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精神疾患を持つ高校生への早期支援事業

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精神疾患を持つ高校生への早期支援事業
平成25年度
独立行政法人福祉医療機構
社会福祉振興助成事業
精神疾患を持つ高校生への早期支援事業
事業報告書
平成26年3月
社会福祉法人巣立ち会
「 精 神 疾 患 を 持 つ 高 校 生 への 早 期 支 援 事 業 」 報 告 書 目 次
はじ め に
・・・1
第 1章 事 業 目 的 ・要 旨
・・・3
第 2章 事 業 実 施 内 容
第 1 節 検 討 委 員 会 の 開 催 につい て
・・・6
第 2 節 世 田 谷 泉 高 校 を 対 象 と し た、メ ン タルヘ ルスの問 題 を 持 つ
可 能 性 が ある 生 徒 へ の 個 別 支 援
・・・11
1. 導 入
2. 支 援 の 実 態
3.スーパービジ ョ ン
第 3 節 世 田 谷 泉 高 校 の 生 徒 へのア ンケート 調 査 の実 施
1. 目 的
2. 調 査 方 法
3. 結 果
4. 考 察
・・・2 4
第 4 節 世 田 谷 泉 高 校 にお け る、メ ンタ ルヘルスに 関 する 授 業 の実 施
・・・5 0
第 5節 世 田 谷 泉 高 校 の教 師 研 修 会 の実 施
・・・57
第 6 節 当 事 業 に 関 わ るスタ ッフ 向 け の研 修 会
・・・59
第 7節 地 域 啓 発 講 演 会 の実 施
・・・6 1
第 3章 事 業 全 体 の効 果 ・今 後 の展 望
・・・6 3
おわ り に
・・・6 7
巻末資料
・・・68
( 1) 世 田 谷 泉 高 校 の 生 徒 へのア ンケー ト 調 査 用 紙
( 2)世 田 谷 泉 高 校 に おけ る、メ ンタ ルヘ ルスに関 する 授 業 の 資 料
( 3)世 田 谷 泉 高 校 の教 師 研 修 会 資 料
( 4)地 域 啓 発 講 演 会 資 料
はじめに
人生で最も心身のバランスを崩すといわれる思春期・青年期は、子ども
から大人への転換期であり、様々な心の不調が生じやすく、自殺のリスク
も高い。その原因や背景を探ってもはっきりした因果関係は見当たらない
ことも多い。不登校が長期化すると、学校では生徒の状態が把握できなく
なり、退学や卒業で学校との関係は終了することになる。
明らかに精神病の症状が揃っていても、保護者が、我が子が病気かも知
れないと受け止められなかったり、生徒自身が受診や相談に行くことを拒
否する場合には、かなり重症化するまで医療や福祉からの支援が届かない
ことになる。
思春期・青年期は、幼少期から続いていた「気がかりな症状」が精神疾
患として顕在化してくる時期でもある。精神疾患の生涯罹患率と初回発症
年 齢 に 関 し て 、ア メ リ カ で 行 っ た 調 査 に よ る と 、
「 不 安 障 害 ,気 分 障 害 ,衝
動 性 障 害 ,物 質 使 用 障 害 の 生 涯 罹 患 率 は 4 6 . 4 % で あ り ,そ の う ち 5 0 % は 1 4 歳
ま で に 発 症 し , 75%は 24 歳 ま で に 発 病 す る 」 と い う 。 ま た 、 高 知 県 で 行 っ
た高校生対象のアンケート調査によると,
「精神病様の体験を含めたメンタ
ルヘルスに問題を抱える生徒が少なくない」という。しかし日本では、精
神病に対するスティグマ(差別的な烙印)が根強く子どもの精神科受診に
消極的なため、実際に治療開始するまでに相当長い期間がかかってしまう
と も 指 摘 し て い る 。( 2 0 1 2 日 本 精 神 神 経 学 会 学 術 総 会 誌 )
もし自覚症状がある生徒に対し、早期に適切な治療介入がなされるなら
ば、将来にわたる社会適応の悪化を防止することができ、最悪の事態を回
避することも可能となるのではないだろうか。
社 会 福 祉 法 人 巣 立 ち 会 は 、 平 成 21 年 度 に 厚 生 労 働 省 か ら 障 害 者 保 健 福
祉 推 進 事 業( 障 害 者 自 立 支 援 調 査 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト )を 受 託 し 、
「大都市圏
若年の未支援・未治療期間短縮に向けた地域連携システムの構築:精神疾
患の早期発見・早期支援を目指して」というという事業名で思春期・青年
期 向 け の 支 援 事 業 で あ る 「 ユ ー ス メ ン タ ル サ ポ ー ト Color」 を 開 始 し た 。
そ し て 、そ こ で 培 っ た 多 様 な 実 践 経 験 を 生 か し 、平 成 2 4 年 度 、独 立 行 政 法
人福祉医療機構による福祉活動支援事業の委託を受け、教育、医療、福祉
の連携による「精神疾患をもつ高校生への早期支援事業」を開始した。教
育は東京都立世田谷泉高等学校、医療は東京都立松沢病院、福祉は社会福
祉法人巣立ち会が各々の専門性を生かして、高校生の精神疾患を早期に発
見し、未治療期間の短縮をはかり、早期に専門治療や福祉支援につなぐと
1
いう、トータルサポートともいえる先駆的な事業である。これを進めるに
あたっては,乗り越えていかなければならない幾多の課題がある。しかし
何よりも、これから社会に羽ばたいていく生徒達のメンタルヘルスの回復
に寄与することをスタッフ一同、切に願っているのである。
平 成 26 年 3 月
社会福祉法人
理事長
2
田尾
巣立ち会
有樹子
第 1章 事 業 目 的 ・要 旨
第 1節 事 業 目 的
1.精神疾患、とりわけ統合失調症や気分障害等の早期発見・早期治療を
推進する
思 春 期 に 多 い 精 神 疾 患 と し て 、統 合 失 調 症 、気 分 障 害( う つ 病 )、神 経 症 、
摂食障害、薬物依存、そして最近増加しているネット依存症等々がある。
高校生の年代は、それらの疾患の前駆期あるいは発病後間もない時期であ
り 、早 期 に 発 見 し 適 切 な 治 療 介 入 を す れ ば 重 症 化 を 防 ぐ こ と が 可 能 で あ る 。
しかし未治療のまま放置すれば、その後の社会適応が難しくなるだけでな
く自殺のリスクも高くなる。
精神疾患の予後を改善するためには、早期発見とその後の多面的ケアに
尽きるといえる。
「 一 生 の う ち に 一 度 、精 神 科 疾 患 に か か っ た こ と の あ る と
い う 人 の 割 合 は 3 3 % 」( 1 9 9 5
精 神 神 経 セ ン タ ー 北 村 )、 つ ま り 3 人 に 1
人が心の病気にかかるという衝撃的なデータもあり、まずは早期発見が必
要である。
2.医療と連携した継続的な支援を行い、退学者を減らし高校卒業を支援
する
精神疾患の回復過程においては、薬物療法と心理療法という二者関係の
外来治療だけでは限界が多く、学校に代わりうるフリースペースやデイケ
アなどの三者関係的な場で、異年齢と出会うことが治療教育的に重要であ
る ( 平 成 1 6 年 7 月「 精 神 科 臨 床 サ ー ビ ス 」) と 言 わ れ て い る 。思 春 期 の 若 者
は、具体的に進路や学習の問題、対人関係の不安があるので、これらの不
安に寄り添った個別的な支援を行う。
巣 立 ち 会 の ユ ー ス メ ン タ ル サ ポ ー ト Color で は 、 個 々 の 利 用 者 の ニ ー ズ
に応えて①家族支援
②通所相談
プ活動
⑦居住支援等、具体的できめ細かい支援内容を広げ
⑥就労支援
③就学支援
④訪問・同行
⑤グルー
てきた。高校生の学校外の学びの場として、卒業単位取得に協力もしてい
る。
3.学校関係者への啓発活動
一般的に、精神疾患に対する正確な知識が不足していることにより、精
神科受診に対して消極的で、未受診期間が長くなる傾向がある。まずは学
校現場での正しい知識の普及を目指していく必要があり、生徒が精神疾患
3
についての基本的な知識を持つことが出来るような教育をする必要がある。
調査結果からは、医師やカウンセラーといった専門家への相談は皆無に等
し く ,身 近 な 友 達 へ の 相 談 が 最 も 多 い と い う (「 精 神 科 臨 床 サ ー ビ ス 」平 成
16 年 7 月 )。 生 徒 が 友 達 の 相 談 相 手 と な っ た 時 、 適 切 な ア ド バ イ ス が で き
るようにしておきたい。教職員や保護者、地域住民に対しても、精神疾患
は、誰でも罹患する身近な病気であり、重症化を防ぐためにも早期発見・
早期治療が最大のポイントであることを理解してもらい、偏見や差別をな
くしていく地道な啓発活動が必要である。
第 2節 事 業 要 旨
1.都立世田谷泉高等学校へ専門職の派遣
生徒や保護者にインテーク面接を行い、医療や心理社会的支援について
アセスメントする。
日時
毎週火曜日
午後
場所
都立世田谷泉高等学校
対象
特別支援教育コーディネーターが紹介した生徒・保護者
カウンセリング室
2.定期的な対象者の選定と情報共有
学校生活の中でメンタルヘルスの問題をもつ可能性があると考えられる
生徒について、相談や支援が必要なケースを抽出し生徒や保護者の了解を
得て実施する。
3.適切な医療機関紹介
当会から派遣した専門職の面接の結果、精神疾患の疑われる場合、
a . 未 治 療 の 場 合 、今 回 の こ の 事 業 の 連 携 先 で あ る 松 沢 病 院 を 紹 介 し 、継
続的支援を実施する。
b . す で に 医 療 に か か っ て い る 生 徒 と 家 族 に は 、そ の 内 容 に つ い て の 相 談
に応じる。
c . 医 療 の 必 要 が な い と 判 断 さ れ る 場 合 に は ス ク ー ル カ ウ ン セ ラ ー( 以 下
SC ) 等 と 協 力 し て 定 期 的 な 相 談 支 援 を 実 施 す る 。
4.生徒向けのアンケート実施
表題「高校生のメンタルヘルス調査」を実施する。無記名式で、対象は
全校生徒、生徒のメンタルヘルスを把握し、相談支援のしくみをつくる調
4
査研究の基礎資料とすることを目的とする。
5.生徒向けのメンタルヘルスに関する授業の実施
「 心 の 不 調 に 気 づ い た 時 、誰 に 相 談 し ま す か ? 」と い う 質 問 に 対 し 、
「親
しい友人」と答えた生徒が最も多かったという研究報告がある。すべての
生徒が最初の相談相手になれるよう、精神疾患についての基本的な知識と
自 己 理 解 や 心 の 変 調 に 対 す る 「 気 づ き 」 を 学 ぶ 機 会 と す る 。 WHO の 早 期
精 神 病 早 期 支 援 宣 言 ( 2004 年 ) で は 『 15 歳 の 全 て の 若 者 に 対 し て 精 神 病
の正しい理解を促し、適切な支援へのアクセスに関する教育をする』と謳
っている。
6.教職員向け研修会の実施
従来の教育相談システムに加えて、日常的な関わりの中で、生徒の心身
の変調や自殺のサインをキャッチし未然に防止するため、生徒の身近な存
在である教職員はメンタルヘルスの状態を理解する知識を持つことが必要
である。学校外部の専門家による研修の機会を設ける。講師は若者の精神
疾患に造詣の深い者とする。
7.学校外の居場所の提供
必要な場合には、学校以外の支援機関として「ユースメンタルサポート
Color」 の 施 設 設 備 や 機 能 を 提 供 す る 。
8.地域啓発講演会の実施
世 田 谷 区 周 辺 の 教 育 関 係 者 、 若 者 支 援 関 係 者 等 の 100 名 程 度 を 対 象 と し
た講演会を行い、地域との連携を図り若者の精神疾患への理解を進める。
5
第 2章 事 業 実 施 内 容
第 1 節 検 討 委 員 会 の 開 催 に つい て
(1)第 1 回検討委員会
日 時 ; 平 成 25 年 7 月 29 日 ( 月 ) 19 時 ~ 21 時
於;世田谷泉高等学校
校長室
出席委員;5 名
橋本委員(東京都立世田谷泉高等学校校長)
針間委員(東京都立松沢病院精神科部長)
長汐委員(府中市教育委員会スクールソーシャルワーカー)
田尾委員、長門委員(社会福祉法人巣立ち会)
1.自己紹介
橋本委員、長汐委員、針間委員より自己紹介を頂く。
2.事業計画の確認(田尾)
事業計画書、スケジュール表を説明。
3.個別支援についての報告(田尾)
特別 支援コ ーディ ネータ ーの斡 旋を受 けて、現在不 登校の 3 ケースとの
面 接 を 始 め て い る 。3 ケ ー ス と も に 保 護 者 と 面 接 を し 、そ の 後 1 ケ ー ス は
本人にも会い、本人同意の下で、都立松沢病院の受診に繋げた。
4.生徒へのアンケート調査について
事務局が用意した 2 パターンの案をもとに検討。
( 針 間 委 員 )5 1 項 目 は 多 い 。ダ ブ っ て い る 部 分 を 整 理 し た 方 が い い 。ま た 、
症 状 を 訊 く 質 問 ば か り な の で 、全 体 的 な 質 問(「 学 校 は 楽 し い
ですか?」など)から入った方が答えやすいだろう。エピソ
ードの期間がバラバラなので、統一した方が良いだろう。
( 橋 本 委 員 ) 枚 数 と し て は A4・ 1 枚 の 裏 表 程 度 が 限 界 。生 徒 か ら は 「 何 の
ためにやるのか」という質問が出ると思う。全校で実施する
の で あ れ ば 、担 任 が 答 え ら れ る よ う に 説 明 文 を 作 っ て ほ し い 。
また、フラッシュバックしたり具合悪くなる生徒が出ないか
心配。
→用紙を再度作成し、説明文も添付して再検討する。
5.生徒向けのメンタルヘルスに関する授業の実施について
当会が用意した配布資料の案をもとに検討。
(橋本委員)まだ詰め切れないうちに夏休みになってしまったので、実施
形 態 を 確 定 す る の は 9 月 以 降 に な る 。今 考 え て い る の は 、一 斉
6
登 校 時 に 1 学 年 全 員 に 45 分 の 講 演 を 行 う 形 。
概論は全員受けた方がいいと思う。
(針間委員)面白いものに仕上がっているし、終わり方も良い。
分量を減らせば使えるのではないか。
6.先生向け研修会について
(橋本委員)これも実施形態は 9 月以降にならないと確定できないが、以
下のどちらかで検討中。
① 特 別 支 援 校 内 委 員 会 ( 10 名 程 度 )
② 職 員 会 議 ( 50 名 程 度 )
→講師として針間委員にお願いをしたところ、調整してみるとのこと。
7.講演会について
・来年 2 月の土曜日午後に烏山区民センターホールにて予定。
・講師として、松沢病院の三角医師を針間委員からご推薦頂いた。
(2)第 2 回検討委員会
日 時 ; 平 成 25 年 10 月 29 日 ( 火 ) 18 時 30 分 ~ 20 時 30 分
於;都立松沢病院
出席者;7 名
角本委員(東京都立世田谷泉高等学校副校長)
針間委員(東京都立松沢病院精神科部長)
長汐委員(府中市教育委員会スクールソーシャルワーカー)
田尾委員、長門委員(巣立ち会)
西田、浅沼(巣立ち会・オブザーバー参加)
1.自己紹介
角本委員、長汐委員、針間委員より自己紹介を頂く
2.事業進捗状況の報告(田尾)
個別支援に関しては、自主来談がほとんどなく、まだ生徒の中に浸透し
ていないことが伺える。また、教員からの紹介は、相談担当と養護教諭の
みであり、教員への周知にも課題が残っている。
3.個別支援についての報告(田尾)
こ れ ま で に 相 談 を 受 け た ケ ー ス に つ い て の 経 過 を 報 告 ( 別 紙 参 照 )。
どのケースも相談担当教諭や養護教諭から紹介を受けて来談したもの
であった。支援につながりにくいケースが多いことを実感。中には、相談
意欲があまりないが勧められたから来てみた、というケースもある。また
一方では、相談に繋がる必要があると判断され、相談担当教諭や養護教諭
から生徒に紹介をしていても、なかなか面談に繋がってこないケースも少
7
なくない状態にある。
(角本委員)長期欠席をしていると、休むことに慣れてしまう子もいる。
本人がその状態で安定してしまうと、親もそこで安定してし
まい登校を促すことをやめてしまうことも多い。
4.生徒へのアンケート調査について
日 程 調 整 は こ れ か ら 。1 2 月 9 日( 月 )の 研 修 会 で 教 員 に も ア ン ケ ー ト 用
紙を見てもらう予定。
(長汐委員)来年以降は、メンタルヘルスの授業の前後にアンケートを行
い、生徒たちの変化を調べられたらより良いものになりそうだ
と思う。今後は継続してそういうことができていくと良い。
5.生徒向けのメンタルヘルスに関する授業の実施について
(角本委員)3 月 7 日(金)の体育館に全校生徒が集まる避難訓練後に実
施予定だが、まだ調整中。
6.先生向け研修会について
12 月 9 日 ( 月 ) 16 時 ~
特別支援推進委員会にて実施予定。
内容に関しては、担当教諭と打ち合わせをしていく。講師は田尾が務め
る。
(角本委員)個別のケースの質問も出るかもしれない。参加者は委員にプ
ラ ス し て 新 人 も 出 席 す る こ と を 予 定 し て い る の で 15 人 前 後
に な る と 思 う 。 多 く の 教 員 が ま だ Color の 活 動 に つ い て 知 ら
ない状態にあり、どう利用したら良いか分からずにいると思
うので、教員が安心して利用できるように、どういった生徒
が 対 象 と な る の か 、 Color に 繋 げ た ら ど の よ う な 支 援 が な さ
れるのか、ということもぜひ研修で伝えて欲しい。
7.講演会について
講演のテーマについては未定。今後、三角先生とテーマを相談し、チラ
シ等の作成に入る。
(長汐委員)昼夜逆転やネット依存、家庭内暴力等のテーマはどうか?
(角本委員)他の学校よりも共依存関係になるリスクが高いため、教育現
場 で は 介 入 し ず ら い 、不 適 切 な 交 際 や 交 際 に よ る 中 絶 ・ 出 産
等のトラブルなどについての介入方法なども気になる。
(針間委員)三角先生にお任せした方がおもしろく話してくれるかもしれ
ない。
⇒テーマについては三角先生にお任せすることにし、テーマの提案を希望
された場合には上記のテーマをお伝えすることになった。
8
(3)第 3 回検討委員会
日 時 ; 平 成 26 年 3 月 3 日 ( 月 ) 18 時 30 分 ~ 20 時 30 分
於;巣立ち会
シンフォニー
出席者;5 名
針間委員(東京都立松沢病院精神科部長)
長汐委員(府中市教育委員会スクールソーシャルワーカー)
田尾委員、長門委員(巣立ち会)
浅沼(巣立ち会・オブザーバー参加)
1.事業全体の進捗状況について(田尾)
事業全体としては、事業計画に沿って進めることができている。
現在、報告書の作成にとりかかっている。
2.個別支援についての報告(田尾、浅沼)
11 月 ~ 2 月 の 相 談 支 援 の 状 況 に つ い て 資 料 を 基 に 報 告 。
全 体 の 支 援 回 数 等 は 、事 業 計 画 で の 予 定 数 の 3 分 の 1 程 度 に な る こ と が
見込まれる。
振り返ってみると、当初は「精神科医療の必要性をアセスメントする」
という観点を持って入っていったが、それよりも「何か問題がある人」と
いうくくりでケースを紹介されることが多かったため、そうしたニーズに
スライドして対応していった。我々を受け入れてもらうこと自体は、先生
方の側も慣れてきたようである。今後、年度内で助成金事業は終了となる
が、引き続き支援を継続していきたい。
3.生徒へのアンケート調査について
140 人 の 回 答 が あ っ た 。 こ こ か ら 何 が 読 み 取 れ る の か 、 ご 意 見 を 頂 き た
い。
( 針 間 委 員 ) 19 か ら 26 ま で の 設 問 の う ち 、 25 や 26 は 体 験 と し て は 了 解
可 能 だ が 、 20 や 21 は 健 康 な 状 態 で は あ り え な い 体 験 で 、 そ
れがこれだけの割合でいるということには驚いた。この結果
を 見 る と 、確 実 に こ こ の 生 徒 の 1 割 以 上 は 統 合 失 調 症 と 考 え
られる。
( 長 汐 委 員 )お そ ら く そ の 人 た ち は 、
「 不 登 校 」と い う 群 に 隠 れ て し ま っ て
いて、支援が届いていない。
( 田 尾 )こ の ア ン ケ ー ト は 実 施 し た 2 日 間 に 登 校 し て き た 生 徒 に 行 っ て い
るので、不登校の状態の生徒も含めてアンケートをしたと仮定す
ると、おそらくこの割合はさらに高まると思う。
( 浅 沼 )逆 に 、13 で「 は い 」が 多 い こ と は 予 想 外 だ っ た が 、登 校 で き て い
る生徒はそれがあるから通えているのかもしれない。
9
(長汐委員)8 も「はい」が高くてびっくりした。この年代は親との軋轢
があって普通だと思うが。
( 針 間 委 員 ) 1 0 と 11 の 矛 盾 も 気 に な っ た 。 助 け て ほ し い が 実 際 は 相 談 で
きないということ。
(長汐委員)学校を訪問すると、雰囲気は他の学校と変わらないんだなと
感じていた。ただ、こうやってデータを見ると、やはりチャレ
ンジ校ならではの数字なのかなと思う。
4.生徒向けのメンタルヘルスに関する授業の実施について(田尾)
3 月 7 日に実施する。第 1 回の検討委員会で出した資料を基に、説明ス
ラ イ ド 等 は 準 備 で き て い る 。 時 間 は 45 分 間 で 、 カ ラ ー の 説 明 も 含 ん で い
る。時間配分などを見直しているところ。初めての機会でもあり、非常に
期待している。
5. 先 生 向 け 研 修 会 に つ い て ( 田 尾 )
12 月 9 日( 月 )に 実 施 し た 。直 接 先 生 方 と 話 が で き て 、先 生 方 が 持 っ て
いる悩みや困りごと等をより具体的に理解することができた。その上で、
具体的な対応の仕方をいくらかお伝えできたのではないかと思っている。
6.講演会について
教 育 関 係 者 や ご 家 族 の 方 、ま た 行 政 の 方 な ど 、幅 広 い 参 加 者 が 集 ま っ た 。
先生の人柄が出ていたようで、終了後にもかなり時間をかけて参加者の個
別の相談に答えて頂いた。
(長汐委員)講演自体も、わかりやすいお話でとても良かった。全体の質
疑応答が時間の都合であまり取れなかったことは残念だった。
7.今後の予定等について
(田尾)補助金事業としては今年度で終了となり、今後はこのように関係
者全体で集まる機会も少なくなるとは思うが、世田谷泉高校への
様々な支援は継続していくので、委員の皆様方には引き続きご協
力頂きたい。
(針間委員)今回のアンケート結果には驚いた。おそらくすでに発症して
いて適切な医療が必要な生徒がこれだけいるということ。こ
うした支援のニーズが大きいことを示していると思う。
(長汐委員)継続していくことで、教師の側の意識や生徒を見る目も変わ
っていく。とにかく先生方は多忙なので、役に立つ存在であ
る こ と が わ か っ て も ら え れ ば 、必 ず 事 業 も 浸 透 し て い く は ず 。
自信を持って続けていってほしい。
10
第 2 節 世 田 谷 泉 高 校 を 対 象 と し た 、 メ ン タ ルヘ ル スの 問 題 を 持 つ 可 能 性
が ある 生 徒 へ の 個 別 支 援
1.導入
初回の学校訪問では、我々の担当となる特別支援教育コーディネーター
と学校の様子について情報共有を行い、学校のニーズについて伺い、どの
ようなケースを対象としてゆくかを話し合った。
今回の事業を実施することになった世田谷泉高校には、スクールカウン
セ ラ ー( 以 下 S C )が 週 1 回 、都 の 巡 回 相 談 事 業 で 臨 床 発 達 心 理 士 が 3 名 、
年 48 時 間 、 そ の 他 に 臨 床 心 理 士 が 年 10 回 来 校 し て い る 。 そ の た め 、 上 記
のそれぞれが対象とする領域とは異なる領域を担当することで、すみ分け
をしていくことにした。我々が担当する領域は医療を必要とするケースと
し、特別支援教育コーディネーターには、医療の必要性を感じる生徒を紹
介していただくことにした。また、当事業の既存のリーフレットも学校で
配布していただくことにした。
しかしながら、学校訪問を開始して 1 ヶ月が経過しても、来談につなが
る生徒がおらず、しばらくは来談者がいない状態となってしまった。特別
支援教育コーディネーターも、当事業所がどのような支援機関なのか、学
校でどのような支援をしてくれるのかがまだつかめていない様子で、紹介
に苦労されていた。そのため、学校訪問のつど、当事業所が学校ではどの
ような支援を提供していけそうなのかについて話し合いを重ねた。特別支
援教育コーディネーターも当事業所について理解を深める努力をしてくだ
さり、数ヶ月かけて徐々にお互いの理解が深まっていった。そして、生徒
や 保 護 者 に Color が ど ん な こ と を し て い る と こ ろ か を 知 っ て も ら え る よ う 、
世田谷泉高校用のパンフレットも作成した。
対象をどう設定していくかについては、特別支援教育コーディネーター
から提案を受けながら試行錯誤を重ね、徐々に安定していった。現在の対
象者は、医療の必要性の有り無しに関わらず、困っていそうな生徒、サポ
ートが必要であろうと思われる生徒、不登校状態にある生徒、不登校傾向
にある生徒、今後サポートがあるとより活き活きと生活ができるようにな
るであろうと思われる生徒、などと広く設定されている。対象者の設定が
安定してゆくにつれ、特別支援教育コーディネーターから紹介を受けて来
談 さ れ る 生 徒 や 保 護 者 が 徐 々 に 増 え て い っ た 。1 年 間 を 通 し て み て み る と 、
対象の設定が安定したのは 2 学期後半頃だった。
11
2.支援の実態
<家族相談>
学校訪問を開始した初めの頃に特別支援教育コーディネーターから紹介
を受けて来談したのは、ほとんどが不登校状態になってから長期間が経過
している生徒の保護者であった。そのため、生徒自身に会うことは困難な
状態にあり、保護者からの情報で本人の状態を把握するしかなく、さらに
は本人への直接的な支援は難しい状況であった。面談をしていくと、来談
される保護者の多くは働いており、忙しい中で時間を作って来談されてい
るため、具体的な解決策を求めて来ていた。こちらの支援としては、気持
ちを受けとめることはできてもすぐに期待に添えることが少なかった。そ
のため、期間内に 6 名の家族と面談を行ったが、どれも継続支援には至ら
なかった。
一方、不登校状態になって間もない生徒の保護者との面談では、本人と
も面談することができ、医療機関を紹介し、受診同行もしている。通院中
で 不 登 校 状 態 に あ る 生 徒 と 保 護 者 の 面 談 で は 、 Color を 利 用 し て 人 に 慣 れ
たり社会に出る準備をしていくことが検討された。また、メンタルヘルス
の問題を抱えながらも登校している生徒の保護者との面談においても、後
日、本人と直接面談することができ、継続的な支援に結び付いている。
<アセスメント>
訪問を開始して数カ月が経過した頃、コーディネーターからの紹介で、
生 徒 が 来 談 し 始 め る よ う に な っ た 。ア セ ス メ ン ト を 行 っ た の は 9 名 で あ る 。
このアセスメントでは、学校生活に生じている不具合の要因を特定し、
①未治療で精神病性の疾患が疑われる場合は医療機関を紹介し、その後も
継 続 的 に 相 談 支 援 を 実 施 す る 、② 既 に 医 療 に か か っ て い る 生 徒 に つ い て は 、
処 方 内 容 等 が 適 切 か ど う か 判 断 し 、適 切 で は な い と 判 断 し た 場 合 は 、本 人 ・
家族の同意の下で医療機関を紹介する、③医療の必要はないと判断した場
合 は 、ス ク ー ル カ ウ ン セ ラ ー 等 と 協 力 し て 、定 期 的 な 相 談 支 援 を 実 施 す る 、
ことを目的としている。この 9 名中、未治療で精神病性の疾患が疑われた
のは 1 名であり、当事業所の連携先である都立松沢病院を紹介し、受診同
行を行った。
また、9 名中 5 名は既に医療にかかっていたが、うち 1 名は医療機関と
の関係ができておらず定期的な通院をしていなかったため、本人・家族の
同意のもと、都立松沢病院を紹介し、受診同行を行った。他 3 名のうち 2
名は継続的な相談支援へと移行することになった。
上 記 以 外 の 3 名 の う ち 1 名 は 、自 ら 病 院 へ の 受 診 を 検 討 す る に 至 っ た が
12
相談支援への移行にはならず、アセスメント面接のみで終わっており経過
は 不 明 。他 2 名 は 医 療 の 必 要 は な い と 判 断 し た 。そ の う ち の 1 名 は 生 徒 自
身に問題意識がなかったため、アセスメント面接のみで終わっている。も
う 1 名は継続的な相談支援へと移行することになった。
<相談支援>
アセス メント を行っ た生徒 9 名の うち、継続的 な相談 支援が 必要と 判断
された 生徒は 8 名で あり、そのう ち 6 名が相談 支援に つなが った。この相
談支援は、本人が今後どうしていきたいかについて明確化し、それを実現
していけるように継続的な支援を展開していくことを目的としていた。ほ
とんどは校内の相談室で行ったが、本人の希望により当法人事業所にて相
談を受けることもあった。
継 続 的 な 相 談 支 援 を 行 っ た 6 名 が 抱 え て い る 課 題 に は 、親 子 関 係 の 問 題 、
