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平成17 年M&A研究会第2回議事要旨

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平成17 年M&A研究会第2回議事要旨
平成 17 年M&A研究会
第2回
議事要旨
(平成 17 年 2 月 18 日開催)
(座長)
それでは時間も過ぎましたので、早速第2回の会合を開かさせていただきたい
と思います。本日はお忙しい中、ご出席いただきまして誠に有難うございました。
それでは議題の1ということで、「日産自動車の事業再編におけるM&Aの経験」という
ことで四方委員にプリゼンテーションをお願いいしたいと思います。それではどうかよろ
しくお願いいたします。
(四方委員)
プロジェクターをお借りして、立ち上がって説明をさせていただきたいと
思います。元々は、海外投資とM&Aというテーマで報告をしてほしいということだった
のですが、それに直接マッチするようなテーマがなかなか見当たらなかったものですから、
私どもの事業会社としてご案内できることは何かと考えますと、やはり事実や実績だとい
うことだと思いますので、日産自動車がこの間、何をやったかということの中から日産自
動車がM&Aに対してどのように成長してきたかということを少し垣間見ていただくこと
と、私が個人的にも最も深く関与した中国合弁ディールについてのいくつかの事実につい
てご紹介して、皆さんのディスカッションの資料になればと思います。それで守秘義務が
ありますし、また会社の機密規定もありますので細部にわたってご紹介することがたぶん
出来ないと思いますので、あらかじめお断わりしておきます。それから中国合弁のところ
でお話することは、それらが問題であったとか、大きく揉めたとかいうことではなく、私
どもがやっていく中でこれは通常の項目と違うぞということで深く検討したこととか、あ
るいは非常に関心を呼んだということでありまして、けっして問題の一覧表というではあ
りませんので誤解をお持ちにならないように、これもあらかじめ申し上げておきます。
早速ですが、構成は申し上げたとおり2部になっておりまして、前半は概論的に日産自
動車がどのようにやってきたかの大枠を見ていただきたいと思います。2つめが中国合弁
のディールの具体的ないくつかの事実となっています。
まずこれはご存知の方はもうご存知なんですが、日産自動車がルノーの出資を受ける前
に構造改革プロジェクトということですでに生産工順の再編であるとか、あるいは負債の
整理とかそれらをふくめたダイナミックな構造改革案を、すでに 1998 年時点で検討してお
りました。私は海外赴任から戻って来まして、構造改革のプロジェクトに投入されました。
実はこの構造改革プロジェクトであげていたいくつかの大きなテーマを、ルノーの出資を
受けた以降、ゴーンCEO以下経営陣が採用しました。それをさらに拡大させ強化して日
産リバイバルプラン、NRPという構造改革案にまとめて、かつそれを実行したというこ
とです。当初3年計画で、2002 年度完了をめどにこのような黒字化、デットの縮小などの
具体的テーマをあげて取り組んで参りました。新聞などでご存知のとおり、一年前倒しで
1
完了しました。すでに1年前倒しで完了するということがある程度見えてきた時点で、会
社は日産 180 計画の検討に着手し、2002 年度の前半にこれを発表しましたように、増販と
利益率の改善、それからゼロデット化という3本立てで着手をいたしました。今ちょうど
最終コーナーに入っておりまして、日産 180 計画が完了できるかどうかを見ているところ
です。すでに日産 180 計画の年度が終了した後の日産バリューアップというプランの骨子
を決めておりまして、今最後の肉付けをしているところです。これが大きな流れですが、
ご覧になってすぐ分かるように、総資産が急激に圧縮されており、加えて有形固定資産、
これを大きく圧縮してきたということ、数字的には大きく見えないですが、投資有価証券
勘定に持っていた関連会社、グループ会社、特に部品メーカーの株を積極的に手放してい
る、ということの事実をご紹介する、ということでこの表を作りました。まとめますと私
どもの事業資産の再編の主な要点は4点あります。
1点目は再編方針が極めて明確であって、目的もほぼ全員がシェアしたということです。
借金を返し財務費を下げるのだということです。そのためには原則的に 4 社の例外を除き
全ての保有持分については整理をするということです。4社というのは日産ディーゼル、
日産工機、愛知機械と日産車体、基幹となる子会社は手放さないといことです。それ以外
は原則的に全部検討の俎上にのせて何らかの再編を考えるということで、この方針につい
ては終始ゆるぎなく、一切の例外を認めずに経営陣は遂行したということ、これが1点目
の特徴です。
2点目は、3年計画であったNRPを2年で達成した訳ですから 1.5 倍のスピードで実行
したということで、その結果総資産で18%、2割強削減を図って、その分有利子負債の
削減を極めて速やかに成し遂げたということです。
3つ目は、そうすることによって何が起きたかというと、いわゆる系列取引からの決別
を図っていったということです。借金は返さなければいけないし資産は減らさなければい
けないが、でも取引関係は重要だから持分は維持しなければいけないということのせめぎ
あいがあった訳です。これもゴーン社長以下の経営陣のゆるぎない意思の結果で、資本関
係でもって事業運営を貫徹させることはしないということで、何が骨子かというとそれは
経済合理性だということです。だから子会社だから優先的に部品を買うということではな
く、親会社だから優先的に売るということでもない。そういうことは一切しないし、子会
社も子会社でない会社も同列に扱うんだという原則を極めて硬い決意で徹底的に成し遂げ
たということであります。その結果ですね、日産自動車は大半のグループ部品メーカーと
資本関係を切り、経済合理性を中心に運営されていると言っても過言ではありません。
しかしその後少し問題が顕在化してきました。自動車メーカーというのは基本的にアセ
ンブリー企業ですので、付加価値の源泉の大半は部品生産にあります。私どもが車両を企
画、開発したものを部品メーカーの開発で補っている、この補完関係が今までは資本関係
があることで非常に安定的に行われてきたものを、資本関係を崩しましたので緊張関係が
生ずる訳です。これは意図的に作った訳ですが、緊張関係を生じた結果、私どもアセンブ
2
リーメーカーとして本来把握しておかなければならない大事なコアの技術について分から
なくなってきている面もある訳です。つまり部品のエンジニアリングがブラックボックス
化していくことが問題としていま出てきています。もう一度私どもは集中と選択を考えて
いかなければならなくなったということです。何が大事な技術で自分のもとに取り込まな
ければならないか、何が大事でないか、ということをもう一度線引きをしなければならな
くなったのです。お気付きのとおりカルソニックカンセイ社という私どもにとって非常に
重要な内装関係や電装関係の重要な部品メーカーでありますが、当初はあの部品メーカー
も売却対象として検討が進んでいたのですが、逆に昨今買戻しを行いまして連結子会社に
組み入れたということです。これはカルソニックカンセイ社が行っている事業が、日産自
動車のアセンブリーメーカーとしての付加価値の根幹をなす一部であるということを表明
している訳です。事実上子会社化することによって私どもに取り返しもう一度位置付けし
直したということであります。
最後は、MBOのケースが出てきたとういうことですね。我々先輩である社長が持分を
取得されたケースです。
2000 から 2002 年度の間の事業再編は圧倒的に売りサイドです。売りサイドと買いサイド
を絶対値にした件数で少し実績を分析的に表にまとめました。横軸は対象資産が国内にあ
るか海外にあるか、あるいは会社が国内にあるか海外にあるか、縦軸は相手が、バイヤー
であれセラーであれ、相手が同業メーカーや部品メーカー(ストラテジック・プレイヤー)
であるのか、あるいはそうでないフィナンシャル・プレイヤーなのか、そういうふうに置
いています。第一象限の事業会社に国内資産の(ディールの)相手にしたというのが圧倒
的に多いですね。ただ、フィナンシャル・プレイヤーを相手にした場合もあるということ
です。海外資産についてはそれほど多くはない。2000 から 2002 年の間は圧倒的に国内資
産の処理・処分を進めたということです。
同じように横軸右側が国内資産で左側が海外資産で、カウンターパートが日系か非日系
かが縦軸、言葉は悪いのですがいわゆる青目なのか黒目なのか、日系か非日系かに分けま
すと圧倒的に日系が多いんです。ご覧になれば分かるんですが、どうしてもディールの規
模が大きくなると、グローバルディールになることが多くなるものですから、日系の方だ
けがカウンターパートになる場合はあまり多くないです。お分かりになると思いますが、
私どもがNRP計画を始めた時点で山ほど問い合わせが来ました。内外からものすごい数
ですよ。皆さん買いたい、日産の事業だから良いものだろうということで多く来られて、
我々はその中から選りすぐってやっていったということです。16 件の日系案件に対して7
件が非日系ですから約1対2で、非日系が決して少なくない。これが後で申し上げるディ
