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31生活科学研究誌 ・Vo
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0
0
2)
英国 コ ミュニテ ィ ・ケア改革
サ ッチ ャーか らブ レアへ
-
一対人社会サ ー ビスの効率 と質 を視点 として -
山田亮一
大阪市立大学大学院生活科学研究科
(
平成 1
4年8月2
6日受付 :平成 1
4年 1
0月2
3日受理)
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効率,サー ビスの質 e
は じめに
英国で1
9
9
0 年 に成立 した 「国民保健サ ー ビス及 びコ
スの供給政策モデル として紹介 された。
●
また、公的 なサー ビス供給 に市場原理 を導入す る。そ
(
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)
ミュニテ ィ ・ケア法」
の前捷 となる規範 的 な経済学 の 自由競争 の原理 を援 用
は施設中心のサー ビス供給か・
ら在宅 な どの コ ミュニテ ィ
し、サー ビス供給の効率 とその質は共存で きるものだ と
サービスへ転換 を図るものであ った。その変化 は根本的
す る。 しか しなが ら、 コ ミiニテ ィ ・ケア改革において
な変革であ り、地方 自治体や民 間非営利部門の役割 を変
も政策運営上、 どち らか一方 に片寄 りが生 じている。実
質 させ、専 門的な実践の境界 を大 きく変 える ものであっ
際、経済的に も不均衡 は常 に発生 してお り、効率 と質は
た.今 までの コミュキテ ィ・
ケア との相違点 は① サー ビス
対立的な概念 として存在 し、政策運営 において も混乱 を
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ng)を図 る、
供給 をニー ドの高 い者へ の重点化 (
きた した。
ここでは、コ ミュニテ ィ ・ケア改革の発展 に寄与 した、
② 資源配分の優先順位 を設定、(
卦ケアマネジメ ン トやモ
ニ タリングな どに依 るサー ビスの質の保障、④ 多元主義
ケアマネジメ ン ト制度 と経済学的な根拠 となった疑似市
的な福祉 の混合経済 をもとにサー ビスの外部化等がある
Qua
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Mar
ket
)を もとに福祉多元主義の混合経済 を
場(
1
)
。
支 えた各部門の対応変化 を分析 し、サー ビス供給の効率
国内的にはい くつかの問題 を抱 えなが らも、対外的
とサー ビスの質への影響 を検証 したい。
には高い評価 を得 た政策で、多 くの国に対人社会サー ビ
(
1
)
- 23
2-
生活科学研究誌 ・Vo
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ところで、 コ ミュニティ ・ケアほ ど政策運用過程で数多
介護者協会の調査 では 「
在宅介護者の大多数 は1
9
9
3年の
くの解釈がなされ、各政党の政策変遷 のなかで手垢がつ
コ ミュニテ ィ ・ケア改革の下にある とはいえ、その暮 ら
け られて きた言葉 はない。それは 「
救貧法」 を淵源 とし
し向 きは何 の改善 も経験 しない -
た福祉政策へ のイメージとも重複す るが、ティ トマスの
言葉 を援用す れば、「そ こにはなにか甘 いバ ラの香 りや
新 しく経験 した在宅介護者の半数以上 は、ニーズに合致
保健 医療 と社会福祉 のハ イブ リッ ドな結合 を連想 させ
」3) と述べ ている。 コ ミュニテ ィ ・ケア改革
満 である。
)
。 検証 を進めるにあた り、 コミュニテ
る」響 きがある2
について、介護者へのサー ビスや情報量不足 、介護者へ
・。アセスメン トを
す るサー ビスは提供 されていないことか ら、いたって不
ィ ・ケア改革で もその再現 を示す ものがあ り、い くつか
の核 となるサー ビスが提供 の不備、 また、介護者への支
の危供 を抱かせて しまうものである。
援や レスバ イ ト・ケアにおいて さまざまなニーズに反応
で きない等 の批判がなされた。 この ころ 「
子 どもの介護
Ⅰ.
コミュニテ ィ ・ケア改革の実践 とそれを取 り巻
.く状況
者」の存在が注 目されるな ど、介護 を取 り巻 く状況が よ
9
95年 には介護者法 として成
り問題化 した。 これをうけ1
立 させた。
1
9
8
9年、新 しい仕組み としてのコ ミュニティ ・ケア改
革は政府の自書 「
人々のためのケア」 で提言 され、1
9
9
0
またコ ミュニテ ィ・
ケア改革以降で も、インフォーマル
年 には 「国民保健サー ビス及 び コ ミュニテ ィ ・ケア法」
な部分の存在の大 きさは無視 で きない。1
995年、英 国 (
北
として成立 した。 コ ミュニテ ィ ・ケア改革 におけるサ ッ
3%はイ ンフ ォーマルな
アイル ラ ン ドを除 く)の大 人の 1
チ ャー政権 の方向性 としては福祉 の混合経済 を基礎 に、
介護者である。人口の4%は 自宅で誰かを介護 している。
サー ビス供給 の多元化、民営化、契約化 を推 し進めた。
人 口の8%は他の家庭 の誰 か を介護 している。 また介護
また、民間部門重視、公益団体 (
登録チ ャリテ ィー)
への
/4は一週間に一度以上の介護 を し、
3%は介護の た
者 の3
優遇税制、ボランテ ィア活動の推進 をお こなった。 しか
め最近、
友人や親戚 と会っていない と報告 している4
)
。
しなが ら・
、保健医療 と福祉の調整 と連携 の不十分 さ、サ
また1
9
96年の報告ではイ ンフォーマルな人 々か らのサ
ー ビスシステムの硬直 さ、非効率性、資源配分の不適格
ポー ト状況 にらいて示 している。介護者 としては大人の
さの課題の解決策 として、民営化、市場原理の導入には
4
0%)、配偶者 (
3
2%)、公的なサー ビスや ボ
自分の子供 (
反発があった ものの、 コミュニテ ィ ・ケア改革の基本的
1
6
%)、友人 ・隣人 (
1
2%)、民間サ
ランタリーセクター (
な 目標である 『
可能 な限 り住み慣 れた 自宅や地域で、家
11
%)である4
)
。 新たな制 度 としてのケアマ ネ
ー ビス (
庭的 な環境で過 ごせ るために、そのニーズに応 じて保健
ジメン トがあるに もかかわ らず、イ ンウ ォーマルな介護
医療 、福祉、住宅な どの関連サー ビス を総合的に、継続
者がいか に大 きな役割 を果た しているかを示す ものであ
的に提供す る』政策 を支持 し、その成果に期待する声が
る。改革開始か ら順風満帆 な運用ではな く、かな り偏在
高 まっていった。
したかたちで資源の分配がお こなわれた といえる。意図
1
9
9
3年には コミュニティ ・ケア改革が本格的に開始 さ
した政策 目標 と実態 にはか な りの禿離があった。 この よ
れた。中央政府 はサー ビス体系の変化 よ りも速やかな改
うな状況下で開始 された コ ミュニティ ・ケア改革ではあ
革の実行 を求めた.地方 自治体 は新 たなシステムの開発、
るが、ケアマネジメ ン トや各供給主体 にいかなる影響 を
調整 しなければならず、その変化 にまた適応 しなければ
与 えたか を次 に考察する。
な らなかった。 ところが、改革早 々にい くつかの課題 を
抱 えることになった。一つには在宅ケアサー ビスの全般
的な発達の度合 いが遅いことがわかった.各地方 自・
治体
Ⅰ.
