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テキスト - 日本少額短期保険協会

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テキスト - 日本少額短期保険協会
【個人情報の取扱いについて】
1.個人情報の取得・利用目的
特定非営利活動法人 少額短期保険募集人研修機構(以下、「当研修機構」という)
は、少額短期保険募集人試験(以下、「本試験」という)を実施・運営するために
必要な範囲で受験者情報等を取得・利用します。
2.第三者への提供と制限
当研修機構は本試験の実施・運営に必要な範囲で、受験申込者本人の同意を得て、
受験者情報等を当研修機構で保有し、かつ受験申込みを行った少額短期保険業者等
に提供いたします。また、本試験の運営を他の第三者に移管することとなった場合
には、当研修機構から、受験者情報等を当該第三者に提供することがあります。
なお、法令等に定めのある場合を除き、本人の同意なく、第三者に個人情報を提供
することはありません。
3.個人情報の開⺬・訂正・利用停止等の請求手続き
当研修機構は、受験申込者本人またはその代理人から本試験にかかわる保有個人デ
ータの利用目的の通知・開⺬・訂正(追加または削除を含む)・利用停止(第三者
提供の停止を含む)に関する照会・請求がある場合は、受験申込みを行った少額短
期保険業者等を通じてお申し出を受付け、受験申込みを行った少額短期保険業者等
を通じて回答いたします。
は じ め に
これから少額短期保険の販売に携わる皆さんは、お客様の立場に立っ
て多様なニーズにお応えできるよう、正しい知識を身につける必要が
あります。
少額短期保険募集人教育では、皆さんが少額短期保険の販売に携わる
うえで必要となる「保険の基礎知識」、
「少額短期保険業の役割と特色」、
「守らなければならないルール(コンプライアンス)
」、
「保険商品の概
要」などについて学習します。
少額短期保険募集人教育テキストは、少額短期保険を販売するうえで
知っておきたい知識を、わかりやすくまとめています。
お客様の信頼に応えられるよう、基本的な知識をしっかり学習してく
ださい。
ご
注
意
○本テキストは、2013(平成25)年4月1日現在公表されている法律等の内
容に基づき編集されています。その後の状況により、その内容が変更とな
る可能性があることをご了承ください。
また、各少額短期保険業者が販売している保険商品の約款等の内容と異な
る場合がありますので、実際の保険販売にあたっては、各少額短期保険業
者の取扱いをご確認ください。
○「少額短期保険募集人試験」は、本テキスト(第1編から第5編)の記載
内容から出題されます。
ただし、本テキスト中の(注)および(参考)は、少額短期保険募集人試
験の出題の対象とはなりません。
2013(平成25)年4月
特定非営利活動法人
少額短期保険募集人研修機構
前付・1
◆目 次
第1編
第1章
保険の基礎知識
保険のしくみと役割 ·······························································2
ステップ1
リスクと保険 ·······························································2
ステップ2
保険のしくみ ·······························································5
第2章
保険の種類とあらまし ·····························································12
ステップ1
公的保険(社会保険) ·······················································12
ステップ2
私的保険 ···································································13
■理解度チェックテスト ···································································15
第2編
第1章
少額短期保険業
少額短期保険業の役割 ·····························································18
ステップ1
少額短期保険業とは ·························································18
ステップ2
少額短期保険業の役割 ·······················································19
第2章
少額短期保険業の特色 ·····························································20
■理解度チェックテスト ···································································24
前付・2
第3編
第1章
コンプライアンス
正しい販売活動 ···································································26
ステップ1
少額短期保険募集人の役割 ···················································26
ステップ2
コンプライアンスの重要性 ···················································28
ステップ3
顧客満足とコンサルティングセールス ·········································29
第2章
少額短期保険募集人が守らなければならない法律 ·····································30
ステップ1
保険業法の概要 ·····························································30
ステップ2
保険募集を行うためのルール(少額短期保険募集人の規制) ·····················31
ステップ3
保険募集 ···································································34
ステップ4
重要事項の説明 ·····························································36
ステップ5
保険募集の禁止行為 ·························································39
ステップ6
保険業法違反に対する措置 ···················································45
ステップ7
クーリング・オフ(契約撤回請求権)制度 ·····································46
ステップ8
消費者契約に関する法律 ·····················································48
ステップ9
犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法) ·················52
ステップ10 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法) ·······························55
第3章
少額短期保険募集人の日常業務 ·····················································59
ステップ1
保険契約の締結 ·····························································60
ステップ2
保険契約の管理 ·····························································65
ステップ3
事故発生時の対応 ···························································66
ステップ4
照会・苦情への対応 ·························································67
■理解度チェックテスト ···································································69
第4編
第1章
保険商品の概要
生命保険 ······································································· 72
ステップ1
第2章
生命保険 ···································································72
損害保険 ······································································· 74
ステップ1
火災保険 ···································································74
ステップ2
自動車の保険 ·······························································75
第3章
傷害疾病定額保険 ······························································· 76
ステップ1
医療保険・がん保険・介護保険・傷害保険 ·····································76
■理解度チェックテスト ···································································77
前付・3
第5編
第1章
保険の周辺知識
保険と法律 ····································································· 80
ステップ1
賠償責任に関する法律知識 ···················································80
ステップ2
相続に関する法律知識 ·······················································82
第2章
保険と税金 ····································································· 86
ステップ1
生命保険商品の保険金と税金 ·················································86
ステップ2
損害保険商品の保険金と税金 ·················································90
第3章
少額短期保険業を取り巻く業界 ··················································· 92
ステップ1
共済(JA共済連・全労済・全国生協連) ·····································92
■理解度チェックテスト ···································································94
保険に関する用語解説 ······························································ 95
前付・4
第1編
保険の基礎知識
学習のポイント
第1編では、保険のしくみ(原理・原則)、保険の役割、保険の種類について学習し
ます。
①リスクと保険との関係は?
