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2005年8月 第359号のPDFをダウンロード(1.2MB)
News JIKEN CENTER 自研センターニュース 8 August 2005 平成17年8月15日発行 毎月1回15日発行(通巻359号) 昭和51年5月27日 第三種郵便物認可 C O N T E N T S テクノセミナー ・・・・・・・・・・・・・・・・2 水素ロータリーエンジン RX-8ハイドロジェンRE 第30回オートサービスショー2005開催 ・・・・・・5 リペアリポート ・・・・・・・・・・・・・・・・6 トヨタカローラ(NZE121) リヤサスペンション損傷点検&取替 指数テーブルマニュアル作業項目の解説_ 67 _ ・・9 リペアインフォメーションS ・・・・・・・・・・10 メーカーへの提案活動を積極的に展開しています 調査・研究報告 ・・・・・・・・・・・・・・・12 先進安全自動車ASV(Advanced Safety Vehicle) 〈その3〉 リサーチング ザ スケルトンズ ・・・・・・・・・・18 スズキ アルト (HA24S系) お客様相談室レポート ・・・・・・・・・・・・・20 ホームページによる情報提供について 「構造調査シリーズ」新刊のご案内 ・・・・・・・・21 アウダネオⅡ活用塾 ・・・・・・・・・・・・・22 複合作業の工賃について 「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクト チーム参加」・・・・・・・・・・・・・・・・23 日本アウダテックス社指数テーブル「2005年8月号」 発行のお知らせ・・・・・・・・・・・・・・・23 編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 別冊 新型車情報 1 ∼□ 12 1スズキ エスクード (TD54W/TD94W)・・・□ 1 ∼□ 12 2ニッサン セレナ(C25型)・・・・・・・・・□ 別冊 特集 水性塗料Q&A 1 ∼□ 12 ∼自動車補修塗装の現状(いま)∼・□ TECHNO SEMINAR テクノセミナー 水素ロータリーエンジン RX−8ハイドロジェンRE 1.はじめに 近年環境負荷への小さい新たなクリーンエネル ギー車の開発が急務になってきている時代でハイ ブリッド車、燃料電池車両と開発を期待されてい る中、もっとも期待されているのが水素燃料です。 水素は燃焼後に水しか出さないという究極のク リーン燃料で、水素利用へ向けた技術としてマツ ダ(株) は内燃機関であるエンジンにこだわり、マツ ダの独自技術であるロータリーエンジン「RENISIS」 写真1 RX-8ハイドロジェンRE車 を開発されましたのでご紹介します。 2.機能 (1)デュアル・フューエルシステム REハイドロジェンエンジンは2種類の燃料を搭載 し、スイッチ (写真2) でガソリンと水素のどちらでも走 行できるデュアル・フューエルシステムを採用してい 切替スイッチ ます。ガソリン容量は61Lで水素容量は74L(35MPa) 最大出力はガソリン使用時で210ps、水素使用時は 110psと十分実用的な性能を発揮しています。 写真2 フューエルメーター及び切替スイッチ (2)エンジン 水素燃料は非常に引火性が高く通常のレシプロエンジンは吸気室が高温であることから吸気時に爆発 してしまうことがあり、ノッキングやバックファイヤーを起こしてしまうという課題がありました。こ れに対しロータリーエンジンでは高温の燃焼行程室と低温の吸気行程室が分離した構造のため、バック ファイヤーを生じることなく、良好な燃焼を実現でき、 さらに水素ガスインジェクターを直接ローターハウジ 水素ガス ングに取付けて(写真3)、水素を直接噴射(図1)す 電子制御水素ガス インジェクター る方式を採用し、より高い出力を実現しています。 サイドシール アベックスシール 電子制御水素ガスインジェクター 吸気 排気 コーナーシール 写真3 図1 2 自研センターニュース 2005年 8月号 点火プラグ TECHNO SEMINAR (3)ツインガスインジェクター(図2) 水素は密度が非常に小さいため、ガソリンに較べ、多量のガスを噴射しなければなりません。このた め複数のガスインジェクターが必要になりますが、レシプロエンジンでは構造上、燃焼室に直接取付け ることは困難であります。これに対し、ロータリーエンジンは十分な取付けスペースがあるため、1ロ ーターにつき2本のガスインジェクターを採用することが可能となりました。 また、レシプロエンジンでは1行程あたり出力軸 電子制御水素ガスインジェクター 回転角が180° なのに対しロータリーエンジンは 270° と長く、混合気の流動の強さと相まって十分な 水素と空気のミキシングが可能であり、水素 ロータリーエンジンでは、水素燃焼で重要となる 均一な混合気を作ることができます。 このツインガスインジェクターによって水素 ロータリーエンジンは実用的な出力を発揮するこ とができるようになります。 ローター 図2 (4)水素タンク 水素燃料タンクについては、気体水素の密度が低く、高密度貯蔵が困難であることから、従来のガス タンク内圧(15MPa程度)を大きく超える高圧タンクが開発され、現在は炭素繊維複合材にアルミ合金 ライニング(内張り)を施した35MPa級高圧タンク(写真4、図3)が搭載されています。