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(神奈川県) (PDF 1.3MB)

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(神奈川県) (PDF 1.3MB)
平成 2 3 年
神奈 川 県環 境 農政 局 水・ 緑 部
自然 環 境保 全 課
目次
はじめに
アライグマの生態
県内の生息状況
捕獲するにあたって
捕獲方法
z
痕跡把握方法
z
生息密度別のはこわな設置方法
z
はこわなの種類
z
設置場所
z
エサの種類
z
エサの置き方
z
捕獲時期
はじめに
神奈川県では、野生化したアライグマによる農作物被害や人家侵入などの生活被害が平
成10年ごろから発生し、当初4頭であった捕獲数は年々増加の一途をたどり平成18年度の1,
518頭をピークに毎年1,200頭前後で推移しています。
これを受けて、県では平成 18 年3月に「神奈川県アライグマ防除実施計画」を策定し、捕獲
などの取り組みを行ってきましたが、最終目標である全県域からの完全排除にはいたっておら
ず、県西部では捕獲数が増加し生息域が拡大傾向にあるため、平成 23 年4月には、「第 2 次
神奈川県アライグマ防除実施計画」を策定し、取り組みを継続しています。
取り組みを進めるにあたって県では、捕獲に携わっている市町村担当者、地域住民、農業
者、委託業者などの方に対して、技術的支援のためより効果的な捕獲方法を明らかにするこ
とが必要と考え、平成18年度から平成20年度まで「農業被害防除実証事業」を実施し、技術
支援のための効果的な捕獲方法の実証を行いました。また、「モニタリング調査」を実施し、捕
獲された個体の記録などから県内のアライグマの生息状況の把握に努めました。
本手引書は、これまでの事業結果に基づき、効果的な捕獲方法について取りまとめたもの
です。ページごとに内容を独立させ、必要な箇所を利用していただけるように構成しています
ので、地域での捕獲作業、学習会などでご活用いただけると幸いです。
平成23年 神奈川県
アライグマの生態
種名
白色の顔に
アライグマ科アライグマ属
黒のマスク
アライグマカニクイアライグマ
生息地
アライグマ:北アメリカ
カニクイアライグマ:中南アメリカ
体の特徴
体重 4~10数kg
頭胴長 42~60cm
尾長 20~41cm
活動
夜行性
尾に縞模様
寿命
野生では5年未満と推測されている。飼育下では10年程度。
生息環境
水辺を好むが、森林、湿地、農耕地、市街地など幅広い環境に生息する。
食性
雑食性で、野外に定着した個体は、果実、野菜、穀類、小型哺乳類、鳥類、
両生類、は虫類、魚類、昆虫、その他の小動物全般を採食する。
繁殖
一般的な交尾期は1~2月。約2ヶ月の妊娠期間を経て、春に平均3~4頭の
子を産む。妊娠に失敗したり、出産初期に子が死亡した場合は、夏から秋に
再度出産することもある。
【アライグマの生涯】
0
60 日
6 ヶ月
1才
~
5才
寿命
性成熟
誕生~離乳
写真協力:横浜市
分散期
県内の生息状況
アライグマの生息分布図
この生息分布図は平成 18 年度から、平成 21 年度のアライグマ捕獲データをも
とに初めて捕獲または目撃が報告された位置を地図上に落とし、3次メッシュに重
ねて生息分布の変化を作成したものです。県北部及び県西部に分布が拡大して
いる様子が確認できます。
なお、この分布図は市町村からの捕獲記録の報告に基づいているため、メッシ
ュが記載されていない地点にもアライグマが生息する可能性があります。
さらなる分布拡大を防ぐには、侵入初期の地域あるいはその周辺地域におい
て目撃情報の収集と速やかな捕獲を実施することが大切です。
捕獲 す るに あ た っ て
被害が起きてから捕獲を開始するまでの作業の流れと、作業の中で効果的に
捕獲を行うために注意することを示しました。
詳しいことは各注意点のページを確認してください。
捕獲の流れ
注意点
被害が起きた
加害獣を特定する
足跡を探す
食痕する
姿を撮影する
痕跡を探して
通り道を把握する
はこわなを設置する
地域
時期
はこわなの種類
設置場所
錯誤捕獲を防ぐ
まき餌をする
エサを仕掛ける
アライグマを捕獲
捕獲方法
痕跡把握方法
Point 1 足跡を探す
