...

優秀賞 ひまわりのかんさつ −ひまわりのせいくらべ− アサガオのふしぎ

by user

on
Category: Documents
123

views

Report

Comments

Transcript

優秀賞 ひまわりのかんさつ −ひまわりのせいくらべ− アサガオのふしぎ
優秀賞
ひまわりのかんさつ
−ひまわりのせいくらべ−
松戸市立幸谷小学校 1年 鳥 越 理 聖
1 研究の動機
保育園で大好きなひまわりの種をもらったこ
とがきっかけとなり,小学生になったらその種
をまきひまわりが育っていく様子を調べてみた
いと思い,観察した。
2 研究の内容
(1) 花壇を同じ広さになる様に3つに分け,種
を3個・5個・10個と数を変えてまき,発芽
や成長に影響があるか調べた。
(2) 種から発芽した数,発芽するまでの日数を
調べた。
(3) 葉っぱの付き方や数を調べた。
(4) ひまわりの高さを日々測定し,成長の違い
や成長する様子を調べた。
(5) 咲いた花の数や咲く方角を調べた。
3 研究のまとめ
(1) 発芽し成長したひまわりは,種3個の場所
アサガオのふしぎ
横芝光町立横芝小学校 1年 八 巻 優 奈
1 研究の動機
わたしの家の庭には,たくさんの花が咲いて
いる。おばあちゃんが花が好きで,バラやユリ
などの花を育てている。だからわたしも,花を
育ててみたいと思った。学校で育てているアサ
ガオのことをもっと詳しく知りたかったので,
家でも種をまいて育てることにした。
2 研究の内容
(1) アサガオの生長の様子を詳しく観察する。
(2) つるの巻きつき方を調べる。
(3) つるは1日にどのくらい伸びるのか調べる。
(4) 花は何時ごろ咲くのか調べる。
(5) 花が咲く順番にはきまりがあるのか調べる。
(6) 咲いた花で,押し花や色水作りをする。
3 研究のまとめ
(1) 種をまいて,3日位で,芽が出てふたばが
開く。約72日後,種のふくろをとるまでのア
サガオの生長の様子がわかった。
からは1つ,種5個の場所からは4つ,種10
個の場所からは8つであった。またどの場所
も種まきから約1週間で発芽した。
(2) ひまわり同士が密集すると,日光の当たり
具合によって,背の高いひまわりや低いひま
わりとなり,育ち方は様々であった。
(3) 葉っぱは発芽時に2枚,その後2枚出て十
文字になった。背の高いひまわりは葉っぱの
数も多く,大きさも大きくなった。
(4) 咲いた花の数は1つのひまわりがほとんど
だったが,17個咲いたひまわりもあった。
咲いた方角は東向きが1番多かった。
4 指導と助言
ひまわりの成長の様子が丹念に調べてある。
条件により育ち方が変化することに気付いた。
その変化を分析し写真や文でまとめた点が評価
できる。
(指導教諭 山口 百合子)
審査評
大好きなひまわりの成長を細かな観察記録に
まとめている。ひまわりの高さの違いから日当
たりと成長の関係に気づくことができた。
(2) つるは,すごく太いものやストローのよう
なつるつるしたもの,網の目の細かいネット
などは,巻きつきにくいことがわかった。
(3) つるは,1日に7㎝から14㎝伸びた。
(4) 花は,曜白アサガオは4時ごろ,大輪アサガ
オは3時ごろ咲き始めた。どちらも,開き始
めてから1時間30分位で,完全に花が開いた。
(5) 花は,つるの下の方から咲くことがわかった。
(6) 押し花をして絵をかいたり,色水作りをし
たりして楽しかった。
4 指導と助言
生活科で学習したアサガオについて探求する
ことができた。継続して対象を観察し,論文の
まとめ方もしっかりしている点が評価できる。
(指導教諭 神 彩織)
審査評
朝顔のつるの巻き方,花の咲き方について多
くの検証を行い,良くまとめられている。写真
や絵もわかりやすく表現されている。
−25−
優秀賞
ゴーヤのつるのふしぎけんきゅう
我孫子市立湖北台東小学校 2年 船 本 聖 己
1 研究の動機
1年生の時に,アサガオのつるについて観察
をしたところ,つるの巻きつく様子に興味を持
ったことから,今年は庭で育てているゴーヤの
つるがどのような動きをして巻きつくのか,自
分で作った観察セットを活用しながら研究を始
めた。
2 研究の内容
(1) 支柱を使って調べてみる。
① 支柱の太さを変えてみる。
② 支柱の種類を変えてみる。
(2) つるの動きを調べてみる。
(五分ごとに観察)
風の影響がない室内で,時間帯別・明るさ
の違い・つるの先を切ってみる等,条件によ
ってつるの動きがどのように変化するのか,
観察セットを使って調べてみる。
(3) 巻きひげの観察
巻きひげを50本集め,巻きの長さを計った
り,巻き方の向きについても調べてみる。
どんなさなぎになるのかな
大網白里市立増穂小学校 2年 川 畑 春 佳
1 研究の動機
昨年の夏休みに育てたアオムシが,土の中で
さなぎになったことを発見し,イモムシがどこ
でどんなさなぎになるのか疑問に思ったから。
2 研究の内容
庭や畑,通学路等で見つけたイモムシを家で
育てて観察した。また,木の枝などに残された
まゆの抜け殻を採集し観察した。それぞれの名
前を調べて,さなぎの成り方でグループ分けを
した。さなぎやまゆの抜け殻や羽化した成虫は
できるだけ標本にまとめた。
3 研究のまとめ
(1) 観察の結果,次のようなグループに分ける
ことができた。
① 木の枝や葉にまゆを作る仲間
② 木の枝からぶら下がるさなぎになる仲間
③ 葉を糸で繋いでさなぎになる仲間
3 研究のまとめ
(1) ゴーヤのつるは,支柱の太さが細い方がよく
巻きついた。
(2) 支柱の種類は違っていても全て巻きついた。
(3) 明るい方が,つるはよく動く。
(4) 支柱など巻きつくものを探すところは,つる
の先の方にある。
(5) ゴーヤのつるは,右回りと左回り両方の動き
が見られた。
(6) 方位とつるの動きに関連性はなかった。
4 指導と助言
昨年度,取り組んた科学論文での成果を生か
し,つるの働きがよくわかる植物を選択したこ
とを,指導・評価した。また,自分で「観察セッ
ト」を作ったところにも独創性を感じた。
(指導教諭 伊藤 茉梨亜)
審査評
昨年のアサガオのつるの研究を継続発展させ
た研究で,つるの巻き方と支柱の関係やつるの
動きを時間の流れとともに観察している。
④ さなぎを糸で支える仲間
⑤ 葉と茎との間でさなぎになる仲間
⑥ 家の塀にまゆを作る仲間
⑦ 葉と土の間に薄いまゆを作る仲間
⑧ 地面でさなぎになる仲間
⑨ 土の中でさなぎになる仲間
⑩ どんなさなぎになるのかわからなかった。
(2) イモムシは,チョウやガだけでなく,ハバ
チの幼虫もいた。
(3) イモムシは,ハエやハチに寄生されたり,
何故か死んだりするものがいる。
4 指導と助言
根気よく観察を続けながら,丁寧にわかりや
すく記録している。その過程の中で,命の大切
さや生存の厳しさを知ることができ,情操面に
も影響を与えた。
(指導教諭 伊藤 結美)
審査評
さなぎに注目して身のまわりの芋虫の成長を
詳しく観察している。明瞭で大きなスケッチで
記録し,40種ものさなぎを分類している。
−26−
優秀賞
しゃぼん玉の研究3
しゃぼん玉のまくを強くするには
どうしたらいいのかな?