ールの形態の中で、例えば英語を喋らなければならないとか、相手の事情を把握しなけれ
ばいけないというところに大きく影響してくるんですね。何故ならば日系のカウンターパ
ートであればなんとなく分かりあっていると思うんですね。例えば政策投資銀行の方と話
3
をしていると、当方の事情や意図を分かって頂いているんじゃないかとなんとなく思うん
ですが、そうじゃなくて全然違う非日系のファンドですとか、そういうところが来ると、
何を考えているのか分からない、私どもサイドで作る M&A の体制が全然違ってくるという
ことですね。この辺の非日系の件数があるがために日産自動車は M&A を勉強していった
ということです。国内資産の日系プレイヤー相手のディールだけだと従来どおりの金融機
関相手の資産売却なり資産取得なりの手法で、たぶん終わらせたと思います。でも非日系
プレイヤーとのディールがあるために、いろいろなところで様変わりを起こしたというこ
とです。もう一度申し上げますとストラテジックバイヤーが主体でした。フィナンシャル
バイヤーもそうは言っても限定的にありました。ここに書いていますようにフィナンシャ
ルバイヤーが何故限定的なのかということですが、条件が非常に厳しいんですね。投資利
回り2割、3割出さなければならないという人達ですから条件が非常に厳しくなるんです
ね。ゆるい条件は一度もなかったです。見事にこちらとしては困るな、という条件をつけ
てこられました。一方、そういう条件にもかかわらずイグジットの見通しが非常に曖昧な
んですね。我どもとしては安定的に事業を続けたいというのが根底にあるんですが、じゃ
イグジットは何時どうされるんですかというと、相手の方は3年、4年は持ち続けますと
おっしゃるんですね。でも本音では売る機会があればいつでも売るぞとおっしゃてるんで
すね。結局この人達に私どもの事業を売ると、1年後には違う人が事業の持ち主になって
帰ってくるんじゃないか、こういう不安がどうしても拭いきれないですね。私どもが一番
怖れるのは、競合他社さんに事業を売られることなんです。それを制限できないんです。
制限つけた場合もあります、転売禁止を、競争メーカーには転売しないという条件をつけ
たんです。しかしそれは期間が限定されていますから3年、5年越えたらいつでも売れる
ぞということですから、結局私どもが育てた事業が何年か後競合メーカーの事業の一部に
帰ってしまうんじゃないかなーという不安を拭いきれないのです。ということで基本的に
フィナンシャルバイヤーは好みません。やる場合にはこの辺の条件を徹底的に詰めます。
中国合弁についてです。圧倒的に事業の整理を進める、売却を進めるという活動をした
のが 2000 年から 2002 年にかけてでした。私どもは売るるばかりでなく他方で将来の成長
に向けて、やはり必要なものは取得していくという戦略を描いておりました。その中で通
常一般市場と呼んでいます中国などで、今まで私どもが獲得していないプレゼンスをどう
するのか、ということで検討がされていて、結果として中国の大手自動車メーカーである
東風汽車公司との合弁会社設立の交渉に入った訳です。
これは発表文です。全部読みませんが、背景を知らない人が読むと何ということはない事
実が羅列されているなと思われるのですが、実は一つ一つの裏側に深い理由があり、交渉
の歴史があって、それをいくつかご紹介しようと思います。最初に「新会社「東風汽車有
限公司」を設立し、その事業を・・・」となっておりますが、なぜか日産の名前が付いて
おりません。日産自動車の名前をかぶせなかったことも大きなテーマであったのです。次
にくどいように「中国政府及び関係省庁などの強い支援」と書いていますが、また「政府
4
の定めた手続きに則り・・」とあります。当たり前じゃないかと思われますが、これも理
由があるんです。それからここに省庁の名前が3回出てくるんですが「旧国家経済貿易委
員会及び旧国家計画委員会に提出され、商務省に提出し、工商局による営業許可・・」と
書いてありますが、ここで合弁会社設立手続きは4省庁が管理する、国家が管理している
ということをここでは言っているのです。合弁会社を設立するために何故4省庁が管理す
るのか。中国ディールについてご存知の方は中国政府の管理の考え方をご承知と思います
が、一般の方がご覧になると何故だろうとなりますね。そういうことがここで分かります。
次に「資本金は・・東風は・・段階的に新会社に拠出し・・日産は東風の現物出資に応じ、
キャッシュで出資を行う・・」と書いてありますが「段階的に出資する」というのと「キ
ャッシュで出資」というのにも深い理由があります。それから「従業員数 74,000 人」とあ
りますが、元々12 万人強の会社、少なくとも従業員が 12 万人を超える会社であったことを
ご存知の方は、7 万 4 千人を、ということはどういうことかお分かりいただけると思います。
最後に経営権に関して取締役会と実際の経営を執行するポジションについて書いています。
「董事会」とは日本では取締役会に相当すると解釈されていますが、実はそうじゃなくて
債権者会議のようなもの、出資者の利害を代弁する代理者が集まっている会議でして、取
締役会とはちょっと意味合いが違うんですね。ですから董事会の決定事項は出資会社の意
向に沿っています。それを超えて董事が自分独自の判断をすることは許されていないです
ね。董事会の長を董事長といいますが、董事長は中方から出す。したがって実際に日々の
経営を執行する、私どもは総裁と呼んでいますが、総経理、社長ですね、これは日方から
出す、そうすると1対1ですね。さらに副総裁これは副社長ですが、副社長が合計7名で
すが、総裁入れると8名ですね、これを日方4名、中国方4名ですね。ですから董事会の
長を中方がやる場合には執行権を持つ長は日方が持つ、これはタスキがけで行ったという
ことを言っているのです。これが中国合弁の大きな悩みの種の一つです。経営権も5分5
分で半分に分かれてしまう。あまり細かいことを申し上げる必要はないと思いますが、国
有企業として中国中央政府が東風汽車公司という持ち株会社を持っていまして、この傘下
の旧東風汽車有限公司が事業が成りゆかなくなって、さらに貸し込んでいた金融機関、中
国系の4大金融機関が不良債権化した東風汽車有限公司向け債権のデットイクイティスワ
ップを行いまして出資持分に振り替えました。そのために4金融機関が傘下の資産管理会
社を間にはさんだ、ということです。東風汽車有限公司はその時点ですでに巨大なコング
ロマリットでした。他の外資と合弁会社をいくつか持っているなどその他莫大な、中国全
土にまたがる事業を運営しておりまして、それが私どもとの合弁会社を作る過程でこのよ
うに再編しました。既存の外資合弁会社は日産自動車との合弁会社からは切り離しました。
当然ですが、例えばフランスのシトロエンなどと合弁会社を持っているのですが、日産自
動車傘下の合弁会社にシトロエンの合弁会社を置く訳にはいかないということで外れた訳
ですね。ホンダさんの合弁会社もありますし、それから現代自動車との合弁会社、これら
を切り離しました。一部の自動車子会社あるいはエンジン子工場は私どもの合弁会社の傘
5
下には入れませんでした。私どもの基準からいうと、私どもが責任を持って運営できるよ
うなビジネススコープでもなければ、そういうレベルでもないという判定をして外してい
ったのです。それ以外に中国国有企業の典型的なパターンであるノンコア事業として、幼
稚園であるとか病院とか不動産会社とかいろいろたくさん持っておられたのですが、これ
らは中方が率先して責任を持って本来事業から切り離し、例えば自分のところ関係する事
業や全く関係のない事業、地方自治対などに再吸収・再統合なりをされて、この合弁会社
からは切り離されました。それから自動車ではない事業体を持っていたんですが、病院や
幼稚園ではない、外資との合弁でもない、自動車事業でもない、何かというと、農用車、
いわゆる三輪トラックのようなもの、そういうものを持っていたのですが、これは日産自
動車のビジネスドメインとはまったく関係ありませんので、我々の合弁事業からは外した
ということです。結果として日産自動車との合弁会社が継承したのは、自動車でしかも日
産自動車が見て活用できるという事業体をグルーピングして私どもの合弁会社に入れたと
いうことです。片方で取り残された、私どもの合弁会社に入らなかった事業はどうなった
かというと、あるいは閉鎖され、あるいは譲渡され、あるいは他の自動車メーカーへ統合
されていった訳ですね。このように外資との提携をすることで東風汽車有限公司という一
大コングロマリットの自動車事業における競争力を強化させていった。これが中国中央政
府の最初からの目論んでいた戦略であり、それを見事に日産との合弁会社設立の中で確実
に果たしていった。私どもの合弁会社を作った後で、ホンダさんとの新たな合弁会社を作
られるなどして、引き続きこの戦略を強化・実行されている訳です。したがって他の中国
企業がどうなっているか分かりませんが、私どもが関わりを持ったこの会社は極めて戦略
的で、中国中央政府の指導に従って粘り強く戦略を実行しているということです。
一般的にディールのリスク評価をするのですが、どういう視点で考えるかというと、要
するに2種類あります。一つは外的要因、もう一つは内的要因です。外的というのは誰で
も受けるリスクで、それをあれこれ言ってもしょうがないだろう、例えば中国に出る誰も
