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04-j-03 - Osaka University
温度成層型蓄熱槽の変動入力条件に対応した 槽内混合モデルに関する研究 北 野 岩 田 相 良 博 亮*1 剛*1 和 伸*2 温度成層型蓄熱槽を用いた蓄熱式空調システムの最適設計および最適運転制御 を容易にするため,本論文では,蓄熱システム運転時の蓄熱槽内温度分布の推移を 精度良く予測できる槽内混合モデルを提案している.本モデルは,既に提案してい る定流量・温度ステップ入力条件に対応した槽内混合モデルを拡張し,槽への入力 温度および流量が任意に変動する条件や,蓄熱・放熱繰返し運転等の実際のシステ ム運転条件に適用可能としたモデルである. キーワード:数値解析,温度成層型蓄熱槽,変動入力条件,混合モデル 温度分布を精度良く予測できる手法の開発を目的としてい はじめに る.相良らの槽内混合モデルは,入力条件が定流量・温度 蓄熱式空調システムを利用することで,夜間電力利用に ステップ入力であり,初期の槽内温度が一様であることを よる電力負荷平準化とそれによる運転コストの削減や熱回 前提条件としているので,任意変動入力条件には適用不可 収運転等の省エネルギー技術の利用,熱源の高効率運転に 能であるが,このモデルを拡張7),8)することで,対応可能で よる省エネルギーも可能となることから,蓄熱式空調シス あることが示されている.しかし,実験によるモデルの検 テムの設置件数は着実に増加してきた.本研究で対象とす 証が十分ではないことや計算アルゴリズムが複雑であるな る温度成層型蓄熱槽は,水を用いた顕熱蓄熱としては蓄熱 どの問題がある.一方で,乱流モデルを用いた数値計算に 密度が高く,現在最も普及している氷蓄熱と比較して,冷 よれば,種々の入力条件,入出力口および槽形状に対して, 凍機を高効率で運転できることから,今後の更なる普及が 槽内温度分布の推移を予測することが可能となってきてい 期待される蓄熱槽である. る9),10) .この手法によれば,槽内の温度分布や流速分布等 水蓄熱槽の槽内混合特性に関する研究としては,中島1), 2) 松平ら が,完全混合槽型蓄熱槽についての先駆的な研究 を行っている.温度成層型蓄熱槽については,相良ら 3),4) , 宮武ら5),6)の研究により,基本的な槽内混合特性が明らかと の詳細なデータが得られるが,この数値計算は非常に繁雑 であることから,最適設計や最適運転制御のための槽内温 度予測手法としては,現時点ではまだ実用的ではないと考 えている. され,その設計手法はほぼ確立されてきている.相良らは, 本論文では,数学モデルが簡易な相良らの槽内混合モデ 蓄熱槽の幾何学的形状と入力条件の槽内混合性状との関係 ル 4) に若干の変更を加えることで,変動入力条件に利用可 4) を実験式により与えた槽内混合モデル を提案しており, 能なように拡張したモデルを提案する. このモデルを用いることで,設計入力条件と槽形状に応じ た蓄熱槽の基本性能の予測が可能となっている. 1. 槽内混合モデル 本研究では,実際の運転条件での蓄熱槽内の混合性状を 本論文で提案する槽内混合モデルは槽内温度分布の推移 考慮した最適設計や蓄熱システムの最適熱源発停制御のた を予測するモデルであり,実際の空調システムの運転シミ めに,槽への入力温度および流量が変動する条件でも槽内 ュレーション等に利用可能とするため,相良らの槽内混合 *1 三重大学工学部 正会員 *2 大阪大学大学院工学研究科 モデル 4) を拡張し,変動入力条件に対応可能としたモデル 正会員 である. 槽水平断 面流速 m/s 温度 Φ l U 混合域 一次元拡散域 槽内温度分布 lm 流出口 流出 -Ω dout lout,h L 流出口 L 温度 水深 Qst,o 流入口 流入口 実際の温度分布 想定する温度分布 温度 水深 図-1 一定入力モデルの概念図 ←噴流到達位置 槽水面からの深さ z 完全混合域 流入量 (m3/s)/m θ0 図-2 変動入力モデルの概念図 ここでは,相良らの定流量・温度ステップ入力条件に対 応した槽内混合モデルの概要を示し,実システムの運転シ ミュレーションに適用する場合の問題点を明らかとする. 式(6)は式(5)中の入口アルキメデス数Arin の定義式である. R = R0 + R K t * ( 0 ≤ R ≤ 1 ) ( Rk=0.4 ) ・・・・(4) R0 = 0 .7 Arin 次に,一定入力モデルを拡張し,若干の変更を加えること − 0 .5 d0 / L (水平円管入力) ・・・・(5) ∆ρ 1 Arin = d 0 g ρ0 uin 2 で変動入力条件に対応可能とした槽内混合モデルの詳細を 示す. t* = 1.1 一定入力条件に対応した槽内混合モデル 相良らの槽内混合モデル 4) (以下では一定入力モデル) θin 図-3 無次元時間の算出方法の考え方 q in t V ・・・・(6) ・・・・(7) なお,このモデルのRKの値は完全混合域の温度について, は,初期の槽内温度が一様であり,流量が一定で,温度が R0に関する実験式(式(5))は槽下部の温度応答について, ステップ入力されることを前提条件としている.この槽内 それぞれ実験結果とモデルによる計算結果が良く一致する 混合モデルでは,モデルの概念を図-1 に示したように,槽 ように同定された. 内を流入口側の完全混合域と一次元拡散域の二つの領域に このモデルを拡張することで,入力温度または流量がス 分けてモデル化している.以下では,槽上部から高温水が テップ変動する条件 4) や任意変動入力条件に対応できるこ 入力される場合を想定し,このモデルの概要を示す. と7,8)が示されている.しかし,この拡張したモデルでも槽 (1) 完全混合域 内が一様温度でない状態から蓄熱または放熱を開始する条 完全混合域では温度が一様であると仮定し,その完全混 件には対応していないことから,実際のシステム運転条件 合域の無次元深さ(R= l / L)を用いて,この領域の温度を での槽内温度分布の計算には適用できない.