八千代市立大和田西小学校 3年 室 井 美 玖
1 研究の動機
今年でしゃぼん玉の研究は3年目になる。今
年はわれにくいしゃぼん玉を作りたいと思い研
究を始めた。われにくいしゃぼん玉を作るには,
まくを強くすればいいのではないかと考え,調
べてみることにした。
2 研究の内容
(1) 輪の状態とまくの強さの変化
(2) 針金の輪の大きさとまくの強さの変化
(3) 針金の輪の太さとまくの強さの変化
(4) 輪の種類とまくの強さの変化
(5) 洗剤の濃度とまくの強さの変化
(6) 洗剤の種類とまくの強さの変化
(7) 洗剤の中に色々な物を入れた時のまくの強
さの変化
水の移動じっけん
∼はやく水を移動させるには?∼
浦安市立日の出南小学校 3年 板 垣 海 希
1 研究の動機
父親がホースを使って水槽の水替えをしてい
るのを見て水の移動の仕組みを学んだ。そこで,
より早く水を移動させるにはどのようにすれば
よいかということに興味を持ちその方法を調べ
る実験を行うことにした。
2 研究の内容
(1) 移動元の容器の大きさ,移動に使うホース
の太さ,移動元の容器を置く高さを変えて一
定量が移動する時間を計測する。実験は1つ
の組み合わせにつき複数回(今回は5回とす
る)行い,平均値で比較することにする。
(2) 移動元の水の高さが変わって行くことで,
水の移動時間に変化があることを確認する。
(3) 移動元と移動先の水位の高低差を利用した
水の移動方法が日常生活のどのような場面で
利用できるかを考えて,実際に利用してみる。
3 研究のまとめ
(1) 水を早く移動させる条件
① 移動元の容器がより大きいこと
3 研究のまとめ
(1) 輪の状態は,洗剤や水で濡らしてからまくを
作った方が,まくが強くわれにくくなる。
(2) 針金の輪の大きさは,小さい方が良い。
(3) 針金の輪の太さは,太い方が良い。
(4) 輪の種類は,スポンジの輪を使うと良い。
(5) 洗剤の濃度は,洗剤と水が同量の液が良い。
(6) 洗剤の種類は,食器用洗剤のキュキュットを
使うと,まくが強くわれにくい。
(7) 洗剤の中に入れるのは,砂糖が一番良い。
4 指導と助言
どの実験も5回ずつ計測して平均値を出し,
グラフや表を用いまくの強さの関係を調べてい
る。7つの実験を通して,より強いまくを作り
出すことができた。努力のつまった作品である。
(指導教諭 丸子 瞳)
審査評
われないしゃぼん玉をつくるために,仮説に
そった7つの実験を行い,グラフや表を使って
その結果をわかりやすくまとめている。
② 移動に使うホースがより太いこと
③ 移動元の容器を置く高さがより高いこと
(2) 水を移動させることで移動元の水位が低くな
るにつれ,水の移動する早さが遅くなっていく
ことが分かった。
(3) お風呂の残り湯を家庭菜園等への散水や,掃
除に利用することができた。震災時などに浴槽
に汲み置きした水を使用する際にもこの方法が
利用できると思われる。
4 指導と助言
日常生活の中で,金魚の水槽の水を速く取り
替え,生活を便利にしたいとの気持ちから,実
験に取り組んだ。ホースの位置や太さなど様々
な条件をかえてデータを細かくとっていること
を評価することができる。さらに,自分の実験
を震災時など便利に使えるように日常生活にも
生かす工夫をしている。今後の研究が,期待で
きる作品である。
(指導教諭 若月 満)
審査評
金魚の水そうの水かえから,ホースを使った
水の移動のしくみに着目し,いろいろな実験を
行い,そのデータをグラフ等にまとめた。
−27−
優秀賞
バッタの研究 パートⅢ
千葉市立大宮台小学校 4年 本 澤 伸 幸
1 研究の動機
バッタの研究は3年目でこれまで「どのよう
に成虫になるのか」「好きな草を見分けられる
か」などを調べた。昨年度に疑問を抱いた「体
の色について」と「バッタが草を見分ける方法」
について調べた。
2 研究の内容
(1) バッタの体の色と食べる草の関係
水槽に茶色のショウリョウバッタを入れ緑
色と茶色のススキを与え食べ方を観察した。
(2) バッタの体色変化実験
実験ハウスの中を藁で覆い緑色のトノサマ
バッタとショウリョウバッタの成虫と幼虫を
数匹ずつ入れ2週間観察した。
(3) 草原の様子とバッタの体色の変化
約1ヶ月にわたり近くの草原で草の色と
バッタの体色を調べた。
(4) 水槽にショウリョウバッタを入れ,好物の
草をどのように見分けているのかを調べた。
ネジまき名人 ゴーヤのひみつ
山武市立松尾小学校 4年 和 田 優 楓
1 研究の動機
理科の授業で観察したゴーヤは,細い巻きひ
げがバネのようになって,まるで,目で見て場
所を選びながらつかまっているようだった。ど
うしてこんなきれいに巻きつけるのか,その仕
組みやきまりを調べてみることにした。
2 研究の内容
(1) 巻きひげはどれらいの速さでのびるのか
(2) 巻きひげはどこまで伸びるのか
(3) 巻きひげのどこが伸びているのか
(4) どこがバネ作りのスタートになるか
(5) 時間経過に伴う巻きつく様子の観察
(6) カーブした巻きひげの外側を刺激したら,
カーブはのびてくるのだろうか
(7) 巻きひげはどれぐらいの時間間隔の接触刺
激で巻き始めるのだろうか
(8) 巻きひげの巻きつきやすいものは何か
(太さ,素材の違う8種類で実験)
(9) 巻きひげはどのようにバネを作っているの
か(モールやビーズで模型を作って確かめる)
3 研究のまとめ
(1) 茶色のショウリョウバッタも茶色の草に隠
れながら緑色の草を食べた。
(2) トノサマバッタは成虫・幼虫,ショウリョ
ウバッタ成虫は緑色のままであったが,幼虫
は脱皮して茶色に変化した。
(3) ショウリョウバッタの体色は,秋が近づく
につれて茶色の草が増えると,茶色に変化し
その割合は30%以上になった。トノサマバッ
タは草の色が茶色に変化しても,体色に変化
はほとんど見られず緑色のままであった。
(4) はじめは好物の草を,形で見分けていると
思ったが,実験から形ではなく他の方法で見
分けていることがわかった。
4 指導と助言
継続研究で課題をしっかりと持ち続け,ねば
り強く丁寧に観察に取り組んだ。写真,グラフ
