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部活動についての考察 部活動についての考察 茨城
部活動についての考察 茨城県立日立工業高等学校 廣澤 学 1.はじめに 1.はじめに 日立工に赴任して 4 年になる。本格的にバレーボール部の指導に携ったのは 3 年目の 7 月から である。2 年生 6 名、1 年生 3 名、女子マネージャー1 名、計 10 名の指導にあたった。1 年半程度 の指導で、よい競技結果も出ていないが、前任校も含めて振り返ってみたいと思う。 2.部活動とは 2.部活動とは 自分が教員になったきっかけは部活動である。 「勝てるチームが作りたい」そういった考えから スタートしている。前任校でコーチ 11 年、監督 8 年を経験させてもらった。全国大会に出て華や かな経験もしたし、県大会で負けてあらゆる屈辱を味わった。いろいろな思い出がある。だが、 まずはここで考えたい。そもそも部活動とは何だろうか? ここで大事なのが、関わる相手が部員である前に生徒であるという認識である。部活動だけや ってればいいのではない。彼らは工業高校生であり、部活動とは、これから世の中に出る生徒た ちの準備期間の一部でもあるということ、これを忘れてはいけない。かつては、勝つために勉学 を疎かにして練習に取り組ませてきたことも多々あった。試合の時期を考えて訓練に時間をかけ るときはあるが、生徒という立場を放棄させて選手として取り組ませる時間が多かったときは、 結果として勝てないときが多かったように思う。 勉強をきちんとしないとバレーをやる資格がない。バレーが下手でもいい。人それぞれの能力の 問題もある。しかし、やらなければならないことが出来ない人間は、やりたいことも出来なくな る。勉強をやりたくないかもしれないが、それをやりぬこうとする気持ちはコントロールしなく てはならない。最低限取らなくてはいけない点数を取ったりするのは苦しいけれど、やらないと 身につかない。バレーの基本練習やトレーニングも同じである。 バレーというスポーツは、持ってはいけない、止めてはいけない、瞬間のスポーツである。一 瞬で自分で判断して自分で責任を持つ。ミスは必ずあるので、それを繰り返さないための強い意 志、自立が求められる。そう考えれば、わがままな人間、偏った人間は大成しない。教わったと おりやったとしても結果にあらわれない理不尽な場面がたくさんある。自分がミスをしなくても 仲間がミスをして負ける。一方、自分が苦労しなくても、相手が技術的・身体的に劣るため勝っ てしまう。目に見えるのは結果であるが、その結果をよくするために、目に見えない根っこの部 分、「人間性」が、バレーにおいては特に重要視されるのである。 結果を出すための部活動を求めると、人間性を鍛えるために勉強を疎かに出来ないし、あらゆ る努力が必要になってくる。結果をそんなに求めない、なんとなくの部活動だと、生徒の自主性 だけを重んじる、先生はあまり関係ない、そんな部活動になるだろう。生徒は、身近な先生とい う大人に影響を受けやすい年頃である。我々に何が出来るだろうか。 3.勝つために 3.勝つためには 勝つためには 勝つ(日本一を目指す)ために必要なことは、勝てる選手とお金である。 極論になってしまって悲しい。しかし現実である。どの高校スポーツも選手勧誘なしでトップに なることは難しい。昔のラグビーの伏見工やら、ルーキーズのような高校野球。金八先生が今の 時代に成り立たない、と同じことである。選手の取り合いは当たり前、部費、合宿費、遠征費な どの運営費の工面など一教員ではとても無理、といっていたら何も始まらない。私立は選手を集 められていいよな、恵まれた環境だからいいよな、と我々がそれを負けた理由にしていたら決し て勝てない。私立はそれだけの企業努力をしているのだから。生き残るために。我々は企業努力 しなくていいのだろうか。生徒がバカだ、とか、言うこと聞かない、とか嘆いている場合ではな い。株式会社日立工業高等学校をよい会社にすべく、入りたい生徒を受け入れて社会に旅立たせ ていく。その繰り返しでよい学校になっていき、よい生徒が入ってくれるようになる。 4.目標と目的 4.目標と目的 部活動の目標は勝つことだ。