対人社会サービス供給の新原理 とその現状
1
.ケアマネジメン トの実施 とその問題点
コミュニティ ・ケア改革ではケアマネジメ ン トが基本
ではサー
l ビス供給量の不足が元凶 とな り、おのおのの採
用す るケアマネジメ ン トのシステムに変更、供給調整や
的な装置であ り、アセスメ ン トとそれに基づ くケアマネ
引 き伸 ば しがおこなわれた。その結果 として、ニーズの
ジメ ン トの実施がサービスの質を保障 し、サー ビスを効
高い高齢者 にサー ビスを傾斜 させ る方法 をとることとな
率的に提供す るうえで要になるものであった。その運用
った。サー ビスめ重点 的配分 は低 い レベ ルのサー ビス
如何 によっては大 きな成果が見込 まれていた。
(
洗濯、買い物等)の利用 を困難 に した。地方 自治体の提
ところが、各地方 自治体が実施 したケアマネジメ ン トに
供す るホームヘルプサー ビスで も目標 とす る対象 に集中
は多 くの相違があった。中央政府が政策推進す るにあた
的なサー ビス供給がおこなわれた。
りガイ ドラインとしてい くつかの提言 を している。 1
9
8
9
さらに大切 な問題 としては介護者の存在である。在宅
年、保健省 は地方 自治体が コ ミュニテ ィ ・ケア改革 を実
(2)
ト
「
山田 :英国 コ ミュニテ ィ ・ケア改革
-
サ ッチ ャーか らブ レアへ
-2
3
3-
施す る上での管理職用手引の中で 5つのモデル①単一ケ
実施 されたため、サー ビス内容 と質の公平性 に問題が生
アマネジー
ヤーモデル、②社会的企業家モデル、③ 中核課
じた。その問題点 として、次 の ものがある。
題共有モデル、④管理的モデル、⑤利用者モデルを示 し
(
1
)地方 自治体 に対す る厳 しい歳 出抑制策 に よ り、要介
ている。 また保健省社会サー ビス監督庁の1
9
96年度の報
護度の高 い利用者へ の重点 的 にサー ビスの供給 と要
イ
告書 では 「
管理型 ケアマ ネジメ ン ト」 調整型 ケアマネ
介護度の低 い人へ のサー ビス抑制 となった。 自立促
ジメン ト」「
集中型ケアマネジメ ン ト」 の3
つの併用 も薦
進、要介護状態 の悪化 防止 か ら意味のあるサー ビス
めている。 さらに、地方 自治体 での実施状況 を示す もの
が な くな り、高齢者の緊急入院が増加 した。
997年98年 に実施 されたイ ン
として次の ものがある。 1
(
2)ケアマネジメ ン トの手続 きに時間が取 られ、フォロー
31の地
グラン ドの地方 自治体 のア ンケー ト調査 では、 1
ア ップの手続 き(
ニーズの再評価 とケアサー ビスの変
方 自治体か ら回答 を得ている。 その中で タイプ別 自治体
更)
がで きず、利用者の要介護度の悪化や放置がある。
5の 自治体 の うち5つ
として区分で きる要件 を満た した9
(
3)介護者の支援が不十分である。
の 自治体 は高度なニーズや リス クをもつ人々に対 して特
(
4)個 々のサ ー ビス利用 の判 定 にお ける地 方 自治体 間、
別なケアマネジメ ン トを実施 してお り、 また6
3の異 なっ
ま.
たサー ビス間の整合性 の欠如。利用可能 なサー ビ
た調整がお こなわれてい る 土 とが わか った。 さ らに、
スに限定 され、利用者の ニーズにあ う弾力的 なサー
グループ別 に分類 して も、まとま りが な く、
各 自治体で共
ビス提供で はない。
(
5)ケアマ ネ ジメ ン ト方式 に よるサ ー ビスの認定基準 は
通す るものが見つ けに くいなどの調査結果がでている5
)
0
このことは、政帝 のガイ ドライ ンに従 ってはいるが、各
地域 間格差があ り、その運用 において も文言が抽象
地方 自治体では地域の実態 に適す る各 々独 自の基準 で運
的で、融通性が ない。
(
6)ケアマ ネ ジメ ン トのサー ビス決定過程 での透明性 が
営 している状況が推測で きる。
な く、利用者のニーズ に呼応 で きない。利用者第-
また、政策運用 において も、 ケアマ ネ ジメ ン トの前埠
9
76年 よりケン ト州 とチ ャリス達のPSSRU
となるものは1
主義のサー・
ビス提供 になっていない。
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)が研 究調査 し
この ように新 たに導入 されたケアマネジメ ン トは多 くの
たケ ン トコ ミュニテ ィケア計画 を基本 とし開発 されてお
課題 を抱 えていた。 さらに、本来意図 したニーズに基づ
り、集中型 ケアマ ネジメン トに属す る ものであるが、現
くサー ビス捷供や利用者のエー ジェン トとしての役割 よ
在普及 しているケアマネジメ ン トと意 図 して差 別化 し、
りもニーズ と選好 を市場 の反応で改善するだけで、不足
チ ャリスはPSSRU型 ケアマ ネ ジメ ン トと して いる。彼
した予算のなかでサー ビスの質は軽視 され、 コス トの安
らの研究の成果 として虚弱で高 いニーズを もつ高齢者 に
く、 よ り効率的なサー ビス供給 を実施す る新たな門番 と
生活
対 して集中的なサ ー ビスの提供す ることは、QOL(
しての性格 を強める結果 となった。
の質)指数で利用者や介護者に良好 な成果 をもた らした。
99
8年福祉改革の緑書のなかで、一人当た り
さらに、1
健康 と満足の レベ ルを高め、ケアのス トレスをよ り低め、
の社会福祉面の支出が ドイツや フランスの支出に比べて
ほ とん どのケースで 自宅に残ろ うとす るタラ・
イエ ン トに
約半分で しか な く、ギ リシアやスペ イ ンな どのそれ よ り
かかる費用 と他でサー ビス提供 を受 ける費用 と比べて も
も低 い とい う報告がある7
)
。 この ことはケアマネジメン
同等か よ り少 ない ものであった と報告 している6
)
0
トが高齢者の対人社会サー ビスの費用対効果や効率 を中
しか し、ニーズの少 ない利用者 までケアマ ネ ジメ ン ト
心 として対応 してお り、その面では著 しく改善 されたが、
を拡大す ることは当然結果 も相違す る し、その成果 を検
ケアマネジメ ン トに よる選別 的、不公平 な分配であ り、
証す るため には さまざまな調整 や調査 を前接 とす る こ
サービス供給力 も地域 間格差があるなかで、相当混乱 し
と、 さらに、調査時 と較べて、アセスメ ン トが変化 して
た状況であるのは否定で きない。
お り、その対応 についての研究 も必要 となる。実際 には
2
03
年 4月 よ り医療 、介護、福祉 を統合 し、 コ ミュニ
新 たな調査 をせず、各 自治体の判断で従来か ら実施 して
テ ィ を 中 核 と した イ ン タ ー メ デ イ エ イ ト ・ケ ア
いたサー ビス給付 の体系の上 に新 しくケアマ ネジメン ト
(
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e)が実施 され る。そ こにおいて、ケ
を写 し、接合 した ものだけであった。
アマネジメ ン トが今 まで果た して きた役割、有用性が問
コ ミュニテ ィ ・ケア改革後、ケアマネジメ ン トの抱 える
われることになる。それを踏 まえ、ケアマ ネジメ ン トが
初期の問題点 として制度運営が不慣 れなこと、財政的な
インターメデ イエ イ ト・ケアのいかなる部分 を担 当す る
課題、サービス供給不足等 による、い くつかの問題点が
のか、 どの ようにそれが接合 されてい くか は今後の地方
発生 した。 さらに、 コ ミュニテ ィ ・ケア改革が教条的に
自治体の運用 にかかって くる。
(3)
-2
3
4-
生活科学研究誌 ・Vo
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.1 (
2
0
0
2
)
2
.