対人関係の問題、登校困難、精神症状との付き合い方など様々なものがあ
り、複雑に絡み合っているものもあった。また、サポート資源を必要とし
ている生徒が卒業を控えているという場合には、卒業後も継続的に支援し
ていけるよう、当法人事業所にて相談支援を開始した。
<不登校等の生徒への支援>
メンタルヘルスの問題を持つ等の理由で、長期的な不登校状態に陥って
いる生徒に対しては、相談支援とは別の支援を提供することを当初は予定
し て い た 。そ れ は 、 当 会 が 運 営 し て い る 「 ユ ー ス メ ン タ ル サ ポ ー ト Color」
において日中の居場所を提供し、日中活動を通して生活リズムを整え、グ
ループ活動を通して人と関わることへの自信と登校に必要なエネルギーを
回復し、学校に戻っていけるようにする支援であった。
しかしながら、長期的な不登校状態にある生徒の家族面談において、保
護 者 の 方 に 「 ユ ー ス メ ン タ ル サ ポ ー ト Color」 で の 日 中 の 居 場 所 提 供 の ご
案内をしても、本人が外出困難な状態にあったり、親だけが困っていて本
人は気持ちが乗らなかったりと、利用につながる生徒はいなかった。
アセスメントを行った生徒の中にも不登校状態に陥っている生徒がい
たが、学校の立場としては、学校に来ることができないからといって外部
に行くようにと生徒や保護者に勧めるのはとても難しいようであり、当初
予定していた不登校等の生徒への支援の実施は現実的には難しかった。
<学校職員との定期的な情報共有>
学校において支援を行ってゆく場合のメリットとしては、来談者のサポ
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ート資源となりうる教職員との連携がしやすいということにある。そのた
め、学校職員と定期的に情報共有を行うことを心がけた。実際には、生徒
の学校での様子や心配な点、出席状況や保健室で見かける頻度など、客観
的な情報を共有することが多かった。また相談支援においては、本人が希
望したり、本人から許可を得て担任や関係のある教員と情報共有を行うこ
とで、来談者に対して共通の理解を持つことができたり、理解を深めるこ
とができ、支援の足並みをそろえることが可能になった。
3.スーパービジョン
(1)第 1 回スーパービジョン
平 成 25 年 7 月 29 日
巣立ち会
17 時 ~ 18 時 30 分
シンフォニーにて
スーパーバイザー:長汐道枝氏(府中市教育委員会)
スーパーバイジー:職員 2 名
内容:
Color は 学 校 と の 連 携 は こ れ ま で に 幾 度 も し て き て い る が 、 学 校 の 中 で
の支援活動は初めてであった。支援を開始して 1 学期が経過したが、試行
錯誤の連続であり、支援活動が苦戦していた。そこで、学校現場での経験
が 豊 富 な ス ー パ ー バ イ ザ ー ( 以 下 SV) よ り 指 導 を 受 け る こ と に し た 。
SV に よ る と 、 学 校 内 で 福 祉 と い う 違 う 性 質 を も つ 専 門 家 が 活 動 し 、 機
能するには、まずは学校のシステムや特徴を理解する必要があるというこ
とだったので、今回は、そういったことをテーマに話していただいた。
< SV>
ま ず 、世 田 谷 泉 高 校 は 3 部 制 を と っ て い る た め 、職 員 会 も 3 つ あ る で し
ょうし、その中に学校の中での役割分担、公務分掌があると思います。そ
して、具体的に学校を動かしているのは、それぞれの公務分掌の組織だと
思います。その中で、連携をとるべき一番の組織が、学校によって名前は
違うと思いますが、管理職、養護教諭、コーディネーター、各学年の学年
主任、生徒指導部などで構成されている校内委員会なんですね。そこで校
内の支援体制について話し合われるんですが、その会で鍵となるのがコー
ディネーターです。専門家の支援を要するケースの場合、校内に来ている
どの専門家にお願いするかを振り分けるのが、コーディネーターの役割で
も あ る か ら で す 。 で す か ら コ ー デ ィ ネ ー タ ー に 信 頼 し て も ら い 、 Color の
活動についての理解を深めてもらうことは、自分たちの活動をよりやりや
す く し ま す し 、 コ ー デ ィ ネ ー タ ー か ら 校 内 委 員 会 の 構 成 員 に Color の 活 動
を発信してもらうことができると、先生方からの生徒紹介も増えていくと
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思われます。
ま た 、 コ ー デ ィ ネ ー タ ー に 理 解 し て も ら う 際 の ポ イ ン ト と し て は 、 SC
が 必 要 性 を 感 じ て い て も 雇 用 上 の 都 合 で 制 限 さ れ て で き な い こ と が Color
で は で き る 、 と い う 強 み を ア ピ ー ル す る こ と で は な い で し ょ う か 。 SC は
学校外での活動ができないので訪問はできませんし、特定の病院も紹介す
る こ と が で き な い ん で す ね 。 そ う い っ た こ と が Color で は で き る と い う こ
とは、支援の幅を広げることになりますし、とても大きな強みですよね。
そ れ に 、 Color は 信 頼 を 置 い て い る 医 療 機 関 を 紹 介 で き る う え 、 そ の 後 の
連携もしていけますでしょ。とても画期的なことですよね。
あ と は 、 さ ら に 欲 を 言 え ば 、 シ ス テ ム の 中 に Color の 活 動 が 位 置 づ け ら
れてゆくとより良いかもしれません。学校の機能の一部として位置付けて
し ま え ば 、 校 長 が 代 替 わ り し て も 、 Color の 活 動 は 継 続 し て い け る よ う に
なりますから。でも、1 年やそこらではなかなか定着しないので、長い時
間をかけてやっていけると良いのではないでしょうか。
(2)第 2 回スーパービジョン
平 成 25 年 8 月 28 日
巣立ち会
17 時 ~ 18 時
シンフォニーにて
スーパーバイザー:長汐氏
スーパーバイジー:職員 2 名
内容:
前回に引き続き、外部の専門機関が、学校という異文化の中に定着して
ゆ く 上 で 大 切 な 事 に つ い て 、 SV よ り 指 導 し て 頂 い た 。
< SV>
学校という組織は、昔から自己完結型という特徴を持っています。それ
は、何かあっても自分達だけでなんとか解決しようという傾向です。とて
も責任感が強いんですね。でもその一方で、学校内部でのことが外部に持
ち出されるということをとても嫌います。外部に出て何か起こったら、責
任をとることがとても難しくなりますしね。だから、外部機関の人が学校
に入って来ると、どんな奴が来たんだろうという不安感を抱きますし、信
用できる人達なのかを警戒し、少し身構える傾向にあります。
それでも近年は、学校だけで解決することが難しい問題も出てきて、外
部の専門家の有用性が明らかになるにつれ、外部の専門家の手を借りる仕
組 み が 出 来 つ つ あ り ま す 。 SC や 精 神 科 医 、 SSW や PT、 OT と か が そ う で
す。昔よりも外部の専門家が学校に入ってきているんですが、やはり先生
方 に と っ て 、 最 初 は と て も 違 和 感 を 感 じ る ん で す 。 SC も 定 着 す る ま で 相
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当の時間がかかっていますよね。だから我々が目指すのは、違和感があり
ながらも、
「 な る ほ ど こ う い う こ と も 必 要 な ん だ 」と い う 風 に 、先 生 方 に 認
め て い っ て も ら う 事 だ と 思 い ま す 。 今 回 の Color の 導 入 の さ れ 方 は ト ッ プ
ダウンだったので、先生方からすると違和感に加えて抵抗感があるかもし
れませんね。自分たち主導ではないというところで。そういう先生方の気
持ちも想像し、理解する努力をしながら活動してゆくと、どうしたら自分
たちの活動を認めてもらえるのか、受け入れてもらえるのかが少しずつ見
えてくるかもしれません。
(3)第 3 回スーパービジョン
平 成 25 年 9 月 25 日
巣立ち会
17 時 ~ 18 時 30 分
シンフォニーにて
スーパーバイザー:長汐氏
スーパーバイジー:職員 2 名
内容:
2 学 期 に 入 り 大 き な 課 題 と な っ て い た の は 、対 象 の 設 定 に つ い て で あ る 。
世田谷泉高校には生徒のメンタルヘルスをサポートする複数の専門家が来
校している。そのため、当初は他の専門家が対象とする領域とは異なる領
域を担当することで、すみ分けをしていくことにし、対象を、医療を必要
とするケースとした。特別支援教育コーディネーターには、医療の必要性
を感じる生徒を紹介していただくようお願いしていた。
しかし、対象を限定しすぎたためか相談件数が伸びなかった。さらに、
先生は支援の必要性を感じていても、本人が学校に来ることができないた
めに相談に至らなかったり、本人が相談の必要性を感じていなくて紹介し
ても相談に来なかったり、保護者が医療の必要性を感じていないために継
続支援に至らなかったりと、支援を開始することが難しいケースが多くな
っていた。そのため、対象を見直す必要を感じていた。
< SV>
SC が 相 談 を 受 け て い く 中 で 、 S C が 手 に お え な い ケ ー ス は 沢 山 あ る と 思
う ん で す ね 。 そ れ を 、 SC と 連 携 し て コ ン サ ル テ ー シ ョ ン し て も ら う 形 を
取っていくのが良いのではないでしょうか?<それはどういうことです
か ? > SC が 相 談 を 受 け て い る ケ ー ス の 中 に は 、 こ れ は カ ウ ン セ リ ン グ で
は良くならないのではないか、違う支援を受けた方が良くなるのではない
か と 思 う こ と は あ る と 思 う ん で す ね 。 で も SC は 取 り 決 め 上 自 分 で は 動 け
な い わ け で す か ら 、 SC か ら C o l o r に コ ン サ ル テ ー シ ョ ン を す る と い う ル
ー ト を 作 る と 、相 談 を 受 け る 幅 が 増 え て 良 い の で は な い か と い う こ と で す 。
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<同じ曜日ではないので、会って直接そういったことをすることは難しい
と 思 い ま す し 、 SC も 時 間 が な い 状 態 の よ う な の で 、 そ う い っ た こ と を 定
例化することは難しいでしょうね。>そうしたら、何かしらの形で一度面
識 を 作 っ て お く と 、 SC か ら リ フ ァ ー さ れ て く る ケ ー ス が 出 て 来 て ケ ー ス
数 が 増 え て ゆ く の で は な い で し ょ う か ? 逆 に こ ち ら か ら も 、 SC が 担 当 し
た方が良いと思うケースはお願いしやすくなりますしね。
あとは、医療の必要性を感じる生徒というくくりを無くして、とにかく
何でも相談に乗るというスタンスにしてみて、まずは相談に乗る。それか
ら、生徒にとってどういった支援につながることがベストかを振り分けて
あ げ る 、 紹 介 し て あ げ る 、 そ れ が SC で あ れ ば SC に 、 担 任 と も っ と 話 す
時間を作った方が良ければ担任との間を仲介する、養護教諭であれば養護
教諭につなげていく、というようにしていくのはいかがでしょうか?それ
に加えて、生徒が相談しやすい存在になることですよね。生徒が来易い雰
囲気を作ることが、生徒の来談のハードルが低くなって良いと思います。
高校生だと、自分の状態がどのくらい悪いのか、病気なのか、ほっといて
も 大 丈 夫 な の か 判 断 で き ま せ ん よ ね 。だ か ら 、
「 こ れ っ て 病 気 ? 」と 気 軽 に
聞きに来られるようなハードルの低さが大切になるように思います。あと
は、予約が入っていない時間をフリータイムにするのも良いでしょう。
(4)第 4 回スーパービジョン
平 成 25 年 10 月 30 日
巣立ち会
17 時 ~ 18 時 30 分
シンフォニーにて
スーパーバイザー:長汐氏
スーパーバイジー:職員 2 名
内容:
学校で家族の相談支援を行ってゆくにつれ、新たな課題が見えてきた。
Color で も こ れ ま で に 家 族 支 援 は 重 要 な 位 置 を 占 め て お り 、 殆 ど の ケ ー ス
において家族支援を行ってきているが、外部機関において家族支援を行っ
たのは今回が初めてとなる。学校内部で相談を受けるということは、我々
の家族支援はこれまでのように保護者と我々だけの関係ではなく、保護者
と学校と我々の三者関係の中に位置することになる。つまり、学校におい
て家族支援を行ってゆく際には、学校の方針も考慮する必要が出てくると
いうことである。それと同時に、学校という場での家族支援は、学校と保
護者と我々の間で連携が取りやすいという大きなメリットもある。これも
また、今までにない状況である。そのため、学校現場における家族支援が
より有効に機能するように、支援スタイルを模索してゆく必要があった。
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そ こ で 、 既 に 行 っ た 家 族 支 援 の 様 子 を も と に 、 SV よ り 指 導 を 受 け た 。
< SV>
母親の気持ちが積極的になっていなかったり、病気とは考えたくない気
持ちがある場合、少し時間をかけて介入の糸口を見つけていく必要が出て
き ま す よ ね 。具 体 的 に は 保 護 者 と コ ー デ ィ ネ ー タ ー と の 関 係 性 が 良 け れ ば 、
再度声を掛けていくか、直接保護者に連絡するか判断して、当面のニーズ
に応えていけるよう、一歩前に進めてはどうでしょうか。また、学校側の
協力を得るようにして、保護者や本人にアプローチする機会を伺うように
することも必要でしょう。家族も疲れて積極的な動きができないこともあ
る の で 、見 守 り な が ら 待 つ と い う 時 間 が 必 要 だ と 思 い ま す 。焦 ら ず 諦 め ず 、
いつでも傍らにいる感覚でいることが大切かもしれませんね。
(5)第 5 回スーパービジョン
平 成 2 5 年 11 月 2 7 日
巣立ち会
17 時 ~ 18 時 30 分
シンフォニーにて
スーパーバイザー:長汐氏
スーパーバイジー:職員 2 名
内容:
Color へ の 来 談 者 と 学 校 で の 来 談 者 に 傾 向 の 違 い が 見 え て き た 。 一 度 相
談に繋がっても、自分からの積極的な来談ではなく、先生に勧められての
来談であることがほとんどであるため、その後の来談意欲が薄く、なかな
かスムーズな継続支援に至らないことが多い。そういった相談者を対象と
し て い く 上 で 、 今 後 ど の よ う に し て い く と 良 い 方 向 に 向 か う の か 、 SV に
相談した。
< SV>
そういう傾向にある相談者は距離感が難しいですよね。また、言葉通り
聞いていると、身を退いた方がいいのかなと思ってしまうような発言もあ
りますけど、言葉の裏にある願いというのがあるので、それを受け取って
あげることが必要になってくると思います。
若いお母さんなんかでも、一生懸命後ろ向きの発言をするんですけど、
その裏には、そんなことないよと言ってもらいたい甘えや、依存の気持ち
があることがすごく感じられます。やめるとか、来なくなるとか、学校に
もう行かないとかいう発言の真意というのが、どこらへんにあるのか掴ん
であげると良いのかもしれないですね。距離感を上手くみつつ、連絡をし
て ゆ く の は 大 事 で す よ ね 。そ し て 、と に か く 全 面 的 に 受 容 し て あ げ る こ と 、
それが繋がってゆく上で必要でしょうね。
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(6)第 6 回スーパービジョン
平 成 25 年 12 月 27 日
巣立ち会
17 時 ~ 18 時 30 分
シンフォニーにて
スーパーバイザー:長汐氏
スーパーバイジー:職員 2 名
内容:
2 学期が終了したが、担任からの紹介はほとんどない状態にあった。学
校で支援活動をしていく上で担任の理解を得ることは、支援を必要として
いる生徒が支援に結びつきやすくなるために、非常に重要なことであると
思われた。そこで今回は、高校の教師と生徒の関わりの特性を学び、それ
を踏まえた上で、担任とどうやって繋がってゆくかについてご指導いただ
いた。
< SV>
高校の教員というのは、小中学校の教員と違って、より勉強を教えるこ
とに特化していると思います。小中学校の教員というのは、生徒の学習面
だけでなく生活面も見ていきますし、指導しますが、高校になると学習面
が中心となり、問題がない限り生活面にはほとんど介入しなくなります。
3 部制高校ともなると、教師と生徒が顔を合わせるのは授業の場面のみに
なりやすいので、余計に生活面は関わらなくなりますよね。そうなると、
学習以外の面での問題、例えば友人関係や家族関係などの問題は、生徒と
積極的な関わりを意識的に持たない限り、関わる事はほとんどないでしょ
う。生徒も学習面での関わりしかない先生に、わざわざそういった問題を
相談しに行ったりしませんよね。それなので、生徒の変化に気付きにくい
のも高校の特徴かもしれません。部活をやっているとまた違ってきますけ
どね。
また、昔は積極的に生徒と関わりを持ち相談にも乗っていた先生も、問
題の深さに対応しきれなくなり、生徒と距離をとることによって、先生自
身の心の安定を図るようになっていったというケースも少なくないかもし
れません。そういったことを考えると、先生方は、いろいろな経験や価値
観から、いろいろなスタンスを持っていることが予想されます。じゃあ、
どうしたら専門家としてそういった教師・生徒関係の中につながってゆけ
るか、ということが問題になりますね。
一 つ は 、 Color の 活 動 に つ い て 理 解 し て も ら え る よ う に 、 先 生 方 に 宣 伝
す る こ と で す 。学 習 面 は 先 生 方 、思 春 期 に 抱 え や す い メ ン タ ル の 問 題 は 我 々
が引き受けます、というように、先生方と一緒になって生徒のことをサポ
ートしていきたいと思っているんだという姿勢を示したり、自分たちの専
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門知識を活かして、生徒たちを何とかサポートしたいと思っているんだと
い う こ と を 、先 生 方 に 理 解 し て も ら う こ と が 大 切 で す 。重 要 な の は 、生 徒 、
生徒、と生徒目線で訴えるより、先生方が抱えている辛さを思いやるよう
に 、 先 生 方 の お 手 伝 い を し ま す と い う ス タ ン ス で PR し て い く こ と で す 。
その方が、先生方は耳を傾けてくれやすいと思います。教員は相当ストレ
スを抱えていますからね。
も う 一 つ は 、 授 業 見 学 に 行 く と い う の も 手 で す 。 Color の ス タ ッ フ が ど
んな人なのか先生方が目にする機会にもなりますし、生徒も顔を覚えてく
れますし、普段の生徒の様子を見ることができるので、いろいろな意味で
とても有効です。しょっちゅう観に行っていると、先生方も慣れてきて、
Color に 対 す る ハ ー ド ル が 下 が っ て く る ん で す よ ね 。 そ う す る と 、 紹 介 し
やすくなりますから。
今は連絡会に参加したりしていますか?<していません>本当は、定期
的 に 月 に 1 回 30 分 で も い い の で 、 コ ー デ ィ ネ ー タ ー と 養 護 教 諭 の 三 者 で
も良いと思いますので、連絡会みたいなものをどこかでやると良いと思い
ます。そこに副校長にも顔を出してもらうとか、会をやっているというこ
とを認めてもらうこと、お墨付きを得ることが大事です。時間と場所を決
めて定期的に会議として行うことが、学校の中で位置づけられていくこと
になります。<それなら、年度末か年度初めに、来年度の計画として担当
のコーディネーターに提案してみると良いでしょうか?>それも良いでし
ょう。年度末に希望を出しておくと良いですね。そうやって学校の中に位
置づけられていくと、お客様ではなくなってきます。そして、生徒との関
わりが多い養護教諭や、情報の発信源にもなるコーディネーターと、定期
的に連絡会を行うという実績を積んでいくと、会の存在が先生方に知られ
ていく可能性も出てきますし、生徒のことで担任と情報共有しなくてはな
らないときにこの会を利用すると、担任が相談できる場があることがわか
ってくるんですね。そうなると、先生方が利用しやすくなります。そうい
う地道な活動が、先生方と繋がっていくためには必要だと思います。
(7)第 7 回スーパービジョン
平 成 26 年 1 月 17 日
巣立ち会
17 時 ~ 18 時 30 分
シンフォニーにて
スーパーバイザー:長汐氏
スーパーバイジー:職員 2 名
内容:
少しずつ継続支援をするケースが増えてきたものの、生徒や保護者から
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の積極的な相談はなく、やはりコーディネーターからの紹介がほとんどで
あ っ た 。徐 々 に 担 任 か ら 紹 介 を 受 け て 来 談 す る ケ ー ス も 増 え て き た も の の 、
生徒が自分から面談の申し込みをするケースはまだない。
難しいケースが集中するのは、紹介されるケースの殆どが、これまでに
手を尽くしたものの変化がなく、問題が長期化して硬直状態に陥ってしま
ったケースが多いからである。そのため、問題がまだ軽いうちに、生徒が
自主的に相談に来れるような環境ができないと、今後も長期化して硬直状
態にある難しいケースばかりになると思われる。そこで、より生徒や保護
者 が 早 い 段 階 で 自 主 的 に 来 談 で き る よ う に 、 生 徒 ・ 保 護 者 に Color を 知 っ
て も ら う に は ど う し た ら よ い か 、 SV よ り 助 言 を い た だ い た 。
< SV>
お気楽感をなるべくかもし出せるようにした方が良いと思います。子ど
もの目線に立たないと、子どもとつながりにくくなってしまいます。そし
て、夜眠れない子とか、食欲がない子とか、身体がだるい子とか、身体に
出ている子を対象に、相談においでと呼びかけるような気軽さを出せると
いいと思います。自分の心と身体にちゃんと向き合って、良い状態のメン
タルヘルスにしていこうね、というメッセージをどれだけ伝えられるかで
すよね。そういう呼びかけをしていくことがまず一つあり、さらに、心配
な事があったら友達と一緒に相談においで、というような呼びかけも添え
てあると、生徒にとっては行きやすい場所になりますよね。特に女子高生
は、友達に背中を押されれば相談に行けたりするので、友達が「ちょっと
相 談 に 行 っ て み な い ? 」と 誘 っ て 行 け る よ う な 雰 囲 気 が あ る と い い で す ね 。
恋話とかの相談相手も高校生はだいたい友達ですしね。
場所を保健室に移して、保健室で養護教諭と一緒に活動するというのは
いかがですか?生徒の様子を見ないと、今の高校生の言動を身近に感じて
初めて喋れるようになると思うんですよね。保健室に養護教諭と一緒にい
て、生徒の様子を観察するのも必要ですし、時には一緒に話に入れると良
いですよね。養護教諭の代わりに話し相手をさせてもらってみたりとか、
そうやって生徒の中に入っていくと、生徒が徐々に相談してくれるように
なりますし、相談した子が友達に勧めてくれたり、口コミで広がっていき
ますから、予約が入っていない時間は保健室で過ごすようにしてみると良
いと思います。
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(8)第 8 回スーパービジョン
平 成 26 年 2 月 26 日
巣立ち会
17 時 ~ 18 時 30 分
シンフォニーにて
スーパーバイザー:長汐氏
スーパーバイジー:職員 2 名
内容:
現 在 の と こ ろ 、 医 療 機 関 と 連 携 が で き る と い う Color の “ 売 り ” と な っ
ている機能が学校でなかなか活かせていない。そこで、どうしたら機能し
ていけるかについてご指導いただいた。
< SV>
医療を必要としているケースは沢山あると思います。そして、特定の医
療 機 関 を 紹 介 し た り 、 同 行 受 診 し た り す る こ と が で き な い SC に 対 し て 、
そ れ が で き る こ と は Color の 強 み で す よ ね 。 た だ 、 医 療 を 必 要 と し て い る
ケースが多くとも、医療を受け入れる態勢ができていないということが、
有効に機能しない一つの要因かもしれません。ですから、生徒への心理教
育において、医療を利用することへのハードルを下げたり、きちんとした
知識を持って、医療を上手に利用していくことを教えていく事は必要かも
しれません。
また、教師と生徒双方が医療機関に抵抗があるというのも事実です。時
間をかけて教師・生徒ともに関係をしっかりと築いてゆくことが大切でし
ょう。信頼している人から医療が必要と言われた方が、抵抗があることで
も受け入れやすいですからね。
(9)第 9 回スーパービジョン
平 成 26 年 3 月 20 日
巣立ち会
17 時 ~ 18 時 30 分
シンフォニーにて
スーパーバイザー:長汐氏
スーパーバイジー:職員 2 名
内容:
来年度に向けて、今年度中にやっておいた方が良いこと、また、来年度
やっていくと良いことを指導していただいた。
< SV>
教 員 研 修 は 、 先 生 方 に 対 し て Color の 宣 伝 に も な る の で 、 続 け ら れ る と
良いと思います。年度の最初の方にできると良いですよね。それと、生徒
への心理教育も良いと思います。今回は大規模な形での実施になっていた
ようですが、次年度は、もう少しワークとかも入れて楽しんでもらいなが
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ら、思春期のメンタルヘルスについて学んでいってもらえるように、クラ
ス単位でやれると良いですよね。
あとは、来年度の校内での支援活動についてですね。今年度はなかなか
生徒と触れ合う機会が持てなかったようなので、次年度は、保健室でもっ
と頻繁に生徒と顔を合わせられるような、生徒に身近に感じてもらえるよ
うな活動を取り入れていけると、生徒にとって相談するハードルが低くな
って良いと思います。
先 生 方 へ の PR に 関 し て は 、 職 員 用 の リ ー フ レ ッ ト を 作 成 す る の も 良 い
かもしれませんね。こういう場合にお役に立てますとか、こういう生徒を
見かけたらご紹介くださいとか、生徒への対応に困っていたら気軽にご相
談下さいとか、どういう時に利用できるのかを明確にして、宣伝してゆけ
ると、もっと利用してくれるようになると思います。
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第 3 節 世 田 谷 泉 高 校 の 生 徒 へのア ン ケート 調 査 の 実 施
1.目的
生徒のメンタルヘルスを把握し、相談支援の仕組みをつくる調査研究の
基礎資料とすることを目的とする。
2.調査方法
実 施 日 : 平 成 26 年 1 月 16 日 、 23 日
対象者:都立世田谷泉高校に在籍中の生徒。
全 校 生 徒 数 は 600 名 。
実 施 方 法 : 1 ~ 3 年 は そ れ ぞ れ 2 ク ラ ス ず つ 、4 年 は 1 ク ラ ス を 抽 出 し て
実施した。各教室において担任より生徒に一斉に配布し、各自
記入し終わったら質問紙と一緒に配布されたテープのり付封
筒 に 入 れ 、各 自 で 封 を し て も ら い 、一 斉 に 回 収 す る よ う に し た 。
調 査 内 容 :「 高 校 生 の メ ン タ ル ヘ ル ス 調 査 」 と 称 し て 行 う 、 無 記 名 式 の
調査で ある。大き く 分けて 以下の 4 つの 内容に ついて 質問し
ている。
・学校生活について
・家族や友人との関係について
・メンタルヘルスの状態について
・現在の困り感と相談希求性について
(※詳細は巻末資料に添付されているアンケート調査用紙を参照)
3.結果
2 日 間 で 実 施 し た 結 果 、 142 名 か ら 回 答 を 得 た 。 質 問 に よ っ て 未 記 入 の
項目がある回答もあったため、それぞれの質問における回答者の合計にバ
ラつきがある。
「学校生活は楽しいですか?」という質問の回答結果が表 1 とグラフ 1
である。
141 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 47 名 で あ り 、 全 体 の 33%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 5 0 名 で あ り 、 全 体 の 3 6 % で あ