②保険はどのようなしくみになっているのか?
③保険にはどのような役割があるのか?
④保険にはどんな種類があるのか?
など、保険の基本的な知識を理解します。
【学習する項目】
1.保険のしくみと役割
2.保険の種類とあらまし
★1★
第1章
ステップ
1
保険のしくみと役割
リスクと保険
豊かな家庭生活は、
「経済的な豊かさ」
「家族の健康」
「心の満足」が満たされてはじめて実現しますが、
これらは偶然な出来事に脅かされています。例えば、世帯主に万一のことがあった場合、家族は、大き
な悲しみに加え、収入が途絶え、明日からの生活にも困ってしまうことになります。このほか、自家用
車を運転中に他人を死傷させ多額の賠償金を請求されたり、住宅や家財が火災によって焼失すれば、大
きな経済的損失を被ることになります。
一方、企業は、事業活動を通じて利益をあげることを目的としていますが、店舗や工場に火災が発生し
たり、従業員が労災事故によって死傷したり、PL(製造物責任)事故によって賠償責任を負うなど、
巨額の損失をもたらすさまざまな可能性にさらされています。
保険は、このような可能性を他に移転する機能を有しています。つまり、個人・企業は、保険契約を通
じて、自らが抱えている損失の可能性を保険業者に移転することができます。保険契約は、保険契約者
が保険料を支払い、万一の場合には保険業者が保険金を支払うことを約束する「リスク移転(損失の補
てん)の契約」です。
1.リスクとは
リスクとは、偶然な出来事によって「損失が発生する可能性」をいいますが、厳密には、将来損失
が発生するか発生しないかが「不確実」であることです。例えば、ある人が自動車事故を起こさな
いと見込んで自動車保険を付けなかった場合、事故を起こさなければ保険料を節約できますが、事
故を起こし他人を死傷させると多額の賠償金を負担しなければなりません。したがって、損失が発
生する可能性がある、つまりリスクが存在する場合には、適切な保険を付けるなど、十分なリスク
対策を講じることが必要です。
★2★
(1)物的リスク
火災・爆発・盗難・風水害・地震等によって、住宅・家財や店舗・工場・機械・商品などの資
産に損害が発生する可能性です。
火災で焼失した住宅の再築中に臨時にアパートを賃借するなど、物的損害にともなって余分な
費用が発生する「費用リスク」、店舗や工場に火災が発生したため⻑期間にわたって休業を余
儀なくされ、利益が減少する「休業リスク」も物的リスクに含まれます。
(2)人的リスク
世帯主・家族、企業経営者の死亡・ケガ・病気や労災事故による従業員の死傷等によって、個
人・企業が経済的損失を被る可能性です。
(3)賠償責任リスク
自動車事故等により他人を死傷させたり、他人の財物を損壊させたことによって、賠償責任を
負う可能性です。
さらに、わが国では、2011(平成23)年現在、平均寿命が男性79.44歳・女性85.90歳と高齢社会
を迎えており、いかに老後の生活を送るかが大きな問題になっています。「⻑生きリスク(生存
リスク)」は、事故が突然起こるといったリスクではありませんが、個人にとって大きなリスク
となってきています。
★3★
第1編 保険の基礎知識 第1章 保険のしくみと役割
リスクは、その態様によって次のとおり分類することができます。
2.リスクに対する備え
個人・企業としては、不測の事態に備えて、事前に十分なリスク対策を講じておくことが大切です。
リスク対策を検討するにあたっては、まず、家庭生活や事業経営を脅かすリスクにどのようなもの
があるかを洗い出し、リスクが顕在化した場合、どの程度の損失を被るかを予測し、さらに保険の
対象となるリスクかどうかを確認することから始めます。次に、事故の発生を回避したり損害額を
軽減するための予防対策を講じ、最後に、事故・災害によって損失を被った場合、どのように経済
的復旧を図るかを検討しなければなりません。
(1)リスクの防止と軽減(損失の予防対策)
「リスクの防止」の例としては、病気にかからないよう、規則正しい生活を心がけ定期健康診
断を受けること、自動車事故を起こさないよう、交通法規を遵守し安全運転を心がけること、
火災を発生させないよう、日常の火元管理に注意することなどがあります。また、消火設備の
設置などによって火災損害を最小限に抑えるといった「リスクを軽減」するための対策も必要
です。リスク対策といえば、保険の付保など損失発生後の対策に目が向けられがちですが、損
失の発生を未然に防止する「リスクの防止と軽減」がリスク対策の基本となります。
(2)リスクの移転(保険の付保)
「リスクの移転」は、保険業者にリスクを移転(保険を付保)し、事故によって損失が発生し