疑似市場の形成 とその役割
に まとめている。 「
疑似市場 は提案者が期待 した利益 を
対人社会サービスの供給 はコミュニテ ィ ・ケア改革以
ほ とん ど生 まなかった し、批判者が予言 した ような完全
降、一変す ることになる。その戦略的 な経済理論.
として
な失敗 もなか った。
」9) す なわち、疑似市場が有効 に機
疑似市場が導入 された。従来、公的な部門等が独 占的に
能す る前提条件はまだ、十分整備 されていなかった と述
地域 でのサー ビス供給 を してお り、その硬直的なサービ
べ ている。そのことは、機能すべ き疑似市場 に変わる機
スの供給 は非効率で選択がで きない等 の問題 を抱 えてい
能 を政治や他の部 門が代替 したことになる。 よって、疑
た。 コミュニテ ィ ・ケア改革 は公的なサー ビスの弊害 を
似市場が当初想定 した資源の効率的で公平 な最適配分 は
な くし、 より自由なサービス選択が可能 となるため、 ま
十分成果 として発生 しなかったことともなる。 自由競争
ず公的部門を購入者 と供給者 に分離 し、多元主義的な福
による均衡理論 は競争や価格 にとっては有効 で も、競争
祉混合経済 を基礎 とし、供給者間競争 を伴 う供給体制 を
の もた らす効果 として副次的に発生す るサー ビスの質 を
整備 した。財源は公的部門が独 占す るが、供給 は民間部
高めることには有効ではなかった。 また、市場 を需要 と
門な どが競争入札 によ り獲得 し、サー ビスを供給す る。
供給で決 まる.
と考 える狭小 な経済学的なモデルでは対人
ここに疑似市場が成立す る。規範的な経済学 における自
社会サー ビスの直面す る課題の把握が困難であった こと
由競争 は資源の公平で効率的な最適配分 をもた らす こと
も見逃せ ない。
になる。 さらに、 これはサー ビスの供給が市場 のメカニ
3.
対人社会サービスの提供 とサービスの質
ズムに対 して有効か を検証す る理論的 な枠組み を設定す
ることも可能 となる。
コミュニ テ ィ ・ケア改革の新原理 として導入 されたケ
ル ・ダランとバー トレッ トは政策展 開するうえでの理
アマネジメ ン トや疑似市場 はサービス供給の効率の改善
論的構 図 として疑似市場の中で市場 メカニズムが有効か
に寄与 したが、必ず しも、利用者 に対 してサー ビスの質
評価 す る4つの基準 として①効率性 、②応答性 、③選択
を伴 った もの とは言 えない。それでは どの ように してサ
の機会の保障、④公平性を指標 として提示 し、 この 目標
ー ビスの質 を高め ようとしたのであろうか。
を達成す る条件 として③ 市場構造、 ⑧ 情報、 ◎ 取引費
施策の要 として次の点が挙げ られる。地方 自治体 は対
用 と不確 実性 、 ⑳ 動 機付 け、 ⑤ ク リー ムス キ ミング
人社会サー ビスの供給主体か らその財源者 ・調整者 とし
つの問題領域の特 定化 を提示 した8
)
.
(
いい とこ取 り)の5
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)
へ と役割 を転化す ることで、
ての葵件整備者 (
つの問題領域 において ク リームスキ ミングの問
これ ら5
サー ビス供給 の管理調整 に徹す るこ とがで きる。 また、
題が競争の弊害 として関心 を呼んだが、それほ ど大 きな
入所施設の監査制度や苦情処理制度の導入 は利用者の消
問題 は引 き起す状況 にはならなかった。
費者主権 を補完す るもの として機能す ることも可能であ
この経済的な理論的枠組みに沿 った、実際的な運用が
る。 さらに、ケアマネジメ ン トではサー ビス優先アプロ
図 られたか どうかが問題 となるが、理論上の課題がい く
ーチか らニーズ優先 アプローチに転換 し、利用者のニー
つかあった。 当初か らソー シャルケア市場が未成熟で、
ズに合 うケアプランが実施 され生活の質を高めることを
市場参加者や供給量 も絶対量が不足 していた。消費者 と
目的 としている。そ こではアセスメ ン トをお こなうもの
しての利用者や介護者の消費者主権が行使で きない状況
と、サー ビス提供者 に分離l
されることで利用者や介護者
であった。入札競争面皮で も長期契約 の弊害や公的部門
は選択で きるサー ビスが増 える。ケアマネー ジャーは利
の購 入独 占に よる価格支配力 の存在 は市場参入 を抑制
用者のニーズか らサー ビス情報 を提供 し、そのサー ビス
し、競争促進効果 を低減 させ た。 さらに、地方 自治体 に
選択 に基づ いて満足度の高い ケアプランを立てることで
おいて、サー ビス料金の徴収 も各 自治体 に委任 されてい
利用者や介護者の利益 を守 る代理人 としてその権利擁護
るために、制度の運営方法やサー ビス様式 も異 なってい
が可能 となる。 この ように守 られた消費者主権 を利用者
た。 この ように、各地方 自治体で統一 された基準がない
や介護者が行使す ることで、 より高いサービスの質が保
ことが疑似市場の把握 をより困難 に した。
障 されることになる。
1997年 ブ レアは選 挙 公 約 の 1っ て して掲 げていた
ところで、 コ ミュニティ ・ケア改革の開始早 々、条件
NHSの抱 える大量 の待機者 の問題解 決策 として、内部
整備者 としての地方 自治体 はい くつかの問題 を抱 えてい
市場 (
原理的に疑似市場 と同 じ) を廃止 したが、競争原
た。
.
