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2016年2月、3月号(PDF/1.04MB)

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2016年2月、3月号(PDF/1.04MB)
F R OM
News
第 93 号(2016 年 2 月&3 月号)
2016 年 3 月 29 日発行
JICA ベトナム事務所作成ポリシーペーパー
「草の根技術協力事業~ベトナムに根付く活動を実施
するために~」の完成
JICA 草の根技術協力事業(以下、草の根技協)とは、
国際協力の意志を持つ日本の NGO、大学、地方自治体及び
公益法人等の団体による、開発途上国の地域住民を対象と
した協力活動を、JICA が政府開発援助(ODA)の一環とし
て、促進し助長することを目的に実施する事業である。
ベトナムでは 2002 年の開始から、保健医療の支援、農
業・農村開発、給排水システムの改善、自然災害に対する
コミュニティーの防災能力の強化、環境管理の支援、裾野
産業サポート等を目的として、様々なセクターにおける全
81 件(2016 年 3 月現在。準備中も含む)の事業が実施さ
れてきた。その中には、地域住民の生活向上に直接繋がっ
たケースや、終了後も現地実施機関によって活動が継続・
普及されているケースなど、ベトナムの現地コミュニティ
ー・村落レベルの地域住民に貢献している事例も多く見ら
れる。これまでこういった草の根レベルの事業について、
その成果を広く援助関係者に知ってもらう機会がなかった
ため、JICA は終了事業のうち活動が継続・普及している優
良事例を抽出するための調査を実施(2015 年 7 月~2016
年 3 月)した。標題のポリシーペーパー(日・越・英語)
は、調査の結果として、事業の持続性を支える7つの要
素、またそれらを確保するための重要な視点として、「活
動のための 11 のヒント」(次ページの図のとおり)を抽
出し、詳細に紹介している。
2016 年 3 月 9 日に行われたポリシーペーパー発表セ
ミ ナ ー“ How to Ensure Sustainability in JICA ’s
Technical Cooperation Project at Grass-roots Level”は、優良事例への調査を取りまとめ、ベトナムで
の地域開発・草の根レベルの開発事業を実施中、また
は今後始めようとしている関係者に、広く調査結果を
報告し参考にしてもらおうとするものである。
▲3 言語によるポリシーペーパー
また、セミナーでは、「活動のための 11 のヒント」の
1 つである住民参加型コミュニティー開発の手法を詳細に
案内するものとして、フエ農林大学の Le Van An 教授率
いる研究チームが策定した、ベトナムでのコミュニティ
ー開発実践者のためのマニュアル “Community Development – Guidance for Community Development Worker ”
の紹介も同時に行われた。
今月のトピックス
出席した農業農村開発省の代表者からは、「ポリシーペ
ーパーで紹介された 7 つの要素と 11 のヒントは、JICA 草
の根技術協力事業のみならず、ベトナムで実施される他の
事業においても充分に活用できるものである」とのコメン
トを受けた。
JICA は草の根レベルの事業の持続性確保のためのヒン
トを提供することで、受益者の持続的裨益を主目的とする
セミナーには、中央省庁・地方省庁の開発担当責任 新たな開発アプローチの契機となることを期待している。
者・担当者、他ドナー、日越の NGO や大学、学識経験者
(大金正知:援助協調専門家)
等 100 名以上が参加し、パネルディスカッションや質疑
応答の場面では、2 つの資料の有効性や活用方法について
※セミナーで発表されたポリシーペーパーは、以下のリンクよりダウン
積極的な意見交換がなされた。草の根レベルの事業にお
ロードいただけます。
いて、これら参加者との間で、実務者でしか持ち得ない
実体験を通じて、持続的開発を引き出すための要因と、
http://www.jica.go.jp/vietnam/office/others/pamphlet/p
その中で特に本質的に何が重要かについて、開発現場に
端を発した率直な意見交換が行われたのは大変有意義で olicy_paper.html
あった。
事業の持続性を支える7つの要素
要素を確保するための重要な視点(活動のための11のヒント)
▲
日本側・相手国側実施団体の交流活性化
コミュニティー開発のためのマニュアル
ヒント①:緊密なコミュニケーションによる活動プロセスの共有
ヒント②:日本・相手国側双方の実施団体の役割やメリットを意識した活動の計画・実施
有効性が実証された「モデル等」
(事業終了後に継続させるモデル、技術、手法等)
ヒント③:現地の状況に合わせた日本の「モデル等」の改変