などを使い大変わかりやすくまとめている。
(指導教諭 飯沼 明美)
審査評
観察ハウスを作り,ショウリョウバッタの住
んでいる場所と体の色が変化する様子を明らか
にした研究ですばらしいものである。
3 研究のまとめ
ゴーヤの巻きひげは,速いときは1時間に約
0.4㎝伸びる。巻きひげ全体が伸びるが,巻きつ
いたりバネを作ったりするときは必要な部分だ
けが成長した。また,巻きひげの先端がネット
に触れて約30秒で巻き始め,約3分でネットに
一周巻きつき,一日でバネができた。また,接
触刺激の時間間隔が3秒以上開くと巻き始めな
いことや,巻きつきが完了しないとバネが作ら
れないことがわかった。また,ぴんと張った太
さ2㎜程度のものによく巻きつくこともわかっ
た。模型作りから,カーブの外側の細胞だけが
成長することによりバネが作られると考えた。
4 指導と助言
観察する中で次々と生まれてくる疑問につい
て,身近な材料を使った独自の実験方法を考案
し,いろいろな実験・観察を行っている。論文
では,巻きひげの巻きつき方に関係するところ
に絞ってわかりやすくまとめてある。
(指導教諭 飯倉 達也)
審査評
ゴーヤのつるの巻き方について,巻き方,条
件,素材など,疑問ごとに観察,実験を重ね写
真や数値をもとによくまとめられている。
−28−
優秀賞
ジャンピングボールの法則を見つけろ!
柏市立柏第五小学校 5年 伏 島 史 季
1 研究の動機
プールで,ビーチボールやビート板を水の中
に沈めて手を放すと,水面から飛び出してくる。
沈めた深さによって飛び上がる高さが違うこと
から,水面から飛び上がるものの高さの法則を
見つけ何かに役立てたいと思ったことがきっか
けである。
2 研究の内容
(1) 水面から飛び上がるものの高さの測定
水を入れた水槽にものを沈め,深さ,体積,
重さ,材質,形を変化させ,水面から飛び上
がる高さを測定した。
(2) 沈めれば沈めるほど水面からものが飛び上
がらなくなるのはなぜかということを,浮力,
水圧,抵抗と関係付け,検証した結果をグラ
フやランキングの表にまとめて考察した。
3 研究のまとめ
(1) 水面から飛び上がるものの高さには,沈め
る深さ,ものの体積,重さ,材質,形が大き
く関係している。
私のウミガメ研究
∼パート5∼
一宮町立一宮小学校 5年 齋 藤 采 音
1 研究の動機
ある日の朝,兄妹で一宮海岸を散歩している
ときウミガメの子に出会った。それ以来,ウミ
ガメが好きになり,研究をするようになった。
「赤ウミガメの母親に会いたい。」「子ガメがい
つ生まれるのか。」という思いから,ウミガメ
の生態について研究するようになった。
2 研究の内容
(1) 一宮海岸をできるだけたくさん調査し,母
親ガメの上陸あと,ウミガメの巣の状況につ
いて観察する。
(2) 1年生の時から今年の上陸日,子ガメの脱
出日の月の形と潮の関係について調べ直し,
グラフ化する。
(3) ウミガメの巣の中の温度や巣の近くの気温
を測り,巣の中の様子について考察する。
(2)① ものが最も高く水面から飛び上がる深
さは,そのものの直径くらい沈めたとき
である。
② 沈めたものが水中を移動する際に揺れ
たり回転したりすることにより,深く沈
めても水面から勢いよく飛び上がらなく
なる。
③ 最も速度が速いのは,ものが水面から
出る直前である。
④ ものが水面から飛び上がる高さには,
密度が大きく関係している。
4 指導と助言
データ収集のための実験を,条件を変えて数
多く行っている。得られた結果を表やグラフに
表して分析し,そこから法則を見出している。
(指導教諭 ‹梨 佳代)
審査評
自分の体験から着想し研究している。物体の
形状,材質,体積等条件を変え実証し,多くの
データを科学的に整理している。
3 研究のまとめ
(1) 表やグラフに数値化することにより,母親ガ
メの上陸・産卵や子ガメの脱出は,月の形や潮
の満引きと関係することが分かった。
(2) 母親ガメは,本来,新月の暗い安全な晩に上
陸するが,人間の生活が,その形態に影響を与
えていることが見えてきた。
(3) 大潮の晩に上陸も脱出も多いことが分かった。
子ガメの脱出の合図は,気温と巣の中の温度の
差が合図になっていることに気づいた。
4 指導と助言
研究動機のもとに,5年間に及ぶデータを蓄
積し,母親ガメの上陸・産卵と子ガメの脱出につ
いての生態研究のなされている点が評価できる。
(指導教諭 鴇田 健・‹山 秀樹)
審査評
親ガメの産卵時期と子ガメの孵化時期が,月
齢や潮位とどのような関係があるか,孵化と気
温や砂の温度の関係について丁寧に調べた。
−29−
優秀賞
ペットボトルへの水の入り方・水の出方の研
究 ∼大発見! 最速のひみつ∼
千葉市立おゆみ野南小学校 6年 山 口 理 生
1 研究の動機
3年生から研究を深めてきており,ストロー
を使って水と空気の通り道を分けると,空気の
通り道が20%くらいのときに最も速く水が入る
ことがわかった。これらを踏まえて,今年は水
が最速で出入りする条件を追究したいと思っ
た。
2 研究の内容
(1) 口径の割合を1%単位で細かく条件設定で
きるよう,ストローを自作する。
(2) ペットボトルにストローをセットし,水槽
に沈めて水が入るまでの時間を計る。
(3) 水を入れたペットボトルにストローをセッ
トし,逆さにして水が出るまでの時間を計る。
また,ペットボトルの大きさを変えて調べる。
3 研究のまとめ
(1) 水が最も速く入るのは,空気の通り道の割
合が口径の20%の時だということがわかった。
(平均1.63秒,ストローなし時と比べて5.5倍
速い)
モリアオガエル
オタマジャクシの成長と卵をつつむ泡
松戸市立北部小学校 6年 森 本 脩 斗
1 研究の動機
昨年の夏,同じ日にふ化したモリアオガエル
の成長課程を観察する中で成長のばらつきがあ
った。そこで成長のばらつきは卵をつつむ泡を
食べているか否かが関係しているのではないか
と考え,対称実験を試みた。
2 研究の内容
ふ化直後に卵の泡を与えるオタマジャクシ20
匹(泡有群),卵の泡を与えないオタマジャク
シ20匹(泡無群)を別々の飼育箱に移し飼育し