慢性的 な財源不足で、改革の完全実施が危ぶ まれた。
理 を否定 したわけでな く、パ ー トナー シップ による新た
機能が二つ に分割 された管理部門 と現業部門 との間での
な関係のなかで これを再生 させ よう七 している。最近の
緊張 と相互不信が続いた。新 しいシステムの運営が複雑
論文のなかでル ・グランは、疑似市場 について次の よう
にな り、、
仕 事量や運営 コス トが増大 した。地方 によ りサ
(4)
+
1
1
■
山田 :英国 コ ミュニテ ィ ・ケア改革
-
サ ッチ ャーか らブ レアへ
-2
3
5-
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i
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l
ス資源 は偏在 し、民間部門や民間非営利部 門の活動
サー ビスの質の管理強化策 として200年 には 「ケア基
の有無が各地方 自治体で異 なっていた。財政 と政策決定
準法」(
Ca
r
eSt
a
nda
r
dsAc
t
)を制定 し、監査や規制の強
は中央政府 に握 られ、 また、実施や運営 に関す る責任が
化 を図っていろ。そ こでは独 立 した規制機 関 としてケア
不明確 な上、それ も外部 に委ねて しまった こ とによ り、
基 準 委 員 会 (NCSC:Na
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onalCar
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andards
地方 自治体 はこの二つの権限を失 った。その うえ、根本
Co
mmi
s
s
i
o
n)による規制や基準 の設定や監査 による改善
的な問題 として、地方 自治体 と民 間部 門 との契約内容が
通知、訴追、登録廃止、施設 閉鎖命令 を小規模 なサー ビ
未熟で、計画性が な く、サー ビスに対す る評価 の実施が
ス提供者 まで拡大 して実施 している。 また質 を守 るプロ
困難であった。
グラム (
Qua
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yPr
o
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c
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sPr
ogr
a
mme) としては、サ
ケアマネージャーで も利用者や介護者の利益 を支援す
ー ビスを提供す る従事者がサー ビスの質 を保障で きるた
る技量、職務上行使すべ き自治権が不足 していた。彼 ら
めにソー シャルケア委員会 を設置 して、 ソーシャルワー
の業務 は民 間部門 とのサー ビス契約 に終始 し、高齢者へ
カーやス タッフ への訓練や管理 をお こなっている。 さら
の尊敬や威厳が示 されず、 自己決定 を促せ る適切 な情報
に は、2000年 か ら5年計画で地方 自治体 のサー ビスの質
の提供等が果たせ ていないな・
ど、彼 ら自身の問題で もあ
を高めるためベス トバ リュー政策が実行計画 に基づいて
った。
実施 されている。
1
991
年7月、サ ッチ ャーか ら政権 を引 きつ いたメイジ
この ように、
消費者主権 とい う権利実態があい まいで、
ャーは社会サー ビス供給の民営化 を進めるための政策 と
市場原理 による効率 を偏重 した政策か ら、 よ り多 くの資
して市民憲章 (
Ci
t
i
z
e
n'
scha
r
t
e
r
)を公布 した。 これは国
金提供、規制や監査の強化 に よる公的な介入、 さらに教
民 を公的なサー ビスの消費者 として位置づ竹 、消費者主
育や訓練 とい う基本的な政策 によ り、サー ビスの質を高
権 をテコとして官僚主義的な公的なサー ビスの改善 を図
める政策へ と転換 させ ようとしている。
ろ うとする ものであったが、実態 として利用者への権利
町コミュニティ ・ケア改革 における供給主体 と購
が伴 っていなかった。消費者主権 を前提 としなが ら、福
入主体の変化 について
祉 の混合経済 によるサー ビス供給 は経済性 、効率性、費
用対効果のイ ンセ ンテ ィブを高めるように機能 し、サー
1
9
93年 よ り実施 された コミュニテ ィ ・
,
ケア改革は民営
化,契約化推進のための装置 として機能 した。理論的な
ビスの質 を高める方向には向かわなかった。
ところで、利用者や介護者 にこれ らの権利が一向に魂
役割 を担 うはずの疑似市場やケアマネジメ ン トが十分機
実味 を帯 びてこないのは、深淵 に英国のサー ビス と権利
能 を果たせていないに もかか わ らず、 コ ミュニテ ィ ・ケ
のつ なが りに問題がある と指摘 され るO 「
福祉 サー ビス
ア改革 はJ
t
l
!調 に進展 した.それはなぜであろ うか.次 に
の権利 は国民保険 とは異 な り,強行実行性 の実態 を備 え
福祉の多元主義 におけるサー ビス供給体制 について考察
てお らず、単 なる抱負 を意味す る ものであ り、その権利
を進める。
福祉多元主義の混合経済の下で競争入札 に参加す るな
を実行す る保障はない。権利 といって も目標や願い事の
リス ト以上 の ものではない10)。」 プログラム規 定的であ
かで、民間非営利部門 (
ボラ ンタリーセクター)、串間営
り、実態のない権利性 は国民 をその権利の行使 を困難 な
利部門、公的部門、 さらに地方 自治体がその機能 を変質
状況に追いやる。特 に、高齢者 はサー ビスへ の不満や不
させていった。特 に、新 しい行政運営理論のニュー ・パ
平 を表明す ることは少 な く、課題 とな りに くい状況 をつ
ブ リックマネジメ ン.
