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博士(医 学) 岸 田 達 朗

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博士(医 学) 岸 田 達 朗
博士(医学)岸田達朗
学 位 論 文 題 名
羊 膜 腔 内 色 素 注 入 法 に よ る 前 期 破 水 の 確 定 診 断な らび に
新 し い 破 水 診 断 キッ ト( AFP― test kit) の開 発
学 位 論 文 内 容 の要 旨
緒言
流・早産の管理に際し,前期破 水の正確な診断は日常の臨床の場にあって従来のp
H法などで
はしばしば困難なことがある.
羊膜腔内色素注入法(P
SP
法)は 破水の確定的な診断法として有用であるが,対象とされる症
例は限られており,かねてより,ベッドサイドで簡便に繰り返して行うことができ,しかも非侵
襲的で,信頼性が高く,迅速にできる検査法の開発が望まれていた.
羊水中には高濃度のafe
t
o
pr
o
te
i
n
(A
F
P)
が存在し,尿,腟分泌液,精液には微量のA
F
P
が存在す
ることが知られている,
前期破水の診断法として,PS
P法の臨床的有用性について再度検討するとともに,独自に開発
した 抗AFPモノ クロ ーナ ル抗 体を 用い た A
FP検出 キッ 卜( 以下,AF
Pキット)の基本的性能お
よび 前期 破 水の 診断 にお ける 臨床 的有 用性 にっ いて 検討 する こと を 本研 究の 目的 とした.
方法と対象および結果
I
.
P
SP
法の検査対象とその実施方法について
1
9
8
1年10
月から1
9
9
3年10
月までの期間に,羊水様分泌物の流出ないしは破水感を訴えて来院し,
肉眼的な羊水・羊水様分 泌物の流出が少量ながらも観察されるか,または後腟円蓋・頚管内の貯
留液のpH
が7.
2以上(
BT
B法,ニトラジン法),コリン エステラーゼ活性判定法(アコレスト法)
陽 性, シダ 状結 晶証 明法 (F
LP法) 陽性 のいずれかの所見がある,妊娠14
週から33
週の 6
4症例
を対象とした.
超音波断層診断装置を 用いて経腹的に羊水穿刺を施行し,羊水を数m
l
採取ののち,妊娠週数・
羊水量を考慮の上,P
S
P
色素液(
P
h
e
n
o
l
s
u
l
f
o
n
p
h
t
h
a
l
e
i
n,第一製薬)をI
m
l
∼ 3
m
l
羊膜腔内に注入し,
滅菌乾燥ガーゼを子宮腟部全体を覆うように腟内に数枚挿入する.
腟内にガーゼを挿入後 6
∼ 1
2時間で一度抜去して,P
SP
の淡紅色に染色されているか否かを観
察し,染色された場合を陽性とする.
II
. P
SP法の 検 査結 果に つい て
破水 の最 終診 断 は, 従来の方法(pH
法,アコレスト法,FL
P法),臨床経過および妊娠の転
帰 など から 判断 し た.
一 312−
P
SP
法は正診率,感度,特異度ともに1
0
0
q
o
であり,ズ検定で有意性(
P
く0
.
0
0
1
)が認められた,
しかし, p
H法は正 診率70
.5
%, 感度8
7
.
5吮特異度6
8
.1
%
-C
あり,シダ状結晶証明法はそれぞれ
6
3.
9%
, 55
.6
瞬8
8.9
魄 アコレス ト法はそれぞれ6
6
.
7覧7
5
.
0%
,50
.
00
/
0
であった,PS
P
法は,他
の3法に比べ正診率,感度,特異度いずれも最も高い値が得られ,その臨床的有用性が確認され
た.早期産・正期産の4
7
症例では,全例生児を得られたが,母体ならびに新生児にはP
S
P
による
と思われる副作用は観察されなかった.
I
I
I
.A
FP
キットの概要
本キットの検体添加部の左側にはニトロセルロースメンブレン上に青色染料を結合した抗A
F
P
モノ クローナ ル抗体が溶化可能な状態で塗布されている.その左の判定部には縦線状に青色染
料に結合した抗体とは抗原認識部位の異なる抗A
F
Pモノクローナル抗体が固相化され,さらに終
了サイン部には縦線状に抗マウスI
gG
抗体が固相化されている,検体を検体添加部に添加すると,
検体溶液はメンブレン上を左側に毛管現象により移動し,青色染料結合抗AF
P
モノクローナル抗
体塗 布部に至 り,これを溶化し,検体中のA
F
Pと反応する.AF
P
を結合した免疫複合体はさらに
左側 に移動し ,判定部の固相化抗体にトラップされ,その部に青色の縦線を形成する,過剰の
免疫複合体および未反応の青色染料結合抗A
FP
モノクローナル抗体はさらに移動し,終了サイン
部の 固相化抗 体と反応し,青色の縦線を形成する(反応終了サイン).反応終了時間は検体添
加後約3分間である.