た。エサ,水温などの飼育条件を一定にして
「泡有群」,「泡無群」のオタマジャクシの体長
を測定し,成長過程を比較し考察した。
3 研究のまとめ
(1) ふ化直後から3日目までは体長に差は見ら
れなかった。これは,ふ化後3日までは体内
に蓄えられた卵の栄養分で足りているからだ
(2) 水が最も速く出るのは,空気の通り道の割
合が口径の30%の時だということがわかっ
た。(平均2.08秒,ストローなしと比べて2.9
倍速い)またペットボトルの大きさが変わっ
ても,30%という割合は同じであり,水の流
速も変わらないことがわかった。
(3) 最速で水が入る時と出るときの空気の通り
道の割合は,20%と30%で異なることがわか
った。以前,ペットボトルを傾けて水を出し
入れした時に,水を入れるときは45度,水を
出す時は60度の時により速くなるという実験
結果を得たが,この角度にすると空気の通り
道が20%,30%になるのではないかと考える。
4 指導と助言
正確で信頼できるデータを得られるよう努力
している姿勢があり,また今回の結論をもとに
これまでの研究を総括できたところも評価でき
る。
(指導教諭 齊藤 久子)
審査評
昨年度の結果を踏まえ,水の入る速さ・出す
速さをより速めるために多くの実験により究明
し,新しい発見をしている点がよい。
と考えた。
(2) 「泡有群」が大きく成長し,最大10mmの体
長差が見られた。
(3) 後足の出た時期は2日間,前足の出た時期は
6日間,上陸の時期は3日間「泡有群」が早か
った。
(4) ふ化から上陸するまでのオタマジャクシの死
亡率は「泡有群」0%,
「泡無群」25%だった。
(5) 以上のことから,モリアオガエルの卵をつつ
む泡は,オタマジャクシが大きく育つための養
分が含まれていることが分かった。
4 指導と助言
疑問に対し複数の仮説を立て,その中から一
つ選んで解決する方法である。条件設定をしっ
かり行い,仮説の検証のために群の平均値を示
して信頼性を高めている。
(指導教諭 河東 郁子)
審査評
オタマジャクシの成長の違いを条件別に分
け,ていねいに実験している。また,結果から
更に疑問に思ったことを拾い上げている。
−30−
優秀賞
液体に物を落とした時のはね方について 千葉市立緑町中学校 1年 岩 城 雄 成
1 研究の動機
あるテレビ番組で,牛乳に牛乳の滴を落とす
ときれいな王冠のようにはねる事を利用し,巨
大王冠をつくるというものを見た。それをきっ
かけに,液体のはね方について調べることにし
た。
2 研究の内容
水を満たした桶に,粘土をつめたピンポン球
を落とし,ビデオではねる様子を撮影し,王冠
の高さ,直径を測定した。落とす物の質量,落
とす高さ,体積や液体の粘性を変えて実験を行
った。
3 研究のまとめ
(1) 水のはねる高さについて
① 落とす物の質量が増えると直線的に大き
くなる。
② 物を落とす高さに対し比例する。
蚕のかけ合わせ実験∼3代目の挑戦∼
習志野市立第一中学校 1年 望 月 蘭
1 研究の動機
小学校一年生の時に授業で育てた蚕。蚕の生
態の不思議や発見にとても魅力を感じた。その
時から今年まで7年間,蚕の研究をしてきた。
蚕は白ばかりでなく黒やしま模様等多種類存在
することも知った。種類の違う蚕をかけ合わせ
ると2代目3代目はどのようになるか研究した。
2 研究の内容
6種類の特徴の違う蚕蛾(成虫)を8通りの
組み合わせでかけ合わせた。そのうち卵がふ化
した3種類の蚕(2代目)を成虫に育て,さら
にかけ合わせを行い生まれた蚕(3代目)の特
徴を観察し研究した。
3 研究のまとめ
(1) 茶斑(体に茶色の斑点)とこぶ蚕(体にこぶ)
のかけ合わせ。2代目は全てこぶが茶色の蚕に
成長した。おそらく親の優性遺伝子が表われた
と思われる。2代目同士の蚕をかけ合わせた3
③ 落とすものの体積に対し比例する。
④ はねる液体に粘性をつけた時の方が低く
なる。
(2) 水のはねる直径について
① 落とす物の質量が軽い時は一定だが,水
より重くなっていくと,小さくなる。
② はねる液体に粘生をつけると,大きく
なる。
4 指導と助言
液体に物を落とした時にできる王冠を,ビデ
オを使い丁寧に観測することができている。ま
た条件を変えてデータを分析することができ
た。
(指導教諭 曽根 和海)
審査評
液体のはね方を,写真を元に定量的に検討し
て整理している。実験条件を一致させる工夫な
どていねいな実験が評価できる。
代目はこぶの有り無し,茶色の斑の有り無し及
び1代目2代目にない白い蚕等多様な蚕に成長
した。
(2) アモイモリコード(灰色)と大造(細い,ま
ゆは黄色)のかけ合わせ。2代目はやや細い灰
色の蚕に成長した。まゆはうす黄色。3代目は,
灰色と白色の蚕に成長した。まゆは白色とうす
黄色。
(3) こぶ蚕と大造のかけ合わせ。2代目は全てこ
ぶ有りの蚕に成長した。3代目はふ化しなかっ
た。
4 指導と助言
蚕の種類とからだのつくり(特徴)を写真を
使い記録し,様々なかけ合わせの結果を写真と
文章でわかりやすくまとめることができた。
(指導教諭 松下 怜央)
審査評
蚕のかけ合わせ実験をし,3代目の蚕の成長
を観察し,1代目,2代目の蚕との相違点を調
べ,様々なかけ合わせの実験を行った。
−31−
優秀賞
炭の導電性に関する研究PART2
∼導電性の良いススの生成条件の検討∼
野田市立南部中学校 2年 柿 澤 昂 志
1 研究の動機
日本は金属資源が少ない。そこで,国内で生
産可能な金属の代替品について考えた。昨年は
鉛筆の芯が電気を通す性質に着目し,炭の製造
条件と導電性について研究した。その中で粉末
状の炭としてススに注目したが,ススは生成量
が少なく導電性も低かったため,本研究を進め
ることにした。
2 研究の内容
(1) ススの生成量と増やす条件の検討
① 燃焼時の油と酸素の比率について
② 燃焼させる油の種類について
(2) 導電性の高いススを生成する条件の検討
① 生成温度について
② ススの表面状態について
(3) スス分散液の導電性を高める,溶液中での
ススの分散状態の検討
3 研究のまとめ