ただし、DOE (アメリカエネルギー省)の計算によるとガソリン車と同程度の走行距離を得るためには70MPa級の高 圧タンクが必要とされています。 しかしこれらのタンクは、いずれも極めて高圧の水素をガソリン程度の安全性を維持して貯蔵する必要が あるため、安全保証のために、水素充填時のタンクをライフルで撃つガンファイアテストなどクリヤする強 度を持たなければなりません。また、貯蔵された液体水素は極低温であることから断熱対策も必要とし貯蔵 開始後からいわゆるボイルオフ (水素が気化すること) を考える必要があり問題も残ってます。 RX-8ハイドロジェンREの構造図 RENESISベースの電子制御 水素ガス直接噴射方式 ロータリーエンジン トランクルームとキャビンの密閉隔壁 万全の安全性を確保する ための水素検知センサー (計4カ所) エキス トラクター 350気圧の 高圧水素燃料タンク (容量74L) 水素メーター 写真4 水素タンク模型 高圧燃料タンクから供給される 水素ガソリンモードを RX-8と同一の 選択できる ガソリン燃料タンク 水素を5気圧まで減圧するレギュレーター (水素遮断弁内蔵) 燃料切替えスイッチ (容量61L) 図3 参考図 自研センターニュース 2005年 8月号 3 TECHNO SEMINARSEMINAR 3.発展 将来の水素ロータリーエンジンの性能向上にむけて、次のような新技術も合わせてご紹介します。 (1)電動アシスト式ターボチャージャー 低速域から高い過給効果を発揮する電動モーターアシスト式ターボチャージャーを採用。低回転域 ではモーターでターボチャージャーの作動をアシストして過給効果を高め、高速域では通常の排気ターボに よって過給し水素希薄燃焼でも十分な出力を実現します。 (2)マツダハイブリッドステム モーター・インバーター・144Vバッテリー で構成された補助動力のマツダハイブリッドシ ステムを採用。信号待ちなどで停車時には、燃 料消費を低減するため、原則的にエンジンが停 止し、発進時にはモーターにより自動的にエン ジンが始動します。また、低回転域でモーター が駆動してエンジントルクをアシストし、レス ポンスを効率的に高めます。さらに減速時には、 モーターが発電機として働き、減速によって発 生されるエネルギーを回生してバッテリーを充 写真5 水素ロータリーエンジンの発展系 電します。 水素RE自動車の将来システム 電子制御水素ガス直接噴射 ガソリン噴射 高圧水素タンク ハイブリッドモーター NOX触媒 3元触媒 ガソリンタンク 144Vバッテリー 図4 インバーター 電動モーター アシスト式 ターボシステム 水素ロータリー発展配置図 4.おわりに 今回、紹介したマツダハイドロジェンREついてはまだまだ開発段階であり、水素ステーションなど インフラ整備が整っていませんが、発売に向け着実に進んでいると考られます。21世紀の地球環境を みすえた、先進技術の車両が走り出す日を楽しみにしたいものです。 参考文献 マツダホームページ (株)自研センター発行アジャスターマニュアル基礎編先進自動車でも一部紹介しています。 (研修部/泉 浩二) 4 自研センターニュース 2005年 8月号 第30回オートサービスショー2005開催 今回で30回目の節目を迎えるオートサービスショーは、6月17日∼19日の3日間、東京 有明にある「東京国際展示場(東京ビックサイト) 」にて『整備が創る人と車と社会の絆』 をテーマに開催されました。 このオートサービスショーへの出展企業は146社(前回比15社増) を数え、機械工具界 の一大イベントであることはいうまでもなく、最新の整備市場の情報を得る貴重な場とし て常に注目され、毎回多くの来場者が訪れています。それでは、今回のオートサービス ショーの中身についていくつか紹介させていただきます。 メカニカル関係では、車検整備機器からハンドツールまで、非常に幅広い分野の機械 工具が展示され、その中でも近年の自動車の高度化(HID、キセノンヘッドライト装着車 の増加) に伴いその必要性が問われている「画像式ヘッドライトテスター」や、環境機器 ではクーラーガス回収機に再利用機能+ガスクリーニング機能がついているものが多く 見られました。 車体整備関係では、アルミ製外板パネル修正工具としてのスタッド溶接機が各社ほぼ 出揃い、これまで使用していたワッシャ溶植機を代替検討している工場にとっては、そ の性能比較、使い勝手を比較するには格好の場となったのではないだろうか。 また、高張力鋼板への対応として、高加圧力を備えたスポット溶接機も数多く出展さ れていました。 塗装関係では、環境対策製品が中心でしたが、これまでの欧州に倣った水性塗料一 辺倒ではなく、日本の気候条件にあった低VOC*型の塗料や製品が多く出展されていた ことが印象的でした。 以上のように、自動車の機能・構造・材料への変化に柔軟に対応し、多様化した顧客 ニーズに応えていくためのヒントを得る場として、今後も注目していきたいと思います。 *VOC:Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物) (技術部/松浦茂之) 自研センターニュース 2005年 8月号 5 REPAIR REPORT リペア リポート トヨタ カローラ(NZE121) リヤサスペンション損傷点検&取替 1.