Point 2 食痕を探す
【応用】
姿を撮影する
生息密度別のはこわな設置方法
Point 1 痕跡を確認して設置する
Point 2 複数台設置する
はこわなの種類
Point 1 条件にあったはこわなを選ぶ
Point 2 複数の大きさを併用する
設置場所
Point 1 水路や沢沿いなど水辺に置く
エサの種類
Point 1 錯誤捕獲を防ぐ
エサの置き方
Point 1 まき餌をする
捕獲時期
Point 1 冬にも捕獲する
痕跡把握方法
Point1 足 跡 を 探 す
アライグマの足跡は、他の動物と容易に見分けがつきます。
足跡を探すには次のような方法があります。
家や農地の周りを歩き地面の
5本指の足跡や
10cm
壁や柱の爪痕を探す。
前足:約5cm
後足:約10cm
特にマルチシートや雨どい
後足
家や農地の周りに小麦粉などを、
まいて 足跡を付けさせる。
農地の畦を平らにする
歩幅は並足で
約40~48cm
Point2 食 痕 を 探 す
アライグマの食痕は特徴的です。
丸い 穴が開いた野菜や好物のカ
ニ やザリガニの殻が見つかります。
このような食痕が確認された場所に
はこわなを設置します。
【応用】 姿 を 撮 影 す る
より確実に生息を確認するには、被害地域に自動撮影装置を設置します。アラ
イグマは水系を好むので、被害場所の周辺の水路や側溝に設置すると効果的です。
生息密度別のはこわな設置方法
Point1 痕跡を確認して設置する
™ 密度が低い地域= 面積に対して生息頭数が少ない。
この地域は、1頭が利用する面積が広く同じ場所を毎 日利用することが少ない
ので、はこわなを設置してもなかなか捕獲が出来ません。最低 2 週間、できれば1
ヶ月程度継続してはこわなを設置することが望ましいです。また、通り道やエサ場
をしっかり把握して、はこわなをおくことで効率よく捕獲が出来ます。
Point2 複 数 台 設 置 す る
™ 密度が高い地域 = 面積に対して生息頭数が多い。
この地域は、生息している頭数が多く、1頭捕まっても数日~10 日程度で別の
個体が捕獲されることがあります。1基のはこわなでは一晩に1頭しか捕獲出来な
いので、数~10 数mの間隔で複数台設置すると効果的です。
上図に示したのは、平成 18 年度以降にアライグマの生息が確認されたメッシュと
それ以外のメッシュです。色の濃い生息メッシュが連続している地域は他の地域に比
べて、密度が高い地域と推測されます。連続していない地域は比較的、密度が低い
地域と考えられます。
はこわなの種類
Point1 条件にあったはこわなを選ぶ
捕獲を実施する際は、はこわなの選定が重要です。
住民の方が捕獲を行う
→
糞や血液に触らず衛生的に扱える
捕獲場所の地形・捕獲したい年齢(体の大きさ)・
エサが交換しやすいこと持ち運びや
使用する人にあったはこわなにする
すいこと が重要
Aタイプ
Bタイプ
Cタイプ
片開き落し蓋タイプ
片開き外バネタイプ
片開き落し蓋タイプ
(金網製)
(金網製)
(金属板製)
・原産国で使用されている
・エサ交換 が後面か らでき、 ・頑丈で捕獲時に暴れても
・折りたたみ可能で軽量
踏み板式
手などが汚れず衛生的
破損しない
フック式
フック式
(エサに触ると入口が閉まる)
(エサに触ると入口が閉まる)
Point2 複数の大きさを併用する
上記の A~C の 3 種類のはこわなを高密度地域で設置した結果、
以下のような結果が得られました。
A
高さ
(cm)
32
幅
(cm)
27
奥行き
(cm)
81
容積
(ℓ)
70
重量
(kg)
4.0
B
36
31
91
102
7.7
C
31.5
27
71.5
61
3.5
種類
平均体重
(kg)
※
平均体長
(mm)
A のみメス
が捕獲され
ました。
5.6
768
8.7
818
B では大きな
8.0※
870※
オスが捕獲さ
1頭の値
※
1頭の値
設置しても捕獲できない場合は、違う大きさのはこわなをおいてみましょう。
れました。
設置場所
Point1 水路や沢沿いなど水辺に置く
アライグマの被害は、農地や家屋ですが被害がある場所が捕獲しやすいとは限り
ません。特にアライグマは水系を好んで利用する動物です。普段は
農地の水路、住宅地の下水道や側溝を使って移動します。
住宅
爪痕が探せたら 、近くの
壁などに沿うように置き