検体中に感度以上(≧ 2
.
5n
g
/m
l)の濃度のA
F
P
が含まれる場合は判定部に,”固相化抗A
F
P
モ
ノクローナル抗体 ̄A
FP
l
青色染料結合抗A
F
Pモノクローナル抗体”のサンドイッチ型の免疫複合
物が形成されるため青色の縦線が出現する.検体中に感度以上のA
FP
が含まれない場合には,判
定 部 の 反 応 が 起 こ ら な い た め 判 定 部 に 縦 線 は 出 現 せ ず , 終 了サ イ ン のみ が 出 現す る ,
I
V.A
FP
キットの検査対象と検査方法について
19
92
年2
月から1
9
9
3年9月までの期間に,妊娠1
1
週から4
0
週までの破水または破水の疑いのあ
る7
1症例を対象とし,検体は腟分泌物もしくは頚管分泌物とした.
破水の最終臨床診断は,問診,腟鏡診,羊水鏡,内診,超音波断層法,P
S
P
法とその後の臨床
経 過およ び妊娠の 転帰によ り判断 された. A
FP
キ ット検査時にp
H
法(二トラジン法・B
T
B
法)
を 同時に施行した.また,採取された検体をAF
P
キットの結果と比較するために一旦80
℃に凍
結 保 存 し , ラ ジ オ イ ム ノ ア ッ セ イ ( RIA)に よ り そ の 濃 度 を 測 定 し た ,
検査法の手順の概略は以下のごとくである.すなわち検体1
0tL
l
をo
.
i
9
吽血清アルブミン加リ
ン酸緩衝化生理食塩液49
0
ル1
に加え5
0
倍に希釈溶解する,希釈した検体の2
5
0
¢1
を検体添加部に
添加し,室温で水平にして静置する,終了サインが出現した時点(通常,添加後約3
分間)で判
定部の青色染料の出現を肉眼で観察し判定する.判定部に縦線が出現した場合.陽性と判定し,
こ の時希釈検体には2
.
5
ng
m
l以上のA
F
Pが含まれており,腟腔内液,頚管分泌物には1
2
5n
g
/
ml
以
上のA
FP
が含まれていることになる.
V.AF
P
キットの検査結果について
破水疑い1
6
症例;その他1
3症例の最終的に破水が認められなかった2
9
症例では,AF
P
キットは
全例陰性であり,RI
A
による測定でも,AF
P
濃度は1
2
5n
g
/
ml
(カットオフ値)未満の値を示した.
これに対して,従来の方法と羊水鏡検査,P
S
P
法(羊膜腔内色素注入法)を組み合わせて確定
診断さ れた高 位破水16
症 例およ び低位破 水2
6
症例においてはA
F
Pキットはすべて陽性を示し,
- 313―
RIAに よる AFP値 は すべ て カ ッ トオ フ 値 を 越え た 濃 度 であ っ た .
以 上 の 結 果を ま と め ると , AFPキ ッ卜 は 破 水 全症 例 に 陽 性で , 非 破 水全 症 例 に 陰性 であり ,正
診 率 , 感 度 , 特 異 度 は す べ て 100% で , , ズ ” 検 定 で 有 意 性 ( pく 0.001)が 認 め ら れ た ,
考察
本 研 究 の PSP法 に 関 す る 検 討 で は , 臨 床 的 に 繁 用 さ れ て い る pH法 , ア コ レ ス ト 法 , FLP法
に は 偽 陽性 ・ 偽 陰 性が 存 在 し ,正 診 率 が 63.9%∼ 70.5% で 妊 娠 中期 の 破 水が 疑わし い症例 の診断
法 と し て は 限 界 が あ る よ う に 思 え る . こ れ に 対 し て 1981年 以 来 ,教 室 で 独 自に 用 い て きた PSP
法 で は ,従 来 の 他 の3法に 比 ベ 正 診率 , 感 度 ,特 異 度のい ずれに おいて も有意 (pくO. 001)の診
断精 度であ り,そ の臨床 的有用 性がは じめて 推計学 的に確認 された .
pH測 定 法 で あ る ニ ト ラ ジ ン 法 で は, 腟 内 の アル カ リ 化 によ っ て 偽 陽性 が し ば しば 観 察 さ れ,
破 水 か ら 時 間 が 経 過 し た 症 例 で は 偽 陰 性 を 示 す こ と も あ る. ま た FLP法 では , 全 妊 娠期 間 を 通
じ て 子 宮頚 管 粘 液 によ っ て 30% の 偽 陽 性が 生 じ , 羊水 の 結 晶 化が 血 液 の 混入に より阻 害され る.