が一様に受けるリスクならば、そこにこだわる必要はない。無視しろということではない
し過小評価しろということでもありませんが、そこを判断の基準にするなというのが我々
の考え方です。もちろん一般的な市場の規則、動向とか基準については十分調査しますけ
れど、それをもって判断することはしません、むしろこっち(内的要因)のターゲットの
事業、カウンターパートの考えていること、こういうものが我々の競争力上に影響を与え
るものですから、ここを入念にチェックする、ということです。ここで発見した事実であ
るとか、ここで考えられた事柄がこの後の買収監査であるとかビジネスプランンの作成で
あるとかバリュエーションのところに大きく影響していきます。が、冒頭に申し上げたと
おり、問題ということではなく、こういう(次の)事柄が、私どもが関心をもって注意を
向けたことです。1番目は会社が非常に多くあるということです。それから社会主義国家
は計画経済ですから人員の配置とか統制経済の影響がどの程度残っているのか。それから
会社の人員の大きさです。その他の外資合弁の存在、それから経営制度としてどういうこ
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とを考えているのか、私どもとの交渉を進めながら同時並行的に行われる経営制度の変更
がどうなっているのか、経営権の持ち方であるとか、ノンコア事業のリストラについてコ
ストがどの位で誰が費用を払うのか。財務、税務、労務あたりで特に注意を引いたのがこ
のあたりです。この会社に特有な退職制度などがありますのでプラスアルファのコストが
ある。それから出資比率、事業価値の評価こういうものをどうするのか。我々が理解して
いるところで会計基準が複数ある、これをどうするのか。会社の形態によって私どもと勘
定体系が違っているんです。それをどうやって合わせるのか。資産価値が過去の再編の度
に評価替えされている、これをどうするのか。労務問題は人の地位・職位継承の問題とか
賃金制度の問題で、人事制度や体系は欧米企業とは大きく違っている。そのために退職時
の手当とか人の扱いで十分注意しなければいけない問題がいくつかあった、ということで
す。法務は契約に書くこととか交渉のし方、実際の資産の確認のし方とかそういうことに
ついて、だいぶ通常のやりかたとは異なっていた。環境問題は、どの程度環境問題を気に
して事業を運営しているのか。
最後のディールの教訓ですが、交渉体制はきちんとつくらなくてはいけないですが、実
際の経験が一番有効です。というのは教科書には書いてないことが出てきます。それに対
してアドリブで対応出来るような実践経験がないといけない。それから言葉は、中国ディ
ールの場合、中国語と日本語と英語と3つ使ってやりましたものですから、ものすごく複
雑になりましたが、少なくとも契約交渉に耐えうる言葉の使い手がいなければダメです。
それから交渉スキルがないといけない。加えて体力がないといけません。欧米でも時差の
問題がありますが、少なくとも中国との交渉ではビザ取得の関係がありなかなか相手は日
本に来られない。我々が行かなければならない。上海や北京だといいんですがそれから先
の内陸部に来いと言われると一日がかりになり担当者は疲弊する訳です、体力を消耗しま
す。買収監査、これは大変で、対象事業の地域が広がるのでものすごい数の人員が必要で
すしそのための体制も十分整える必要があります。事業戦略の企画を理解していることと
これらの専門領域(法務、税務、財務、会計、労務、環境)に関するある程度の知識と見
識に加えて相手方が何を考えているのか分からないとM&Aのディールはなかなか難しい。
この辺が必須要素ではないか思います。最後に重要なことはM&Aのクロージングのサイ
ニングをして資金の振込みが終わった後、半年くらいのいわゆるポスト M&A の作業です。
M&Aは総合格闘技と思います。以上です。
(座長)
どうも有難うございました。非常に興味深いお話で非常に参考になったと思い
ますが、自由にご意見、ご質問をお願いしたいと思います。
○
M&Aは総合格闘技そのものとのお話、そのとおりだと思いますが、半年くらいが一
番大切だとおっしゃったのですが、具体的にはどういう半年を過ごされたのか、差し支え
7
ない範囲で教えていただければと思うのが一つと、もう一つは私たち、V字回復といいま
すと日産の例は古典のような形で語られているんですが、資産がいったんシュリンクして
利益率が上がっていくという形を思い浮かべるんですが、失敗している例は資産はシュリ
ンクしていくんですが次の利益があがるところが出来ないところがものすごく多い。それ
が出来ているのが日産だと理解しているんですが、他では出来なくて日産が出来たという
その理由は、中にいらっしゃる方としてどういうことだったのか、という2点をお聞きで
きればと思います。
○
最初のご質問、6ヶ月何をやったのかというとですが、1つはいろいろなことを相手
と交渉して妥結、合意している訳ですが、それを着実に実務の中へ展開しきるということ
です。経験された方は分かると思いますが、M&Aのディールは一部の限られた人間が関
与しますのでそこで論議されたこと、相手と合意したこと、問題として分かったことなど
が他の人間に伝わらないことが多くあります。シェア出来てないので、せっかく相手とこ
こまで合意しているのに、契約書に調印した後で全部消えてしまうということです。伝道
者のようにこの契約のこの条文はこういう背景でこうなっている、だからこう理解してく
れ、という翻訳をいろいろな部署の人間にした訳です。そうでないと契約書しか見ない人
間や、その日から初めて合弁会社についての仕事を始めた人間は、自分の勝手な理解で相
手に接しようとする、あるいは仕事をしようとする。それを避けるために折角長い間協議
して決めた事を、背景を含めて丁寧に関係部署へ説明していくということです。それから
やはり、最終契約書に調印しても課題が残っています。例えば積み残しや後回しにした課
題もあるんです。あと考えようとしたものであれば、考えなければいけません。そういう
フォローアップ作業が必要です。
○
伝道師部隊というのを作ってやったのですか。
○
そういう専門部署を残すべきだということを私は提案していました。2点目はM&A
と直接関係ないので何とも言い難し、なんですが。何で失敗されるんでしょうかね。分か
りません。けっして私どもが他と違っているとか、大変成功したとはあまり思ってはいま
せん。と言いますのはベンチマークは過去の自分ではないんですよ。我々のベンチマーク
はやはり世界のグローバルメーカーですから、それと比べるとやはり資産効率は未だ悪い
ですね。PLは良いかもしれませんが資産効率は悪いですね。まだまだ終わっていないと
思っています。
○手前のほうの売却をすることに関する質問なんですけれど、フィナンシャルバイヤーを
使うときとMBOっぽいことをやるときがあり、MBOっぽいことをやるときにお前らM
BOをやって大丈夫なのか、ということがありましたが、純粋にフィナンシャルなディー
8
ルとして高く買ってくれるのが一番良いというと立場に立つのか、その後経営大丈夫なの
かしらということまで、要するに事業がちゃんと持つのかという、言い換えるとストラテ
ジックバイヤーのほうがはるかに安心感があり、経営母体もしっかりしていますね。その
辺どうですか。さっきのイグジットの問題も絡んでくると思いますが。
○
MBOは、全部のMBOが我どものOBが社長になっている会社であって、かつOB
がMBO後の経営トップになるということでしたので、安心感があったということ。それ
から一般的に私どもの関連会社を売却するときには、いくつかのディールの条件の中に必
ず取引の安定化に関するなんらかの合意があります。それは双方向の要求であり合意です。
私どももある日突然取引先に日産には収めないよとされると困るし、向こうもある日突然
日産からもう発注しないとされると困るんで、お互いに非常に微妙なバランスなんですが、
過度な制約は受けないけれど、できるだけ自分の事業が安定できるような合意をするので
す。その合意があるものですから大部分の場合あまり心配することはないんです。
○
もう一点、ストラテジックとフィナンシャルが競合することがありますか。その場合
にプライスの問題なんですが、他の付帯条件、瑕疵担保責任とかイコールとした場合に、
我々が扱った例ではフィナンシャルのほうが高い場合があるんですよ。日産では特にそん
なことはありませんでしたか。
○
コンペになる訳ですが、フィナンシャルバイヤーの場合は、最初は必ず高いですね。(留
保条件がついていて、額面通りには、信じませんが)。
○
クロージングでも高い場合があるんですか。
○
途中で絞り込みますので、結果として最後までコンペとなった場合はないんです。
○
悩ましいのは、ビジネスのネイチャーによるんでしょうけれど、ストラデジックバイ
ヤーが買う場合にカニバリゼーションの問題が起きたりするケースがあること、例えば分
かり易く言うと小売業なんかであるんですが、自分の既存店舗があるんで使ってしまうバ
イヤーと使わないバイヤーとある。フィナンシャルバイヤーは使わないですよね、間違い
なく。あるいは違うタイプの攻略のときに使うんですよ。同業の人に使っているんです。
そうすると価格が逆転するケースで、そういうことがなかったのかな、もしあったらどう
したのか、どういう風に悩んだのかなと思いまして。
○
思い起こしているんですが、例えば部品メーカーであったりサービス会社であったり
