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TMI 中国最新法令情報 ―(2014 年 8 月号)

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TMI 中国最新法令情報 ―(2014 年 8 月号)
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TMI 中国最新法令情報
―(2014 年 8 月号)―
月号
TMI 総合法律事務所
〒106-6123 東京都港区六本木 6-10-1
六本木ヒルズ森タワー23 階
TEL: +81-(0)3-6438-5511
E-mail: [email protected]
〒200031 上海市徐匯区淮海中路 1045 号
淮海国際広場 2606 室
TEL: +86-(0)21-5465-2233
〒100020 北京市朝陽区朝外大街乙 12 号
昆泰国際大厦 2412A 室
TEL:+86-(0)10-5925-1200
皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。
お客様の中国ビジネスのご参考までに、「TMI 中国最新法令情報」をお届けします。記事
の内容やテーマについてご要望やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下
さい。バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきますので、
併せてご利用下さい。(http://www.tmi.gr.jp/global/legal_info/china/index.html)
目次
一.中国最新法令
1. 中央法規
(1) 国務院による一連の行政審査認可項目等の事項の取消及び調整に関する決定
(2) 税関総署のクロスボーダー貿易電子商取引による貨物、物品の輸出入に係る監督管理
事項に関する公告
(3) インターネット取引プラットフォーム契約約款規範ガイドライン
(4) 「医療器械生産監督管理弁法」、「医療器械経営監督管理弁法」
二.連載
二. 連載 中国企業法実務/第六弾:知的財産権
三.中国法務の現場より
三.
中国法務の現場より
(第 7 回
著作権法)
著作権法 )
1.新聞スタンドの強制取り壊し騒動(北京)
2.企業情報公示暫定条例及び関連規則の公布について
1
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一.中国最新法令(2014
年 7 月中旬~2014
年 8 月中旬公布分)
一.中国最新法令
月中旬~
月中旬公布分
1.中央法規
国務院による一
(1) 国務院による
一 連の行政審査認可項目等の事項の取消及び調整に関する決定 1
国務院
①
2014 年 7 月 22 日公布
同日施行
背景
国務院機構の改革及び役割転換を目指し、行政効率を向上させるため、2013 年 3 月 14
日の第十二期全国人民代表大会第一次会議で「国務院機構改革及び政府職能転換計画」2
が批准された 3。この計画の趣旨を踏まえて、2013 年からこれまで 3 回にわたって、国
務院の審査認可項目の取消及び権限委譲(中国語では「下放」)が行われた 4。
今回の決定は 4 回目であり、45 項目の行政審査認可項目を取消又は権限委譲し、11
項目の職業資格許可及び認定事項を取消し、31 項目の工商登記前置審査認可事項を後置
審査認可事項 5に変更した 6。今回、取消及び権限委譲した行政審査認可事項のうち、投
資や創業等の経済社会の発展に関するものは約 30 項目、社会組織や事業部門業務活動に
関わるものは約 10 項目、企業資質に関するものは 5 項目である 7。その取消又は権限委
譲項目及び工商登記審査認可修正事項の中には外資に関わるものがあり、その内容につ
いて紹介する。
② 主な内容
今回の決定のうち、外資に関わるものを整理すると、次の表のとおりである。今後も
国務院機構の改革及び役割転換に関する調整が続くので、引続き今後の動きに注目する
必要がある。
1
《国务院关于取消和调整一批行政审批项目等事项的决定》(国发[2014]27 号)
《国务院机构改革和职能转变方案》(2013 年 3 月 10 日)
3
国務院は、2001 年に行政審査認可制度の改革を決定し(「行政審査制度改革業務の実施意見に関する通知」
(国発[2001]33 号))、2012 年までに、計 6 回の行政審査認可事項の取消、調整を行った。
4
1 回目は「行政審査認可項目等事項の取消及び権限委譲に関する決定」(国発[2013]19 号、2013 年 5 月 15
日公布・施行)、2 回目は「50 項目の行政審査認可項目等事項の取消及び権限委譲に関する決定」(国発
[2013]27 号、2013 年 7 月 13 日公布・施行)、3 回目は「一連の行政審査認可項目の取消及び権限委譲に関
する決定」(国発[2013]44 号、2013 年 11 月 8 日公布・施行)。
5
商務部門による審査認可(外商投資企業の場合)及び工商管理局における工商登記という通常の会社設立
手続以外に、その他の特別な審査認可を受ける必要がある場合は、前置審査認可と後置審査認可という二つ
の審査認可方式がある。前置審査認可(中国語では「前置审批」)とは、特別な審査認可を受けてから通常
の会社設立手続を行うことをいい、後置審査認可(中国語では「后置审批」)とは、通常の会社設立手続を
行ってから、特別な審査認可を受けることをいう。前置審査認可から後置審査認可に変更されることによっ
て、会社の設立期間が短縮され、より早く経営の軌道に乗せることが可能になる。
6
なお、
「50 項目の行政審査認可項目等事項の取消及び権限委譲に関する決定」
(国発[2013]27 号、2013 年 7
月 13 日公布・施行)及び「一連の行政審査認可項目の取消及び権限委譲に関する決定」(国発[2013]44 号、
2013 年 11 月 8 日公布・施行)において提出された、取消及び権限移譲のために法律改正が必要な行政審査
認可項目のうち、8 項目については、全国人民代表第会常務委員会が関連法律の改正を行ったため、今回の
決定において取消又は権限委譲された 45 項目と併せて公布された。
7
http://www.gov.cn/xinwen/2014-08/12/content_2733835.htm
2
2
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表 1: 取消又は権限委譲に関する項目
通し
項目名称
番号
10
24
外資及び中方サル
審査認可部門
交通運輸部
その他共同審査
設定根拠
認可部門
無
外資の参加による中国沿海
ベージ業者による
水域の沈没船及び沈没物の
サルベージ合作に
サルベージに関する管理弁
関する審査認可
法(国務院令第 102 号)
奨励類外商投資企
商務部
発展改革委
「国務院による輸入設備税
業項目確認の審査
収政策の調整に関する通
認可
知」(国発[1997]37 号)
処理決定
取消
取消
「国家計委、国家経貿委、
外経貿部、税関総署による
国務院の輸入設備税収政策
実行の関連問題に関する通
知」(計規画[1998]250 号)
39
外商投資旅行社業
国家旅行局
商務部
務許可
「旅行社条例」
(国務院令第
省レベル
550 条)
人民政府
旅行行政
主管部門
に権限委
譲
表 2: 工商登記審査認可に関する改正事項
通し
番号
12
項目名称
中外合弁経営、中外
審査認可部門
文化部
その他共同審査
認可部門
文化部
合作経営の興行ブ
設定根拠
処理決定
「営業性興行管理条例」
(国
後置審査
務院令第 528 号)
認可事項
ローカー機構設立
に修正
の審査認可
13
中外合弁経営、中外
文化部
文化部
合作経営の興行場
「営業性興業管理条例」
(国
後置審査
務院令第 528 号)
認可事項
所事業者設立の審
に修正
査認可
19
24
中外合弁、合作経営
省レベル人民政
「娯楽場所管理条例」
(国務