し か し な が ら , PSP法 は 従 来 の 方 法 で 偽 陽 性 ・ 偽 陰 性 を 示 す これ ら の 因 子が 存 在 す る場 合 に お
い て も 有 用 で あ っ た こ と が 臨 床 経 過 か ら も 本 研 究 に お い て 改 め て 認 識 さ れた .
Evansblue,Methyleneblue,そして Fluoresceinなどの色素注入法が報告され,それぞれ確診率の
高 い 方 法 と さ れ て き た . し か し, そ れ ら の色 素 の 胎 児・ 新 生 児 なら び に 母 体に 対 す る 副作 用 ・
影 響 な ど に つ い て は , 報 告 さ れた 検 討 症 例数 も 少 な く十 分 に は 把握 さ れ て いな い . ま た, 新 生
児の 長期予 後につ いての 報告も 非常に 少ない .
従 来か ら 一 般 的に 用 い ら れて い る 破 水の 診 断 法 (conventionalmethods)を 数種類 組み合 わせて
も 妊 娠 後 期 に お い て さ え 正 診 率は 93% と報 告 さ れ てい る . 早 産期 の 破 水 診断 に お け るニ ト ラ ジ
ン 法 . FLP法 の 感 度 は そ れ ぞ れ 77% , 62% と 報 告 さ れ , 破 水 の 診 断法 と し て こと に 流 ・ 早産 期
にお いては ,限界 がある と思わ れる.
1983年 に Rochelsonら は 抗 AFP抗 体 を 用い , ラ テ ック ス 凝 集 反応 を 利 用 した 方 法 を 破水 の 診 断
に 応 用 し , 感 度 93% , 特 異 度 94% と報 じ た . しか し こ の 方法 は 採 取 検体 を 遠 心 する こ と , 凝集
反 応 の 結 果 判 定 が 容 易 で は な いこ と , 従 って 診 断 結 果の 説 明 の 困難 な 症 例 がし ば し ば 存在 し た
こ と な ど に よ り実 用 化 さ れな か っ た .さ ら に 1987年 に Rochelsonら は 早 産期 の 新 し い破 水 診 断 の
方 法 と し て マ ウス 抗 AFPモ ノ ク口 ー ナ ル 抗体 を 用 い たcolorimetric monoclonal antibody assay
法 を 導 入し , 感 度 98% で , ニト ラ ジ ン 法, FLP法 に比 べ有意 性があ ると報 告した. これに 対して ,
1990年 に Gariteらが 早 産 期の破 水の診 断法と して同 じcolorimetricmonoclonalantibodyassay法
を 用 い て検 討 し た が, 二 ト ラ ジン 法 に 比 ベ特 異 度 の み有 意 で あ った が , 感度 におい ては有 意性が
認 め ら れ ず , ま た FLP法 に 比 べ る と , 感 度 ・ 特 異 度 と も に 有 意性 が 認 め られ な い と して お り ,
こ の 方 法の 臨 床 的 有用 性 に っ いて の 結 論 は未 だ 得 ら れて い な い .ま た 検 査の 全過程 には約 15分間
を必 要とす ること も報告 されて いる.
他 の 抗 AFP抗 体 を 用 い た こ れま で の 方 法に 比 べ , 新た に 開 発 した AFPキ ッ トが よ り 高 い正 診 率
を 示 し た 理 由 とし て , 1) ラ テ ック ス 凝 集 法の よ う に 結果 判 定 が 困難 で は な く, 青 色 の バン ド の
有 無 で 明確 に 判 定 でき る , 2) AFPキ ット は 希 釈 検体 を 添 加 する だ け の 操作 で約3分 間で結 果が得
ら れ る た め , ペ ッ ド サ イ ド で の迅 速 な 判 定が 可 能 で あっ た , そ れに 対 し て ,ラ テ ッ ク ス凝 集 法
は遠 心する ことが 必要で あり,またcol
orime
tricmonoc
lonalanti
bodyassay
法6ま4ステップの操作が
必 要 ( 約 15分 間 ) で あ る こ と か ら , 検 体採 取 か ら 判定 ま で の 時間 , 操 作 過程 で の 何 等か の 影 響
ー 314ー
が関与している可能性がある.3
) A
F
P
キットのカットオフ値は2
.