た場合には、保険業者から支払われる保険金によって経済的復旧を図ることです。万一に備え
て貯蓄する方法もありますが、貯蓄の場合は、それまでに積み立てられた金額だけが復旧に充
当されることになり、必ずしも十分とは言えないこともあります。保険には、保険を付けた直
後に事故が発生しても、損失が保障(補償)されるという利点があります。
保険を付けるにあたっては、さまざまなリスクに対して、
「何に、どの保険を付けるか」
「何に、
どのくらい保険を付けるか」、さらに「保険料は、いくらになるか」を検討し、最も適切な保
険を選択することが大切です。
(3)リスクの保有(損失の自己負担)
日常ひんぱんに発生する小さな損害に対して保険を付けることは、必ずしも経済的とはいえず、
また、偶然性に欠ける損害は保険の対象にはなりません。例えば、住宅の雨漏りをなくすため
の屋根の修繕費は家計費でまかない、故障した機械の修理費は会社の経費で処理されるべき性
質のものです。
一般に、ひんぱんに発生するが損害の小さいリスクは「保有(損失の自己負担)」し、発生のひ
ん度は低いが損害の大きなリスクは「移転(保険の付保)」することが合理的な方法です。
★4★
2
保険のしくみ
保険制度は、多くの人々がわずかなお金を出し合って資金プールをつくり、その中の誰かが事故・災害
に見舞われたとき、資金プールから損失を保障(補償)する制度です。各人が万一に備えて多額の貯蓄
をしなくても、保険によって、わずかな負担で大きな安心を得ることができます。このように、保険制
度は、
「一人は万人のために、万人は一人のために」という相互扶助の精神によって成り立っています。
1.保険の原理・原則
保険は、一人ひとりにとっては偶然な事故であっても、大量に観察することによって、全体として
損失の発生がどの程度になるか、確率的に予測できるという「大数の法則」を応用したしくみです。
近代的な保険制度では、保険が合理的で公平な相互扶助制度となるように、保険料は、保険業者の
収入総額と支出総額とが等しくなるよう定められ、さらに被保険者(P.8参照)や保険の対象(保
険の目的物)
(P.11参照)の危険度に応じて算定されています。
たいすう
(1)大数の法則
サイコロを振ったとき1から6のうちのどの目が出るかはわかりませんし、特定の人が向う1
年間に死亡するかどうかもわかりません。しかし、こうした偶然に左右される事象は、多数繰
り返し振る回数を重ねたり、多数の人を観察してその偶然事象を数え(5の目が何回出たか、
何人の人が死亡したか)、その発生割合を算出すれば、振る回数をさらに多くしたり、観察す
る人数をさらに増やしていくにしたがって、これらの発生割合がそれぞれの真の確率(サイコ
ロでは6分の1)に対し一層近い値になる、ということが数学的に証明されています。このこ
とを「大数の法則」といいます。
この法則により、10万人の人を集めると1年間に10万人のうち何人くらい死亡するか、10万軒
の住宅を集めると1年間に10万軒のうち何軒くらい焼失するかという事故発生を、その集団の
大きさと関係付けて、その信頼性とともに推定することができます。保険は、この大数の法則
を基礎としているため、多くの人々が保険に加入することが前提となります。
★5★
第1編 保険の基礎知識 第1章 保険のしくみと役割
ステップ
(2)収支相等の原則
多くの保険契約のなかには、契約締結後に被保険者が死亡したり、保険の対象に火災が発生し
たため、保険業者が所定の保険金を支払わなければならない場合もあれば、満期まで保険事故
が発生しなかったため、全く保険金が支払われないで保険契約が終了する場合もあります。こ
のように、個々の保険契約でみれば、保険料と保険金のバランスは保たれていません。
しかし、保険制度では、保険契約全体で収支バランスが保たれるようになっています。つまり、
保険業者の収入総額(保険契約者全員の払い込む保険料およびその運用益等の合計額)と支出
総額(保険業者の支払う保険金および事業費等の合計額)とが等しくなるようにしています。
これを「収支相等の原則」といいます。
保険料は、この原則に基づいて「保険金の支払いに充当される部分(純保険料)」に「新契約
を締結するための費用や契約を維持・管理するための費用等(付加保険料)」を加算して算定
されています。
(3)公平の原則
保険には、危険度の異なるさまざまな人々が加入しているため、全員が同じ保険料では、不公
平が生じます。例えば、高齢者は若い人よりも死亡率が高く、木造建物は鉄筋コンクリート建