ヒント④:受益者のニーズと関心の把握およびそれを満たす活動計画
相手国側実施団体や受益者の継続の意思
ヒント⑤:継続させる「モデル等」の有効性の実証
資金または資金確保の手段
ヒント⑥:現況に合わせた活動計画の柔軟な変更
ヒント⑦:参加型アプローチによる受益者の自発的な活動参加促進
ヒト(能力のある人的資源)
ヒント⑧:持続的に活動を継続するための資金確保の仕組み
モノ(入手できる資材・機材)
ヒント⑨:事業終了後を見据えた人材の能力開発
ヒント⑩:外部に依存しない在来資源や技術の活用
継続のための仕組み
ヒント⑪:事業終了後の事業成果の継続・拡張のための仕組み作り
(因果関係:ヒントに基づく活動の成果)
今月のトピックス
News ベトナム事務所
JICA ベトナム事務所に藤田安男所長着任
3 月 14 日、藤田安男(ふじた・やすお)JICA ベトナム事務所長が着任しました。
ガバナンス
(技協)ホーチミン国家政治学院及び行政学院公務員研修実施
能力強化支援プロジェクト終了時評価実施
1 月 10 日から 23 日にかけて、ホーチミン国家政治学院
(HCMA)及び国家行政学院(NAPA)公務員研修実施能力強
化支援プロジェクトの終了時評価を実施しました。
本案件では、HCMA において、①幹部に対する研修プロ
グラム実施運営能力の強化、および②NAPA にて公共政策
大学院プログラム策定能力強化にかかる技術支援を行うこ
とにより、幹部・公務員の能力開発を促進する枠組の強化
を図り、もって、幹部・公務員の能力向上に寄与すること
を目標に活動を実施してまいりました。
案件開始から約 2 年半が過ぎ、HCMA において終了時評
価段階までに実施した各種研修への参加者は延べ 1,273 人
に上り、また NAPA における公共政策大学院コース(MPP)
作りも支援した 10 科目の準備がほぼ整いました。案件実
施期間内には、カウンターパート機関であるホーチミン国
家政治行政学院から国家行政学院が分離するなど、プロジ
ェクト運営に影響を及ぼす大きな変化もありましたが、何
とか所期の活動目標を達成する見込みという評価になりま
した。
特に HCMA への協力では、先ごろ 1 月に行われたベトナ
ム共産党大会人事もにらんで実施された幹部育成プログラ
ム「国家指導者候補者研修」への支援を通じ、ベトナムの
今後を担う指導者層に様々なセクターにおける日本の経験
をシェアすることができました。同研修プログラムから訪
日研修に参加した 113 名中、33 名はベトナム共産党の最
高意思決定機関とも言える中央委員(補欠含む:同委員及
び補欠は総勢 200 名)に選ばれるなど、中堅から党トップ
レベルに至るまでの幅広い対象に研修を実施することが出
来たのは、このプロジェクトの大きな特徴でした。ハノイ
で、日本で、両国の幹部同士がそれぞれの国が抱える課題
を議論し合う場面がたくさん見られ、こういう中で生まれ
た両国行政官、リーダー間のつながりは、このプロジェク
トがもたらした見えない「成果」と言えるでしょう。
もちろん研修の効果というのはすぐに出るものとそう
でないものがあります。NAPA での MPP も本格的な実施コ
ース実施はこれからです。プロジェクト終了時評価は終わ
りましたが、今回プロジェクトへの参加者、そして今後プ
ロジェクト成果に触れる更なるベトナム幹部・公務員が、
5 年後、10 年後にどういうベトナムを作り出していけるの
か、そういう視点での更なる「評価」も必要になると思い
ます。
(今井淳一:
JICA 専門家
業務調整・研修管理)
脆弱性への対応
(技協)「新卒看護師のための臨床研修制度強化プロジェクト」
R/D 署名(2 月 2 日)
JICA とベトナム保健省科学技術訓練局との間で「新卒
看護師のための臨床研修制度強化プロジェクト」の R/D
(Record of Discussion: 政府間技術協力プロジェクト合
意文書)の署名式が行われました。
本プロジェクトは、ビンフック省、ディエンビエン省、
ビンデイン省、ドンナイ省のほか、ハノイ市バックマイ病
院およびセントポール病院の新卒看護師を対象に、看護師
の質を高め、技術水準を全国的に統一する目的で、新卒看
護師の臨床研修の標準カリキュラム策定及び指導者の養成
に協力を行います。
プロジェクトは 4 年間の協力期間で、同年 5 月に開始を
予定しています。
その他
草の根技術協力「キエンザン省における水環境改善のための人
材育成プログラム」の最終報告会の開催(1月 20 日)
2016 年 1 月 20 日「キエンザン省における水環境改善の
ための人材育成プログラム」において、キエンザン省のプ
ロジェクトメンバーによる最終報告会を行いました。
この報告会はこれまでの研修の成果をキエンザン省の
意思決定機関である人民委員会に報告し、キエンザン省に
おける水環境の課題や改善の必要性を広く共有することを
目的として行いました。実施団体である神戸市の関係者な
どに加え、人民委員会からは副委員長他 3 名が参加しまし