5
n
g
/
m
l
(実際の検体濃度として
は1
2
5
ng
/
ml
)であり,それに対して他の抗A
FP
抗体を用いた方法はいずれもlO
O
I
U/
m
l
をカットオ
フ 値と し てお り , その違 いが結果判 定,正診 率に反映 したこと などが推 察される .
結語
1
.妊娠中期の破水が疑わしい64
症例において,従来の方法の正診率は6
3
.
9∼7
0
.
5%であったの
に対し ,羊膜腔内色素注入法であるPS
P
法は1
0
0%であり,その臨床的有用性を再確認しえた,
2
.臨床的にほとんど問題にならない仮羊水破水と治療・管理の必要な高位破水・低位破水との
鑑別診 断は従来の方法では困難なことが多く,羊膜腔内色素注入法(
P
SP
法)の導入によっては
じめて診断が可能とナょった.
3
. 本研究の 対象と した妊娠 婦人・ 新生児の全症例において,P
SP
法の手技ならびにPS
P
色素自
体 によ る 副作 用 と 思わ れる異常は 全く観察 されず, 本法の安 全性が再 確認され た,
4
. 迅速に判 定結果が得られ,操作方法も簡便なべッドサイド用の破水診断のための抗AF
P
モノ
ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 用 い た AFP検 出 キ ッ ト (AFPキ ッ ト ) を 新 た に 開 発 し た ,
5
. 妊娠11
週か ら40
週の前期破水また1まその疑いのある7
1症例において,従来法であるp
H
法の
正診率 が6
0.
0%であった のに対し ,AF
Pキットは1
00
%であり,本キットの診断的卓越性が判明
した.
6
. AF
Pキットの反応に要する時間は約3
分間であり,迅速・簡便かつ非侵襲的であり,本キッ
トが破 水の診断 法のひ とっとし て日常 臨床に極 めて有 用である ことがはじめて確認された.
ー 315―
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 藤 本 征 一 郎
副 査 教 授 西
信
三
副 査 教 授 寺 沢 浩
一
学 位 論 文 題 名
羊膜腔内色素注入法による前期破水の確定診断ならびに
新しい破水診断キット(AFP
-te
stki
t)の開発
流・早産の管理に際し,前期破水の正確な診断は日常の臨床の場にあってp
H法など
の従来の方法ではしばしば困難なことがある。
教 室 で 試 行 さ れ て き た 羊 膜 腔 内 PSP色 素注 入法 (以 下, PSP法 )は 破水 の確 定
診断法として有用であるが,対象とされる症例は限られており,かねてよルベッドサ
イドで簡便に繰り返して行うことができ,しかも非侵襲的で,信頼性が高く,迅速に
半U定ができる検査法の開発が望まれていた。
羊水 中に は高 濃度 のa― fetoprotein(AFP)が存在し,尿,腟分泌液,精液には
微量のAFPが存在することが知られている。
前期破水の診断法として,申請者はPSP法の臨床的有用´隆について症例を増加し
て 再 度 検討 する とと もに, 独自 に開 発し た抗 AFPモノク 口ー ナル 抗体 を用 いた AF
P検 出キ ッ卜 (以 下, AFPキット )の 基本 的性 能お よび 前期破水診断における有用
性にっレヽて検討することを本研究の目的とした。
1981年 10月 か ら 1993年 10月 ま で の 期 間 に , 羊 水 様 分 泌 物 の 流 出 な い し
は破水感を訴えて来院し,肉眼的な羊水・羊水様分泌物の流出が少量ながらも観察さ
れるか,または後腟円蓋・頚管内の貯留液のpHが7.2以上,コリンエステラーゼ活性
証 明法 陽性 ,シ ダ状 結晶 証明法 陽陸 のい ずれ かの 所見 がある,妊娠14週から33週
の64症例をPSP法の対象とした。
pH法は正診率70.5%,感度87
.5%,特異度68.1
%であり,シダ状結晶証明法はそれ
ぞれ63.9%,55.6%,88.9%,コリンエステラ―ゼ活性証明法はそれぞれ66.7%,
75.0% ,50.0% であ った が,PSP法 は他 の3法 に比 ベ正 診率,感度,特異度いずれ
も 100% と満 足す べき 結果 がえられ,その臨床的有意性(P<O. 001)が確認された。
早 期 産・ 正期 産の 47症例 では ,PSP法 施行 後に 全例生 児を 得ら れた が, 母体 な
ら びに新 生児 には本 法に よると 思わ れる副 作用 は観察 され なかった。