トの導入 は各セクターを経済性や効
くっている。 よって、 コミュニテ ィ ・ケア憲章や市民憲
率性 を追及す る ものへ と変質 させ ることで、新 たに生 ま
章 は世論対策に過 ぎない と国民 はさめた見方 をす ること
れたソー シャルケア市場へ の適応 を促 した。 さらに、財
に もなって しまう。
政面での歳出抑制、強制競争入札 (
CCT)
、8
5
%ルールに
ブ レア政権 はこれ らの課題の解 決策 として、 1
9
9
8年以
よる特別臨時補助金 (
Spe
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nGr
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)はそれ
を加速 させた。
降、い くつかの取 り組みを している。 1
9
9
8年の 自書 「
社
Mo
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ngSo
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lSe
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vi
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s
)で3
会サー ビスの近代化」(
その結果、地方 自治体が所有 していた公的 なサー ビス
年間に3
0億 ポ ン ドの近代化資金投 入計画 を立てて、高齢
供給部門を削減 し、外部化 を進行 させ、 自治体の管理業
者サー ビス としては自立支援で利用 しやすいサー ビスの
務 をビジネス ライク化
T させた。 ボランタ リーセクターで
改善 に取 り組 んで いる。大人の優先権 (
Pr
i
or
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s
)とし
も効率指向を取 り込み、サー ビス捷供の商品化、商業化、
て 自立、一貫性- の改善、利便性 の提供、利用者中心主
く、ニーズに反応 しやすいボ ランタリーセクターが改革
義を目標 として掲 げている。
(5)
-2
3
6-
生活科学研究誌 ・Vo
l
.1(
2
0
0
2
)
当初、大 き く供給 を伸 ば した。 この ように、新 たな市場
を促 していた。一方、民間営利団体 に対 しては経験や証
の要望 に応 え、市場原理 に動員 された ことが コ ミュニテ
拠 か らで はな く、誤解や信用不足か ら福祉サー ビスにお
ィ ・ケア改革 に寄与す る一因につ なが った と考 え られて
いては 『
他 人の昔 しみか ら利益 を得 る ものは不適切 であ
いる。
』とい うのが当時の一般的 な認識であ り、 ボ ラ ンタ
る。
リーセ クターにとって有利 に活動の展 開がで きた。
コ ミュニテ ィ ・ケア改革以降、大量 の資金が短期 間の
1.コ ミュニテ ィ ・ケア改革 と民間非営利部門 (
ボランタ
リーセクター)の盛衰
うちにボ ランタリーセクターに注入 された。 団体数で も
ボ ランタリーセク ターはその時代 の政府の政策に左右
ボラ ンタリーセ クターはサー ビス供給面で費用対効果 に
1
9
91-9
4年 で2
4
%増 、成長率 で も1
9
91-95年で年平均
5%増 、 1
995年 に は公 的 な部 門か らの収 入 が全収 入 の
3
9
%を占め る まで になった1
1
)
。地方 自治体で は外部サ ー
優 れ、機能面 で も、革新性、融通性 、先駆性が評価 され
ビスを利用す るようにな りボランタリーセク ターの供給
させ られて きた。 ゥルフェ ンデ ンレポー ト(
1
9
7
7
)
では、
て きた。福祉 多元主義が実施 されるなかで、それは反応
者 とい くつかの結 びつ き、民間部門 よ り選好 される立場
的で、ニーズに接近 し、参加 的で、 またエ ンパ ワーメン
にあった。契約 は随時可能で、敏感 に反応す るボラ ンタ
トが あった。一般的 には市場 で もコス ト面で比較優位で
リーセ ク ターは一番早 く成長す る部 門 となった。
1
9
9
6
年 まで に購 入者 と供給者 の分離 は一般的 とな り、
ある と考 え られて きた。す なわち、税制面での優遇、ボ
ラ ンテ ィア を使 うこ とによ り民 間 よ り安 い費用 で済み、
地方 自治体 はボラ ンタリーセクターや民 間企業 とも.
契約
利用者や支援者か らの寄付、外部か らの援助や政府の補
をお こなう ようになった。民 間企業 も適切 なケアの提供、
助金があるか らだ。 サ ッチ ャー も改革 を進め る うえで、
専 門性 を備 えていることが わかった。 ボランタリーセ ク
費用が少 な く、効率的であるため、ボ ランタリーセクタ
ターではサー ビス内容、 クライエ ン トグループの有無 、
ーをサー ビス供給の中心 に据 えつけている。 コ ミュニテ
地理上の制約、政治的 ・専 門的なネ ッ トワー ク、経営技
ィ ・ケア改革以後、状況は一変す る。政府か らの補助金
術 、業績 の面で も規模の大 きな ものが有利であ り、契約
はな くな り、契約、サー ビス契約 に転換す る中で契約 に
内容 を実行す るには費用がかか り、小規模 な団体 に とっ
対 し、不備 な面がボ ランタリーセ クターに も目立 って き
ては経験 も少 な く、経営資源が少 な く、経営管理者 をヘ
た。一般 に考 え られていた、民 間部門に対す る優位性 は
ッ ドハ ンテ ィングす るなど経営条件 を整備す ることはコ
認め られず、競争の圧力で多 く団体 は経営面での財政的
ス ト高要 因 とな り、民 間企業 に対 しての比較優位性 は見
な圧迫や不安定性 を訴 え、解散
■ も少 な くなかった。契約
られに くくなった。 また、契約 には長期的な投資協 定や
や財源 は大規模 な団体 に集中 し、ボラ ンタリーセクター
経営 の女定性や継続性が求め られることもあ り、ボ ラン
の大部分 を占める小規模 な団体 は契約 を逃が し、契約が
タリーセ クターには自主性 の喪失、 ミッシ ョンやエ トス
あって も不安定な状況であった。
に混乱 を きたす もの も現 れた。
コ ミュニテ ィ ・ケア改革前後のボラ ンタリーセクター
さらに、ボランタリーセ クターへ の投資はソーシャル
と政府 との関係 を対比 してみ る と、 コ ミュニテ ィ ・ケア
サー ビスにおいては比較的少 ない割合で しか ないが、容
改革が開始 されるまで、民間非営利団体 と公的機関 との
関係 は契約 関係の不透明な補助金であ った。公式の契約
易 に使 い捨 てにされる傾向が強かった。そのため、民 間
l
施設ケアに対抗 してデ イケアサー ビスの提供、ア ドボカ
上 の結 びつ きは まれであ り、厳 しい もので もなかった。
シーやエ スニ ヅクマイノ リテ ィーの新 たな領域での支援
補助金 を受 けていない団体 も多 く存在 した。
1
9
8
0
年当時、
を専 門化す る傾向 も見 られた。 ところで、ボ ランタリー
中規模 クラスのチ ャリテ ィー と関係 していたボ ランタリ
セ クターの中で活発 な発言 を して きた小 さなボランタリ
ーセ クターは政府 と敵対 した部分があ ったが、相互学習、
ーセクターの声 はあ ま り聞かれな くな り、大手 ボ ラ ンタ
共同計画の参加 などの横やか な補助金 を受 けていた。地
リーセク ターの中には地方 自治体のサー ビス供給 に依存
方 自治体 は新 しい対 人社会サ ー ビスの供給 において、ボ
し、独立 した供給者である よ りも、地方 自治体の出先機
ラ ンタリーセクターの能力 に疑問を抱 いていた。多 くの
関の ようにな り、 ビジネス化 を図 り、民間企業 と変わ ら
社会 サー ビス部の管理者 は彼 らの経験 、経営 の専 門家 、
な くなった。 この ことは利用者 に とって縁遠 い存在 とな
それ を支 える施設、設備が不足 してい ること、 また、利
って きた。
用で きそ うなサー ビスやボラ ンテ ィアの種類 も不足 して
NCVO(
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)の2
0
0
2
年報告の中で も団体数 は1
4
万余 り、収 入 も2
0
01
年 は1
9
91
年 と比べ 3
1
.
7
% 増 の1
5
6
億 ポ ン ドとなって いる
おり
.