(1) ① 酸素に対して油の量が多いとススの生
湿度,視程,雲の発生の観測と
その関係についての研究
印西市立原山中学校 2年 島 田 典 季
1 研究の動機
気象観測をしたところ,富士山や東京スカイ
ツリーが晴れた日でも見える日と見えない日が
あることに気がついた。また,曇りの日でも遠
くの建物がはっきり見える日があった。この現
象がなぜ起きるのか疑問に思い,研究すること
にした。
2 研究の内容
毎日,朝,昼,夕方と1日3回,湿度の観測
と視程の観測をした。湿度からは空気中の水蒸
気量と露点温度を求めた。また,凝結高度を計
算した。視程については,気象庁の気象観測の
手引きに準じて,目視観測をした。これらから,
湿度と視程の関係をグラフにまとめ,関係性に
ついて検討した。
3 研究のまとめ
湿度と視程,湿度と雲の発生と視程の関係に
成量が増えるが,生成率は油と酸素の比
率であまり変化しなかった。
② ススの生成量はロウが一番多かったが,
生成率はサラダ油とラードが良かった。
(2)① 生成したススは導電性が低いことから,
生成時の炎の温度が低いと考えられる。
そこで,生成したススを高温で再加熱す
ると導電性は良くなった。
② ススの表面が汚れていると考え洗浄し
たところ,導電性が良くなった。更に①
②を併用すると導電性は大幅に向上した。
(3) ススを泡に分散させると,ススが泡の膜に
集まり,少量で分散液の導電性は良くなった。
4 指導と助言
昨年の研究から更に内容を深めることができ
た。導電性を高める工夫が随所に見られた。
(指導教諭 北條 弘幸)
審査評
金属に代わる導電性の良い素材としてススに
着目し,丁寧に実験を行い,導電性の良いスス
を得る方法等を良く検討している。
おいて2つの傾向があることがわかった。
① 視程は湿度90%を超えると低下し,視程
4以下がほとんどである。発生した雲は下
層雲,下流雲であった。
② 湿度が70%以下になると,視程が6とな
り,視程良好が良い。湿度70%以下では発
生する雲の約60%が上層雲,中層雲である。
視程は5以上で良好である。対流雲が30%
あるが積雲が中心であり,天気がよい場合
が多い。
4 指導と助言
日常の何気ない変化に興味を持ち,データを
たくさんとりまとめている。一昨年,昨年の研
究をさらに発展させている点についても評価で
きる。
(指導教員 寺田 洋平)
審査評
観測した現象と湿度の関係を調べた点が評価で
きる。他の地域や要素に着目したり,関係性を定
量的に表現すると更に良くなる。
−32−
優秀賞
アオコの増殖と自己防衛本能の研究
千葉市立打瀬中学校 3年 石 原 苑代子
1 研究の動機
昨年研究したアオコの走性からの発展実験を
行い,なぜアオコが一度発生するとなかなか死
滅しないのかを調べたいと思った。
2 研究の内容
(1) アオコの走性に逆の条件を与える
① 水深3mプールに沈め,浮力により無重
力に近い状態を作る。
② 下から強力な光を当てる。
(2) アオコの結合しやすい条件
水温,光の量,水質,Phによる結合の違
いを調べる。
(3) 栄養素を与えた場合のアオコの培養
有機リン,尿素,鉄分をそれぞれ与え発生
の違いを比べる。
(4) アオコの自己防衛本能について(夏の猛暑
日を想定して)
① 強すぎる太陽光として強力ライトを当て
る。
② 暑すぎる空気として水面にドライヤーの
熱風を当てる。
天気予報はどのくらい当たるのか part 3
(コンピュータは自然を予測できるのか?)
一宮町立一宮中学校 3年 梅 林 将 貴
1 研究の動機
昨年の自由研究でYahoo天気とウェザー
ニュースの予報は,どのくらい当たっているの
かを調べた。その時,風速についてウェザーニ
ュースの予報は,大幅に外れていることに気づ
いた。そこで,今年は風速に絞り,より詳細に
調べて,なぜ昨年はウェザーニュースが大幅に
外れたのか調べてみようと思った。
2 研究の内容
風速の予報が3時間ごとに掲載されている
Yahoo天気とウェザーニュースの天気予報
と実際の計測結果にどのくらい誤差があるのか
を調査し,誤差を点数化し,どのような傾向が
あるのかとウェザーニュースが大幅に外れた原
因を調べる。
3 研究のまとめ
(1) ウェザーニュースの風速が大幅に外れた原
因は,自宅<陸側に近く,海側からは遠い場
3 研究のまとめ
(1)① 重力以外の力が加わると走地性が狂いだ
し,水面には浮いてこない。これは浮力が重
力を打ち消したと思われる。
② 試験管の下部や中間部に集まる。走地性
に逆らってでも光に集まる習性がある。
(2) 約30℃の水温,二酸化炭素が溶けた弱酸性の
水が,アオコがよく発生した。
(3) 畑の肥料成分であるリンなどが程よく混ざっ
た水が良いことがわかった。
(4)① 水面よりやや下に移動した。
② 水面よりかなり下まで移動した。
①,②からアオコは猛暑日の強すぎる光や暑
すぎる空気から自己を防衛する行動をとるた
め,夏のアオコがなかなか死滅しないことがわ
かった。
4 指導と助言
好む条件だけでなく,その条件を強くしすぎ
るとどうなるかなどの条件設定をし,夏の猛暑
日にはたらく自己防衛本能に言及している。
(指導教諭 佐宗 徹也)
審査評
昨年までの研究の成果を受け,アオコの増殖
と自己防衛本能の研究を,7つの実験を行い,
それぞれの結果を得ることができた。
所>で計測したため,海側に近い数値を予報
しているウェザーニュースは大幅な誤差がで
てしまうという結論になった。
(2) 海側と陸側では,風向に差はありませんで
したが,風速に関しては,ほとんどの場合が
海側の方が強いということが分かった。また,
12時と21時の時間帯別で風速を比較したとこ
ろ,海側・陸側ともに12時の時間帯の方が風
速が強いということや12時も21時も陸側より
海側のほうが数値が大きいということが分か
った。
4 指導と助言
場所や時間帯などの条件を変えて測定し,そ
のデータを数値化して丹念に分析している。一
宮町での天気の特徴をつかんだ点が評価できる。
(指導教諭 関 智之)
審査評
インターネット上で公開される天気予報と自
ら観測をした気象データの風向・風速に着目
