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配布資料 - 仙台市
産学官連携セミナー 現場で使える! 熱に関する基礎セミナー 東北学院大学 工学部 鈴木 利夫 (仙台市地域連携フェロー) 熱は 逃げていくのを止めることはできない 入ってくるのを防ぐこともできない そして、こちらの思い通りには なかなか動いてくれない! でも、理解すれば 少しは 「止めること」 も、「防ぐこと」 もできる 「熱」とは 看護師さん お熱測ります! 工学的には 「熱エネルギー」 ⇒ エネルギーの形態。 物体の温度差の原因となるもの。 高温の物体から低温の物体へ移動するエネルギーの流れ。 看護師さん的には 体温。また、病気などで平常より体温の高まること。 病気などによる平常以上の体温。 体温測定 ⇒ 温度測定 「熱」には 見える熱 ・・・・・・ 顕熱 温度変化がある ⇒ 温度計 比熱 ↓ 温度測定 見えない熱 ・・・・ 潜熱 温度変化が無い ⇒ 相変化 気体 ⇔ 液体 ⇔ 固体 蒸気 ⇔ 水 ⇔ 氷 凝縮熱 凝固熱 蒸発熱 融解熱 氷 に 熱 を 加える (氷の加熱 @ 標準大気圧) 蒸気 (過熱蒸気) 比熱 : 質量1kgの物質の 温度を1℃高めるのに 要する熱量 水 100℃ 氷 0℃ 温度変化 顕熱 比熱 温度変化 顕熱 比熱 相変化 潜熱 (湿り蒸気) 氷+水 温度 蒸気 +水 相変化 潜熱 温度変化 顕熱 比熱 時間 潜熱の利用 氷による冷蔵 氷の融解熱 = 334 kJ/kg ( 80 kcal/kg ) 1kgの氷が融けるのに必要な熱量 ミスト冷却 ⇒ ドライミスト : 打ち水、木陰の効果 水の蒸発潜熱 = 2430 kJ/kg ( 580 kcal ) 5分間で2リットルの水を蒸発 4860 kJ/300 s = 16.2 kW 3.6 kWのエアコン動作に相当(成績係数4.5と仮定) 某工場で実施 約2℃の環境温度低下達成 蓄熱 時間を超えて熱を操る ↓ 熱エネルギー貯蔵 温度 物体の温かさ、冷たさ を 定量的 に表現する 尺度 温度は 温度計 で測定 温度計は 温度定点 で目盛を付ける 温度定点 は物質が 相変化 を起こす温度を用いる 標準大気圧(760mmHg = 1013 hPa) で 純水の氷点(凍るとき)と沸点(沸騰するとき)を用いる 摂氏温度目盛 0℃ と 華氏温度目盛 32 ° F と 100 ℃ (100等分) 212 ° F (180等分) 212-32=180 tF と t の換算式 tF t = 5 ( tF – 32 ) 〔℃〕 F 212 ° 9 tF = 9 t + 32 5 〔° F〕 32 ° F 0℃ 100℃ t tF = {( 212 – 32 )/(100 – 0 )}・t + 32 tF – 32 = {( 212 – 32 )/(100 – 0 )}・t t = ( tF – 32 ) /{( 212 – 32 )/(100 – 0 )} 体温 36.5℃ は 華氏で ° F 室温 77 ° F は 摂氏で ℃ 熱を使う 冷却 加熱 熱の性質 ⇒ 熱い方から冷たい方へ移動 冷たいもので 冷やす 空気で冷やす 水で冷やす 熱源があれば熱は伝わっていく バーナー ヒーター 蒸気 お湯 温水 冷蔵庫 冷凍庫 ・・・・ 周りより温度が低い さらに冷やすには 熱の性質に矛盾? 