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HP StorageWorksアレイ用SSDに関する ホワイトペーパー
HP StorageWorks アレイ用 SSD に関する ホワイトペーパー 概要................................................................................................................................................. 2 半導体ストレージとは.......................................................................................................................... 2 半導体ストレージの形態...................................................................................................................... 2 半導体ストレージで利用されているテクノロジー....................................................................................... 3 フラッシュメモリの基本事項 .................................................................................................................. 4 NORフラッシュ................................................................................................................................... 5 NANDフラッシュ ................................................................................................................................ 5 半導体ストレージにおけるNANDフラッシュの使用................................................................................... 6 望ましいストレージ特性について ........................................................................................................... 7 SSDを使用すべき事例 ........................................................................................................................ 8 将来の展望 ..................................................................................................................................... 10 価格の動向 ................................................................................................................................. 10 競争 ........................................................................................................................................... 11 適用 ........................................................................................................................................... 11 規格 ........................................................................................................................................... 11 詳細情報 ........................................................................................................................................ 12 概要 磁気ディスクドライブは数十年にわたって利用され続けています。その動作は十分に理解されており、 予測が可能です。磁気ディスクの性能に関する想定事項は業界に深く浸透しており、ディスクストレー ジを利用した適用事例でもたびたび言及されています。磁気ディスクは大量に生産されていて、業界で は容量、性能範囲、信頼性、および価格の動向に関してすでに標準化がなされています。 半導体ストレージ、特にフラッシュメモリをベースとする半導体ストレージは、磁気ディスクと比べるとま だ登場したばかりです。携帯電話、PDA、カメラ、メディアプレーヤー、USB スティックなどの民生品にお いて NAND フラッシュメモリの利用が急激に増加したことから、新たな大容量ストレージテクノロジー が開発されました。