また,このモ 次式でモデル化している. デルの計算では,入力条件の変動パターンにより細かく場 RV dθ = qin (θin − θ ) dt ・・・・(1) 合分けされ,計算アルゴリズムが複雑になっている点や, 変動入力実験によるモデルの検証が十分には行われていな い点で問題がある.さらに,入力初期に流入水が密度噴流 (2) 一次元拡散域 一次元拡散域では,槽の水平断面内の温度が一様である の状態であって,実際には温度が一様とならない領域を完 とし,垂直方向の分子拡散レベルの熱拡散と移流を考慮し 全混合域として一様温度とするため,この領域での温度予 た次式を用いている. 測精度が低いといった問題がある. ∂θ ∂ θ ∂θ = κ0 −U ∂t ∂z ∂ z2 2 ・・・・(2) ここで,鉛直方向の槽水平断面流速Uは,流出口位置より 1.2 変動入力条件に対応した槽内混合モデル 変動入力条件に対応した槽内混合モデル(以下では変動 入力モデル)では,図-2 に示したように,流入水が影響を も上部では式(3)で表される値を用い,流出口高さでは流出 与える領域を混合域とし,この混合域(深さlm )にΦ で表 口断面における流出流速が均等であると仮定し,各高さで される分布形で流入水が分配されるものとし,それぞれの の流出量に応じて減少するとして,流出口より下ではU= 0 深さで水平方向に一様温度となるとしている.このことで 3) 入力口付近の鉛直方向に一様でない槽内垂直温度分布に対 を用いている . U = qin A ・・・・(3) (3) 完全混合域無次元深さ 完全混合域の無次元深さRは,式(4)~式(7)から求めら れるとしている.式(5)の初期完全混合域無次元深さ R0 (=l0/L)に関する式は水平円管入力の場合の実験式であり, 応でき,温度分布の予測精度の向上が期待できる.槽から の流出についても,槽内垂直位置に対応した流出流量の分 布関数をΩとして定式化した. (1) 基礎式 本モデルでは,垂直方向の拡散と移流による熱の移動を 考慮した式(8)を基礎式とする.槽内水平断面流速は式(9) で表される.流入の分布関数Φと流出の分布関数Ωは式(10) 条件の変動パターンによる場合分けや,入力温度や流量等 を満たし,水深zで積分したそれぞれの値は流入流量qinに一 の履歴によらず,その時点での入力条件と槽内温度分布か ら算定する方法を示す. 致する. ∂θ ∂2 θ ∂θ Φ = κ0 −U + ( θin − θ ) ∂t ∂z A ∂ z2 ・・・・(8) U = ∫ ( Φ − Ω ) dz A ・・・・(9) 変動入力条件に対応したモデルでは,槽水面から鉛直下 z 0 L L qin = ∫ Φ d z = ∫ Ω d z 0 ⎧2 ⎪⎪ Ω=⎨ ⎪ ⎪⎩ 0 (d 0 2) − (lout ,h − z ) 2 π (d 0 2 ) 2 ・・・・(10) ( 0 ≤ z ≤ lm ) ( lm < z ≤ L ) ⎧ Φ≥0 ⎨ ⎩ Φ=0 2 qin 0 (l (l ・・・・(11) 向き(槽上部入力の場合)の実際の入力条件と等しい流速 と温度の鉛直定常噴流が到達する深さを求め,この位置の 槽内温度を槽内基準温度とし,この温度の水密度を槽内基 準密度ρ0として用いる. この垂直密度噴流の到達深さは,水面からの深さzでの噴 ) ・・・・(12) 2) out , h − z < d0 2 out , h − z > d0 Ω = qin δ (z − lout ,v ) (2) 槽内基準密度 ρ0 ・・・・(13) 流の下向き流速upが式(16)を満たすとし,到達深さlj,max は 式(16)の深さ z を噴流到達深さ lj,max と置いて左辺の噴流の 下向き流速upを 0 とした式(17)を満たす値とした. ρin u p = ρin uin − ∫ ( ρ − ρin ) g dz 2 z 2 0 ここで,流入の分布関数Φは混合域外での値は 0 であって, 2 ρin uin = g 式(11)で示した条件を満たすとする.なお,本モデルで採 ∫ l j , max 0 ( ρ − ρin ) dz ・・・・(16) ・・・・(17) 用する分布関数Φ については後述する.流出の分布関数Ω ここでは,槽への入力が密度噴流として槽壁に衝突し,流 については,二種類の流出口について定式化した.水平方 入口での流速と密度を保ったまま鉛直下向きの流れになる 向に流出する円管流出口の場合は,流出口高さの槽内水が と近似している.また,噴流の水平断面内の流速および温 一様の流出口断面流速で流出するとして 3) ,流出分布関数 度分布は一様であり,噴流の周囲水との混合はなく,運動 を式(12)とした.垂直方向に流出する円管流出口の場合, 量保存則に従うとして,式(16)を満たす噴流の到達深さを 流出口高さの槽内水が流出すると仮定 7,8) すると,Ωはディ ラックのデルタ関数を使用した式(13)で表される. 求めている11). (3) 無次元時間 t* 流入水が配分される混合域の深さlmは,槽水深を基準長 混合域無次元深さ Rm の計算に用いる式(14)中の無次元 さとした無次元数Rm(= lm / L)として,一定入力モデルの 時間t*は,槽内基準温度に応じた槽の換水回数に相当する 完全混合域無次元深さと同じ関数形の式(14),式(15)から ものとして,以下の方法で求めることとした. 図-3 には,この無次元時間の算出方法の考え方を示した. 求められるものとした. Rm = Rm 0 + Rm K t * Rm 0 = p1 Arin p2 d0 / L ・・・・(14) ・・・・(15) 流入の分布関数Φを一定値のqin / lmとした場合,一定入力 条件での本モデルを用いた計算結果では混合域が一様温度 となり,一定入力モデルの結果とほぼ等しい結果となる. また,入力の分布関数が異なる場合でも流入口付近で流入 水が槽内水と混合するのは同じであることから,混合域深 さは一定入力モデルの完全混合域深さと同じ関数形で表す ことができるとしている.