し,誤差を点数化し,比較した優秀な論文であ
る。
−33−
優秀賞
ヨウ素PVA錯体の研究 ∼生成のメカニ
ズムを追い偏光膜・センサーに活かす∼
千葉県立船橋高等学校 3年 禅 野 光
1 研究の動機
昨年度からの継続研究である。
2 研究の内容
(1) 基礎研究
種々の実験によりI 5−錯体,I 3−錯体が生成
する仕組みについて調べた。また,塩類,
pH,PVAのけん化度等の,錯体生成への影
響を調べた。
(2) 応用研究
① 様々な条件下で作ったヨウ素PVA溶液か
ら偏光膜を作成し,その偏光性能を調べた。
また,PVAハイドロゲルとヨウ素液から,
伸張させると偏光性が生じる膜を作った。
② PVAフィルムやハイドロゲルにヨウ素を
加えたものがセンサーになるかを調べた。
3 研究のまとめ
(1) 基礎研究
・I3−錯体は部分けん化PVA中の隙間にI3−が入
る単純な過程,I5−錯体はPVAとI5−が分子を
御滝公園における緑地のクールアイランド
効果について
千葉県立船橋芝山高等学校 関家あや子・藤井春花・皆越 衛・濱野 愛
1 研究の動機
今までの研究からクールアイランド現象によ
り学校付近の緑地の温度が下がっていることが
明らかになった。気温観測の際,暑い日に木陰
に入ると涼しいと感じた実体験を基に,クール
アイランドがどのような条件で発生するのか。
また,クールアイランド発生のメカニズムを解
明するためにこの研究を始めた。
2 研究の内容
住宅地の中にまとまった緑地がある御滝公園
を観測場所とし,春季・夏季観測や線上観測を
行った。また冷気の流れ出しの条件を調べるた
め模型を使った風洞実験や,気温とクールアイ
ランド発生の要因のひとつである植物との関係
性を調べるため蒸散実験を行った。
3 研究のまとめ
(1) 春季・夏季観測から分かったこと
住宅地や盆地の気温が高くなることや冷気
の流れ出しが見られることが分かった。
(2) 線上観測から分かったこと
春季・夏季の気温観測と同様の結果となっ
た。しかし東寄りの風が吹くと盆地の気温が
低くなっていることから冷気の流入が見られ
たのではないかと推測した。
(3) 模型を使った風洞実験
揃え合う複雑な過程で生成する。
・完全けん化と部分けん化のPVAの混合物で
は,後者の錯体生成への影響が大きい。
(2) 応用研究
① 低いpHで作った偏光膜が偏光性能大であ
った。また,完全けん化と部分けん化の混
合によって,I5−錯体,I3−錯体を適度に含む
吸収波長の広い偏光膜が作成できた。伸張
させると偏光性を生じる膜についても,
PVAの混合割合を工夫して性能を高めた。
② ヨウ素PVAを,金属イオン等のセンサー
に利用できる可能性を示すことができた。
4 指導と助言
基礎から応用まで,多くの実験を精力的に
行った。一見単純に見える現象の中に,多くの
事柄が潜んでいることが実感できたであろう。
(指導教諭 曽野 学)
審査評
ヨウ素PVA錯体が生成するメカニズムを詳し
く調べた。これらを基礎として偏光膜・金属イ
オンの定量に応用できている点が良い。
冷気の流れだしを調べるため,模型を使っ
た風洞実験を行った。この実験から,冷気の
流れ出しは住宅地などの冷気を遮るものがな
い場合に顕著に現れること。また,水が蒸発
するときに伴う潜熱によって冷却効果を得る
ことができるというクールアイランド発生の
仕組みの手掛かりを掴むことができた。
(4) 蒸散実験
春季・夏季観測の結果両方を見てみると気
温が高いときの方がクールアイランドが顕著
に見られることが分かった。そこで,クール
アイランドの発生の要因の一つの植物の蒸散
効果が気温によってどのように変化するのか
を本物の葉を使って実験した。実験結果は,
20℃∼31℃の間であまり蒸散量に変化は見ら
れなかったが,32℃以降から急激に増加して
いた。この結果から,クールアイランドの発
生には気温が高いことが大きな条件であるこ
とが分かった。
4 指導と助言
クールアイランドの実態を解明するため,何
度も現地で観測を行い,実験をもとにメカニズ
ムを解明している。継続的調査により結論を導
き出すことができた。
(指導教諭 勝部 恭央)
審査評
クールアイランドについて,大変綿密な計画
に基づき観測,実験を行い,発生の仕組み,条
件をあきらかにした事が評価された。
−34−
科学技術賞
もしもお姉さんと赤ちゃんがいなかったら…?
∼くすりゆびとこゆびのけんきゅう∼
船橋市立金杉台小学校 2年 澤 村 諒汰郎
1 研究の動機
毎日,何気なく使っている手。「薬指と小指は
あまり使わないな」と感じた。そこで,薬指と小
指は何の為にあるのか,もしも,薬指と小指がな
かったらどうなるのか,調べてみることにした。
2 研究の内容
(1) 薬指と小指を固定して使えなくした場合
と,全ての指を使えるようにした場合とで,
以下の8種類の実験を行い,違いを調べる。
① 剣玉で『もしかめ』をする ② 文字を書く
③ 折り紙を折る ④ 箸で豆をつまんで皿へ運ぶ ⑤ ハサミで複雑な形を切る ⑥ 本を紐で束ねる ⑦ 鉄棒にぶらさがる ⑧ 空き缶を片手でつぶす
(2) 本などで,指の働きについて調べる。
3 研究のまとめ
(1) 薬指と小指が使えないと,全ての実験で仕
上がりが雑になったり,出来た回数が減った
りした。実験の結果から,薬指と小指には,
手に入る力を強くしたり,道具や手を支えた
り,バランスを取る役割があることがわかっ
た。薬指と小指だけで出来ることは少ないが,
薬指と小指が使えないと,やりにくくなるこ
とがたくさんあった。
(2) 人間の手は様々な動きをするが,それは,
指の長さや曲がる方向,関節の位置などが,
複雑な動きを可能にする為に進化してきたか
らだと考えられる。
(3) 手を『父,母,兄,姉,赤ちゃん』の5人
家族に置き換え,兄から「あまり仕事をして
いない」と言われた姉と赤ちゃんが,実験を
通して自分達の役割を証明していくという内
容の研究を物語にしてまとめた。
4 指導と助言
小さい子がわかりやすいように物語形式で実験
を説明した。薬指と小指に疑問を持ち,折り紙や
箸の実験を行った。薬指と小指は,手に入れる力
を強くすることやバランスをとる役割があること