はじめに サスペンション部品は複雑な形状を持つものが多くあり、入力による軽微な曲がりや損傷が分かりづらく、 良否判定に多くの時間を要することがあります。また、点検のための明確な基準寸法等がないことなどから、 サスペンションの損傷診断に苦手意識を持っている方も少なくないと思います。しかし、入力方向やホイール アライメント測定値には損傷を見つけるための重要なヒントが隠されていますので、それらを考慮することで 比較的容易に損傷を見つけることが可能です。 今回は、ホイールアライメント測定値から入力方向を推測し、損傷診断をおこなった事例と、部品取替作業 をカローラ (NZE121)の実際におこなった作業でご紹介します。 2.測定結果からの推測 フロント部位の修理後に完成検査のためのホイールアライメント測定をおこなった結果、右リヤホイールア ライメントの数値に異常が見られました。また、リヤ周りを確認したところ右リヤホイールアーチに修復歴があ ることが確認できました。このため、右リヤタイヤ付近に何ら かの入力があったものと思われます。 アライメント測定数値を見ると、右リヤキャンバー測定値 は−2°41′ (基準値−1°30′ )で、右リヤトー測定値は−8.3mm (基準値+1.0mm) となっています。以上の結果から、タイヤの 上部へ後方(5時方向)からの入力があったと推測することが できます。 (写真1) 写真1 6 自研センターニュース 2005年 8月号 REPAIR REPORT 写真2 3.点検 車両をジャッキアップしてタイヤを取外しま す。今回はタイヤに入力があったと考えられるこ とから、ホイールベアリングの点検をおこないま した。右リヤハブを手でゆっくり回転させてみる とベアリングにゴリ感があることが分かりました。 したがって、この時点で右リヤアクスルハブ& ベアリングは取替と判断しました。 (写真2) さらにアクスルビームの点検が必要なため、右 写真3 リヤアクスルハブ&ベアリング、右リヤブレーキ を取外してアクスルビームの点検をおこないます。 入力方向の推測結果から、アライメントに変化を 隙間 与える部分を中心に点検をおこないました。 その結果、写真のようにアクスルビームのハブ 取付け面に曲がりが発生していることがわかりま した。 (写真3、4) アクスルビームのハブ取付け面が写真3、4のよ 写真4 うに変形しているので、キャンバーはネガティブ (−)に、トーはアウト(−)にそれぞれの数値 隙間 が変化したと考えられます。 リヤアクスルビームを取外したところ、右側の 写真5 ブッシュが前後方向に変形していることが分かり ました。したがって、ブッシュも取替と判断しま した。ブッシュは乗り心地に影響を与えるので、 ゴムの硬さを揃えるために通常は両側をセットで 取替えることになります。 (写真5) 自研センターニュース 2005年 8月号 7 REPAIR REPORT 写真6 4.取替作業 リヤアクスルビームの新品部品を購入したと ころ、ブッシュが圧入されていませんでした。 (アクスルビームとブッシュのASSY補給があり ません。)したがって、ブッシュを圧入する必要 があります。(写真6) ブッシュの形状からプレスを使用しての圧入 写真7 はできません。(写真7)修理書にはSSTを使用す るように指示されていますが、今回はSSTを使用 せずに汎用のプーラーを使用して圧入作業をお こなうことにしました。 汎用のプーラーを写 真 8 のようにセットし、 写真8 ブッシュを圧入していきます。2点支持のため圧 入工程でブッシュが斜めになりやすいので、こ れを防止するためにプラスチックハンマで周囲 を軽く叩きながら圧入します。 あとは損傷部品から取外した左右ブレーキと 左右アクスルハブ&ベアリングをリヤアクスル ビームに組付ければ終了になります。 取替部品:リヤアクスルビームASSY リヤアクスルハブ&ベアリング ¥45,200 ¥20,500 左右リヤアクスルキャリアブッシュ ¥1,790×2 5.おわりに 入力方向の把握やホイールアライメント測定結果の確認は、サスペンション部品の損傷診断において基本 中の基本と言えるかもしれません。サスペンション部品の損傷診断ではただ闇雲に部品を点検するのではな く、入力方向や入力経路を考え損傷形態を把握することで、 『どの部品の、どの部分が、どのように損傷して いるか』を想像することができます。そして、ホイールアライメント測定結果等を参考にすることで、さらに詳し く損傷形態を把握することが可能です。また、部品の補給形態をしっかり把握することで、取替に際してどの ような作業が必要になってくるのかが分かります。 サスペンションの損傷診断に苦手意識をお持ちの方は、この機会にもう一度損傷診断の基本を意識されて みてはいかがでしょうか? 8 自研センターニュース 2005年 8月号 (技術部/馬場裕之) 指数テーブル マニュアル作業項目の解説 −67− 今回は、指数テーブルマニュアル(2004年10月発行) を 除く作業 基本に、ボデー系の作業項目『B380 バックドア脱着 *ガラスの脱着または取替 B390 バックドア取替』について解説します。 (図1) *バックドアヒンジの脱着または取替 1.前提条件および作業内容 補足 *バックドアヒンジをボデー側に残して脱着または取替 *シーラに関しては損傷によりバックドアを板金修正し、 ヘミング部(パネル先端部)へシーラを塗布する場合 を行う作業 は補修塗装指数の付加指数の1m毎0. 1を必要な場 2.指数に含まれる主な作業 脱着 合加算して使用します。 *脱着に伴う配線・配管縁切りおよびそれに伴う必要 損傷によりバックドアを取替えた場合のシーラ塗布に 関しては補修塗装指数(塗り数値) に含んでいます。 範囲のトリム等の脱着 *立付調整 塗装作業工程ではプラサフ塗り後に作業するシーラ *水密テスト 塗布を含んでいるので、脱着・取替指数にはこのシ 取替 ーラ作業は含んでいません。 *取替に伴う配線・配管縁切りおよびそれに伴う必要 *防錆ワックスに関しては損傷によりバックドアを板金 修正または取替の場合、内側に防錆ワックスを塗布 範囲のトリム等の脱着または取替 *バックドアに取付いている付属品の脱着または取替 する作業は補修塗装指数の付加指数を必要な場合 主な付属品 加算して使用します。 ・フィニッシャ ・ランプ類 ・スポイラ (標準装備のみ) *バックドアのリヤコンビネーションランプ脱着または取 ・バックドアステー ・トリム ・ガーニッシュ 替が単独作業の指数項目(B408) として設定されて ・ワイパ機構部品 いる車種もあります。 *接着式のモールおよびエンブレムの取付け作業 *接着剤で取付いているリヤスポイラについては、脱着 *立付調整 し再使用するケースと取替えるケースがあり、脱着に *水密テスト ついては接着剤の除去と清掃作業を含んでいます。 そのため脱着と取替の指数値では脱着の指数が大 きくなるケースがあります。 (スポイラの指数を示す) 図1 B380 B390 バックドア脱着 バックドア取替 ●印の部品は当該作業範囲 1台 〈取替〉 〈脱着〉 前提条件および作業内容 *バックドアヒンジをボデー側に残して脱着または取替を行う作業 指数に含まれる主な作業 脱着 *脱着に伴う配線・配管縁切りおよびそれに伴う必要範囲のトリム等の脱着 *立付調整 *水密テスト 取替 *取替に伴う配線・配管縁切りおよびそれに伴う必要範囲のトリム等の脱着または取替 *バックドアに取付いている付属品の脱着または取替 主な付属品 ・フィニッシャ ・ランプ類 ・スポイラ (標準装備のみ) ・バックドアステー ・トリム ・ガーニュシュ ・ワイパ機構部品 *接着式のモールおよびエンブレムの取付け作業 *立付調整 *水密テスト 除く作業 *ガラスの脱着または取替 (指数部/島田東一) 自研センターニュース 2005年 8月号 9 REPAIR Information S リペア インフォメーション S メーカーへの提案活動を積極的に 展開しています ご承知の読者も多いと思いますが、自研センターではD&R(損傷性並びに修理性)調査を行ってお ります。今回も日産 ラフェスタ(B30)のD&R調査の過程でオートマチックトランスミッション「CVT 仕様」のインヒビスタスイッチと直前のラジエータの間隔が30mmと狭く、前方左側衝突時にインヒビ タスイッチが破損しやすい状況にあることが判明しました。以下少し詳しくご説明します。 写真1 1.オートマチックトランスミッション「CVT」 はエンジンルーム内の左側にあり、特に前方 左側の衝突時には直前のラジエータなどの後 退によりCVTシステムに損傷が及ぶことが考 えられます。(写真1) 写真2 2.ラジエータコアサポート(ラジエータA/Cコ ンデンサ付)を取外した状態です。CVTの上 部には、インヒビタスイッチが取付けられ、 インヒビタスイッチ その直ぐ前(約30mm)にラジエータがありま す。(写真2) 写真3 3.エンジンルーム内の○部がCVT上部に取付け られているインヒビタスイッチです。ラジエ ータ後方にインヒビタスイッチのコネクタ (緑色部)が突き出しており、前方左側衝突時 にはコネクタ部の破損が十分考えられます。 (写真3) 10 自研センターニュース 2005年 8月号 前 方 REPAIR Information S さて、CVT Assyの補給形態は如何かということになりますが、図1の赤色部分がインヒビタスイッチで す。この部品補給は残念ながら単体での補給が無く、仮にインヒビタスイッチのみ破損した場合に、こ の部品を取替えるには結局CVT Assy取替をしなければならないこととなります。参考までに価格を以 下に掲載します。 図1 部品コード 31020M 部品名称 オートマチックトランス アクスルAssy (CVT) 価格 352,000円 自研センターではプレサージュ(U31)のオートマチックトランスミッションATインヒビタスイッチ (図2)は単体補給があることに着目し、早速メーカー側に改善提案を行い、早々にラフェスタ(B30) においても単体補給が決定されました。参考までに以下プレサージュ(U31)の価格を掲載いたします。 なおラフェスタ(B30)の当該部品価格は発表されておりません。 図2 部品コード 31918 部品名称 インヒビタスイッチAssy 価格 5,430円 (技術部/高木文夫) 自研センターニュース 2005年 8月号 11 調査・研究報告 先進安全自動車 ASV (Advanced Safety Vehicle) <その3> 先月号に引き続き先進安全自動車のASVシステムについて記述してまいります。 今回は、「ブレーキ併用式車間距離制御機能定速走行装置」について触れていきます。 ブレーキ併用式車間距離制御機能付定速走行装置 (1)機能概要 このシステムは、レーダークルーズコントロールシステムと呼ばれ、走行車速を一定に保つ機能に加え、先 行車と自車との車速に比例した車間距離を保ちながら追従走行を行う機能(車間距離制御) を備えています。 