しかし、目的はそうではない。勝ち負けの結果だけで、選手評価 は出来ないし、してはいけない。部活動においては、目的をきちんと理解させた上で、目標を立 てさせることが大事である。目的はいろいろあると思うが、私自身は「人格形成」を一番重んじ ている。当たり前のことを当たり前にできる。その前に当たり前とは何なのか、高校卒業までに 必要な考え方は何なのか。これらを問う必要がある。 躾がされてない、と感じることが多くある。挨拶が出来ない、靴を脱いだら脱ぎっぱなし、時 間を守らない、自己都合で休む、など。義務教育までは褒められて育ってきた生徒たちは、高校 で怒られると簡単にふてくされてしまう。難しい年頃である。自己中心的な考えから、目配り気 配りが出来る思いやりのある生徒にするためにはどうしたらよいか。社会に出るために。 5.思春期の変化 5.思春期の変化 子供たちはこの時期、急激に変化する。変化の中には、生物学的・身体的変化、社会的変化、 心理的変化、認知機能の変化がある。 ・生物的・身体的変化 個人差が大きく特に重要な変化である。内分泌系の変化・性ホルモンの分泌により、第二次 性徴が始まる。背は伸び、体は大きくなり、大人と変わらなくなる。だが心の中はまだ子供 である。周りからは見た目で判断されることが多くなるため、本人は戸惑ってしまい、この 変化を拒絶しようとする。また、ホルモンバランスの変化により、朝起き難くなったり、疲 れやすくなったり、イライラする。本人も分からず、なんとなく気分が落ちつかず、急激な 身体変化への戸惑いと不安で、心と身体がアンバランスになる。 ・社会的変化 周りと本人の接し方・見方の変化で、自分が周りから大人扱いされたらいいか、子供扱いさ れたらいいか分からない、その日の気分で決まる。本人の中でも、甘えたい、でも子供じゃ ない、という葛藤に翻弄され、とてもアンバランスになる。見た目は大人なのだが、言う事 やる事は子供なので周りも困る。 ・心理的変化 個を自覚し、自分のことを考え始める。自分が頑張らなければ、自分は一人なんだ、とか自 己の内面への気付きがあり、孤独感に苛まれる。自立の欲求が起き、自分のことは自分で考 えたいと強く思うようになる。親としては甘えるくせにと思いがちだが、親の意見は受け容 れない。他者の目の意識も強くなり、周りとの比較も激しくなる。皆と一緒がいいけど、一 緒じゃ嫌だといったり、あるいは自分のネガティブな面ばかりに目がいってしまい、劣等感 が強まってしまう。 ・認知機能の変化 思考能力が発達し、具体的なものより抽象的思考が可能になる。興味のあることを自分で調 べだし、知的世界が広がり、夢や未来への希望・理想などを考える。それにより批判的志向 も強くなり、現実の矛盾も見えてくる。例えば「CO2を減らすには車に乗らなきゃいいじ ゃん。でもそれじゃ生活が不便だよね」というように、理想と現実のギャップの中で社会人 や大人に対して反抗する。 これらすべては当たり前である。アンバランスで当たり前、反抗的で当たり前、理屈を言って当 たり前。大切なのは「今 まさに目の前に 変化中の子供がいるということ」を、我々が認識し ているか否か、である。 6.現状と改善方法 6.現状と改善方法 学校の生活の中から選手・生徒の現状を知ることも重要であるが、学校以外での生活環境に目 を向けて現状を理解することは指導の参考になることが数多くあり、異なった角度からの発見に つながる。 生徒たちの生活、遊びの状況はカラオケや携帯電話・メール・LINE・SNS・インターネ ット・ゲームなどが中心であり、子供の成長を主眼においた環境ではなく、企業利益が優先の環 境の中にいる。その結果、たくさんの秘密の部屋を持ち(教室・自分の部屋なども含む)1つの 部屋(場所)で嫌なことがあると次の部屋へ移動し、人とのコミュニケーションを一方通行で行 うことが多くなる。自分の過ごしやすい場所を探す利己主義に陥ってしまい、結局、自分の居場 所が無く不透明な存在になっている。 そして共働きやシングルマザー(ファーザー) ・核家族が多く、子供と接する時間が少ないこと から大人教育がされる時間が少ない。また、親自身が自分のために時間を費やしているため子供 と過ごす時間が少なく、躾に対しお金や物で済ませてしまうケースが多い。