後置審査
の娯楽場所設立の
府文化行政主管
院令第 458 号)
認可事項
審査認可
部門
外商投資広告企業
文化部
工商総局
に修正
省レベル人民政
「国務院による、保留が必
後置審査
の分支機構設立の
府工商行政管理
要な行政審査認可項目に対
認可事項
審査認可
部門及び規定に
して行政許可を設定するこ
に修正
符合する外商投
とに関する決定」
(国務院令
資企業の審査確
第 412 号)
3
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認登記権限を有
「国務院による行政審査認
する工商行政管
可項目の取消・調整(第 6
理部門
回 ) に 関 す る 決 定 」( 国 発
[2012]52 号)
「外商投資広告企業管理規
定」
(工商総局、商務部令第
35 号)
外商投資旅行社業
30
国家旅行局
務許可
省レベル人民政
「旅行社条例」
(国务院令第
後置審査
府旅行行政主管
550 号)
認可事項
部門
に修正
(2) 税関総署
税関総署の
の クロスボーダー貿易電子商取引
クロスボーダー貿易 電子商取引による貨物、物品の輸出入に係る監督管理
電子商取引 による貨物、物品の輸出入に係る監督管理
8
事項に関する公告
税関総署
2014 年 7 月 23 日公布
2014 年 8 月 1 日施行
① 背景
電子商取引(Electronic transaction)とは、OECD (経済協力開発機構)の広義の定義
によると、
「企業、家庭、個人、政府その他の公的・私的組織間を問わず、コンピュータ
を媒体としたネットワーク上で行われる物又はサービスの販売又は購入である。物又は
サービスは、ネットワーク経由で注文が行われるが、物又はサービスの決済や最終的な
配送については、オンライン、オフラインを問わず行われる。」とされている 9。
近年、中国のクロスボーダー貿易電子商取引が急速に発展し、それに伴い問題も生じ
ている。例えば、電子商取引企業又は個人が郵便で海外に輸出販売した商品に関して、
外貨決済処理もできず、輸出税金の還付も受けられなかったという問題が挙げられる。
こうした問題に対応するため、税関総署は 2014 年 7 月 23 日に「クロスボーダー貿易電
子商取引による貨物、物品の輸出入に係る監督管理事項に関する公告」(以下「本公告」
という。)を公布した。
② 主な内容
本公告は、主に監督管理要求、企業登録登記及び届出管理、電子商取引による貨物、
物品の輸出入管理とそのモニタリングに関して規定しており、その内容は以下のとおり
である。
ア
電子商取引を行う企業又は個人が、税関の承認を得て、かつ税関ネットワークの電
子商取引プラットフォームを通じて貨物・物品の輸出入に係るクロスボーダー取引を
(本公
実現しようとする場合は、本公告に従い、税関の監督管理を受けるものとした。
告第 1 条第 1 項)。
イ
電子商取引企業は「中華人民共和国税関クロスボーダー貿易電子商取引貨物輸出入
申告リスト」
(本公告の添付 1)を、個人は「中華人民共和国税関クロスボーダー貿易
電子商取引物品輸出入申告リスト」
(本公告の添付 2)を提出して申告手続を行う(本
8
《关于跨境贸易电子商务进出境货物、物品有关监管事宜的公告》(海关总署公告 2014 年第 56 号)
http://www.oecd.org/science/sci-tech/36177203.pdf(An electronic transaction is the sale or purchase of goods or
services, whether between businesses, households, individuals, governments, and other public or private organisations,
conducted over computer-mediated networks. The goods and services are ordered over those networks, but the
payment and the ultimate delivery of the good or service may be conducted on or offline.)
9
4
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公告第 1 条第 2 項)。また、電子商取引の輸出入貨物、物品を預かる税関監督管理場所
の経営者は、税関で電子商取引業務を展開する届出手続を行い、税関の監督管理を受
け、届出手続を行わない限り、電子商取引業務を展開することができない(本公告第
1 条第 3 項)。
ウ
電子商取引業務を展開する企業は、税関で申告業務を行う必要がある場合、税関の
申告部門の登録登記管理の関連規定に基づいて登録登記手続を行い、登録登記情報の
変更又は抹消手続をする必要がある場合、登録登記管理の関連規定に基づいて行う(本
公告第 2 条第 1 項)。
エ
電子商取引による貨物、物品の検査は、税関管理監督場所内で行う(本公告第 4 条
第 1 項)。税関監督管理場所の経営者は電子保管管理システムを通じて、電子商取引
により輸出入する貨物、物品に対して管理を行い、毎月 10 日までに税関に前月の税
関管理監督場所に出入りした貨物、物品の総数と明細等のデータを伝送する(本公告
第 4 条第 2 項)。
本公告が施行されるまでは、電子商取引企業又は個人は EMS や国際郵便小包等を通
じて、商品を海外へ輸出販売していた。このような取引行為は一般の郵便と区別されず、
税関の監督や管理が及ばなかったため、海外に輸出販売された商品に関して、外貨決済
処理もできず、輸出税金の還付も受けられなかった。本公告の公布により、電子商取引
企業は、今後、税関に対して上記の輸出入申告リストを毎回の取引で提出し、通関手続
を行うことになる。また、電子商取引企業は税関に対して毎月 10 日前までに前月の取引
明細書で記載した貨物の数量、金額、件数等を整理した「輸出入貨物申告書」を提出し、
税関はそれに対する「申告証明書」を発行する。これにより、上記の外貨決済と輸出税
金の還付ができないという問題が解決された。
(3) インターネット
インターネット取引プラット
取引プラットフォ
取引プラットフォーム契約
フォ ーム契約約款
ーム契約 約款規範
約款 規範ガイド
規範ガイドライン
ガイド ライン 10
国家工商行政管理局 2014 年 7 月 30 日公布 同日施行
① 背景
インターネット取引プラットフォーム(第三者取引プラットフォームともいう。)と
は、インターネット商取引活動において、取引当事者に対し、ウェブページの空間、仮
想事業場所、取引規則、取引仲介、情報発信等のサービスを提供し、独立した取引活動
の展開に便宜を与える情報ネットワークシステムをいう(「インターネット取引プラッ
トフォーム事業者の社会的責任履行に関するガイドライン」第 2 条第 1 項)。
中国でのインターネット商取引の普及に伴い、国家工商行政管理総局は 2014 年 1 月
26 日に「インターネット取引管理弁法」を公布した(同年 3 月 15 日施行)。その後、イ
ンターネット取引プラットフォーム事業者の責任の内容を拡大・具体化するため、2014
年 5 月 28 日に「インターネット取引プラットフォーム事業者の社会的責任履行に関する
ガイドライン」が公布され、同日施行された。
しかし、インターネット取引プラットフォームに関する契約の内容に関して具体的な
規制がなかったため、一方的で不当な契約条項により(中国語では「霸王条款」)、事業
者の責任が免除又は減少され、消費者の責任が加重されるなどして、消費者が損害を受
10
《网络交易平台合同格式条款规范指引》(工商市字[2014]144 号)
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ける現象が多く発生した。典型的な不当な契約条項としては、
「不可抗力又は第三者の原
因により生じた損害は消費者が負担する」、「いかなる理由によっても返品はできない」、