また、高速道路、都市高速道など(ナビゲーションシステムで検知)での渋滞時における運転者の運転負荷 (アクセルとブレーキ操作) を軽減するために低車速領域(約30km/h以下) において、運転者が選択した先 行車との車間距離を自動的に制御する低速追従モードを備えたものもあります。 (2)構成部品配置図 参考:トヨタ クラウン (3)主要構成部品と主な役割 構成部品 12 役 割 レーザーレーダー・ センサー レーザー光を前方に照射し、その反射光から先行車の有無・車間距離・相対速度を 検出し、ディスタンス・コントロールコンピュータへ出力する。 エンジン・コントロール・ コンピュータ レーダークルーズコントロールシステムの機能を制御する。 スピードセンサー(SP1) 車速信号をエンジン・コントロール・コンピュータへ出力する。 スロットル コントロール・モータ エンジン・コントロール・コンピュータからの信号に応じてスロットル・コント ロールバルブを設定開度に調整する。 バルブボディー ソレノイドが組み込まれており、エンジン・コントロール・コンピュータからの 信号に応じて、シフトダウンまたはシフトアップを行う。 スキッド・コントロール・ コンピュータ ディスタンス・コントロール・コンピュータからの信号によりブレーキ制御を行う。ディ スタンス・コントロール・コンピュータからの信号により接近警報ブザーを吹鳴する 自研センターニュース 2005年 8月号 調査・研究報告 (4)システムの呼称および設定車両 メーカ トヨタ システム呼称 レーダー クルーズ コントロール システム 車 種 セルシオ 全グレードにメーカオプション(73,500円) クラウン ロイヤルサルーンG、ロイヤルサルーン、Uパッケージ、ロイヤルサルー ンⅠ−Foreにメーカオプション(73,500円) ブレビス Ai300、Ai250にメーカオプション(84,000円) プログレ アルファード エスティマ クラウン マジェスタ マークX シーマ ニッサン 車間自動制御 システム 3.0MZ、3.0Gエデションにメーカオプション(100,800円) 3.0Lのみにメーカオプション(84,000円) 全グレードにメーカオプション(低速追従モード付き105,000円、追従 モード無し73,500円) 300Gプレミアムにメーカオプション(100,800円) 450VIP、450XVに標準装備、450XL、300G、300Gグランドツーリングにメーカオプション (車間距離制御+シートベルト+ブレーキアシストのセットオプションで147,000円) 3.0L車にメーカオプション(73,500円) グロリア 3.0L車にメーカオプション(73,500円) フーガ インスパイア アコード IHCC 2WDNC300、NC250にメーカオプション (価格3.0L車84,000円 2.5L車111,300円) セドリック エルグランド ホンダ 備 考 全グレードにメーカオプション VDC+車間自動制御のセットオプションで178,500円 250GT、250XVを除くグレードにメーカオプション(178,500円) アバンツァーレに標準装備 24TL、24Lにメーカオプション(24TL367,500円、24L462,000円) オデッセイ アブソルートにメーカオプション(262,500円) エリシオン VZに標準装備。他グレードには設定無し。 レジェンド メーカオプション(アドバンスHIパッケージ577,500円、アドバンス パッケージ262,500円) スバル ADA レガシィ ダイハツ レーダー クルーズ コントロール システム ムーブ 3.0R ADA、3.0Rアイボリーレザーセレクションに標準装備 カスタムRSリミテッドにメーカオプション (5)参考 レーダーセンサ取付け位置例 写真 トヨタ クラウンマジェスタ 車両前部ラジエータグリル中央後部に位置して いる場合は、レーダークルーズ+プリクラッシュ システムも搭載している車両になります。この場 合のセンサーはミリ波タイプのレーダーを使用し ています。 自研センターニュース 2005年 8月号 13 調査・研究報告 写真 トヨタ クラウンマジェスタ フロントバンパ右に位置している場合は、レー ダークルーズのみを搭載している車両になります。 この場合のセンサーはレーザータイプのレーダー を使用しています。 写真 ホンダ エリシオン この車両は、ミリ波タイプのレーダーを使用してお り、フロントグリル中央後部に位置しています。 写真 ダイハツ ムーブ 写真内赤丸が、レーダーセンサになります。 写真 スバル レガシィADA搭載車両 写真内赤丸がレーダーセンサになります。 14 自研センターニュース 2005年 8月号 調査・研究報告 写真 ニッサン エルグランド この車両の場合、レーダーセンサはニッサンオー ナメント部に装着されています。レーダー搭載車 両はグリルの形状が未搭載車とは異なるため、外 観からレーダー搭載車であることの判断が可能。 (レーダーを透過する材質のため、ノーマルとは 形状が異なる。 ) 写真 ニッサン ステージア この車両の場合、レーダーセンサが車両中央に 位置しています。 レーダー搭載車 レーダー未搭載車 ●車両中央部分にレーダーが搭載されている車両のグリルは、レーダーを透過する材質を使用している ため、形状が異なります。→搭載車か否かの判断材料となります。 ●フロントバンパ付近にレーダーが取付けられている場合、バンパ部に長方形の穴が開いているのでこ れによってもレーダーセンサ搭載の有無の判断材料になります。 自研センターニュース 2005年 8月号 15 調査・研究報告 (6)部品価格とレーダー取付け位置 メーカ 車 種 セルシオ 価格 補給形態 レーダー価格 ブラケット 補給の 有無 *250,000円 レーダー取付け位置 車両左 バンパ 無 車両中央 フロント グリル 車両右 バンパ ○ ○ 133,000円 トヨタ クラウン 133,000円 無 ○ ブレビス 133,000円 無 ○ プログレ 133,000円 無 ○ アルファード 133,000円 無 ○ エスティマ 133,000円 無 ○ ハリアー *250,000円 無 ○ 無 ○ ○ ○ 133,000円 クラウン *250,000円 マジェスタ 133,000円 シーマ 101,000円 有 ○ ステージア 101,000円 有 ○ セドリック 101,000円 無 ○ グロリア 101,000円 無 ○ エルグランド 101,000円 無 フーガ 104,000円 無 エリシオン *210,000円 有 ○ オデッセイ *210,000円 有 ○ インスパイア *210,000円 有 ○ アコード *210,000円 有 ○ スバル レガシィ 不明 有 ダイハツ ムーブ 不明 ニッサン ニッサン ○ ○ ○ ○ *=ミリ波レーダー (7) 修理書記載状況 高額部品であるレーダー部に入力があった場合の使用可否ついて修理書記載状況の調査を行いました。 メーカ トヨタ 修理書記載状況 作業中に落下させたもの、強い衝撃を与えたものは使用しないこと。 ニッサン 特に記載は見られない。 ホンダ 特に記載は見られない。 スバル 特に記載は見られない。 トヨタのみ、記載がなされていますが、衝撃の程度が明確になっていません。 レーダー部品は、取付け後照射位置調整を行う必要があります。調整を行うには、各メーカ専用の故 障診断機が必要になります。 16 自研センターニュース 2005年 8月号 調査・研究報告 メーカ別略語意味 文中に出てくる略語の正式名称、意味は以下のようになります。 略 語 正 式 名 称 意 味 トヨタ LKA Lane Keeping Assist 車線維持支援装置 HUD Head Up Display ヘッドアップディスプレイ TFT‐LCD Thin Film Transistor− 薄膜トランジスター方式液晶ディスプレイ Liquid Crystal Display TaSCAN トヨタ車専用故障診断機 ニッサン CONSULT−Ⅱ ニッサン車専用故障診断機 ホンダ CMS Collision Mitigation brake System 衝突軽減ブレーキシステム EBD Electronic Brake force Distribution 電子制御式制動力配分システム EPS Electric Power Steering 電動パワーステアリング HDS Honda Diagnostic System ホンダ車専用故障診断機 LDWS Lane Departure Warning Systems 車線逸脱警報装置 LKAS Lane Keep Assist System 車線維持支援装置 IHCC Intelligent Highway Cruse Control クルーズコントロール VSA Vehicle Stability System 車両挙動安定化制御システム スバル ADA Active Driving Assist ドライバーの状況把握や判断能力を、クルマが総合的にアシストする運 転支援システム。 各メーカー共通 ABS Antilock Braking Systems アンチロックブレーキ装置 AFS Adaptive Front Lighting Systems 配光可変型前照灯 BA Brake Assist ブレーキの踏み込み力を補助してブレーキ力を増す装置 CAN通信 Controller Area Network クルマのECU間の通信ネットワーク CCD Charge−Coupled Devices 光(光子)の入力に応じて蓄電容量が変化する半導体素子(フォトダイオー ド) を用いた、光(画像)信号を電気信号に変換するデバイス。 LED Light Emitting Diode 発光ダイオード TCS Traction Control Systems 滑りやすい路面等の発進時、駆動輪の空転を防ぐ装置 (技術部/出町孝治) 自研センターニュース 2005年 8月号 17 Researching The Skeletons リサーチング ザ スケルトンズ スズキ アルト (HA24S系) この「Researching the Skeletons」では外部から ドメンバは、左右共に「リインホースメント」が は確認することができないフロントサイドメンバ 溶接されています。さらに中央部には、エンジン およびリヤサイドメンバ内側のリインホースメン マウントおよびトランスミッションマウント取付 ト等の位置や板厚を分かり易く紹介していくもの 用の「リインホースメント」も溶接されています。 で、データは実際に自研センターで調査した内容 リヤフロアサイドメンバは、左右共に「リイン を転記したものです。 ホースメント」が取付けられていません。 今回はスズキのアルト (HA24S系) を取上げます。 