しかし、このテクノロジーには長年の経験や理解の裏付けがなく、特性も標準化さ れていないので、磁気ディスクのような成熟に達するには数年の時間がかかると予想されます。した がって、半導体ストレージはすでに優秀で役に立つとはいえ、初期の段階では、そうした不確実さや誇 大宣伝に対応できる企業、たとえばアーリーアダプターや、このテクノロジーで独自に対処できる特定 のニーズを持つ企業で利用されることになるでしょう。当然、そうした企業のユーザーは、このテクノロ ジーが性能、可用性、信頼性、および自社のコンピューターストレージのコストにどのような影響をもた らすのかを理解したいと考えています。 本文書では半導体ストレージ製品の種類について触れ、近年急激に増加している半導体ストレージの 利用を支えているフラッシュメモリ テクノロジーを紹介します。そして、広範囲なストレージデバイスの製 造にフラッシュメモリがどのように利用されているのかについて説明します。最後に、HP EVA や XP ア レイなどの製品にどのソリッドステートディスクのテクノロジーが最も適しているかについて説明し、この テクノロジーの将来の展望を示します。 半導体ストレージとは ここでは、以下の特長を持つストレージテクノロジーを半導体ストレージと呼ぶことにします。 • 磨耗したり性能を制限する微細な可動部品を持たない。 • 外部電力を供給しなくても長期間にわたってデータを保持する。ここでの「長期間」とは、シェルフ上 のディスクと比較しうる年単位の期間を意味します(内蔵バッテリを使用して揮発性メモリにデータを 保持する DRAM などのデバイスは除く)。 半導体ストレージの形態 半導体ストレージは、ディスクドライブの形状とインターフェイスを持つパッケージ(SSD: ソリッドステート ディスク)に収められる場合もありますが、ディスク以外の形態で提供される場合もあります。 初期の段階では、SSD が半導体ストレージテクノロジーの導入において最も普及すると予想されます。 その理由は、ディスクドライブが優れたモジュラーユニットであり、明確に定義された標準的なインター フェイスを持つこと、一般的にリムーバブルでホットプラグ対応であることがエンタープライズ環境に適し ていることが挙げられます。半導体ストレージをディスクドライブの形態で製造することによって、半導 体テクノロジーを最も簡単な方法で既存の環境に追加でき、ディスクストレージを管理する既存のエコ システム全体で SSD を活用できるようになります。HP でもこの動向に従い、当社ストレージアレイにお いて、まず SSD 形式の半導体ストレージを提供しています。XP は現時点で 72 GB の SSD をサポート しており、3 月には 146 GB をサポートする予定です。EVA は現時点で 72 GB の SSD をサポートして います。 HP ではソリッドステートディスクドライブを、エントリー、ミドル、エンタープライズの 3 クラスに分類して います。エントリークラスのストレージは、主に書き込みの使用が少ないブートデバイスなどが対象です。 こうした製品の目的は省電力と小型化であり、性能や消耗寿命はそれほど重視されません。ミドルクラ スの半導体ストレージは、高い読み取り性能と中程度の(それでも磁気ディスクよりはずっと優れた)書 き込み性能を目的とするもので、消耗期間は、規定の書き込み負荷(最大可能連続書き込み負荷より も少ない)における保証寿命よりも長くなります。エンタープライズクラスの半導体ストレージは、要求の 厳しい使用事例を対象とするもので、読み取りと書き込みできわめて優れた性能を発揮します。また、 消耗期間は、最大連続書き込み性能時における保証寿命よりも長くなりますが、当然コストは最も高く なります。市場が成熟するにつれて、エントリーデバイスとミドルデバイスのコスト差は縮まり、エント リーデバイスの存在価値は失われると予想されます。初期の民生用 SSD の中には、実際の書き込み 2 性能が低いかまったく役に立たないようなものもあり、消耗や信頼性に関して重大な問題があるものさ えいくつか見受けられます。こうした製品は、より成熟した製品との競争によってすぐに市場から姿を消 すことでしょう。 半導体ストレージは、ストレージインターフェイスやネットワークインターフェイスを使用してサーバーに 接続する外付け機器にも利用可能です。以前は、こうした機器では DRAM ストレージが利用されてい ましたが、現在ではフラッシュメモリ、あるいは DRAM とフラッシュメモリのハイブリッド形式も利用され ています。これらの製品は非常に高性能ですがコストが圧倒的に高いため、購入できるユーザーはごく 少数です。 ディスクインターフェイスを使用する半導体ストレージの製造には 1 つ欠点があります。それは、SCSI、 SAS、FC などの標準のブロックストレージプロトコルをデバイスで実装しなければならないことです。こ れらのプロトコルでは、それぞれ何らかのエンコードおよびデコード処理が必要になります。磁気スト レージでは機械装置の性能に限界があるため、こうした処理に伴う負荷はほとんど問題になりません。 一方、非常に高速な性能を提供する半導体ストレージの場合には、この負荷がより大きな問題になり ます。 すでに一部のベンダーでは、ディスクの相互接続やプロトコルの負荷をなくすことで最大限の性能を得 るために、PCIe インターフェイスに直接接続するブロックストレージデバイスを開発しています。それ以 外の可能性を追求しているニッチ企業もあり、確実にさまざまな方法が考案されるでしょう。また、 NAND フラッシュテクノロジーを置き換えようとしている競合企業も引き続き進歩を続けています。ディ スラプティブ技術(破壊的革新)となる可能性を秘めているものもいくつかあり、成功するものが出てくる かもしれません。 半導体ストレージで利用されているテクノロジー 半導体ストレージでは、次のように多くのメインストリームテクノロジーや研究段階のテクノロジーが利 用されています。 • DRAM メモリをベースとし、オプションとしてバッテリか外部予備電源、およびバックアップディスクを 備えた半導体ストレージが長年にわたって普及しており、可能な限り最高の性能をもたらしています が、ビット単価がきわめて高いためにニッチ市場に限られています。バックアップ用の電源やバッテリ がない場合は、給電がなくなった時点でデータが消失します。 • これよりも新しいデバイスとして、フラッシュメモリをベースとするデバイスがあります。過去数年にわ たり、フラッシュメモリはビット単価が DRAM よりもずっと安くなっています。また、データ保持のため の外部電源を必要としません。カメラ、メディアプレーヤー、携帯電話、USB「サムドライブ」などの民 生用携帯機器で利用されるようになってから、フラッシュメモリは非常によく知られるようになりました。 • 不揮発性ランダムアクセスメモリを提供する半導体レベルの磁気ストレージテクノロジーとして MRAM や F-RAM などが開発されましたが、密度やビット単価の点でフラッシュメモリはおろか DRAM にさえも追いついていません。 • 相変化メモリについては、形状の縮小による動作の向上、フラッシュメモリよりもずっと高速な書き込 みと消去時間、フラッシュメモリよりもはるかに優れた損耗動作が約束されていますが、こちらも密度 やビット単価の点でフラッシュメモリに追いついていません。 研究段階にある初期のテクノロジーは開発や完成までに数年を要するため、今後少なくとも 4 年間は、 引き続きフラッシュメモリが半導体ストレージの中心的なテクノロジーとして利用されると予想されます。 そこで、以下ではこのフラッシュメモリについて詳しく説明します。 3 フラッシュメモリの基本事項 フラッシュメモリの 1 個のストレージセルは、現代のデジタル集積回路で利用されているものと同じ種 類のトランジスタがベースとなっていますが、電気的な接続のない浮遊ゲートと呼ばれるものが追加さ れています。 薄膜 誘電体層 ソース 制御ゲート 制御ゲート ドレイン 浮遊ゲート 基本フラッシュセル プログラミング 消去 浮遊ゲートの下にある誘電体層はきわめて薄く、また量子物理学の驚くべき特異な性質のために、浮 遊ゲートの上下に適切な電圧をかけることにより、浮遊ゲートに発生して閉じ込められたり(書き込みま たはプログラミング)、浮遊ゲートから移動(消去)したりするのに十分な電子を励起できます。閉じ込めら れた電荷は、トランジスタをオンまたはオフ(読み取り)することができる制御ゲート電圧のしきい値に影 響を与えます。読み取りでは電子が誘電体層を横切る必要がないので、読み取りは集積論理回路の 最大速度で行われます。しかし、書き込みと消去では一定数の電子が誘電体層を横切って移動する必 要があるので、書き込みおよび消去を起こすためには電圧を十分長い時間かける必要があります。こ のため、フラッシュメモリテクノロジーでは書き込みおよび消去の速度が読み取りよりもずっと遅くなりま す。 残念ながら、誘電体層は励起電子が横切ることによって徐々に劣化していきます。劣化が進むと、つい には浮遊ゲートが電荷を保持できなくなるか、電子が指定の速度で障壁を横切ることができなくなりま す。その結果、損耗と呼ばれる現象が起こります。フラッシュメモリはセルが「完全に損耗」するまで、一 定回数の書き込みおよび消去サイクルしか持ちこたえることができません。セルが完全に損耗すると、 信頼性のあるデータの保存には利用できなくなります。セルが完全に損耗するまでに実行することので きるプログラミングおよび消去の回数のことを、書き換え制限回数(endurance)と呼びます。 もう 1 つ重要な概念としてデータ保持特性(retention)があります。データ保持特性は、フラッシュメモリ が電源オフの間どのくらいの期間データを保持できるのかを示します。半導体ストレージの使用事例に よっては、少なくともディスクドライブのようなよく知られたテクノロジーと同等の期間、データが保持され ることが重要になる場合があります。興味深いことに、フラッシュメモリでは損耗と保持の間に関連性が あります。セルが損耗すると、データを正常に保持できる期間も短くなります。 フラッシュメモリの本来の設計では、1 個のセルが 1 ビットのデータを表します。消去された状態のセル は"1"を表し、適切な電荷が浮遊ゲートに閉じ込められることによってプログラミングされた状態のセル は"0"を表します。これを、SLC (シングルレベルセル)フラッシュメモリと呼びます。その後、密度の向上 とコストの削減を絶えず追求する技術者たちの手によって、複数の電荷レベルを浮遊ゲートに格納でき ることが明らかになりました。現在市販されている製品は 1 個のセルに 4 種類の異なる電荷レベルを 格納でき、セルに 2 ビットのデータを格納できます。これを、MLC (マルチレベルセル)フラッシュメモリと 呼びます。 4 現在のほとんどの民生機器では、容量単価を最小限に抑えるために MLC フラッシュテクノロジーが利 用されています。しかし、MLC デバイスは SLC デバイスよりも早く損耗が進みます。本書ではこの違い について後ほど詳しく説明します。 ここまで、フラッシュメモリについて 1 個のセルの観点から説明しました。しかし、フラッシュメモリチップ は多数のセルの集合体であり、それらのセルをフラッシュメモリチップに編成する方法として、NOR お よび NAND という、まったく異なる 2 つの方式があり、それ以外に両者の特性を組み合わせたいくつ かのハイブリッド方式が一部のベンダーで考案されています。 NOR フラッシュ フラッシュメモリにおける本来のセル編成は NOR フラッシュであり、現在でも、ブートコードや組み込み のデバイスコードの格納などの特定用途には、このテクノロジーのほうが適しています。NOR メモリで は完全なランダムアクセス読み取りが可能であるため、プロセッサーは NOR メモリから直接ブートコー ドを実行できます。一般に、NOR メモリはエラー訂正なしで信頼性のある読み取りが行えるように設計 されています。