しても、それらが取り扱っている商品群というのは固有なんです。その会社を取ったから
9
といって、じゃあ直ちにTさん,Hさんとぶつかるということにはならないんですね。や
はりメインの取引先は私どもになるんですね。3年、4年たったらどうなるかわかりませ
ん。シナジーを彼らは追求しますから。そこから先はそちらのご判断ということで考えて
います。
○
有難うございました。
(事務局)
一点基本的な質問をさせてください。10 年前の経験ですと中国に進出すると
きは 100 投資するのであれば 100 お金を持っていく、向こうで 100 お金を借りて、いざと
なったら、両方倒して帰ってくるというのが基本的な考え方だったと聞いていますが、リ
スクが非常に高い場合、最近日本企業が中国に出て行くときまさにまさにそういうリーガ
ルなフレームワークは契約の塊ですが、非常にリスクが高いと思うのですが、その点どの
ように解決されているのか。
○
リスクはまだ発生していない訳で、解決のしようがないのですがまだリスクの真只中
だと思っています。いくつかシナリオを検討する中で、起こりうる状態についてどうする
のかをいろいろ考えた結果、そもそも中国というのは社会主義国家なんだということに落
ち着いた訳です。財産権が保証されていないんですね。そういう国に投資すること自体最
初のリスクであって、もう川を越えているんだから、いまさら何を言うのかというのが最
後の我々の雰囲気であったのです。どの合弁契約もそうなんですが、合弁契約は当事者の
合意では解約できず、中央政府の承認がないと出来ないんです。だから行くも帰るも全部
中国政府の認可が必要なんです。ということは自分の全てを捧げ将来を委ねているという
ことになるんだから、あまり過剰に考えるのは如何なものか。そうはいってもテクニカル
には、できるだけリスク エクスポージャーを下げるとか、持ち込む資金量を減らすとかや
る訳ですけれども、最後の最後のところは、
「もう取ってしまったリスク」ということです。
(座長)
○
はい、どうぞ
一点だけ。マニアックな質問で恐縮ですが、国営企業との合弁でいらっしゃる訳です
が、中国の国営企業の場合、人事権は全て共産党にある訳ですが、作られた合弁企業につ
いての人事権はどういう形、中国側の人事権はどういう形にされているんですか。総経理
の他に共産党の方がいらして、その場合共産党のほうが偉くてそちらが全部人事権を持っ
ているですが、合弁で作られた新しい有限公司のほうには党から派遣された方はいらっし
ゃらない形になるんですか。
○
ちょっと違っていまして、合弁会社の人事権は中国の共産党中央が掌握しているとい
10
うではなくて、国有企業はそうですが、我々は外資合弁企業ですから、結果として支配系
列が二重になった、縦に2本入ったとお考えになったほうがいいですね。例えばポジショ
ンの置き方もそれぞれ段階毎の党支部なり党本部があるのですが、そこの書記、日本でい
えば書記長ですが、書記長はそれに該当する会社組織の部門の長と同等なんです。ですか
ら社長とその企業体の党組織のトップは同等です。こういうタスキがけ人事を彼等は想定
しているのですが、私どもが合意したのは、会社経営は党の系列とは違うよ、ここは我々
の董事会なり経営執行部で人事は決めるんだよ、党の人事が逆に会社から管理されたら困
るでしょうと、お互いに介入するのは止めましょうというような理屈を言って、結果とし
て彼等も外資合弁の中で党のロジックだけを追求することは差し控えようと思っていたよ
うです。あまり問題なく、中方の中や党組織の中でどう議論しているかまったく知りませ
んが、少なくとも会社の経営幹部の任命などについて、党の決定によって何かが影響され
るということにはなっていません。
(座長)
次の議題もありますので、まだご質問もあろうかと思いますが、時間の関係で
議題2のほうに移らせていただきます。
次は「債権放棄とデット・エクイティー・スワップ(DES)」の話でありまして、服部
委員からプレゼンテーションをお願いします。
(服部委員)
それではお話させていただきます。この話題は、今、私を含んで大学でい
ろいろと議論しているところでございまして、完全に結論に達している訳ではありません
ので、皆さんの議論のたたき台と言いますか、お考えをぜひインプットしていただけたら
と思って持ってまいった話でございます。
債権放棄でデット・エクイティー・スワップ(DES)が、最近非常に事業再生という言葉と
M&A という言葉と並んで、非常にいろんなところで出ます。実際に行われている訳ですが、
先に、どういうことを最後に言いたいかということを言いますと、日本でデット・エクイ
ティー・スワップは結構行なわれていますが、通常、債権の額面でやります。100 億円の額
面の債権をデット・エクイティー・スワップして、100 億円の相当の株式に変えます。これ
がもしかするとまずいのではないかということを考えている訳です。デット・エクイティ
ー・スワップは額面デット・エクイティー・スワップというのが今言ったやり方です。債
権というのは倒産が近くなれば、当然、価値は額面を割ってきている訳です。100 億円の
DES は 100 億円の価値はないわけです。もしかしたら、50 億円かも知れない。日本の場合、
ハイ・イールド・ボンドのマーケットが、あまりないので正確な市場価値を測定すること
は必ずしも容易ではありませんけれども、それでも銀行が不良債権をバルク・セールした
りもしていますので、ある程度は想定が出来ます。時価が今の債権者が保有している価値
だから、もし、スワップするのなら時価でやらないとまずいのではないかという疑問から
話は出発しております。そもそも債権放棄は世の中でいっぱい行われていま。株式会社の
11
資金は大きく分けて株と借入金がある。このふたつの資金に共通するのは有限責任という
ことで、異なるのは株主の責任は先にくる。債権者は株主価値がゼロになってからの先の
責任を負うことが一応基本です。実際、過去にいっぱい会社更生、民事再生などの法的整
理に移行した事業再生の案件というのは、まず、株主責任が 100%問われていることがほと
んどです。ですから、長銀、日債銀、足利銀行はそうだった訳です。りそな銀行はそうで
はありませんが、いろんな理由があると思いますが、あるいは山一證券の自主廃業なんか
もそうだった訳です。しかし最近の債権放棄というのは株主が株主責任を問われる前に債
権放棄というのを結構しています。逆に銀行が債権放棄すると株価が上がったりしていま
す。「どうしてなんだろう?」、そこから疑問がスタートしています。
次のページですが、学生にブレーンストーミングさせてみまして、
「どういう理由だろう」
と問題を投げかけてみましたら、いろんな意見が出てきます。それを列記しているのが次
の 2 ページですが、大きく分けると経済的に不合理なことが起きているという説と、いや、
それが経済的に実は合理的なんだという説があります。経済的不合理性仮説、例えば、「金
融再生プログラムを実行するというお上の指示には逆らえない」、ほとんどあとはみんな同
じですが、「不良債権比率圧縮のために止むを得ずやっているんだ」とか、債権回収を優先
することでイメージダウンするから、それを避けているんだとか、そもそもディストレス
ド・シテュエーションにリスク管理体制がついていっていないという経済的に合理的では
ないけど、止むを得ずしているという考え方が一つ出てきます。
一方、合理的ではないかという説も出てきますが、基本的には法的整理で期待できるキ
ャッシュフローよりも私的整理で債権放棄に株主責任を問う前であっても応じた方が結果
として損失が少なくなるからそうするのではないか、というのが大勢の経済的合理性仮説
の方の主な考え方です。他にもいろいろあると思いますが、大体出てくるところはこんな
ところです。最後に変わったところで、実は銀行は債権者でありながら、深く経営に、メ
インバンクは関与しているから、あれは実質的には債権ではなくて、ディストレスド・シ
テュエーションで非常に強力な議決権が発生する、その代わり財与財産分配権が株式に劣
後する劣後株ではないかという奇抜な意見もあったりする訳ですが、これはもしかすると
本当は実態がこれに近いかもしれないが、法律の枠組み上そうはなっていないので、この
仮説で説明してしまうと議論が終わってしまうので、これと不合理性仮説はとりあえず置
いておきます。
合理的に説明できないかということで考えましたのが、次のページですが、飛ばしまし
て絵で見ていただいた方がよろしいかと思いますので、4 ページをご覧いただきたいのです
が、先程、すでに申し上げましたが、倒産が意識される段階にきますと、その会社の価値
はだんだん減っていく訳ですが、倒産が非常に強く意識される段階というのはエンタープ
ライズバリューが有利子負債の額面を下回った時だと思います。実質ベースの債務超過で
す。しかし、当然ながらトリプル A の時に発行された社債がだんだん格付けが下がってい
くと当然その社債の価値が下がっていきますから、それよりもずっと前の段階から債権の
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実質価値は額面を徐々に割ってきます。、ですから左側の絵は横軸に会社のエンタープライ
ズバリューをとりまして、縦軸にその会社の実際に測定できるとしてですが、マーケット
バリューとしてのエクイティバリューとデットバリューの合計を取ります。そうすると当
