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医療安全とコミュニケーション
2010年2月4日 茨城県医療安全研修会 医療安全とコミュニケーション 武蔵野赤十字病院 日下隼人 0 医療の場のコミュニケーション なぜ必要か 患者の権利意識の向上 情報化社会 裁判の増加 ・・・・・ 困った患者が増えている・・・? と考えてしまうと・・・・・、私たちって被害者? コミュニケーションとは 二人の間に共通性(commons)を成立させる、 つまり、情報、思想または態度を共有する試み 1 患者さんへの3つの贈り物 時間 言葉 柔らかい雰囲気・最高の敬意 2 時間のプレゼント 相手の人の話を聴いていますか わかる言葉で話していますか 相手の知りたいことを言っていますか 相手の人とお話ししていますか 3 「患者中心の医療」なのだから 〈患者さんの求めること〉から出発しなくては 元気になりたい 医療者は自分の味方になってほしい 一人の人間として、大切に遇されたい 4 コミュニケーションは聴くことから 心と耳を傾けてくれる人=味方 聴くことが何よりも大切 聴くこと=人を、そのまま受容する 受容 → 信頼を生み出す源 5 聴くための技法もある 話を遮らない 促し、反復(リフレクティング) 整理・要約 感情表出を促す 感情の確認 意思や考えの確認 話し残しの確認 注意深い沈黙 自分の感情を意識する 質問の5つの型 (中立的・閉鎖的・開放的・焦点的・多肢選択) 応答の5つの型 (調査的・評価的・解釈的・支持的・理解的) 6 肯定的な態度 やわらかい視線 同じ目の高さで 目が語る 細める 見開く のぞきこむ うなづき、微笑み、相槌 リラックスした表情 姿勢 体を向ける 身を乗り出す 触れる そこに温かい雰囲気が生まれる 緊張していては、話すこともできない 参考 浦川加代子『コミュニケーション達人ナース』星和書店2006 齋藤孝『コミュニケーション力』岩波書店2004 7 こんな聞き方では・・・ 相手の話を途中でさえぎる 相手が言い終わらないうちに、決め付けて応答する 相手の言うことを馬鹿にしたり、皮肉を言う 自分の聞きたいことにしか耳を貸さない 自分の枠組みでしか聞かない 反論・批判・説得する(でも、しかし、・・・) 感情的になって、声を高める 否定的な表現・態度を見せる(渋い顔・眉をひそめる) 聞いている つもりでも つまり この逆をすれば良い 聴く力・待つ力が必要 鷲田清一「『聴く』ことの力」 TBSブリタニカ 1999 「『待つ』ということ」 角川書店 2006 8 聴いてもらうことで 自分が受け止められているという安心感 自分の話には価値があるという自信・自己肯定感 自分の気持ち・考えがはっきりする 新しいアイデアやイメージが統合される カタルシス効果で気持ちが軽くなる 相手の話が聴けるようになる もっと話してみようと思う 行動変容のきっかけが得られる 市毛恵子「カウンセラーのコーチング術」PHP (改変) 「彼女は、ただじっと座って、その大きな黒い目で相手をじっと見つめて、・・ ・注意深く話を聞いているだけだ」(M.エンデ「モモ」) 答は相手の「話」の中にある→解決への入口 9 患者さんの怒り と 聴くこと 話を聴いてもらえない 言葉が奪われる 怒りでしか表現できない 心 言葉 心 怒り 泣くのも 10 言葉のプレゼント 相手の人の話を聴いていますか わかる言葉で話していますか 相手の知りたいことを言っていますか 相手の人とお話ししていますか 11 「先生のお話がわかりません」 コミュニケーションの過程 発信者 → 記号 → 受信者 それぞれのところで食い違いが生まれてあたりまえ。 だから・・・ 医療者の言葉は通じるはずがない と覚悟して 1回で分かる はずもない 「わかりました」って患者さんは言うけれど 「わかりません」って、言えないのだから。 