た。
報告会の中で、プロジェクトメンバーが水環境改善のた
めの具体的な方法について説明を行い、特に本事業で作成
した水環境改善行動計画を実行するために、人民委員会が
各関係機関へ働きかけることを訴えました。
これを受けて副委員長からは、「この 3 年間の研修に
より、キエンザン省の研修メンバーの能力も向上した。今
後は作成した水環境改善行動計画に基づいて、事業を実施
していくことを約束する。事業実施の中心となるのは、計
画投資局とし、6 か月に 1 回会議を開催し、省人民委員会
に報告するように指導する」とのコメントがありました。
今後は、水環境改善行動計画が着実に実施され、水環境改
善に向けた取り組みが広がることが期待されます。
(神戸市建設局下水道部計画課)
ベトナム住宅セミナーの開催(1 月 18 日)
2016 年 1 月 18 日、オペラハウスにて、JICA と三菱東京
UFJ 銀行様の共催で「ベトナム住宅セミナー」を開催致し
ました。ハノイ市及びホーチミン市は都市化の進展等によ
り、住宅需要は増加傾向にあります。住宅の購入は、家具
や家電等への消費にもつながり、大きな経済波及効果が期
待できます。他方、住宅金融のような住宅政策は、ベトナ
ムでは貧困層を対象としてしか実施されておらず、改善の
余地が大きい分野と考えられます。また、住宅金融や建築
技術等の日本の知見を活かせる分野でもあります。
講演者:ベトナム社会科学院経済研究所 Thien Dinh Tran
所長、野村総研様、前田建設様、B&Company、Vo Trong
Nghia 氏(建築家)
F R OM
News
JICA では現在、住宅分野の政策提言を行うための調査
を実施しており、その報告の場としてこのセミナーを開催
しました。ベトナム政府や日越民間企業等から合計 100 名
にご参加頂き、(貧困層のみならず)中間層も対象とした
住宅政策が重要であること、日本の建築技術(PC 工法)
がベトナムでも大いに活用可能であること等について説明
させて頂くと共に、地場銀行による住宅ローンの提供促進
をベトナム政府が政策として支援するべきとの提言を行い
ました。JICA では引き続き調査を進め、更なる具体化を
してく予定です。
ダナン市にて障害児に関わる教員ら向けの研修会開催(2 月 19 日、20 日)
障害児者支援分野で活動中の JICA ボランティア 6 名
が、ダナン市にあるグエンディンチエウ特別支援学校から
の要請を受け研修会を実施しました。本研修は「障害児へ
の正しい理解と多様な支援方法を伝えること」を目的に、
それぞれボランティアの専門性を生かした内容で実施さ
れ、市内の学校から教員や保護者等約 50 名が参加しまし
た。
法を紹介しました。また授業後の振り返りの中でも作品を
褒め、自由な発想、個性をいかした表現を認めることで、
「楽しい!もっと描きたい!」という気持ちを育くむこと
の重要性を伝えました。音楽の授業研修では、動物になり
きって体を動かすアクティビティを行い、体を使ってリズ
ムを学ぶ方法や、遊びながら音楽に参加できる歌など、生
徒全員が参加できる授業の工夫を紹介しました。
知的障害・自閉症についての講演では、障害の定義、
0~5 歳までの発達段階の特徴とそれに沿った指導方法を
写真や授業で利用する道具を用いて紹介、自己肯定感を高
められるような指導の必要性や、自閉症児に対する視覚的
支援の重要性を説明しました。理学療法についての研修で
は、教員や保護者を対象に、肢体不自由児への訓練実習指
導を行い、実習後に児童の様子とリハビリ方法について、
参加者に問いかけながら振り返り解説しました。特別支援
学校で働く教員の方々にとって、障害の専門的知識や理学
療法を学ぶ機会は少ないため、貴重な機会になりました。
「児童 1 人 1 人の表現の違いを認め」「のびのびと自
由に楽しむことを大切にする」そうした形の情操教育は、
感性や情緒、個性を養います。しかしそれらが適切に実施
されている特別支援の教育現場は多くない現状です。実技
実演が多く取り入れられた本研修に、参加教員等は意欲的
に取り組んでおり、今後の授業で活用されていくことが期
待されます。
体育では、サーキット運動、パラバルーン、ドッヂボ
ールを紹介しました。各参加者が教育現場に持ち帰られる
よう、試合から審判まで参加者を巻き込み実技指導しまし
た。美術については、専門を持つ隊員により、最終的にで
きあがった絵だけでなく、描く過程まで教員がしっかりと
確認し、楽しんで活動に参加できる工夫を凝らした授業方
~安心して暮らせる社会・選択肢の多い未来社会を目指して~
子供たちが自分の意思そして能力により、自らの希望する
道を進める社会を目指して、JICA はベトナムと方々と開発
協力という分野に力を注いでいる。我々の仕事の成果が発現
されるためには、まず、ベトナムの現状を正確に理解するこ
とが必要。さらに正しい理解に基づきアプローチは正しいか
を常に検証していくことが大切である。