然 45 度の直線になる訳です。エンタープライズバリュー=エクイティーバリュー+デット
バリューです。ただしネットデットですけど。普通に考えますと債権額面がエンタープラ
イズバリューと等しくなるところまでは直線で右上がりの 45 度の線で上がっていって、エ
ンタープライズバリューが債権額面を超えたところから平らな方の薄い線になるというこ
とがデットバリューのペイオフカーブだというふうに教科書に書いてある訳ですが、実際
にはそうではなくて上に突の曲線状をデットバリューは動いていくのでしょう。この上に
突の曲線より上の部分がエクイティバリューなんでしょうということだと思います。とい
うことは今、債権額面が 100 の会社があるとして非常に倒産が意識される状況、すなわち、
例えば、エンタープライズバリューが 100 以下、ここでは 80 です。こういう状況の会社を
考えた時には、例えばその時、デットバリューはすでに 100 はとんでもなくて、60 くらい
しかないんでしょう。残りがエクイティバリューでエクイティバリューは、これはすでに
エンタープライズバリューが債権の額面を割っている訳ですから、言ってみればアウト・
オブ・ザ・マネーのオプションとしての価値しかないですが、株式にはオプション性があ
りますから、将来ターンアランドして価値が上がったら、倒産したらその可能性はなくな
りゼロになりますが、倒産しない限りアウト・オブ・ザ・マネーのオプションでもタイム
バリューがあるのでエクイティバリューかゼロでなくて、例えば 20 がついているのでしょ
う。合計で 80 のエンタープライズバリューがあるのでしょうね。こう考えますと結局その
倒産する以前の段階で債権者が株主責任を問う前にデット・エクイティー・スワップに応
じるということは、単に自分が持っている額面 100 の債権を例えば時価の 60 に評価替えし
ているにすぎないのではないかということが言えなくはない。これは一つの合理性の説明
ですが、しかし、考えて見ると、その銀行が自分の社内のブックで 100 の額面の債権を 60
と評価替えすることと、実際に 40 の債権放棄をしてマクシマムバリューを 60 にしてしま
うことは違うことです。そうすると、実際には何が起きているかというと、債権放棄を 40
しました、そうするとその瞬間にデットのバリューは額面が 60 になる訳ですから、価値は
60 以下になる訳です。上に突の曲線が左側のグラフから右側のグラフのようにその漸近線
が債権額面 100 に対して漸近するのではなく、新債権額面 60 に対して漸近していくデット
バリューカーブになるでしょう。だからそれは 60 以下でしょう。だから、エンタープライ
ズバリューが債権放棄によって、もし変わらないとするのならば、これは変わるかもしれ
ませんが、とりあえず変わらないとするのならば、エクイティーバリューは当然上がりま
す。20 プラスアルファになります。だから、債権放棄することによって株価が上がるとい
うことは理論的におかしくはないんです。債権放棄を株主責任を問う前にすることは、こ
れだけでは合理的だとは説明できていませんが、少なくとも債権放棄するだけでしたら、
債権者は損をしていますということが言えます。でもおそらく会社更生法にいった時の無
13
担保債権の一般的な配当率は 10%とか 20%くらいですから、それに比べたらマシだという
考え方がもしかしたらあるかもしれないということです。ここでもう一つ考えなくてはい
けないのはただ単に債権放棄するのではなくて、日本の銀行は、最近デット・エクイティ
ー・スワップ(DES)もしています。それも考えないと全体像が分からないのではなかという
ことで最後のページにとびまして 7 ページですが、今度はデット・エクイティー・スワッ
プ(DES)ということを考えてみましょう。これは簡単のために初期状態は先程2つのグラフ
の左側で見たようなマーケットバリューのエンタープライズバリューが 80、そのうち 60
がデットバリュー、20 がエクイティーバリューというような会社を考えます。この会社は
マーケットバリューで 80 ですが、ブックバリューでは総資産が 200 で、デットの額面が
100、エクイティーの額面が 100 というこういう状態だとします。こういう会社を債権者が
株主責任を問う前にデットの時価である 60 まで 40 の債権放棄をする代わりに 100 の債務
を全額デット・エクイティー・スワップ(DES)したとします。デット・エクイティー・スワ
ップ(DES)の仕方は2つ考えています。一つは上の額面でスワップする。もう1つは下の時
価の 60 でスワップする。まず、額面 DES ですけれども、額面で DES すると言うことはス
テップを分けると、債権者が 100 の TPA(第三者割当増資)をして、そのお金で債権を額
面で償還してもらうというのと同じです。TPA をする時にまたキャピタルストラクチャー
が変わるのでエンタープライズバリューが変わるのではないか、また WACC が変わるから
と、そうことを考えだすと凄く難しくなるので、エンタープライズバリューは今変わらな
いと仮定しますと、これは額面 DES というのはその DES に応じた部分については一切債
権放棄していないことになります。100 入れて 100 で返してもらっている訳ですから、TPA
プラス返済に過ぎない。そうするとそれをやった時に一番右の状態ですか、やっぱりマー
ケットバリューのエンタープライズバリューが 80 で、デットはゼロになっていますから、
エクイティーバリューは 80 です。80 のエクイティーバリューの持分は旧株主と債権者の間
でどのように分配されているかということを考えると有利発行は行わないという前提で、
時価の TPA をしているという前提ですが、それでも旧株主の持分は、債権者のエクイティ
ーが 100 入っていますから、もともと時価総額 20 のものに 100 のエクイティーが入ってい
ますから 120 分の 20 になります。それは 16.7%です。その価値はエクイティーバリュー80
ですから 13.3 になります。一方、債権者の価値は 66.6 で 60 を上回っています。だから額
面 DES だけを債権者がやると実は債権者は得します。時価 60 のものが瞬間に 66.6 になる
わけですから。しかもこれは株ですからアップサイドももちろんあります。そういうこと
になります。本当はどうすべきなのかを考えますと、どうも時価でデット・エクイティー・
スワップをやるべきではないかということですが、時価 DES は 100 の債権を放棄して 60
のエクイティーを持つ訳です。つまり、これを分解すると 40 を債権放棄してそれから
60TPA して 60 の返済を受ける。こういうことです。そういうことをしたとしてもエンター
プライズバリューが変わらないと仮定しますと、今度は 80 のエンタープライズバリューが
どのように分配されているかと言うと、60 と 20 で株主は損していません。デット・エクイ
14
ティー・スワップということについて限られたことで言いますと、日本は額面 DES しか行
われていません。そうでもないですか。
○
そうでもないです。
(服部委員) そうですか。額面の DES を銀行はいっぱいやっていますが、これは銀行が
儲かってしまうのではないかと、まずいのではないかと、儲かっていますよね。これにつ
いてデット・エクイティー・スワップというのは、今のところどのように商法上とか会計
処理とか税務上の処理については概ねルールが出来ていて、どうやればいいのかというこ
とは最初は手探りでしたが、最近はかなりはっきりしてきていますけど、そもそも論で銀
行が額面 DES をやることを許していいのであろうかということを考えると、この点に関し
て、もしかするとちゃんとルールを作らなくてはいけないということです。しかし実際に
は銀行が DES をやる時に一般的に何をやるかというと、ダイエーという会社がありまして、
今は冨山さんの所にありますが、その前に2回大きな債権放棄をやっていますが、あのよ
うな例をみると、例えば 2 回目の方は 4,000 億くらいと大きかったのですが、それでも駄
目でしたが、銀行は通常まず債権放棄をしています。単純な債権放棄を。で、加えてその
残りの一部分の債権について額面 DES をしています。もしそうだとすると、実は全体でと
らえると時価 DES をしているのかもしれない。つまり、債権放棄プラス DES をしている
訳ですから、4,000 億の債権を例えば 2,000 億放棄して、それから 1,000 億デット・エクイ
ティー・スワップしました。1,000 億のデット・エクイティー・スワップについては額面で
やったけど、それと別に 2,000 億債権放棄しています。というのは実は 4,000 億の債権を
2,000 億の時価で DES したのと、そのうち半分ですがしたとおなじですから、実はちゃん
とディスカウントされた DES なっているという考え方もあると思いますが、すべての銀行
による債権放棄が、あるいはデット・エクイティー・スワップがこのように行われている
かというと十分な債権放棄が無くデット・エクイティー・スワップが大きく行われている
ケースがあると思います。それは実はまずいのではないかということなのですが、いかが
でしょうか。
(座長)
はい、どうもありがとうございました。それではただいまのプレゼーテーショ