不満・疑問が語られない≠不満・疑問がない 12 異文化コミュニケーションやね 同じ日本語でも意味は違います 患者の胃潰瘍と医療者の胃潰瘍は同じではない 喘息、糖尿病、白血病、難しい病気・治療・・・・・ 専門用語は呪文みたいなもの その言葉だけはわかっても全体はわからない (ピンポイントの知識はあっても・・・) 白血球、アレルギー程度の言葉もわかりません 業界用語も聞き取れない 「これくらい」の こともわからない 13 聞こえた音が変換できません 日本語が聞こえない(日本語と言うより漢語) キシツテキ キノウテキ ショケン キンイ シンコウ セイジョウ エンショウ ウンドウジ シンシュウ セイチョウザイ マッショウ キロク ブ テンビヤク ミンザイ モンシンヒョウ・・・・・ ワープロ変換で一番に出てこない言葉はすぐにはわ からない ・・・ 変換している間は聞こえず・思考停止 14 「多い・早い」は、うまくない 話が多すぎて 話が早すぎて 医療者の言葉が聞こえない 暗い道はゆっくりしか歩けない ワインボトルにワインを入れるには、少しずつゆっくりと (参考:藤沢晃治「わかりやすい説明の技術」講談社) 間がなければ、人は考えられない 取りつく島がない(沈黙は重要) 一方的な言葉が多すぎると「責められている」と感じてし まう 15 プレゼントは 相手の望まないものをあげても 相手が抱えきれないほどあげても 喜ばれない どころか 嫌われる 16 メリハリのない話は、見えない ポイントを押さえて、全体が見渡せる説明 ・できるだけ患者が知りたいことを優先して話す ポイント-内容説明-要約・強調 結論を言ったら、その理由を言う こちらが考えている(心配している)筋道を明らかにする 視覚的・数量的に話す 先の予測も話す ・ 大きな枠組み・・・・家を建てるかやめておくか、鉄筋か木造か、 ↓ もう少し詳しい枠組み・・・部屋数は、間取りは、 ↓ 詳しい内容・・・窓の位置、内装、照明、・・・・・ ・要所要所で、話を要約、今わかってほしいポイントを強調 17 これだけはわかってほしいことを 医療者の思考フレームを呈示する知識と思い こんなことを心配している 最悪の場合 最善の場合 到達目標と日程 の両方を伝 える あなたのことを心配している、あなたの力になりたい 一緒に考え、一緒にdiscussion 言い方には工夫が必要 18 そうだ、書いておこう聞いた言葉は 説明は言葉と文字(絵・図)で ほとんど記憶 から失われる 書きながら説明する 説明文書を利用する 本やインターネットも使いこなそう 人は、聞きたいことしか聞かない。 19 わかるということ 20 わかるということ 頭でわかるだけでは・・・× 呑み込める・腑に落ちる →血肉化する というわかり方 わかる~秩序を生む心の働き 頭の中の整理棚に納まる その人の知識の網の目にひっかかるように説明する ・・・・「たとえ」・ 一言多く VISUAL 「目に見える」説明なら分かる 21 質問からが 本番 質問が出てこない説明は× わからないと、質問はできない 少し理解してもらえた 質問が出る 相手の理解が確認できる 自分が質問するに値すると認められた 喜ぼう 患者満足 たくさん話されることよりも、 質問にきちんと答えてもらうことで満足度が増す 患者さんの質問と医療者の答は記録に残す 22 言葉の奥の心に応えないと 質問には全部答えてくれても、医学的な言葉ばかりでは 投げられた球を全部打ち返されてしまった →「認められていない」という苦い思いだけが残る 話をはぐらかされた、とりあってもらえなかった →心が無視された→人間として否定されたと感じる。 言葉に応えるだけでなく、心に応えないと どんな思いからその言葉が生まれているか クレーム その思いに応えないと、正しい答も誤りに の時も 感情に応えないまま、理屈で答えても 23 確認することには深い意味がある どんなことが心配ですか 気にかけて どんなことをご希望ですか もらえると嬉 どんな病気だとお考えですか しい 説明はおわかりになりましたか ほかに話しておきたいことはありますか このような理解でよろしいでしょうか お話しをまとめますと・・・。(相手の話に沿って) 確認の言葉かけ=相手の人に「自分が大切にされている」 と感じてもらえるメッセージとなる 確認してもらうことで、自分のことに気づく 聴いてもらっているという充足感 24 「わかる」の意味が違う 「わかる」の意味/深さが違う 医療者・・・・知識として「わかる」 患者・・自分の置かれた状況を受け止めよう この医者に賭けてみよう という意思の表現としての「わかりました」 25 私たちはプロなのだから プロなのだから 何度も説明 したのに シロウトの人にわかってもらえなければ 相手がわかるまで説明できる能力と忍耐力を 持っていることが求められている 小学生にもわかるような説明を 相手が受け入れられる説明ができる 26 「説明する」ではなく 話し合い=Discussion 話し合いなのだから 一歩下がって受け止めて ・・・同じ人としての次元で 入院、いやですよね・・・。 