物よりも火災の発生率や損傷度が高くなっています。そこで、保険料は、保険による保障(補
償)の対価として、危険度の高低を反映して決めなければなりません。これを「公平の原則」
といいます。保険制度では、死亡率や各種の損害統計に基づき保険料率が算出され、被保険者
や保険の対象の危険度に応じた公平な保険料が定められています。
★6★
保険契約は、保険契約者が保険料を支払い、万一の場合には、保険業者が保険金を支払うことを約
束する契約です。保険制度は、多くの保険契約を集めることによって成り立っています。
(1)契約の成立
保険契約は、保険契約者と保険業者の合意によって成立しますが、実務上は、保険契約者が保
険業者の作成した「保険契約申込書」に所定の事項を記載して契約を「申込み」、保険業者が
契約の引受けを「承諾」することによって成立します。
(2)保険約款
保険契約は、多くの保険契約者との間で取り交わされるため、一人ひとり個別に契約内容を決
定することは実務上困難であり、また保険契約者間の公平性を保つことができません。
そこで、保険業者は、契約の円滑化を図るために、通常、保険契約の内容や条件などを定型的
に定めた契約条項をあらかじめ作成し、これに基づき保険契約が締結されます。この契約条項
のことを「保険約款」といいます。
保険約款には、
「保険金が支払われる場合(保障(補償)内容)」や「保険金が支払われない場
合(免責事由)」、「保険契約者と保険業者の権利・義務」などが記載されており、保険約款は
保険商品そのものということができます。
しかし、保険は目に見えない商品であり、また、保険約款は、契約の範囲や条件など契約にか
かわる詳細な内容が記載されているため、保険募集人は、保険募集に際しては、保険約款のう
ち「重要な事項」についてお客様に十分な説明を行うことが義務付けられています。
保険契約を規律する基本的な法律として「保険法」がありますが、保険約款は、契約自由の原
則に基づき、保険法の強行規定に反しない限り、この保険法に優先して適用されます。
また、保険約款に規定がない事項については保険法の規定が、保険法に規定がない事項につい
ては商慣習が、商慣習にもない事項については、民法の規定が適用されます。
なお、「強行規定」とは、公の秩序に関する規定で、契約当事者がこれと異なった内容を取り
決めることができない法律の規定をいい、「任意規定」とは、契約自由の原則により、契約当
事者間の取り決めが法律の規定に優先する規定をいいます。
保険約款には、一般的な契約内容を定めた「普通保険約款」と、その内容を追加・変更する「特
約」があります。
★7★
第1編 保険の基礎知識 第1章 保険のしくみと役割
2.保険契約
①普通保険約款
普通保険約款は、保険契約の標準的な内容や、保険契約者と保険業者との間の権利・義務に
ついて規定しています。普通保険約款には、一般的に、次のような事項が記載されています。
保険金が支払われる場合
保険金が支払われない場合(免責事由)
支払われる保険金の種類・保険金の算出方法
保険契約締結時における保険契約者等の義務(告知義務)
保険契約締結後における保険契約者等の義務(通知義務)
保険金請求の手続き
など
②特約
特約は、普通保険約款に定められている内容を修正して、保障(補償)内容を追加・変更し
たり、保険料を分割払いにしたりするもので、普通保険約款に優先して適用されます。なお、
特約には、普通保険約款に自動的に付帯されるものと、保険契約者が任意に付帯するものが
あります。
(3)保険契約の当事者等
保険契約には、契約の当事者である保険者と保険契約者のほか、関係者として被保険者や保険
金受取人がいます。
①保険者
保険者とは、保険金支払いの対象となる保険事故または給付事由が生じたときに保険金の支
払義務を負う者のことをいい、少額短期保険業者などの保険業者がこれにあたります。
②保険契約者
保険契約者とは、保険業者に自分の名前で保険契約の申込みをし、保険契約を締結する者の
ことをいい、保険料の支払義務を負います。保険契約者は、自然人(個人)に限らず、法人
でもかまいません。
③被保険者
損害保険契約における被保険者とは、保険事故の発生によって経済的損失を被る可能性のあ
る者のことをいい、保険事故による損害が発生した場合、保険金を受け取る権利を有します。
生命保険契約における被保険者とは、その者の死亡または生存に関し保険者が保険給付を行
うこととなる保険契約の対象となる者のことをいいます。また、傷害疾病定額保険契約にお
ける被保険者とは、傷害疾病により保険契約の対象となる者のことをいい、必ずしも損害保
険契約のように、被保険者が保険金を受け取る権利を有することを意味していません。