「本プラットフォームでの情報の真偽に関しては消費者自身で判別し、虚偽の情報によ
り生じた消費者の損害に対して事業者は一切の責任を負わない」などの明らかに消費者
に対して不利な条項が挙げられる。
そこで、インターネット取引プラットフォーム契約の約款を規制し、消費者の合法的
な権益を保護することを目的として、7 月 30 日付で国家工商行政管理総局は「インター
ネット取引プラットフォーム契約約款規範ガイドライン」
(以下「本ガイドライン」とい
う。)を公布した。
② 主な内容
本ガイドラインにおいて具体化されたインターネット取引プラットフォーム契約約款
規範の主な内容は、以下のとおりである。
ア 本ガイドラインにおけるインターネット取引プラットフォーム契約約款とは、イン
ターネット取引プラットフォーム事業者が繰り返し使用するために事前に制定し、契
約締結の際に契約相手方と協議していないユーザー登録契約、プラットフォーム取引
規則等 11の関連契約、規則又は約款である(本ガイドライン第 3 条)。
イ
インターネット取引プラットフォーム事業者はそのホームページの適当な位置に①
営業許可証及び関連許可証、②インターネット情報サービス許可又は届出情報、③事
業場所、郵便番号、電話番号、電子メールアドレス等の連絡先の情報、④法律法規が
規定したその他の公開すべき情報又はリンクを公示しなければならない(本ガイドラ
イン第 8 条)。
ウ
インターネット取引プラットフォーム事業者が契約約款を使用する場合、契約相手
方に重大な利害関係があり、又は契約相手方の権利に対して影響を与える可能性があ
る代金又は費用、履行の期限及び方法、安全注意事項及びリスク警告、アフターサー
ビス、民事責任等の内容について注意を喚起する義務がある(本ガイドライン第 9 条
第 1 項)。また、インターネット取引プラットフォーム事業者は契約相手方の要求に基
づき約款について説明を行わなければならない(本ガイドライン第 9 条第 1 項)。なお、
インターネット取引プラットフォーム事業者が契約法第 39 条第 1 項の提示及び説明義
務の規定に違反し、責任を免除又は制限する条項について契約相手方の不注意を招い
た場合、契約相手方は人民法院に対して当該契約約款の無効を申し立てることができ
る(本ガイドライン第 9 条第 3 項)。
エ
また、本ガイドラインは、上記①で述べた一方的で不当な契約条項(中国語では「霸
王条款」)の問題に対する対応として、インターネット取引プラットフォーム事業者が、
契約モデル約款において、①自らの責任を減免すること(第 10 条)12、②プラットフ
11
その他、①事業者加入協議書、②情報開示及び審査確認制度、③個人情報及び商業秘密の収集と保護制
度、④消費者権益保護制度、⑤広告公布審査確認制度、⑥取引安全保障及びデータバックアップ制度、⑦
紛争解決の仕組み、⑧その他の契約約款が挙げられている。
12
減免してはならないインターネット取引プラットフォーム事業者の責任としては、(i)消費者に人身損害
をもたらした責任、(ii)故意又は重大な過失により消費者に財産損害をもたらした責任、(iii)プラットフ
ォーム内の事業者が提供した商品又はサービスについて、法により負うべき連帯責任、(iv)収集した消費者
の個人情報及び事業者の商業秘密に係る情報安全責任、(v)法により負うべき違約責任及びその他の責任が
挙げられている。
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ォーム内の事業者又は消費者の責任を加重すること(第 11 条)13、③プラットフォー
ム内の事業者又は消費者の権利を排除し、又は制限すること(第 12 条)14を禁止した。
(4) 「 医療器械生産
医療器械 生産監督管理
生産 監督管理弁
監督管理 弁 法」 15、「 医療器械経営監督管理弁
医療器械経営監督管理 弁 法 」16
国家食品薬品監督管理総局 2014 年 7 月 30 日公布 2014 年 10 月 1 日施行
① 背景
中国の医療器械監督管理法規システムを改善し、医療器械マーケットの秩序を規範化
し、医療器械産業の発展を促進し、国民の健康と生命の安全を保障するため、国家食品
薬品監督管理総局は 2014 年 7 月 30 日に「医療器械登録管理弁法」、「体外診断試薬登
録管理弁法」、「医療器械説明書・ラベル管理規定」、「医療器械生産監督管理弁法」
(以下「生産弁法」という。)及び「医療器械経営監督管理弁法」
(以下「経営弁法」と
いう。)という五部の法規定を公布し、2014 年 10 月 1 日に施行することにした。
生産弁法及び経営弁法の前身は、
「医療器械監督管理条例」
(2000 年 4 月 1 日施行)に
基づき制定された「医療器械生産監督管理弁法」
(2004 年 7 月 20 日施行。以下「旧生産
弁法」という。) 17及び「医療器械経営企業許可管理弁法」(2004 年 8 月 9 日施行。以下
「旧経営弁法」という。) 18である。「医療器械監督管理条例」は、2000 年 4 月 1 日に施
行され、監督管理行為、医療器械の安全、産業発展の促進に対して積極的な役割を果た
したが、分類管理制度や企業の生産経営面に対する責任に関する規定に不十分な点があ
ったため、2014 年 2 月 12 日に「医療器械監督管理条例」の改正案が国務院第 39 回常務
会議で可決された後、同年 3 月 7 日に公布、同年 6 月 1 日に施行された(以下、改正前
の同条例を「旧条例」、改正後の同条例を「新条例」という。)。今回、「医療器械監督管
理条例」の改正に併せて、生産弁法及び経営弁法が改正された。
また、2014 年 8 月 1 日、国家食品薬品監督管理総局は「『医療器械生産監督管理弁法』
及び『医療器械経営監督管理弁法』の実施に関する事項の通知」
(以下「本通知」という。)
を公布した 19。本通知によると、①2014 年 10 月 1 日以降の医療器械生産企業の生産許可
及び届出、②2014 年 10 月 1 日までに受理し、かつまだ許可していない医療器械生産企
業許可申請に関しては、本通知実施後、生産弁法の関連規定に従って処理される(本通
知第 2 条)。また、①2014 年 10 月 1 日以降の医療器械経営企業の経営許可及び届出、②
2014 年 10 月 1 日までに受理し、かつまだ許可していない医療器械経営企業許可申請に
13
禁止される事業者又は消費者の責任の加重としては、(i)消費者に法定の金額又は合理的な金額を著しく
超えた違約金又は損害賠償を負担させること、(ii)法によりインターネット取引プラットフォーム事業者が
負うべき責任をプラットフォーム内の事業者又は消費者に負わせること、(iii)終了期限のある契約につき、
プラットフォーム内の事業者又は消費者が契約を履行する期間を無断で延長すること、(iv)プラットフォー
ム内の事業者又は消費者に不確定の期間において契約を履行する責任を負わせること、(v)法に違反してプ
ラットフォーム内の事業者又は消費者のその他の責任を加重することが挙げられている。
14
排除又は制限してはならないプラットフォーム内の事業者又は消費者の権利としては、(i)法により契約
を変更し、取消し、又は解除する権利、(ii)法により契約の履行を中止し、又は終了する権利、(iii)法に
より履行の継続、救済措置の実施、違約金の支払い又は損害賠償を請求する権利、(iv)契約に関する紛争に
つき、訴訟、仲裁又はその他の救済手段を申し立てる権利、(v)モデル約款の説明を求める権利、(vi)プラ
ットフォーム内の事業者又は消費者が法により有するその他の権利が挙げられている。
15
《医疗器械生产监督管理办法》(国家食品药品监督管理总局令第 7 号)
16
《医疗器械经营监督管理办法》(国家食品药品监督管理总局令第 8 号)
17
さらにその前身は、「医療器械生産企業監督管理弁法」(2000 年 4 月 20 日施行)である。
18
さらにその前身は、「医療器械経営企業監督管理弁法」(2000 年 4 月 20 日施行)である。
19
《国家食品药品监督管理总局关于实施《医疗器械生产监督管理办法》和《医疗器械经营监督管理办法》