これは、NOR フラッシュはエラー訂正ハードウェアおよびソフトウェアが設定される前に ブートコードを実行する目的で使用されることが多いからです。事実、NOR フラッシュメモリは元来コー ド格納用の ROM を置き換える目的で開発されていました。そうすることで、本来ならば ROM に格納さ れるコードを限られた回数だけ更新できるようになります。NOR フラッシュは、読み取りについては本 当の意味でのランダムアクセスが可能ですが、書き込みと消去についてはその操作に必要な単位が 多くなります。 NAND フラッシュ 本当の意味でのランダムアクセス読み取りをサポートするため、NOR フラッシュメモリでは、個々のメモ リワードへのランダムアクセスを可能にする多数の内部配線が必要になります。こうした内部配線の結 果、チップ上の貴重なスペースが埋まってしまいます。NAND フラッシュはランダムアクセスを犠牲にし て記憶密度を高めるために考案されました。NAND フラッシュメモリでは、読み取りと書き込みをペー ジ単位で行う必要があり、消去をブロック(複数のページ)単位で行う必要があります。したがって、 NAND フラッシュは当然ながらブロックストレージテクノロジーです。NAND フラッシュはランダム読み 取りができない代わりに、NOR フラッシュと比べて大容量ストレージのビット単価を低く抑えることがで きます。NAND フラッシュは常にページ単位で読み取られるので、通常は、正常に機能するために一 定量のページエラー訂正を想定した設計仕様になっています。そのため、部品に少数のビット異常が 存在しても正常に機能するので、チップの歩留まりがさらに向上し、コストがいっそう削減できます。こう した特性を持つことから、半導体ストレージデバイスでは NAND フラッシュメモリの利用が主流となっ ています。 ここで、NAND フラッシュメモリがどのように利用されているのかについて簡単に触れておきます。現在 の大容量 NAND フラッシュには、読み取りと書き込み用に 4 KB のページを持ち、消去ブロックのサイ ズが 64 ページ(256 KB)となっているものがあります。4 KB のページは実際には 4,096 バイトではあ りません。フラッシュメモリコントローラーによって ECC の格納に使用される数百バイトの追加の記憶域 や、メタデータ(たとえば、損耗追跡のための消去サイクル回数や不良ページの管理情報など)記憶域も 含まれます。通常、1 GB のメモリには 256,000 個のページと 4000 個の消去ブロックがあります。 5 フラッシュメモリからページを読み取る場合は、コントローラーによって読み取り対象のページが特定さ れ、メモリチップによってページ全体がオンチップバッファーに読み取られた後、チップからバッファーが ストリーミング出力されます。ページの読み取りは非常に高速(30 マイクロ秒)であり、ストリーミングで はきわめて高いデータレート(チップあたり 20 MB/秒超)をサポートできます。 消去されたブロックにページを書き込む場合は、ページデータがバッファーにストリーミングされた後、 フラッシュチップによってページ全体がバッファーから NAND フラッシュセルのページに同時に書き込 まれます。ストリーミングでも読み取りと同等の高いデータレートがサポートされていますが、ページの プログラミング時間はページの読み取り時間よりもずっと低速です(200~800 マイクロ秒)。ブロックの 消去に必要な時間はプログラミング時間よりもさらに低速です(1~2 ミリ秒)。 NAND フラッシュ部品の損耗寿命は、プロセス技術やフラッシュメモリのタイプによって異なります。通 常、SLC の NAND フラッシュブロックは、ページあたり 1 ビットのエラー訂正を使用した 10 万回の消 去サイクル後に寿命がくるように規定されています。MLC の NAND フラッシュブロックは、4 ビットのエ ラー訂正を使用した 5,000~10,000 回の消去サイクル後に寿命がきます。SLC を 4 ビット以上のエ ラー訂正で使用した場合、規定の 10 万サイクルを超えることが可能になりますが、改善の度合いは製 造元やプロセス技術によって大幅に異なるので、実際のテストを行わずに過度の向上を期待すること がないように注意する必要があります。 最後に、フラッシュメモリであまり知られていない特異な性質として読み取り阻害という現象があります。 書き込み頻度が低く読み取り頻度が高い使用モデルの場合、ページが 1 回書き込まれてから数万回 以上読み取られることがあります。読み取り信号は、書き込み信号ほどはエネルギーが強くありません が、浮遊ゲートに閉じ込められた電子には影響を与えます。読み取りが十分な回数に達すると電荷が 阻害され、それが原因でビットエラーが生じることがありますが、この現象はエラー訂正ロジックを通じ て検出し処理することができます。エラー訂正ロジックでは、コントローラーを起動して、訂正されたデー タを書き込み直すことで問題を回避できます。残念ながら、読み取り信号は隣接するページに格納され ている電荷も阻害する可能性があります。この問題はさらに手順を踏まなければ容易に検出されませ ん。 半導体ストレージにおける NAND フラッシュの使用 ここまで、NAND フラッシュメモリの動作と特異性について説明しました。それでは、ベンダー各社はこ れらのデバイスをどのように利用して、望ましい特性を持つ SSD などの半導体ストレージデバイスを開 発しているのでしょうか。ある意味では、フラッシュメモリはソリッドステートディスクのメディアに相当しま す。前述の説明でも簡単に触れましたが、NAND フラッシュには管理を必要とする特異な動作と制限 事項があります。これらは磁気ストレージの制限事項とはかなり異なりますが、磁気ストレージの制限 事項に劣らないぐらい重要です。 まず、最も重要な制限事項として損耗の問題があります。データレコードが非常に高い頻度で更新され る事例は容易に想像できます。