★8★
保険金受取人とは、生命保険契約や傷害疾病定額保険契約において、保険金を受け取るべき
者(注)のことをいいます。生命保険契約や傷害疾病定額保険契約では、必ず保険金受取人を
指定しなければならないとしていることから、約款でこれを定めています。
なお、保険金受取人の指定は、特定の者を指定する方式と「法定相続人」というように保険
金受取人の範囲を特定する方式があります。
(注)「保険金を受け取るべき者」を「保険金受取人」といいますが、約款上これと異なる用語を用いてい
る場合もあります。例えば、傷害疾病定額保険契約のうち傷害保険では、被保険者が、死亡保険金を
除いた、後遺障害、入院、手術、通院などの保険金受取人となっており、死亡保険金を受け取るべき
者は、「死亡保険金受取人」と表⺬されています。
■第三者のためにする保険契約
第三者のためにする保険契約とは、保険契約者と保険契約の受益者(保険金を受け取る権利を有す
る者)が異なる契約のことをいいます。保険契約の受益者は、損害保険契約では「被保険者」であ
り、生命保険契約と傷害疾病定額保険契約では「保険金受取人」です。
生命保険や傷害疾病定額保険の死亡保険契約で、保険契約者と被保険者が異なる契約は、
「他人の生
命の保険契約」ともいいます。
なお、「他人の生命の保険契約」では、被保険者の同意がない保険契約は無効となります。
(P.62 ステップ1 保険契約の締結1(3)リスクと保険引受「保険契約の引受の際の注意点 ●被保
険者の同意」参照)
(4)保険契約者・被保険者の義務
保険契約では、保険契約者が保険料の支払義務を負うほか、保険契約者や被保険者に対して、
さまざまな義務が課せられています。ここでは、「告知義務」、「通知義務」および「保険料支
払義務」について説明します。
①告知義務
保険業者は、被保険者や保険の目的物(保険の対象)の危険度に応じて保険料を算出します
が、危険度が著しく高い場合は引受けができないことがあります。このため、保険の申込み
に際しては、保険契約者または被保険者は、危険に関する重要な事項のうち、保険業者が求
める「告知事項」について、事実の告知をすることが義務付けられています。これを「告知
義務」といいます。例えば、生命保険契約では、保険契約者または被保険者は、定められた
書面(保険契約申込書および告知書)に「現在の職業」「現在の健康状態」「過去の傷病歴」
「身体の障害」などについて記載し、署名または記名押印しなければなりません。
保険契約者または被保険者が「告知事項」について「故意または重大な過失」によって事実
を告知しなかったり、事実と異なることを告知した場合には、
「告知義務違反」になります。
保険業者は、告知義務違反を知ったときには、契約を解除することができます。
また、告知義務違反によって保険業者が契約を解除した場合には、契約解除前に発生した保
険事故等に対しては、保険金は支払われません。ただし、告知義務違反があった事実と因果
関係がなく保険事故が発生した場合は、保険金が支払われる場合があります。
(P.60「ステップ1保険契約の締結1.(2)保険契約者等からの告知の受領」参照)
(注)告知方法については、旧商法では、保険契約者が保険者に対して危険測定上の重要事項を自発的に判
断して申告すべき義務(自発的申告義務)とされていましたが、自発的申告義務では、何が危険に関
する重要な事項であるか加入者側で判断することが困難であり、保険者が必要とする告知を求めた方
が合理的であると考えられることから、2010(平成22)年4月施行の保険法では、保険者の質問に応
答すべき義務(質問応答義務)に改められました。
★9★
第1編 保険の基礎知識 第1章 保険のしくみと役割
④保険金受取人
②通知義務
保険期間の中途において、建物の構造・用途の変更や被保険者の職業・職務の変更等により
危険が増加することがあります。契約の締結後に危険が増加した場合には、保険業者は危険
の増加に見合った保険料を追加請求する場合があります。このため、契約の締結後に保険業
者が締結時に告知を求めた事項について変更(危険の増加(注)等)があった場合には、保険
契約者または被保険者は、遅滞なく保険業者に通知しなければならない旨を保険約款で定め
る場合があります。これを「通知義務」といいます。
保険契約者または被保険者が「故意または重大な過失」により遅滞なく通知しなかった場合
には、保険業者は契約を解除することができます。また、保険業者が契約を解除した場合に
は、契約解除前に発生した保険事故等に対しては、保険金が支払われないケースもあります。