また、地域社会も子 供の面倒を見なくなり、教育されなくなっている。 さらに、大人モデル(生き方モデル)も少ない。マスコミからは暗いニュースが流れ、親はリ ストラ・不況の中で苦しみ、見本としてなりたい人物になっていないケースが多い。子供たちか ら見える憧れはスポーツ選手や芸能人などになっていて、その現状は躾とは反対のものが多い。 ・生徒の現状から見える問題点 1)情報過多・・・・・・・・・・・・・落ち着きが無い 2)心が育っていない・・・・・・・・・頑張れない 3)真面目さが無い・・・・・・・・・・勤勉思考、向上思考が無い 4)自己解決が出来ない・・・・・・・・やりきることが出来ない 5)価値観が低い・・・・・・・・・・・価値観が物や金になっている 6)ミーイズム・・・・・・・・・・・・「私だけ」「私ばっかり」 7)アンビバレンス・・・・・・・・・・1人の中にいろいろな人格が現れる ・改善方法 1)生活環境の整理整頓 掃除と整理整頓(割れ窓理論) ※ニューヨーク市 ジュリアーニ市長 2)書くことの習慣化 思考の整理と現在地の確認(指導者の考察とアドバイスが必要) 3)態度教育 服装、態度、言葉遣いなど、筋道を立てて説明理解させる 4)価値観を高めさせる 「生き方モデル」を見せる 話して伝える 出来るだけ体験させる 5)役割を持たせる 責任と居場所を持たせて、個々の重要性を理解させる 6)五感の活用 「見る」「聞く」「話す」「嗅ぐ」「触れる」良いものを繰り返し 7)挨拶をする コーチングの承認の最も大切な部分 8)笑顔 顔晴って努力できるようにする ※顔晴る(顔が晴れやかになるように) 7.親に対する 7.親に対する教育方針 親に対する教育方針の提案 教育方針の提案 1)教育とは親がいなくても生きていけるようにすること 本当に大切なことは・・・親の経験・知識を子供に植えつけて親を乗り越えさせること。 次に子供が成長して学ぶことがなくなるともっと外へ出ていろいろ吸収しようとし始める。 この時に見守ることと、アドバイスすることが大切。 「自分を乗り越えてほしい」と親が考えることが大切。反対に自分の手元から離さないよう に「近所の子供たちに負けるな」という発想がよくない。 ※「子供をいつまでも自分の手元に置いておきたい」という親のエゴを捨てましょう。 2)最高の教育とは・・・親が楽しそうに生きること (チャレンジしているところを子供に見せよう) 子供たちは不況、戦争、環境汚染、自然災害等、ニュースで話題になっていることを知って 絶望感を持つのではなく、「自分の親が暗い」ことで絶望感を持つのである。 ※まず親が前向きに楽しく生活しましょう。 3)教育の責任は学校よりも家庭にあります。 学校に任せるだけでなく、親としての価値観をしっかり持って、子供が「なぜ」「どうして」 とぶつかってきたときに「こうなんだ」という哲学で返すことが大切である。 ※子供がワラにすがる状態でアップアップしているときに、親までもアップアップして、し がみついた子供を沈めるのではなくて、新しい泳ぎ方なり、浮き輪なりを見つける努力をし ましょう。 4)教育が大事なのは親が学ぶことができる 最終的に、子供に親を乗り越えさせることだけでなく、子供を教育することで親が成長する。 ※子供を苦労して育て生かすことで、親自身も生かされることができます。 5)子供と親の関係で大切なのは親離れではなく子離れ 子供が親離れし始めると、子離れできない親が子供を引き戻そうとしてしまう。人間はジャ ングルで生活する動物とは違う。 ※かまいすぎないようにしましょう。子供はペットではありません。 6)「きっとわかってくれる」という安心感を与える ・子供は親の価値観で育ち、その後、先生の価値観が入ってくる。後から価値観を持った人が やってくると、子供の悩みが発生する。 「先生は、自分のことをわかってくれない」という不 安を子供が持つ。そして最後のよりどころとして「親なら自分の悩みを理解してくれるだろ う、分かってくれるだろう」と期待する。親が分かってくれるに違いないという安心感があ れば先生や別の大人から違う価値観を与えられても、受け入れる余裕が生まれる。 「分かって くれた」ではなく「分かってくれるに違いない」という安心感が大切である。そのためにも、 子供の考え方を広く親として受け止めてあげるという実例を一度でも示すことが肝要である。 