っ た 。「 は い ・ ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た の は 全 体 の 6 9 % と 、 程 度
に 差 は あ る も の の 約 2/ 3 の 生 徒 が 学 校 生 活 を 『 楽 し い 』 と 捉 え て い る こ
とがわかった。
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表1.学校生活は楽しいですか?
(人数)
はい
47
どちらかといえばはい
50
どちらかといえばいいえ
23
いいえ
21
計
141
次 に 、「 学 校 で は 安 心 し て 過 ご せ て い ま す か ? 」 と い う 質 問 の 回 答 結 果
が表 2 とグラフ 2 である。
141 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 50 名 で あ り 、 全 体 の 35%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 6 0 名 で あ り 、 全 体 の 4 3 % で あ
っ た 。 程 度 に 差 は あ る も の の 、 78%の 生 徒 が 学 校 で は 『 安 心 』 し て 過 ご せ
て い る こ と が わ か っ た 。 逆 に 、 安 心 で き な い で い る 生 徒 が 16 名 い る こ と
もわかった。
表2.学校では安心して過ごせていますか?
(人数)
はい
50
どちらかといえばはい
60
どちらかといえばいいえ
15
いいえ
16
計
141
「 学 校 の 授 業 は よ く わ か り ま す か ? 」と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 3 と グ
ラフ 3 である。
141 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 36 名 で あ り 、 全 体 の 25%で あ っ た 。 ま
25
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 7 3 名 で あ り 、 全 体 の 5 2 % で あ
った。授業が『よくわかる』と感じている生徒が 8 割近くいることがわか
っ た 。逆 に 、11 名 の 生 徒 が 、授 業 が わ か ら な い と い う 状 態 に あ る こ と も わ
かった。
表3.学校の授業はよくわかりますか?
(人数)
はい
36
どちらかといえばはい
73
どちらかといえばいいえ
21
いいえ
11
計
141
「高校に入学してから、友達はできましたか?」という質問の回答結果
が表 4 とグラフ 4 である。
1 4 1 名 中「 は い 」と 答 え た の は 1 0 8 名 で あ り 、全 体 の 7 7 % で あ っ た 。
「ど
ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 26 名 で あ り 、 全 体 の 18%で あ っ た 。
この高校に入学して、友達ができた生徒が 9 割以上いることがわかった。
表4.高校に入学してから、友達はできましたか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
108
26
4
3
141
26
「 友 達 と 楽 し く 過 ご し て い ま す か ? 」と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 5 と グ
ラフ 5 である。
141 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 80 名 で あ り 、 全 体 の 57%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 4 5 名 で あ り 、 全 体 の 3 2 % で あ
っ た 。こ の こ と か ら 、友 達 と 楽 し く 過 ご せ て い る 生 徒 が 、程 度 に 差 は あ れ 、
全 体 の 89%も い る こ と が わ か っ た 。
表5.友達と楽しく過ごしていますか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
80
45
11
5
141
「一人 でいる 方が好 きです か?」という 質問の 回答結 果が表 6 とグラフ
6 である。
141 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 35 名 で あ り 、 全 体 の 25%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 4 6 名 で あ り 、 全 体 の 3 3 % で あ
った。このことから、人と一緒に居るよりも、一人でいることを好む生徒
が、半数以上もいることがわかった。
表6.一人でいる方が好きですか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
35
46
47
12
140
27
「人とすぐ友達になる方法があったら知りたいと思いますか?」という
質問の回答結果が表 7 とグラフ 7 である。
141 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 47 名 で あ り 、 全 体 の 33%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 4 0 名 で あ り 、 全 体 の 2 8 % で あ
った。このことから、友達を作る方法を知りたいと思っている生徒が半数
以上いることがわかった。
表7.人とすぐ友達になる方法があったら
知りたいと思いますか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
47
40
26
28
141
「家族は自分のことをよく理解してくれますか?」という質問の回答結
果が表 8 とグラフ 8 である。
表8.家族は自分のことを
よく理解してくれますか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
49
56
25
10
140
141 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 49 名 で あ り 、 全 体 の 35%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 5 6 名 で あ り 、 全 体 の 4 0 % で あ
28
っ た 。 こ の こ と か ら 、 75%の 生 徒 が 、 家 族 に 理 解 し て も ら え て い る と 感 じ
ていることがわかった。逆に、理解してもらえていないと感じている生徒
は 、「 ど ち ら か と い え ば い い え 」 の 回 答 者 数 を 含 め る と 、 全 体 の 2 3 % い る
ことがわかった。
「友達や家族との関係がうまくいかず困っていますか?」という質問の
回答結果が表 9 とグラフ 9 である。
1 4 1 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 1 5 名 で あ り 、 全 体 の 11 % で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 3 2 名 で あ り 、 全 体 の 2 3 % で あ
っ た 。 こ の こ と か ら 、 34%の 生 徒 が 、 友 達 や 家 族 と の 関 係 で 困 っ て い る こ
と が わ か っ た 。 逆 に 、 困 っ て い な い 生 徒 は 3 1 % で あ り 、「 ど ち ら か と い え
ばいいえ」を含めると、全体の半数以上を占めることがわかった。
表9.友達や家族との関係が
うまくいかず困っていますか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
15
32
50
44
141
「あなたが困っているとき、誰かに助けて欲しいと思いますか?」とい
う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 10 と グ ラ フ 10 で あ る 。
141 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 47 名 で あ り 、 全 体 の 33%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 5 7 名 で あ り 、 全 体 の 4 0 % で あ
った。このことから、約 7 割の生徒が、困ったときには助けが欲しいと思
っていることがわかった。
29
表10.あなたが困っているとき、
誰かに助けて欲しいと思いますか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
47
57
26
11
141
「よほどのことがない限り、人に相談しないほうですか?」という質問
の 回 答 結 果 が 表 11 と グ ラ フ 11 で あ る 。
141 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 62 名 で あ り 、 全 体 の 44%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 4 1 名 で あ り 、 全 体 の 2 9 % で あ
った。このことから、約 7 割の生徒が他者への相談に消極的であることが
わかった。
表11.よほどのことがない限り、
人に相談しないほうですか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
62
41
28
9
140
「自分なりのストレス解消法はありますか?」という質問の回答結果が
表 12 と グ ラ フ 12 で あ る 。
140 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 47 名 で あ り 、 全 体 の 34%で あ っ た 。 ま
30
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 5 3 名 で あ り 、 全 体 の 3 8 % で あ
った。このことから、約 7 割の生徒がストレス解消法を持っていることが
わかった。
表12.自分なりのストレス解消法は
ありますか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
47
53
23
17
140
「 将 来 の 夢 や 希 望 を 持 っ て い ま す か ? 」 と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 13
と グ ラ フ 13 で あ る 。
139 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 65 名 で あ り 、 全 体 の 47%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 3 6 名 で あ り 、 全 体 の 2 6 % で あ
った。このことから、約 7 割の生徒が将来の夢や希望を持っていることが
わかった。
表13.将来の夢や希望を持っていますか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
65
36
18
20
139
「辛くても無理して頑張り続けてしまうほうですか?」という質問の回
31
答 結 果 が 表 14 と グ ラ フ 14 で あ る 。
139 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 47 名 で あ り 、 全 体 の 34%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 4 3 名 で あ り 、 全 体 の 3 1 % で あ
った。このことから、約 6 割の生徒が無理して頑張り続ける傾向にあるこ
とがわかった。
表14.辛くても無理して頑張り
続けてしまうほうですか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
47
43
37
12
139
「この 1 ヶ月間に、夜眠れなくなったり、夜中や朝早くに目が覚めてし
ま う こ と が あ り ま し た か ? 」と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 1 5 と グ ラ フ 1 5 で
ある。
表15.この1ヶ月間に、夜眠れなくなった
り、夜中や朝早くに目がさめてしまうこと
がありましたか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
53
33
24
31
141
141 名 中 「 度 々 あ っ た 」 と 答 え た の は 53 名 で あ り 、 全 体 の 38%で あ っ
た 。ま た 、
「 時 々 あ っ た 」と 答 え た 人 は 3 3 名 で あ り 、全 体 の 2 3 % で あ っ た 。
32
こ の こ と か ら 、約 4 割 の 生 徒 が こ の 1 ヶ 月 間 に 睡 眠 の 不 具 合 を 頻 繁 に 感 じ
て お り 、約 2 割 の 生 徒 が 、時 々 不 具 合 を 感 じ て い る と い う こ と が わ か っ た 。
「この 1 ヶ月間、眠りすぎることはありましたか?」という質問の回答
結 果 が 表 16 と グ ラ フ 16 で あ る 。
141 名 中 「 度 々 あ っ た 」 と 答 え た の は 57 名 で あ り 、 全 体 の 40%で あ っ
た 。ま た 、
「 時 々 あ っ た 」と 答 え た 人 は 3 3 名 で あ り 、全 体 の 2 3 % で あ っ た 。
このことから、約 6 割の生徒が、この1ヶ月間で寝すぎていると感じてい
ることがわかった。
表16.この1ヶ月間、
眠り過ぎることはありましたか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
57
33
32
19
141
「 こ の 1 ヶ 月 間 に 、理 由 も な く 楽 し い 気 分 が 続 く こ と が あ り ま し た か ? 」
と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 17 と グ ラ フ 17 で あ る 。
139 名 中 「 度 々 あ っ た 」 と 答 え た の は 23 名 で あ り 、 全 体 の 17%で あ っ
た 。ま た 、
「 時 々 あ っ た 」と 答 え た 人 は 2 4 名 で あ り 、全 体 の 1 7 % で あ っ た 。
このことから、約4割近くの生徒が、この1ヶ月間に、理由なく楽しい気
分が続くという状態を体験していることがわかった。
表17.この1ヶ月間に、理由もなく楽しい
気分が続くことがありましたか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
23
24
59
33
139
33
「この 1 ヶ月間に、学校に行くのが辛いと思うことはありましたか?」
と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 18 と グ ラ フ 18 で あ る 。
141 名 中 「 度 々 あ っ た 」 と 答 え た の は 48 名 で あ り 、 全 体 の 34%で あ っ
た 。ま た 、
「 時 々 あ っ た 」と 答 え た 人 は 3 2 名 で あ り 、全 体 の 2 3 % で あ っ た 。
このことから、約 3 割の生徒がこの1ヶ月間に、頻繁に学校に行くことに
辛さを感じていることがわかった。
表18.この1ヶ月間に、学校に行くのが
辛いと思うことはありましたか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
48
32
35
26
141
「これまでに、太るのが嫌で食べたものを吐き出したり、もどしたりし
た こ と が あ り ま し た か ? 」と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 1 9 と グ ラ フ 1 9 で あ
る。
1 4 1 名 中「 度 々 あ っ た 」と 答 え た の は 1 0 名 で あ り 、全 体 の 7 % で あ っ た 。
ま た 、「 時 々 あ っ た 」 と 答 え た 人 は 5 名 で あ り 、 全 体 の 4 % で あ っ た 。 こ の
ことから、約 1 割の生徒が、太ることに抵抗を感じて、摂取したものを吐
くという経験をしていることがわかった。
34
表19.これまでに、太るのが嫌で
食べたものを吐き出したり、
もどしたりしたことがありましたか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
10
5
14
112
141
「これまでに、超能力などによって、自分の心の中を誰かに読み取られ
た こ と が あ り ま し た か ? 」と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 2 0 と グ ラ フ 2 0 で あ
る。
表20.これまでに、超能力などによっ
て、自分の心の中を誰かに
読み取られたことがありましたか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
6
7
16
112
141
1 4 1 名 中「 度 々 あ っ た 」と 答 え た の は 6 名 で あ り 、全 体 の 4 % で あ っ た 。
ま た 、「 時 々 あ っ た 」 と 答 え た 人 は 7 名 で あ り 、 全 体 の 5 % で あ っ た 。 こ の
項 目 は 、 精 神 病 様 体 験( P L E s )の 有 無 を 評 価 す る 項 目 の 一 つ で あ り 、 こ の
評 価 項 目 は 、一 つ で も 該 当 す る と 、
「 精 神 病 様 体 験 あ り 」と 判 断 さ れ る こ と
35
から、1 割近くの生徒が、精神病様体験をしているといえる。
「これまでに、テレビやラジオで自分のことを言われていると感じたこ
と が あ り ま し た か ? 」 と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 21 と グ ラ フ 21 で あ る 。
こ の 項 目 に つ い て 141 名 中「 度 々 あ っ た 」と 答 え た の は 8 名 で あ り 、全
体 の 5 % で あ っ た 。 ま た 、「 時 々 あ っ た 」 と 答 え た 人 は 2 5 名 で あ り 、 全 体
の 18%で あ っ た 。 頻 度 に 差 は あ れ 、 テ レ ビ や ラ ジ オ で 自 分 の こ と を 言 わ れ
ていると感じた体験をした生徒が 2 割以上いることがわかった。
表21.これまでに、テレビやラジオで
自分のことを言われていると
感じたことがありましたか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
8
25
29
78
140
「これまでに、自分を責めたり命令してくる声が聞こえてきたことがあ
り ま し た か ? 」 と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 22 と グ ラ フ 22 で あ る 。
1 4 1 名 中「 度 々 あ っ た 」と 答 え た の は 1 3 名 で あ り 、全 体 の 9 % で あ っ た 。
ま た 、「 時 々 あ っ た 」 と 答 え た 人 は 2 0 名 で あ り 、 全 体 の 1 4 % で あ っ た 。 こ
のこと から、約 2 割の生徒 が責め たり命 令して くる声 を聞い ている ことが
わかった。
36
表22.これまでに、自分を責めたり
命令してくる声が聞こえて
きたことがありましたか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
13
20
30
79
142
「この 1 ヶ月間に、周りの人が自分の悪口を言ったり、嫌がらせをする
と 感 じ た こ と が あ り ま し た か ? 」 と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 23 と グ ラ フ
23 で あ る 。
表23.この1ヶ月間に、周りの人が
自分の悪口を言ったり、嫌がらせを
すると感じたことがありましたか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
15
18
37
72
142
142 名 中 「 度 々 あ っ た 」 と 答 え た の は 15 名 で あ り 、 全 体 の 10%で あ っ
た 。ま た 、
「 時 々 あ っ た 」と 答 え た 人 は 1 8 名 で あ り 、全 体 の 1 3 % で あ っ た 。
このことから約 2 割の生徒が、周りの人が自分の悪口を言ったり、嫌がら
せをすると感じながら登校していることがわかった。
37
「これまでに、刃物などで自分の身体をわざと傷つけたことがありまし
た か ? 」 と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 24 と グ ラ フ 24 で あ る 。
1 4 2 名 中 「 度 々 あ っ た 」 と 答 え た の は 1 5 名 で あ り 、 全 体 の 11 % で あ っ
た 。ま た 、
「 時 々 あ っ た 」と 答 え た 人 は 1 8 名 で あ り 、全 体 の 1 3 % で あ っ た 。
このことから、約 2 割の生徒が自傷行為を経験していることがわかった。
表24.これまでに、刃物などで自分の
身体をわざと傷つけたことが
ありましたか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
15
18
16
93
142
「人ごみの中にいる時やバスや電車などに乗っている時などに、人の視
線が気になったり、人に見られていると感じたりすることはありました
か ? 」 と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 25 と グ ラ フ 25 で あ る 。
表25.人ごみの中にいる時やバスや
電車などに乗っている時などに、
人の視線が気になったり、
人に見られていると感じたり
することはありますか?
(人数)
度々あった
時々あった
あまりなかった
全くなかった
計
31
40
20
50
141
38
141 名 中 「 度 々 あ っ た 」 と 答 え た の は 31 名 で あ り 、 全 体 の 22%で あ っ
た 。ま た 、
「 時 々 あ っ た 」と 答 え た 人 は 4 0 名 で あ り 、全 体 の 2 8 % で あ っ た 。
このことから、人が多い場所において、5 割の生徒が人の視線を気にして
いることがわかった。
「他の人々が持っていない特別な能力(超能力など)が、自分にはある
と 思 い ま す か ? 」 と い う 質 問 の 回 答 結 果 が 表 26 と グ ラ フ 26 で あ る 。
1 4 1 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 1 6 名 で あ り 、 全 体 の 11 % で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 9 名 で あ り 、 全 体 の 6 % で あ っ
た。このことから、約 2 割の生徒が、自分は特別な能力を持っていると思
っていることがわかった。
表26.他の人々が持っていない
特別な能力(超能力など)が、
自分にはあると思いますか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
16
9
12
104
141
「現在、ストレスや気持ちの問題で困っていますか?」という質問の回
答 結 果 が 表 27 と グ ラ フ 27 で あ る 。
141 名 中 「 は い 」 と 答 え た の は 38 名 で あ り 、 全 体 の 27%で あ っ た 。 ま
た 、「 ど ち ら か と い え ば は い 」 と 答 え た 人 は 3 7 名 で あ り 、 全 体 の 2 6 % で あ
った。このことから、5 割以上の生徒が回答時にストレスや気持ちの問題
で困っていると感じていることがわかった。
39
表27.現在、ストレスや気持ちの
問題で困っていますか?
(人数)
はい
どちらかといえばはい
どちらかといえばいいえ
いいえ
計
38
37
27
39
141
表 2 8 と グ ラ フ 2 8 、 2 9 は 、「 気 持 ち が 落 ち 込 ん だ り 、 辛 く な っ た り し た
時に、最初に誰に相談しますか?」という質問の回答結果である。最も多
か っ た 最 初 の 相 談 相 手 は『 友 人 』で 7 3 人 で あ っ た 。次 に 多 か っ た の は『 親 』
で 、 5 4 人 で あ っ た 。 そ し て 、 3 番 目 に 多 か っ た の は 、『 誰 に も 相 談 し な い 』
と い う 回 答 で あ っ た 。『 カ ウ ン セ ラ ー 』 11 人 、『 教 師 』 1 0 人 と 、 こ ち ら は
ほぼ同程度であった。医者は 6 人と更に少なかった。
表28.最初に相談する相手
(人数)
友人
親
誰にも相談しない
兄弟姉妹
カウンセラー
教師
医者
施設職員
祖父母
バイトの先輩
恋人
ネット上
73
54
40
15
11
10
6
2
1
1
1
1
40
表 2 9 と グ ラ フ 3 0 、3 1 は 、現 在 相 談 し て い る 相 手 に つ い て 質 問 し た 回 答
結果である。最も多かった回答は『問題がないので相談の必要がない』で
3 9 人 で あ っ た 。次 に 多 か っ た の は『 誰 に も 相 談 し な い 』で 3 4 人 で あ っ た 。
そ し て 、 3 番 目 に 多 か っ た の が 『 友 人 』 で 3 0 人 、『 親 』 も こ れ と ほ ぼ 同 程
度 の 2 8 人 で あ っ た 。『 兄 弟 姉 妹 』『 医 者 』『 カ ウ ン セ ラ ー 』『 教 師 』 は ほ ぼ
同 程 度 で そ れ ぞ れ 6~ 8 人 程 度 で あ っ た 。
表29.現在相談している相手
(人数)
問題がないので相談の必要なし
誰にも相談しない
友人
親
兄弟姉妹
医者
カウンセラー
教師
施設職員
親戚
恋人
39
34
30
28
8
7
7
6
2
1
1
41
表 3 0 と グ ラ フ 3 2 は 、「 専 門 の 医 師 や カ ウ ン セ ラ ー な ど に 相 談 し た い で
す か ? 」と い う 質 問 に 対 す る 回 答 結 果 で あ る 。
「 は い 」が 1 9 人 と 全 体 の 1 4 %
で あ り 、「 い い え 」 が 8 2 人 で 全 体 の 5 9 % を 占 め て い た 。
表30.専門の医師やカウンセラー
などに相談したいですか?
(人数)
はい
いいえ
相談することがない
計
19
82
37
138
42
これまでに、個々のグラフの結果についてみてきたが、さらに精神疾患
のリスクを詳しくみていくことにした。
表 31 と グ ラ フ 33 は 、こ れ ま で の 質 問 項 目 の 中 で 、精 神 疾 患 の 可 能 性 が
疑 わ れ る 体 験 を 想 定 す る 項 目 19、 20、 21、 22、 23、 24、 25、 26 の 8 項 目
の う ち 、「 度 々 あ る 」「 時 々 あ る 」 の ど ち ら か に ○ を 付 け た 数 が 2 つ 以 上 あ
っ た 生 徒 を 、精 神 疾 患 の 可 能 性 が 疑 わ れ る 体 験 を 2 つ 以 上「 経 験 し て い る 」、
1 つ以下だった生徒を 2 つ以上「経験していない」として、それぞれの人
数 を 示 し た も の で あ る 。 こ の 結 果 か ら 、 2 つ 以 経 験 し て い る 生 徒 が 44%い
ることがわかった。
表31.8項目中病的体験を2つ以上
経験しているか?
(人数)
経験している
経験していない
計
63
79
142
ま た 、 表 32 と グ ラ フ 34 は 、 項 目 25 の 人 の 視 線 が 気 に な っ た り 見 ら れ
ていると感じることがあったかどうかという質問において、
「 度 々・時 々 あ
っ た 」 に 回 答 し て い る 生 徒 の う ち 、 さ ら に 20、 21、 22、 26 の 精 神 病 の 可