(P.65「ステップ2保険契約の管理1.保険契約の変更」参照)
(注)危険の増加とは、告知事項についての危険が高くなり、保険契約で定められている保険料がその危険
を計算の基礎として算出される保険料に不足する状態になることをいいます。
③保険料支払義務
保険契約者が、保険契約の保障(補償)の対価として、保険業者に対して保険料を支払わな
ければならない保険契約者の義務のことをいいます。
★10★
保障と補償
生命保険では、人の死亡などに対して保険金を支払うことを「保障」
と呼んでいます。一方、損害保険では、事故による損害に対して保
険金を支払うことを「補償」または「損害のてん補」と呼んでいま
す。
保障には、万一のときに本人や家族の生活を守るという意味合いが
あり、補償には損害を償うという意味合いがあります。
保険金と保険金額
「保険金」とは、保険事故または給付事由が発生したときに、保険
契約に基づいて保険業者が被保険者または保険金受取人に支払う金
銭のことをいいます。
「保険金額」とは、損害保険契約では、契約時に定められた保険金
支払いの限度額のことをいいます。生命保険契約および傷害疾病定
額保険契約では、
「保険給付の額」のことをいい、契約時に定められ
た金額が保険金として定額給付されます(P.13参照)。
保険料と保険料率
「保険料」とは、保障(補償)の対価として、保険契約者が保険契
約に基づいて保険業者に支払う金銭のことをいいます。
「保険料率」とは保険金額に対する保険料の割合をいい、
「保険料」
は、通常「保険金額」に「保険料率」を乗じて算出されます。
保険期間
保険業者が保険契約により保障(補償)の責任を負う期間のことを
いいます。
保険事故・給付事由
「保険事故」とは、損害保険契約では、保険業者が保険金支払義務
を負う損害を発生させる「偶然の事故」をいい、生命保険契約では
被保険者の「死亡」または「一定時期における生存」をいいます。
なお、傷害疾病定額保険契約では、傷害疾病自体は保険事故ではな
く、傷害疾病による死亡・後遺障害・要介護・手術・入院・通院等
を「給付事由」といいます。
保険の対象
「保険の対象」とは、損害保険契約においては、保険事故によって
(保険の目的物)
損害が発生する可能性のある保険の目的物のことをいいます。例え
ば、火災保険における建物や家財などがこれにあたります。
生命保険契約や傷害疾病定額保険契約では、保険の対象は被保険者
です。
免責事由
保険約款に定められた保険金が支払われない事由のことをいいま
す。
保険業者は、保険事故または給付事由が発生した場合には保険契約
に基づいて保険金を支払う義務を負っていますが、この免責事由に
該当するときは、保険金支払義務を免れます。
※保険用語については、巻末に「保険に関する用語解説」も掲載していますので、あわせて学
習してください。
★11★
第1編 保険の基礎知識 第1章 保険のしくみと役割
(5)主な保険用語
第2章
保険の種類とあらまし
保険は、国または地方公共団体など法律で定められた機関が公的な政策を実現するための手段として行
う「公的保険」と、民間保険業者の取扱う「私的保険」に区分されます。公的な保険・給付制度は、社
会保障制度の一環として実施されている「社会保険」が中心となります。
ステップ
1
公的保険(社会保険)
社会保険は、保険に加入している多くの人々が保険料を拠出し損失を被った人に一定の給付を行うとい
う保険技術を利用し、死亡・疾病・ケガ・失業・老齢などに対して一定の給付を行い、所得または医療
を保障する制度です。
【社会保険の種類】
(1)年金(保険)
(国民年金・厚生年金保険等)
(2)医療保険
国民健康保険・健康保険
等
後期高齢者医療制度
〔⻑寿医療制度〕
(3)介護保険
(4)雇用保険
(5)労働者災害補償保険
(政府労災保険)
年金(保険)には、自営業者等を対象とする「国民年金」、
一般サラリーマンを対象とする「厚生年金保険」、公務員等
を対象とする各種の「共済年金」があります。
医療保険には、
「国民健康保険」、
「健康保険」、各種の「共済
制度」、
「船員保険」があります。国民健康保険や健康保険で
は、療養の給付を受ける際、被保険者の年齢区分などにより、
医療費の1割~3割を一部負担金として、自己負担をするこ
とになっています。
後期高齢者医療制度は、高齢者の医療費を安定的に支えるた
め、現役世代と高齢者がその負担能力に応じて公平に負担す
ることを目的として、2008(平成20)年4月に新たに創設さ
れた制度です。保険給付は、国民健康保険と同じです。
対象者は、75歳以上の者(寝たきりなど一定の障害状態にあ