有关事项的通知》(食药监械监[2014]143 号)
7
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関しては、本通知実施後、「経営弁法の関連規定に従って処理される(本通知第 2 条)。
生産弁法と経営弁法は、2014 年 10 月 1 日に施行され、これに伴い、旧生産弁法及び旧
経営弁法は廃止される。
② 主な内容
生産弁法は、総則、生産許可及び届出管理、委託生産管理、生産品質管理、監督管理
及び法律責任、附則により構成されている。
旧条例においては、医療器械生産企業を設立する際に、第一類の場合は省レベルの食
品薬品監督管理部門への届出、第二類及び第三類の場合は省レベルの食品薬品監督管理
部門の許可が必要であるとされていたが(旧条例第 20 条)20、新条例では、第一類の届
出の届出先が市レベルの食品薬品監督管理部門に変更された(新条例第 21 条、第 22 条)。
これに伴い、生産弁法でも、第一類の届出の届出先が所在地の市レベルの食品薬品監督
管理部門とされた。また、当該届出の際には、企業が所持する全ての生産医療器械の届
出証明の写しと所定の資料を提出する旨、食品薬品監督管理部門は当該提出資料につい
てその場で確認を行い、条件に合致した場合は届出手続を行い、企業に第一類の医療器
械生産届出証明書を交付する旨が規定された(生産弁法第 11 条)。
経営弁法は、総則、経営許可及び届出管理、経営品質管理、監督管理及び法律責任、
附則により構成されている。
旧条例においては、医療器械経営企業を設立する際には、第一類の場合は省レベルの
食品薬品監督管理部門への届出、第二類及び第三類の場合は省レベルの食品薬品監督管
理部門による許可が必要であるとされていたが(同条例第 24 条)、新条例では、第一類
は届出及び許可が不要となり、第二類は市レベルの食品薬品監督管理部門への届出、第
三類は市レベルの食品薬品監督管理部門の許可で足りることとされた(第 30 条、第 31
条)。これに伴い、経営弁法でも、第二類の届出手続について規定が設けられる(第 12
条から第 14 条)などの改正がなされた。また、経営弁法では、旧経営弁法に比べて、違
反行為に対する過料の金額が増額された(第 53 条、第 54 条、第 57 条等)。
(彭涛、崔俊・中国弁護士)
20
「医療器械監督管理条例」により、国は医療器械に対してリスクの程度に応じた分類管理を行うことと
され、第一類は、リスクが低く、通常の管理の実施により安全・有効性を確保できる医療器械、第二類は、
リスクが中程度で、厳格な規制・管理により安全・有効性を確保する必要のある医療器械、第三類は、リス
クが高く、特別な措置を講じて厳格な規制・管理を行うことによって安全・有効性を確保する必要のある医
療器械と分類されている(新条例第 4 条)。
8
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二.連載 中国企業法実務
第七弾:知的財産権(第 7 回/全 8 回)
第1回
2014 年 2 月号
発明専利(特許)①
第2回
2014 年 3 月号
発明専利(特許)②
第3回
2014 年 4 月号
外観設計専利(意匠)
第4回
2014 年 5 月号
実用新型専利(実用新案)
第5回
2014 年 6 月号
商標 ①
第6回
2014 年 7 月号
商標 ②
第7回
2014 年 8 月号
著作権
第8回
2014 年 9 月号
不正競争防止法による保護
第7回
著作権法
1.概要
本連載の第 7 回では、中国の著作権法について紹介する。中国の著作権法は 1990 年 9
月に公布され、1991 年 6 月 1 日より正式に施行された。その後、2001 年 10 月に一回目、
2010 年 2 月に二回目の改正が行われ(現行法)、現在、三回目の改正作業が行われている
最中である。著作権法に対する三回目の改正作業は、2011 年 7 月 13 日より正式に始まり、
本稿が完成された時点で、既に第四稿(改訂草案送審稿(以下「送審稿」という))が公
表されている 21。そこで、本稿においては、現行の中国著作権法制度を概観するとともに、
最新の送審稿における重要な改正点やその影響についても紹介する。
2.中国の著作権制度
(1) 保護制度
① 創作保護主義
中国は著作権の成立について創作保護主義を採用している。すなわち、法律による権
利の保護に出願、登録が要求される特許権、商標権等とは異なり、著作権の成立のため
に如何なる出願、登録等の手続も必要がなく 22、著作権は著作物の創作完成日より発生
する 23。
② 中国人以外の者(外国人、無国籍者)の著作物の保護
外国人、無国籍者の著作物は、その著作者が属する国(又は通常の居住国)と中国と
の間に締結された条約、又は共に加盟している国際条約によって、中国著作権法の保護
を受ける。
外国人、無国籍者の著作物であり、中国国内で最初に出版されたものについても、同
21
送審稿に対するパブリックコメントの募集は 2014 年 7 月 5 日をもって締め切られた。
中国の著作権は著作物の完成により登録することなく発生するが、著作物自由登録制度(「作品自発登記
試行弁法」(国家版権局、1994 年 12 月 31 日公布、1995 年 1 月 1 日施行))やコンピュータソフトウェア著
作権登録制度(「コンピュータソフトウェア著作権登記弁法」(国家版権局令第1号))があり、登録により
一層の権利保護を受けることができる。
23
「中華人民共和国著作権法実施条例」(国務院令第 633 号)(以下「実施条例」という)」第 6 条
22
9
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法により著作権が認められる 24。
日本と中国はともに、
「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(the Berne
Convention for the Protection of Literary and Artistic Works,以下「ベルヌ条約」という)」
の加盟国であるため、日本人の著作物は日本における創作の事実だけで、中国において
著作権法の保護を受けることができる。
(2) 保護対象物
著作権法第 3 条及び実施条例第 4 条によれば、著作権法が保護する著作物は次の 9 種
類とされている。①文字の著作物、②口述の著作物、③音楽、演劇、演芸、舞踊、曲芸
芸術による著作物、④美術、建築による著作物、⑤撮影による著作物、⑥映画著作物及
映画著作物及
25
、
⑦工事・建築設計図、製品
び映画の撮影製作
び映画の撮影製作に類する方法により創作された著作物
に類する方法により創作された著作物
製作
設計図、地図、見取り図等の図形による著作物及び模型著作物、
模型著作物、⑧コンピュータソフト
模型著作物、
コンピュータソフト
26
ウェア、⑨法律、行政法規に規定されるその他の著作物
。
ウェア、
送審稿では、このうち、⑥の「映画著作物及び映画の撮影製作に類する方法により創
作された著作物(电影作品和以类似摄制电影的方法创作的作品)」の名称を「視聴覚著
作物(视听作品)」へ、⑧の「コンピュータソフトウェア(计算机软件)」の名称を「コ
ンピュータプログラム(计算机程序)」に変更し、⑦から「模型著作物」を削除し、新
たに「応用芸術著作物(实用艺术作品)」及び「立体作品」を追加している 27。
(3) 著作権の内容
現行法では著作権を 17 種類に分類しているが、送審稿ではこれらを 13 種類に再構成
し、改変権、放映権、撮影製作権、編集権の四つの権利を廃止するとともに、これらの
権利・機能はそれぞれ同一性保持権、実演権、翻案権及び複製権によりカバーした。ま
た、広播権を播放権(日本語ではいずれも「放送権」と訳される)へ変更して、非イン
タラクティブな方法による著作物の伝達に適用するものとし、インタラクティブな方法
に適用される情報ネットワーク伝達権との区別を明確化した 28。詳細については、下記
表1をご参照頂きたい。
表1
