブアプリケーションとして,語句検索機能,俳句投
在地の地図を表示する機能である.本機能は,メイン
稿機能,目的地検索機能,目的地詳細検索機能の4つ
ビューの画面上で「地図」ボタンを押すことで,GPS
の機能を実現した.
データを基に Google Map を起動する.その結果,画
4.2
面は GPS 座標から得られた現在地の地図が表示され
各機能の画面説明
(1)メインビュー
る.
アプリケーション起動時の最初の画面である.起動
(5)目的地詳細検索機能
時にカメラから得た景色を画面上に表示し,画面の下
本機能は,目的地に指定した場所(GPS 座標)に
部に操作ボタンを4つ表示する.各操作ボタンは,
「語
対して,画面上の矢印で目的地を示す.リアルタイム
句検索機能」
,「俳句投稿機能」
,Google MAP を使用
ナビゲーションのような機能で,目的地を示す矢印と
した「目的地検索機能」
,リアルタイムナビゲーショ
方位を示すレーダーを備える.Google MAP との連携
ンを行う「目的地検索詳細機能」の4つのモードがあ
機能はまだ未搭載である.
る.
4.3
(2)語句検索機能(アイコン:「検索」
)
俳句アプリケーションの構成
こ の 俳 句 活 動 支 援 ア プ リ ケ ー シ ョ ン は GPS,AR,
本機能は,スマートフォンに標準装備されている
CameraView,HAIKU DATA などのハードウェアやデー
Web ブラウザを使用した語句検索機能である.Android
タをクラスとして管理する必要がある.その機能の構
OS2.
1以降からマルチタスク機能が追加され,アプリ
成図を図5に示す.画面はすべて Activity により作成
ケーション間の相互呼び出しも可能になった.そのた
され,Main Activity は,各機能の4つの Activity に遷
め,俳句活動支援アプリケーションの配下でスマート
移できる.機能ごとの Activity は,まず自身の UI に
フォン標準の Web ブラウザを連携させる方式で語句
必要なボタンを設置し,機能に必要な「CameraView」
検索を稼働することを可能にしている.
などの class を参照する.図5において,Main の外に
(3)俳句投稿機能
あるブロックの機能は,スマートフォン(今回の研究
本機能は,メインビュー画面上の「投稿」ボタンを
においては SH03−C Android2.
2)の内部にある Web
押すことで起動される.5,7,5に対応するように
ブラウザと Google Map の機能を Activity から直接呼
文字入力が可能となっている.実際には字余りなどを
び出して活用している.カメラから取得する情報を使
考慮して各1
0文字ずつの全角文字を入力できるように
用する Activity はすべて Camera
した.
「Camera View」のクラスは,実機のカメラから得ら
(4)目的地検索機能
れる映像を処理し,スマートフォンの向きや方向に合
図5
俳句活動支援アプリケーションの構成図
View を参照する.
金沢学院大学紀要「経営・経済・情報科学・自然科学編」 第1
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0
1
3)
1
12
わせ画面を調整する.また写真撮影機能を搭載してい
③現地のバス停より「ナヴィ機能」による目的地ま
る.Android
での移動
2.1以前と Android2.2以降で画面
の調整方法が異なっており,今回の実機が Android
現地バス停より,「目的地検索機能」と「目的地
2.2の環境であるため,これに合わせた画面調整を
詳細検索機能」を用いて芭蕉の句牌まで移動する.
行っている.「GPS」のクラスは,スマートフォンの
「目的地検索機能」を使用して現在地の確認を行い,
GPS を用いて取得した現在地の座標を返す機能を持
「目的地詳細検索機能」で目的地までナビゲートを
つ.「HAIKU
受ける.
DATA」クラスは,サーバサイドの開
発に備えるため追加したクラスである.機能は,「俳
④俳句を詠む位置と方向を決定する.
句投稿機能」において入力された俳句のチェック及び
目的地の兼六園芭蕉の句牌に到着後,「メインビ
詠んだ地点の GPS データを管理する.「AR」クラス
ュー」を参考に俳句を詠む位置と方向を決定する.
では,カメラ View の上に画像をオーバーレイするク
位置と方向を決定したら「投稿」ボタンを押し,手
ラスである.「GPS」クラスから得た現在地を基に
順⑤の項目に移る.
「HAIKU
⑤俳句の詠みと記録
DATA」クラスからデータを取得し画面に
タグや矢印などをオーバーレイする.
表示画面には,セカイカメラによる映像が表示さ
以上のようなクラスにより各機能が相互関係を保持
れており,投稿画面にて詠んだ俳句を入力する.入
し個々の役割機能を果たして全体として稼働している.
力した俳句を編集し,完成したら右下決定ボタンを
押すことで俳句データを記録する.