、業務 に もムラが有 ることがわか っていた。い くづ
かの ボランタリーセ クターには接触 し、団体 自治や 自立
(6)
山田 :英国 コ ミュニテ ィ ・ケア改革
-
サ ッチ ャーか らブ レアへ
- 23
7-
991
年 よ りも少 な く、7
.
55億 ポ ン ド(
総
が、事 業収入 は1
用が困難 などの課題 を抱 えている。 また、供給者が高い
.
9
%)と報告 している。 さらに外部か
収入 に占める割合4
質のサー ビスを供給す るために、ス タッフの教育、訓練
らの援助や寄付が減少 していること、契約 になってか ら
が可能 な価格 上昇の容認 を希望す る議論 も出ているが、
ボランテ ィアの募集が困難になっていることも報告 して
容易 に実行 されなか った。 この ように、サー ビス購入面
いる12)0
で も価格が中心議題 とな り、サー ビスの質が保障 されに
ブ レア政権ではボランタリーセ クターを、対人社会サー
くい といえる。 ところで、各 サー ビス価格 はボランテ ィ
ビスを支 える上で、重要 なパー トナー シップの部門 とし
アの参加 な どを含め安価 な労働力 を前提 に、他のサー ビ
て位置づ けてお り、その役割 と義務 を求めている。また、
ス価格 に比べ て も比較 的安 い価格 で設定 されているが、
その市場 に残 るつ もりであれば、ボランタリーセ クター
ヽ
自身の ミッシ ョンも市場競争 に耐 えうる もの として、 よ
市場構造の変化で上昇傾 向にある。 これ らは今後の課題
で もある。
り高い機能 を持 った形態への転換が求め られている。
地方 自治体 は、従来持 っていた施設 な どを、民間営利
部門や民間非営利部 門に売却 した り、廃止 した りしてい
2.
地方 自治体の新 たな役割
2002年 2月の調査 によ り
る。サー ビスの外部化 の拡大 (
多 くの地方 自治体 は労働党 を支持 し、イデオロギーや
0%を上 回る との回答 を得た。)は、今後の
ケ ン ト州では8
政治 目標 を掲 げてお り、「
利益 のための福祉」「
介護の商
サー ビスの需給関係、価格、サー ビスの質 に影響がある
業化」の倫理 につ いて不安 を募 らせていたが、 コ ミュニ
ため、外部化の選択 は利用者 の選択 を考 える上で も議論
テ ィ ・ケア改革 に よって イデ オ ロギーで対立す る よ り
の余地がある。 しか しなが ら、短期的にはその状態が一
も、 ソー シャルケア市場の実現可能性 について よ り実践
般化 され、地方 自治体の利用 で きる資源の総量、斡旋価
9
9
0年代中頃 まで一番の問題
的な行動 に移 っていった。 1
格の低下やケアの基準設定の責任 を提供者 に転嫁が可能
は、地方 自治体が 中央政府の政策 にいかに適応 で きるか
9
9
0年 に予測 されていたよ りも早
となる。 この外部化 は1
ではな く、今後 どの ように展開 してい くかであ った。そ
い割合で在宅 ケア、施設 ケア とも進行 してお り、民間部
の後、幅広 い市場 の知識 を活用 し、地方 自治体 は市場 に
門へのサー ビスの シフ トが見 られる。 この中で も注 目す
関す る対応 になれ、地方政治、経済、 さらにサ ー ビスの
べ きは在宅ケアサー ビス部門の急激 な成長であった。在
9
9
3年 にはコ ミュ
供給 に適応で きるようになって きた。 1
宅ケアサー ビスは登録や規制 を受けな くなったので統計
ニテ ィ ・ケア改革の中で供給者 と購入者の分離 によ り、
9
9
2年 と
では把握 しに くいが、時間数 による比較で も、1
サー ビス供給者の役割か ら、ソー シャルサー ビスの購入
1
9
9
8年 との比較では5
2%増 となってお り、増大す るサー
者 として供給、購入、調整の実質的な役割 を担 うことに
ビス需要 に対応 している。在宅ケアサー ビスでは融通性
なった。
も明 らかになってお り、短時 間、時間外、各種条件 を組
地方 自治体の管理部門 も改革 当初、競争入札 による混
み込んだパ ッケー ジ化がお こなわれてお りサー ビスの時
乱 を見せていたが、ニュー ・パ ブ リックマネジメ ン トに
間が延びている。施設 ケアの提供す るサー ビスで も、 さ
よる効率的な行政運営 に徹 してお り、 また現業部分 を分
まざまな レスバ イ トも実施 されている。 きちにデ イケア
離 していることもあ り、サー ビス提供 に関す る必要 な情
l
報が不足 している。地方 自治体 の業務内 容 は硬直的で ビ
サー ビスを提供す る施設の成長
4
)
。 この結果、多
I もある1
ジネスライク化す る傾向を強めた。
まるかの選択肢 を提供す ることとなった。
くの利用者 に対 し施設ケアサー ビスかそれ とも自宅 に留
コ ミュニテ ィ ・ケア改革が公的機関にもた らした影響
地方 自治体 はサー ビス購入において、費用負担の方法、
供給価格 に影響す る競争 レベル、利益幅、供給者 と購入
は大 きく、組織構造や経営方針 を一変 させ、サー ビス供
者の リスク、適切 な情報の共有 などを考慮 して供給者の
給 に も効率が求め られる痛み を伴 った改革であった。 ブ
満足 を得 ようと しているが、生産 コス トや供給者の収益
レアは地方 自治体のサー ビス供給 を含め、その役割 を高
はあ ま りに も少 な く、投 資 あた りの費用効率 を高 め る
めるための改革 として、ベス トバ リューを実施 している。
(
va
l
u
ef
♭
rMo
ne
y)に準 じた行動 を とっている1
3
)
。 これ
これは公 的部 門の役割 を再 点検す る施策で もあ るのだ
は市場競争 による利益最大化モデル とは異 なるシステム
が、その政 策展 開の趨勢 を見守 ることは大切 である。
である。契約の タイプとして長期 、短期、ブロ ック買い、
3.