さ ら に 申 請 者 は , は じ め て 独 自 に 開 発 した AFPキ ッ 卜 の 臨 床 応用 を試 みた 。
本キットの検体添加部の左側にはニト口セル口ースメンブレン上に青色染料を結合
し たマ ウス 抗ヒ I-AFPモノ ク口ーナル抗体が溶化可能な状態で塗布され,その左の
判定部には縦線状に青色染料に結合した抗体とは抗原認識部位の異なるマウス抗ヒト
AFPモノ ク口 ーナ ル抗 体が 固相化され,さらに終了サイン部には縦線状に抗マウス
IgG抗体が固相化されている。
反応 終了 時間 は検 体添 加後約3分間で,感度以上(≧2. 5ng/ml)の濃度のAFPが
. 含ま れる場合 は判定部 に,¨固 相化抗AFPモ ノク口一 ナル抗体― AFP―青色染 料
結合 抗AFPモノクロ ーナル抗 体¨のサ ンドイッ チ型の免 疫複合物が形成されるため
青色の縦線が出現する。
1992年 2月 か ら 1993年 9月 ま で の 期 間 に , 妊 娠 11週 か ら 40週 ま で の 破
水 また は 破 水の 疑 い のあ る 71症 例 をAFPキット の検討対 象とし,検 体は腟分 泌物
もしくは頚管分泌物とした。
破水 の最終臨床 診断は, 問診,腟 鏡診,羊 水鏡,内 診,超音波断層法,PSP
法と
その 後の臨床経 過および 妊娠の転 帰により 判断され た。AFPキッ卜検査時にpH
法を
同時 に施行した 。また, 採取され た検体を AFPキッ卜の 結果と比較するために一旦
ー 80℃ に 凍 結 保 存 し , ラ ジ オ イ ム ノ ア ッ セ イ (RIA) によ り AFP濃度 を 測定 し
た。
検査法の手順の概略は以下のごとくである。すなわち,検体1
0 11
1をO.
l%牛血清
アル ブミン加リ ン酸緩衝 化生理食 塩液490ulに加 え50倍に希釈溶解する。希釈した
検体 の250ulを検体添 加部に添 加し,室 温で水乎 にして静 置する。終了サインが出
現した時点(通常,添加後約3分間)で判定部の青色染料の出現を肉眼で観察し判定
する。判定部に縦線が出現した場合,陽陸と判定し,この時希釈検体には2. 5
ng
/m
l以
上 のAFPが 含 まれ て お り, 腟 腔内 液 ,頚管分 泌物には 12 5ng/ml以上のAFPが含 ま
れていることになる。
AFPキ ッ ト の 検 査 結果 に つ いて ま とめ る と ,破 水 疑い 16症例 , そ の他 13症 例
の 最終 的 に 破水 が 認 めら れ なか っ た29症例 では,AFPキ ッ卜は全例 陰性であ り,
RIAによ る 測 定で も , AFP濃 度 は12 5ng/ml(カッ トオフ値 )未満の 値を示した 。
これ に対して, 従来法と 羊水鏡検 査,PSP法を 組み合わ せて確定診断された高位
破 水 16症 例 お よ び 低位 破 水 26症 例に お い ては AFPキ ット は すべ て 陽 陸を 示 し,
RIAに よ る AFP値 は す べ て カ ッ 卜 オ フ 値 を 越 え た 濃 度 で あ っ た 。
以上 の結果をま とめると ,AFPキッ卜 は破水全 症例に陽 陸で,非破水全症例に陰
性で あり,正診 率,感度 ,特異度 ほすべて 100%で,有 意性(
p<0.001
)が認められ
た。
発 表 に 際 し , 西 信 三 教 授 か ら 妊 娠 中 期 の 羊 水中 AFP濃度 , AFPキッ ト に用 い
られ た抗体のア フィニテ ィについ て,寺沢 浩一教授 から,PSP
法における注入色素
量 の増 加 に よる 判 定 時間 の 短縮 の 可 能性 , PSP色 素 の 副作 用 ,PSP法 の感度の 算
出方 法について ,さらに 阿部和厚 教授から は,羊水 中AFPの由来について,などの
質問があったが,申請者は,概ね適切に解答しえた。
発表 後,副査の 西教授, 寺沢教授には個別に審査を受け合格の判定を下された。
以上 ,本研究は 臨床的に 問題の多 い妊娠中 期の前期 破水の診断に羊膜腔内PS
P色
素注 入法と独自 に開発し た簡便な AFPキット法 がきわめ て有用であることをはじめ
て明 らかにし, 破水診断 に画期的な貢献を今後もたらすものと判断され,博士(医
学)の授与に値するものと判定された。
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