仮に、データレコードがフラッシュメモリデバイス内部で更新されるとす れば、5,000 回のプログラミング消去サイクルで損耗する MLC デバイスでは、そうしたデータを含む ページが秒単位で損耗することになります。SLC デバイスでも、更新頻度の高いデータを含むページで あれば 1 分程度で損耗する可能性があります。フラッシュメモリコントローラーは、各ブロックの損耗量 を追跡し、損耗が分散されるようにデータを移動することによって、この問題を解決しています。こうした 処理を行うアルゴリズムは多数ありますが、最終的には、デバイス内のすべての消去ブロックにわたっ て損耗が分散されます。完全に損耗したブロックは不良とマークされ、再利用されなくなります。デバイ スは予備の容量を持つように構成されていますが、最終的には予備の容量が使い果たされるほどの 数のブロックが損耗し、デバイスが使用できなくなります。 NAND フラッシュメモリの構成は書き込み性能の問題も引き起こします。書き込みのたびに、ブロック 全体の内容を読み取り、新しいブロックを消去して、ブロックを書き戻す必要があるとすれば、たとえ書 き込みが小規模であってもデバイスの書き込み性能がまったく役に立たないものになってしまいます。 一部の民生機器には実際にこうした動作を示すものがあり、書き込み性能が毎秒 10 回程度しかない ものもあります。書き込みが毎秒 10 回という性能は磁気ディスクドライブの規格であってもかなり劣悪 です。 6 より優れたアプローチとしては、すでに消去済みで後続の書き込みを待つブロックのプールを持たせる 方式があります。このアプローチでは、性能はページの書き込み時間にのみ制限され、ブロックの消去 は問題となりません。この方式では、書き込み用に準備された消去済みブロックを確保するための追 加の容量が必要になります。また、すぐに使用できる状態の消去済みブロックを常に確保できるように、 それに必要なメンテナンスを実行する何らかのバックグラウンド処理も必要になります。容量が追加さ れるので、デバイス全体の損耗容量が増加するという副次的な利点があります。さらに、個々の書き込 みまたはページ全体を使用可能な消去済みスペースにマッピングする機能と、それらの複雑なマッピン グを正しく保つ機能も必要になります。 一部のベンダーでは、任意のサイズの書き込みが原因でページ全体が移動され、書き込まれたデータ が再配置される場合における、実際の書き込みとページサイズとの比率のことを書き込み増幅率と呼 んでいます。この比率は、さまざまな書き込みの組み合わせにおいてデバイスがどの程度の速さで損 耗するのかを判断する際の参考となります。別のアプローチとして、ログベースのファイルシステムに 相当するものを利用する方式もあります。このアプローチでは、書き込みが消去済みブロックの末尾に 追加されますが、複雑なマッピングの管理や空きスペースのガベージコレクションのために損耗の負荷 が生じます。どちらのアプローチでも、実際の損耗は、スペースおよび損耗の管理に使用される内部ア ルゴリズムと、書き込みサイズによって決まる、かなり複雑な関数になります。一般に、後者のアプロー チは半導体ストレージデバイスを開発しているベンダー独自の仕様による機密事項になっています。 良好な性能と損耗動作をもたらすどのようなソリューションでも、ユーザーデータとフラッシュストレージ 中の位置のかなり複雑なマップを維持しなければならないことは容易に想像できるでしょう。こうした マップの管理それ自体がさらに複雑な要因となります。半導体ストレージデバイスには、以下のような 目的に使用される何らかの DRAM が組み込まれています。 • 外部インターフェイスからのデータのバッファリング • マッピングデータの維持 • データのキャッシュ ベンダーによっては、デバイスへの給電の停止に備えて、スーパーキャパシターなどの短時間の電力 貯蔵器を利用して、マッピングデータとすべてのキャッシュ済みデータを DRAM からフラッシュに排出す るタイプのものがあります。また、突然給電が停止した場合にフラッシュメモリの構造からマッピング データを再構築するタイプのものもありますが、この再構築には数分かかる可能性があります。DRAM にライトバックのキャッシュ済みデータが保持されている場合に、磁気ディスクドライブのキャッシュ処理 と同様に、単にキャッシュ済みデータを消失させるタイプのものや、DRAM キャッシュを利用しないもの、 キャッシュ済みデータを確実にフラッシュに排出するものなどもあります。HP では、当社のエンタープラ イズ向け SSD を供給しているベンダーに対し、再構築に長い時間がかからず、データを消失させるライ トバックキャッシュを持たないデバイスを開発するように求めています。 望ましいストレージ特性について SLC と MLC のどちらのタイプの NAND フラッシュメモリも SSD の開発に利用されてきていますが、そ の性能と信頼性の幅は非常に多岐にわたります。ここでは、同じ基本的なテクノロジーを使用した場合 にその成果がどれくらいの範囲に及ぶ可能性があるのかについて簡単に説明します。 望ましい半導体ストレージデバイスを得るために、以下のような設計上の選択肢が利用されています。 • フラッシュメモリのチャネル数: 半導体ストレージコントローラーは、多数のチャネルを使用して、多数 のフラッシュメモリチップに同時にアクセスできます。エンタープライズクラスの SSD では、20 個もの 別々のチャネルのフラッシュメモリチップが使用される場合があり、それらのチャネルを同時に駆動 することできわめて高性能なデバイスを実現します。ミドルクラスの SSD では、少なくとも 4~8 チャ ネルのフラッシュメモリが使用されます。 • 容量のオーバープロビジョニング: 容量の追加は、コストの増加や損耗寿命の延長を意味します。ま た、最大限の性能を引き出すために、消去済みとして保持され書き込み用に準備されるスペースの 増加も意味します。ベンダー各社で多数のバリエーションが存在しますが、ミドルクラスのデバイスで は一般に、性能を上げるために 10%の割合で容量のオーバープロビジョニングが施されています。 