に気付くことができた。
(指導教諭 新福 沙織)
審査評
薬指と小指の必要性をいろいろな実験を通し
て明らかにした。普段使っていないように思え
た指の必要性を解りやすく説明している。
新しいエステルの合成法
渋谷教育学園幕張高等学校 2年 増 田 崇
1 研究の動機
デシケーターで酢酸アンモニウムとエタノー
ルを乾燥させ,水分を吸収してピンク色になっ
たシリカゲルを青色に戻すために加熱したとこ
ろ,酢酸エチルのにおいがすることに気付いた。
酢酸エチルのにおいがしたのは,シリカゲルが
酸触媒となってアルコールとカルボン酸がエス
テル化したのではないかと考えて研究を始めた。
2 研究の内容
(1) 気相でのエステル化反応
デシケーターを模倣した装置を考え,25
℃で7日間静置した。集気瓶中の気相を酢酸
エチル用の気体検知管(検出限界1.5%)で調
べたところ,確かに酢酸エチルが生成してい
ることが分かった。シリカゲルがない場合に
は,酢酸エチルは生成していなかったので,
シリカゲルは触媒として働くことが確認でき
た。
(2) 液相でのエステル化反応(蒸留法)
ギ酸とメタノールとシリカゲルを直接混ぜ,
−35−
生成するギ酸メチルを蒸留で取り出せない
かと考え,装置を考えて組み立てて実験を
行った。その結果,ほぼ純粋なギ酸メチル
が得られることがわかった。
3 研究のまとめ
本研究で,シリカゲルがエステル化の触媒
になることが分かった。(1)では,様々なカル
ボン酸,アルコールの組み合わせで反応を行
い,25℃で7日静置することでいずれの組み
合わせでもエステル特有の芳香を確認するこ
とができた。(2)では,ギ酸とメタノールの組
み合わせで反応させれば蒸留によりエステル
を取り出すことができ,55 ℃で,1時間反応
させることで89%の収率でエステルを得ること
ができた。
4 指導と助言
様々な壁があったが,生徒と共に考え,話
し合うことで乗り越えることができた。
(指導教諭 東谷 修・村上 欣央)
審査評
高校生らしい斬新なアイデアで実験を行っ
た。安全で低コスト化を図る意味で社会に役
立つ可能性が高いと評価できる。
審 査 員 長 講 評(科学論文の部 小学校)
「こだわり」が新たな価値を生み出すエネルギーとなる
千葉市立緑町小学校長
淺 野 千 秋
平成25年度千葉県児童生徒・教職員科学作品展
小学校科学論文の部において,特別賞をはじめ輝
かしい賞を受賞されました小さな科学者の皆さ
ん,おめでとうございます。また,これまでご指
導くださいました先生方,そして,児童の研究を
ご支援くださいました保護者の皆様方にも心より
お祝い申し上げます。
この千葉県科学作品展の科学論文の部は,今年
で57回目となります。出品された作品の中から千
葉県の代表として全国展に出品された作品は,毎
年素晴らしい成績をおさめており,千葉県の科学
に関するレベルの高さが感じられます。
今年度は,県内各地の小学校から8,406点の科
学論文が出品され,その中から選ばれた185点の
論文がこの県展に出品されました。
出品作品の傾向を領域別に見ると,キアゲハ,
カタツムリ,セミ,アサガオ,ヒマワリなど,身
近な生物に関する研究作品が全体の60%と最も多
く,その次は物理関係が23%,化学関係が10%,
地学関係が7%の順となっています。生物関係の
論文は,全学年に渡って高い割合を示しています。
地学関係は,観察・実験が難しいせいか,毎年少
ない割合となっています。
多くの作品が夏休み期間中に取り組んだものと
思います。長期休業を有効に使い,長期間にわた
って継続観察を行い,何度も実験観察を繰り返し
て,数多くのデータを獲得した上で,結論を導き
出すように研究に取り組んだ作品が多く見られま
した。中には数年間にわたり,ひとつのテーマに
こだわり続けた作品もありました。鋭い観察眼や
すばらしい着想をもった実験で,それらの仕組み
や規則性を見つけ出している作品も見られまし
た。実験や観察の際に,実験道具を自分で工夫し
て作っていることにも感心させられました。
その中で,千葉県知事賞を2年連続して受賞し
た鈴木誠人さんの研究作品「キアゲハの休眠決定
条件の解明」は,昨年度の「キアゲハの休眠スイ
ッチはいつ入るのか」では解明しきれなかった課
題を,さらに詳しく追究したものです。100匹以
上の幼虫を1匹ずつ分けて飼育し
ていること,温暖化の影響も考
慮した温度設定をきちんと行っ
ていること,そうした精密な条
件を整えた上で,キアゲハの休
眠を決定づける結果を最後に導
き出していました。研究者のこだわりと,計画的
でていねいな研究の進め方,そして客観性の高い
結論等,県知事賞にふさわしい作品だと思います。
千葉県教育長賞を受賞した用松里海さんの作品
「天気の研究パート5」は,天気について追究し
て5年目の作品となります。地学研究発表会で受
けたアドバイスを基に,自力で天気予報を行い,
数多くのデータから天気の諺を発見しました。
千葉市教育長賞に輝いた,遠藤陽和さんの「太
陽を追いかけて動くヒマワリのなぞを探る!」は,
ヒマワリの子葉から開花までを5段階に分け,
毎日観察記録を取り,多くの実験観察結果から
課題に迫る考察がわかりやすくまとめられた作
品です。
研究データの客観性と信頼性を高めるために,
より多くのデータを収集する努力と,データから
得られる結論を客観的に,かつわかりやすく表現
する力が思う存分に発揮された作品が,この優秀
作品選集に数多く掲載されています。今後の研
究への取組に,大いに参考にしていただきたい
と思います。
どんな優れた作品も,そのスタートは身近な自
然であったり,日常の風景の中にあったりします。
当たり前のように見過ごしてしまうものでも,
じっくり見つめてみると,たくさんの秘密が隠
されていることがあります。自分なりのこだわ
りを持って対象を見つめてみることが大切だと
思います。
現象には必ず“理由”がある…。探偵ガリレオ
の言葉が,勇気を与えてくれます。
受賞者の皆さん,おめでとうございました。
−36−
審 査 員 長 講 評(科学論文の部 中学校・高等学校)
アイデアと論理で科学にチャレンジを!