民間営利団体の活動 とその方向性
スポ ッ ト買い、固定価格、利益 マークア ップ した ものな
どがある。利用者のニーズに応 じ、各 々の タイプを利用
1
97
0年代か ら8
0年代の民 間部門の施設 ケアサー ビスの
しているが、契約方法 として競争 を阻害 し、効率的な利
提供の拡大 は多 くの家族経営 ビジネス として、 また大規
(7)
-2
3
8-
生活科学研究誌 ・Vol
.1 (
2(
氾2)
政権の政策 を引 き継いだかたちで進め られてお り、あ ま
模 な民間資本 による市場参入 によって達成 された。 これ
は高齢者の増加 による施設入居者の増加予測、国か らの
り関心は高 くなかった。政策面で も、サ ッチ ャーがニュ
支援、 さらに社会保障予算に魂金制約 を受けなかったこ
ー ・パブ リックマネジメン トにおいて、経済性 と効率性
とで、供給者 にきって将来の収入が予想 され、最適な利
益が見込めるものであった。施設入居の委託料 は政府か
の関係 に重点 を置いたのに対 して、ブレアは効率性 と有
用性 を重視 した点 に相違がある。対人社会サービスの新
ら直接入金 されていたが、1
9
9
0年の改定により地方 自治 '
たな方向 として、M̀o
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gs
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で示 され
体がふたたび財政的な権限を持 ち、公的な支出の制限を
た近代化 を推進す るため 「
強制競争入札かちベス トバ リ
直接受けることになった。 コ ミュニテ ィ ・ケア改革後、
ューへ」、「
契約文化か らパー トナー シップへ」を提唱 し、
膨大 な資金の流入 とサー ビス需要の高 まりのなかで、民
パー トナー シップに裏打 ちされたベス トバ リュー政策を
間資本がソー シャルケア市場 に流入 し、その供給の主要
お こなっている。
ブ レアは1
9
8
9年の政策声 明の中 で5つの対 人社会サー
部門 とな り、サービス供給拡大 を保障 して きた。
従来、民間部門で注 目されていたのはサービスの質が
ビスに関 して指摘 を行っている。(
∋市場の役割、②地方
高 く、効率的経営 を していた家族経営の小 ビジネスであ
の コミュニテ ィやボランティア活動の奨励、③パー トナ
る。 これ らの供給者 に対 して も、規模の大 きい経営企業
ーシップの必要性 、④利用者や介護者のエ ンパ ワーメ ン
か らの攻撃 を受けている。・これ らは入居者数も少 な く、
ト⑤家族の重要性 を述べている.市場の由織 において も
多数の小規模 な施設は経営が困難であ り、収益上の問題
市場 は多 くの財やサー ビスを効果的に分配す る最適な手
や病気、死亡や退職 などによる主要ス タッフの欠員で、
段 であ り、競争は消費者の声 を保障する一つの手段であ
常 に経営の危機 を抱 えている。 1
9
97年では施設の1
/5は
る とする。公的サービスを供給するのに部門間の選好 は
市場撤退を真剣 に考 えてお り、半分以上は経営努力 して
要求 しない。そのサービスを誰が供給す るかでな く大切
も価格に対す る費用 をカバ-で きない としている。在宅
なのはサー ビスの質である としている。そのためにパー
ケアサー ビスは大規模 な組織 と直接 的な関係 は少 ない
トナーシップを強調する。 また、ソーシャルケア市場 に
が、経営状況 は同様 に厳 しい。多 くの地域で多数の小規
おいて疑似市場 を容認するが、競争傾向は対立する もの
模 な供給者により供給 されているが、合併や買収の可能
でな く、ベス トバ リューへの道 を開 くもので、市場、競
性が高 まっている。地方 自治体の委託戦略で著 しく供給
争、契約 は継続す る。 さらに、保守党が市場 と競争 を単
者への行動に影響 を与 えた。供給者 と購入者の力関係は
独の政策手段 と考 えるのに対 し、労働党はで きるだけ多
サー ビスの代金の遅い支払い、クライエ ン トに対する貧
くの人々に権利 を持たせ、市場 に参加で きない人に必要
弱 なフォローや評価、安い価格、 システム化 された購入
方法 などに現 われた。多 くの供給者は購入者 との関係に
な支援の保障を含めた戦略
をとる。 よって、政策の重要
/
な点はコ ミュニテ ィやボランタリーセクターの社会的役
おいて中立か肯定的な意見を持 っているが、・
多数の小規
割 を守 り、その力 を発揮 し、パー トナーシップを正当な
模経営者は経営が困難であるため影響 は大 きい1
5
)
。 これ
もの として、そのニーズに取 り組めるように成長 を促せ
ら民間部門の市場構成 もより集中化傾 向にあ り、それに
るように国家の活用をすすめている。
伴い価格 も上昇傾向にある。年 々拡大す る需要 に対 し、
対人社会サー ビスは中央政府の監視 を受けやす く、ベス
また、施設や在宅サービスの供給 を民 間部門に大 きく依
トバ リュー実行指標
(
BVPI
s
)を中央政府が設定す る。
存す る傾向が強まるなかで、中央政府の舵取 りが問われ
また政府 はその基準 をモニ ター し、その 目標 と適合 して
ることになる。
いるかの確̀認 もお こなう。 このモニ ターが高度に標準化
したインセ ンティブとして政府が介入する基準 を決定す
Ⅳ. ブレア政権の高齢者対人社会サービス政策の
るもの として、質 と効率 を絶 えず見直す第三の道である
方向性
1
.ブ レアの対人社会サービスへの新捷案
として推進する。
2.
パー トナーシップとソーシャルサービス供給
1
9
9
7年、政権の座 についたブ レア労働党政権 は旧来の
社会民主主義や薪 自由主義 とも異 なる 「
第三の道」 を提
パー トナー シップの促進 はブ レア政権の政策の重要 な
唱 している。 この実現のため ①平等、②万人に対する
要である。パー トナーシップ とはあいまいな表現であ り、
機会、③責任、(
彰コ ミュニテ ィの 4点を基本的な価値 、
安易 に使用 され易 く、時には権限の所在が不明にな り、
理念 としている1
6
)
。政策 目標 として も教育や医療への関
その責任が問われることにもなるが、ブレアの求めるパ
心は高いが、高齢者への対人社会サー ビスについては前
ー トナー シップとは公的、民間及びボランタリーセ クタ
(8)
山田 :英国コ ミュニテ ィ ・ケア改革
-
サ ッチ ャーか らブ レアへ
-2
3
9-
-が組織、部門を超 え、同盟、協力、協同、ネ ッ トワー
になる。 地方 自治体 で は機 能分割 を実施 し、 さ らに、
ク、参加活動 を含めた ものである。 この よう・
な考察の背
各々の特色 を反映 した地域の現状や課題が検討 されるな
景 には労働党の コミュニタリア リズム思想がある。 この
ど意欲的なベス トバ リュー実行計画がで きているが、 自
思想は地域 に根 ざし、権利 よりも義務や参加 を求めるも
治体間では能力問題が避 け られない。高齢者の対人社会
ので、社会民主主義か らリベ ラルな保守主義 まで広範な
サー ビスをみて も、ケアマネジメ ン トの方法やサー ビス
変化があ り、ブ レア自身はコミュニテ ィの重要性 を社会
料金の徴収 について も格差があ り、サー ビス内容が異 な
主義の基礎 と捉 えている。 コミュニ タリア リズム自体 は
っている し、極端 な場合、該 当す るサー ビスが存在 しな
保健医療や社会サー ビス面での コミュニテ ィ ・ケアの政
い場合 もある。表面的な適応範囲や報告で しか発表で き
治的説得力に対 して言及するよ りも大 きな力 を持 ち、対
ていない もの もある。.