また、エンタープライズクラスのデバイスでは、損耗寿命を延ばして際立った性能を引き出すために、 最大 100%のオーバープロビジョニングが施されています。明らかに、こうしたことはエンタープライ ズクラスのデバイスのコストが上昇する大きな一因であり、時が経ってもなくなることがないコスト格 差となります。 7 • マッピング構造、データキャッシュ、バッファー、および予備スペースに使用される DRAM の量。 • 最高の性能と最長の損耗寿命のための SLC か、性能や損耗寿命を犠牲にして容量単価を最低に 抑えるための MLC かの選択。現在、エンタープライズクラスの半導体ストレージでは SLC フラッシュ が利用されています。エントリークラスのデバイスでは主に MLC が利用されています(一部の高級ブ ランドのフラッシュメモリデバイスを除く)。ミドルクラスのサーバーおよびストレージデバイスでは MLC と SLC の両方が利用されていますが、MLC への移行が進む傾向にあります。容量が増えると損耗 を分散させるためのスペースが増えるので、結果として MLC SSD が長持ちします。いずれ、一部の 大容量 MLC デバイスで、その保証寿命の間最大限のランダム書き込み性能を維持できるようにな ると予想されますが、シーケンシャルな書き込みについてはそのようにすることはできません。 • 損耗の管理、書き込みの割り当て、データマッピング、事前消去、ガベージコレクションなどのアルゴ リズムの、ベンダー固有の組み合わせ。これらはすべて、さまざまな種類の負荷や書き込みサイズ の組み合わせの条件下における、性能と損耗寿命に影響を与えます。 これまでの説明から明らかなように、半導体ストレージは非常に複雑になる可能性がありますが、デバ イスを適切に設計することによって優れた性能と損耗特性をもたらすことができます。現在、半導体デ バイスのほとんどは SSD の形で存在しているので、期待できるいくつかの例を考察してみましょう。エ ンタープライズクラスの SSD は、ランダムな小さなブロックに対するランダム読み取りおよび書き込みに ついて際立った性能を発揮でき(1 秒あたり 50,000 回の読み取り、1 秒あたり 15,000 回の書き込み)、 レイテンシについても同様に優れています(100 マイクロ秒)。これらの SSD は、エンタープライズクラス の 15K RPM 磁気ディスクと比べると、GB 単価で 10 倍超も価格が高くなりますが、100 倍ものランダ ム I/O 性能を発揮します。SSD はシーケンシャル性能も良好ですが、磁気ディスクがきわめて優れた シーケンシャル性能をもたらしているので、決して大きな進歩とはいえません。エンタープライズクラス の SSD には、エンタープライズクラスの磁気ディスクと比べて 3 倍のシーケンシャル性能を持たせるこ とが可能ですが、価格が 10 倍を超えるため、それに見合った他の特性(非常に低いアクセスレイテン シなど)がない限り、SSD を使用する理由がありません。 損耗動作に関しては、HP StorageWorks EVA および XP アレイで使用しようとしているエンタープライ ズクラスの SSD では、デバイスの仕様上の保証寿命(エンタープライズクラスの磁気ディスクに合わせ て通常は 5 年間)の期間中に、可能な限り最高の書き込み速度で動作するように設計されています。ミ ドルクラスのデバイスは、提供する性能が幾分低く、最大の書き込みトラフィックで駆動した場合は保証 寿命前に損耗することになるので、HP のエンタープライズ向けアレイではエンタープライズクラスの SSD が採用されています。 フラッシュチップの密度やそのパッケージ化方法には限界、およびコスト面の理由から、SSD では同等 のサイズの磁気ディスクと同じ容量範囲は提供されていません。現在のテクノロジーでは、所定のディ スクフォームファクター(2.5 インチまたは 3.5 インチ)の SSD で提供される最大容量は、同じフォーム ファクターの磁気ディスクで提供される最小容量とほぼ等しくなります。 SSD を使用すべき事例 ここまで、半導体ストレージの性能上の利点を中心に説明しました。確かにこれらの利点はエンタープ ライズの分野で最も重要ですが、それ以外にも半導体ストレージには以下のような有益な特性があり ます。 • 省電力: 特にエントリーおよびミドルクラスの半導体ストレージで、デバイスあたりの消費電力が磁気 ディスクよりも少なくなります。このことは、電力を節約して冷却の必要性を減らしたい場合や、ノート ブックコンピューターなどのバッテリ駆動デバイスの稼働時間を延ばしたい場合に、大いに役立ちま す。 • I/O あたりの電力が非常に少ない: 半導体ストレージではきわめて高速な I/O がサポートされてい るので、I/O あたりの消費電力量が磁気ディスクよりもはるかに少なくなります。多数の磁気ディスク の「スピンドル」を配置して高いランダム I/O 速度を実現している企業向けのアプリケーションでは、 SSD の使用によって電力が大幅に節約されますが、結果として総容量が明らかに減ることになりま す。そうした点がアプリケーションの要件に見合うものであれば、半導体ストレージによって大きなメ リットがもたらされます。 • 騒音: 半導体ストレージは可動部品を持たないので静かです。 8 • 衝撃や振動: 磁気ディスクでは、ヘッドが回転ディスクの表面から微細な距離だけ離れて浮遊してい ますが、稼動中に少しでも落下した場合、その衝撃でヘッドが損傷するおそれがあります。しかし、 SSD ではそうした問題は起こりません。この利点からも、ノートブックなどのモバイルデバイスに非常 に適しています。また、半導体デバイスは振動にも耐えるので、移動中の車など振れの激しい環境 にも適しています。 • 環境への耐性: 半導体ストレージは磁気ディスクよりも広い温度範囲および標高範囲で稼動できる ので、条件の非常に厳しい環境ではただ 1 つの実用可能なソリューションとなります。 • 形状の適応性: 磁気ディスクでは剛性のある回転プラッターを密封された保護ケースに収める必要 があり、ディスクの機械的な形状が制限されます。