ンにつきましてご意見、ご質問お願いしたいと思います。
はい、どうぞ。
○
先程のプレゼーテーションは、例えば証券会社さんとか会計事務所さんがディールの
時に意見書を書くような、そういうような管理会計的な方の経済実質の話をされているの
か、それとも会計とか商法にも結びつくような話をされているのか、どちらのご趣旨なの
か教えて下さい。
15
○
これは言い方が難しいですが、こういう席で不適切な発言をしますけれども、銀行に
よる株主価値搾取が行われていると、言葉か適切どうかはわかりませんが、そういうこと
を指摘している訳でありまして、商法上問題があるというか、あるいは会計処理とか税務
上に問題があるということではありません。そうではなくてどちらかというとマーケット
バリューの正しい分配になっていないのでないかということで、突詰めれば、そういうデ
ット・エクイティー・スワップは新株発行だから、取締役会が授権株の範囲内で決議しな
いと出来ないので、取締役の責任が問われるという意味では商法上の問題はありますが、
もうちょっとその取締役の個人的責任を問うべきだということよりは、社会全体としてデ
ット・エクイティー・スワップのやり方について正しい市場価値の分配がおこなわれる DRS
を作っていかなければいけないという意味です。ですから、商法とか特定の法律に関する
問題ではないです。
○
ありがとうございます。では、あとで反論させていただきます。
○
ちょっといいですが。この絵で言うと 4 ページ目ですか、機構でもやっている、機構
の案件でも DES は使っています。その場合、今、服部先生がおっしゃったとおりで。うち
の場合、エンタープライズバリューと債権額面 20 下がる場合、20 について再記録させてお
きます。残った分に関して、我々の言葉で実 DRS と言いますが、空 DES、実 DES という
言葉を流行らせていますが、業界の中では。中身がちゃんと埋まっていない額面 DES のこ
とを空 DES、空 DES と呼んで、いろいろ言ったせいで、実は銀行からに凄くにらめられ
ましたが、実はおっしゃるメカニズムがあって、空 DES は銀行儲かります。
○
ですよね。
○
経済学的に絶対儲かります。実 DES にしようということで、まず、債権放棄を十分に
フェアバリューのところまでやらせてから、その先、一方でアップサイドをとる権利が銀
行に留保されていい訳です。であれば時価ベースの DES はやってもいいのです。そういう
意味で時価ベースの DES をやって、場合によっては会社の価値が上に上がればオプション
バリューですから、そういうふうに取り戻せるチャンスを銀行が望むのであれば留保しま
しょうという打ち合わせ金も組んでいます。実は空 DES でもいいのではないかという議論
も一方であります。取締役が認めるならいいのでないか、総会が文句言わないならいいの
ではないかという議論はありますが、実は空 DES には大変大きな弊害があって、例えば、
ダイエーがなぜ新規資金の調達が出来なかったのかというと、あれは空 DES のせいです。
空 DES の特に銀行の場合優先株になります。優先株額面が物凄く巨大な金額でBSに残り
ます。あれがある状態で基本的に新規資金の調達に応じる人は誰もいません。要は見かけ
16
のエンタープライズバリューはオーバーシュートの状態が解消できなくなります。実は会
社の再生というには日産さんがまさしくそうであったようにほとんどの場合フレッシュマ
ネーを必要とします。そうするとフレッシュマネーが新たに外から入ってくるという議論
抜きで、もし再生事業とかディストレイド・カンパニーの事業再生を考えるのならばニュ
ートラルな議論ですが、ほとんど場合にはフレッシュマネーが必要です。開発投資であっ
たりなんなり。そうすると今、特に銀行がやっている優先株発行は物凄く新規マネーが入
りにくい状況を作ってしまいます。大体、普通株には転換権がついていますから、これら
は同時に株価を押下げる潜在的強烈なプレッシャーになります。ですから、株価を押下げ
る潜在的強烈なプレッシャーがあり、なおかつ優先株という最終的に会社が潰れた時は優
先権がありますから、その状態で通常のエクイティーファイナンスがまずできなくなりま
す。そうすると空 DES を大量にやってしまった会社は戦略が1つしかなくて、
「春待ち型」
戦略をとるしかない。春待ち型でじっと投資を抑えて。
○
「春待ち型」?
○
要は投資を抑えてコストを抑えてじっと暖かい春が来るのを待つという戦略、戦略、
選択を奪われでしまうということです。それは今度は借手の問題。今度市場の問題で言う
と、これは実はあっちこっちで起き始めていますが、我々もいくつかの案件で心配してい
ますが、優先株の転換期が近づいてきますと、何が起きるかと言うと、実は三菱自動車で
もそういうことが起きていますが、ライブドアでもすでに行われていますが、強烈な空売
りをかけられます。かつ、それを解消しようと思って、例えばよく使う手が CB を発行して
優先株を償却しようとします。必ず CB の転換条件というのはその場合、必ずリーマンは典
型的にまったくライブドア同じ条件をつけますから、一方でリーマンは同時に空売りをバ
ンバンかけます。誰が犠牲になるかというと、何も知らずに普通に例えばライブドアの株
を持っている一般株主であるとか、これは実際にケンウッドにもおきましたが、ケンウッ
ドの一般株主がそこでボコボコにやられます。この状況によってまったく情報は対称であ
りませんから、世は一般株主の犠牲の上にゆがんだ市場、結果的には是正されますが、プ
ロが儲かって、外国人が儲かって、一般の日本人の株主が損するというがあっちこっち、
これから実はいっぱい優先株が残っていますから、空 DES かけまくっていっぱい優先株が
残っていますから、これからそれがすごく起きてくる可能性があります。これを要するに
放置していいのですかという問題も同時にあって、そうなってくると単に純粋に経済学的
な問題でいいのか、僕は規制という言葉好きではありませんが、ちょっと対策を考えた方
がいいのでないのかと自分たちでやっていて思っています。
○
重要な問題提起だと思っています。
17
服部さんの 7 ページの図式ですが、経済学的に見ると初期状態のところの株主につい
○
て非合理性か情報の非対称性がある訳ですね。つまり、空 DES というか額面 DES を行わ
れたら価値が搾取されて減ってしまう訳ですから、現実にはどう説明されるのでしょうか。
つまり、合理的だと言われながら、ここのモデルは合理的でないような気がしますが、そ
の部分について、その初期状態の株主の予想についてですね。
○
なんでこういうことが行われるかということについてですね、突き詰めると。
○
また、もともと、予想してからもっと株価が低いはずですよね。
○
額面 DES が行われることを察知した段階で株価が下がるべきだということはそうなん
でしょう。13.3 まで下がるべきなんでしょうけど、でもここで何度か申し上げたようにエ
ンタープライズバリューが普遍という仮定をおきましたが、キャピタルストラクチャーが
かわりますから、WACCは一般的には上がります。エクイティによりますから。この場
合実はエクイティコストはデットコストより安かったりするかもしれませんから、もしか
するとワックは下がるかもしれないともいえます。TPA はニューマネーは入っていないの
で、キャッシュフローがかわるということは考えなくてもいいと思います。ただ倒産確率
は下がるので、そこでやっぱりエンタープライズバリューが上がるのではないかといえま
す。
○
上がっています。
○
結局、株価は上がっています。世の中では。13.3 というのは表面化しないで 20 くらい
とかもっと 25 くらいになっているので株主が騒がないですが、でも上がらなくても債権者
は 66.6 と得をしています。しかも株主になってアップサイドも持っています。たとえ 20
の元の株主が 13.3 ではなくて 21 くらいになっていて損してなくても債権者はもっと得を
しています。
○
ちょっと申し上げると、株式の普通株主からみると特に銀行がやる場合ほとんどです。
銀行は基本的に普通株状態でこんなに大量に持てないという前提がありますから、持ち続
けられないという前提がありますので、どうせどこかで償還するという考える場合が多い
です。株主の合理的期待としては。そうするとある種永久劣後債とみてしまえば、今の議
論で言ったら株価は上がっておかしくないんです。そうすると株価の普通株の形成はその
瞬間において永久劣後債的に株価とみなされて株価の形成が行われて、銀行側から見てい
る景色としては優先株発行する時に証券会社にバリュエーションを出しますが、証券会社
がどのようなバリュエーションを出すかというと、転換権価値というものを物凄く高く評
18
価します。転換権の場所もついてきますから、オプションバリューというのは実際の株価、
それは株価のバラティリティで決まります。大体こういう会社の株価というのは転換条件
にもよりますが、一般的にボラティリティが高いですから、結構オプションバリューがつ
いてしまいます。そうすると銀行の方は銀行の空 DES でも結構なバランスシート、自分の
会社のバランスシートを残すことが出来て、こっち側はこっち側で株が下がらないから、
どっちも瞬間的にウィンウィンな、ひょっとすると虚構の世界ですが、ウィンウィンな虚
構な世界が築けます。それがばれてしまうのは償還期限が近づいてきて、そろそろリーマ