サー ビス提供 において も、ベス ト
人社会サー ビスや コ ミュニティ ・ケアを越 える政策の実
バ リュー実施後のパ フォーマ ンスはあま り良 くな く、質
力がある。 また、社会組織 としての重要 な単位 としてコ
ミュニテ ィを前操 として考えてお り、そ こには地方分権
の改善 に必ず しも結 び? いていなし?
. 自治体管理機構
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on)で もこの ような実態 について、か
を伴い、地方の代理人の役割 を果た し、ボランタリーセ
な りお粗末だ とか口先だけだ という手厳 しい表現がみ ら
クターの ような独立組織 ともな りうる ものをイメージし
れる。 この ような報告 は予測可能なものであった。ベス
ている17)0
トバ リューで管轄区域 を明示 した計画案の地方 自治体で
ここにおいて、パー トナー シップは地方 自治体が民間
は、問題解決や地方 自治体の実質的な価値 の議論 に取 り
営利部門 とボランタリーセクター とともに、高品質なサ
組むよう●
になって きた。現在 では、変化 を招 く活動の可
ー ビスを捷供する効果的な方法 を生み出す手立て ともな
能性や改善 を継続 しようとす る地方 自治体の能力 を現す
る。 また、1
9
98年 より公的な団体の政策決定に コミュニ
ことに期待がかかっている。2
01
年 自治体管理機構の年
テ ィ団体や民間非営利団体等のパー I
トナー も積極的に参
次報告で、進行状態 としで、 イングラン ドとウェールズ
加 させている。
の4
1
0地方 自治体の うち1
/
4はかな りうまくいっている。
1
/
2は基本的な点 は良いが、い くつかの面で困難である。
1
/
4は困難であるとしている1
8
)
0
3.
地方 自治体のベ ス トバ リュー政策の新展開
保守党政権下で実施 された強制競争入札の弊害や 自治
国 と地方 自治体 に分割 されていたNHSと対人社 会サ
体のコス ト偏重の姿勢が住民の求めるサー ビスの質や公
0
0
3年 より一元化 され、医
ー ビスのサー ビス供給体制が2
平性の面で住民 に対 し、十分な配慮が行 き届か ないケー
療、介護、福祉の統合 された インターメデ イエイ ト・ケ
スが生 じた。 また、現場で働 く労働環境の悪化、 また 自
アへ と制度改革がすすむ。 これは医療 と介護に隔壁があ
治体独 自の工夫やアイデアが活か しに くい状況であった
り、医療 か ら介護へ と相互の移動 を困難 に し'
て いたが、
ことを反省 して展 開された。
これが シーム レスケア とな り、 よ り結びつ きやす くなる
9
)
。 しか しなが ら、医療 ・介護 間の財源や管轄の問題な
1
9
9
8年の コミュニティ■・ケア自書の新 ガイ ドラインに
1
沿い、①主体の徹底化 とサー ビスの質の向上、⑧サー ビ
ど各部門か らの反発 を伴 う混乱が予想 される。新たなシ
ス システムの合理化、③財源の合理化。 これを具体化 さ
ステムについてソー シャルワーカーの一部では予算配分
せ る た め 、 4つ の Cで あ る 、 Chal
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や業務量の減少、利用者の医療サ ービスへの傾斜 とソー
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競争)に基
シャルサービス量の減少 など危倶 を感 じた発音が 目立つ
づいてチェックと改革が指示 された。 1
99
9年地方 自治法
が、
地方 自治体 では新戦略 として実施計画 を進めてお り、
0年か ら地方
で法制化 され、ベス トバ リュー として、20
今後の展開を待たなければなち ない占
自治体で実施 されている。 これは、地方 自治体が供給す
まとめ
る全サービスの25%を目標 として、そのサー ビス提供の
見直 しを5年間で実施 しようとす る もの である。ベス ト
コミュニテ ィ ・ケア改革 は独立部門のサー ビスを積極
バ リュー とは少ない予算で質 と効率 を改善 し、 よ り良い
的に活用す ることで、 よ り融通性のある、利用者のサー
公的サー ビスを供給することである。 この ことは契約の
ビスによ りきめ細やかな対応 したサー ビスが可能になっ
適切 さを考える機会 を地方 自治体 に提供す るこ とにもな
た。 しか しなが ら、価格優先の経済性、効率性 を追及 し
る。結果 としては、ベス トバ リュー政策の競争的な展開
た価格中心の政策 は各 々のセ クターの役割 を変質 させ、
が各自治体間競争 を促進 させ、サービスの地域 間格差 を
政策指標 としての疑似市場の役割 を不能に し、ケアマネ
解消 し、全国一律のサービスが どこで も供給 されること
ジメ ン トシステムの機能 に もい くつかの課題 を残 した。
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域 間格差 を前提 と して も、 まず は効率 や質の改 善 につ な
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が る 「第三の道」 を強力 に推 進す る こ とが前提 で、その
後 の展 開 に委 ね る こ とになろ う。
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1) バ ーバ ラ ・メ レデ ィス著 、杉 岡直 人他訳 、 コ ミュニ
テ ィケアハ ン ドブ ック、利用者主体 の英 国福祉 サー
参考文献
ビスの展 開、 ミネルヴ ァ書房 、 p
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平 岡公一他編 、福祉 国家へ の視座 ・揺 らぎか ら再構 築へ 、
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仲村健 一他 編 、世界 の社 会福祉
イギ リス旬報社 (
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武 川正吾他 編 、先進 国の社 会保 障 1 イギ リス、東京大 学
3)三富紀敬 、イギ リスの在宅介護者 、ミネル ヴ ァ書房 、
pp.
5
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出版会
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小 田兼三 、現代 イギ リス社 会福祉研 究、川島書 店 (
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他 、 田端光美他訳 、地域 ケアにお ける
大住荘 四郎 、パ ブ リック ・マ ネ ジメ ン ト、戦 略行政へ の
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理論 と実践 、 日本評論社 (
ケースマ ネジメ ン ト、光生館、 p
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福祉 のテーマ とア プ ローチ 、有斐 閣 (
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要 旨 :英 国の コ ミュニテ ィ ・ケ アは変遷 の過程 にあ る。 その 中で も1
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0年 に成立 した 「国民 保健 サー ビス及 び コ ミュニ
テ ィ ・ケ ア法」 の影響 は著 しい もので あ った。 コ ミュニテ ィ ・ケア改革 は1
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3年 、英 国 にお いて施行 され た。
それ は公 的部 門や独 立部 門の役割 、専 門職 の実践 やその領域 、 さ らにはサ ー ビス利用者 や介護者へ の変化 となって噴
出 した。
その中で も最 も甚大 な影響 が あ った 1
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0年代 の高齢者対 人社会サー ビスに焦点 をあて、そ の趨勢 を追跡 し、福祉 多元
主義 の なかで、政 策 目標 となった効率 とその質 につ いてサ ッチ ャー とブ レアの対 人社 会サ ー ビスの政策 につ いて検証す
る。
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