能 性 が 疑 わ れ る 体 験 を 想 定 す る 質 問 の う ち 、1 つ 以 上 「 度 々 ・ 時 々 あ っ た 」
に あ て は ま っ て い た 生 徒 を 抽 出 し た も の で あ る 。あ て は ま る 生 徒 は 4 4 名 、
28%で あ っ た 。
表32. 25にあてはまり、さらに4項
目中1つに当てはまる生徒
(人数)
あてはまる
あてはまらない
計
40
102
142
43
さ ら に 、 表 33 と グ ラ フ 35 は 、 20、 21、 22、 26 の 精 神 病 の 可 能 性 が 疑 わ
れる体験を想定する質問のうち、2 つ以上「度々・時々あった」にあては
ま っ て い た 生 徒 を 抽 出 し た も の で あ る 。 あ て は ま っ て い た 生 徒 は 27 名 で
19%で あ っ た 。
表33.4項目中2つ以上に当ては
まる生徒
(人数)
あてはまる
あてはまらない
計
27
115
142
44
4.考察
調査項目の内容については、最初は他団体の誰かがどこかの高校生を対
象にメンタルヘルスの調査を行った質問項目を使用したいと考えた。他で
行ったデータがあり対象群があれば、より世田谷泉高校の生徒の特徴が明
らかになると考えたからである。2 名ほどの研究者に相談し、その方たち
が行った調査票も参考に頂いたりした。しかし実際にその調査を行おうと
すると、調査項目の量が多すぎて生徒が全部行うのが難しいという判断が
あったり、或いは質問の中に使用されている言葉が生徒には刺激的ではな
いかと 予想さ れたり という ことが あり 、先の 2 件の調 査票を 参考に しなが
らも、独自のもので実施せざるを得なかった。
調 査 項 目 の 1 か ら 14 ま で は 、 学 校 生 活 や 家 族 ・ 友 人 と の 関 係 、 現 在 の
自分の希望や状況などを漠然と聞いたもので、できるだけ「できています
か?」というプラス思考の質問を並べて生徒の気持ちをポジティブな方向
へ 向 け る よ う な 配 慮 を し て い る 。 15 か ら 26 ま で は 精 神 疾 患 の 可 能 性 を 疑
う 症 状 を 問 う も の で あ る ( 1 8 を 除 く )。 睡 眠 の リ ズ ム を 問 う よ う な 漠 然 と
したものから、かなり中核的な精神病の症状を問うものまでばらつきがあ
る 。2 7 で は 主 観 的 に 困 っ て い る か を 問 い 、2 8 か ら 3 0 で 困 っ た と き の 相 談
相手をどのように考えているか、あるいは現在どのように実行しているか
を聞いている。最後に、実際に相談したい人は用紙に氏名を記入するよう
になっている。
最初にこの学校の特徴で周知しておかなければならないのは、学校全体
で の 登 校 率 が 7 5 % ほ ど で あ る と い う こ と で あ る 。こ の ア ン ケ ー ト も 登 校 し
ている生徒だけに実施している。
「 学 校 生 活 は 楽 し い で す か ? 」と の 質 問 で は 6 9 % が 楽 し い と 感 じ て い る 。
チャレンジ校である世田谷泉高校には、中学までの間になにがしかの学校
生活に不具合を持った生徒が多い可能性があると考えると、これだけの生
徒が楽しいと感じているというのは、かなり高い数値と言えよう。同様に
「 学 校 で は 安 心 し て 過 ご せ て い ま す か ? 」 の 質 問 に も 78%が 「 過 ご せ て い
る 」と 高 い 数 値 を 示 し て い る 。
「 学 校 の 授 業 は よ く わ か り ま す か ? 」に つ い
ても同様で、チャレンジ校であるということを考えると、授業がよくわか
る と 感 じ て い る 生 徒 が 7 8 % い る と い う の は 、高 い 数 値 を 示 し て い る と い え
る。学校が様々な工夫や配慮をして、生徒が学校に来やすい環境を作り、
わ か り や す い 授 業 を 行 う な ど の 努 力 を し て い る こ と が 予 想 さ れ る 。一 方 で 、
学 校 で 安 心 し て 過 ご せ て い な い と 答 え て い る 生 徒 が 22%い る こ と は 少 し 気
になる。安心の内容は人によって様々であるので一概には言えないが、漠
然とした不安感や集団の場への違和感がある生徒が相当にいる可能性があ
45
る。登校率の低さからも、そのような推察は可能であろう。
4、5 の 「 友 達 が で き た か ? 」 或 い は 「 友 達 と 楽 し く 過 ご し て い る か ? 」
と い う 質 問 で は 、「 で き た 」「 楽 し く 過 ご し て い る 」 が 9 5 % 、 8 9 % と ど ち ら
も高い。少なくとも登校している生徒たちは、友達との関係は学校生活の
中 で は 前 向 き に と ら え ら れ て い る 。一 方 、6 の「 一 人 で い る 方 が 好 き か ? 」
の 質 問 に は 、 58%が 「 一 人 で い る 方 が 好 き 」 と 答 え て い る 。 友 達 と は 楽 し
く 過 ご せ る が 、そ れ な り に 気 を 使 う と い う よ う な 現 代 の 若 者 の 特 徴 が 、
「一
人でいる方が好き」と答えさせる理由と推察される。
家族との関係では、家族は自分のことを理解してくれていると感じてい
る 生 徒 が 75%い る 。 思 春 期 と い う 特 徴 を 考 え る と 、 む し ろ 高 す ぎ る か も し
れない。対象群がないので解釈が難しいところである。友達や家族との関
係 が う ま く い っ て い な い と 答 え て い る の は 3 4 % で 、こ れ も 決 し て こ の 年 代
の若者としては高い方ではないと推察される。
1 0 、 11 は 相 談 希 求 性 に つ い て 聞 い て い る が 、
「困っているとき誰かに助け
て ほ し い と 思 う 」 が 7 3 % と 、 助 け て ほ し い と 感 じ て い る の に 、「 よ ほ ど の
こ と が な い と 人 に 相 談 し な い 」 が 同 率 で 73%い る 。 助 け て ほ し い が 「 相 談
する」という行動はとらない、あるいはとれない人が多いということであ
る。
ス ト レ ス 解 消 法 に つ い て は 72%が 前 向 き の 答 え だ が 、 28%が 解 消 法 を 持
っていないことも気になる点である。将来の希望については「ある」が半
数 、「 ど ち ら か と い う と あ る 」 も 含 め る と 7 5 % で 、 こ れ も そ れ な り に 高 い
数値だと考えられる。
「 無 理 し て 頑 張 り 続 け て し ま う か ? 」に 対 し て 、6 5 %
が「頑張り続ける」と答えている。この数値が高いか低いかは判断が難し
い。
1 5 以 降 の 質 問 は 、精 神 症 状 を 含 む 精 神 状 態 を 問 う 質 問 と な っ て い る 。1 5 、
16 は 睡 眠 障 害 に つ い て 聞 い て い る 。 15 の 不 眠 や 早 朝 覚 醒 の 有 無 に つ い て
は 6 1 % が 1 ケ 月 の 間 に 「 あ っ た 」、 1 6 の 過 眠 の 有 無 に つ い て も 6 3 % が 「 あ
った」と答えている。それぞれ低い数値ではないが、この数値だけで何か
を 推 測 す る こ と は 難 し い 。1 7 は 理 由 も な く 楽 し い 気 分 が あ っ た か と い う 質
問 で 、 気 分 障 害 を 想 定 し た 質 問 で は あ る が 34%と 比 較 的 少 な く 、 も ち ろ ん
こ の 数 値 で 気 分 障 害 を 特 定 す る こ と は で き な い 。1 8 は 1 ヶ 月 間 の あ い だ に
学校へ行くことがつらいと感じたことがあるかどうかを聞いているが、つ
ら い 理 由 に は 触 れ て い な い の で 、何 ら か の 障 害 を 特 定 す る こ と は で き な い 。
し か も 、「 つ ら い 」 と 感 じ た こ と が あ っ た 生 徒 が 合 わ せ て 5 7 % で あ り 、 数
値としてチャレンジ校という特徴を考えるとそれほど高いものではない。
1 9 の 食 べ 吐 き の 有 無 に つ い て は 「 あ っ た 」 が 11 % で あ っ た が 、「 あ ま り な
46
か っ た 」 を 『 た ま に あ っ た 』 と 捉 え る と 、 21%の 生 徒 が 経 験 し て い る こ と
になり、摂食に関する障害のリスクを抱えている可能性が予想される。
2 0 の「 自 分 の 心 の 中 を 誰 か に 読 み 取 ら れ た こ と が あ る か 」と い う 質 問 に
つ い て は 、 精 神 病 様 体 験 ( PLEs) の 有 無 を 評 価 す る 項 目 で あ り 、 9%の 生
徒 が 精 神 病 様 体 験 を し て い る 。こ の P L E s を 用 い た 調 査 に よ る と 、11 歳 時
点 に P L E s を 体 験 し た 子 ど も を 追 跡 調 査 し た と こ ろ 、2 5 % が 2 6 歳 ま で に 統
合失調症様障害を発症しているという結果が出ている。このことから、本
対 象 者 が 全 て 1 5 歳 以 上 と い う こ と を 考 慮 す る と 、こ の 項 目 に 該 当 し た 9 %
の生徒は、統合失調症様障害を発症するリスクをより高く持っている、あ
るいは発症していることが考えられる。また「あまりなかった」も『たま
に は あ っ た 』 と 捉 え る と 、 そ れ に 該 当 し た 11 % の 生 徒 も リ ス ク が 高 い 。 下
寺らの高知県内の高校生を対象とした調査研究において、この質問の「1
回のみあった」
「 2 回 以 上 あ っ た 」に 回 答 し た 生 徒 は 全 体 の 1 . 9 % で あ っ た 。
それに比べると、
「度々あった」
「 時 々 あ っ た 」に 回 答 し た 生 徒 が 当 校 に 9 %
もいたというのは、かなり高い数値であるといえる。チャレンジ校である
がゆえに、リスクを抱えている生徒が集中しやすいことが考えられる。
2 1 の「 テ レ ビ や ラ ジ オ で 自 分 の こ と を 言 わ れ て い る と 感 じ た こ と が あ る
か ? 」 と い う 質 問 で は 、「 あ っ た 」 が 2 3 % 、「 あ ま り な か っ た 」 を 『 た ま に
あ っ た 』 と し て 含 め る と 、 34%が こ れ を 経 験 し て い る こ と に な る 。 こ の 質
問は、精神病様体験の有無を評価する質問の表現をやや崩した形にしてあ
るため、これに「あった」と答えたから「精神病様体験あり」と判断でき
るわけではないが、逆に言えば統合失調症患者がテレビを観なくなる理由
として良く挙げられるものであり、通常では起こり得ない異常な体験を示
す 項 目 と し て 作 成 し て あ る 。そ の た め 、こ の 質 問 に 該 当 し た 3 4 % の 中 に は 、
精神病を発症している、あるいは発症するリスクの高い生徒がいることが
予想される。
2 2 の「 自 分 を 責 め た り 命 令 し て く る 声 が 聞 こ え た こ と が あ る か 」は 、元 々
の形であった「正体不明の声」という表現を「正体不明」を抜いて使用し
ているため、読み方によっては実際に言われた体験をもとに「あった」に
○をつけている生徒もいるかもしれない。とはいえ、基本的には被害的な
幻 聴 体 験 の 有 無 を 聞 い て い る 。 2 1 同 様 、「 度 々 ・ 時 々 あ っ た 」 生 徒 は 2 3 %
お り 、「 あ ま り な か っ た 」 つ ま り 『 ま れ に あ る 』 生 徒 も 2 1 % い た 。 こ れ も
かなりの高率で精神病を発症している、あるいは発症するリスクの高い生
徒がいることを示す数値である。
23 の 「 周 り の 人 が 悪 口 を 言 っ た り 嫌 が ら せ を す る と 感 じ た こ と が あ る
か」も同様で、被害妄想を強く疑えるもののそれが事実ではないと確認で
47
き な い た め 、こ の「 あ る 」の 2 3 % に 精 神 症 状 が あ る と ま で は 判 断 で き な い 。
2 4 の「 自 傷 行 為 の 有 無 」は「 あ ま り な か っ た 」ま で ふ く め る と 3 4 % の 生
徒 に 自 傷 行 為 の 経 験 が あ っ た こ と が わ か る 。こ の 数 値 は か な り 深 刻 で あ る 。
2 5 の「 人 の 視 線 が 気 に な る か ? 」は 、視 線 恐 怖 や 被 害 妄 想 を 前 提 と し た
質 問 で あ り 、 50%が 「 あ っ た 」 と し て い る 。 思 春 期 に は 他 者 か ら の 評 価 に
敏感になるという発達的特徴がある上、質問の仕方が「感じたりすること
はありますか?」という聞き方であって断定的に「見られていますか?」
と は 聞 い て い な い の で 、 そ の 50%に 病 的 体 験 が あ る と は 言 い 切 れ な い 。 し
かし精神科の診察において、この質問がしばしば精神疾患の有無を見極め
る入口となる質問となることから鑑みると、この数値は軽視できない。
26 の 「 特 別 な 能 力 ( 超 能 力 な ど ) が 自 分 に あ る と 思 う か ? 」 で は 、 誇 大
妄 想 や 魔 術 的 思 考 の 存 在 を 聞 い て い る が 、 17%が 「 あ る 」 と 答 え て い る 。
この質問文は特別な能力を超能力に限定しておらず、人によってはもっと
別の個 人的能 力を想 定して しまう 可能性 がある ため、この 1 項目の 数値の
み で は 病 的 な 体 験 を 示 す と 断 定 は で き な い が 、こ の 1 7 % の 中 に 精 神 病 を 発
症 し て い る 、あ る い は 発 症 す る リ ス ク の 高 い 生 徒 が い る こ と は 考 え ら れ る 。
2 7 の「 ス ト レ ス や 気 持 ち の 問 題 で 困 っ て い る か ? 」に つ い て は 5 3 % が「 困
っている」と答えている。
こうした気持ちの問題を誰に相談するかについては、友人が最も多く
34%で あ っ た 。 次 が 親 の 25%で 、 3 番 目 は 「 誰 に も 相 談 し な い 」 が 続 く 。
カウンセラー、教師、医師はそれぞれ一割にも満たない。下寺らの調査研
究の結果でも、落ち込んだり精神的につらいときの相談相手で一番多かっ
た の が 友 人 で あ り 、次 い で 家 族 、そ の 次 が「 誰 に も 相 談 し な い 」で あ っ た 。
このことから、相談希求性に関する本調査結果は高校生における一般的傾
向 と み な せ る 。現 在 相 談 し て い る 相 手 に 至 っ て は 、
「問題がないので相談の
必 要 が な い 」が 最 も 多 く( 2 4 % )、次 い で 多 い の が「 誰 に も 相 談 し な い 」
( 2 1 % )、
次 が 友 人 で あ っ た( 1 8 % )。医 師 と 答 え た の は 8 名 で 、お そ ら く 現 在 受 診 中
なのであろう。カウンセラーや教師は数名ずつであった。専門家に相談し
た い か と の 質 問 で「 い い え 」が 5 9 %( 8 2 名 )と 圧 倒 的 に 多 い と い う 現 実 を 、
あ ら た め て 突 き 付 け ら れ た 感 が あ る 。「 は い 」 の 1 4 % ( 1 9 名 ) に は す で に
相談している生徒も含まれていると思われる。様々な問題がある可能性を
持ちつつ、しかし相談したくないと考えている生徒がこれだけ多いのが現
実である。
な お 、質 問 用 紙 の 最 後 に 相 談 を 希 望 し て 自 分 の 名 前 を 記 入 し た 人 は 3 名
であった。
最 後 の グ ラ フ は 、 精 神 疾 患 の 可 能 性 が 疑 わ れ る 体 験 を 想 定 し た 19、 20、
48
21、 22、 23、 24、 25、 26 の 8 項 目 の う ち 、 2 つ 以 上 の 項 目 を 体 験 し た こ
とがある生徒がどのくらいいるかを調べたものである。その結果、2 つ以
上 体 験 し て い た 生 徒 が 63 名 で 、 全 体 の 半 数 近 く を 占 め て い る こ と が わ か
っ た 。さ ら に ハ イ リ ス ク な 生 徒 を 絞 り 込 む た め 、人 の 視 線 が 気 に な っ た り 、
人 に 見 ら れ て い る と 感 じ た り し て い る 生 徒 の う ち( 項 目 2 5 の 5 0 % の 生 徒 )、
精 神 病 の 可 能 性 が 疑 わ れ る 体 験 を 想 定 す る 項 目 20、 21、 22、 26 の 1 つ で
も 体 験 し て い る と す る 生 徒 を 抽 出 す る と 、 40 名 ( 28%) も の 生 徒 が 該 当 し
ていた。これは、3 割近い生徒が精神病発症のリスクを抱えている可能性
を示していると考えられる。さらに、精神病の可能性が疑われる体験を想
定 す る 項 目 2 0 、2 1 、2 2 、2 6 の う ち 2 つ 以 上 体 験 し て い る 生 徒 は 2 7 名( 1 9 % )
も お り 、精 神 病 発 症 の リ ス ク が さ ら に 高 い 生 徒 が 2 割 も い る こ と を 示 し て
いる(ただし、これはあくまでも「リスク」であり、実際に発症している
と 断 定 す る も の で は な い )。
以上をまとめると、学校生活に関しては、登校している生徒については
結構楽しく過ごせている生徒が多く、家族や友人などとの関係もうまくこ
なせていると感じている生徒が多かった。一方で、この学校ではかなりの
高 率 で 精 神 疾 患 の リ ス ク を 有 す る 生 徒 が い る こ と が わ か っ た 。全 校 の 1 / 4
いる不登校の生徒を入れれば、おそらくこの確率はもっと上がると予想さ
れる。今回の結果から、精神疾患を発症している、あるいは発症するリス
ク が 高 い 生 徒 が 2 割 近 く い る こ と 、実 数 に す る と 1 2 0 名 近 く ハ イ リ ス ク な
生徒がいることが想定できた。そしてこの想定から言えることは、こうし
たリスクを抱えている生徒たちが、自分の個性や能力を十分に発揮し、高
校生活における様々な場面でチャレンジしていけるように、リスクを軽減
し、予防していけるようなサポート体制を作る必要があるということであ
る。今後は、サポート体制を充実させるために、さらに詳細な調査が必要
であると同時に、彼らに対して「今・ここで」どのようなことができるの
かを模索してゆくことが、今後の大きな課題であろう。
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第 4 節 世 田 谷 泉 高 校 にお け る 、メ ンタ ル ヘ ルスに 関 す る 授 業 の 実 施
実 施 日 時 : 平 成 26 年 3 月 7 日 ( 金 ) 14: 30~ 15: 45( 45 分 )
実施場所:東京都立世田谷泉高等学校 体育館
参 加 者 : 生 徒 約 400 名 、 教 職 員 約 40 名
講師:西田崇大(社会福祉法人巣立ち会)
1.内容
授 業 開 始 前 、 校 内 の 防 災 訓 練 が 行 わ れ 疲 労 感 漂 う 生 徒 達 を 前 に 、「 授 業
に関心を持ってくれるだろうか」と心配をしながら挨拶をすると、生徒達
から元気の良い挨拶が返ってきた。彼らが発表者の緊張を解きほぐしてく
れ、今度は、私が彼らの緊張を解きほぐす番である。堅苦しい話が行われ
る だ ろ う と 見 構 え る 生 徒 に 、ア イ ス ブ レ キ ン グ と し て 心 理 ゲ ー ム を 行 っ た 。
「人生で大切にしているものは何か?」とのテーマに、生徒達は自分、友
人の回答に一喜一憂している様が窺え、体育館に一体感が生まれた。
そ し て 本 編 に 突 入 し「 一 人 で 悩 ま な い で ! 私 達 が い る ~ H a p p y に な る た
めの心掛け~」というタイトルで授業を進めていった。この授業は、フィ
ク シ ョ ン (架 空 )で あ る 一 人 の 主 人 公 、 ジ ョ ン 君 の 体 験 す る 出 来 事 を み ん な
で振り返っていくものである。
野球部に所属するジョン君は、大事な試合でミスをしてチームが負けて
しまった。後日、登校中に部活の友人をみかけたジョン君は、声をかけよ
うとするも、相手は気づく素振りもなく去ってしまった。生徒には、自分
がジョン君の立場であったら、①どのようなことを考えるか,②どのよう
な 行 動 を と る か を 考 え て も ら っ た 。① ど の よ う な こ と を 考 え る か で は 、
「た
だ た だ 悲 し い 」「 自 分 に 気 付 か な か っ た の か な 」「 ま だ 落 ち 込 ん で い る の か
な 」「 試 合 の 事 怒 っ て い る の か な 」「 ( 自 分 と は 関 係 な い こ と で ) 何 か あ っ た
の か な 」「 何 と も 思 わ な い 」「 何 だ よ あ の 態 度 ! 」 な ど 様 々 で あ る 。 ② そ の
後にどのような行動をとるかについても多様といえる。
「どうしたのか尋ね
る」
「試合のミスの事をしっかり謝ろう」
「何気なく声をかける」
「しばらく
様子を見る」
「他の友人に相談する」
「他の友人と遊ぶ」
「何だよ!その態度」
と 逆 切 れ す る 。他 に も 、
「 気 に な る け ど 話 し か け ら れ な い 」な ど が 考 え ら れ
る。ここでは、同じ出来事でも、人によって感じ方,考え方,行動のとり
方も変わってくるということを整理し、主人公のジョン君に話を戻す。ジ
ョン君は、自分が試合でミスをして負けてしまった負い目から、自分から
友人に話しかける勇気が持てなくなってしまう。友人たちが、楽しく話し
ているのを遠巻きに見ながら、
「 何 話 し て い る ん だ ろ う 。自 分 が ミ ス し た こ
50
と言われていないかな。自分も混ざりたいけど気まずいな」と考えてしま
っ た 。ま た 、遠 く で 視 線 を 感 じ る と 、
「 こ っ ち 見 て 笑 っ て い る 気 が す る 。自
分 の ミ ス の こ と 知 っ て い る の か な 。」 な ど 気 に な っ て し ま う 。 ジ ョ ン 君 は 、
集団の輪の中に入ることが怖くなって自信を失い、孤独感を感じるように
なる。そのような不安を抱えると、家に帰っても悩んでしまい、不安,食
欲不振,不眠,無気力,頭痛や腹痛などの症状に襲われるようになり、ジ
ョン君は学校を欠席するようになった。3 ヶ月経過しても、ジョン君は学
校に行けない生活を送る。学校に行きたい気持ちもあるが、みんなが自分
をどう思っているのか?悪く思われているのではないかと考えると、頭の
中がモヤモヤして不安で学校には行けない。そして半年、生活リズムも乱
れ、身だしなみも整わなくなったジョン君の身に、不思議な出来事が訪れ
る。一人で部屋にいるはずなのに、どこからともなく自分の噂話が聞こえ
て く る 。「 あ い つ 、 大 事 な 場 面 で ミ ス し た ん だ ぜ ! 」「 ま じ か よ ! ど ん く さ
い な ぁ 。 そ う い え ば 、 あ い つ 、 こ ん な こ と も あ っ た ん だ ぜ ・ ・ ・ 。」。 部 屋
に一人しかないはずなのに、自分の悪口が聞こえてくる。生徒には、この
よ う な 不 思 議 体 験 が あ っ た 場 合 に 、ど の よ う に 考 え る か を 投 げ か け た 。
「気
の せ い か な 」と あ ま り 気 に と め な か っ た り 、
「 誰 か が 噂 を ? 」と 窓 の 外 を 覗
いて誰かが家の近くに来ているのではないか確かめることもあるだろう。
メ ル ヘ ン チ ッ ク な 人 な ら「 テ レ パ シ ー が 使 え る よ う に な っ た 」
「人の心が読
め る よ う に な っ た 」と 感 じ る か も し れ な い 。オ カ ル ト 好 き の 人 な ら 、
「心霊
現 象 で は ? 」「 神 様 、 悪 魔 、 妖 精 の 仕 業 ? 」 と 考 え る か も し れ な い 。 S F が
好 き な 人 な ら 、「 U F O に 連 れ 去 ら れ て 、 頭 の 中 に チ ッ プ を 埋 め 込 ま れ た の
で は ? 」「 や く ざ や F B I に 追 わ れ て い る 」「 人 体 実 験 さ れ て い る 」 と 感 じ た
り 、「 電 磁 波 が 流 れ て く る 」 な ど と 考 え る か も し れ な い 。 ジ ョ ン 君 の 場 合 、
「テレビで自分のプライベートなことが報道されている」と考えてしまい
パニックになってしまった。
物語はここで一区切りし、ジョン君の身に起きていることを整理してい
った。まず、不思議な声の正体について整理する。ここでは、原田誠一先
生のモデル、
「 不 安 , 不 眠 , 過 労 ,孤 独 が 極 度 に 高 ま る と 、 脳 が 錯 覚 や 空 耳
に似た現象、
“ 幻 覚 ”を 作 り 上 げ て し ま う 」メ カ ニ ズ ム を 説 明 し た 。し か し
幻 覚 と い う 現 象 は 、一 般 の 方 に は な じ み が な く 分 か り づ ら い 。原 田 先 生 は 、
雪山等に遭難した時などの場面を取り上げこの現象を説明している。ここ
では、生徒にとって馴染みのない幻覚体験を童話「マッチ売りの少女」を
モデルとして説明をした。次に、妄想という感覚について整理する。ここ
では、
「 実 際 に 起 き て い な い こ と ま で 真 実 だ と 思 い 込 ん で し ま う こ と 、パ ニ
ックになってしまうこと」として説明し、そのイメージモデルとして、不
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安 の 考 え が ど ん ど ん 生 え て き て し ま う き の こ 「 妄 想 ダ ケ (困 っ タ ケ )」 と し
て紹介した。そして、不安が作り出す頭の中のモヤモヤとして、イメージ
モ デ ル「 モ ヤ ミ ン 」を 説 明 す る 。モ ヤ ミ ン と は 、
「頭の中がモヤモヤしてい
る状態で不安を次々と生み出す。モヤミンの存在が、妄想ダケを成長させ
る役割を担うこと,モヤミンが大量発生して、ストレスの限界がくると、
「心の病になる」ことを整理していく。ここでは、心の病に関する具体的
な症状や診断名は一切取り扱わず、そのまま心の病を抱える人の特徴を説
明した。
「 優 し い ,頑 張 り 屋 ,遠 慮 が ち 」な 人 が 多 く 、ス ト レ ス を 溜 め 込 む ,
無理をし過ぎた結果として心の病になることを整理する。
次に、主人公のジョン君のように、悩みを抱えて身動きが取れなくなっ
てしまった時に、どのように解決したら良いかを整理していく。対策 1 と
して、
「 専 門 家 に 相 談 す る 」事 を 説 明 す る 。気 持 ち に 余 裕 が な い 時 は 、物 事
を悪い方にばかり考える,極端な考えに陥りやすい。そして、通常、不安
事などを周りに相談しても、
「気のせい」
「気にしすぎ」
「 マ イ ナ ス 思 考 」と
言われてしまうことも少なくない。相談相手としては、少しでも楽になっ
てもらうためだったとしても、当事者の立場からすると、気休めにもなら
ず、
「 せ っ か く 勇 気 を 出 し た の に 、分 か っ て も ら え な か っ た 」と 孤 独 感 や 辛
い 気 持 ち が 強 ま っ て し ま う 。中 に は 、相 談 す る 事 を 諦 め て し ま う 人 も い る 。
人は、自分に問題があると受け止めて改善しなければならない事には、負
担を伴う。しかし、本人のもっている特徴を、見方を変えるだけでうまく
活 か す こ と も 可 能 で あ る 。例 え ば 、先 ほ ど あ っ た マ イ ナ ス 思 考 も 、
「危険察
知能力が強い」という強みに変わる。まだ起きていない不安を感じ取るこ
とで、悪い未来を回避するチャンスがあり、対策を講じることができる。
不安を感じ取るのが得意な本人と不安を解決する専門家が協力して不安に
立ち向かえば、まさに「鬼に金棒」であることを確認していく。不安に圧
倒されていると、モヤミンや妄想ダケが自分の中で繁殖していくが、不安
の も と を 断 つ こ と で 不 安 な 考 え (妄 想 ダ ケ )を 伐 採 し 、
「取り越し苦労であっ
た 」と い う 体 験・結 論 に 結 び つ け て し ま う ( 取 り 越 し 苦 労 ダ ケ ) 。さ ら に は 、
相談する事で「どうしたら上手くいくか」という「良い見通しの力」を育
んでいく。その様にすることで、不安ばかりが生えてくるのではなく、良
い 見 通 し を 導 き 出 す 力 (幸 っ タ ケ )が 生 え て く る よ う に な る 。 そ の 様 に な る