冷房・冷凍 = 熱を持ち上げて周りに出す(捨てる) 熱を捨てるために温度を周囲以上に上げる 水は高い方から低い方へ流れる 熱は高い方から低い方へ流れる 似てる 冷蔵庫のトラブル例 複合ビル内の冷蔵庫がダウン! 休館で室内の冷房停止、換気もなし 捨てた熱で室温の上昇 ↓ 熱が逃げれない・捨てられない ⇒ 効率低下 冷凍・冷房機器等の効率 = 成績係数(COP) 成績係数(COP)の概算 計算上の仮定 圧縮・膨張の効率 50% 機械的効率 80% 但しヒートポンプは損失も熱になるので84% システムとしての効率 =0.5×0.80=0.40 冷凍機・冷房機 =0.5×0.84=0.42 ヒートポンプ さらに 温度差 : ⊿t = ( tw-tf ) = 10 ℃ 熱量=面積×係数×(伝える側の温度-受ける側の温度) = A × h ×( tw - tf ) 冷蔵庫の計算例 冷凍機成績係数(前述仮定による概算) 外気温 高温側℃ 低温側4 低温側2 低温側0 低温側-2 低温側-4 低温側-6 低温側-8 低温側-10 低温側-12 40 1.9 1.8 1.8 1.7 1.6 1.6 1.5 1.4 1.4 39 1.9 1.9 1.8 1.7 1.6 1.6 1.5 1.5 1.4 38 2.0 1.9 1.8 1.7 1.7 1.6 1.5 1.5 1.4 37 2.0 1.9 1.8 1.8 1.7 1.6 1.6 1.5 1.5 36 2.1 2.0 1.9 1.8 1.7 1.7 1.6 1.5 1.5 35 2.1 2.0 1.9 1.8 1.8 1.7 1.6 1.6 1.5 34 2.1 2.0 1.9 1.9 1.8 1.7 1.6 1.6 1.5 33 2.2 2.1 2.0 1.9 1.8 1.7 1.7 1.6 1.5 32 2.2 2.1 2.0 1.9 1.9 1.8 1.7 1.6 1.6 31 2.3 2.2 2.1 2.0 1.9 1.8 1.7 1.7 1.6 30 2.3 2.2 2.1 2.0 1.9 1.8 1.8 1.7 1.6 29 2.4 2.3 2.1 2.0 2.0 1.9 1.8 1.7 1.6 28 2.4 2.3 2.2 2.1 2.0 1.9 1.8 1.7 1.7 27 2.5 2.4 2.2 2.1 2.0 1.9 1.9 1.8 1.7 26 2.5 2.4 2.3 2.2 2.1 2.0 1.9 1.8 1.7 25 2.6 2.5 2.3 2.2 2.1 2.0 1.9 1.8 1.8 24 2.7 2.5 2.4 2.3 2.2 2.1 2.0 1.9 1.8 23 2.7 2.6 2.4 2.3 2.2 2.1 2.0 1.9 1.8 22 2.8 2.7 2.5 2.4 2.3 2.1 2.0 1.9 1.9 21 2.9 2.7 2.6 2.4 2.3 2.2 2.1 2.0 1.9 20 3.0 2.8 2.6 2.5 2.4 2.2 2.1 2.0 1.9 19 3.1 2.9 2.7 2.5 2.4 2.3 2.2 2.1 2.0 18 3.1 2.9 2.8 2.6 2.5 2.3 2.2 2.1 2.0 17 3.2 3.0 2.8 2.7 2.5 2.4 2.3 2.2 2.0 16 3.3 3.1 2.9 2.7 2.6 2.4 2.3 2.2 2.1 冷房の計算例 冷房装置成績係数(前述仮定による概算) 外気温 高温側℃ 低温側36 低温側34 低温側32 低温側30 低温側28 低温側26 低温側24 