ンあたりが狙いをつけるあたりで、その虚構は崩壊してきますが、それまで 3 年か 5 年タ
ームで一瞬の宴に酔えるそのような構造があります。
○
実際には銀行は DES と言っても普通株は持てないから、転換権のついた優先株にする
ことが多くて、その転換権にはオプションバリューがあるから第三者の評価も得てそれを
オプションバリュー込みでブックに載せるから銀行はバランスシートが痛まない。
○
そうです。ブラック・ショールズ・プライシングモデルのベースでやった場合には、
完全にその転換したことがプライス低下になっていて、それ自体株価の全体をディストー
トしない株価ではじきます。
○
なるほど。
○
そうすると例えば我々が行った子○建設で、△銀行の持っていた優先株は全部こうす
ると、△は 70%のシェアを持ってしまいます。そうなってしまった場合もともとの株価を
維持できる訳がないです。これは合成の誤謬なのですが、株価の計算は今ある株価とボラ
ティリティを前提に△の優先株は評価されていますから結構高い値段がつきます。という
マジックがおきまして、実は結構、△と大喧嘩になりまして、どう大喧嘩になったか言い
ますと、△は一生懸命にどっかの専門のバリエーションの機関と弁護士からフェアバリュ
ーをとっていて、このうちの優先株は一株当たり 1,500 円ですと頑張ります。こっちはこ
っちで「あんたそれ全部転換したらどうなるの、市場は」と今の株価になる訳がないだろ
うという話になって随分もめました。そういうことが現実に結構おきます。
○
まず、服部委員のプレゼンと関係ないところからお話しますと、デット・エクイティ・
スワップ(DES)で券面学説をとると、フレッシュマネーも入れていないし、あの実力不相応
の貸借対照表の右の資本の部分が膨らんで、あれがある意味粉飾っぽいことは事実ですが、
それは左側の粉飾と見合っていて、つまりデット・エクイティ・スワップするような会社
というのは左側の資産が痛みまくっていますが、それは時価評価してきちんと実力に見合
った数字するような、これは会計ルールの話ですが、そういう手段が日本ではすごく限ら
19
れていますので、要するに2回嘘をついて帳尻を合わせているところがありまして、あれ
がもしも民事再生とか会社更生ですと、申し立て時だったか、開始決定時だったか忘れま
したか、確か開始決定時の時を基準して、貸借対照表の右も左もきちんと時価評価やり直
しますから、だから再生機構さんが言っていることは、ほぼそれと同じで、左側がそれが
出来るのではあれば、つまり資産圧縮出来るのであれば、右が時価でやるのが絶対よくて、
それをしないとフレッシュマネーの第2段階の供与が出来ないので、そこまで出来るのな
ら私は大賛成で、それでなくて今は倒産手続き開始するとか再生機構入りをするという条
件がないと、左側の圧縮が会計上ルール難しい時に右側だけ嘘をつくのをやめてしまうと、
無意味に債務免除利益が発生してしまって会計上も損益表示がゆがみますし、今の日本の
税制と会計のリンクのあり方ですと、絶対税金が発生してそこを抜くのが難しいと思いま
すので、ですから何が理想かというのはたぶん非常に近いところがありますが、現在の会
計、税制を前提にすると、当面は券面でいかざるを得ないと、前半です。
後半は、ここで論じられたあの議論に対する私の素朴な感想ですが、あの負債が 100 あ
りますが、エンタープライズバリューが 80 しかありませんが、でもマーケットバリューを
見ると負債が 60 でエクイティが 20 と言うのが、一番最後の 7 ページ左側に書いてある M
Vマーケットバリューの方の図でありまして、あの確かに株価とか形成されているマーケ
ットを前提にするとまさしく現状このとおりですが、そして DES をやると右端になって、
なんか銀行が得しているのではないかと計算上そのとおりですが、左端のそのエンタープ
ライズバリューが 80 しかなくて銀行は 100 の券面債権もっているのにあの 60 の価値しか
認められていないというか、株価が 20 ついているということが凄く間違っていまして、
○
そんなことはないと思います。
○
たぶんオプションで説明出来るような理由でそうなっているだけではなくて、非常に
非合理的に形成されていてここについては、正しい、要するに 80、ゼロになるべきだと私
言っている訳じゃありませんが、正しい価値と違う形で今はマーケットが形成されている
ということが私の印象で、その実際にはその既存の株主を守るために銀行に対して現在の
会社取締役、取締役会というのは、交渉した上でここだったら仕方がないという値段を出
すのが現在の商法の建前なので、アームズレングスの中で取締役会でぎりぎりまで頑張っ
てそれでしょうがないという結果が右端になったなら、私はそれは商法的に言うと既存株
主が害されて銀行が得したと思わないですし、そもそも銀行が利得したかどうかという点
でいうと左側のような 60、20 になっている現状があまり経済的に合理的ではなくて、ちょ
っと話がそれて恐縮ですが、一番割り切った議論で言うと債権者が全部とって、それも債
権者が例えば担保権を持っている人が全部とってというふうに優先順位を非常にきちんと
きって、それを満たさないと下の人には 1 円もやらないという絶対優先、アブソリュート
プライオリティーの考え方も一方ではあります、日本はそれの対極にあって優先順位がよ
20
くわからないのですが、日本は優先順位がよくわからなくて、何でもかんでもメインバン
クに全部押し付けるというふうにプレイヤーが行動していますので、結局各プレイヤーが
それぞれ例えば銀行の担当者がいろいろ出てきた時にそれぞれまたさらに複雑なことにエ
ージェンシーコストを抱えまして、自分の所属している組織の利益を最大化するよりもな
んか組織の中で出世するためにというふうなものも絡んでしまいまして、何を言いたいか
と言いますと、プライオリティがはっきりしないルールのために物凄く事業再生が先送り、
先送りされていまして、私は 7 ページの左下の債権が 60 でエクイティバリューが 20 とい
う状態を右端のようにエクイティが 66.6 になる訳ですから、こっちに向けるような制度を
たくさん用意していて先送りをなるべくさせないというような方が現在の日本の課題だと
思います。ちょっとしゃべりすぎましたけど、方向感としては正反対に近いという印象を
持っていることだけを申させて下さい。
○
まず、バランスを欠いているじゃないかという最初の話ですが、それはそういう面も
あると思いますが、実際には先程申し上げたように債権放棄がおこなわれた上でデット・
エクイティ・スワップがおこなわれているケースが結構多い。その時、債権放棄がかなり
の大きな金額で、例えばダイエーの第 2 回目の時も 2002 年、かなり大きな債権放棄 2,000
億位の優先株かな?その位だったと思いますが、かなり大きな債権放棄がおこなわれていま
すが、それはその会社がそれだけ痛んできていて過去の五年の累損の繰越税務損失で課税
所得を生まない範囲内でやっているはずです。ですから、時価 DES をやると会社に債権債
務免除益が立って、課税になってまずいからゆがんでいる額面 DES でいいというのは違う
のではないかと言うのが私の一つ目に対する意見です。
それから、2つ目の、これは説明が不足だったかも知れませんが、エンタープライズバ
リューが 80 というところからスタートしているのではないのです。エクイティバリューと
デットバリューとがそれぞれ個別にマーケットバリューの測定ができるという仮定をおい
たのです。ですからエクイティバリューが 20 というのは間違っているという仮定をおいて
しまうと議論は最初から成立しません。
○
20、60 のというエンタープライズバリュー・・・
○
という前提にたっています。そういうことが起きるか起き得ないかを考えると、それ
は起き得ると考えていいと思います。実際の世の中では 20 位であるべきなのが倒産しそう
なのにこれが 50 とか 100 になっているから問題だ、ということはあります。それはありま
すけど、この議論の 20、60 というのは一応測定出来るとして、要するに 20%アウトオブ
マネーのオプションに 20 の値段がつくということは、それはオプションバリューの常識に
から十分あります。そういう前提でもおかしいと言っているので、前提を否定しなくとも
この議論は一応成立します。
21
最後の話はそういうことでしょうね。ある程度は・・・(笑い)
○
私あんまり強くないのでちょっと見当違いの話でしたら許していただきたいのですが、
だいぶ前に再生機構が出来る前に聞いた話です。DES というのは非メインの金融機関に放
棄してもらうために使うのですと聞いたことがあります。メインの方がだいぶ放棄します
から、ただ、非メインの方がついてこないので DES を出すのでということを言われていた
方がいて、その場合、金融機関全体としては実は合理的なことになっていますが、非メイ
ンの方が放棄させていただくためにその額面 DES は使われているということはあるのでし
ょうか。
○
非メインの部分は産業再生機構が登場すると非メインの部分を産業再生機構が買って
下さるので、
○
その前ですね。実際には非メインは地銀さんとか信金、信組さんです。過去の事案で
地銀レベルの銀行、信金、信組でそうやっているケースは実はあんまりないです。多くな
いです。むしろうちの案件でこれは冗談っぽい話になりますが、ある地銀さんが一度うち