と 、モ ヤ モ ヤ し た 気 持 ち は ス ッ キ リ し て 、モ ヤ ミ ン は 、
「 ス カ ッ ち 」に 変 貌
を遂げる。
実 際 に 、簡 単 な 場 面 か ら 良 い 対 処 方 法 を 学 ん で み る 。N P O 法 人 コ ン ボ に
おけるメンタルヘルスリテラシー研究会のプログラムを参考に、生徒に自
分ならどのような行動をとるかを考えていただいた。テーマは「大事に取
52
っておいたケーキを家族が食べてしまったらどうするか」というものであ
る 。選 択 肢 と し て は 、① 怒 る ,② 我 慢 す る ,③ 食 べ た こ と を 相 手 に 尋 ね る ,
④こっそり仕返しをする,⑤その他を挙げた。今回は時間の都合上、生徒
たちに挙手や発言することを割愛するも、自ら率先して発言する生徒が現
れ、
「 く よ く よ し て も し ょ う が な い か ら 、プ ラ ス に 考 え る 」と の 素 敵 な 言 動
が聞かれた。この場合において選択する行動は、相手が誰なのかによって
も多少異なる展開が生じ得る。家族という立場であるのに、我慢するとい
う選択肢を選ぶことは、自らのメンタルヘルスとして妥当とも言い難く、
また、怒りをストレートに相手にぶつけても、逆にこじれたり、互いに不
愉 快 な 想 い が 強 ま る だ け の こ と も 生 じ 得 る 。こ の 様 な 時 、例 え ば 、
「相手に
美味しかったかを尋ねる」ことを参考例として紹介する。相手の返事が、
「 美 味 し か っ た よ 」で あ れ ば 、喜 び を 共 有 す る 。そ の 後 に 、
「自分のお奨め
を喜んでくれたなら、あなたのお奨めも紹介して」と提案してみることも
良 い だ ろ う 。 ま た 、 仮 に 、「 美 味 し く な か っ た 」 と 回 答 さ れ て も 、「 自 分 の
お奨めであったのに残念。それでは、あなたがもっと良いと思う物を教え
て」とお願いする。この様に、自分のストレスも解消しつつ、相手との関
係をも考慮したコミュニケーション方法を選択することで、良い方向性へ
進めていくことが可能となることを確認した。つまり、自身の行動の選択
により物事は好転し切り開くことが可能であることの確認である。
次に、
「 人 々 に と っ て 健 康 」と は ど の よ う な こ と か を 整 理 し た 。こ こ で は 、
世 界 保 健 機 構 ( W H O ) の 健 康 の 定 義 、「 健 康 と は 、 安 全 に 、 身 体 、 精 神 、 及
び 社 会 的 に 良 い (安 寧 な )状 態 で あ る 事 を 意 味 し 、 単 に 病 気 で な い と か 、 虚
弱でないということではない」を取り上げた。一般的に病気というと、身
体疾患が想起されるが、実際には、精神、社会的位置づけや関係なども含
ま れ る こ と を 強 調 す る 。 そ し て 、 こ の 流 れ で “ 18.6% ” と い う 数 字 を 取 り
上 げ こ れ が 何 を 指 し 示 す 数 字 で あ る か を 考 え て い た だ い た 。と あ る 生 徒 は 、
「自殺した人の数?」と発言し、とても、感性の鋭さを感じさせられた。
1 8 . 6 % と は 、人 が 生 涯 の う ち で 心 の 病 に な る 人 の 割 合 で あ る こ と を 整 理 し 、
生きている人間は、皆、ストレスや悩みを抱えており、心の健康や病は密
接であることを強調した。その一方で、心の異変に気づいてから専門的医
療 機 関 に 受 診 す る ま で の 期 間 は 、平 均 1 7 . 6 か 月 で あ る こ と を 説 明 す る 。つ
まりは、身体疾患等と比して、辛い状況に晒されていても、すぐに専門機
関につながることが少ない,分かりづらい病であることを整理する。
次 に 、 対 策 2 と し て 、「 医 師 の 支 援 が 必 要 な 時 も あ る 」 と 説 明 を 行 う 。
長い間、強いストレスに晒されると、身体と同じように心も調子を崩す。
努力や根性で何とかなるものではなく、早めに医療にかかることで①重い
53
心の病にかかることを防げる,②本人や周囲も早く楽になれる,ことを確
認 す る 。主 な 例 と し て 、薬 の 効 果 に つ い て 取 り 上 げ 、薬 を 服 用 す る こ と で 、
不安を助長させるモヤミンの防止,妄想ダケの成長を抑える効果が期待さ
れ、本人の辛さが和らぐことを説明した。そのため、早めに相談してみる
ことの大切さを再確認する。
そして、これまで当たり前に表現してきた“こころ”について、改めて
捉え直すことを行う。昨今の時代、心の病は脳の病と称するものが多い。
それは、認知することにより感情が生み出されること,ストレス等により
脳の神経伝達物質の量などに影響が生じることなどが明らかとなっている
ためである。しかし、ここでは、脳が知覚,認知するその一連の流れは、
本人がこれまで培ってきた経験,価値,知識,人間関係の総体として導き
出されるという点を強調する。少年ジャンプの著者、久保帯人先生が作成
す る 漫 画 『 B L E A C H 』 を モ デ ル と し て 紹 介 す る 。 久 保 先 生 は 、「 心 と は 自
分 の 体 の 中 に は な い 」と 説 明 し て い る 。
「 心 と は 、人 と 人 と の 間 に 存 在 す る 」
という考え方である。私たち人間が嬉しい,悲しいなどの感情が派生して
くる時は、常に誰かとのことであったり、社会との関係性がある。つまり
は、人と人とのつながりの中で、心は浮き彫りになってくる。そして、心
は常に互いの真ん中にあるものでもない。相手を思う気持ちが強ければ、
相手よりに動き、関わりが自分のためのものであれば、自分よりに存在す
る。この様に考える事で、心は関係性で動きがあり、国語の表現で行われ
る「心が広い、狭い」という概念とも一致することを説明する。そして、
心の健康を保つためにも、自分、周囲の仲間、どちらも大切にすることが
重要であることを強調する。
最 後 に 、辛 い 想 い を 抱 え て い る か も し れ な い 若 者 へ の メ ッ セ ー ジ を 送 る 。
「私たちが出逢ってきた人々で、
『 生 き て い る の が 辛 い 』と 話 さ れ た 人 々 が
いる。それを乗り越え、今、生きている。幸せを感じている。世の中は楽
しいことばかりではないし、綺麗なことばかりでもない。それでも、一人
で抱え込まないで。絶望しないで。良き仲間を見つけ、明るい将来に向け
て 共 に 取 り 組 ん で い き ま し ょ う 。」と い う メ ッ セ ー ジ を 送 り 、悩 み の あ る 生
徒 は 、 是 非 、 ユ ー ス メ ン タ ル サ ポ ー ト Color が 来 校 し て い る 時 間 に 気 軽 に
相談にきてくださいとアナウンスを行う。
当発表者が思春期の若者向けに作成した心の健康を学習するプログラ
ムは、メンタルヘルスの理解を促進すると共に、より良いストレスの対処
法と良好なコミュニケーションの獲得を目指すために用いられるものであ
る。その中身は、1.導入編,2.心の病を学ぶ,3.社会生活技能のス
キルアップトレーニングの 3 部構成である。2の心の病については、心の
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病に関する主な症状や疾患を学ぶ機会を用意してあり、3の社会生活技能
のスキルアップトレーニングにおいては、①ストレスの対処法を学ぶ,②
考え方の傾向を知りより良い視点を身につける,③自分と友達の理解を深
める,④上手なコミュニケーション方法を学ぶことが主な内容となる。
今回の授業では、1.導入編を実施した。本プログラムは、偏見を持た
れ が ち な 心 の 病 (精 神 疾 患 )に 対 し て 、 身 近 に 感 じ 、 関 心 を 抱 い て い た だ く
ための工夫を凝らしていることをここで整理していきたい。プログラム全
過程を通して、聴講者との対話型や参加型を導入している。そして、一般
の方にもイメージしやすいことを心がけた事,症状を外在化の技法やユー
モア性を取り入れることで、キャラクター化し、症状に対する拒絶感を和
らげ自分の身に起きていることを受けとめることを促進している。また、
ストレングスの視点を用いることにより、問題として捉えられがちな特性
を「 変 え る 対 象 」と み な す の で は な く 、そ の ま ま 良 い 方 向 に 活 か す ( 強 み と
し て 活 か す ) 視 点 で あ る 。こ の 様 な 視 点 の 切 り 替 え は 、本 人 が 変 わ る こ と が
強要されないため、負担が少なく取り組むことができるため、強みが強化
さ れ 、 結 果 的 に 好 転 す る (変 化 す る )こ と を 促 進 す る 。
今回、聴講してくれた生徒にアンケートは実施していない。しかし、事
前打ち合わせにて、
「 戦 争 映 画 な ど 少 し 辛 い 内 容 で あ っ て も 、気 分 を 悪 く し
て 退 席 し て し ま う ケ ー ス も あ る 」「 4 5 分 間 集 中 し て 聞 い て い る の は 難 し い
かも」とのお話を頂いていたが、退席をされた学生は見かけなかった。ま
た 、率 先 し て 挙 手 を し 、発 言 を し て く れ た 生 徒 の 存 在 が 非 常 に 嬉 し く 思 う 。
2.教員の感想
平 成 2 6 年 3 月 7 日 ( 金 )、 ユ ー ス メ ン タ ル サ ポ ー ト C o l o r の 西 田 崇 大 さ
んが来校されて、若者のメンタルヘルスに関する講演会が行われた。
世 界 保 健 機 構( W H O )が 定 義 す る 健 康 ⇒「 健 康 と は 、完 全 に 、身 体 、精 神 、
及 び 社 会 的 に 良 い( 安 寧 )状 態 で あ る こ と を 意 味 し 、単 に 病 気 で な い と か 、
虚 弱 で な い と い う こ と で は な い 。」確 か に そ う で あ り 、わ か り 易 い 健 康 の 定
義なのだが、達成するのは容易ではなく、ましてや心と体の変化が著しい
高校生は、不安や悩みの中で生活している。
本 校 の 生 徒 は 、 保 健 体 育 の 授 業 に お い て 「 欲 求 と 適 応 機 制 」「 心 身 の 相
関とストレス」
「 ス ト レ ス へ の 対 処 」な ど メ ン タ ル ヘ ル ス に つ い て 学 ん で い
る。今回の講演会では、心理ゲームや具体例などを通して、生徒は教科書
よりも自分自身と関連づけて考えることができ、興味関心を持って聞いて
いた。
メンタルヘルスについての内容ということで、講演が始まる前はやや構
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えている生徒の様子が見られたが、最初の心理ゲーム「人生で何を大切に
生きているか?」という答えに対して、赤ずきん・白雪姫・シンデレラ・
かぐや姫の中から選び、その答えに興味津々といった様子だった。自我が
芽生え、自分自身が何者なのかについて非常に興味をもっている高校生に
は、とても合った心理ゲームの内容で大いに盛り上がった。
具体例については、同じ出来事でも、人によって感じ方も考え方も行動
の取り方も様々だということを踏まえた上で、ストレスを受けたジョン君
がどのような状況になっていくかを聞くことで、自分自身とジョン君を重
ね合わせた生徒もいたと思う。ジョン君はストレスを受けたことで、不思
議な声が聞こえるようになるという深刻な状況になっていく。このことに
ついて病気だと決めつけず、不思議な声として説明されたことで、同じよ
うな症状で悩んでいる生徒にとっては、自分だけ不思議な声が聞こえてい
るわけではないということを知り、気持ちが楽になったと同時に受け止め
方や対処の仕方を知ることができたと思う。
私 自 身 、な ぜ 幻 覚 を 見 る 人 が い る の だ ろ う と 疑 問 に 思 っ て い た が 、不 安 、
寝不足、疲れすぎ、寂しさなどの負担が強まると、脳が錯覚や空耳に似た
現象、幻覚を作り上げてしまうということを知ることができた。また、心
の病は生涯を通じて約 5 人に 1 人がなるということや異変に気づいてから
専 門 機 関 に 行 く ま で の 期 間 が 平 均 1 7 . 6 ヶ 月 と 遅 い こ と に 驚 き 、周 り の 人 た
ちの気づきやサポートすることの重要性を改めて感じた。生徒は今回の講
演会を通して、悩み事やストレスを抱えてモヤモヤしている時は心が悲鳴
を上げているサインであり、要注意であることや1人で悩まないで周りの
人 や 専 門 家 に 相 談 す る こ と 、状 態 に よ っ て は 医 師 の 支 援 が 必 要 な 時 も あ り 、
薬 を 飲 む こ と で 状 態 が 緩 和 す る こ と が あ る と い う こ と を 知 っ た と 思 う 。今 、
辛 い 想 い を し て い る 高 校 生 が 1 人 で 悩 み を 抱 え 込 ま な い で 、絶 望 し な い で 、
よき仲間を見つけて前向きに将来に向けて取り組めるように学校も専門家
の協力を得ながら今後も支援していきたい。
( 江 森 ひ ろ み・東 京 都 立 世 田 谷 泉 高 等 学 校 特 別 支 援 教 育 コ ー デ ィ ネ ー タ ー )
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第 5 節 世 田 谷 泉 高 校 の教 師 研 修 会 の実 施
実 施 日 時 : 平 成 25 年 12 月 9 日 ( 月 ) 16: 00~ 16: 45( 45 分 )
実施場所:東京都立世田谷泉高等学校 会議室
参 加 者 : 計 10 名
校長、副校長、特別支援教育コーディネーター、
養護教諭、各学年担任 1 名、生徒部 1 名、進路部 1 名
講師:田尾有樹子(社会福祉法人巣立ち会)
当初は、先生方が日常的な関わりの中で、生徒の心身の変調や自殺のサ
インをキャッチし未然に防止できるようにするために、メンタルヘルスの
状態の理解や精神疾患の早期発見のための知識を深めることを、研修の目
的としていた。
しかし特別支援教育コーディネーターとテーマを検討していくと、先生
方はより具体的なレベルでの対応に困っていることが多いということがわ
か っ た 。そ こ で 、
「 学 校 に お け る 早 期 支 援 の ポ イ ン ト 」を テ ー マ と し 、当 初
の目的に加え、先生方の対応スキルの向上を目的とし、先生方が生徒への
対応をする際に役立つような内容を入れ込むことになった。また、具体例
を増やし、質問ができる時間も多くとるように心掛けた。
研修内容としては、こころの不調を体験しやすい青年期の特徴から始ま
り、早期発見・早期支援の重要性を説明し、早期支援が必要な生徒を見分
けるポイントや、対応のポイントなどを説明した。さらに、一人で抱え込
まず、サポート資源を活用することの大切さについて説明し、そのうちの
一つとして当事業の活動内容を紹介し、事例を通して、どのような支援を
提供できるかということも知っていただいた。
最後に先生方から質問を受けたが、やはり具体的な対応方法について尋
ねるものが多く、先生方が一つ一つの対応に慎重であり、対応方法に困っ
ていることがあらためて実感できた。
以下に質問内容を記載する。
Q: チ ェ ッ ク 症 状 の 中 で 、 管 理 職 に 報 告 し た 方 が 良 い も の は ど れ か ?
A:死 に た い と い う よ う な 生 命 の 危 険 の あ る 事 柄 に つ い て は す ぐ に 報 告 が
必要だと思います。また、その次の段階では、事実が無いのに悪口を
言われている等、幻聴や妄想が明らかな場合は報告をしておいた方が
良いと思います。
Q: い じ め に つ い て 、本 人 に も 何 ら か の 要 因 が あ る 場 合 、例 え ば 被 害 妄 想
的な訴えがある場合は、どのように対応したらよいか?
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A:本 人 が 妄 想 的 に な っ て い る 場 合 は 、頭 か ら 否 定 は し な い 方 が 良 い で す 。
辛さも含めて、じっくりと話を聞くことができればより良いです。担
任 等 で 対 応 が 難 し け れ ば 、養 護 教 諭 や 特 別 支 援 教 育 コ ー デ ィ ネ ー タ ー 、
ス ク ー ル カ ウ ン セ ラ ー や Color 等 と 話 せ る 機 会 を 作 る よ う に 勧 め る と
良いでしょう。
Q: 保 護 者 か ら 電 話 で 相 談 が あ る 場 合 は ど う 対 応 し た ら よ い か ?
A: な る べ く 電 話 で の や り と り は 避 け 、 直 接 お 会 い し て 、面 談 で お 話 を う
かがうようにした方が良いと思います。
Q: 不 登 校 状 態 に な っ て い る 生 徒 に 電 話 を す る 頻 度 は 、ど の く ら い が 良 い
か?
A: 基 本 的 に は 本 人 と 話 し 合 っ て 決 め る の が 良 い で す 。
Q: 進 路 決 定 せ ず に 卒 業 や 退 学 を し て し ま う 場 合 、 C o l o r で は ど の よ う に
対応するのか?
A: 在 学 中 に C o l o r に つ な い で い た だ け れ ば 、 そ の 後 、ご 本 人 が ど の よ う
にしていきたいのかを話し合って、その目標に向かえるように支援し
ていきます。
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第 6 節 当 事 業 に 関 わ る スタ ッ フ 向 け の 研 修 会
当事業に必要なアセスメントや支援、その他の技法について学ぶ機会を
設け、スタッフのスキルアップを図ることを目的とした。
第 1 回
日 時 : 平 成 25 年 12 月 7 日 ( 土 ) 14: 00~ 17: 00
場所:シンフォニー
講師:針間博彦氏(松沢病院精神科医師)
参加者:当会スタッフ 8 名
テ ー マ :「 A R M S ( 精 神 病 発 症 ハ イ リ ス ク 状 態 ) の 薬 物 療 法 に つ い て 」
内 容 : Color で 関 わ る 若 者 は 、 診 断 名 と は 別 に 状 態 像 と し て ARMS に 当 た
る 人 が 多 い の で は な い か と 思 う 。そ う い う 群 に 対 し て は 、や は り「 い
かに発症させないか」という視点が重要になってくる。
ARMS に 対 し て も 、抗 不 安 薬 だ け で は な く 少 量( 最 低 量 )の 非 定 型
抗精神病薬を使うことがある。
そ の 中 で 比 較 的 副 作 用 が 軽 い の が ド ク マ チ ー ル で あ り 、使 用 頻 度 も
多 い 。 次 い で エ ビ リ フ ァ イ だ が 、「 そ わ そ わ 感 」 が 出 る こ と が あ り 注
意 が 必 要 。ジ プ レ キ サ を 使 う 場 合 も あ る が 、こ れ も だ る さ な ど が 出 る
場合がある。
一 方 で 、急 性 期 の 症 状 が み ら れ る 場 合 は 、ま ず は 鎮 静 作 用 を 期 待 し
てリスパダールが第一選択肢となることが多い。
対 処 ス キ ル と し て は 、統 合 失 調 症 の 方 向 け の 方 法 論 が あ て は ま る 人
も い る と 思 わ れ る 。A R M S の 方 々 は 自 分 な り の 対 処 行 動 を 既 に と っ て
い る 人 も 多 い の で 、 WR A P( 元 気 回 復 行 動 プ ラ ン ) 等 も 有 効 か も し れ
ない。
第 2 回
日 時 : 平 成 25 年 12 月 12 日 ( 木 ) 18: 00~ 21: 00
場所:シンフォニー
講師:瀬戸口和久氏
(小石川メンタルクリニック精神保健福祉士)
参加者:当会スタッフ 9 名
テ ー マ :「 A R M S の 事 例 検 討 会 」
内 容 : 2 0 代 前 半 で 現 在 引 き こ も り が ち に な っ て し ま っ て お り 、診 断 名 は ま
だ つ い て お ら ず ARMS で あ る と 思 わ れ る ケ ー ス 。 ど の よ う に 再 び 社
会に出ていくステップを設定するのかを検討した。
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講 師 か ら は 、医 療 中 断 と 社 会 生 活 の 縮 小 と に 関 連 が 見 ら れ る が 、医
療 に つ な げ る こ と を 焦 る の で は な く 、ま ず は 関 係 を 切 ら さ な い こ と に
留意したらどうかとの助言をいただいた。
第 3 回
日 時 : 平 成 26 年 1 月 17 日 ( 金 ) 18: 30~ 21: 30
場所:シンフォニー
講師:近藤伸介氏(東京大学病院精神科医師)
参 加 者 : 当 会 ス タ ッ フ 11 名
テ ー マ :「 D S M - 5 の 診 断 基 準 に つ い て 」
内 容 : 2 0 1 3 年 に ア メ リ カ 精 神 医 学 会 ( A PA ) が 公 表 し た 「 精 神 疾 患 の 診 断
と 分 類 の 手 引 き ( 第 5 版 )」( D S M - 5 ) に つ い て 、 以 前 の D S M - Ⅳ と 比
べ て 何 が ど う 変 わ ろ う と し て い る の か を 、東 京 大 学 医 学 部 付 属 病 院 の
近藤先生に解説していただいた。
全 体 的 に は 疾 患 横 断 的 な 、ス ペ ク ト ラ ム と い う 概 念 が 導 入 さ れ て い
る 。そ の 一 方 で 多 軸 診 断 は 廃 止 さ れ た 。た だ 、予 想 さ れ て い た よ う な
大 き な 改 編 は で は な か っ た こ と も あ り 、今 後 各 地 で さ ら な る 検 証 を 加
えつつ広まっていくのではないかと思われる。
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第 7 節 地 域 啓 発 講 演 会 の実 施
実 施 日 時 : 平 成 26 年 2 月 22 日 ( 土 ) 14 時 ~ 16 時
実施場所:世田谷区立烏山区民会館
ホール
参 加 者 : 81 名
講師:三角純子氏(東京都立松沢病院精神科医師)
テーマ「思春期・青年期のメンタルヘルス
~統合失調症と広汎性発達障害を中心に~」
教 育 関 係 者 や ご 家 族 の 方 、ま た 行 政 の 方 な ど 、幅 広 い 参 加 者 が 集 ま っ た 。
講演内容は、思春期に顕在化しやすい統合失調症と広汎性発達障害を丁寧
に説明するもので、実際の対応法なども、先生の豊富な臨床経験からわか
りやすく解説していただいた。全体の質疑応答が時間の都合であまり取れ
なかったが、先生には終了後にもかなり時間をかけて参加者の個別の相談
に答えていただいた。
参 加 者 ア ン ケ ー ト で は 4 4 名 か ら 回 答 を い た だ き 、( 回 答 率 5 4 % )、 と て
も 満 足 ; 1 6 名 ( 3 6 % )、 満 足 ; 2 2 名 ( 5 0 % )、 や や 不 満 足 ; 6 名 ( 1 4 % )、
不満足;0 名であった。
<アンケート回答より・良かった点>
・具 体 的 な 事 例 を 取 り 入 れ な が ら の ご 説 明 で 、大 変 理 解 し や す か っ た で す 。
・知識を広げられた。
・統合失調症について、症状から支援法まで、わかりやすく話していただ
き、整理して理解し直すことができた。
・先生の温かいお人柄が伝わってよかった。
・病気や障害があったとしても、長い人生であり、将来の希望がなくなる
ような話ばかりではなく、早期にしっかり治療と支援が入ることにより、
改善の余地があると改めて聞けたから。
・久しぶりにこのような講習会に参加したので、日々の大変さに埋もれて
忘れかけていた本人とのかかわり方をもう一度あらためなければと感じま
した。
・松沢病院の医師に最新の統合失調症の話が聞けて、大変よかった。統失
と 自 閉 症 ス ペ ク ト ラ ム は よ く 似 て お り 、も っ と お 聞 き し た い テ ー マ で し た 。
・後半のスペクトラムについてのお話は、非常に役立ちました。統合失調
症 と 自 閉 症 ス ペ ク ト ラ ム の 鑑 別 の 大 切 さ 、視 点 を 変 え て み る こ と の 大 切 さ 、
注意深く見ることなど、援助する時に大切なこと(特に巻き込まれないこ
61
と)
・家族としてどのように関っていくか、再確認できました。
・広 汎 性 発 達 障 害 は 生 ま れ つ き と わ か っ た 。遺 伝 す る の か も 知 り た い で す 。
・保 健 師 と し て 働 い て い ま す 。個 々 の ケ ー ス に 直 面 し て か ら バ タ バ タ と( 場
当たり的に)対応している毎日ですが、これと言った決定打はなく、悩み
つつ悩んだままそれぞれの当事者の暮らしにつきあう感じです。地域・医
療・本人のかかわりにより、環境を整えた中で過ごせることが、本人たち
に と っ て 必 要 な こ と だ と 思 っ て い ま す 。こ の よ う な 一 般 向 け か つ 専 門 的( レ
ベルの高い)講演をしていただけることがありがたいです。
<改善点>
・どのような人を対象にした講演だったのか不明です。教育、福祉分野の
方の参加が多いように感じましたが、その方々にとっては既知の内容でし
ょう。小学校で保護者も含めてやっていただけると差別の軽減にもなると
考えます。
・も う 少 し 詳 し く 、A R M S に つ い て 、現 代 の 思 春 期 が 抱 え る 問 題 に つ い て 、
先生の日頃のご活躍の中からお話を伺いたかったです。
62
第 3章 事 業 全 体 の効 果 ・今 後 の展 望
1.事業の設計について
今回の事業で実施したような、都立のチャレンジ校に対して公立病院と
地域の支援事業所が強力な連携を組んでいくつかの支援事業を行うという
計画を実践することは、一般的には非常に難しいことである。
その一番の理由は、スーパービジョンでも述べられていたように、学校
には自己完結型の組織であるという特徴があり、自分たちだけで解決しよ
うとする志向性が強いからである。とても責任感が強い一方で、学校のこ
とが外部に持ち出されることを嫌う傾向がある。
今回このような事業が成立し得たのは、校長の橋本先生がこの学校の持
つ問題点を率直に受け止め、自分たちだけで解決するのではなく解決に向
けた支援を積極的に受け入れていこうという志向性が非常に強い方だった
ことが大きく影響している。問題解決に向けての考え方が柔軟で弾力性に
富み、事実から目を背けず真摯に受け止めていくという非常に稀有な人物
であったことが、この事業を可能にさせたといえるであろう。
加えて、普段から連携はあったが公立病院である松沢病院が協力体制を
承諾してくれたことも大きな要因である。これが民間の精神科病院やクリ
ニックの場合、こちらでその医療機関を紹介することがそこの営利につな
がる可能性があるため、生徒や親に対して紹介がしにくい現実がある。そ
の点公立病院であることは、患者誘導・利益誘導と思われることがないた
めに非常に紹介がしやすい。
そ し て 、 我 々 ユ ー ス メ ン タ ル サ ポ ー ト Color が 、 市 区 は 異 な る も の の 比
較的近距離で精神疾患の早期発見・早期支援の事業を行っていたというこ
とが重なって、こうした事業計画が立てられたのである。またこの事業が
始まる前に、生徒が我々の事業所を利用していて、学校と我々とが協力体
制 を 取 り な が ら 生 徒 を 卒 業 に 導 い た ケ ー ス が あ っ た こ と( P 6 7「 お わ り に 」
参照)も、橋本先生が我々を知ることになり、この事業計画が立てられた
理由の一つである。
以上のような理由から、一般的にはなかなか連携を組むことが難しい3
つの組織が連携を組み、おそらく国内では初めての事業を行うことができ
た。この事実は非常に評価できることだと考える。
2.事業の内容について
(1)個別相談
個 別 相 談 は 、 結 果 と し て 当 初 予 想 し て い た 件 数 の 1/ 3 に 留 ま っ た 。
63
件数としては決して多くはなかったことは事実である。ただ、この助成
金での1年間ではこの件数であったが、我々としてはこの1年間での経験
を突破口にして、継続して支援を行っていく予定である。その意味では、
初年度における大切なことは「学校との関係づくり」である。外部から学
校へ入る者としての信頼を勝ち取ることが、この1年で最も重要なことで
あって、その目的は十分に果たしたといえる。紹介者数は尻上がりに増え
て き て い る し 、担 任 か ら の 直 接 の 依 頼 な ど も 年 度 の 後 半 か ら 出 て き て お り 、
これは来年度につながる大きな成果であると考える。
ここで我々としては、これまで相談機関として受けていたユースメンタ
ル サ ポ ー ト Color に 相 談 に 来 る ケ ー ス と 、 学 校 な ど で 相 談 支 援 の 必 要 が あ
る と 思 わ れ た ケ ー ス と で は 、相 談 に 対 す る 動 機 付 け が 大 き く 異 な る こ と を 、