低温側22 低温側20 40 5.0 4.6 4.2 3.9 3.6 3.4 3.2 3.0 2.8 39 5.2 4.8 4.4 4.0 3.8 3.5 3.3 3.1 2.9 38 5.4 5.0 4.5 4.2 3.9 3.6 3.4 3.2 3.0 37 5.7 5.2 4.7 4.3 4.0 3.7 3.5 3.3 3.1 36 5.4 4.9 4.5 4.2 3.9 3.6 3.4 3.1 35 5.7 5.1 4.7 4.3 4.0 3.7 3.5 3.2 34 5.4 4.9 4.5 4.1 3.8 3.6 3.3 33 5.6 5.1 4.7 4.3 4.0 3.7 3.4 32 5.3 4.9 4.4 4.1 3.8 3.5 31 5.6 5.1 4.6 4.3 3.9 3.7 30 5.3 4.8 4.4 4.1 3.8 29 5.5 5.0 4.6 4.2 3.9 28 5.3 4.8 4.4 4.0 27 5.5 5.0 4.6 4.2 26 5.2 4.8 4.4 25 5.5 5.0 4.5 24 5.2 4.7 23 5.4 4.9 22 5.1 21 5.4 ここで10℃はなぜ? 熱量=面積×係数×(伝える側の温度-受ける側の温度) = A × h ×( tw - 温度差 : ⊿t = ( tw-tf ) 熱を伝えるには温度差が必要 さらに「係数」が関係する 熱を伝える ⇒ 伝熱 tf ) 「熱」は 温度が 高い方から低い方に 伝わる ⇒ 伝熱 熱伝導 伝熱 対流熱伝達 自然対流 強制対流 放射伝熱 他に 沸騰・凝縮 ヒートパイプ 熱伝導 物体を通して熱が伝わる 物体の熱の伝わりやすさ ↓ 熱伝導率(λ) 25℃の 金属と木片 どっちが 冷たい? 熱伝導率(λ) [ W/(m・K) ] 空気 0.025 水 0.61 氷 2.2 銅 370 アルミ 200 鉄(軟鋼) 53 物性値 ステンレス 16 ガラス 1.0 木材 発泡ポリスチレン 0.12~0.19 0.03 プールの水温:30℃程度 氷は金属ほど熱を伝えない ⇒ 霜取りが重要 冷蔵ショーケースに入ってくる熱の防御 熱量=面積×熱伝導率×(高温側の温度-低温側の温度)/厚さ = A × λ ×( tH 温度差 : ⊿t = ( tH - tL ) - tL )/l 熱伝導の利用 ヒートシンク : 電子部品のハンダ付 ⇒ 部品の過熱防止 鉄 板 焼 き : 厚さが厚い程、温度が均一 銅 鍋 : 全体の温度が均一 金属類は 熱の伝わり が良い 取 っ 手 類 : 断熱 ・・・・・ 木材 樹脂 空間 防 寒 着 : 空隙を作って空気を溜める 断 熱 材 : 空隙を作って空気を溜める 水 枕 空気は 熱を通しにくい 厚さも効果的 : 薄い層を通して水の比熱で冷却(氷なら潜熱) 対流熱伝達 媒体の移動により熱が伝わる 媒体 : 液体 気体 自然対流熱伝達 ↓ 熱伝達率(h) 強制対流熱伝達 ↓ 熱伝達率(h) 表面に接する 媒体→温度上昇 ↓ 膨張 浮力 上昇 循環⇒対流 自然に発生:自然対流 表面に接する 媒体→温度上昇 ↓ 流れにより移動 熱を運ぶ 強制的な流れ⇒強制対流 対流熱伝達率(h) [ W/(㎡・K) ] 流れている空気の熱伝達率(0.1m平板・層流) 流速(m/s) 熱伝達率 0.2 5.4 0.6 9.3 1.0 12.1 1.4 14.3 1.8 16.2 2.2 17.9 2.6 19.4 7.0 31.9 8.0 