ましょう。庭の果樹の下
農地の水路
農地
や池の近くも効果的です
住宅水道
畑作物を食べてお腹が一杯
になる前に捕獲しましょ
う。農地につながる
水路が効果的です。
Point2 入口は通り道に向ける
捕獲しやすい場所においても向きが違うとアライグマははこわなの中のエサに気
づきません。足跡が向かってくる方や草が倒れた獣道に入口を向けます。
水辺
農地・果樹下
小屋の脇
エサの種類
の種類
Point 1
錯 誤 捕 獲 を防 ぐ
ネコやタヌキが入ってしまう(=錯誤捕獲)と、一晩はこわなが塞がってしまいアラ
イグマが捕まえられません。アライグマは油で揚げてあるものを好みますが、唐揚
などの肉を使うとネコの捕獲が多くなります。肉に比べるとお菓子の方が他の動物
は入りません。果物を使うとネコはほとんど捕獲されません。地域にネコが多い場
合は、エサを工夫しましょう。
お菓子 キャラメル味のものな
利点;好物、長持ち、安価
欠点:雨天では溶ける、虫が寄る
果物 バナナ、リンゴなど
利点:錯誤捕獲が少ない
欠点:捕獲率が低い
肉 鶏肉の唐揚げなど
利点:比較的好む
欠点:高価、ネコの捕獲が多い
エサの種類別に捕獲された動物
回(餌の種類)
第1回
(キャラメル味の菓子)
第2回
(バナナ)
第3回
(から揚げ)
アライ
グマ
タイワ
ハクビ
タヌキ*
シン
ンリス
ネコ
ネズミ
計
8
2
2
1
8
3
24
1
3
0
0
0
0
4
5
7
0
0
21
1
34
エサの置き方
置き方
Point 1
ま き餌 をする
アライグマは鋭い手の感覚を使ってエサを探します。探しながら歩いている間
に、エサが手に触れるよう、はこわなの中だけでなく、はこわなの入口から通り道と
思われる所まで導火線のようにまきます。そうすることで中まで誘導しやすくなりま
す。
手にエサが触れる
エサではこわなまで誘導する
エサを追って中へ!
ドッグフード、豆な
ど固くて粒状のもの
がよいようです。
捕獲時期
Point 1
被害が出る前の冬に捕獲する
図に示したのは平成21年度にアライグマがいつどこで捕獲されたかを示してい
ます。季節によって捕獲数や場所に偏りがあります。
春 住宅敷地内で捕獲
アライグマの出産期です。屋根裏などで出産するので、糞尿による家屋被
害が発生し、母親とコドモがよく捕獲されます。
夏 農地で捕獲
春に生まれたアカンボウが離乳し、前年に生まれたコドモが独り立ちをしま
す。エサを求めて農地にでるためトウモロコシやスイカなどの農作物被害が増
えます。
秋 住宅敷地や農地で捕獲
庭先や農地にあるブドウやカキなどの果樹の被害を防ぐために捕獲されて
います。
冬 捕獲数が減少
農閑期及び出産前のため、市街地や農地への出没が減少し、被害も少な
くなります。
これらのことから、アライグマの個体数を減少させるには、被害は少ないです
が、交尾期から出産前(11 月~4月頃)に積極的な捕獲を行うことが効果的で
す。次の出産期に生まれるコドモの数が減少し、被害軽減につながります。
環境別捕獲数の変化
頭
住宅敷地内
農地
その他
200
出産期
離乳期
交尾期
妊娠期
150
100
幼獣捕獲
50
親子捕獲
0
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月 12月 1月
2月
3月
【参考資料】
神奈川県.アライグマ農業被害防除実証事業報告書.平成 19 年 1 月
神奈川県.平成 19 年度アライグマ農業被害防除実証事業報告書.平成 20 年 3 月
神奈川県.平成 20 年度アライグマ農業被害防除実証事業報告書.平成 21 年 3 月
神奈川県.平成 18 年度アライグマのモニタリング調査報告書.平成 19 年 3 月
神奈川県.平成 19 年度アライグマのモニタリング調査報告書.平成 20 年 1 月
神奈川県.平成 20 年度アライグマのモニタリング調査報告書.平成 21 年 1 月
神奈川県.平成 22 年度神奈川県アライグマモニタリング調査報告書.平成 22 年 7 月
子安和弘.フィールドガイド 足跡図鑑.日経サイエンス社.P106-107.1993.
小宮輝之.日本の哺乳類.GAKKEN.P152,2002.
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