検査、いやですよね・・・。 医者の説明は理屈っぽいですね。 聞きなれない言葉で、戸惑われたでしょう。 薬の利き方がゆっくりでイライラされるかと思いますが・・・。 医者はたった5日と思いますが、患者さんには長いですよね。 一緒に悩んでみる 一方通行の「説明」や「説得」ではなく、話し合い ・・・説得では心は開かない(強権は最悪) talk to ではなく with で 27 共感的態度とは 共感 ≠心の隅までわかること =「向き合う」「関心を向け続ける」こと 一生懸命、聴きます。 一生懸命、説明します。 ふつうの人間同士です。 あなたの課題から目をそらさない(熊倉伸宏「面接法」新興医学出版社)。 あなたに関心を持ち続けている(鷲田清一「臨床とことば」TBSブリタニカ) 28 雰囲気のプレゼント 雰囲気が悪ければ言葉は聞こえない 病気が言葉を聞こえなくする 言葉は信頼できるか=不確実な言葉 みかけが悪いと通じない 上下関係は理解を妨げる プライドが守られないと、聞こえなくなる 29 患者さんの心は揺れ動く きっと説明を冷静には聞かれない 正確には聞かれない ほとんど聞き取れない 病気になったことの不安、迷いのために 医療者への懼れや不安のために 説明を聞いたための混乱・怒り・否認・不安・悲嘆・・・のために 自我防衛のために 依存と退行は患者の自然 都合良いようにしか聞かれない(バランスを失う) 良いほうにばかり聞く人、悪いようにばかり聞く人、・・・・・ 病気が出る人も・・・・ 人の心の動きを、少しは知っておかないと コミュニケーションがよくても、Happy Endとは限らない 30 言葉は不確実なもの 言葉に込める意味は人によって異なる 言葉は心を反映するとは限らない(思いが言葉にならない) 人は思いのすべてを話すわけではない 言外に伝える意味がある (つまらないものですが・・・。メタ・メッセージのやりとり) 状況(場面、相手)によって、言葉の意味も変わる 言葉が心を生み出す(話しているうちに考えが湧く) 言葉を交わすことによる交際(言語交際:phatic communion) 雑談こそが重要かも・・・ 「無駄」のない話は、「実」もない 31 言葉の役割はわずか? 記号=言語 7% 準言語(言葉・声の表情) 38% 声の大きさ・声の調子、話し方、言葉の速度、笑い方 非言語(ボディランゲージ) 55% 手で語る・目で語る・視線 表情、笑い方 患者との位置(角度・距離) 話し手の心は、態度から読み取られる 言葉の響き・深み・音韻といった具体的な何かが、身体の中にしみこんでくる。言葉は相 手の脳にじかに訴えかける力を持っている。(内田 樹) 32 人はみかけが9割? 社会人としての常識・基本的マナーのできていない 人に、尊重されているとは思えない まずは 身だしなみ (白衣・化粧・装身具・頭髪・ひげ・透けて見える下着・・・・患者がどう見るか) 挨拶 時間を守る・約束を守る 33 信じてもらえなくなる態度 してはいけない動作 腕組み、足を組む、貧乏ゆすり、ほおづえ、 ペン回し、壁にもたれて、・・・・・ つまりは、上の人は○ 下の人は× の態度 話し方・表情、歩き方、挨拶に人間性は表れる 「私とは立居振舞である」山内志朗「つまずきの中の哲学」NHK 34 なにげない言葉が 「上から目線」 断定的な言葉 「・・・なんです!」「・・ということになっています」 命令「・・・してください」「いいですよ」 否定的な言葉 「きまりですから」「だめです」「みんな同じです」 適当な返事「はーい」「うん、うん」「あ、そう」「そうなんだ」 ぞんざいな言葉 「・・・は?」 「やつ」・・・・ 親しさの勘違い? 「・・・ね」 言葉だけ 「お大事に、どーぞー」「ごめんなさい」「すみません」 不快感? だから ですから 指導的な言葉 話してあげる 教えてあげる 敬語なしの会話 上から目線は理解を妨げる 35 プライドが守られないと プライド(人間としての誇り)を守る 話を聴くこと 礼儀正しく接すること プライバシーを守ること 患者さんにとっては、自分が世界一の重要人物(MVP) 聴くことで、相手が大切にしていることを知る 相手が大切にしていることを、大切にする=尊重 36 コミュニケーションというキャッチボール 医療者はキャッチャー 目の高さを低く、腰を落として どんなボールも受け止め、優しく投げ返す 