インフレ率を上回る賃金上昇、生産性改善を賃金が上
回る。

ベトナムが依拠する FDI 牽引戦略が他国と比べて魅力
的であるためには賃金水準はどうであるべきか? TPP
参加国としての有利性を最大限活かすことが当面の鍵
となる。

農業における成長率の低迷をいかに回復、引き上げる
のか? JICA は日越農業対話の一環として、ゲアン省
とラムドン省をモデル地域に選択し、前者については
契約栽培方式の社会的に確立すること(これは契約を
守るということ)、後者については 6 次産業化を核と
した 4 つの目標と 8 つの戦略アプローチを共同で構築
し、各々実施段階に入った。両省における鍵は、民間
企業の参入拡大である。

さらに、厳しい担保査定により農家は投資資金へのア
クセスが非常に難しい。ラムドンでは農業ビジネス金
融の新しいモデルつくり、Good Business Plan の策
定、それによる担保価値の向上、売却市場育成のため
の官民による情報集積の仕組み、保証の活用などに取
り組んでおり、これが成功すれば全国への展開を図
る。
1. 現状認識とその先の未来(概論)

人口ボーナス期に労働集約産業は一定の発展をした
が、その際に増加した貯蓄が、資本集約的産業に投
資され、産業構造が高度化し、全要素生産性が成長
の源泉になるという状況を生み出す政策が機能して
いない、といえる。ただしベトナムではいまだ農村
人口が 70%を占めており、農村人口が都市部に移住
し製造業に従事していくことを促進する諸政策が機
能すれば、人口ボーナスが統計的に終了しても成長
の余地は十分残されているのではないか。
2. 経済分野への課題と対応

製造業では外資への依存度合いが強く、かつ外資と
国内資本のリンケージがきわめて希薄。

出資 100%の外資が増加している。合併企業により経
営ノウハウ、技術が共有され、マーケットでの競争
にさらされることが国内資本企業の成長には必要。
しかし、投資金額では SOE が依然として最大で、一
SOE あたりの資本額、固定資産額は増加しており、小
規模な SOE のみ民営化が進んでいると見受けられ
る。トップ 100 の企業を見ると民間企業は金融、サ
ービスに集中しており、製造業では 7 社のみ。関連
省庁が SOE の分野に関わる政策策定、規制、また所
有し運営をも担うため、利益相反が生じる可能性が
高く、かつ、SOE に資源が集中しやすことから民間資
本が平等な環境での競争が困難。国家資本投資公社
( State Capital Investment Corporation ) が SOE
の株式保有の代表者となること、情報の公開等によ
りコーポレートガバナンスを改善すること、省庁と
SOE の関係を切り離すことが、平等な環境での競争、
民間企業が発展する環境の基本。

公共投資の非効率性も問題。JICA が支援したカイメ
ップ・チーバイコンテナターミナルは、大型船の受
け入れが可能な深度を持っている。しかし現状では
ホーチミン市の河川港が優先されているため利用率
は低い。さらに投資計画を見ると、カイメップエリ
アは 2025 年までの需要に対応可能、HCM の河川港は
2030 年までの需要に対応可能だが、現行規模を引き
上 げ る 投 資 計 画 が 策 定 さ れ て い る 。
Decentralization が進みすぎた結果、地域としての
最適なインフラの整備を検討するメカニズムが失わ
れていることが原因で公共投資の効率を引き下げて
いる。2014 年、2015 年の予算法改正、公共投資法の
整備により、地域経済へのリターンを最大化するこ
とを基準とし、効率の高い投資案件のみが選定され
ることを期待するとともに、そのための政策決定プ
ロセスが透明化されることを期待する。
3. Institutional Reform の現状と課題