権利内容対比表(改正前後)
権利
現行法
著
人
作
格
権
権
送審稿
公表権
公表権
氏名表示権
氏名表示権
改変権
同一性保持権
同一性保持権
24
著作権法第 2 条
太字で表示した部分は送審稿で改正対象とされた箇所である。
26
著作権法第 14 条に基づき、データベースの著作物も保護対象とされている。
27
送審稿第 5 条
28
国家版権局による「送審稿に関する説明」
(2014 年 6 月 6 日公布)による。なお、
「非インタラクティブ」
な送信とは、公衆(端末)からのアクセスがなくても常に情報が公衆まで送信されている形態(例:テレビ
放送等)を指し、「インタラクティブ」な送信とは、公衆(端末)からのアクセスがあった場合のみに送信
される形態(例:ウェブサイトへのアップロード)をいう。
25
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複製権
複製権
発行権
発行権
貸与権
貸与権
展示権
展示権
実演権
実演権
産
放映権
放送権(広播権)
放送権(播放権)
権
情報ネットワーク伝達権
情報ネットワーク伝達権
撮影製作
撮影 製作権
製作 権
翻案権
翻案権
翻訳権
翻訳権
編集権
著作権者が享有すべきその他の権利
著作権者が享有すべきその他の権利
財
(4) 著作権の帰属
① 帰属原則
著作権は原則として著作者
著作者(下記②)に帰属する 29。
著作者
② 著作権の主体(著作者
著作権の主体(著作者)
(著作者 )
ア 著作者が自然人である場合
著作物を創作した者が原則として著作者となる。
イ
著作者が法人又はその他組織である場合
法人又はその他の組織(以下「法人等」という)が主宰し、法人等の意思を代表し
て創作し、且つ法人等が責任を負う著作物については、法人等を著作者とする。
反証がない限り、著作物上に氏名を表示した個人、法人等を著作者と推定する。
③ 職務著作物 30における著作権の帰属 31
【原則】職務著作物の著作権は原則として著作者が保有する。但し、法人等はその業
【原則】職務著作物の著作権は原則として著作者が保有する
務の範囲内で優先的に使用できる権利を有する。
【例外】職務著作物の著作権が法人等に帰属する場合(但しこの場合においても氏名
【例外】職務著作物の著作権が法人等に帰属する場合
表示権は著作者個人に残る)。
ア
主として、法人等が物質上の技術的条件を利用して創作し、かつ法人等が責任を負
う建築・工事設計図、製品設計図、地図、コンピュータソフトウェア等の職務著作物
イ
法人等が著作権を有することを、法律・行政法規が規定し、又は契約で定められた
契約で定められた
職務著作物
④ 送審稿における改正点
送審稿は当事者間における「私的自治」を重視しており、主な改正点は次のとおりで
ある。まず、現行の著作権法における映画・テレビドラマ等の著作物(視聴覚著作物)
29
著作権法第 11 条
「職務著作物」とは、法人等の業務に従事する者が法人(又はその他の組織)にかかる業務上の任務を遂
行するために創作した創作物のことをいう。
31
著作権法第 16 条
30
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に関する著作権について、製作者に帰属する 32としていたものを製作者と著作者(監督、
脚本家等)による定めを優先するとしたほか、視聴覚著作物の権利共有、利益配分に関
する規定を追加した 33。次に、職務著作物の権利帰属についても当事者の約定を優先す
る旨を規定したほか、建設・製品設計図、地図、コンピュータプログラム及び新聞社・
テレビ局等の報道のために創作した著作物についての権利帰属・報奨制度を規定した 34。
以上のように、現行法においては当事者間の契約によって職務著作物の法人等への帰
属を認めている。また、送審稿の内容によれば、今後成立する改正法において、職務著
作物の権利帰属を確定するにあたり、当事者の間の約定が非常に重要な鍵となることが
予想される。よって、実務上、雇用契約等において職務著作物が法人に帰属する旨を明
記しておくことが重要となる。
(5) 著作権の権利制限制度
著作権の権利制限制度とは、特定の条件下で著作権の行使を制限し、当該著作権にか
かる著作物の利用を法律により自由に許す制度をいう。著作権法第 22 条では、著作権の
権利が制限される具体的なケースを規定している。この場合、利用者は著作権者の許諾
を得たり、報酬を支払ったりする必要はないが、著作者の氏名、著作物の名称を明示し、
著作権者が本法に基づき有するその他の権利を侵害してはならない。
① 私的使用
個人的な学習、研究又は鑑賞のために、他人に既に公表された著作物を使用する場合。
② 引用
ある著作物を紹介、評論、又はある問題を説明するために、著作物において他人に既
に公表された著作物を適切に引用する場合。
③ ニュース報道のための再現・引用
時事ニュースを報道するために、新聞・定期刊行物、放送局・テレビ局等のメディア
媒体で既に公表された著作物をやむを得ず再現又は引用する場合。
④ メディアによる時事的な文章の掲載・放送
新聞・定期刊行物、放送局・テレビ局等のメディア媒体が、他の新聞・定期刊行物、
放送局・テレビ局等のメディア媒体により既に公表された政治、経済、宗教問題に関
する時事的文章を掲載又は放送する場合。但し、著作者が掲載、放送を許諾しない旨
を表明している場合はこの限りでない。
⑤ メディアによる公衆の集会における演説の掲載・放送
32
著作権法第 15 条
送審稿第 19 条
34
送審稿第 20 条では次の規定が置かれている。
第 2 項 当事者間で定めがない、又は定めが不明確な場合、職務著作物の著作権は従業員が享受する。但し、
建設・工事設計図、製品設計図、地図、コンピュータプログラム及びその関連文書、新聞社・雑誌社、通
信社、ラジオ局及びテレビ局の職員が報道任務の履行のために特別に創作した著作物の著作権は事業体が
享受し、著作者は氏名表示権を享受する。
第 3 項 本条第 2 項の規定により、従業員が職務著作物の著作権を享受する場合は、事業体はその業務範囲
内において無償で当該職務著作物を利用する権利を有し、かつ当該職務著作物に対し 2 年間の専用利用権
を享受する。
第 4 項 本条第 2 項の規定により、事業体が職務著作物の著作権を享受する場合、事業体は創作した著作物
の数量及び質によって、しかるべき奨励を与えなければならない。従業員は編集方式により創作した著作
物を出版することができる。
33
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新聞・定期刊行物、放送局・テレビ局等のメディア媒体が、公衆の集会において公表
された演説を掲載又は放送する場合。但し著作者が掲載、放送を許諾しない旨を表明
している場合はこの限りでない。
⑥ 学校の授業・科学研究
学校の教室における授業又は科学研究のために、既に公表された著作物を翻訳又は少
量複製し、授業又は科学研究職員の使用に供する場合。但しそれを出版又は発行して
はならない。
⑦ 公務遂行
国家機関が公務執行のために、既に公表された著作物を合理的な範囲内で使用する場合。
⑧ 図書館等による複製
図書館、档案(公文書)館、記念館、博物館、美術館等が陳列又は版本を保存する必
要から当該施設が収蔵する著作物を複製する場合。
⑨ 無償の実演
既に公表された著作物を無償で実演する場合(当該実演とは公衆から費用を徴収せず
実演者にも報酬を支払わない場合をいう)。
⑩ 屋 外 芸術作品の撮影等
芸術作品の撮影等
屋外公共場所に設置又は陳列されている美術の著作物につき、模写、描写、撮影又は
録画する場合。
⑪ 少数民族言語へ
少数民族言語への
の 翻訳
中国公民、法人又はその他の組織により既に公表済みの漢言語により創作された著作
物を、少数民族の言語文字に翻訳し国内で出版及び発行する場合。
⑫ 点 字化
既に公表された著作物を点字にして出版する場合。
送審稿では、国際的なルールを参考にして、従来から広く認められすぎると批判のあっ
た権利制限の範囲を調整したほか、権利者の権利保護に関する原則的規定を追加した。