新プラットフォームを採用したこのフロントサイ フロントサイドメンバ 左外側 左内側 t:1.6mm t:1.6mm t:1.6mm 右外側 右内側 t:1.6mm t:1.6mm t:1.6mm 18 自研センターニュース 2005年 8月号 Researching The Skeletons 正面(取付状態) 正面(取外し状態) リヤフロアサイドメンバ位置 リヤフロアサイドメンバ位置 上側(取付状態) 上側(取外し状態) t:1.0mm t:1.0mm t:2.0mm t:1.3mm t:1.5mm 下側 (指数部/篠原清次) 自研センターニュース 2005年 8月号 19 Customer Relations Department REPORT お客様相談室レポート ホームページによる情報提供について 自研センターのホームページでは、会社案内のほか、出版物や修理技術についても情報提供をさせて いただいております。おかげさまでその利用も着実に増えており、その一端をご報告申し上げます。 まずアクセスの総件数ですが、昨年と今年とを比較いたしますとその増加は顕著です。3月∼5月の 3ヶ月平均を比べますと昨年が1198件だったところ、今年は2786件と約2.3倍となっております。 アクセス件数 (件) 3500 3000 2004年 2005年 2500 2000 1500 1000 500 0 3月 4月 5月 また個別に見てまいりますと、修理技術情報のひとつとして皆様からご好評を頂いている「リペア インフォメーション」ですが、同様に3月∼5月の3ヶ月平均を比較しますと、昨年が1235件、今年が 1895件と約1.5倍に増加しております。今年6月にはさらに180件ほどの新情報を加え全部で566件の修理 技術情報を掲載しています。さらに多くのご利用いただけるものと期待しております。 リペアインフォメーション (件) 2500 2004年 2005年 2000 1500 1000 500 0 3月 20 自研センターニュース 2005年 8月号 4月 5月 Customer Reletions Department REPORT さらに昨年の10月に更新させていただいた「カラーコード表」についても同様の比較を致しますと昨 年が289件、今年が582件と倍増しております。今年も10月に新情報を掲載する予定です。 カラーコード表 (件) 900 800 2004年 2005年 700 600 500 400 300 200 100 0 3月 4月 5月 そして当社で発刊している出版物へのお問い合わせ状況ですが、ここ3ヶ月の推移を見ますと、おか げさまで全体的に着実に増えてきております。これら出版物自体の内容の充実を図るとともに、ホー ムページを利用してご購入いただける方法を検討するなど、利便性の向上にも取組んで参ります。 出版物 (件) 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 自研センターニュース 構造調査シリーズ ビデオ&CD その他資料 2005年3月 2005年4月 2005年5月 今後ともタイムリーな情報の更新、バージョンアップに努めて参りますので、皆様のますますのご 利用をお願い申し上げます。 「構造調査シリーズ」新刊のご案内 自研センターでは新型車について、損傷した場合の復元修 理の立場から見た車両構造、部品の補給形態、指数項目と (総務企画部/水本和秀) No. 車 名 型 式 409 トヨタ クルーガーハイブリッド MHU 28系 410 ニッサン ノート E11系 411 ダイハツ ハイゼットカーゴ S320V、S330V系 その作業範囲、ボデー寸法図など諸データを掲載した「構造 調査シリーズ」を発刊しておりますが、今月は右記新刊をご 案内しますので、ぜひご利用ください。定価は1,120円です (税込み、送料別)。 お申し込みは自研センター総務企画部までお願いします。 TEL 047-328-9111 FAX 047-327-6737 自研センターニュース 2005年 8月号 21 アウダネオⅡ 活用塾 5 複合作業の工賃について 複数の部品を同時に取替える作業(複合作業)を行った場合、各々の取替指数値を単純に加算せず、 関連する重複作業を配慮し割り引いた指数値となっています。 アウダネオⅡで複合作業を選択した場合、注意すべきことを取上げました。 【トヨタ・ファンカーゴ20・21・25の事例】 1.クォータパネルとボデーロワーバックパネルを取替える場合、見積明細の指数は7.00となります。 ヘルプボタンで指数テーブルを開き作業 No.B310を確認すると8.50となっています。 指数テーブルに掲載されている、指数値8.50の 作業条件として、(含)片側ルーフサイドパネ ルアウターとなっています。 2.ルーフサイドパネルアウターの取替を加えると見積明細の指数は8.50となります。 この事例のようにアウダネオⅡでは、取替部品の組合わせによって必ずしも計算される数値と指数値 とは一致しません。複合作業ではヘルプボタンで指数テーブルを開いて、該当する作業項目の作業条件、 指数値を確認することができますので、ヘルプボタンを活用して下さい。 22 自研センターニュース 2005年 8月号 「自動車盗難等の防止に関する 官民合同プロジェクトチーム」参加 2004年に全国で発生した自動車盗難件数は58,737件、対前年比5,486件減少となり4 年ぶりに6万件を下回りました。