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青年期の心理両性性に関する日韓比較研究
青年期の心理両性性に関する日韓比較研究 一共感性,精神的健康,PBlとの関連1こおいて一 人間発達教育専攻 臨床心理学コース M11068G 柳田清弥 【問題と目的】 の学部生396名幌性193名,女性203名,有効回 Bem(1974は,男性性・女性性を一次元の両極と 答率83.58%)。韓国では,C単科大学及びD総合大 して捉えるのではなくそれぞれ独立した二次元的な 学,E単科大学,F単科大学,G地区の学部生及び ものであると主張し,男性性・女性性がともに高い 青年期に属する人368名偶性123名,女性245名, 心理両性性タイプ(以下,Aタイプ),男性性が高く 有効回答率76.35%)。 女性性が低い男性的タイプ(以下,Mタイガ,男性 調査時期2012年4月上旬∼7月下句。 性が低く女性性が高い女性的タイプ(以下,Fタイプ), 質問紙の構成:以下の尺度を用いて質問紙を作成し 男性性・女性性がともに低い未分化タイプ(以下,U た。①BS皿(ヘム性役割目録)日本版(安達・上地・浅 タイフつの4つの性役割タイプを見出した。また,心 川,1985)②多次元共感性尺度(鈴木・木野, 理両性性タイプは,男性性,女性性の特性を同程度 2008)③GHQ−12④PBI目本語版(Kitam皿a& 多く備えた心理的両性具有ともいわれ,環境に対し Suzuki,1993) て適応的でかつ精神的にも健康なタイプの人である 韓国語版質問紙の作成 日本語版質問紙を,バック とされている(Bem,1974)。これに関する主要な先 トランスレーション法を用いて翻訳し作成した。 行研究では,青年期において心理両性性タイプの人 調査手続き:日本では,授業場面を利用して質問紙 が最も高い自己価値観や自己概念,自己実現度など を配布し,韓国では,研究協力者に郵送したものを, をもっということが検証されている。 現地で個別もしくは授業場面を利用して質問紙を配 そこで心理的両性具有と関連する要因について 布し,回答順序や制限時間を指定せずに記入を求め 明らかになれば,青年期のメンタルヘルス支援の一 た。 助となると考えられる。それゆえ,本研究では,そ 【結果と考察】 の要因として日本と韓国の文化差及ぴ養育者との関 1.性役割タイプの割合について 係に注目し,心理的両性具有の表れ方が異なるかど 日本及び韓国では,Aタイプ,Uタイプが多く, うかについて検討する。 湖11と性鰭リタイプが一致する伝統型の出現率が低 具体的には,①生物学的な性に対する伝統的な性 かった。これは,性別にもとづいたジェンダー・ス 役割規範は,心理学的な性である心理的両性具有に テレオタイプにこだわらなくなってきていることが も影響を与えているのか,②養育者の養育態度は, 背景ではないかと考えられる。次に,統合データ(以 心理的両性具有にも影響を与えているのか,③どの 下,統合)において,韓国のAタイフ群が日本より 文化においても,Bem(1974)の仮説は適用されるの も多く,日本のUタイプ群が韓国よりも有意に多い かについて検討することを日的とする。 ことがわかった(才走43.07,佐3,ρ<。O1)。これは, 【方法】 曖昧な文化や環境への適応性もある日本的な自己の 調査協力者:日本では,A単科大学及びB単科大学 ために,曖昧なものを曖昧なまま受け入れることが できているのではないかと考えられる。 いては,A・FタイプがUタイプより高く(河3,323): 2心理的両性具有と共感性について 10刀6,ρ<01),性別について,女性が男性よりも高 共感性について,どのデータでも,性役割タイプ くなっていることがわかった(亙1,323)=22.86,ρ において有意な主効果がみられた(日本:夙3,323): <.01)。韓国及び統合では,性役割タイプについて 2472,ρ<一〇1,韓国:ス3,272)=642,ρ〈」〕1,統合: のみ有意な主効果がみられた(韓国:凪3,272):9,15, 亙3,603)二1ag9,ρ<一01)。下位検定を行った結果, ρ<刀1,統合:皿3,603)=1625,ρ<.O1)。下位検定 日本では,AタイプがM・Uタイプより高く,また を行った結果,韓国ではA・M・FタイプがUタイ FタイプがA・M・Uタイプより高くなっているこ プより高くなっていることがわかった。統合ではA とがわかった。また韓国ではAタイプがMタイプ タイプがF・Uタイプ群より有意に高く,M・Fタ より高く,またFタイプがM・Uタイプより高く イプがUタイプより高くなっていることがわかっ なっていることがわかった。統合では,Aタイプが た。以上から,両親の養育態度に対する子どもの認 Mタイプより高く,FタイプがM・Uタイプより高 知と関連しているのは,心理学的か性である性役割 く,UタイプがMタイプより高くなっていること タイプであることが明らかになったといえる。 がわかったまた,日本及ぴ韓国においては,性に 5.総合考察及び今後の課題 おいて有意な主効果がみられ,女性が男性よりも高 以上から,周囲の環境に対して適応的な共感性に くなっていることがわかった(日本:亙1,323)= ついては,女性性を有している方が高く,精神的健 30.85,ρ<り1,韓国:凪1,272)=1481,ρ<01)。し 康については,男性性を有している方が精神的健康 たがって,生物学的な性だけではなく,心理学的な 度は高いことがわかった。それゆえに,共感性と精 性においても,女性性を有している方が共感性につ 神的健康の両者ともに高いという性役割タイプは, いて優れているといえる。 Aタイプであるのではないかと考えられる。したが 3心理的両性具有と精神的健康1こついて って,Bem(1974の仮説を実証することができたと 精神的健康について,日本及び韓国で,性役割タ 考えられる。 イプにおいて有意な主効果がみられた(日本: また,養育態度については,本人が感じた両親の 亙3,323)=2−94,ρ<り5,韓国:夙3,272)=10.70,ρ 養育態度と本人の性イ賭1慮識が関連していることが <.01)。下位検定を行った結果,日本ではUタイプ 明らかになったつまり,養育者への情愛が深いと がAタイプより高く,韓国ではUタイプがA・M・ 認知している環境を作っていくということが,人が Fタイプより高くなっていることがわかった。統合 より環境に対して適応的でかつ精神的にも健康な生 では,有意な交互作用がみられω8,603)=342,ρ 活をしていくために必要になってくると考えられる。 <一05),性役割タイプについては,UタイプがA・ 最後に,今後は、心理的両性具有についてさらな Mタイプより高くなっていることがわかった る調査を行い,心理的両性具有になるための個人内 (久3,603)=10−19,ρ<一01)。したがって,男性性と女 の条件や環境による影響について明らかにしていく 性性の両方を有しないUタイプの精神的健康度が, 必要があると考える。そうしていくことで、人がよ 男・性性を有しているAタイプ,Mタイプよりも低い り環境に対して適応的でかつ精神的にも健康な生活 ということが明らかになった。 をしていくためには,援助者がどのように関わった 4心理的両性具有と養育態度について らいいかが明らかになっていくと思われる。 養育態度について,日本で,有意な交互作用がみ 主任指導教員 遠藤裕乃 られた帆3,323)=271,ρ<.05)。性役割タイプにつ 指導教員遠藤裕乃