ただし,RmKとp1,p2の値は少な くとも流入分布形の影響を受けることから,改めて実験に より同定することとした. 一定入力モデルでは,式(6)中の槽内基準密度ρ0は初期槽 内温度での水密度としており,完全混合域無次元深さの計 * 算に用いる式(4)中の無次元時間 t は槽の換水回数として いる.変動入力モデルでは,これらの槽内基準密度ρ0と無 * 槽上部から入力がある場合,槽内基準温度θ0よりも低い温 度の槽内水は,混合域の深さに影響を与えないと考え,槽 内初期温度が槽内基準温度で一様であったと想定している. 先ず,実際の槽内温度分布(図中の破線)の槽内基準温度 よりも低い温度の領域は槽内基準温度に等しいとし,槽内 温度分布が図中の実線で表されるとして,式(18)で表され る槽内基準温度と槽内温度との差から蓄熱量Qst,oを求める. 次に,入力温度θinの水が流入し,槽内基準温度で流出する 場合に,正味の流入熱量がQst,oに等しくなる積算流入流量 Vinを式(19)により求める.無次元時間は,Vinの槽容量Vに 対する比として式(20)で算出されるとした. Qst ,o = cρ A ∫ l j , max 0 ( θ − θ0 ) dz ・・・・(18) Qst ,o ・・・・(19) t * = Vin V ・・・・(20) Vin = cρ (θin − θ 0 ) 次元時間t を入力条件と槽内垂直温度分布に応じた妥当な この無次元時間の算定方法では,入力温度及び流量の履 値に設定することで変動入力条件に対応可能としている. 歴によらず,その時点での入力条件と槽内温度から算定で 本研究では,計算アルゴリズムを単純にするために,入力 きるため,槽内が一様温度でない状態から,蓄熱または放 実験槽(約 0.5m3) 高架槽(高温水)(約 0.14m3) 高架槽(低温水)(約 0.14m3) 排水槽(高温水)(約 0.21m3) 排水槽(低温水)(約 0.21m3) 貯留槽(高温水)(約 1.40m3) 貯留槽(低温水)(約 1.40m3) 電磁流量計 (YOKOGAWA 製 ADMAG AE202SG) ⑨ 磁歪式レベル計 (NOHKEN 製 MS200S) ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ② ① ③ 閉 開 ① 冷凍機 ② 流量制御弁 ③ 三方弁 (冷凍機出口温度制御) ④ 実験槽A ④ 図-4 実験装置Aの略系統図 流入管 流出管 1,570 1.15 m ⑬ ⑫ ⑭ ⑭ ① ⑭ 192 ⑤ 垂直断面図 ⑭ ④ ⑥ 385 3,110 温度測定位置 34 点 流出管 ⑦ ⑩ ⑩ ⑯ ⑰ ⑮ 流入管 560 400 ⑬ ⑧ ⑪ ⑧ ③ 約 1.6 m 1,670 1,980 700 130 ② ⑨ 1.15 m 温度測定位置 槽底から 50mm 間隔で 34 点 ⑩ 熱交換器 ⑪ 流入流量制御バルブ (東工・バレックス製 T8110 口径 25A) ⑫ 流出流量制御バルブ (東工・バレックス製 T8110 口径 25A) ⑬ 実験槽への入力温度制御バルブ ⑭ 流入流出位置切替バルブ ⑮ 電気ボイラー ⑯ ブラインタンク ⑰ ブラインチラー ⑩ ⑩ 図-6 実験装置Bの略系統図 700 6,175 水平断面図 (単位:mm) 験を行った.実験装置Aの冷凍機は出力を調節できないた め,入力条件の流量と温度を独立に制御することはできな 図-5 実験槽Aの水平および垂直断面図(容量 30.7m3) い.実験では,想定した流入流量の変動パターンを流量制 熱を開始する条件にも対応できると考えている. 御バルブの開度を調節することで実現したが,入力温度は (4) 入力分布関数 Φ 流量と槽からの流出温度(冷凍機入口温度)に従属した変 本槽内混合モデルの入力の分布関数 Φ としては,槽上部 動となる.図-5 には実験槽Aの断面図を示した.本実験で 入力の場合,水面で極大値となり,混合域の下端で 0 とな は,槽下部に径 100mmの水平方向に流入する円管流入口を る二次式で表される分布形を用いた計算結果が,実験結果 設け,槽上部には,鉛直上向きに取水する同径の円管流出 に良く一致することから,次式を用いることとした. 口を設けた.蓄熱槽の水深は 1.67m,槽容量は 30.7m3であ { る.槽内温度は槽中央部を 50mm間隔で 34 点,入力温度は Φ= 3 qin 1 − ( z lm 2 lm )2 } ・・・・(21) 入力口断面の上中下3点を熱電対により測定し,槽への流 なお,入力温度が変動する場合で,槽上部入力時に流入 入流量は渦式流量計により測定した. 口付近の槽内温度よりも入力温度が低い場合,または槽下 図-6 には,実験装置Bの略系統図を示した.実験槽への 部入力時に槽内温度よりも入力温度が高い場合には,計算 流入および流出は,高架槽および排水槽の実験槽との水位 結果の槽内温度分布は,温度の高い層がより低温の層の下 差による圧力差を流れの駆動力としている.流入流量は流 となり温度が逆転した分布となる.この場合には,混合域 量制御バルブ(図中⑪)により制御し,実験槽からの流出流 の深さに関係なく,蓄熱槽の入力口側端部から温度の逆転 量は,流量制御バルブ(図中⑫)によって槽内水位が 800mm 4) が解消する位置まで完全混合するものとして計算する . の一定値となるように制御した.入力温度は高架槽の高温 水と低温水を温度制御弁(図中⑬)により混合割合を変える 2. 模型実験 ことで制御した.入力温度の応答は,装置の制約により換 2.1 実験概要 水回数で 0.1 程度遅れた応答となる.