表2
権利制限制度(改正前後の比較
権利制限制度(改正前後の比 較 )35
改正
現行法
箇所
①
送審稿
個人的な学習、研究又は鑑賞
鑑賞のため
鑑賞
に、他人に既に公表された著作物を
個人的な学習、研究のために、他人に既に公
表された著作物の一
一 部 を複製する
複製する場合
複製する
使用する場合
使用
②
⑨
35
ある著作物を紹介、評論、又はある
ある著作物を紹介、評論、又はある問題を説
問題を説明するために、著作物にお
いて他人に既に公表された著作物を
明するために、著作物にお
、著作物におい
、著作物にお い て他人に既
て他人に 既 に公
表された著作物の中、主要又は実質
的な部分
表された著作物の中、主要又は実
質 的な
部分
適切に引用する場合
を除く部分を適切に引用する場合
を除く部分
既に公表された著作物を無償で実演
既に公表された著作物を無償で実演する場合
する場合(公衆から費用を徴収せず
(公衆から費用を徴収せず実演家にも報酬を
現行法第 22 条、送審稿第 43 条
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⑩
実演者にも報酬を支払わない場合)
支払わず、及びその他の方
及びその他の方式
及びその他の方 式 により経済
により経 済 的 収
益を得な
益を得
な い場合)
屋外公共場所に設置又は陳列されて
屋外公共場所に設置又は陳列されている美術
いる美術の著作物につき、模写、描
の著作物につき、模写、描写、撮影、録画し、
写、撮影又は録画する場合
かつ複製、
かつ 複製、頒布
複製、 頒布及び公衆に
頒布 及び公衆に提供
及び公衆に 提供する場合
提供 する場合。但
する場合 。但
当該美術著作物の表現方
著作物の表現方式
同じ方
し 当該美術
著作物の表現方
式 と 同じ
方式で当
該美術著作物
該美術 著作物を
著作物 を 複製、陳列
複製、 陳列、公
陳列 、公開提供
、公 開提供しては
開提供 しては
ならない
ならな
い。
前項に規定する方式
前項に規定する方 式 により著作物を
により著作物 を 利用する
場合は、当該
当該著作物の正
著作物の正常
な使用を妨
を妨げ
場合は、
当該
著作物の正
常 な使用
を妨
げ ては
新規
ならず
なら ず 、著作権者の合法的な利益を不
、著作権者の合法的な利 益を不合理に
益を不 合理に
侵害してはならな
してはならない。
侵害
してはならな
い。
追加
(6) 保護
保護期間
期間
著作権の保護期間とは著作権が法的保護を受ける期間のことをいう。当該保護期間が
満了すれば、その著作物はパブリックドメインに入り、誰もが自由に利用することが可
能となる。
著作権法第 20 条、第 21 条に基づき、著作権の保護期間は権利の性質(人格権か財産
権か)によって異なる。公表権以外の人格権(即ち氏名表示権、改変権、同一性保持権)
の保護期間は制限を受けない 36。公表権及び財産権の場合、保護期間は基本的に 50 年で
あるが、計算方法は著作権の主体によって異なる。詳細については下記の表をご参照い
ただきたい。
表3
公表権及び財産権の保護期間
公表権及び財産権の保護期間
著作主体
保護期間
保護 期間
一人
自然人
起算方法
起算 方法
著作者の終身及び
死後 50 年
著作者の終身及び
二人以上
最後に死亡した著
著作者死亡
著作者 死亡の
死亡の 日から
日か ら 50 年を経過した年の
12 月 31 日まで
最後に死亡
最後に 死亡した著作者の
死亡した著作者の死亡
した著作者の 死亡の
死亡 の 日から
日か ら 50
年を経過した年の 12 月 31 日まで
作者の死後 50 年
著作物の最初
著作物の最初 の公表の日か
の公表の日から
日か ら 50 年を経過
した年の 12 月 31 日までとするが、著作物
50 年
法人又はその
他の組織
-
の創作完了後の 50 年以内に公表されなか
った場合、保護されない
作者身分不明
-
著作物の最初
著作物の最初 の公表の日か
の公表の日から
日か ら 50 年を経過
した年の 12 月 31 日まで
50 年
現行法では撮影著作物(写真の著作物)の保護期間は最初の公表の日から 50 年を経過
36
著作権法第 20 条。なお、送審稿においては、日本法によれば一身専属的権利であるため、相続・譲渡で
きないはずの人格権(氏名表示権、同一性保持権)が相続・遺贈対象となる旨が規定されている(送審稿第
23 条)
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した年の 12 月 31 日までとしているが、送審稿では著作者の終身とその死後 50 年に変更
した 37。
また、応用芸術著作物の追加に伴い、その保護期間に関する規定も新たに追加された 38。
(7) 著作
著作隣接
隣接権
隣接 権
著作権法に規定される権利(広義の「著作権」)は、大きく分けて、「著作権(狭義の
「著作権」)」と「著作隣接権」に二分できる。このうち、狭義の著作権は著作物の著作
者が保有する権利を指すのに対し、著作隣接権は著作物の伝達者に認められる専有権を
指す 39。
現行の中国著作権法は第四章において出版、実演、録音録画、放送事業者など実質上
著作隣接権に相当する権利 40を規定しているが、著作隣接権という概念は採用していな
い。
下表は現行法に規定されている著作隣接権の保護内容、保護期間等をまとめたもので
ある。
表4
著作隣接
著作 隣接権の関連事項
隣接 権の関連事項
著作隣接
著作 隣接権者
隣接 権者
保護内容
専有出版権
出版者
保護期間
保護 期間
関連規定
出版契約の
著作権法 31 条
約定による
著作権法実施
が、約定不明
条例 28 条
な場合、契約
有効期間内
版面の設計の使用許諾・禁止権
10 年
著作権法 36 条
①氏名表示権
無期限
著作権法 38 条
②実演イメージが歪曲されないよう保護
する権利
実演家
①生放送・中継の許諾、報酬取得権
50 年
②録音録画の許諾、報酬取得権
③実演が収録された録音録画物の複製・発
行の許諾、報酬取得権
④実演の公衆伝達の許諾、報酬取得権
37
現行法はベルヌ条約の影響を受け、撮影著作物に対して、その他の著作物より短い保護期間を規定したが、
中国は 2007 年 6 月 9 日にベルヌ条約における撮影著作物の保護期間の適用を排除した「著作権に関する世
界知的所有権機関条約(World Intellectual Property Organization Copyright Treaty)」に加入したため、送審稿
も相応の調整を行ったものと思われる。
38
送審稿第 29 条第 3 号「応用芸術著作物の公表権の保護期間は 25 年とする。但し、著作物が創作完了後の
25 年以内に公表されなかったときは、本法による保護を享受しない。その著作権中の財産権の保護期間は
著作物の最初の公表後 25 年間とする。但し、著作物が創作完了後の 25 年以内に公表されなかったときは、
本法による保護を享受しない」
39
「知識産権法」劉銀良著、高等教育出版社 2010 年出版
40
日本を含め「著作隣接権に関するローマ条約」の締結各国では通常①実演家、②レコード製作者、③放送
事業者と有線放送事業者に対して権利を付与しているが、中国はこれに加えて、④出版者にも一部の権利を
認めている。
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録音録画物の
製作者
製作した録音、録画物の複製・頒布・貸与・ 50 年
公衆伝達の許諾、報酬取得権
①その放送するラジオ・テレビ番組を中継
放送事業者
著作権法 42 条
50 年
著作権法 45 条
放送することの禁止権
②その放送するラジオ・テレビ番組を媒体
に固定・当該媒体を複製することの禁止権
送審稿ではドイツや日本の制度を参考にして、著作隣接権(中国語では相関権)の概念
を取り入れた。また、送審稿では、実演家の貸与権及び実演家が視聴覚実演に対して報酬
を取得する権利 41や、録音(レコード)製作者について、他者が実演及び放送の方法によ