たとえ子供が間違っていたとしても「なるほど、その気持ちは分かるよ。確かにそういうこ とはあるよね」と受け止めてあげて、そのままでなく、次に「昔、子供のときそう思ったけ ど、今思うと、こう考えたほうが楽だった。こうすればよかったと思う」などと言ってあげ てほしい。 ※子供に優しさより安心感を与えましょう。 7)「かわいそうに」というと子供はみじめな気持ちになる ・子供は今自分が置かれている状態がいいのか悪いのか、悲惨な状態なのかよい状態なのか、 なかなか判断できない。そこで親に「かわいそうに」といわれて初めて、自分は今悲惨な状 況におかれているに違いないと判断する。この時の判断基準は、親の言葉と顔色である。ど んな厳しい状況に置かれていても、親がニコニコ笑っていれば子供は安心できるし、大丈夫 なんだと思っている。逆にそんなに悲惨な状況になくても、親が過剰反応して「かわいそう に」というと自分はきっとよくない状態にあるんだと判断してしまう。 ※「かわいそうに」よりは「よくやっているね」 「もう少しでよい結果だね」というような言 葉をかけて「そうか、今自分は頑張っているんだ」と思えるように、その状況がハッピーで あると伝えてください。 教育の大切なポイント ・元気づけること(励ますこと) ・根気強く、集中力をつけさせること ・大人がチャレンジし、ハッピーになること ・しっかり「ありがとう」「ごめんなさい」と子供に伝えること 8.生徒に対する考え方の提案 8.生徒に対する考え方の提案 ・なぜ「私」「僕」という存在は素晴らしいのか 「自分は勉強が苦手だし、運動もだめだった、友達付き合いも苦手だ。こんな自分が素晴らしい わけがない」と思っている人は多い。私たち人間の素晴らしさは、勉強ができるとか、できない とか、運動ができるとか、できないとか人から好かれているとか、いないとか、それらの条件を はるかに超えたところにある。世界中の科学者が集まって、世の中のお金を全て注ぎ込んでも、 単細胞生物 1 つ作ることができないし、命を作ることは不可能らしい。生命体が存在することは それだけ驚異的ことである。その中でも人間は60兆個もの細胞からなる体を持っている。それ ぞれの細胞が、それぞれの役割を果たしながら、全体としての秩序を保っている。存在するだけ で奇跡である。人間のその細胞は、遺伝子研究の世界的な権威である村上和雄さんによると、人 間の細胞に含まれる遺伝子の情報は、30億もの科学文学で書かれていて、一冊千ページの本の 千冊分にもなる。この素晴らしい人間の存在、誕生を「サムシンググレード」と呼んでいる。 次に私たち人間の素晴らしさを挙げるなら「みんな違っている」ということである。同じ親か ら生まれても、兄弟や双子でも、同じ人間ではない。あなたはこの世界中にひとりしかいないし、 人類史上ただ1人しかいない。ダイヤモンドやプラチナが高価なのは、産地も量も限られていて、 たくさん採れないから、つまり希少価値があるからである。ところがあなたという人間は、宇宙 の隅々まで探し回ったとしても希少どころか、たった一人しかいない。つまり、あなたはこの世 界、地球、または宇宙の中でかけがえのない存在、代わりのない存在なのだ。そして私たち人間 は一人一人違った多くの才能を持っている。すでにその才能の一部を発揮して生きている人もい るが、才能がまだ潜在していて、自分でもどんな才能を持っているか分からない人もいる。しか しいずれにせよ、あなたは素晴らしいさまざまな才能があなたの中にあって発揮される時期を待 っている。勉強ができないから、スポーツが苦手だから、人付き合いが下手だからと自分を責め る必要はない。「あなたは素晴らしい存在」である。なぜ「あなたが素晴らしい存在」なのかは、 言葉で表現できる範囲を超えたものである。ぜひ、人生での様々な体験、経験を通して、あなた の本当の素晴らしさを感じ味わってほしい、と同時に「クラスメイト一人一人が素晴らしい存在 だ」ということを理解し、感動し、人の和を大切にしてほしい。 ・ふさわしい自分になること 「たくさんの人から応援されたり、友達になりたい」「良い大学に入って将来成功者になりたい」 「素敵な恋人がほしい」など、人はさまざまな願望を抱く。