強く思い知らされた。それは、まず1つに学校に行けない、あるいは行き
にくくなっている認識はあるものの、本人ばかりでなく家族までもそれが
重 大 な こ と と 感 じ て い な い こ と で あ る 。 こ れ ま で の Color に 相 談 に 来 る ケ
ースは、現状に問題意識を持っているため、面談に取り組む姿勢がとても
積極的である。一方、学校において紹介されるケースは、どことなく受身
的である。中学の時から不登校だった場合、高校で再び不登校状態になっ
ても、これまでの延長線上としてさほど大きな変化ではないため、あまり
気にならないのかもしれない。不登校状態が続き過ぎると、本人だけでな
く家族までもがその状態に慣れてしまい、問題意識が薄れてしまうのかも
しれない。相談に対する動機付けをしっかりしていくことが、面談の初期
段階における、いわゆるエンゲイジメントの課題であろう。
またもう 1 つには、生徒自身のみならず、家族も同様にメンタルヘルス
の 問 題 を 否 認 し て い る 場 合 が 多 い こ と で あ る 。 Color に 来 る ケ ー ス は 通 院
歴がある方が多いので、既に自身にメンタルヘルスの問題があることを認
識していることが多い。しかし今回学校から紹介を受けたケースは、半分
以上が未受診だった。若い分だけ家族の協力が必須となるが、このように
家族も本人にメンタルヘルスの問題があることを否認していると、非常に
支援がしにくいという現実があった。
その他にも、長期不登校状態にあったり、それによる転学や退学を希望
されている場合であったり、6年かけても単位を取得できる見込みがなく
退学を前提とする相談になるなど、もう少し早いタイミングでの対応が必
要であったと思われるケースも多々あった。これもまた、学校内で支援を
していく上での大きな課題である。
今 後 は 、 保 護 者 会 な ど で Color の こ と を 紹 介 し て も ら っ た り 、 担 任 等 の
教員への理解を深めてもらうことで、学校内で不具合が起こり始めた早期
64
のうちから相談に上げてもらうなど、こちらの対応を考えていきたい。
(2)アンケート調査
ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 に つ い て は 第 2 章 第 3 節 の 考 察 ( P45) で も 述 べ
た。アンケートの質問内容を読みやすく変えたことや対象群となるデータ
を正確には持たないため厳密には決めつけられないが、一般の高校生に比
べて精神疾患を発症している、あるいは発症のリスクの高い生徒が非常に
多いことが考えられる。今までも現象面として不登校の生徒が多いことは
わかっていたが、これだけ精神疾患の可能性が疑われる生徒が多いという
ことは、逆に言えば適切な治療や支援を行うことで経過が大きく変わる可
能 性 が あ る と い う こ と で あ る 。こ の 結 果 は 我 々 に と っ て も 驚 き で あ っ た が 、
この結果を真摯に受け止め、生徒の精神疾患の改善に向けた支援計画を、
学 校 と 協 力 し て 立 案 し て い き た い 。短 期 間 で す ぐ 実 現 す る と は 思 え な い が 、
じっくりと学校との協働関係を築き上げていく中で、このハイリスク群に
対する効果的な支援体制を組み上げていきたい。
(3)生徒への授業・教員研修
生徒への授業は、年度末の 3 月 7 日、学校の一斉登校日に行われた。そ
の た め 全 て の 学 年 の 生 徒 が い て 、約 4 0 0 名 と い う 非 常 に 多 く の 生 徒 に 対 し
て体育館で行う形となった。防災訓練の後、雪が降るような寒い日で、体
育館にじかに座るような状況で行われたにもかかわらず、途中退席者はい
なかった。それほど生徒にとって関心がある話題であったといえる。
W H O が 精 神 病 早 期 支 援 宣 言 ( 2 0 0 4 年 ) に お い て 、「 1 5 歳 の 全 て の 若 者
に対して精神病の正しい理解を促し、適切な支援へのアクセスに関する教
育をする」と謳っているにもかかわらず、現在の学校教育の中で、中学・
高校と精神疾患について適切な教育が行われていない現状は、精神疾患へ
の差別や偏見を助長し、疾患の早期発見や早期治療への対応を遅らせる元
凶となっており、誠に憂うべきものである。
来年度もこのまま学校との連携を継続するという前提で、何らかの形で
生徒への教育を行うことを、ぜひ継続して実施していきたい。
また同様に教員も、非常に忙しく過酷な労働環境の中で、生徒には自分
の授業を教えるだけで精一杯というような現状が見受けられた。来年度も
教員向けの研修会を開催できれば、教員に精神保健の知識を持ってもらう
ことと共に、我々を上手に利用することで生徒にとって良い結果をもたら
し、教員にとっても負担を軽減できるような連携の持ち方を、研修会を通
して伝えられるようにしていきたい。
65
3.まとめ
今回の事業計画は、我々の様な外部の事業所が、メンタルヘルスの問題
で困っている生徒と家族を支援するというような目的で、チャレンジスク
ールと呼ばれる都立高校にアプローチをすることができたという点で、非
常に画期的な試みであった。
チャレンジスクールは、主に小学校や中学校での不登校、高校での中途
退学など、これまでの学校生活では自分の個性や能力を十分に発揮できな
かった生徒が、夢や目標を持って再チャレンジできるよう、通学しやすく
学びやすい体制を整えている学校である。実際のアンケート調査の結果で
も、学校が楽しく、友達もできて、授業も理解できる、と全体的に学校に
ポジティブなイメージを持っている生徒が多かった。また、一回だけだが
体 育 館 で 行 っ た 授 業 で は 1 人 の 生 徒 の 中 座 も な か っ た 。真 面 目 で 素 直 な 生
徒が多い事を感じさせる。アンケートの内容からは精神疾患のハイリスク
な一群がいることが示唆されたが、むしろそこでは、時間をかけて丁寧に
教員と協力体制を取りながら、生徒の気持ちを受け止めて対処していくこ
とで、今後の不登校もより改善される可能性が見えてきたと考える。
初年度で取り組めたことには限界があったが、今後支援を継続していく
という前提で考えれば、導入としては非常に大きな成果が得られたものと
考える。
この事業の結果を以て、国に対しても若者のメンタルヘルスへの支援に
ついての必要性を提言していくつもりであり、その意味でも重要な結果を
残したといえる。これからの国の制度政策にこの結果を反映させていくこ
と で 、よ り 広 く 事 業 の 効 果 を 各 地 に 進 展 さ せ る こ と が で き る と 考 え て い る 。
66
おわりに
ユ ー ス メ ン タ ル サ ポ ー ト Color と の 連 携 に つ い て
東京都立世田谷泉高等学校長
橋本
昇
本校はチャレンジスクールといわれる都立高校である。チャレンジスク
ールとは、主に小学校や中学校での不登校、高校での中途退学など、これ
までの学校生活では自分の個性や能力を十分に発揮できなかったけれど、
これからの自分の目標・希望をもち、人と人との出会いを通して、高校生
活における様々な場面でチャレンジしていこうとする生徒を支援している
学 校 で あ る 。そ の た め 、三 部 制( 午 前・午 後・夜 間 )、単 位 制( 自 分 で 計 画 )・
総合学科(体験的な学習)等、生徒が通学しやすく、学びやすい体制を整
え、特色ある教育活動を行っている。最近は、単に不登校の経験があると
いう生徒ばかりではなく、発達障害のある生徒や何らかの精神的な疾患を
かかえる生徒の入学が増加し、スクールカウンセラーの配置、専門医派遣
事業や臨床心理士派遣事業等の活用、主治医との連携、子ども家庭支援セ
ンター等との連携、特別支援教育コーディネーターと養護教諭が中心とな
って、本校の教育相談活動を行い、成果をあげているところではあるが、
発達障害のある生徒や精神的ケアを必要とする生徒、精神疾患をかかえる
生徒の増加は、学校だけでは対応しきれないというのが現状である。その
中、一昨年、統合失調症の生徒が、巣立ちの会の支援を受けて、無事卒業
することができた。本人は卒業式に出席する、しないで養護教諭ともめて
はいたが、式当日の朝、突然登校し、養護教諭から校長先生スーツありま
せんかと聞かれ、生徒は私から借りたスーツで卒業式に出席したという事
例 が あ る が 、 こ の 生 徒 へ の 支 援 を き っ か け に し て 、 本 校 と Color と の つ な
がりができた。
前 述 し た よ う に 、私 は 、学 校 は 学 校 の や る べ き こ と を や っ て い く が 、我 々
の力だけでは、どうにも支援できない生徒には、学校外のプロの力を借り
る こ と も 必 要 で あ る と の 考 え か ら 、 今 年 度 か ら 、 Color の お 力 を お 借 り す
ることとなり、カウンセリングの実施、生徒や教員への講演会、病院の紹
介等成果を上げつつある。不登校生徒への対応、精神疾患のある生徒等へ
の 対 応 等 課 題 は 山 済 み で あ る が 、 本 校 と Color の 連 携 強 化 と 連 携 活 動 の さ
らなる推進により、生徒への指導・支援を充実させていきたい。
67
巻末資料
( 1)世 田 谷 泉 高 校 の 生 徒 へのア ンケー ト 調 査 用 紙
( 2) 世 田 谷 泉 高 校 に おけ る、メ ンタ ルヘ ルスに関 する 授 業 の 資 料
( 3) 世 田 谷 泉 高 校 の教 師 研 修 会 資 料
( 4) 地 域 啓 発 講 演 会 資 料
68
1.世田谷泉高校の生徒へのアンケート
調査用紙
高 校 生 のメンタルヘルス調 査
このア ンケ ートは、 高 校 生 の 皆 さ ん のメ ン タ ルヘ ルス に つ いてお たず ね する
ため のもので す。
10 代 は こ ころの 不 調 を 最 も 体 験 しや す い時 期 で、 今 後 、 皆 さ ん自 身 や 友
達 ・ ご 家 族 など がこ ころの 不 調 を 体 験 す る 可 能 性 もありま す 。
私 た ちは、こ ころの 不 調 に 気 づ いた 時 に でき る だ け早 く 相 談 ができ る しく
み をつ く る ため 、様 々な調 査 研 究 を 進 め ていま す。このア ン ケートで皆 さ んが
ど んなことで 困 って いる のか など を 把 握 する ことで、 皆 さ ん がこころ の 不 調
で 悩 んでいる 時 に 役 立 つ 支 援 のあり 方 を 考 え ていく こと がで き ま す。
皆 さ んの ご 協 力 を、 ど うか よ ろしく お 願 いしま す。
1.名 前 は 書 く 必 要 は ありま せん。
2 .このア ンケ ー ト 用 紙 は 、 学 校 の 先 生 や 家 族 、 友 人 等 あな た を知 っている 人
が見 る こ とは 絶 対 に ありま せん。 安 心 して 、でき る だ け正 確 に 質 問 に 答 え
て 下 さ い。
3 .回 答 中 に 体 調 が 悪 く なっ た 場 合 など は、手 をあげ て 知 ら せて下 さ い。
4.記 入 が 終 わ りま し たら、く ば られ た 封 筒 に 入 れ て、 封 を 閉 じて下 さ い。
学
年
年生
年
歳
齢
69
性
別
男 ・ 女
以下の質問を読み、あなたにどのくらいあてはまるかを、右の4つの
選択肢の中から1つだけ選んで○をつけて下さい。
はい
どちらかと どちらかと
いえば
いえば
はい
いいえ
いいえ
1 高校生活は楽しいですか?
1
2
3
4
2 学校では安心して過ごせていますか?
1
2
3
4
3 学校の授業はよくわかりますか?
1
2
3
4
4 高校に入学してから、友達はできましたか?
1
2
3
4
5 友達と楽しく過ごしていますか?
1
2
3
4
6 一人でいる方が好きですか?
1
2
3
4
7 人とすぐ友達になる方法があったら知りたいと思いますか?
1
2
3
4
8 家族は自分のことをよく理解してくれますか?
1
2
3
4
9 友達や家族との関係がうまくいかず困っていますか?
1
2
3
4
10 あなたが困っているとき、誰かに助けて欲しいと思いますか?
1
2
3
4
11 よほどのことがない限り、人に相談しないほうですか?
1
2
3
4
12 自分なりのストレス解消法はありますか?
1
2
3
4
13 将来の夢や希望を持っていますか?
1
2
3
4
14 辛くても無理して頑張り続けてしまうほうですか?
1
2
3
4
たびたび
あった
時々
あった
あまり
なかった
全く
なかった
1
2
3
4
16 この1ヶ月間、眠り過ぎることはありましたか?
1
2
3
4
17 この1ヶ月間に、理由もなく楽しい気分が続くことがありましたか?
1
2
3
4
18 この1ヶ月間に、学校に行くのが辛いと思うことはありましたか?
1
2
3
4
19
これまでに、太るのが嫌で食べたものを吐き出したり、もどしたり
したことがありましたか?
1
2
3
4
20
これまでに、超能力などによって、自分の心の中を誰かに読み取られた
ことがありましたか?
1
2
3
4
以下の質問を読み、あなたにどのくらいあてはまるかを、右の4つの
選択肢の中から1つだけ選んで○をつけて下さい。
15
この1ヶ月間に、夜眠れなくなったり、夜中や朝早くに目がさめてしまう
ことがありましたか?
70
以下の質問を読み、あなたにどのくらいあてはまるかを、右の4つの
選択肢の中から1つだけ選んで○をつけて下さい。
たびたび
あった
時々
あった
あまり
なかった
全く
なかった
21
これまでに、テレビやラジオで自分のことを言われていると感じた
ことがありましたか?
1
2
3
4
22
これまでに、自分を責めたり命令してくる声が聞こえてきたことが
ありましたか?
1
2
3
4
23
この1ヶ月間に、周りの人が自分の悪口を言ったり、嫌がらせをすると
感じたことがありましたか?
1
2
3
4
24
これまでに、刃物などで自分の身体をわざと傷つけたことが
ありましたか?
1
2
3
4
人ごみの中にいる時やバスや電車などに乗っている時などに、
25 人の視線が気になったり、人に見られていると感じたりすることは
ありますか?
1
2
3
4
26
他の人々が持っていない特別な能力(超能力など)が、自分にはあると
思いますか?
27 現在、ストレスや気持ちの問題で困っていますか?
はい
どちらかと どちらかと
いえば
いえば
はい
いいえ
いいえ
はい
どちらかと どちらかと
いえば
いえば
はい
いいえ
いいえ
気持ちが落ち込んだり、つらくなったりした時に、最初に誰に相談しますか?下の1~8の中からあてはまるもの全ての
数字に○をつけてください。その他に○をつけた人は、それが誰かをお書きください。
28
1.誰にも相談しない 2.友人 3.親 4.兄弟姉妹 5.教師 6.医者 7.カウンセラー
8.その他( )
現在、ストレスや気持ちの問題で誰かに相談していますか?下の1~8の中からあてはまるもの全ての数字に
○をつけてください。その他に○をつけた人は、それが誰かをお書きください。
29
1.問題がないので相談する必要がない 2.誰にも相談していない 3.友人
4.親 5.兄弟姉妹 6.教師 7.医者 8.カウンセラー 9.その他( )
30
あなたは今、体調やストレス、気持ちの問題で困っていることを
専門の医師やカウンセラーなどに相談したいですか。
相談をご希望の方は、こちらに名前を書いていただければ、
教育相談担当者を通してご連絡させていただきます。
はい
名前:
71
いいえ
相談することがない
(2)世田谷泉高校におけるメンタルヘルスに関する授業の資料
一つの物語を紹介します
今日は高校野球の地区予選大会。
高校3年で最後の大会である主人
公のジョン君も気合いが入ってい
ます。
ユースメンタルサポート Color
精神保健福祉士 西田 崇大
2
1
1
得点は2対1でジョン君のチームは勝っています。
しかし、最終回ツーアウト満塁で一打逆転のピンチです。
バッターが打ったボール
がジョン君の下へ飛んでき
ました。平凡なフライであ
り、みんながほっとして優
勝を意識した瞬間・・・。
そこへ・・・カキーン!!
あっ!ジョン君はボール
を落としてしまいました。
その間にランナーが2人帰
り2対3逆転されてしまい
ました。
3
4
2
3
あと一歩というところで、逆転負けをしてしまい、みんな
の最後の大会が終わってしまいました。
後日、登校中のジョン君は、部活の友人を見かけたため、
挨拶しようとしました。しかし、友人は気が付く様子もなく
い行ってしまいました。
5
6
4
5
72
どのようなことを考える?
どのようなことを感じ、考える?(例)
さあ、あなたがジョン君の立場なら、このような状況で、
どのようなことを感じたり、考えますか?
ショック
悲しい
自分に気がつか
なかったのかな
まだ落ち込ん
でるのかな
何だよあの態度
失礼だな!!
試合のこと怒っ
ているのかな
何かあったのかな
気になるなぁ
6
何とも思わない
7
8
7
どのような行動をとる?(例)
どのような行動をとる?
同じ出来事でも、“感じ方”,“考え方”,
“行動”もその人や状況によって様々
また、あなたはこの後、どのような行動をとりますか?
他の友人に相談
他の友人と楽しむ
試合のミスのこと
しっかり謝ろう
どうしたのか尋ねる
「何だよその態
度!」と怒る
何気なく声をかける
普段通り挨拶する
しばらく様子
を見よう
8
気になるけど話しか
けられない
10
9
9
ジョン君は、自信をなくし、集団にうまく馴染めない孤独感を
感じるようになりました。
何、話しているんだろう・・・
ジョン君の場合、自分の
ミスで試合に負けてしまっ
た負い目を感じていたため、
自分から友人に声をかける
勇気が持てませんでした。
そして、周りの人が自分の
ことをどう思っているのか
気になっていました。
何、話しているんだろう・・・
自尊心
孤独感
こっち見て笑ってる?
こっち見て笑ってる?
10
11
11
73
12
対人関係に悩むと、不安がつきまとってきます。そして、寝不足が
ちになったり、食欲がなくなったり、何かするのが億劫になってきま
す。ジョン君は人に会うこと,学校に行くのがしんどくなっていきま
した。そして朝になると、頭痛やお腹の痛みなど体の不調が出てきて
学校を休みがちになりました。
不安
3ヶ月後
“モヤミン”発生
食欲不振
“モヤミン”とは、
悩み事やストレス
を抱えてモヤモヤ
している人の頭の
中に発生します。
欠席
不眠
無気力
ジョン君は部屋にこもった生活をしています。身だしなみや生活リ
ズムも崩れ、自堕落な生活をしていました。そして四六時中、「みん
な僕のことを役立たずだと思っている」「自分はみんなに嫌われてい
る」など、悲観的な考えばかりが頭の中を駆け巡っていきました。14
身体症状
12
13
13
どこからともなく声が聞こえてくる・・・
どこからともなく声が聞こえてくる・・・
d
周りに人がいないのに、声が聞こえてくるなんて不思議で
すね。さて、あなたはこのような不思議な体験をどのよう
に考えますか?
そんなある日、1人で部屋にいるはずの
ジョン君に、話声が聞こえてきました。
「あいつ大事な場面でミスしたんだ。」
「まじかよ!どんくさいなぁ。」「この
役立たず!」「そういえば、あいつ、他
にもこんなことがあったんだぜ・・・」。
どこからともなく自分の悪口が聞こえて
くるのです。
あいつ、試合で
ミスしたんだぜ
半年後
この不思議な体験をどのように考えますか?
あいつ、試合で
ミスしたんだぜ
役立たず!バカ!
おまえなんか・・・
14
役立たず!バカ!
おまえなんか・・・
15
15
不思議な声の受け止め方
16
不思議な声の受け止め方(例)
気のせいかな
テレパシー
この不思議体験を自分なりに必死
に考えます。「気のせいかな」「疲
れているな。少し休もう」などと、
あまり気にしないこともあるでしょ
う。しかし、気持ちにゆとりがない
時には、もっといろいろと考えてし
まうことも多いようです。
16
誰かが噂
を・・・
人の心が読める
心霊現象
宇宙人(UFO)
神様?悪魔?
妖精?
やくざ,FBI
17
電磁波
モルモット
17
74
18
ジョン君の場合、自分の悪口がいろいろ噂になってしまっていて、
更には、「テレビやラジオでも、自分のプライベートが報道されて
いる」と思いました。
ジョン君の身に何が起きているのか?
ジョン君は、非常に大変な状況に陥っています。では、ジョ
ン君は、どうしてこのような事態に陥ってしまったのでしょう
か?また、今後、どうしたら良いのでしょうか?この物語には、
いくつかの不思議な点があったと思います。それらをひとつず
つ整理して学んでいきたいと思います。
19
18
19
不思議な声の正体とは?
20
人間は、不安や不眠,過労,孤独などの負担が強くかかると、
脳が、実際には実在しない声,映像,感覚などをつくりあげる
ことがあります。わかりやすくいうと、錯覚や空耳に似た現象
です。
先ほど挙がった内容は、周りに人がいないのに聞こえてく
る声,音に対する自分なりの考え,推測にすぎません。では、
実際には、どうしてそのような声が聞こえてきて、何が原因
なのかを整理していきたいと思います。
不安,不眠,過労,孤独
などの負担が強まると
脳が錯覚や空耳
に似た現象、
“幻覚”を作り
上げてしまう
21
20
22
21
山に遭難,災害などで・・・
普段の生活では馴染みがないので、難しいお話のようですが、
私たちは小さい頃、童話でそのような体験を学んでいます。
人間は誰でも辛い状況やストレスが非常に強くかかった状態では、誰で
も、空耳体験(幻覚体験)をすることがあるのです。
よく例えに使われるのが、雪山などの遭難です。遭難すると、寒さ,飢
え,疲れ,孤独感などを感じるとともに、「このまま死んでしまうのでは
ないだろうか」などの恐怖感に襲われます。実際に遭難して助かった人の
体験談で時折聞かれるのが、「実際には助けが到着していないのに、『お
ーい!助けに来たぞー!』という声が聞こえた」という話や、「『お前は
もう助からないぞ』という悪魔(死神)のささやきを聞いた」,逆に、「神
様から『助かるから、安心しなさい』という声が聞こえた」といったもの
であります。
マッチ売りの少女
お母さんが亡くなってしまい、冬の寒空にマッチを売りますが、
誰も相手にしてくれません。「寂しい」「寒い」「おなかが
減った」そんな中、マッチを1本こすると・・・
暖かい暖炉が出てきたり、おいしいお食事がでてきました。
脳が錯覚や空耳
に似た現象、
“幻覚”を作り
上げてしまう
23
23
22
75
24
どうして実際の声と区別がつかないの?
マッチ売りの少女の場合、自分の辛さを楽にしてくれる幻想(幻
覚)が登場したため、彼女自身が現実の辛さから逃れるために役
立ったといえます。そのため、空耳が聞こえること自体が“異常,
危険”ということではありません。プラスの内容が聞こえてくる空
耳体験とは、健康な人にも一定の割合においてみられる現象として
報告されています。
しかし、実際には、幻聴などの多くの幻覚体験はマイナス的な内
容のものが多いのが特徴です。一時的な辛さやストレスによるもの
で、すぐに消えてなくなれば、あまり気にせずに日常に戻ることが
できるでしょう。しかし、しばらくの間続く様であれば、特別な対
策をとる必要もあるでしょう。
脳が関係していて、知覚に直接働きかけ
るため、聞こえてくる本人にとってはリ
アルな体験に感じるのです。それで、実
際には起きてないことを“現実”と勘違
いしていってしまうことがあります。
もし、周りの言うことと食い違う,違和
感があったら、誤解かもしれません。自
分が作り上げた不安なのかもしれません
。自分では区別がつかないことがありま
す。周りに相談して確認してみることが
大切です。
日常生活は様々なストレスがある
日々の生活には、ストレスに感じるような出来事がたくさんあります。
・部活動,試験,仕事,結婚,育児など
・恋愛や対人関係の悩みなど
・体の疲れや病気など
・新しい環境や新たなことに臨む時など
※人は様々な場面でストレスを抱えるのです。
25
幻聴は“自分の不安や考え事”と関係し
ていると言われることも少なくない。
24
25
妄想という感覚
26
不安が作りだす頭の中のモヤモヤ
実際に起きていないことまで真実だと思
いこんでしまう。パニックになりやすい。
頭の中がモヤモヤし
ている状態。不安を
次々に生み出す。
モヤミンがたくさん
いると、妄想ダケが
生えやすくなる。
※モヤミンはイメージキャラクターです。
妄想ダケ
(困っタケ)
※妄想ダケ(困っタケ)はイメージキャラクターです。
26
不安が作りだす頭の中のモヤモヤ
みんな僕のこと
嫌っているに違いない
27
28
不安が作りだす頭の中のモヤモヤ
人間は、悪いことが起きたり、不安が強まると、どんどん悪い方
向に考え込んでしまうことがあります。ある程度の不安は人が生
活している以上、誰でも抱えているものです。そして大抵の不安
やストレスは、問題そのものを解決,うまく回避する,ストレス
を発散・解消することで、日々の生活を楽しく過ごすために気持
ちを切り替えて行動することができます。しかし、モヤモヤが常
に解消できずに、どんどんたまってしまうと、どんどん辛くなっ
てきます。
モヤミンが大量
発生してストレ
スの限界がくる
と、心の病に。
頭の中がモヤモヤ
している状態。不
安を次々に生み出
す。
みんな僕のこと
嫌っているに違いない
28
29
29
76
30
心の病を抱える人
優しい
頑張り屋
遠慮がち
解決編
な人が多い。
ストレスを溜め込む,無理
し過ぎた結果、“心の病”
になる。
3 1 32
30
対策1:専門家へ相談しよう
対策1:専門家へ相談しよう
生活上の辛い体験を解消する術を身につけてい
くことが大切です。
生活上の辛い体験を解消する術を身につけてい
くことが大切
例:心配ごとを相談
気持ちに余裕がない時は、悪い方に物事を考えてしまったり、
極端な考えに陥りやすい(事実よりも偏った考え)。
<周囲の反応>
考えすぎ,マイナス思考,神経質
“心配を察知することが得意なあなた”と
“心配を解決する専門家”が揃えば、鬼に金棒!
悩んでいることに対して協力して解決へ
32
33
33
専門家に相談する
34
こんな時、あなたならどうする?
不安の元を断つ
大事に取っていた大好きなケーキを冷蔵庫から
取り出そうとすると、家族がそれを食べてしまって
いました。
取り越し苦労ダケ
モヤミン
見方を少し変えると
自分の身を守るために、悪い予測を見つけ出すこ
とができれば、そうならないための準備ができる。
わかってくれない!
①考え方を柔軟にしたり、
いろいろな視点で考え
られるようにする。
②ストレスや問題へ対処
する力を身につける。
など
危険察知能力が高い!!
など
本人からすると深刻な悩み。
親身になり理解する姿勢が薄い段階で、
気休めを言われても、
妄想ダケ
(困っタケ)
例: 考えすぎ,マイナス思考,神経質
①怒る
②我慢する
③食べたことを相手に尋ねる
④こっそり仕返しをする
⑤その他
良い考え
幸っタケ
スカっち
※これらはイメージキャラクターです。
34
35
35
77
心の健康の重要性
人々にとって健康とは
18.6%
【世界保健機構(WHO)の健康の定義】
・心の病は生涯を通じて、約5人に1人がなる。
「健康とは、完全に、身体、精神、及び社会的に
良い(安寧な)状態であることを意味し、単に病
気でないとか、虚弱でないということではない。」
⇔異変に気づいてから専門機関に行くまでの期間
平均17.6ヶ月
*これは何の数字でしょう?
18.6%
身体の病気より
病院に行くのが遅い!
36
37
対策2:お医者さんの支援が必要な時も
妄想ダケの
成長を抑える
例:薬の効果
長い間、ストレスにさらされると、脳も身体と
同じように、調子を崩してしまいます。
努力や根性で何とかなる
早めに解決に取り組むことで、
①重い心の病が発症するのを予防できる。
②ご本人や周囲も早く楽になれる
38
モヤミンの
繁殖を抑える
辛さが
和らいだ!
40
39
39
今、辛い想いをしているかもしれない君へ
私たちがこれまで出逢った人々で
「生きているのが辛い」と話された人々。
それを乗り越え、
今、生きている。今、幸せを実感している。
完
確かに、
世の中は、楽しいことばかりじゃない。
社会もキレイなことばかりではない。
でも・・・
一人で抱え込まないで。絶望しないで。
良き仲間を見つけ、明るい将来に向
けて一緒に取り組んでいきましょう。
40
78
(3)世田谷泉高校の教師研修会資料
青年期の特徴
世田谷泉特別教育推進委員会
 青年期は、人の一生の中で、ここ
学校における
早期支援のポイント
ろの不調を最も体験しやすい時期
と言われています。こころの病気
は、この時期に高頻度に発生し、
若者の生活を脅かす最大の健康問
題となっています。
巣立ち会 ユースメンタルサポートColor
田尾有樹子
1
2
早期発見・早期支援
しかし、多くの若者が、
こころの不調を感じながらも、
適切な支援や治療につながら
ずに、問題を抱え続けている
ことが少なくありません。
 こころの病気も、身体疾患と同様に、早
期発見・早期治療が重要であると言わ
れています。
 早期に専門的支援や治療が受けられれ
ば、順調に回復する可能性が高まりま
す。
3
4
ユースメンタルサポート
Colorとは
Colorの目指すところ
 Colorは、こころの不調に悩む若者や
そのご家族を、早期から積極的に支援
することで、こころの不調から順調に回
復する可能性を高めることを目指して
います。
平成21年6月に開設された、
メンタルヘルスの不調や不具合を感
じている若い方たちを対象とした相
談機関です。
5
6
79
利用者の例1
利用者の例2
メンタル面の不調から学習困難に陥って
いて学習補助を希望されている方
 ひきこもりから回復段階に入り、人との交
流を求めている方
 対人関係における困難さを抱え、苦しん
でいる方(発達障害も含む)
 場面緘黙を克服して社会に出ることを目
標としている方
 通院を検討・希望されている方