りそのレコードを使用することに対し報酬を取得する権利 42を追加し、ラジオ局及びテレ
ビ局が有する権利について「禁止権」を「許可権」に変更する 43等の改正を行っている。
3 . 権利保護の手段
権利保護の 手段
現在、中国が著作権の保護制度として採用しているのは「双軌制(行政ルートと司法ル
ートの併用)」であり、著作権者は関連する行政管理部門に告発して救済を求めることも、
人民法院に民事訴訟を提起して救済を求めることも可能である。さらに、権利侵害行為が
犯罪を構成する疑いがある場合、公訴人又は権利者が刑事訴訟を提起することにより、権
利侵害者の刑事責任を追及することもできる。
(1) 行政ル
行政ルートによる著作権の保護
「著作権行政処罰実施弁法」第 4 条に基づき、著作権行政管理部門 44は著作権の権利
侵害行為に対して、法令に基づき権利侵害行為の停止を命じると同時に、①警告、②過
料、③違法所得の没収、④権利侵害製品の没収、⑤権利侵害製品を据付・保存した設備
の没収、⑥主に権利侵害製品の製造に使用された材料、道具、設備等の没収等の行政処
分を行うことができる 45。
また、
「中華人民共和国知的財産権税関保護条例」第 3 条、第 12 条、及び第 16 条に基
づき、知的財産権を侵害する貨物の輸出入を禁止している。権利侵害の疑いのある貨物
を発見した場合、知的財産権者は貨物を差押え、その輸出入を中止するよう税関に申請
することができる。なお、関連の知的財産権が事前に既に税関に登録されている場合、
税関は自主的に貨物を差押え、その輸出入を中止することができる 46。
司法ルートに比べると、行政ルートのほうは速くて便利であるが、侵害者に損害賠償
を請求するためには、次に述べる民事訴訟手続によることが必要となる。
41
送審稿第 34 条
送審稿第 39 条
43
送審稿第 42 条
44
国家版権局と各地方の版権局を指す。
45
送審稿は「実施条例」に規定された過料の倍数を不法経営額の 3 倍から 5 倍へ、過料の上限を 10 万元か
ら 25 万元へと引き上げた。さらに、著作権行政管理部門の法律執行手段を強化し、差押権を追加した。
46
知的財産権を事前に税関に登録したかどうかによって、処理が異なってくる。既に登録した場合、税関が
自主的に保護措置を取ることができ、登録していない場合、税関は自主的に措置を取ることができず、知的
財産権者が自ら申請しなければならない。
42
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(2) 民 事 訴訟手続による著作権の保護
訴訟手続 による著作権の保護
「著作権法」第 47 条~第 52 条の規定に基づき、人民法院は著作権侵害行為に対して、
民事責任(①侵害の停止、②影響の除去、③謝罪、又は④損害賠償)を課すことができ
る。
なお、賠償額の計算に関し、「著作権法」第 49 条には「著作権又は著作隣接権を侵害
した場合、権利侵害者は権利者の実質的損失に基づいて損害賠償しなければならない。
実質的損失の算出が困難であるときは、権利侵害者の違法所得に応じて損害賠償額を決
定することができる。賠償額には、権利者が権利侵害行為を制止するために支払った合
理的支出を含めるものとする。権利者の実質的損失又は権利侵害者の違法所得を確定す
ることができないときは、人民法院が侵害行為の情状により 50 万元以下の損害賠償額を
支払うべきとの判決を下す。」と規定されているが、送審稿では、
送審稿では、賠
送審稿では、 賠 償 額 の 上 限 を 50
万元から
万元へと引
と引き上げ
き上げ、さらに、
、さらに、2 回以
回以上
の権利侵害
侵害者の
者の賠
額を前項
万元か
ら 100 万元へ
と引
き上げ
、さらに、
上 の権利
侵害
者の
賠 償 額を
前項 47によ
り 算 出した賠
出した賠 償 額 の 2 倍から
倍か ら 3 倍へと引
倍へ と引き上げ
と引 き上げた
き上げ た 。これは権利者の権利保護を重視した
改正であるといえよう。
(3) 刑 事 訴訟手続による著作権の保護
訴訟手続 による著作権の保護
「著作権法」第 48 条では著作権侵害が犯罪を構成する場合、刑事責任を追及すると
規定するのみであり、詳細な刑事責任については「中華人民共和国刑法(以下「刑法」
とする)」等その他の法令に定められている。
「刑法」及び「最高人民法院、最高人民検察院による知的財産権侵害に係る刑事事件
の審理時の法適用若干問題についての解釈(以下「解釈」という)」48に基づく、著作権
に関連する主な犯罪としては著作権侵害罪と権利侵害複製品販売罪が挙げられる。
表5
刑 法における著作権侵害犯罪
法における著作権 侵害犯罪の
侵害犯罪 の 犯罪構成及びその
犯罪構成 及びその処罰基準
及びその処罰基準
罪名
著
作
権
侵
害
罪
犯罪構成
情状
処罰
①著作権者の許諾を得ずに、その文字著
違法所得額が比較
49
3 年以下の懲役
作物・音楽・映画・テレビ・ビデオ著作
的大きい場合 又は
若しくは拘留に
物、コンピュータソフトウェア及びその
その他重い情状が
処し、罰金を併科
50
他の著作物を複製・発行した場合
ある場合
し又は単科
②他人が専有出版権を有する図書を出版
違法所得額が巨額
51
した場合
である場合 又はそ
3 年以上7年以
下の懲役に処し、
③録音録画製作者の許可を得ずに、その
47
ここでいう前項とは送審稿第 76 条第 1 項を指す。同条項は、賠償金額の算定方法の選択制
賠償金額の算定方法の選択制を次のように
賠償金額の算定方法の選択制
採用している。「著作権又は著作隣接権侵害の賠償額を計算する場合、権利者は実質的損失、権利侵害者の
違法な行為による所得、権利取引費用の合理的な倍数又は 100 万元以下の額を選択し、賠償を請求すること
ができる。」
48
《最高人民法院、最高人民检察院关于办理侵犯知识产权刑事案件具体应用法律若干问题的解释》(法釈
[2004]第 19 号)
49
解釈によれば、違法所得額が 3 万元以上になる場合をいう。
50
解釈によれば、①違法経営額が 5 万元以上、又は②著作権者の許諾を得ずに、その文字著作物・音楽・映
画・テレビ・ビデオ著作物、コンピュータソフトウェア及びその他の著作物を複製・発行し、複製品の数量
が合計で 1000 枚(部)以上、のいずれかに該当する場合をいう。
51
解釈によれば、違法所得額が 15 万元以上になる場合をいう。
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製作した録音録画を複製・発行した場合
④他人が署名した美術作品を制作・販売
の他特別に厳重な
情状がある場合
罰金を併科
52
した場合
複製品
販売罪
権利侵害
営利を目的に、本法 217 条に規定された
権利 侵害 複 製品 であ る こと を知 り なが
違法所得額が巨額
である場合
53
ら、販売した場合
3 年以下の懲役
若しくは拘留に
処し、罰金を併科
し又は単科
[応用編
[応 用編]
用編 ]送審稿に対する評価
送審稿に対する 評価
中国著作権法の三回目の改正作業においては、先月初め、第 4 稿目にあたる送審稿に
対するパブリックコメントの募集が締め切られた。今回の改正作業もいよいよ大詰めに
差し掛かっているものと推測される。
送審稿における改正条項案を見てみると、行政処罰手続の強化、司法救済の場面にお
ける法定賠償金額の上限の引上げ、賠償金額算定方法の選択制導入など、権利者側の意
見を反映したと思われる個所が少なくない。
しかし、日本企業や権利者の立場から見れば、今回の送審稿の内容によるとかえって
負担が増大してしまう制度や、未だに修正が不十分だと解される個所が依然として残さ
れている。
例えば、職務著作や職務実演において、従業員に対して「しかるべき報奨」を与える
義務を事業者に課す制度(送審稿第 22 条、第 36 条第 4 項)は、企業にとっては新たな
負担増の要因となるし、日本を含めた諸外国で当該制度が存在しないことに鑑みても、
従業員に過度な権利保護を与える不当な制度と評価せざるを得ない。
また、新聞・刊行物にいったん掲載された文字著作物を他の新聞・刊行物が転載する