図-7 の断面図に示し 変動入力条件に対応した槽内混合モデルのモデルパラメ たように,実験槽Bには,径 50mm の流入口と流出口が上 ーターの同定と本モデルの槽内温度予測精度の検証を目的 下各二ヶ所あり,流入出位置を切り替えることができるが, として,二つの実験装置を用いて模型実験を行った. 本実験では槽上部から入力し,下部から取水する実験を行 図-4 に実験装置Aの略系統図を示した.この装置には, った.この実験槽のステンレス製の槽内壁の吸放熱を抑制 冷凍機の出口温度制御のための三方弁(図中③)が備わって するために,7mm 厚のスチレンボードを槽内壁に貼り付け いるが,低温水が流入する側のバルブを常時全閉にして実 た.図-8 に示したように,槽内温度の測定は,槽底から ④ スチレンボード(内貼 厚 7mm) ⑤ 発泡スチロール ⑥ 透明アクリル板(観察窓) 100 50 800 ③ ① ④ 400 入力温度測定位置 3点 30 40 流入口 流出口 ② 槽内温度測定位置 ① 流出口 40 ② 断面図 平面図 500 ① 103 110 温度測定位置 ③ 流入口 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 ④ 50 640 786 800 1,000 ② 400 200 ① 流入管(上部・下部) ② 流出管(上部・下部) ③ 断熱材(100mm) (単位:mm) 図-8 実験槽Bの温度測定位置 ⑥ (単位:mm) 表-1 実験の入力条件 ⑤ 垂直断面図 水平断面図 図-7 実験槽Bの水平および垂直断面図(容量 0.494m3) 40mm 間隔で 20 点と水面下 10mm の 1 点のあわせて 21 点 について行い,入力温度として流入口断面の上中下 3 点を 測定した.また,槽への流入流量は電磁流量計により測定 した. 2.2 実験条件 表-1 には,実験の入力温度と流量の変動パターンを示し た.実験装置Aを用いた実験を 20 ケース行い,実験装置B では,実験装置Aでは実現できなかった入力温度が一定で 流量が変動する条件および流量が一定で温度が変動する条 件の実験を 13 ケース行った. 3. モデルパラメーターの同定 3.1 .1 同定の方法 変動入力モデルの同定すべきパラメーターは,式(14)の RmKおよび式(15)のp1,p2である.本論文では,各実験の結 果と計算結果の平均誤差が最小となるモデルパラメーター の値を修正パウエル法12)により同定した. 実験番号 流量の変動パターン 温度の変動パターン A-1,2,3,4 A-5,6,19 A-7,10 A-8,9 A-11 A-12 A-13 A-14 A-15 A-16 A-17,18,20 B-1,2 B-3 B-4 B-5 B-6 B-7 B-8 B-9 B-10 B-11 B-12 B-13 減少 増加 一定 一定(中断) ステップ増加 ステップ増加(中断) ステップ減少 ステップ減少(中断) 減少 → 増加 増加 → 減少 減少増加繰返し 一定 増加 → 減少 増加 減少 減少 → 増加 低下 上昇 一定 ステップ上昇 ステップ低下 低下 → 上昇 上昇 → 低下 減少増加繰返し 一定 上昇 上昇 → 低下 ステップ上昇 上昇 → 低下 低下 低下 → 上昇 ステップ低下 一定 注 実験番号の A, B は用いた実験装置を表し,”減少→増加”は 減少の後,増加する変動を表す.全ての実験で初期槽内温度 をほぼ一様とした. 表-2 パラメーター同定に用いた実験 先に述べたように,槽上部入力時に入力温度が槽内温度 よりも低くなる条件等では,計算結果への混合域深さlmの 実験装置A 実験装置B A-1, A-2, A-3, A-4, A-7, A-8, A-9, A-10, A-13, A-14, A-15, A-17, A-18, A-20 B-1, B-2, B-3, B-4, B-5, B-6, B-7, B-8, B-9 影響は小さい.従って,モデルパラメーターの同定には表 -2 に示した実験を用い,槽下部入力で入力温度が槽内温度 次に,ΘmとΘsの差を二乗した値の実験毎の平均値を求め, よりも高くなる条件および槽上部入力で入力温度が槽内温 最終的にこれらの値の平均値を平均誤差として得た.ここ 度よりも低くなる条件の実験A-5,6,11,12,16,19,B-10, で,無次元温度差を用いたのは,初期温度と入力温度の差 11,12,13 の結果を使用しないこととした. が実験により異なるためであり,異なる温度差の実験につ 実験結果と計算結果の平均誤差は以下のようにして求め いての結果を比較するためである. た.誤差の算出の対象としたのは,水深が 0.2 L から 0.8 L 蓄熱槽内温度は,前進型有限差分法による数値計算によ まで,0.1 L 間隔で7点の槽内温度である.それぞれの水深 り求めた.差分の空間格子間隔は実験槽Aでは 5 mm,実 での槽内温度実測値を式(22)により無次元化し,計算結果 験槽Bでは 4 mmとし,時間ステップは 0.1 sとした.槽内 についても同様に式(23)により無次元温度を求める. 温度の初期条件としては,実験開始時の槽内温度測定値を Θm = ( θ m − θ m ,min Θs = ( θ − θ m,min ) (θ ) (θ m , max m , max − θ m,min − θ m ,min ) ) ・・・・(22) 用い,流入口で測定した三点の入力温度の平均値と測定流 ・・・・(23) 量を入力条件として用いた.噴流の到達深さzj,maxについて ここで,上部入力の場合,θm,minは初期槽内温度実測値の平 均値とし,θm,maxは槽内温度実測値の最大値とした. は,式(17)の右辺の値をz = 0 から空間格子間隔毎に積算し て求め,この積算値が左辺の値よりも大きくなる空間格子 の深さを噴流の到達深さとして得た. 