も DES をやってみたいと、ただ、その時価 DES か空 DES かといういろいろ難しい問題が
あると聞いていましたので、再生機構の方でバリュエーションしてもらって、金融当局か
らも税務署からも会計事務所からも文句言われない DES をいっぺんやってみたいので、や
った事案が実はありました。これは結構有力地銀です。そのくらいの状況なので、実はそ
んなに頻繁に DES というのは非メインの方では使われていなくて、むしろ典型的なのはメ
インが債権放棄をする訳ですが、さっきおっしゃったとおりで実務的に考えた時に、10 億
も 20 億も物凄いお金かけて時間かけて大デューデリジェンスをやったら、例えば○でも
4000 億円分の損を見つけられます。ここは実務的な問題になってしまいます。通常の場合
に例えばメインバンクがある会社に貸していて、ある自動車会社貸していて、ひょっとし
たら 2、3000 億円債務超過あると思っていても、それだけの確実な税務控除取れるだけの
大デューデリジェンスまでやって、凄い時間もお金も人もかかるし、その会社にはえらい
迷惑かけるし、大変ですよね、デューデリジェンスかけてまで。そうすると営業の方にも
影響が出ますので、そんなことをやってまでも、その間に信用不安をきたしますので、そ
こまでやって税務上の損を明らかに取れるようにして、税務署とも調整して、その挙句に
債権放棄するというのは凄く大変なことです。現実問題として。なので、むしろさっき先
生がおっしゃったようにどっちかというと DES でやっちゃおうかなというふうになってき
たという方が私は事案として多いような気がします。これは実務的な議論です。
○
ですよね。現実・・・
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○
一つは来年度の税制改正で、確かガイドラインがあっても一定の手続を減れば評価損
をたてられる資産という税制改正が一応去年の 12 月に決まっています。今その手続を銀行
界と税務当局の間で調整中というのが一点ございます。
それから、先程の議論で、20、60 の議論見て私も眼を白黒しましたが、実はたぶんその
銀行がなんでこんな状態で債権放棄に陥るんだろう、非常に不合理ということから見るし
かないという発想だと思いますが、銀行はよく分かっていて債務超過ですが、ある程度債
権放棄すればそれは元気になって、自分は債権価値が上がるから法的整理よりましだとい
うことで債権放棄しているのだろうと思います。でなければそもそも法的整理して回収し
た方が安いというのが普通の考え方であります。実は公的にもこういう制度がありまして、
債務超過の銀行を国が国有化する時には、既存株主の評価はゼロにします。つまり既存株
主には一切お金を渡さないで株を消滅させて銀行を接収します。従って、現行法上はこの
60、20 という議論はあり得ないのであって、80 対 0 です。それが法律の建前になっている。
○
法的整理にいくよりも私的整理で債権放棄に応じた方のトータルリターンが高いから
やるんだろうということは私も賛成です。そうだと思います。それに何も問題はないです。
ただ、その時に額面 DES を、なんて言うか、どさくさにまぎれてやると儲かっていますと
いうことを言いたいだけです。
(座長)
いろいろ議論が。金銭債権に関する法律論としては、金銭債権というものは必
ず名目と実質の価値はずれる訳です。法律的には原則は名目主義というものというのがと
らえられていて、もしその価値に増減に対応するためにはその対応の条項をいれるという
インデックスクローズとか、特にインフレが盛んだった時代にはその名目価値と実施価値
を合致させるためにそういうクローズを契約上の中に入れて、それに対応しようというこ
とをやって初めて対応が出来るということが法律の基本的な均整債権に対する考え方です。
従ってその実質に合致させるような条項が金銭債権の条項に入っていないと、当然、法律
上額面から時価で評価するということは法律的にはワンクッション必要だろうということ
があるので、だから、対応債権者というか債務者の方ですが怠たっている。上がる場合は
債権者が有利でしょうから、何らかの契約上の対応がない場合に当然に時価でいけるとい
うことにならないというのが法律的に金銭債権との問題はそうなのではないかと思います。
○
ある法律論と経済的議論とのかみ合わせは方法論としてちょっと思うのですが、株主
は実は増資をしてそのお金で債権を返すというオプションを事実上いつでも持っています。
期限の放棄は出来る訳ですから。そう考えると例えば、会社がディスレストになっていま
すと言う時に一方で債権者は、さっきの議論でいくと、ある意味法的制度を申し立てるオ
プションの権利を持っているわけです。そこで株主の価値をゼロにするという権利を持っ
ています。でも、逆に今度株主側すると「ちょっと待ってくれ、その前にじゃ俺がこの値
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段で債権を買い取ろうじゃないか」とオファーするなんかの手続き保証があってもいいよ
うな気がします。その権利関係の構造で言うと。でも、そこは株主からみたら時価ですか
ら、株主からみた絶対の優先権の持っているところの金銭債権の時価です。じゃ、そこで
あるオファーをします。そこでさっきの話ではありませんが市場価格ベースで債権はその
値段で「はい、いいですよ」というふうに認めるのか、それに合わせて債権放棄するのか、
ということです。それを認めるのか。それとも「会社は法的整理にいっちゃえ」というふ
うにいくのかというそのある取引を行うチャンスがあるじゃないですか。そうすると、構
造的にフェアーなような気が、今、ちょっと伺って、そういうのはどうなのかな。思いつ
きですがどうですか。
(座長)
再交渉というか、常にあるわけです。だけと入れておかなければ、当然にその
価値を反映させる取り扱いは出来ないだろうと。もう一回そこで契約を締結の段階ですで
に入れておくか、あるいは、今度は再交渉して価値に対応するような形で債権を評価し直
すという合意が関係者の間で出来れば、それは出来るはずです。
○
そうですね。
(座長)
ですから、名目と実質がずれるという実社会がいくらでもある時に、当然何も
しなくても実質的に変わっていくということにしてしまうと。非常に世の中、ある意味で
はいろいろ問題も出て来るということで、まず、名目で縛っておこうという原則を一応た
てたということです。
○
実際、銀行の方にいろいろお話伺うと、これは債務超過と内心思っていますよね。思
っているけど、そこで銀行の申立ての会社更生がいけるかというと、実はそこは凄い度胸
がいって、レピュテーションの問題もあるし、場合によってはそれ自体が乱訴じゃないか
ということで、やり返えさせるのではないかと皆慎重に考えて、実はさっきのどんどんも
のが進まないという理由の一つとして、法律上、債権者申し立て権があるのにもかかわら
ず、実質ある抜けない伝家の宝刀みたいになっている、銀行側からすると。そこをもうち
ょっとスムーズに抜けるようにできないかとことは思いますよね。実務の立場からすると。
(座長)
そうです。だからこの問題は非常にいろいろと面白いというか根本的な問題に
もいろいろ関係していて、たいへん面白いプレゼーテーションであり、今後もしかしこれ
は・・。
○
再生機構が稀に DES をやることがありますが、カネボウなどがやっていますね。その
時はどっちでやったのですか。
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○
時価です。
(座長)
それではもう一つテーマが残っていまして、その前に新しいメンバーがお見え
になったので、ちょっと一言お願いしたいと思います。(略)
(座長)
はい。それでは、最後の議題でその他、「地域企業の M&A 活動上の課題につい
て」、これは事務局の方でお願いします。
(事務局) 「地域企業の M&A 活動上の課題について」につきましては資料配布だけにし
まして、とりあえずこういうまとめをさせていただこうと思っております。さらにご意見
等を今後も伺いましてまとめていきたいと思います。よろしくお願いします。
それから、二つ目で今日の新聞記事でライブドアの話を配布させていただいております。
実は報道からおそらく M&A 研究会ということで、各先生方にいろいろな意見を言って下さ
いといってくるかと思いますが、ちょっとすり合わせした方がいいと思いましてお配りし
ましたが、時間ありませんので先程もお話出ましたので、「まさに株を借りてですね、空売
りするということはどういうことだ」ということを含めて、よろしくご対応をお願いいた
します。私の方からは以上でございます。
次回の予定でございます。次回 3 月 7 日ですか、基本的テーマが「企業価値」というこ
とで議論をお願いしたいと思います。岡委員と冨山委員、恐縮ですがプレゼーテーション
よろしくお忙しいところ恐縮ですがお願いいたします。
以上でございます。
(座長)
時間も少し過ぎましたけど、今日は非常に面白いテーマで活発な議論が出来て
非常に良かったと思います。
それではこれで第 2 回研究会を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございま
した。
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