相手がキャッチできるボールを投げ返す Understand = 相手の下に立つから、相手のことが理解できる 37 同意書と、患者 インフォームド・コンセント の納得・満足と これだけの話し合いの上にインフォームド・コンセントが可能 の間の断絶 説明と同意 ではなく 医療者の十分な説明による患者の納得とその納得 の上に成り立つ患者と医療者との診療に関する合意 (問題解決にむけて) 一緒に歩いていきましょう インフォームド・コンセントは 小さいことからコツコツと どんな時も、どんなことも Consent←consensus=センスを共有する 38 言葉が跳ね返されるとき 言葉が難しい だけでなく 態度が悪い 上から目線 相手を教えてやろう、相手の間違いをただ してやろうという雰囲気 (こちらは正しい、という姿勢) 人のつらさ、悲しさを感じていない 39 患者さんは・・・ 40 異文化の人間の間では 感覚も異なる たった2~3日 しばらくの間 近いうち 誰でも、我慢している 仕事に行くなんて非常識 15分しか待っていない ちょっとした手違いで。重要な薬ではなかったので。 とりあえず、1週間呑んでみて下さい 何かあったら来て下さい 医療者の言葉がきつい 41 患者さんは我慢しています 「もっと私のことを見て」 「病人としてだけ見ないで」 「私を見捨てないで」 「いらいらにつきあって」 「私を大事に扱って」 この病院で良いの かな この医師で良かった のかな 医療者に悪く思われたくない ・・・患者さんは敏感なアンテナを持っています (感覚が研ぎ澄まされている) どうして私がこんなことになったのだろう すべてが不安 42 患者の不安と悔しさを知ってほしい 不安・・・・迫ってくる生命の危機 ← MVPなのに 悔しさ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 病気で人生が挫折してしまって(理不尽!!) 自分の身体に起きたことがわからなくて箸が転がっても悔しい 自分の人生が、自分で決められなくて ↓ 自分が、小さくなってしまい、「裸」にならされて 怒り 自分のことを他人に任せるしかなくて 若くて、元気で、失礼な、その「他人」にこんなに気をつかって 言いたいことも言えなくて 聞きたいことも聞けなくて 勝ち組(=医者、・・・)に、また支配されて 健康を強制されて 振り分けられて ・ 頼りたい 頼りたくない ・ 上から目線、上から言葉・・・説明、教育、指導 「土下座」するような気持ちで医療者の前にいる 43 参考 海原純子「こころの格差社会」 角川新書 医療者の言葉や態度で 患者は不安にもなれば、安心もできる →自分が話した後の反応を 心が落ち着か 目と耳と心で感じ取って、軌道修正 ないと、話は聞 患者さんは一人 温かい言葉・雰囲気を こえない で病気と闘って 「一緒に頑張りましょう」 いるのではない のだから 心が落ち着くと、自分の苦しみや悩みと向き合うエネル ギーや余裕が生まれる 患者さんの後には、たくさんの人が固唾を呑んで こちらを見つめている 44 こんな言葉 あんな言葉 お待たせしました お手数をおかけします(した)が・・・ ご心配でしょうが(ですね) 突然のことで驚かれたでしょうが・・・ ふだんの会話でも使えるクッション言葉 否定的表現より肯定的表現で ・この部屋は8時30分まで開きません ・手術なのに赤いリップクリーム ・こんな症状でこの病院に来ないで ・だめです、でも・・・ YOUメッセージより I (アイ)メッセージ ・私は心配です これも言葉のプレゼント 45 指導・指示ではなく 相手が受け入れられるアドバイスを 相手に対して敬意のある雰囲気で 多くを言い過ぎない 否定的表現より肯定的表現で (「だめです」よりも「できます」) 過去より未来に向かって 支持的・理解的表現で、まず受け止めて 質問を通して、相手の考えを尊重し、気づきを促す 別の考え方や改善策を具体的に提案する (こんな考え方もありますが・・。 こんな方法はどうですか?) 