そして、さまざまな願望実現法の本 を読んだり人から聞いたりして、いろいろと実践してはみるのだが、なかなか実現しないという 人がかなりいる。 願望を実現するうえで、最も根本的で大切なことは「ふさわしい自分」になることである。将 来成功者になりたければ、成功者と呼ばれるにふさわしい人間になることである。応援されたり 友達がほしかったりするのならば、たくさんの人が応援したくなる、友達になりたくなる人物に なること。素敵な恋人がほしければ、あなた自身が素敵な人になること。つまり願望を実現する のにふさわしい人間性を具えた人物になることが根本である。成功するためのテクニックや方法 として、イメージの作り方、人間関係のテクニック、前向きな思考法だけでは空回りしてしまう。 「7つの習慣」という本がある。その著者であるコヴィー博士は次のように言っている。 「真の成功を達成し、永続的な幸福を手に入れるには、謙虚・誠実・勇気・忍耐・勤勉などの原 理原則を体得し、自分自身の人格に深く内面化する以外に方法はない」 私たちがリンゴの樹を見たとき、幹や枝葉、さらには時期によっては果実が目に映る。しかし、 目に見えない土の中に「根」があることを忘れてはならない。実は、根と枝葉は鏡のような存在 で、根の広さと同じだけ枝葉が広がる。ということは枝葉を広げて、たくさんのリンゴを実らせ るには、まず地下に根を広げることが大切になる。 私たちの人格や人間性は、取り出して計ることができないし目に見えない。樹木でいう根のよ うなものである。この目に見えない人格や人間性の大きさ・深さこそが、人生で豊かな実りをも たらす。 今の私たちは「目に見える部分」つまり「どんな花を咲かせたいか」「いくつ実をならせたか」 ばかりを注目しがちである。ついつい他人と自分の花や実を比較して焦ってしまうこともあるだ ろう。そんな時「目に見えない部分」つまり「根っこ」を見直すことで、地に足がついて明るい 生き方ができる。リンゴの樹のように広く深く根を張ることを意識して、人間性を人格を高めて いこう。この意識があれば、どんな出来事に出会っても自分が成長できることを喜べるだろう。 ・人間性モデルを見つける 1961年、第35代のアメリカ大統領に就任した、ジョン・F・ケネディが日本人記者にイン タビューを受け「あなたが最も尊敬する日本人は誰ですか?」と質問されたときに、ケネディは 「ウエスギ ヨウザン」と答えた。ところが、日本人記者は「ウエスギ ヨウザンって誰?」と ささやいたエピソードがある。記者は、上杉鷹山を知らなかった。 人間としての徳(人間性)を育むことを徳育というが、日本でもかつては教育において徳育が 重視されていた。そして人間性を高めるためのモデルとして、二宮尊徳や上杉鷹山をはじめとす る歴史上のさまざまな偉人たちの生き方を丁寧に教えた。それから、子供たちは偉人たちの生き 方に憧れ、彼らから誠実・勤勉・感謝・親孝行・兄弟愛・郷土愛などの美徳を学んだ。 ところが、戦後になって学力偏重(知的偏重)の傾向が強まり、そういった偉人たちの生き方 が教えられる機会が減ってしまった。その結果、人間性を高める上で大切な徳育を学ぶ機会が減 った。 私たちが人間性を高めていくうえでまず求められるのは、モデルとなる人物(憧れの対象とな る人物)を見つけることである。 「学ぶ」という言葉は「真似ぶ」からきているが、私たちは人を 真似ることによって成長する。その原動力となるのが、憧れや尊敬心である。まずは憧れや尊敬 の対象となる人物を見つけよう。 あるアンケート調査に「あなたが尊敬する人は誰ですか?尊敬する理由は何ですか?」という ものがあった。その回答をみると「実業家の○○さん、なぜなら一代で財を成したから」 「先輩の ○○さん、いい大学に現役で受かったから」 「歌手の○○、とっても歌が上手だから」というよう に尊敬する理由が、業績や能力や技能によるもので、人間性や人格とはあまり関係ないという傾 向にあった。もちろん業績や能力や技能の面のモデルがいるのは素晴らしいことだが、人間性の モデルがいないのは寂しい限りである。 ぜひ、人間性のモデルとなる人物を見つけよう。必ずしも身近にいる人でなくてもよい。著名 な人や歴史上の人物でもよい。ある人をひそやかに師として尊敬し、書物などを通じてその人か ら学ぶことが人間性を明るく向上できる。