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2006 第三問 財務諸表論 - Hasui Business Academy<HBA>/TOP

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2006 第三問 財務諸表論 - Hasui Business Academy<HBA>/TOP
Hasui Business Academy
~HBA~
公認会計士/論文式本試験・過去問解説
《2006 第三問 財務諸表論》
【解答を参照する場合の注意!】
論文試験に、巷でよく言われるような“部分点”などと行った採点は、基本的に存在しません。一
つの論文(例え 5 行でも 10 行でも論文です)の中で、部分部分は個々には正しいが、論文としては
相互に矛盾している内容が書いてあれば、もはや論文としては成立しないわけです。つまり、前提が
書けていない、もしくは論拠が間違っている、が、結果だけは正しく書けている、といった文章に何
の価値があるのか?ということです。文章の中で、内容が矛盾していれば、もはや論文ではないわけ
です。
したがって、試験委員(HBAでの添削でも同様ですが)は、論文としての上記の前提が先ず充た
されているか否かを、全体をさっと読んで判断し、上記の論文としての要件を充たしていないものは、
その時点で一切読みません(つまり、0 点です。やむを得ず得点に一律に下駄を履かせるような状況
においては、2~3 点前後の得点を付ける場合も無くはないようですが、その場合でも当然答案内容に
ついては無視されます)。論文の前提を充たした答案だけについて採点をする訳です。
問題文で何も問われてもいないのに、巷でよく説明されているような“先ず、定義・意義と要件を
書くとそれだけで部分点が来る”などといったことを真に受けて書いてはいけません。そのような答
案を書けば、その書いた行数分に当たる内容の点数を、答案作成時に既に失っていることになります。
上記のような短絡的な“部分点”など論文試験には存在しないことを重々肝に銘じておいてください。
無断転載厳禁- 1 -
Hasui Business Academy
【2006 年度・論述式本試験/会計学・第三問(財務諸表論)】
【問1/問題】
問1
次の(1)から(3)に答えなさい。
(1) 減損処理がなされた直後の固定資産の評価額は、その時点での回収可能価額を示している。したが
って、将来の収入見込額を基礎としてその評価額が決定されていると理解することもできる。こうし
た理解に基づけば、減損処理後に減価償却を行う余地はなく、減損処理のみを適用すべきとの見解が
ある。①しかし日本の基準では減損処理後の減価償却資産について、減価償却を行うこととしている。
その基礎にある考え方を述べなさい。
また、②回収可能価額ではなく公正価値を用いた場合であっても、減損処理後の減価償却資産につ
いて減価償却を行うべきであるとの見解が①とは異なる考え方に基づいて存在しうる。この異なる考
え方を述べなさい。
(2) 資産は、「過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源またはその同等
物」として定義されうる。ここにいう「経済的資源」とは、「キャッシュの獲得に貢献する便益の集合
体」を意味している。この定義を前提として、資産負債法の下での繰延税金資産が貸借対照表に資産
として計上される根拠を、当該繰延税金資産の評価と関連させて述べなさ。
(3) 企業年金制度を採用している企業には、退職給付に充てるため外部に積み立てられた年金資産が存
在する。この年金資産は、直接、当該企業の貸借対照表に計上されず、退職給付に係る負債の計上額
の計算にあたって控除される(ただし、控除によって負となる部分を除く。)。①このように年金資産
が直接、貸借対照表に計上されない理由を年金資産の要件と関連させて述べなさい。また、②年金資
産の運用から生ずる収益は、退職給付会計において、どのように取り扱われるのかを述べなさい。
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HBA/論文式本試験・過去問解説<2006 第三問 会計学(財務諸表論)>
【問1/解答】
問 1
(1) ①減損処理とは、本来、投資期間全体を通じた投資額の回収可能性を評価し、投資額に対する
回収可能性が見込めなくなった時点で、将来に損失を繰り越さないために帳簿価額を減額する会計
処理である。もとより、企業の利益計算においては、減価償却による規則的な費用配分を通じて、
毎期投資から生み出されるキャッシュフローから固定資産の取得原価の一部が控除され、回収され
ていく。ただし、投資の始点で見込んでいたキャッシュフローが、投資を続行していく途中で、当
初の見込み通りに回収されていない事に基づく使用価値の低下が生じた場合には、その部分を減損
の低下が生じた場合には、その部分を減損損失として認識し、切り取るのである。
資産価値の変動によって利益を測定する事や、決算日における資産価値を貸借対照表に反映させ
ることを目的とするのではなく、あくまでも取得原価基準・通常の償却計算の下で行われる帳簿価
額の臨時的な減額処理である。
②固定資産の帳簿価額が公正価値を上回っている状態を減損とする見解がある。帳簿価額が時
価を上回っているという状態が減損であると定義するのである。この場合、企業が使用し続ける資
産については減損処理時の再投資が擬制され、いったん市場平均まで帳簿価額が切り下げられるこ
とになるから、帳簿価額のうち、切り下げられることになる減損認識時点ののれん価値相当分額(企
業の使用価値が公正価値を上回っている額)が、その後の事業活動の中で企業利益として計上され
ていくことになる。
(2) 問題文における定義では、経済的便益として、キャッシュ・イン・フローに貢献する能力が考