る場合は65歳以上の者)で、療養の給付を受ける際、医療費
の1割(現役並みの所得がある場合は3割)を自己負担する
ことになっています。
介護保険では、65歳以上の者が要介護・要支援状態になった場
合、または40歳以上65歳未満の者が初老期の認知症、脳血管疾
患、末期がんなどの加齢に伴って生じる心身の変化に起因する
疾病(特定疾病)により要介護・要支援状態になった場合、要
介護・要支援状態に応じて、各種の保険給付が行われます。
雇用保険では、労働者が失業した場合、一定期間基本手当な
どを支給する求職者給付が行われるほか、求職活動を援助す
るための就職促進給付、労働者の能力開発を促進するための
教育訓練給付、労働者の雇用継続を促進するための雇用継続
給付が行われます。
労災保険では、労働者の業務上または通勤途上のケガ・疾
病・障害・死亡に対して、「療養補償給付」「休業補償給付」
「障害補償給付」「遺族補償給付」などの給付が行われます。
★12★
2
私的保険
公的保険に対して私的保険は、自助努力に基づく私的保障部分を民間保険業者が取り扱っているもので、
公的保険を補完・代替するものともいわれています。保険業法では、私的保険は「生命保険(第一分野
の保険)」「損害保険(第二分野の保険)」「傷害疾病保険(第三分野の保険)」の3つに大別され、生命
保険会社は「生命保険」と「傷害疾病保険」を、損害保険会社は「損害保険」と「傷害疾病保険」を販
売することができます。
少額短期保険業者は、保険業法(第2条第17項)および同施行令(第1条の5、同6、同7)で定める
少額短期保険に該当する保険であれば、「生命保険」「損害保険」「傷害疾病保険」のいずれの保険も販
売することができます。
1.生命保険(第一分野の保険)
生命保険は、「人の死亡または生存」に関し「一定の保険給付」を行う保険です。つまり、生命
保険は、被保険者が死亡したとき、または、一定時期に生存していた場合に、契約時に定めた金
額が保険金として支払われる「定額払い」の保険です。
※主な生命保険には、定期保険、終身保険、個人年金保険、養老保険などがあります。
2.損害保険(第ニ分野の保険)
損害保険は、「偶然の事故」によって損害が発生した場合、実際の損害額に応じて保険金が支払
われる保険です。つまり、生命保険が「定額払い」の保険であるのに対し、損害保険は、損害が
発生した場合に損害額が査定され、保険金額を限度に損害額に応じて保険金が支払われる「損害
てん補」の保険です。
※主な損害保険には、火災保険、地震保険、自動車保険、賠償責任保険などがあります。
3.傷害疾病保険(第三分野の保険)
傷害疾病保険には、「傷害疾病定額保険」と「傷害疾病損害保険」があります。
「傷害疾病定額保険」とは、
「人の傷害疾病」に関し、
「一定の金額」が支払われる保険です。つ
まり、被保険者の傷害疾病による死亡・後遺障害・要介護・手術・入院・通院等の給付事由が発
生した場合、生命保険と同様に、契約時に定めた金額が保険金として支払われる「定額払い」の
保険です。
※主な傷害疾病定額保険には、傷害保険、医療保険、がん保険、介護保険などがあります。
「傷害疾病損害保険」とは、被保険者が傷害疾病によって生じた治療費用・介護費用等の負担や
所得喪失などの損害を被った場合、損害保険と同様に、保険金額を限度に損害額に応じて保険金
が支払われる「損害てん補」の保険です。
※主な傷害疾病損害保険には、医療費用保険、介護費用保険、海外旅行保険の傷害治療費用補償
特約・疾病治療費用補償特約などがあります。
(注)2010(平成22)年4月に施行された保険法では、
「傷害疾病保険」を「傷害疾病定額保険」と「傷害疾病損
害保険」に区分し、保険契約を「生命保険契約」、
「損害保険契約(傷害疾病損害保険を含む)」、
「傷害疾病
定額保険契約」に分類し、それぞれ保険法上の生命保険契約に関する規定、損害保険契約に関する規定、
傷害疾病定額保険に関する規定が適用されます。
「傷害疾病損害保険契約」については、損害保険契約とし
て取り扱われ、損害保険契約に関する規定が適用されます。
★13★
第1編 保険の基礎知識 第2章 保険の種類とあらまし
ステップ
※本テキストでは、保険業法に係る部分については保険業法上の区分にしたがい「傷害疾病保険
(第三分野の保険)」と、また、保険法の規定に係る部分については保険法上の区分にしたが
い「傷害疾病定額保険」と記述しています。
参
考
■保険会社および少額短期保険業者が取扱える保険
※少額短期保険業者は、保険業法および同法施行令で定める少額短期保険に該当する保険