10 1.0 5 0.0 0.0 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 0.8 3 入力温度 流量 0.4 8 0.2 6 4 1.0 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 0.8 4 0.0 0.0 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 0.1 0.1 0.6 0.6 1.0 0.8 0.3 0.6 0.4 0.1 0.3 0.3 槽底からの高さ [m] 槽底からの高さ [m] 0.5 1.0 0.0 0.0 1.2 0.8 変動入力モデル 0.8 換水回数 0.7 0.2 流量 6 0.8 1.4 0.4 8 1.0 一定入力モデル 0.6 10 0.0 0.0 入力温度 3 0.6 10 実験結果 1.6 槽底からの高さ [m] 0.8 12 入力温度 [°C] 2.0 入力温度 入力温度 [°C] 3.0 15 3 4.0 20 流量 [m /h] 入力温度 [℃] 0.8 12 5.0 流量 流量 [m /h] 6.0 25 流量 [m /h] 30 0.5 0.4 換水回数 0.9 0.2 0.4 0.5 0.7 0.2 換水回数 0.9 0.2 0.0 0.0 0.0 0.0 13 15 17 19 21 4 6 8 温度 [℃] 10 12 4 14 6 8 温度 [°C] (a) 実験番号 A-7 10 12 14 温度 [°C] (b) 実験番号 B-1 (c) 実験番号 B-2 図-9 一定入力条件の実験と一定入力モデルおよび変動入力モデルを用いた計算結果 実験槽Aでは,槽壁のコンクリートからの吸放熱の槽内 Rm 0 = 0.8 Arin −0.5 d 0 / L (水平円管入力) ・・・・(25) 温度への影響が比較的大きいので,壁体内の一次元熱伝導 結果的には,混合域深さに関するこれらの実験式に対す を考慮して,槽壁の吸放熱を考慮した槽内温度の計算を行 る入力の分布関数形及び無次元時間と槽内基準密度の算定 った.コンクリートの熱物性値は,熱伝導率を 1.2 W/(m K), 方法が異なることの影響は比較的小さく,同定された式 容積比熱を 2.25×106 J/(m3K)とし,初期条件と境界条件に (24),式(25)の係数の値は,一定入力モデルの式(4),式(5) ついては,初期温度を槽内初期温度に等しいと仮定し,槽 の係数の値とほぼ同程度の値となった. 2 内側の境界面の熱伝達率を 100 W/(m K),外側境界面は完 全断熱とし,一連の実験結果と計算結果の槽内の蓄熱量が 平 均 的 に ほ ぼ 等 し く な る よ う に コ ン ク リ ー ト の 厚 さを 50mmとした. 4. モデルの検証 この章では,表-1 に示した実験のうち代表的な実験の結 果とモデルを用いた計算結果とを比較し,モデルの妥当性 壁の吸放熱を考慮した槽内温度は,実験槽Aでは槽下部 からの低温入力であるため,槽底部の温度はコンクリート と槽内温度の予測精度について検討した結果を示す. 4.1 一定入力条件の場合 床からの放熱により直上の計算分割の温度よりも高い温度 図-9 には,一定入力条件の実験結果と,一定入力モデル となる.この場合は,蓄熱槽の底から温度の逆転が解消す および変動入力モデルを用いた槽内温度の計算結果を示し る位置まで完全混合するものとして計算した. た.実験装置Bを用いた実験では,入力温度は換水回数 0.1 3.2 同定結果 までの間に槽内初期温度から所定の温度まで上昇し,その 表-2 に示した実験の結果による同定の結果,p1=0.7771, 後一定となる.このような入力条件に対して,一定入力モ p2=-0.5004,RmK=0.4987 の値を得た.このときの平均誤差 デルを用いた計算では,計算ステップ毎に入力温度に応じ は 1.16×10-3であった.このモデルパラメーターの計算結 た入口アルキメデス数や完全混合域深さを算出することで 果への影響は比較的小さく,有効桁数を1桁( p1=0.8 , 対応している 4) .変動入力モデルでは入力口付近の一様で p2=-0.5,RmK=0.5)とした値を用いても,平均誤差は 1.17 ない温度分布に対応できることから,変動入力モデルの計 ×10-3 であった.よって,本研究では,モデルパラメータ 算結果は,一定入力モデルの結果に比べて入力口に近い部 ーの有効桁数を1桁とし,混合域深さに関する実験式とし 分の槽内温度が実験結果により良く一致しており,槽全体 て式(24),式(25)を用いることとした. の温度分布の予測精度も高いことが分かる.以上の結果か R m K = 0 .5 ・・・・(24) ら,本論文で提案している変動入力モデルを用いても,一 2.0 10 1.0 入力温度 5 0.0 0.0 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 0.8 18 0.2 流量 16 14 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 0.8 実験結果 0.8 1.4 18 0.0 0.0 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 0.5 0.3 0.6 0.7 0.4 0.0 0.1 0.6 換水回数 0.9 0.4 0.5 0.7 0.3 0.4 0.5 0.7 0.2 0.2 0.1 0.2 換水回数 0.9 0.0 0.0 12 14 16 18 20 1.0 0.8 槽底からの高さ [m] 槽底からの高さ [m] 0.8 0.8 変動入力モデル 0.0 0.3 1.0 0.2 流量 14 1.0 0.6 1.2 槽底からの高さ [m] 0.4 20 0.1 換水回数 0.9 0.6 22 16 0.0 0.0 入力温度 3 0.4 20 1.0 1.6 24 流量 [m /h] 3.0 15 0.6 入力温度 22 0.8 26 3 4.0 20 0.8 入力温度 [°C] 24 流量 [m /h] 26 5.0 入力温度 [°C] 入力温度 [°C] 25 6.0 3 流量 流量 [m /h] 30 0.0 0.0 22 14 24 16 18 温度 [°C] (a) 実験番号 A-13 20 22 温度 [°C] 24 14 26 16 18 20 22 24 26 温度 [°C] (b) 実験番号 B-9 (c) 実験番号 B-13 図-10 槽内温度分布の計算および実験の結果と実験での入力条件(ステップ変動入力実験) 15 2.0 流量 25 25 20 1.0 10 5 0.0 5 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 0.8 1.0 3.0 15 10 0.0 4.0 流量 2.0 入力温度 0.0 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 実験結果 1.6 1.4 1.2 1.2 1.0 0.8 0.6 0.3 換水回数 0.9 0.4 0.0 5 0.7 0.5 18 23 28 温度 [°C] (a) 実験番号 A-1 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 0.8 1.0 換水回数 0.9 1.4 1.0 0.5 0.8 0.6 0.7 1.2 0.7 0.3 1.0 0.5 0.8 0.6 0.3 0.4 0.1 0.2 33 0.0 1.6 0.2 0.0 0.0 13 2.0 1.0 0.0 換水回数 0.9 0.0 0.0 3.0 入力温度 変動入力モデル 0.4 0.1 0.2 4.0 15 10 1.0 5.0 20 1.0 槽底からの高さ [m] 1.4 槽底からの高さ [m] 槽底からの高さ [m] 1.6 0.8 6.0 流量 3 30 5.0 流量 [m /h] 3.0 6.0 入力温度 [°C] 3 20 30 3 4.0 入力温度 [°C] 25 5.0 流量 [m /h] 6.0 入力温度 流量 [m /h] 入力温度 [°C] 30 0.1 0.0 0.0 21 23 25 27 29 温度 [°C] 31 33 35 20 22 24 26 28 30 32 34 温度 [°C] (c) 実験番号 A-17 (b) 実験番号 A-19 図-11 槽内温度分布の計算および実験の結果と実験での入力条件(実験装置Aを用いた任意変動入力実験) 定入力条件での槽内温度を高い精度で予測できることが確 の槽上部からの入力温度が低下する条件の実験結果では, 認できた. 槽内の流入口上部には高温水塊が残り,流入口から温度成 4.2 ステップ変動入力条件の場合 層部にかけて勾配の緩やかな温度分布となり,換水回数 0.7 図-10 には,ステップ変動入力条件での実験結果と計算 のときの温度成層部の温度勾配はやや急となっている.こ 結果を示した.実験 A-13 及び B-9 では,複数ある温度成 のように槽内温度よりも低温度の流入が槽上部よりある場 層の位置や温度勾配がよく一致している.一方,実験 B-13 合,計算値と実験値に若干の差が見られるが,本モデルは 4 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 0.8 0.0 0.0 0.2 0.4 0.6 換水回数 [-] 0.8 実験結果 0.8 18 0.8 0.0 14 1.0 0.0 0.0 0.2 1.0 0.8 0.0 0.1 0.0 0.3 0.4 0.5 0.7 0.2 0.6 0.3 0.5 0.4 0.3 槽底からの高さ [m] 槽底からの高さ [m] 0.6 0.7 0.4 換水回数 0.9 0.2 0.5 0.2 0.7 換水回数 0.9 換水回数 0.9 0.0 0.0 6 0.8 0.1 0.6 槽底からの高さ [m] 0.4 0.6 換水回数 [-] 変動入力モデル 0.1 4 0.2 流量 16 14 1.0 0.4 20 3 3 0.2 流量 16 0.0 0.0 18 0.6 22 流量 [m /h] 0.2 流量 0.4 20 入力温度 24 入力温度 [°C] 0.4 8 入力温度 22 0.8 26 0.6 流量 [m /h] 3 流量 [m /h] 0.6 10 入力温度 [°C] 入力温度 [°C] 24 入力温度 6 0.8 26 0.8 12 8 10 温度 [°C] 12 14 (a) 実験 B-6 0.0 14 16 18 20 温度 [°C] 22 24 26 14 16 18 20 22 24 温度 [°C] (b) 実験 B-8 (c) 実験 B-12 図-12 槽内温度分布の計算および実験の結果と実験での入力条件(実験装置Bを用いた任意変動入力実験) 20 4.3 任意変動入力条件の場合 図-11 には,実験装置Aを用いた実験の結果を示した. 0.6 3 なっていることが分かる. 0.8 入力温度(上部入力) 入力温度 (下部入力) 16 流量 [m /h] 24 入力温度 [℃] ステップ変動入力条件においても精度の高い予測が可能と 0.4 12 0.2 流量 流量が単調減少し,入力温度が低下する条件の結果(A-1) 8 0 0 及び同様の入力条件の実験 A-17 の換水回数 0.3 までの温度 分布についての計算結果は,非常によく実験結果に一致し 0.8 0.6 勾配が急となっているが,計算結果ではこの部分の温度勾 槽底からの高さ [m] この条件の実験 A-19 及び実験 A-17 の換水回数 0.3 から 0.5 部の入力側端部分が入力の影響により温度が低下し,温度 90 120 時間 [min] 150 16 は,入口アルキメデス数の低下により混合域が拡大する. A-17 において換水回数 0.5 のとき,実験結果では温度成層 60 0 ている.一方,流量が増大し,入力温度が上昇する条件で の結果では,計算結果と実験結果に若干の差がある.