ベトナムの輸出依存度は、大変高く、世界経済との
Integration の影響が大きい。

ベトナムはいわゆる高度技術を要する製造業の割合が
インドネシア、マレーシアに比べ明らかに劣後し、フ
ィリピンと同様の水準。TPP は貿易依存度の高いベト
ナムにとって GDP を引き上げる効果が非常に高いが、
中身が問題。労働集約的産業の代表である衣料・繊
維・皮革産業は大幅な成長が望まれる一方、同産業に
労働者が吸収された場合、賃金が上がるため、製造業
の国際競争力が劣化し、生産が減少すると予測され
る。AEC も米や建設資材は成長するものの、製造業に
はマイナスと予測される。

産業化国家を目指すには、農村からの継続的な都市部
への人口移動による、労働供給量の維持、人材育成に
よる生産性の向上という政策が不可欠。都市部におけ
る都市開発・環境改善・保健サービスの分野も課題。

ASEAN 各国との比較では、政治の安定性を除き、
Regulation Quality, Rule of Law, Accountability, Corruption, Government Effectiveness は非常
に低い。JICA は 1996 年から司法分野での支援を続け
ているが、Efficiency of Legal framework in setting dispute と Judicial Independence は 2010 年以
降ほぼ悪化し続けている

JICA は、不整合な法律文書の是正、統一的な運用の
促進、国際紛争処理能力向上といった課題に正面から
取り組み始めたところである。

ベ ト ナ ム で は Government effectiveness 指 標 が
2008 年から 2013 年にかけて低下している。公務員
の Discipline は平等かつ国の長期的な便益を考えて
の判断であるべきであるのに、現実には個人の利
益・安全が Discipline となっているのではないかと
いうことである。 JICA としては、1)省庁間の調
整を促す、2)契約書にベトナム特有のリスクを明
記することで透明化する、3)国際基準と国内規定
の調和化を図ることに取り組んでいる。

汚職、あいまいな所有権、解釈を生み出す法内容、
そして人的ネットワークの重要性などから、ベトナ
ムは全 175 か国中、腐敗度で 119 位という不名誉な
結果にある。因果関係を明確にするのは難しいが、
法の執行問題、非効率な行政、汚職が、ビジネス環
境を著しく厳しいものとし、資源の配分に歪みを生
じさせている。

4.
これに対し、我々は能力の高い地方省でモデルトラ
イし、その成功が近隣省に広がり、中央政府の政策
となっていくというアプローチを試みている。
日々、ビジネス、農業という現実的な問題に直面し
ている地方省政府のほうが、現実を見据え、解決策
を模索し、Plan→Do→Check→Action というサイク
ルを実際に回しているため、協力効果が高いであろ
うとの考えに基づく。地方政府を対象とした協力の
一例として、ハーナム省で実施中の産業政策に関わ
る政策対話に基づき支援を計画、具体化していくと
いうものがある。地方省の投資家への 10 のコミット
メントの履行状況を判断し、実行を図るものの制約
がある場合、その解決に協力していくという内容。
まとめ
ベトナムは中所得国の罠、体制移行の罠、
Integration の罠に直面している。罠に陥らない、
罠から脱出するためには、民間資本中心の経済成長
モデルに転換することが必要。そのためには、以下
の 3 点が必要。
①
所有権とか、民主集中制という概念に曖昧な理解の
余地を残さないこと(曖昧さにより、法体系が不明
確となり、運用に不整合を生み出している)
②
政策決定過程の中で民間部門・社会の意見を組み入
れること
③
行政の監視機能として、さらに必要な質の高い法律
を策定するため、国会の機能強化を図ること
これらの取り組みを通じ、要素市場の歪みをもたらす要因が
除去され、体制移行の罠や低位中所得国からの罠から脱出す
ることが出来、Integration の罠に陥らないと考える。時間
がかかるが、考えているだけでは進まない。ベトナムはまさ
に、”Turning Words in ACTION“の時期にある。
(森
睦也:JICA ベトナム事務所前所長)
※本原稿は、森 JICA ベトナム事務所前所長が 2016 年 3 月 15 日に
オピニオンリーダーを対象にし、ホーチミン市において講演を行
った際の資料から抜粋、加工したものです。原文は以下の URL か
らご覧いただけます。
http://www.jica.go.jp/vietnam/office/informatio
n/press/ku57pq00000tb8q6-att/06_201603_ja.pdf
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