半導体ストレージデバイスでは電子部品が回路 基盤上で使用されるだけなので、特殊な用途に合わせて多様な形状にすることができます。たとえ ば、HP BL495c 仮想化ブレード製品用に設計された SSD はそうした例の 1 つです。 企業向けとして使用する場合、半導体ストレージデバイスの利点で最も価値があるのは、非常に優れ たランダムアクセス性能と、非常に低いレイテンシです。シーケンシャル性能も非常に良好ですが、磁 気ディスクドライブと比較するとコストの増加に見合うほど十分良好とまではいきません。優れたランダ ム性能と低レイテンシの利点が発揮される使用事例としては、たとえば、トランザクション処理、データ マイニング、書き込みが頻繁に発生するランダムアクセスワークロード(データベースや Exchange サー バーなどのデータストア)があります。ビット単価が高いため、性能が最も重視されるデータを性能要求 の低い大量のデータから切り分けることができるようなアプリケーションでは、より性能の高いストレー ジ階層として半導体ストレージを利用するのが最適です。高い性能を得るために、高価なエンタープラ イズクラスの 15K RPM ディスクを購入し、それらの総容量の一部だけを利用しても費用効果が高いと 判断される場合には、エンタープライズクラスの SSD が、磁気ドライブに近い容量単価で何倍もの性能 を提供できます。 大規模な磁気ディスクファームの性能に合わせて設計されている最近のアレイでは、エンタープライズ 向け SSD の極めて優れたランダム性能が原因となって、ごく少数の SSD を使用した場合でも内部的な ボトルネックに遭遇することになります。アレイコントローラーがサポートできる数よりも多くの SSD を使 おうとしても、追加した SSD の性能と、その性能を得るために投じたコストが無駄になります。したがっ て、アレイではそれぞれ、サポートできる SSD の最大数とそれらの構成方法についてガイドラインが設 けられています。 SSD のビット単価は磁気ディスクよりもずっと高いため、あらゆる種類のデータを大量に格納する場合 は費用効果が良くありません。性能が最も重視される負荷など、コストの追加に見合うことや、他の利 点が増加するコストに見合うケースに重点に置いて導入すべきであることは明らかです。 半導体デバイスには可動部品がないので、アレイコントローラーが提供するようなデータ冗長化やアプ リケーション冗長化の必要性がなくなるという人もいますが、実際はまったく違います。半導体デバイス では磁気ディスクのような機械的な故障に悩まされることはありませんが、それでもコンポーネントの故 障、はんだや接点の不良、ファームウェアの不具合といった他の障害事例が多くあります。一般に、エ ンタープライズクラスの SSD の MTBF 仕様は磁気ディスクの 2 倍程度ですが、ベンダーの大半はその ことを実際の経験に基づいて裏付けるような長期にわたる追跡記録を持っていません。こうしたデバイ スが故障した場合、フラッシュチップには顧客のデータが保持されている可能性がありますが、デバイ ス全体が故障するためアクセスできなくなります。高可用性や高信頼性を必要とする場合には、従来と 同様に外部での冗長化が必要です。 損耗は、フラッシュベースの半導体ストレージが持つ固有の性質の 1 つです。磁気ディスクや電気部 品で発生する故障のほとんどは、統計的に MTBF としてモデル化されたランダムな故障です。半導体 デバイスはエラー訂正や損耗管理のアルゴリズムを備えているので、デバイスでは、どれくらいの容量 が損耗したか、または寿命に近づいたのかを実際に認識することができ、それらの情報をアプリケー ションやホスティングシステムにレポートすることができます。これにより、デバイスの有効寿命を計り、 損耗寿命に近づいたデバイスの交換時期を決めることが新たに可能になります。 9 将来の展望 価格の動向 ストレージ業界では、磁気ディスクドライブが SSD に完全に取って代わられるだろうと主張する人もいま す。しかし、そうしたことは今すぐには起こらないでしょう。しばらくの間は、一部のストレージ分野におい て、磁気ディスクドライブに容量単価の面でメリットがあると予想されます。こうした主張は通常、フラッ シュの価格が毎年 50%下がり続けることを想定していますが、磁気ディスクドライブの過去の価格動 向については考慮していません。次の図は、DRAM、フラッシュメモリチップ、およびディスクドライブに ついて、それらの GB 単価の動向を示したものです。 GB 単価の動向 100 ドル 10 ドル DRAM フラッシュ 1 ドル 0.1 ドル ATA および SATA ディスク 15krpm 2.5”ディスク 0.01 ドル ディスクの容量単価が 50%という過去の長期的な動向に戻った場合は、フラッシュの動向と同じになり、 その場合はフラッシュ半導体ストレージデバイスがディスクの容量単価に達することは決してないと考 えられます。一方で、ディスクが 30%という最近の動向を保ち続けるとすれば価格が逆転することにな りますが、長期的には、フラッシュが磁気ディスクストレージのあらゆる利用を置き換えることができるよ うになる前に、別のディスラプティブ技術が登場して状況が変わる可能性が高いと考えられます。 初期の段階では、可能な限り最高のランダムアクセス性能を得るために最も高価な 15K RPM の磁気 ドライブを試しに利用したいと考えているのであれば、エンタープライズクラスの SSD によって、最小限 のコストの追加で大きなメリットが得られるでしょう。SSD の価格が下がるにつれて、高い費用効果が得 られる顧客の範囲も徐々に広がると予想されますが、その場合もランダムアクセスのワークロードが主 な用途になるでしょう。磁気ドライブはシーケンシャルなワークロードできわめて良好な性能を発揮する ので、そうした使用事例では SSD の利点が高コストに見合うことはほとんどありません。 