5.アプリケーションの実験
5.1
目的と実験環境
俳句活動を支援するために従来の方法を踏まえ,今
5.3
実験結果と考察
5.2の手順に従って実験を行い,その後アンケー
トを取った.アンケートの評価方法は,標準的な5段
回開発したスマートフォンを活用した際の機能の稼働
階評価(5:非常によい
状況と操作性を中心に実験を行い評価と課題点を探し
2:あまり良くない
4:よい
3:普通である
1:悪い)を採用した.被実
出すことを目的する.使用機材は,アプリケーション
験者7名と少数であったため,十分な客観的なデータ
開発を行ったスマートフォン(SH0
3−C)を使用する.
を取ることは難しかったが,自由記述もそれぞれの項
本実験を実施するために,
被実験者7名
(指導教員:
目に関して記述してもらい意見をまとめた.そのアン
1名,ゼミ学部生5名,開発者(本人:1名))が出
ケート結果を図6に示す.図6から理解できるよう
発地(本学:金沢学院大学)から目的地(兼六園山崎
に,10項目の平均点は3.
5
9と高く,全体的に,このス
山)に向かい,芭蕉の句牌を起点として詠んだ方向を
マートフォンを活用した俳句活動支援アプリケーショ
探索し実験を行った.
ンを評価しているといえる.特に,項目3の目的地(俳
5.2
句を詠む地点)まで行くことに関しては,平均点が4.
4
実験手順
実験手順は,「3.2の図2携帯情報端末を使用し
と高くかなり容易であったといえる.GPS を基にし
た場合のフロー」を参考にし,下記①∼⑤の手順で行
た案内に従って目的地に向かえばよいので,スマート
う.
フォンの標準機能を活用できたといえる.項目4の目
①俳句を詠む場所の決定
今回の実験では,目的地を兼六園山崎山の芭蕉句
的地での俳句を詠む方向の決定に関しては3.
7であり,
容易であったと言える.前回のフィーチャーフォンで
牌とする.
行った実験では目的地のマークが固定のマークであっ
②兼六園の位置の調査と移動手段の決定
たが,スマートフォンでは,実際の写真(図4参照)
「語句検索機能」にて,キーワード「兼六園芭蕉」
であり,より立体的で方向がより把握し易かったから
を入力し Google で検索する.目的地である芭蕉句
といえる.項目8の全体的な使い易さに関しての評価
牌の場所を検索し,その情報を基に移動手段を検索
は,4.
1とかなり良かった.スマートフォンは,マル
する.移動開始地点は本学とし,移動手段は公共機
チタスク機能を有しており,今回の4つの画面を自由
関のバスを用いて現地のバス停留所(広坂)まで移
に選択して作業ができ,個々にアプリケーションを起
動する.
動した際,その都度終了させて,稼働させる必要がな
高田・鈴木・柳澤・吉田・春名:戸外における俳句活動支援のためのアプリケーション開発
いので利便性はかなり上がっているといえる.項目5
113
いと的確な情報を把握しにくい.
の俳句の入力は,今まで使用していた携帯電話のボタ
ン入力ではなく,今回は,タッチスクリーン上での指
①に関しては,メインビューの画面遷移ボタンサイ
入力の操作となり,かなり違和感があったと予想され
ズを1
00×11
0(pixel)で作成 し た た め,SH0
3C で の
る.しかし,iPad やスマートフォンの今後の普及の
画面上では親指より若干大きく表示された.このため,
早さを考えると,今後はこの指による操作性に慣れる
ボタンを押す分には操作ミスが少なく,使いやすいサ
ことが期待される.項目5の推敲も同様であり,入力
イズであったこと,ボタン表記の文字から大まかな機
と修正に関しては,今後,タッチスクリーン式に移行
能を連想できることから,スムーズに操作可能であっ
されるにつれて評価は高くなってくると予想される.
たとことを要因に挙げたい.
項目9,1
0においてスマートフォンの利用に関して,
今回上がった②∼④の問題に対しては,メインビュ
今後より有効に活用できる方向性を考え充実していき
ーは簡単な解説と機能ボタンだけにしておくことや,
たい.
カメラを使う画面においてスリープ機能をつけるなど
上記の結果から,開発したアプリケーションは,実
をして対処することが直感的に考えられる.しかし,
際の利用にも耐えられることが判明した.以下に,ア
再度体系的に考えて対処したい.操作に迷いが生じた
ンケートの自由記述から得た意見とそれに関してのコ
場合などを考慮して,図2のようなフローによる俳句
メントを述べる.
を詠む行動へのナヴィゲーションをつけるなど UI 周
①マルチ機能であったためアプリケーション全体は
りを改善することで解決できると考えている.