目標の設定 イメージング 数値化 I(アイ) メッセージによるサポート 46 人生の嵐のただ中にいる なによりも患者さんと一緒に 一緒に考えましょう 一緒に悩んでみます 一緒に頑張ってみませんか 私たちがお手伝いします 横で、後ろで、支えますよ という想いからの説明が患者さんを支える という想いからの説明しか伝わらない という話し合いでしか人は進んで動かない 一緒に考え・悩んで・選ぶインフォームド・チョイスは大切 自分も決定に参加したという思いが大切(責任は共同責任です) 47 チームアプローチ 脳外科 医師 消化器 外科医師 呼吸器 外科医師 整形外科 医師 検査 技師 栄養士 看護師 主治医 放射 技師 MSW PT 消化器 内科医師 腎臓 呼吸器 内科医師 神経 循環器 内科医師 内科医師 内科医師 48 チームアプローチ 医師 看護師 薬剤師 栄養士 PT 放射 技師 OT 患者さん &ご家族 検査 技師 ST MSW HK 看護 助手 事務職 介護士 クラ ーク 49 チームアプローチ 医師 患者 家族 薬剤師 看護師 PT 栄養士 OT 放射 技師 患者さんの 健康問題 検査 技師 ST MSW HK 看護 助手 事務職 介護士 クラ ーク 50 再確認・・・コミュニケーション 信頼を育むこと 人と人との間に「共通のもの」を作り出す共同化の営み やまだ ようこ「共に見ること語ること」(北山修『共視論』所収) コミュニケーションで伝えるもの・・・言葉 コミュニケ―ションで伝わるもの・・・人柄・思い 伝える技術の「最大の目的」は 「好き・好かれる」の関係を作ること 竹内一郎「人は見た目が9割」(新潮社) 51 患者さんは まともな精神状態ではありません 言いたいことも言えないし、何を言って良いかもわかりません 医療者の話が耳に入りません 不安・悔しさ・辛さの嵐の中に立ちすくんでいます この病院でよいかと悩んでいます 患者さんには患者さんの見方・考えがあります そんな人に、どうつきあえば良いのか そのことを忘れずに だからこそ普通にきちんとコミュニケーション コミュニケーションこそが医療の基本だから 52 「一番になれたのは、研修のときに教えられたことを忘れずに実行した成果」(新幹線ガール) コミュニケーションは 難しいことではありません 技法も敬語も、実は知っています。 正しい敬語は知性の表れ 敬語の使用は姿勢の表れ 恋人とつきあえる人なら 院長や看護部長ときちんと話せる人なら そこでは、 きちんと相手の話を聴いているはずですし、 敬語も礼儀もきちんとできているはずです。 そのベストの能力を、目の前の人にプレゼントすれば よいだけです。 患者さんのことを「させる」と言ってしまう「目の高さ」を、 医師-看護師・コメディカルの権威勾配を、変えませんか。 53 コミュニケーション・センス コミュニケーションは、自分を愛することから始まる。自分を大切 に思ってこそ、相手を尊重できる。 やさしさとは、品の良い思いやり。それをしたら、相手がどんな に傷つくか、どんなに慰められるかということに敏感になること。 言葉を無神経に使い始めると、そこからコミュニケー ション・センスが一つ一つ欠けていく。 会話の楽しさを演出する。 成功の秘訣は、相手の立場に立つ能力 福田健「コミュニケーション・センス」 54 相手の立場に身を置いてみる 心の中で横に並んで座ってみる =患者さんにはどう見えているだろう 並んで、同じ方向を見る joint attention 私たちには針でも、患者には棒に見えているかも 「やさしい」言葉が棘に聞こえているかも 想像力 医療者のペースに乗せるのではなく、 患者さんのペースに合わせる ( ペーシング) 55 良いコミュニケーションは 医療事故を防ぐ 医事紛争を防ぐ 病院の評価を上げる だけど「そのために」ではなく、 コミュニケーションこそが医療の基本で equal =対等 =平穏な 当たり前のケアをきちんとする このような結果になる ことが、 患者さんに対して と 医療者間 とで 違いがあるわけではありません。 56 ふだんがだいじ こだわりなく気軽に、どんなことでも 話せる・質問できる・注意しあえる 「風通しがよい」「水平な」=共感的な 人間関係 → チーム医療の基礎 お互いに尊重しあう関係 だから、コミュニケーション 57 プレゼントにはお返しが・・・ 患者さんからの信頼 患者さんからの好意的な評価 患者さんとの良好なコミュニケーション トラブルの減少 E S(はたらきがい) 58 今日お話ししたことは 「あたりまえのこと」ばかりでした。 患者さんの望むところに添って ・・・元気になりたい 尊重してほしい 味方になってほしい 患者さんを主語にして 患者さんのために、もうちょっとだけ「手間」と「時間」を 提供して 患者さんと楽しくお話しすることができれば 仕事は今以上に楽しいものになりそうな気がします 59