とくに歴史上の人物は素晴らしいモデルの宝庫である。 ・勉強、学びの大切さ 世の中で勉強が嫌いな年代は、たぶん、中高生が多いだろう。 理由① テストのため、受験のためという限定された目的のために、やりたくないのにやらされていると しか感じないからである。 理由② 「勉強しなさい」という親や先生への反抗心や、ガリ勉がバカにされる風潮があるからである。 学ぶこと、勉強することがどうしてよいことなのか「明るく、楽しく学ぶため」の理由を探して みよう。 ①自由になれる 自由というのが勉強のキーワードである。いろいろなことを知っているのと知らないのではどち らが自由度が高いだろうか?それは、知っていることが多いほうが「自由」になる。いろいろな 考え方ができて、活動の幅も広がってくる。逆に知らないことが多いということは「不自由」で ある。勉強をしなくていい、ということが自由ではなく、勉強することによって多くの知識を持 つということが自由だと考えよう。 ②学校とは? 毎日の生活を楽しく、充実したものにするためにも、人間は学ぶことが大切である。学校を卒 業後、仕事でも遊びでも恋愛でも、学ぶことは必要である。学校というものは、多方面の勉強を できるように工夫されていて基礎が学べる。卒業後、その知識を生かして自分で学ぶことができ るようにするために学校がある。 ③新しい自分を見つけよう 昔の人が発明、発見したことや、築いてきた歴史、言葉を学ぶことが知識を高める。それを自 慢するのではなく、知識を生かして、アイディア(知恵)を作り出し、新しく、楽しい人生にし よう。 ④勉強、学ぶことの2本柱 1)感動 私たちが学んでいる知識を発見してきた人たちの感動を、私たちも学ぶことで体験している。 物理学・化学・数学などの歴史に名を残す学者や発明家は、飛び回ったり、裸で走りまわりたく なるほどの発見の興奮を味わっている。そのことを学ぶことによって味わおう。人は老化の始ま りとして驚かなくなる。それは新しいことは受け入れることを拒否することであり、衰えとも言 える。いつまでも若い脳でいるために、学ぶことから「喜び」や「感動」を味わい、活力を脳に 与えて若さを保とう。 2)習熟 英語、国語、歴史、地理等の教科の学習には暗記がつきものである。特にテスト勉強などは、 暗記がほとんどを占めるだろう。だから、ただ覚えるだけということを苦痛に感じて勉強する気 が無くなってしまう人が多い。だから、覚えることによって、基本が身について、出来なかった ことが出来るようになる。これを「習熟」という。 「習熟」の楽しみは、繰り返し覚えることによ って「できるようになること」だ。この「習熟」の喜びが仕事にも活きる。 ⑤試験(競争)することで自分の力を知る 最近は、根拠のない自信を持っている「俺様タイプ」の人が増えている。競争を避けて、自分 のことが分からないからだろう。自分の今と向き合って試験(競争)すると、人を蹴落とすこと ではなく、自分の努力しなくてはならない部分を知ることができ、自分を良い方向へ成長させる ことができる。テストはそのように、明るく良い方向に考えよう。 ⑥ストレスに強くなる 勉強は非常にストレスがかかる。誰もストレスは嫌だから、勉強は嫌われる。しかし、逆にス トレスが全くないと人間は成長しない。勉強をしていくとストレスに強くなり、また、 「頑張って 覚えた、できた」ことにより、ストレスが、快感になっていく。 ⑦脳は、使うほど働きがよくなる 「なぜ勉強をするのか?」と聞かれると、まず「頭がよくなるから」と答えよう。この場合の 頭がよくなるとは、成績がよくなるとは少し違って頭がよく働くようになる。脳の能力がアップ することである。 どんな脳を持っているかより、どう使っていくかが大切である。 9.目標の立て方、考え方 9.目標の立て方、考え方 成功とは、自分にとって価値のあるものを未来に向かって目標として設定し、決められた期限 までに達成することである。 1)「成功する」と決めることが大切 2)毎日しっかりやりきることが大切 3)小さな成功を積み重ねることが大切 1.