操作し易かった.しかし,タッチパネルによるスク
リーン上で文字のキーボード入力は慣れないと難し
い.
6.終わりに
②アプリケーション起動時,最初の画面がカメラを
今回,Android OS 上で動作するアプリケーション
使用するメインビューであるため,俳句を詠む位置
の開発環境の構築とその配下で稼働する俳句活動支援
と方向を決めるまでカメラが動き続けてしまい,電
アプリケーションのいくつかの機能を開発し,実験を
池残量に不安がある.補助電池を用意しておくのも
行った.アプリケーションとして提供するには,まだ
一方かもしれない.
いくつかのハードルをクリアする必要があるかと思う
③常にインターネットに繋がる環境があると限らな
が,基本的な機能に関しては実現できたと思う.今後
いため,季語や俳句の名所の情報が最低限提供でき
は次のことを特に留意して開発を継続し,俳句活動ア
る機能をアプリケーション自体に組み込んでおいて
プリケーションならびに俳句活動支援システムの完成
ほしい.
を目指したい.
④レーダーは情報を把握するためにあるが,慣れな
図6
実験のアンケート結果
1
14
金沢学院大学紀要「経営・経済・情報科学・自然科学編」 第1
1号(2
0
1
3)
① Android OS はバージョンアップの頻度が高く,現
(2)高田伸彦,鈴木雅実,柳澤良一,浅見健司:Android OS
在は,Ver.
4.
0まで提供されている.バージョンごと
上での俳句アプリケーションの開発,教育システム情報
の機能でアプリケーションが動作不良になることが発
生することがある.そのため,バージョンによる影響
が少ないプログラミング方法を用いて,汎用性を持た
せるようにする.
・俳句を詠む場合においてスマートフォンの通信機能
が使用できない場合に備えて,検索機能やナヴィゲ
ーション機能に必要となる俳句データをスマートフ
ォン本体に辞書的に保存しておくことも考慮する.
・機能に絡めて操作関係の実験を再度見直して,操作
方法がより詠み手に利用しやすい UI の改良を目指
す必要がある.
学会研究報告,vol.
2
6,
no5,
pp1
1
3−1
1
8(2
0
1
2)
(3)藍生俳句会,
http : //www.mmjp.or.jp/aoi/all/menu.html
(4)キョン太の連句道場,
http : //www5b.biGlobe.ne.jp/~kyonta/
(5)金沢学院大学公開講座,
http : / / www. kanazawa-gu. ac. jp / university / koukaikouza /
koukaikouza.html
(6)俳句研究−神奈川大学シラバス,
http : //ku-syllabus.kanagawa-u.ac.jp/syllabus/
(7)鈴木雅実,小林裕一,中井隆洋,吉田香:“Analysis
on
Empathy-inducing Effect brought by Haiku“,電子情報通信学
会英文論文誌 D(ヒューマンコミュニケーション特集)
,
Vol.
上記の課題を中心により操作性がよく利便性の高い
俳句活動支援アプリケーションならびにシステムの完
成を目指したい.
E8
9−D, No.
6,
pp.
1
8
6
0−1
8
6
7(2
0
0
6)
(8)マーク・ベイカー:連句アニメーション「冬の日」
,紀
伊國屋書店(2
0
0
3)
(9)俳句作成支援アプリケーション「細石」
,
http : //product.hscnet.jp/sazareishi/index.html
本研究は,研究種目として,平成2
3年度科学研究費
補助金(基盤研究(C)
)の支援を受けて,研究課題
「フォト一句」
,http : //www.photoikku.com/j/
(1
0)
(1
1)和田智晃,秋田純一,北川章夫:昆虫音声を用いたスマ
は,「携帯情報端末の活用による俳句・連句創作活動
ートフォンで投稿可能な環境モニタリングシステム−Chu
支援システムの構築とその授業への応用」
(課題番号:
−lingual,情報処理学会論文誌5
3
(3)
,
pp1
0
1
7−1
0
2
1
(2
0
1
2)
23
50
1
1
8
0)をベースにして,今後の発展を目指して研
(1
2)中尾和弘中本幸一:Android における遠隔サービス呼出
究を行った.
し機能について,情報処理学会研究報告,
pp2
0
1
2−EMB−
2
4(2
0)
,
1−6,
2
0
1
2−0
2−2
4
参考文献
(1)井上伸雄:【図解】スマートフォンのしくみ(PHP サ
イエンス・ワールド新書)
,PHP 研究所(2
0
1
2)
(1
3)高田伸彦,鈴木雅実,柳澤良一,春名 亮,吉田 一誠:
スマートフォン携帯端末を活用した俳句創作支援環境の
構築,JSiSE research report2
6(2)
,
教育システム情報学会,
pp9−1
6(2
0
1
1)
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