ただし1998年には35,884件であったことを考えますと、 依然として高水準であると言わざるを得ません。また北関東(埼玉、群馬、栃木)では逆 に増加するなど、盗難防止への取組みの手を緩めるわけにはいきません。 このたび自研センターは、警察庁等関係省庁と日本損害保険協会、日本自動車工業 会など民間団体で構成する「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチー ム」にオブザーブながら参加することとなりました。 今後このプロジェクトチームでは、英国ですでに実施され効果が顕われている自動 車の「防盗性能評価」の導入について検討していく予定であり、自研センターはそれへ の参画を通じ、自動車盗難の低減に向け、社を挙げて協力してまいります。 (総務企画部/水本和秀) 日本アウダテックス社 指数テーブル「2005年8月号」発行のお知らせ ●2005年8月号 国産車・指数テーブル ※「2005年8月号」のみの単独販売は行っておりま (4メーカー・4車種) メーカー名 車 名 型 式 日 産 ノート E11系 スバル R1 RJ1・RJ2系 ホンダ レジェンド KB1系 ダイハツ ハイゼッドカーゴ S320V、S330V系 せん。購入を希望される方は下記「2005年版セッ ト」 (年間購読) をお求めください。 【2005年版】 ●2005年8月号は、輸入車の発行はございません。 ・国産車セット <商品番号:2005価格:¥18,000> ・輸入車セット <商品番号:3005価格:¥4,000> ・国産車・輸入車セット <商品番号:4005価格:¥20,000> ※バックナンバーは、2004年版の「国産車・輸入車セット」 「国産車セット」 「輸入車セット」 と 「2003年版」 となります。な お、在庫がなくなり次第販売を終了させていただきますのでご了承ください。 ※ご購入の際のご不明な点は、下記にお問い合わせください。 《ご注意》 2004年度版より、指数テーブルは「国産車」セット、 「輸入車」セット、 「国産車・輸入車」セットと別けて取 り扱うようになりました。 ◆「指数テーブル」のご注文およびお問い合わせ◆ 日本アウダテックス株式会社 TEL:03-5351-1900(代) FAX:03-5350-6305 自研センターニュース 2005年 8月号 23 http://jikencenter.co.jp/ ●編集後記● 最近 テレビ、新聞等では太平洋戦争後60年特集が企画され様々な観点から報道されています。また更に 遡れば東郷司令官率いる連合艦隊が日本海でロジェストウェンスキー司令官率いるバルチック艦隊をほぼ完全 に壊滅させてから100年が経過しました。どちらにしても国家存亡の危機を背景として日本は不退転で戦った 戦争であります。100年前は辛くも勝利(というよりも負けなかった) し、幕末に各国と交わした不平等条約の是 正のきっかけを掴み世界の列強国の仲間入りを果たした戦争でもありました。一方60年前は戦争による犠牲者 を300万人以上出し欧米各国を中心にした連合国に完膚無きまでに叩きのめされ世界の最弱国の1つになって しまった戦争でした。 戦争は勝利するにせよ、負けるにせよ、国家は国民に大きな犠牲を強いるものですし、その時代に生きた国 民にとってはどれほど苦しい状況であったかと思います。しかし100年前の日本人は少し違っていたようです。 帝国主義を背景としてロシアの南下政策に圧迫を受けた時、欧米流の国民となってまだ40年しか経っていない 日本人の国に対する思いは初々しくもあり、純情可憐でもありました。もしかするとこの時初めて日本国民一人 一人が日本を意識し、日本を守る戦いだと国民全体が明確に意識したのではないでしょうか。このことは物量 面で陸海軍含め相当有利と言われたロシアと戦い大方の予想を裏切って勝利した最大の要因の一つであった と思われます。実はこのことがその後の日本を狂わせることとなったのです。つまり60年前の悲惨な結果をもた らす大きな要因がここにあったともいえるのでしょう。 しかし国民の民度の比較で戦争に決着がつくはずもありません。もう一つ重要なことが戦争指導者つまり組織 における指揮官の戦略、戦術を含めた能力の問題であります。 (陸軍における大山巌とクロパトキン、海軍にお ける東郷平八郎とロジェストウェンスキーの比較)もっと言えば軍に限らず当時の各界に於ける組織のトップの 力量の問題であります。勿論人間の能力では計り知れない天佑が日本を勝利に導いたことを否定することは出 来ませんが、トップの決断とそれを実行する組織構成員の力が統合されて本当に強い集団になるのでしょう。 組織の強さを計る尺度は100年前でも現代でもその内容には変りがないのかも知れません。 自研センターニュース 2005.8(通巻359号)平成17年8月15日発行 昭和51年5月27日 第三種郵便物認可 定価336円(消費税込み、送料別途) C 発行所/株式会社自研センター 〒272-0001 千葉県市川市二俣678-28 Tel(047)328-9111(代表) Fax(047)327-6737 発行人/鈴木 稔 編集人/小林吉文 ⃝ ※乱丁、落丁の場合はお取り替えいたします。 本誌の一部あるいは全部を無断で複写、複製、あるいは転載することは、法律で認められた場合を除き、著作者の権利の侵害となりますので、その場合に は予め、発行人あて、書面で許諾を求めてください。JKCニュースの掲載記事に関するお問い合わせ先はニュース編集事務局までご連絡ください。