コンフォートゾーン(安心できる場所)を作って目標をコロコロと変えないことが必要 ・最終目標 ・今回の目標 ・中間の目標 注意点 1)ルーティンを目標にしない 2)必ず数字で評価する ・絶対達成できる目標 3)目標は自分にとって、チームにとって価値あるものにすることで、チャレンジすることが 楽しくなるようにドキドキ感があるようにする 2.目標達成のポイント 未来を予測、予言する方法として過去を分析して未来につなげる 1)良い時の自分、悪い時の自分をしっかりと知り、自分を分析して弱みを自覚し成功体験を 追体験することで「自分はできる」「自分はやれる」という自信を持ち良い習慣を作る 2)この分析の仕方は個人個人違っているのだから、自分でしっかり探すことが大切であり、 理解しやすくするために、心・技・体・生活・その他、に分けて分析することが良い 3.良い状態と悪い状態をしっかり理解したところで、よく成功する人になるために、次のステ ップとして、失敗例や悪い状態をヒントにして、自分が直面するだろう壁、問題等を考えて 予想される問題点を考える。そして問題点の解決策を具体的に自分でしっかりやりきれるよ うに見つけておき、問題が起きても明るく、楽しく対応できるようにして、よく成長する人 になる。 ※解決策は必ずその人の自身の中に見つけることができる 「問題は発生と同時に答えを背負っている」 準備する力がある人は問題に対して解決策をたくさん作り出す 4.次のステップとしてよく成功する人になるために参考にするものを書き出す ※良い知識を入れ内面を成長させる。また、良いイメージを作る 5.ルーティン目標を作る。毎日やりきってしっかりとした強い心を作る ※ただし分かりやすく、しかも何のためにやっているのかしっかり意味を持って作ることが大 切である 6.期日目標を作る 小さな成功を積み重ねて大きな成功の足がかりにする (スモールステップの原則) 7.目標がしっかり決まったら忘れないように、自分の目標を行動によって、良い方向、よく成 功させる人にすることが大切 1)ビジュアライゼーション(可視化) いつも見ることができるように工夫して忘れないようにする。書いたものをどこに張るか 考える。 2)ビッグマウス(スケールの大きなことを口に出して言う) 成功するという自信の表れが内面から出てくるし、また公言することによって自分を追い 込み、目標達成の意欲を高めることができる。 8.ビジュアライゼーション、ビッグマウスも一日に多くて10回程度が限界であろう。そこで 結果に出ないとあきらめずに、ある言葉を口に出したら全体のイメージがわくような言葉 を作っておく。 1)成功へ導く決意表明(積極的な言葉) 2)成功へのセルフトーク(目標に向けての積極的な語りかけ) ※チャレンジしている自分にスイッチが入り、プラス思考になれる言葉を用意する 9.常に自分の実力が発揮できるように自分の動作を決める(ルーティン) プレー中とプレーしていない時と両方存在しているスポーツは、プレーしていない時のメン タルを大切にする意味がある 向上ルーティン・・・・良いプレーや気持ちのうれしさを次のプレーに繋げ、次のプレーの 考えを作る 切り捨てルーティン・・ミスーをしたプレーや、相手の良いプレーに対する気持ちを断ち切 り、前向きな気持ちで次のプレーにトライする心を作る 10.欲がやる気を向上させる。目標が達成できたら得られる利益というものをしっかりと持ち、 イメージする ※物欲と人格形成という目的との両立 最後に、自分をやる気にさせてくれる人、元気を注いでくれる人を見つけることも大切である。 ただし、感謝する心を忘れず、できれば感謝を後出しにするのではなく、先に出すように心がけ ることが大切である。 10.コーチングとティーチング 10.コーチングとティーチング 「プレイヤーズファースト」(選手第一主義) この考えを根本に、生徒を成長させるために、 そして勝たせるためにどうしたらよいか、我々部活動の指導者は頭を悩ます。 「人格形成」を部活 動の目的と考えれば、全てにおいてベストを尽くすことが大事になる。 目標は勝つことである。それが地区大会なのか、県大会なのか、全国大会なのかはそれぞれの レベルによって異なるが、大事なのは勝つことに対して本気でトライすることだ。そのためには、 勝つことの素晴らしさ、それによって得るものを生徒にうまく伝えられれば、それを達成したい という欲求が高まり、自主的な活動に繋がっていく。