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従来の10分の1の超低消費エネルギーでデータ伝送可能なレーザ

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従来の10分の1の超低消費エネルギーでデータ伝送可能なレーザ
従来の10分の1の超低消費エネルギーでデータ伝送可能なレーザの開発に成功
――マイクロプロセッサチップ内への光配線導入に大きく前進
NTTは,毎秒10ギガビット(100億ビット)の信号を,
フォンの爆発的普及に伴い,社会で扱う情報量は,2025年
世界でもっとも小さな消費エネルギーで伝送可能な超小型半
には200倍になると見込まれています.また,今後,クラウ
導体レーザ(LEAPレーザ)の開発に成功しました.1ビッ
ド技術の進展やスーパーコンピュータの登場により,コン
トのデータ転送に必要なエネルギーは従来の半導体レーザの
ピュータの計算速度とデータの処理量が飛躍的に高まるにつ
れて,消費電力も大きく膨らみ,2025年には情報処理を担
10分の1以下の5.5フェムトジュールです.
この技術を利用して,現在は電気配線を用いているマイ
クロプロセッサ間やマイクロプロセッサ内のデータ転送を光
うサーバ・ルータなどのIT機器の総消費電力量は5倍にな
ると試算されています.
配線に置き換えれば,サーバやルータなどのIT機器で大きな
NTT研究所では,これらIT機器の消費電力と発熱の問
消費電力を使っているマイクロプロセッサの消費電力を4割
題を抜本的に解決するため,IT機器を構成する部材の中で
程度削減できます.
もっとも電力消費が大きいマイクロプロセッサの消費電力を
本成果は,2013年5月26日に英国科学雑誌「Nature
Photonics」のオンライン速報版で公開されました.なお,
低減するために,データ通信に光配線技術を適用する研究
を続けてきました.
本成果の一部は,N E D O 助成事業「C M O S プロセッサ
これまでに,LEAPレーザを開発し,世界初の電流注入
上フォトニックネットワークチップの研究開発」によるもの
による室温環境(25∼30℃)での連続的な動作(しきい値
です.
電流:390マイクロアンペア)に成功しましたが,実際に光
技術をマイクロプロセッサ間のデータ転送等に適用するには,
■研究の背景
しきい値電流の削減と超低消費エネルギー動作の実現,お
近年,FTTHなどのブロードバンドサービスやスマート
よびIT機器内部の温度環境下(80℃)での動作が重要な
活性層
p型領域
n型領域
トレンチ
1マイクロメートル
(走査型電子顕微鏡像)
(a) 今回作製したレーザ
発振直後
出力導波路
100 μA の電流注入
LEAPレーザ
(いずれも赤外線カメラ像)
(b) レーザ発振の様子
図 LEAP レーザ
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NTT技術ジャーナル 2013.9
課題となっていました.
に,これまで面発光レーザで得られていた消費エネルギーの
■研究の成果
10分の1以下の5.5フェムトジュールで1ビットのデータ伝
NTT研究所では,しきい値電流の削減と超低消費エネル
送が可能なことを確認しました.このことは,世界で初めて
ギー動作の実現のためにはレーザの漏れ電流の削減が重要
コンピュータコム(コンピュータのボード内の情報通信)に
であることを明らかにし,レーザと基板の間に電流ブロック
適用可能な半導体レーザが実現できたことを意味します.
層とフォトニック結晶の内部に電流ブロック用の溝を形成し
たLEAPレーザを作製しました(図).これにより,半導体
◆問い合わせ先
レーザとしては,世界でもっとも小さな4.8マイクロアンペア
NTT先端技術総合研究所
のしきい値電流を実現しました.さらに,レーザ活性層にア
広報担当
TEL 046-240-5157
ルミニウムを含む活性層を用いることで最高95 ℃までレー
ザ発振することを確認しました.
さらに,毎秒10ギガビットの信号でレーザを変調した場合
E-mail a-info lab.ntt.co.jp
URL http://www.ntt.co.jp/news2013/1305/130524a.html
技術の融合により飛躍
松尾 慎治
NTTフォトニクス研究所
研究者
紹介
先端光エレクトロニクス研究部
ナノ構造光機能デバイス研究グループ
主幹研究員
半導体レーザは,ゲイン媒質を反射鏡で挟んだ共振器構造から構成され,共振器内で正帰
還が起こることでレーザ発振します.今回報告したフォトニック結晶レーザは,NTTフォト
ニクス研究所で蓄積してきたInP系半導体レーザとNTT物性科学基礎研究所で蓄積されて
きたフォトニック結晶の技術が非常にうまく融合し,まさに正帰還を得ることで短期間に
大きな成果を出すことができました.
NTTフォトニクス研究所で光注入によるフォトニック結晶レーザを初めて作製したのが
2008年の秋でした.すでに他研究機関でフォトニック結晶レーザが作製されてから約10
年がたっており,大学を中心に優れた成果が出ていました.我々も,他の研究機関同様の
構造でレーザを作製してみましたが光注入により室温連続発振は得られたものの出力光強
度は非常に弱く,根本的に構造を見直すことが必要だと感じました.そこで,作製上は非
常に困難だと思われましたが微小な活性層をInPで埋め込む,埋め込みヘテロ構造の作製
に取り組みました.この場合,フォトニック結晶共振器の設計変更も同時に必要になりま
すが,どちらもこれまでに蓄積した技術を基に非常にスピーディに課題をクリアすること
ができました.
今後は,このレーザをボード内やチップ内の光配線のキーデバイスとして実用化していくことが目標ですが,そのためには,シリコ
ンフォトニクス技術を用いたシリコンの光導波路との集積や微弱な入力光強度で高速に動作する受光素子の開発などが重要です.
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