フラッシュメモリは半導体テクノロジーであるので、業界全体が経験している同じプロセスの縮小を経て、 最終的にコストの改善がもたらされることでしょう。しかし、フラッシュメモリの場合は、実際には形状が 小さくなるほど損耗の問題が増すため、そうした問題を回避するためには業界として知恵を絞る必要が あります。 10 競争 半導体ストレージのビジネスは近年、非常に活発になってきています。フラッシュ SSD 事業の先駆を 切った小規模企業や新興企業に大きな注目が集まっています。ディスクドライブの大手ベンダーは、こ うした競争がドライブの高性能化の事業に影響を及ぼしていると判断しているので、この分野に移行し つつあります。また、フラッシュメモリのベンダーも、この事業に参入して集積化の度合いを高め、民生 機器の需要の激しい変化にさらされている現在のビジネスモデルを円滑に進展させたいと考えていま す。すべてのベンダー各社が、フラッシュメモリの利用という課題に取り組むために、対応する特許やそ の他の知的財産を獲得しながら、各自にとって好ましいアプローチを採用しています。こうした競争の 中から SSD 開発の最適なアプローチが生み出されるにつれて、過去数十年にわたってディスクドライ ブ事業で行われてきたこととまったく同様に、競争を勝ち抜いた企業によってそれらのアプローチが集 約されることになると予想されます。 適用 ストレージアレイにおいても、より広範な IT 業界と同様に、初期の段階では半導体ストレージテクノロ ジーを SSD の形で活用することになるでしょう。HP では XP および EVA アレイでの用途向けにエンター プライズクラスの SSD を提供しています。 すでに説明したエンタープライズ向け SSD の特性によれば、現在のエンタープライズ向け SSD は磁気 ディスクと比べて、ランダム読み取りおよび書き込み性能がずっと高く、レイテンシがずっと低くなります が、容量単価は高くなります。したがって、SSD が最も役立つのは、非常に高い IOPS と非常に低いレ イテンシによる大きなメリットがデータやメタデータの一部にもたらされるような環境です。競争によって SSD の価格下落が進めば、SSD の価格に見合うような使用事例の幅が広がります。当面は、競争の 高まりによって SSD のコストがデバイスの大量生産に要する実際のコストと同程度になるにつれて、磁 気ディスクと比較した場合のエンタープライズ向け SSD の相対的な容量単価が改善されてくるでしょう。 長期的には、磁気ディスクと SSD の両方の容量単価が下がり続ける結果、磁気ディスクは容量単価の 面で引き続き優位を保つと予想されます。しかし、SSD の絶対価格が下がり続け、SSD の使用によって もたらされる価値で十分だと考える顧客層が増えてくるでしょう。 StorageWorks アレイでは、冗長化グループ(EVA 上のディスクグループ、XP 上のパリティグループ)の 中で SSD と磁気ディスクを混在させることはできません。そのため、SSD はより高性能なストレージ階 層をグループ化し、この高速で高価な階層に対して、それに見合うデータを配置するのに最適です。今 後、HP は主要なアプリケーションベンダーと連携して、SSD をそれらのアプリケーションで使用する場 合の利点や最適な構成を特長として明らかにする予定です。HP ストレージアレイでの SSD の利用は 始まったばかりであり、この種の情報はまだ用意されていません。HP ではこうした情報が整い次第、詳 細資料として公開するので参照してください。 ストレージ重視のアプリケーションは、長年にわたり磁気ディスクストレージの動作を基準として設計さ れてきています。SSD の価格低下と普及が進めば、アプリケーションによる内部的な変更によって半導 体ストレージの利点をさらに活用できるようになるでしょう。それまでには時間がかかりますが、SSD を 利用するメリットが増えていくことでしょう。 規格 フラッシュメモリ企業では、マルチベンダーの相互運用性を促進するための規格をすでに採用していま す。そうした例の 1 つとして、基本フラッシュチップへのインターフェイスを定めた ONFI 規格があります。 NVMHCI では、不揮発性メモリ コントローラー インターフェイスの規格化を提唱しています。 フラッシュストレージデバイスでは、性能、書き換え制限回数、損耗のレポートなどを測る手段として各 種の規格が必要になります。HP では、これらの問題への対処に取り組んでいる標準化団体に積極的 に参加しています。 11 詳細情報 リソース URL HP on Solid State Storage Technology http://h71028.www7.hp.com/enterprise/cache/609040-00-0-121.html?jumpid=go/solidstate (英語) SNIA のホワイトペーパー:『Solid State Storage 101, An introduction to Solid State Storage』 http://www.snia.org/apps/group_public/download.php/35 796/SSSI%20Wht%20Paper%20Final.pdf (英語) © 2009 Hewlett-Packard Development Company, L.P. 本文書に記載の事項は、予告 なく変更されることがあります。HP 製品およびサービスに対する保証は、当該製品また はサービスに付帯する明示的保証条項でのみ規定されます。本規定のいかなる部分 も、他の保証を構成すると解釈されるものではありません。HP は本書の技術上または 編集上の誤謬、欠落についての責任は負わないものとします。 Microsoft および Windows は Microsoft Corporation の米国における登録商標です。 Intel、Itanium、Xeon は、米国または諸外国における、Intel Corporation またはその関 連会社の商標または登録商標です。 4AA2-4509ENW、2009 年 2 月