千葉大学教育学部教授
鶴 岡 義 彦
秋になるとノーベル賞が発表されますが,その
合,なにがしかの優れたアイデ
頃は,本県科学作品展の審査・発表の時期でもあ
アに基づいていて,論理的に一
ります。受賞者の皆さん,おめでとう。助言され
貫した構成となっています。
た先生方や背後から支えられたご家族の皆さんに
も心からお祝い申し上げます。
アイデアを産み出すのは簡単
ではありませんが,日頃の心が
中学・高校の部では,昨年とほぼ同数の出品が
けが大事だと思います。理科の
あり,中学115点,高校24点が県レベルの最終審
学習事項を,現実の自然界や私たちの生活場面に
査に掛けられました。その審査には,約20名の専
適用して考える習慣をつけたいものです。複数の
門家が当たりました。
単元の内容を結びつけたり,物理と生物など科目
を超えて関連づけたりすることも大切でしょう。
◆上位の受賞論文
例えば,生物のDNA研究には,物理学者・化学
県知事賞を受賞した田谷昌人君(千葉市立大椎
中3年)は,鳥にある小翼羽の働きについて,実
者が貢献してきました。ロボット研究には,生物
学の知見が大きく寄与しています。
験による物理学的考察と生態学的考察とを結びつ
次に論理的な論文構成ですが,この点は,論文
けた研究を行いました。増田崇君(渋谷教育学園
を書く目的を考えれば分ることです。論文は,研
幕張高2年)は,シリカゲルを触媒としたエステ
究成果を公表するために書きますが,更に言えば,
ル合成法の開発で,合成のための最適条件を決め
他者に読んで貰うために書くのです。ですから,
る実験やモデルを使った考察を行いました。いず
読者にとって読みやすく,読者に対して要点が適
れの研究も,緻密な実験と考察がなされ,論理
確に伝わることが必要です。数学の証明問題の解
的にまとめられた論文で,審査員の高い評価を
答のように,筋道だった展開を心がけて欲しいと
得ました。
いうことです。
県教育長賞では ,アゲハチョウのうちキアゲ
ハがヤドリバエに寄生されない理由について,複
数の仮説を立てて探究した論文(市川四中,上田
君),と銅粉の酸化実験が理論(定比例の法則)
◆審査員の声
受賞に至らなかった論文にも労作が多いだけ
に,審査員の間で,いくつかの話題が出ました。
通りにならない原因を究明しその解決策を示した
「もう少しで受賞に値するレベルの研究につい
論文(長生高,鈴木さん・喜多さん)の2作品が
ては,アドバイスを,誰が・どの時点で・どう与
受賞しました。定比例の法則は中学での指導法改
えるか工夫が必要ではないか。」これは,それぞ
善に役立つ,と審査員を驚かせました。また千葉
れの学校,市町村,教育事務所単位の理科教育部
市教育長賞には,あわの不思議(木更津市立清川
会でも話題にして欲しいことです。研究の開始時,
中,山田君)とマウスのチームワーク(千葉東高
途中,終了後のそれぞれで必要なアドバイスがあ
生物部)が選ばれました。
りそうです。
そしてまた,「もし出品者である生徒たちと審
◆科学論文のポイント
査に当たった委員の双方に時間的余裕があるな
出品された論文の上位のものは,秀作,労作揃
ら,両者が直接面談する機会が,ほんの5分間で
いで,順位づけるには大変な苦労が必要でした。
もとれれば良いのだが…」という声があったこと
優れた研究・評価される論文は,たいていの場
−37−
をお伝えしておきます。
審 査 員 長 講 評(科学論文の部 科学技術賞)
科学の可能性と科学技術の創造性と向き合う
東京理科大学理工学部教授
伊 藤 稔
本賞は,科学論文の部に応募した論文を科学
技術,生命科学や数理科学の新しい視点から顕
彰することを目的に平成18年度から新たに設けら
れました。平成25年度で8回目となり,審査は,
大学や企業関係の5名の委員で行われました。
本賞の目的から,他の賞とは別の観点から選考
する趣旨のため,小・中・高の先生方はあえて,
この賞の選考に関わっておりません。今回対象
になった論文は11,600点の中から県展に出品され
た324点(小学校:物理分野42点,化学分野20点,
生物分野111点,地学分野12点,中学校:物理分
野37点,化学分野13点,生物分野54点,地学分野
11点,高校:物理分野2点,化学分野11点,生物
分野8点,地学分野3点)でした。
最終審査の結果,次の2点が科学技術賞に選ば
れました。
1.船橋市立金杉台小学校2年生の澤村諒汰郎君
「もしもお姉さんと赤ちゃんがいなかったら…?」
2.私立渋谷教育学園幕張高等学校の増田崇君
「新しいエステルの合成法」
澤村君の論文は,着想が大変ユニークで,普
段の生活ではともすると気づかない人間の身体
の機能を子どもの透き通るような視点で分析し
ていることが受賞理由です。また,高校生の増
田君の論文は,すでに工業化学分野におけるエ
ステルの生成法を高校生らしい斬新なアイデア
を発揮しながら実験を行って成果を出した論文
です。
2013年度のノーベル物理学賞が10月に発表さ
れました。物質の質量を決める「ヒッグス粒子」
の理論を提唱した2人の物理学者に贈られまし
た。約50年前の1964年にベルギーのブリュセル
自由大学のアンソワ・アングレール名誉教授が
素粒子の質量を持つ仕組みを説明する理論を発
表し,直後にスコットランドのエジンバラ大学
のピーター・ヒッグス名誉教授が質量をもたら
す「ヒッグス粒子」の存在を予言し,それが
2012年に確認されたことが受賞理由として報道
されました。
ギリシャ哲学に始まる西洋哲学が「有」を中
心とした「存在」の哲学であり,
キリスト教の影響を受けながら
絶対性,決定論性を追求して,
19世紀までの物理学の考え方
(曖昧さを許さない厳密性・絶対
性)にも大きな影響を与えてき
ました。
しかし,量子力学の発見からスタートした20
世紀の物理学は,物質を観測することの限界
(波動性と粒子性)を発見し,19世紀までの科学
的な因果関係を否定することになりました。あ
る場所に粒子が存在することと同時に,その粒
子がどのような速度を持って動いているかを正
確に観測することができません。具体的には,
理論物理学者のデュラックらが,アインシュタ
インの相対性理論(質量とエネルギーの等価性)
から,電子のもつ波動方程式を作りました。す
るとそこに負の質量をもつ電子の存在が浮き出
てきました。すなわち,質量を負と見るかわり
にその粒子の持つ電荷が電子とは逆の正である
と考えて,これを陽電子と名付けて,その存在
を予言しました,その2年後に,陽電子が宇宙か
ら飛来する宇宙線の中に実際に発見されました。
電子を鏡で映したような粒子(陽電子)の対が
ガンマー線(光)から偶発的に作られることも
示しました。
東洋思想の陰と陽が和して光となり,光が陰
と陽に分かれるという陰陽説をうらづけるよう
な物理現象が確認されました。さらに,物質を
作っている粒子は,粒子と言えば粒子の振る舞
いをしますが,宇宙を駆け巡る波の振る舞いを
し,エネルギーの塊と見ることもできます。そ
こに離れてじっとしているものではなく,常に
変化し,動き回り,姿を変え,他の粒子との相
互作用をしている,東洋哲学における「気」の
考え方と共通する思想が背景にあると見ること
もできます。
今年も子ども達の澄んだ目で,森羅万象を読
み解く果敢な研究成果にふれた時間でした。
・参考文献『老子と現代物理学の対話』
(長谷川晃
著,PHP研究所,1988年)
−38−
Fly UP