不登校・ひきこもり状態にある方
 通学の同行支援を求めていた方
 精神疾患を抱えていて、社会復帰を目指
している方
 メンタル面で波があり、通学・通勤の維
持が困難な方
 家族関係の不和により調子を崩している
方
 就職を目指している方

7
8
チェック症状
早期支援が必要な人を
見分けるポイントとは?
見分けるポイントとは?
9
10
行動・様子
行動・様子
保健室に行く頻度が増える
体調不良の訴え(体の痛みや倦怠感)が
多くなる
 遅刻や早退、欠席が増える
 人との交流を避けるようになる
 口数が減る
 身なりに構わなくなる
 昼夜逆転している

成績が下がったり、作業にミスが増
える
 表情が乏しくなってくる
 食欲がなくなっている
 痩せていっている
 集中力が低下して落ち着かない
 授業中に座っていられない


11
12
発言
行動・様子
 「みんなが私(僕)の悪口を言う」
イライラしていることが多い
 普段よりもテンションが高い状態が
続いている
 普段よりも多弁になっている
 対人トラブルが増える
 人との距離が近すぎる
 リストカットや大量服薬、家出など
の不適切な行動が見られる

 「(誰かに)狙われている」
 「誰かに盗撮される」
 「盗聴されている」
 「嫌われている」
 「みんなが私のことを見てる」
 「あの人は私に気がある」
(初対面の異性や関係がない異性に対して)
13
14
80
対応のポイント
発言
 「人が怖い」
 「人目が気になる」
 「死にたい」「いなくなりたい」「消えた
い」などの発言が多い
外出の困難さを訴える
 「自分は臭いんじゃないか」「近くの
人が咳払いするからそう思う」

16
15
本人との関わりを避けない
家族(親)と連絡をとる
こころの不調を抱えている人を目の前にする
と、腫物に触るような接し方をしがちになりま
すが、急に態度を変化させると余計に不安に
させます。
 普段通りに接することが大切です。
 様子を気にかけて声をかけてくれる先生が
周囲に増えてゆくと、本人にとって学校が安
心できる場所になっていきます。
 頭ごなしに否定したり助言したりせず、本人
の状態を理解しようとすることが大切です。

 ご本人が若ければ若いほど、あらゆる
意味でキーパーソンは家族になります。
 家族の協力を得ることで、支援がス
ムーズになることが多くあります。
 家族への連絡は、タイミングが肝心で
す。
 家族と連携を行ってゆくためには、ご
本人の了承を得ることも大切です。
17
18
一人で抱え込まない
そうはいっても、
家族の協力を得るのが
家族の協力を得るのが
難しいケースもあるし、
難しいケースもあるし、
本人の状態を見極めるのが
本人の状態を見極めるのが
難しいケースも少なくありません。
難しいケースも少なくありません。
複数の教員で情報を共有することが大切
です。また、そういうことがしやすい仕組み
を作ることも有効です。
 専門家に対応を相談する事も必要です。
 保健室やSC、Colorなどに本人をつないだ
りして、本人が頼れる資源を増やしてあげ
ることも大切です。

だからこそ!!
※ Colorは、生徒やご家族からの相談だけ
でなく、先生方からの生徒に関するご相談
もお受けしております。
20
19
個別相談
Colorの活動内容
友達や家族についての悩み、人の視線
が気になる、ストレスがたまっている、居
場所がないなど、ご本人がお困りのこと
についてご相談にのります。
 就学・就労相談、医療機関との連携、医
療機関のご紹介なども含みます。

21
22
81
訪問相談
家族支援

苦しんでいるお子さんへの接し方やサ
ポートの仕方に困っているご家族のご相
談にのります。

ご本人が家から出られないけど相談した
い、という状態にある場合に、こちらから
家に訪問してご相談にのるという相談ス
タイルです。
23
24
グループ支援
同行支援
「ホッとできる」「人とつながる」場として同
年代の人たちと気軽に交流できるスペー
スを作っています。
 人に慣れるため、コミュニケーションの練
習をするため、生活リズムを改善するた
め、学校や職場に復帰するための準備と
して、など様々な利用方法があります。

「一人でやれる自信が無い」「不安が強
い」などの理由でお困りの方に提供して
いる支援です。
 同行先としては、医療機関や役所での手
続き、学校や職場などがあります。
 ご本人がやりたいことや行きたい場所、
挑戦したいことに同行することもあります。

25
26
プログラムの内容
みんなで楽しみ、人との交流の楽しさを
体験することを重視したもの
 コミュニケーションの練習になるもの
 作業や認知機能訓練
 身体を動かすもの
 自立した生活に必要な能力に関わるも
の

若年層における精神疾患の罹患率 (%)
1人
5人に
1人
4人に
Department of Health and Age and Care, 2000
27
学校内における精神保健問題の頻度
~WHO学校精神保健委員会~
レベル ①
レベル ②
レベル ③
20~30%
(6~9名/ 30名)
3~12%
(1~3名/ 30名)
(WHO 2000)
第16回厚生労働省「今後の精神保健医療福祉の在り方検討会」資料より引用
82
子どもが何らかの精神的不調を抱えていることに気づいた際、保護者として最初に相
談しようと思う相談先(小・中学生保護者 N=645)
子どもが何らかの精神的不調を抱えていることに気づいた際、保護者として相談しにく
い、相談先として抵抗のある相手、専門機関は?(小・中学生保護者 N=645)
3.4
誰にも相談しようと思わない
74.7
学校の担任
10.4
5.1
9.3
7.3
保健室の養護教諭
精神科クリニック
その他
学校のカウンセラー・相談員
26.5
近所の内科・小児科
5.9
2.6
4.0
8.7
1.6
6.7
6.5
0.5
各種インターネット相談
精神病院の外来
保健所・保健センター
各種電話相談
民間の心理相談室
教育相談所
児童相談所
地域の心理相談室
0
20
30
40
50
60
70
80
三重県調査中間報告(2009年1月末)
三重県調査中間報告(2009年1月末)
平成20年度厚生労働科学研究こころの健康科学研究事業
「思春期精神病理の疫学と早期介入方策に関する研究」(主任研究者:岡崎祐士)
分担研究者:西田淳志、研究協力者:谷井久志
平成20年度厚生労働科学研究こころの健康科学研究事業
「思春期精神病理の疫学と早期介入方策に関する研究」(主任研究者:岡崎祐士)
分担研究者:西田淳志、研究協力者:谷井久志
学校精神保健
精神的不調をかかえた若者・家族
地域
支援機関
10
(%)
精神科医
療機関
83
(4)地域啓発講演会資料
思春期・青年期のメンタルヘルス
成熟とは?
皆さんは、成熟していますか?
~統合失調症と広汎性発達障害を中心に~
東京都立松沢病院
精神科・リハビリテーション科
三角 純子
成熟とは