ここで、指導法に関する2つの概念につい て言及しておく。 コーチング 生徒の個性や特質・モチベーションを引き出し、目的達成に向けて自発的行動を促 す技術 ティーチング 知識や経験の少ない生徒に対し、効率的な活動の仕方、考え方、ルールなどの基 礎知識を教える コーチングという指導法が注目を浴びているように思う。ただしこれは、ある程度の基本が出来 ている、引き出しが多い相手に対しての有効な指導法なので、指導者も生徒も、お互いが経験者 の関係で成り立つ。 今の本校の実情を考えれば、コーチングの段階である引き出しを増やす指導、ティーチングが大 事になると思う。これが出来るようになりたかったらこの練習をしよう。それを繰り返しするこ とにより、引き出しが増えていく(通常練習)。どの場面でどの引き出しが有効か判断するのは経 験である。自己判断すべき場面を増やそう(練習試合)。ティーチングが満足に出来ていないのに、 生徒の考えを尊重するような指導をすると、良い結果が出るはずもないし、たとえ結果が出たと しても、満足度の低い活動になる。(他の人が努力した、相手の能力が低い等外的要因が大きい) しかし、ティーチングばかりしていると、自己満足な指導で、指導者に対する依存が大きくなる (自分でどうしてよいか判断できない) 高校3年間で考えれば、1年時は主にティーチング中心で与えた課題に対しての評価を正しく してあげ、モチベーションを保てるようにする。2年生になればコーチングも取り入れ、 「そのや り方もよかったけど、こういうやり方もあるよ」といった助言を織り交ぜ、3年生になれば、自 己責任で試合に臨める。そのくらいの指導が理想であろう。それが出来るようになれば、かなり レベルの高い結果の出せるチームになっている。 繰り返すが、ティーチングが出来なければコーチングは成り立たない。勝つために必要なこと を必要なだけ出来るか。自己スキルだけではなく、チームのためにどれだけ出来るか。そして、 それらの考え方を理解させられるか。指導者の技術、熱意が問われる。 ・1対9の法則 人間の成長量を全体で10とすると、練習によって1成長し、実践体験で9成長する。どんなに 熱心に取り組んでも練習の成果は1くらいしかない。最も選手が飛躍的に伸びていくのは実践で の経験や成功体験を自信にしたときである。だが、何事も1があるから234と進んでいくので あって、1がないと何も始まらない。つまり、9を伸ばすために1の大切さを知ること、練習の 効果を理解することが重要である。 成長のために絶対欠かせないものが練習であり、練習には「これほどまでに十分な練習を積ん できた」という自己満足と精神の安定を得られる利点があり、この事が実践で力を出せる源にな る。練習の段階では単純作業が多く、それを継続できるかがカギになってくる。しかし、その平 凡なことを継続することこそが非凡になる道なのである。 だから常に考えながらテーマを持って取り組むことが練習においては重要である。 練習(イメージ、スキル練習、体力筋力トレーニング、スキル練習、自主トレなど) ↓ 実践体験(練習試合、本番) ↓ 上手くいかないときは練習に戻る 成功体験(自信とプライドを持てる) 11.まとめ 11.まとめ 紀要の話を聞き、自分の今までの部活動で学んできたことをまとめるにはいい機会だと思い書き 始めた。同じ悩みを持つ若い指導者の方々に少しでも役に立つ部分があればと思ったが、なかな か考えがまとまらず苦労した。昔の資料を引っ張り出し、また恩師に話を聞きにいきまとめてみ た。書けることはまだまだあるが、まとめることが出来ずこのような内容になった。 一生懸命やればやるほど問題が出てくるので、忙しい我々には後回しにしたくなる仕事ではある が、生徒の成長がより近いところで見られるやりがいのある場所である。生徒に対する影響力も 少なくない。部活動の基本は生徒指導にある。畑違いの指導者が、熱意と努力で成功していく姿 を見てきた。技術指導が一番ではない。熱意である。熱意や本気が生徒に伝われば、半分以上の 指導は終わりである。生徒は馬鹿ではない。我々を見ている。我々の影響を受ける。自分を高め るという意味では最高の場所である。結果は後からついてくる。ついてこなくても問題ない。 生徒と一緒に汗をかき、一緒に成長していきたい。