場合(送審稿第 48 条)や、公表済みの著作物をラジオ局・テレビ局が放送する場合(送
審稿第 49 条)などにおいて、広範な法定許諾制度が認められているが、これらは中国メ
ディア側の都合を過度に重視し、不当な著作物利用を許容してしまう可能性がある。
日本の団体としてはこれまでに中国日本商会が会員である日本の権利者の意見を積極
的に集約して、送審稿に対しても上記の指摘を含む修正意見を提出している。
今後、国務院法制弁公室が権利者からの意見をどのように受け止め、最終的な改正著
作権法に反映していくのか、引き続き立法動向を注視していく必要がある。
(野中信孝・弁護士、李成慧・中国法顧問)
52
解釈によれば、違法経営額が 25 万元以上、又は著作権者の許諾を得ずに、その文字著作物・音楽・映画・
テレビ・ビデオ著作物、コンピュータソフトウェア及びその他の著作物を複製・発行し、複製品の数量が合
計で 5000 枚(部)以上、のいずれかに該当する場合をいう。
53
解釈によれば、違法所得額が 10 万元以上になる場合をいう。
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三. 中国法務の現場より
1.新
1. 新 聞 スタンドの強
スタンドの 強制取り壊
制取り 壊 し騒動(
騒動 ( 北京)
北京)
今月初め、北京市内の街角でよく見かける新聞スタンド(報刊亭)が、北京市政府によ
って次々と取り壊されているというニュースが、新聞やネットを賑わした。報刊亭は、地
下鉄の入口やバス停のそばに設置されており、新聞や雑誌だけではなく、飲み物やお菓子、
各種チケットなどを売っている日本で言うキオスクに近い機能を持った民営の売店であ
り、私も地下鉄に乗る前によくミネラルウォーターを購入している。
地元紙である北京青年報の報道による
と、市内で 8 月 10 日までに 72 箇所の報刊
亭が強制撤去されたという。同紙のインタ
ビュー記事によれば、ある報刊亭のオーナ
ーは 7 月 31 日の昼に突然「今晩店舗を取り
壊す」と口頭で告げられた。この報刊亭は
永安里秀水市場付近で 14 年近く経営し、経
営許可証の有効期間が 2024 年まで残って
いたものの、8 月 1 日の深夜 0 時にクレー
ン車がやってきて、令状や理由を何ら提示
されることなく、店舗ごと撤去されたと同
記事は伝えている。
報刊亭取り壊しのニュースは日本経済新聞(8 月 18 日号)など海外メディアでも多く
取り上げられており、現政権による言論弾圧強化の一環でないかという論調が多く見られ
た。
これらを受けて、8 月 28 日、北京市の都市環境建設委員会(市容委)の呉亜梅副主任が
記者に述べたところによると、
「報刊亭をめぐる新聞やネットの報道は『炒作』
(事実でな
いことを騒ぎ立てる)のきらいがある。北京市には全部で 2079 箇所の報刊亭があるが、
今回の撤去は公共サービス施設の整備の一環にすぎない。一部の報刊亭は玩具や飲料販売
や焼肉の屋台等の設備を勝手に増設して、公共スペースを占領している。安全な通行のた
め、違法に占拠している報刊亭を整備したに過ぎない」としている。
他方、同日の中国経済網の報道によると、強制撤去された 72 箇所の報刊亭の一部は再
設置が許可されたものの、取り壊しによって受けた損害が重大で、かつ再設置が許された
のは人通りの少ない不便な場所であるため、現時点で正常運営ができている店舗は 1 箇所
も無い、という。
報道と政府当局者の説明が食い違っているため、事実の真偽について論評することは差
し控えたいが、仮に公共のニーズに基づき行政機関が私的財産を撤去するのであれば、少
なくとも理由を告知した上で、弁明の機会を与えるべきであろう。私が愛用している近所
の報刊亭が撤去されないことを祈るばかりである。
(野中信孝・弁護士)
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2.企業
2. 企業情
企業 情報公示暫
報公 示暫定
示暫 定条 例及び関連規則
例及び関連 規則の公
規則 の公布
の公布 に ついて
つい て
8 月 7 日付で、国務院から「企業情報公示暫定条例」が公布され(実際公表されたのは
8 月 23 日)、10 月 1 日から施行させることになった 54。
また、8 月 19 日付で、国家工商行政管理総局より、「企業公示情報抜き取り検査暫定弁
法」、
「企業経営異常リスト管理暫定弁法」、
「個体工商戸年度報告暫定弁法」、
「農民専業合
作社年度報告公示暫定弁法」、
「工商行政管理行政処罰情報公示暫定規定」の 5 本の部門規
則が公布され(実際に公表されたのは 8 月 27 日)、これらも 10 月 1 日から施行される 55。
本誌 2014 年 6 月号で、「全国企業
信用情報公示システムの始動」と題
して、全国企業信用情報公示システ
ムを紹介した。このシステムは、今
年 2 月 7 日に国務院から公布された
「登録資本登記制度改革方案」に基
づき、今年 3 月 1 日の会社法改正施
行に合わせて導入されたシステム
であり、全国の企業の登記情報が、
いつでもどこでも無料で検索でき
る、大変便利なツールであるが、そ
れまで各地の工商局がデータベー
ス化していた登記情報を転載して
運用を開始したものであり、登記情
(URL はこちら:http://gsxt.saic.gov.cn/)
報以外の企業公示情報や行政処罰情報など、その他の関連情報については、実際上は、ほ
ぼ空欄のままであった。
今回の条例と各規則によって具体的なルールが明確化されたので、今後は、当該システ
ムにおける情報公開内容が充実することが期待される。
本条例によれば、登記事項・届出事項については、工商局が 20 営業日以内に公示する
とされるほか(第 6 条)、登記事項から外された資本金の払込状況を含む一定の事項につ
いては、企業より、当該事由が生じた日から 20 営業日以内に公示することとされる(第
10 条)。年度報告については財務関係情報の骨子を含む前年度の各種情報を、企業が毎年
6 月 30 日までに報告することとされるが、財務関係情報については、非公示とすること
ができる(第 9 条) 56。
本件公示制度は、企業の自主的な情報公示による市場の作用を利用した事後規制への転
換という政策に基づくものである。自主的な情報公示を怠ったり、虚偽の情報が公示され
たりするのを防ぐために、抜き取り検査の制度を導入するとともに(第 14 条、第 15 条)、
公示情報に虚偽や疑問がある場合に、一般公衆に通報権や調査申立権を認めている(第
12 条、第 13 条)。また、情報公示の懈怠や虚偽情報の公示がある企業については、経営
異常リストに載せるとともに、さらに 3 年が経過しても公示義務を果たさない場合には、
54
http://www.gov.cn/zhengce/content/2014-08/23/content_9038.htm
http://www.saic.gov.cn/ywdt/gsyw/zjyw/xxb/201408/t20140828_147939.html
56
但し、財務関係情報も年度報告に含まれて工商局に提出されること、及び企業が同意すれば非公開情報
の検索も可能であるという規定が置かれたこと(第 9 条第 3 項)からすると、今後も、従前通り、弁護士が
工商局に赴いて調査する場合には、財務関係情報の開示がなされるものと思われる。
55
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重大違法企業リスト(ブラックリスト)に載せされる。ブラックリスト入りした企業の法
定代表者又は責任者は、3 年間は、他の企業の法定代表者又は責任者となることができな
い(第 17 条)。
TMI 中国最新法令情
中国最新法令 情 報―2014 年 8 月号―
月号
発
行:TMI 総合法律事務所
監
修:何連明・外国法事務弁護士
編集主幹:山根基宏、今村俊太郎・弁護士
発 行 日:2014 年 8 月 31 日
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