実験 30 48 176 79 0.4 127 蓄熱槽の入力位置 111 分 0.2 槽上部 槽下部 実験結果 変動入力モデル 流入出口での流れの向き 配が緩やかであり,この影響を受けて以降の温度分布も実 験値と若干の差を生じている.しかし,いずれの実験でも その差は僅かである.図-12 には,実験装置Bを用いた実 験について示した.流量が変動する入力条件の実験 B-6 で は,換水回数 0.1 のときを除いて,換水回数 0.5 以降の2 0 8 10 12 14 16 18 20 22 24 温度 [°C] 図-13 槽内温度分布の計算および実験の結果と入力条件(実験 途中で入力の位置を槽上部から槽下部へ切り替える実験) 段目の温度成層が形成される点でも,計算値は実験値とよ 任意変動入力時の槽内温度分布を十分な精度で予測できる く一致している.入力温度が変動する条件の実験(B-8 , ことが確認できた. B-12)では,槽上部から入力口付近の槽内温度よりも低温 4.4 蓄熱放熱が切り替わる場合 度の入力がある場合を除いて,実験結果と計算結果の槽内 温度分布は非常によく一致している. 図-13 には,実験開始 113.5 分後(換水回数 0.72)に入力 を槽上部高温入力から下部低温入力へ切り替えた実験の結 以上の結果から,入力条件によっては実験と計算結果に 果と本モデルを用いた計算結果を示した.なお,この実験 若干の差が見られるが,変動入力モデルを用いることで, については表-1 には示していないが,実験装置Bを用いて 行った実験である.入力温度と位置が切り替わった後の槽 三重大学サテライト・ベンチャー・ビジネスラボラトリー 内水温の計算では,一様でない槽内水温を初期槽内水温と の実験装置を用いて行った.記して謝意を表する. することになる.このように入力位置が切り替わる条件で も,本モデルを用いた計算結果は実験結果とよく一致して 記号 おり,本モデルは初期槽内水温が一様でない場合にも対応 A Arin c d0 g L l lm l0 lm0 lout,h しており,蓄熱及び放熱の繰り返し運転にも適用できると いえる. 従って,本モデルを用いることによって,一定入力条件 やステップ変動入力条件,初期槽内水温が一様でない場合 を含めて,実際の運転条件下で想定されるほとんどの入力 条件について槽内温度分布の推移の予測が可能となったと 考えている. 結 論 温度成層型蓄熱槽を用いた蓄熱式空調システムの実運転 条件下での槽内混合性状を考慮した最適設計や最適熱源発 停制御を可能とするため,本論文では,蓄熱槽への入力温 度および流量が任意に変動する条件に対応した槽内混合モ デルを提案した.本論文の内容を以下にまとめる. (1) 変動入力条件に対応した槽内混合モデルは,定流量・ 温度ステップ入力条件に対応した槽内混合モデル(一 定入力モデル)を拡張したモデルである. (2) 本モデルは,入力条件の履歴によらず,その時点での 入力条件と槽内温度分布により計算できるため,計算 アルゴリズムが単純である. (3) 変動入力条件に対応した槽内混合モデルに含まれる三 つのモデルパラメーターを本研究で行った実験結果を 用いて同定した.その結果,RmK =0.5 および水平円管入 力の場合の実験式 Rm0 = 0.8 Arin-0.5 d0 / L を得た. (4) 一定入力条件の実験結果と本モデルおよび一定入力モ デルを用いた計算結果との比較を行い,変動入力モデ ルを用いても,一定入力条件での槽内温度を高い精度 で予測できることが確認できた. (5) 変動入力条件の実験結果と本モデルを用いた計算結果 とを比較し,入口アルキメデス数が低下し,入力水に よる槽内の混合が促進される条件や槽上部から槽内水 よりも低温度の入力がある条件等では,実験と計算結 果に若干の差が見られるが,本モデルを用いることで, 十分な精度で槽内温度分布を予測できることを確認し た.また,初期槽内水温が一様でない場合にも対応し ており,蓄熱及び放熱の繰返し運転にも適用できるこ とを確認した. 謝 辞 本研究は,文部 科学省科学研究費補助金(若手研究 B 14750492)の助成を受けて実施した.また,実験の一部は : : : : : : : : : : : lout,v : : qin R : : Rm : Rm0 : R0 RmK, p1, p2 : : RK t : t* : U : uin : : up V : z : lj,max δ(x) ∆ρ : : : Φ κ0 θ θin θ0 ρ ρin ρ0 Ω : : : : : : : : : 槽水平断面積 [m2] 入口アルキメデス数 [-] 水の比熱 [J/(kg K)] 円管流入口直径 [m] 重力加速度 [m/s2] 槽水深 [m] 完全混合域深さ [m] 混合域深さ [m] 初期完全混合域深さ [m] 初期混合域深さ [m] 水平円管流出口中心の流入口側槽端からの垂直距離 [m] 垂直円管流出口の流入口側槽端からの垂直距離 [m] 流入流量 [m3/s] 完全混合域無次元深さ(=l / L)[-] 混合域無次元深さ(=lm / L)[-] 初期混合域無次元深さ(=lm0 / L)[-] 初期完全混合域無次元深さ(= l0 / L)[-] 変動入力モデルのモデルパラメーター [-] 一定入力モデルのモデルパラメーター [-] 時間 [s] 無次元時間 [-] 槽内水平断面流速 [m/s] 流入流速 [m/s] 噴流流速 [m/s] 槽容量 [m3] 流入口側槽端(槽水面または槽底面)からの垂直距 離 [m] 垂直密度噴流の到達深さ [m] ディラックのデルタ関数 密度差 (槽下部入力:ρin-ρ0 槽上部入力:ρ0-ρin)[kg/m3] ) 鉛直方向単位長さ当りの流入流量 [m2/s] 温度拡散係数 [m2/s] 槽内温度 [˚C] 入力温度 [˚C] 槽内基準温度 [˚C] 槽内水密度 [kg/m3] 流入水密度 [kg/m3] 槽内基準密度 [kg/m3] 鉛直方向単位長さ当りの流出流量 [m2/s] 参 考 文 献 1) 中島康孝:蓄熱槽の熱的重みに関する研究(その1~2),日 本建築学会論文報告集,No.199 (1972),pp.37-47,No.200 (1972), pp.75-83 2) 松平秀雄・阪倉康男・宮部喜代二:蓄熱水そうの蓄熱量の解 析(3),空気調和・衛生工学,47-5 (1973-5),pp.387 , 3) 辻本誠・相良和伸・中原信生:蓄熱槽に関する研究(第 1 報) 空気調和・衛生工学会論文集,No.16 (1981-6),pp.23-35 4) 相良和伸・前田茂哉・浅野勝弘・中原信生:蓄熱槽に関する 研究 第4報,空気調和・衛生工学会論文集,No.30 (1986-2), pp.9-19 5) 宮武修・永渕尚之・須賀信明・田中逸夫:温度成層型蓄熱水 槽の内部特性に関する研究(第1報)温水入力の場合の温度 成層化過程,空気調和・衛生工学会論文集, No.32 (1986) , pp.35-43 6) 宮武修・永渕尚之・田中逸夫:温度成層型蓄熱水槽の内部特 性に関する研究(第2報)温水入力の場合の熱的特性,空気 調和・衛生工学会論文集,No.33 (1987),pp.115-123 7) 加藤祐一郎・相良和伸ほか:温度成層型蓄熱槽の任意変動入 力対応モデルに関する研究,空気調和・衛生工学会学術講演 会講演論文,III (1994-10),pp.1557-1560 8) 加藤祐一郎・相良和伸ほか:温度成層型蓄熱槽の任意変動入 力対応モデルに関する研究(その 2)緩やかな変動入力・断続 的入力の場合と実稼動システムの実測結果による検討,空気 調和・衛生工学会学術講演会講演論文,II (1995-10),pp.545-548 9) 相良和伸・辻本誠・中原信生,”蓄熱槽に関する研究(第 2 報) 数値シミュレーションによる成層型蓄熱槽の槽内混合機構に ついての研究,空気調和・衛生工学会論文集,No.17 (1981-) 10) 内藤和夫・中村安弘・森本茂夫・高根俊章:温度成層した低 レイノルズ数乱流場の数値解析,空気調和・衛生工学会論文集, No.23 (1983-),pp.71-79 11) 相良和伸・山羽基・浅野勝弘・中原信生:蓄熱槽の特性に関 する研究(その 10)槽内熱拡散モデルにおける回帰式の理論 的考察,日本建築学会大会学術講演梗概集,1983,pp.595-596 12) 嘉納秀明著:システムの最適理論と最適化(1995),pp.81-84, コロナ社 (平成 16 年 7 月 22 日 原稿受付) Study on Mixing Model for Temperature-stratified Thermal Storage Tank under Variable Input Conditions in Actual Operation by Hiroaki KITANO*1, Takeshi IWATA*1 and Kazunobu SAGARA*2 Key Words : Numerical Analysis, Temperature-stratified Thermal Storage Tank, Variable Input Condition, Mixing model Synopsis: For design of thermal storage and operation control calculation for water temperature in the thermal storage tank of HVAC system with thermal storage tank, a prediction method under variable input conditions such as actual operation of thermal mixing behavior in the storage tank under operating conditions. And three parameters which are included in the condition is required. In this paper, a mixing model for mixing model were identified from experimental results with temperature-stratified thermal storage tank is presented. The variable input conditions. The Experiments were performed by mixing model is modified from the mixing model which is using two equipments with different sizes of thermal storage based for the conditions that input water temperature and flow tank. It was found that calculated results by using the mixing rate are kept constant and the initial temperature in the storage model are agree well with the experimental results with variable tank is uniform. Our mixing model is applied to numerical input conditions. *1 Faculty of Engineering, Mie University, Member *2 Graduate School of Engineering, Osaka University, Member ( Received July 22, 2004 )