34.1 9.0 36.2 歩く速さ 流速(m/s) 熱伝達率 3.0 20.9 4.0 24.1 5.0 26.9 6.0 29.5 自転車の速さ 走る速さ 地球も自然対流 対流が発生すると冷める 風があると冷たい 流れがあると熱が伝わりやすい 熱量=面積×熱伝達率×(伝える側の温度-受ける側の温度) = A × h ×( tw 温度差 : ⊿t = ( tw-tf ) - tf ) 対流熱伝達の利用 屋根裏の換気 : 暖まった空気を移動 屋根からの熱を持ち去る 攪 拌 : 容器の内面と流体が接触 容器からの熱が伝わる ⇒ 加熱 容器に熱が伝わる ⇒ 冷却 扇風機 : 気体の移動が熱を持ち去る 流速が速い程熱は移動する 風除け : 風がなければ熱の移動は少なくなる 温度差でも対流が発生する(自然対流) 小さな空間を構成して対流を抑制 真空断熱 : 媒体を無くせば対流は生じない 放射伝熱 媒体無しで熱が伝わる 熱が電磁波の形で直接移動 黒体放射(基本) ↓(放射率) 現実は 灰色体 反射と吸収 温度と波長 ウィーンの変位則 絶対温度の4乗差で熱が伝わる 太陽からの熱 ↓ 宇宙区間 (何も無し) ↓ 地球に届く 放射率(ε) アルミ 研磨 酸化 0.05 0.13 鉄(軟鋼) 研磨 酸化 0.09 0.96 レンガ 粗面 0.93 反射率 + 吸収率 ≒ 1.0 ペイント アルミ 一般 0.54 0.92 そして ゴム 水&氷 0.90 0.96 放射率 = 吸収率 放射するものは吸収する 放射しにくいものは吸収しにくい(反射する) ピカピカ作戦 絶対温度 : T = キルヒホッフの法則 t + 273 [K] 熱量=面積×位置関係の係数×放射の定数×放射率 ×(出す側の絶対温度の4乗-受ける側の絶対温度の4乗) = A×F×σ×ε×(To 4 - Ti 4 ) 絶対温度の4乗差 放射伝熱への対応 遮熱塗装 : 表面の吸収率(放射率)を低減 某工場での実施結果(天候:晴れ、気温:32℃) スレート屋根建屋の屋根裏温度を測定 未実施棟は54℃~63℃(位置により日射の差有り) 実施棟は最高で47.5℃ ・・・・・ 6.5~15.5℃の低下 さらにシートを天井として設置 ⇒ シート面37℃ 従業員も涼しくなったことを実感 暖房器の反射板 : 赤外線の反射 = 裏面の温度上昇抑制 反射による放熱方向制御 アルミニウム皮膜 : 金属は熱を伝えやすいが薄い(伝達量減) 赤外線の反射・閉じ込め 沸騰・凝縮 凝縮 沸騰 液体 → 気体 加熱 (相変化) 気体 → 液体 冷却 (相変化) 大量の気体 潜熱(大きい) 大量の熱が伝わる 泡が動く・・・攪拌 熱の伝わりが良い 潜熱が伴う 熱伝達が良くなる (核沸騰) 膜沸騰は危険 熱伝達が良い 滴状凝縮 膜状凝縮 ヒートパイプ : 蒸発と凝縮の組み合わせ ガラスの曇り止め まとめ 1.冷房・冷凍は熱を持ち上げて周りに出す(捨てる)。 熱を捨てる(伝える)ためには温度を周囲以上に上げる必要がある。 冷凍・冷房機器等の効率に相当する値を「成績係数(COP)」と言う。 2.物質を通して熱が伝わる。これを「熱伝導」と言う。 熱の伝わりやすさを示す係数(熱伝導率)は物質によって異なる。 3.流れがあると熱は伝わりやすい。これを「対流熱伝達」と言う。 熱の伝わりやすさ(熱伝達率)は流れによって影響される。 4.すべての物体は赤外線を放射しており、媒体無しでも熱が伝わる。 放射しにくいものは吸収しにくく反射する。