えられ、資産を即物的に捉え、資産の機能が強調される。繰延税金資産は、将来の課税所得の発生
に伴う法人税等の支払額を減額する効果を有するため資産としての性格を有するとされる。すなわ
ち、繰延税金資産の計上は、発生した将来減算一時差異等の解消によって将来の納付税額の減額効
果があること、法人税等の前払額が将来の課税所得から回収することができることを根拠とする。
これは、キャッシュ・アウト・フローに対するマイナスとしてキャッシュ・イン・フローへの貢
献と捉えられ、したがって、繰延税金資産は、上記差異の解消年度に納付税額の減額分として評価
される。
(3) ①当該年金資産は退職給付の支払いのためのみに使用されることが制度的に担保されているこ
とから、これを収益獲得のために保有する一般の資産と同様に企業の貸借対照表に計上することに
は問題があり、かえって、財務諸表の利用者に誤解を与えるおそれがある。
また諸外国の基準においても年金資産を貸借対照表に計上せず、年金給付に係る債務の計算にお
いてこれを控除することが一般的である。よって、年金資産の額を公正な評価額により測定し、退
職給付に係る負債の計上額の計算において差し引く。
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Hasui Business Academy
②企業年金制度に基づく退職給付においては、外部に積み立てられた年金資産の運用により生
じると期待される収益を、退職給付費用の計算において差し引く。なお、企業年金制度に基づいて
積み立てられた年金資産の実際運用収益が期待運用収益を超過したときに、年金資産が当該企業年
金制度に係る退職給付債務を超過するが、当該超過額は退職給付債務から控除することはできな
い。また、一般的に年金資産の払戻しには制限があることから、実実際に当該超過額の払戻しが行
われない限り、これを利益として認識することはできない。
【問2/問題】
問 2 「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」では、条件付きの金融資産の譲渡に関して、リ
スク・経済価値アプローチと財務構成要素アプローチとがあると指摘されている。前者は、金融資産
のリスクと経済価値のほとんどすべてが他に移転した場合に当該金融資産の消滅を認識する方法であ
り、後者は、金融資産を構成する財務的要素(以下、「財務構成要素」という。)に対する支配が他に
移転した場合に、当該移転した財務構成要素の消滅を認識し、留保される財務構成要素の存続を認識
する方法である。これら二つのアプローチの基礎にある考え方は、金融資産のみならず、それ以外の
資産に対しても適用できるが、次の(1)および(2)のそれぞれのケースについて、これら二つの考え方に
基づいて分析し、それぞれの取扱いを、その理由とともに述べなさい.ただし、仕訳および数値例は
用いないこと。
(1) ある企業(譲渡人)が売掛金を第三者(譲受人)に譲渡したが、当該売掛金の債務者が支払不能
に陥った場合には、譲渡人がその売掛金全部を譲受人から買い戻す義務(リコース義務)を負って
いるケースにおける譲渡人側の譲渡時の取扱い。
(2) ある資産を一定期間賃借する賃貸借契約を締結し、当該契約の賃借人においてオペレーティング・
リース取引と判定されたが、中途解約した場合には、未経過リース料の総額を規定損害金として賃
貸人に支払う義務が存在しているケースにおける賃借人側の契約時の取扱い。
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HBA/論文式本試験・過去問解説<2006 第三問 会計学(財務諸表論)>
【問2/解答】
問 2
(1) リスク・経済価値アプローチの場合、リスクと経済価値がどの程度移転した場合にオフバ
ランスするかの判断は主観的であり、債権の一部を分離して流動化を図る場合にも二者択一的
である。本問の売掛金の場合、当該売掛金の債務者が支払不能に陥った場合には、譲渡人がそ
の売掛金全部を譲受人から買い戻す義務(リコース義務)を負っており、当該売掛金のリスク
と経済価値のほとんどすべてが譲受人に移転したとはいえない。したがって、当該売掛金の消
滅を認識しない。
財務構成要素アプローチは、異なる性格の取引がその関連性から一連の取引の構成要素とさ
れているものを、別々に扱うものであり、債権の一部を分離して流動化を図る要請に合う。そ
の場合、各構成要素を分解して公正価値を見積もる必要がある。本問の売掛金の場合、金融資
産の契約上の権利に対する支配が移転する場合の要件に照らして売掛金の譲渡時に債権元本
を回収する権利等の消滅を認識する一方、リコース義務を負っていることから、その発生を認
識し、当該リコース義務を時価で評価して計上する。
(2) 本問の取引はオペレーティング・リース取引であるが、中途解約した場合には、未経過リ
ース料の総額を規定損害金として賃貸人に支払う義務があり、実質的には解約しない場合とま
ったく同じ結果となるリース取引上の条件が存在することから、ファイナンス・リース取引と
しての要件であるノン・キャンセラブルを充たす。しかし、売買取引に準ずる処理が行われる
ファイナンス・リース取引の場合のフルペイアウトの要件は充たしてはいない。リスク・経済
価値アプローチによれば、対象資産のリスクと経済価値のほとんどすべてが賃借人に移転した
場合に資産の発生を認識すると考えられるため、当該リース取引に係る資産の発生を認識しな
い。
一方、財務構成要素アプローチは、一連の取引の構成要素とされているものを、別々に扱う
ものであり、取引に係る構成要素の一部を分離して認識することが可能である。したがって、
当該リース取引に係るリスク・経済価値のうち、契約時において当該賃借人に移転する構成要
素についてはその発生を認識することになるから、当該リース資産の発生を認識する。
以上
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