自我の確立(個性と社会性)
他人に対する温かい関係
情緒の安定
現実を適切に把握しようとする態度や技能
等身大の自己を客観的にみることができる
人生観の確立、人生の目標設定

生きるための自分のものさしを獲得する





思春期・青年期とは




こんな風になりやすい









身体的に急激な成長・変化を遂げる。
第二次性徴。
精神的にも成熟に向けた大きな変化を遂げる。
身体的な成長や変化についていけず、精神的に
敏感で不安定になる。
思春期・青年期
自分は何者なのか、どう生きるべきか深く考える
自立したい
挫折を経験し、周囲と自分を比較する
自分の見方や価値観がほしい
反抗と甘えを繰り返す
極端な態度で周囲の矛盾をつく
ちょっとしたことで機嫌がわるくなる
性急に結果を求める
家族よりも仲間に頼る、大切にする

自立:家族や親との葛藤、あつれき
将来に向けた選択、不安

第二次性徴:身体意識の高まり、性的存在とし
ての成熟、葛藤、攻撃性の増大
恋愛関係:初めての経験、自信の獲得と喪失


84
仲間・友人関係:家族より大切、過剰な親密さや
排除につながることもある。
思春期・青年期とそのリスク
思春期・青年期の課題

子供から大人へ

自己像、時間軸、対人関係、社会的関わりと
いった在り方の変化、確立を求められる








かわりゆく自己への没頭、世界観における自己中心
基準となる時間軸の変化
愛着対象からの独立、自律
養育者からの情緒的な撤収、両価性
同世代集団への依存、絆、受容と拒絶、評価的な駆け引き
自我機能の一時的な退行と脱統合化から再構築がおこなわれる。
内的な愛着対象の喪失と自我機能の弱体化の中で、心理的な危機
的な状況を通過する。
否定的な認知バイアスから、リスクテイキングな行動、抑うつ、希死念
慮、精神病様の体験が生じる素地がある。
思春期・青年期の精神的不調は
めずらしくない









ひきこもり
神経症(不安障害、強迫性障害など)
摂食障害
適応障害
知的障害
広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害)
躁うつ病、うつ病
統合失調症
被虐待例
早期支援・早期治療が
大切な場合が多い。
「家族に虐待されている」
「クラスメイトに悪口を言われている」





家族に虐待されていると、家出をした生徒。
実際に家族関係がうまくいっていない。体罰もあるよう
だ。家で食事もとっていない。やせてきている。
家族の虐待?
 よくきくとちょっと現実離れしているようなことが・・・。
 「(根拠なく突然)自分は実は両親の本当の子供でない
ことがわかった。」、「自分の食事に毒がまぜられてい
た。」など。
クラスメイトに悪口を言われていると不登校に
なった生徒。
実際に孤立、仲間はずれになっている。
いじめのようなことも実際にあるようだ。
他に様子がおかしいところが・・・。
ぶつぶつ独り言、ひとりでニヤニヤ、話しかけて
も上の空、耳栓をしている、音楽を聴き続けてい
る・・・。


統合失調症
統合失調症

統合失調症は脳の機能障害による精神疾患
原因不明で、一つの病気であるかも不明。

約100人に1人(コモンディジーズ=よくある病気)

統合失調症に対する研究の進歩、治療法の開発により、
治療は飛躍的に進歩している





85
主に思春期・青年期に発病する症候群
非特徴的な症状を呈する前駆期が数年
精神病症状(妄想、幻覚、解体した会話など)が
生じて顕在発症
その後、ときに陰性症状(思考・感情・意欲の障
害)が残る
統合失調症



もっとも有効な治療を受けた統合失調症の経過
診断
症状と経過に基づく。身体的な検査や心理検査では診
断できない。
経過
急性に始まり再発するものから、慢性に始まり進行性
のものまで様々。
転帰(最終的に治癒するか)
多くの人は寛解あるいは回復する。
再発を繰り返す人もいる。
症状が部分的に残る人もいる。
出典:家族のための精神分裂病入門 (クリストファーS.エイメンソン著)
統合失調症の経過と治療


統合失調症の症状(妄想)
発病して最初の数年間に
脳の機能障害が急速に進行する

反論や反証によって訂正されない思い込み

再発を繰り返すごとに治療や回復が困難に

被害妄想
笑われる、嫌がらせをされる、無視される、馬鹿にされる・・・
誇大妄想
自分は大発明をした、自分は神のような存在だ・・・
関係妄想
家の前の車は自分の監視をしている、ネットやテレビで自分の噂をさ
れている・・・
つつぬけ体験
自分の考えが世界につつぬけになっている、監視カメラや盗聴器が
仕掛けられて自分の言動がばれている・・・


早期からの治療が統合失調症の経過を
良くする!
など
統合失調症の症状(幻聴)
統合失調症の症状(妄想の特徴)





訂正不能
了解不能
状況依存的ではない
拡散する
体系化することがある










ぶつぶつ独り言を言っている
一人でにやにや笑っている
話しかけても上の空
耳栓をしている
イヤホンで音楽をきいている
大音量で音楽をきいている
統合失調症の症状
(話や行動がまとまらない)
統合失調症の症状(他の幻覚)

聞こえないはずの音や声が聞こえる
:教室の後ろから、すれ違いざま、隣や上や下の階から、
エアコンから、頭の中で、もう一人の自分が・・・
体感幻覚:体がびりびりする・・・
幻視:人影がみえる、幽霊がみえる・・・
幻臭:変な臭いがする、ガスの臭いがする・・・
幻味:変な味がする・・・
86

話がまとまらない
:極端にあいまい、具体的。話がすぐに逸れて戻らない。
飛躍する。言おうとしていることが理解できない・・・

行動がまとまらない
:目的不明の行動、唐突な衝動的な行動・・・

行動の予測がつかない
:突然暴れる、無言無動の状態、周囲が働きかけても応
じず食事飲水もしない・・・
統合失調症の症状
(陰性症状)



統合失調症(性格変化)
思考内容、談話内容が乏しくなる、貧困化する
感情表現が乏しくなる
意欲が乏しくなる

興味や関心がなくなる
生活に目的がなくなる
自分の世界に没頭する
人づきあいを持たず、閉じこもる
易怒的になる、キレやすくなる

以前とかわってしまった・・・




統合失調症の前駆期の症状
統合失調症の前駆期の症状

人に見られているような気がする
人に悪く思われているような気がする
元気が出ない
何もやる気がしない
外出や人に会うのが怖い
集中力や記憶力が落ち、本が読めなくなった
人柄がかわる(怒りっぽい、元気がない)
ひきこもり、閉じこもり、不登校、欠勤

特異的ではなく、必ず発症につながるわけではない。







ARMS(At –Risk Mental State)
精神病発症危険状態









情動や行動面の変化は、非特異的(思春期危機や他の
疾患によるひきこもりや攻撃性・・・)

思考や自我体験の異常は、l特異的に関連する症状で、
幻覚や妄想の発現に先立つ基底症状に位置付けられ
る
:自分の考えが何かに干渉される、同じ考えが保続する、
観念やイメージが次々に浮かぶ・急に途絶える。他人の
言動の意味がわからなくなる、逆に過剰な意味や関係
を見出す、現実感の喪失、自分が自分でない、二つの
人格がいる、知覚過敏・・・、
思春期・青年期の症状や状態
①微弱な精神病症状
②短期的・間歇的な精神病症状
③特性(素因)と最近の機能上のリスク因子

流動性:病状が定まっていない。


見逃しや過剰診断の問題。
慎重な経過観察

早期支援や早期治療でリスクの低減や回避
実際に精神病に発展するのは・・・
統合失調症の治療戦略
統合失調症
治療への反応に影響する要因



病気の重さ
薬物療法の効果
本人の姿勢、対処能力
←統合失調症ではストレスに過敏になる
家族の支え
治療スタッフの支え
地域の支え
⇒よりよい療養環境につながる



①薬で、症状を軽減・コントロール
脳機能低下の進行抑制
②症状を管理する技能の習得
③生活技能の回復、補助的技能の習得
固有の能力を最大限に引き出す
④支える環境を整える
(家族技能、支援制度、支援組織)
薬の治療なしに、他の治療法は効果を発揮しない!
薬の治療だけでは、生活能力回復の促進はない!
87
統合失調症の治療




もっとも有効な治療を受けた統合失調症の経過
①薬物療法
②精神療法
③心理社会的リハビリテーション
④家族技能訓練と環境調整
★同時に受けるのが最も効果的★
出典:家族のための精神分裂病入門 (クリストファーS.エイメンソン著)
①統合失調症の薬物療法
①統合失調症の薬物療法
抗精神病薬で、
早期に集中的で積極的な治療することが大切!





症状悪化期は多めの薬が必要(集中的・積極的に)
安定したら少ない量の薬で治療(副作用を少なく)
★薬の量の調整が状態にあわせて円滑にできること
が重要!!
症状を軽減し、コントロールする
脳の機能障害の進行を抑える
再発を減らす
個人によって効く薬や量が異なる
副作用の少ない薬が開発されている
服用回数の少ない薬が開発されている
持続性筋肉注射
特に症状の激しい悪化期には効果を発揮
再発予防のために長期にわたり必要
②統合失調症の精神療法
③統合失調症の
心理社会的リハビリテーション
治療者との面接を通じ、
病気や症状への理解を深め精神的な安定を目指す
脳の機能障害による作業・生活能力低下の回復
個人の目標に向け能力を最大限発揮できるように



発病当初は病気という認識を得られるように
長期的に症状を管理する技能を身に付ける
毎日の治療や生活に必要な具体的な知恵や問題
解決法を取り上げて、本人の対処能力を向上させる





③統合失調症の
心理社会的リハビリテーション






作業療法(作業を通じて能力を回復)
デイケア
⇒働く準備、練習
専門家との相談
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
疾病学習プログラム
④統合失調症の家族技能訓練
ストレス過敏になる
統合失調症の人にとって治療的な環境とは
温かい雰囲気、参加しやすい環境
個人のゴール(目標)に向けた技能
行為による習得、ロールプレイ
細かなステップ、繰り返しのトレーニング
具体的な指示とフィードバック
頻繁に褒める
⇒自己効力感に




希望、勇気、意欲、自己評価を向上させるように
個人の長所を発揮できるように、
自主的に選択できるように
毎日の生活がゆったりしてあまり変化がない
役割が明確である
刺激が少ない
現実のゴールに向けて一歩一歩努力できる
★家族の対応や環境は病気の経過に影響する
88
④統合失調症の家族技能訓練
④統合失調症の人を支える
治療に役立つあり方を家族が習得し、実践する









病気を持った人として受け入れる
症状は、病気が原因であることを認識し、対応する
現実的で達成できるゴール(目標)を立てる
適切で愛情のあるこころの距離を保つ
静かで温かな雰囲気を保つ
本人の努力を十分に褒める
具体的な指示とフィードバックを与える
症状が悪化するときのサインを知る、気づく


知人、親戚、地域の人も、病気を理解し、支える姿
勢を持てること
支援制度(経済支援、生活支援、就労支援)
支援組織(当事者の会、家族会)
病気のひとつ、お互いに支えあう
松沢病院の医療
もっとも有効な治療を受けた統合失調症の経過
統合失調症の通院治療







薬物療法
精神療法
デイケア・ショートケア(青年期グループ)
訪問看護
家族講座、青年期ファミリーサポートプログラム
ソーシャルワーカーによる相談・情報提供
(環境調整、支援制度、支援組織)
関係機関との連携
出典:家族のための精神分裂病入門 (クリストファーS.エイメンソン著)
どんなふうに経過するの?
松沢病院の医療
統合失調症の入院治療











刺激の少ない静穏な環境
薬物療法
精神療法
疾病学習プログラム
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
作業療法
服薬指導
家族支援
ソーシャルワーカーによる相談、情報提供
関係機関との連携
あらゆる専門職が参加するチーム医療
松沢病院の医療
松沢病院の医療
入院治療 (青年期病棟)
入院治療(青年期病棟)

薬物療法
精神療法
疾病学習プログラム(たんぽっぽプログラム)
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
生活訓練プログラム(おさいふの会)
作業療法
服薬指導
家族支援・ファミリーサポートプログラム
ソーシャルワーカーによる相談、情報提供

学習支援ボランティア

関係機関との連携

復学復職を目指す方は、病棟からの通学通勤が可能


15歳(義務教育修了後)から25歳くらいまで





発病早期の大切な時期の治療を
自我の確立や自立を目指す発達段階に配慮して
“症状・病気をふくめ自分とのつきあい方を知る”ことができ
るように
自尊感情を育み、治療への主体性を確立できるように




89
統合失調症の治療と回復(まとめ)
早期発見と早期治療が経過を良くします
 回復のスピードには個人差があります
 4つの治療法をしっかり継続することで
長期的な回復につながります

コミュニケーション能力って?
コミュニケーション能力って?


コミュニケーション能力は
生まれつき、等しく備わっている?
情報のやりとりをする力
意思の疎通、共感や相互理解の成立まで



コミュニケーション
:(生物学)動物個体間での、身振り・音声・臭い
等による情報の伝達
:社会生活を営む人間の間で行われる、知覚・感
情・思考の伝達。⇒共感、相互理解


コミュニケーション能力が定型的に
備わっていないと



生まれながらに、異なる神経基盤の上で、知覚
や認知を成立させている人々
話の文脈、行間、言外の意味の理解、比喩や
ユーモア、遠まわしで婉曲な物言いの理解、視
線・表情・身振り等の理解⇒自然にあるいは無
意識に行うことができない

親近感や友好のしるしとしての笑顔
⇒「自分のことを馬鹿にして笑った」(被害的認知)
⇒「自分に対する恋愛感情を示すために笑った」
(誇大的認知)
 “読み違え”による誤った認知!!
 状況依存的、断片的、拡散も体系化もしない妄
想様観念
対人関係における、他者の意図や状況の“読み
違え”が生じる
言うことをきかないわがままな生徒
社会性:集団を作って生活しようとする人間の持
つ基本的な傾向




同調性:いわしの魚群の動き、他者と同じ動きを
とろうとする、文化的には集団主義の中の概念





(例)目が合った人が笑った



大部分の人には、生来、この情報処理能力が定型的に
備わっている。
生来、定型的に備わっていないタイプの人々がいる。
コミュニケーション能力が定型的に
備わっていないと
社会性・同調性って?

非言語性コミュニケーション:視線、表情、身振り、姿勢、
距離感
言語性コミュニケーション(字義通りの言語以外):発話
のリズム、抑揚、間合い、声量の違い、口調、比喩
いずれにしてもコミュニケーションを基盤として成
立する
声をかけても返事もしない、顔すら向けない
自己中心的で集団行動がとれない
周囲にペースが合わせられない(会話、行動・・・)
注意や指導をしても頑固にききいれない
失礼な言動ばかり繰り返している
何度言っても同じことばかり繰り返す
何でも他人のせいにする
突然怒り出す、突然教室から飛び出す
勉強はできる、わかっているはずだ、わざとだ
⇒思春期・青年期特有の反抗?
⇒叱責や指導が繰り返される
90
広汎性発達障害
(自閉症スペクトラム障害)
広汎性発達障害
(自閉症スペクトラム障害)





対人コミュニケーションや集団行動が苦手
気持ちや行動のきりかえが苦手
感覚過敏

ユニークな考えや行動が可能
ものごとにこだわることができる




自閉症スペクトラム障害
(幼少期、児童期)








自閉症スペクトラム
アイコンタクトの乏しさ
他児への関心の乏しさ
微笑みがえし、呼名反応の乏しさ
人見知りの乏しさ
指さし、視線の追従の乏しさ
孤立(ひとり遊び)傾向
集団活動に乗れない
文字や数字が好き、語彙や知識量は多い
⇒過大評価されることも、会話が続くかどうか
自閉症スペクトラム(思春期青年期)
コミュニケーション・社会性









視覚的な情報が氾濫し、過剰に刺激的な内容に安易に
さらされ続けることが可能な現在に生きることの困難性

幼児期、児童期に診断あるいは認識されない軽
症例が思春期・青年期に顕在化してくる

思春期・青年期の課題


自閉症スペクトラム
定型発達者と異なる知覚、認知、記憶の基盤

自閉症スペクトラム(思春期青年期)
こだわり
自然なコミュニケーションが苦手(視線、表情といった非
言語性のコミュニケーションや雰囲気を読む)
話の行間を読むのが苦手
時、場所、相手によって対応を変えない
社会的圧力・抑止力を感じにくい
同調性が弱い
仲間関係を築く・維持するのが苦手
仲間固有の乗りや親密さに裏打ちされた適度な悪ふざ
けの理解ができない
居合わせた人々の構成に自然に考慮した言動がとれな
い

頻度は多い(コモンディジーズ:高血圧や糖尿病
のレベル)
児童では2,3%~数%、成人では1%、症状レ
ベルでは持続
特に男子に多い
知能とは無関係
脳機能の障害あるいは特性
興味、活動、習慣におけるこだわり(電車、ゲー
ム、キャラクター、歴史、物理的現象、道順、食
べ物・・・)
感情や行動のきりかえが苦手(同じことをやり続
ける、指示が通りづらい、予定変更に弱い、些細
な変更に強く反応する)
自閉症のミラーニューロン仮説


定型発達者とは異質の世界の中にいる
:独自の刺激を受け取り、独自の反応を持つ
⇒社会の中での生きづらさにつながる一方、
創造性や独自性として開花することがある

91
ミラーニューロン:特定の動作や知覚に関係する
神経細胞が、他者が同じ動作をするときに活性
化する
ミラーニューロンが、模倣、模倣による学習、他
者の意図の理解、共感、社会性の成立に関係し
ているのではないかという仮説
この神経回路の機能不全が自閉症の基本的な
症状を説明するのではないか?
自閉症スペクトラム



空気を読まない、こだわれる“強み”
特性として、理解する
苦手は最低限克服する
得意や強みを最大限伸ばす
空気や顔色ばかり読まない
ユニークな考えや行動がとれる
ものごとにこだわれる
独特の感覚が武器や強みになる





ファンタジーへの没頭
フラッシュバック(タイムスリップ現象)
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大多数の人は、集団としての動きに同調・協調するよう
にできている。集団としての力量は上がる。
集団が間違った・望ましくない動きをしたり、適応できな
い状況に陥ったりしたとき、危険回避できない。
集団に同調しない人は危険回避できる。
こだわることや独特の感覚は、物事の追求や新境地の
開拓につながる。
非凡な才能として、社会的に大成功する人達も・・・。
自閉症スペクトラム(思春期青年期)
ファンタジーへの没頭
:独自の空想世界に入り込む。
:無反応や場違いな反応や状態
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フラッシュバック
:過去の体験を、あたかも現在体験しているかの
ように再体験する。
:不快体験であれば、強い情動反応やパニック状
態(思い出しパニック)にある
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児童期に気づかれていないケース
不適応がありながら周囲の対応が不足(周囲や
本人の理解が不足し、必要なスキルの獲得が遅
れ、社会的トラブルや度重なる叱責、失敗体験
から低い自己評価につながる)
社会的排除(いじめ等)や失敗体験から、社会生
活への不適応や回避行動(不登校、緘黙)
精神症状の合併により、社会適応が悪化する
自閉症スペクトラム
合併症
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うつ病
躁うつ病
不安障害
注意欠陥多動性障害
強迫性障害
物質関連障害(アルコール、薬物)
精神病性障害
摂食障害
引きこもり、家庭内暴力


メンタルリスク、心の病気のサインに早く気づくに
は学校や職場が最適
自閉症スペクトラムが、心の病気につながる悪
循環を断つことが大切
病気と病気でないもの
自閉症スペクトラム障害の診断
病気
:正常な状態と質的に異なる、本人の特性ではない。
適切な診断と治療が必要。
統合失調症、躁うつ病・・・。
 病気でないもの
:正常な状態と量的に異なる。正常との境界はない。
本人の特性。
心理的支援や環境調整が重要。
知的障害、発達障害・・・。
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スペクトラム
92
発達歴の聴取と現症の観察にもとづいて、連続性を確
認し、診断する(平成24年母子健康手帳:1歳で、部屋
の離れたところにあるおもちゃを指さすとその方向をみ
ますか=指さしの追従)
同世代の集団の場での診断の検討

幼児期の発達障害様エピソードは発達障害に特異的で
はない(児童期発症統合失調症の25%に発症前自閉
症スペクトラム障害の症状を認めていたという全米調
査)

見逃しや過剰診断の問題
自閉症スペクトラム
心理教育、精神療法、生活指導
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自閉症スペクトラム障害
薬物療法
特性の十分な理解に立脚して、環境や周囲の対応を調
整する(わざとではない、わがままではない)
明確かつ具体的に常識や行動規範を示して、社会生活
における見通しを持たせ、社会技能・生活技能を身につ
けさせる
特性を生かせる就労に向け援助していく
成果のみえる課題や枠組みのある生活
低下している自己評価の回復をはかる
困った時、迷った時に相談する習慣をつける
社会的なサポート
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
症状によっては薬物療法を行うことがある。

薬物への過敏性が認められることもあり、少量
からの使用が勧められている。

合併症には、症状に応じた薬物療法がおこなわ
れる。
病気と病気でないもの
障害者基本法: 発達障害も対象に
発達障害者支援法: 早期発見、一貫した支援
発達障害者支援センター
学校での支援体制
ジョブコーチ

病気
:正常な状態と質的に異なる、本人の特性ではない。
適切な診断と治療が必要。
統合失調症、躁うつ病・・・。

病気でないもの
:正常な状態と量的に異なる。正常との境界はない。
本人の特性。
心理的支援や環境調整が重要。
知的障害、発達障害・・・。
周囲の理解や本人の自覚・理解だけですむ場合も
ある。

病気や障害あるいは強い特性では
ないかと考えてみる
実際に深刻ないじめや虐待がある
のではないかと考えてみる

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
環境要因(友人関係・家族関係)によるものに一見思え
ても異なることがある。いじめられている、悪口を言われ
ている・・・。幻聴や妄想・・・。
本人の意欲(健康的な意味での)の問題と片付けない。
うつ状態・・・。
わざとやっている、わがままでやっていると安易に判断
しない。自閉症スペクトラム(障害)・・・。

深刻ないじめ、深刻な虐待は実際にある。

いじめや虐待のかげに、病気や障害が潜んでいることも
ある。

声をかけよう。
支えや相談の糸口に。
先入観を持たず、本人や家族から十分に話をきくことが
大切。


孤立を避ける

相談窓口の情報提供を。すぐにつながらなくても、将来
つながることも。
思春期・青年期にある人を援助するとき
に大切なこと
本人や家族を孤立させない配慮や対応。
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スペクトラム
関与者・援助者も孤立しないように。抱え込まな
いように。
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93
病気や障害、特性を理解する
本人を責めない、周囲を責めない、自分を責めない
本人の努力を言葉にして評価する
できているところや長所に目を向ける、向けさせる
自己効力感を持てるように支援する
一喜一憂しない、過剰反応しない
症状にまきこまれない
放っておくこと、無視することが必要な時も多い
病気や障害があっても暴力や暴言を容認しない
病気や障害があっても社会的責任や義務を求める
長い目で本人の成長を見守り、応援する
本人の意思・自主性を尊重する
夢や冒険も大切
思春期・青年期にある人と関わるときに
大切なこと


成熟に向けて
“反抗”だけがテーマにならないように
“甘え”を助長しないように
家族の役割を考える
他人や社会の力が大切


ポジティブフィードバック(本人の状態を肯定的に切り
取って示す)から、ネガティブフィードバックへ


“排除されないこと”、“尊重されること“をメッセージとし
て伝える

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94
適切な社会とのかかわりの中で、安定した心を
持ちながら、自分自身を表現していけるように
本人自身が、自己を知り、自身とのつきあい方
を学び、成長成熟していけるように
平 成 25 年 度 独 立 行 政 法 人 福 祉 医 療 機 構 社 会 福 祉 振 興 助 成 事 業
「精神疾患を持つ高校生への早期支援事業」
平 成 26 年 3 月 発 行
編集・発行
社会福祉法人
巣立ち会
東 京 都 三 鷹 市 野 崎 2-6-42
TEL
0422-34-2761
http://sudachikai.eco.to/
http://sudachikai.eco.to/color/index.html
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