であれば、生命保険、損害保険、傷害疾病保険のいずれの保険商品も取扱うことができ
ます。(「少額短期保険業で引受けることができない保険」については、P.21参照)
生命保険会社が取扱
える保険商品
生命保険
(第一分野の保険)
傷害疾病保険
(第三分野の保険)
・定期保険
・終身保険
・個人年金保険
・養老保険 など
・傷害疾病定額保険
(傷害保険、医療保険、
がん保険、介護保険など)
*保険法の適用
傷害疾病定額保険契
約に関する規定
*保険法の適用
生命保険契約に関する規定
・傷害疾病損害保険
(医療費用保険、介護費
用保険など)
*保険法の適用
損害保険契約に関する
規定
★14★
損害保険会社が取扱
える保険商品
損害保険
(第ニ分野の保険)
・火災保険
・地震保険
・自動車保険
・ペット保険
・賠償責任保険
など
*保険法の適用
損害保険契約に関する規定
テキストの理解度をチェックしてみましょう。
正解の場合はチェック欄をチェック。間違った場合は再度チャレンジしましょう。
理解度テスト1
「保険のしくみと役割」に関する下記の文章のうち、正しいものには○印を、誤っているものには×印
を解答欄に記入してください。
1.リスクに対する備えとして、一般に、ひんぱんに発生するが損害の小さいリスクは「保有(損失の
自己負担)」し、発生のひん度は低いが損害の大きいリスクは「移転(保険の付保)」することが合
理的な方法です。
2.保険は、一人ひとりにとっては偶然な事故であっても、大量に観察することによって、全体として
損失の発生が確率的に予測できるという「大数の法則」を応用したしくみです。
3.保険は、保険契約全体で収支バランスが保たれ、保険業者の収入総額と支出総額とが等しくなるよ
うになっていますが、これを「公平の原則」といいます。
4.保険契約を規律する基本的な法律として「保険法」がありますが、「保険約款」は、契約自由の原
則に基づき、保険法の強行規定に反しない限り、この保険法に優先して適用されます。
解答欄
1
2
3
4
チェック欄
(答:1→○
★15★
2→○
3→×
4→○)
第1編 保険の基礎知識 理解度チェックテスト
理 解 度 チ ェ ッ ク テ ス ト
理解度テスト2
次の文章の
に当てはまる最も適切なものを下記ア.~ク.から選び、解答欄に記入してくだ
さい。
保険契約は、保険契約者が契約を申込み、保険業者が契約の引受けを「
1
」することに
よって成立します。
保険の申込みに際しては、保険契約者または被保険者は、危険に関する重要な事項のうち、保険
業者が求める「告知事項」について、事実の告知をすることが義務付けられています。保険契約者
または被保険者が「故意または
2
」によって事実を告知しなかったり、事実と異なること
を告知した場合には、告知義務違反になります。保険業者は、告知義務違反を知ったときには、契
約を
には、
3
4
することができます。告知義務違反によって保険業者が契約を
3
した場合
に発生した保険事故等に対しては、原則として保険金は支払われません。
ア.告知
イ.承諾
ウ.契約解除前
オ.失態
カ.重大な過失
キ.解除
解答欄
エ.契約解除後
ク.取消
1
2
3
4
チェック欄
(答:1→イ
★16★
2→カ
3→キ
4→ウ)
第2編
少額短期保険業
学習のポイント
第2編では、皆さんがこれから取扱う「少額短期保険」および「少額短期保険業」に
ついて学習します。
①少額短期保険とはどのような保険か?
②少額短期保険業とはどのような事業か?
③お客様にとって最適の少額短期保険商品とは何か?
など、少額短期保険および少額短期保険業にかかわる基本的な知識を理解します。
【学習する項目】
1.少額短期保険業の役割
2.少額短期保険業の特色
★17★
第1章
ステップ
1
少額短期保険業の役割
少額短期保険業とは
ここでは、「少額短期保険業」、「少額短期保険業者」、「少額短期保険募集人」について、法律上の定義
を知っておきましょう。
1.少額短期保険業
保険業のうち、保険期間が2年以内の政令で定める期間以内(注1)であって、保険金額が1,000万円
を超えない範囲内において政令で定める金額以下(注2)の保険のみの引受けを行う事業をいいます
(保険業法第2条第17項、同施行令第1条の5、同6)。
(注1)第2章の「2.保険期間に関する制限(上限)」を参照。
(注2)第2章の「1.保険金額に関する制限(上限)」を参照。
2.少額短期保険業者
内閣総理大臣の登録(保険業法第272条第1項による登録)を受けて、少額短期保険業を行う者を
いいます(保険業法第2条第18項)。登録を申請するには、登録申請書に、定款、事業方法書、普
通保険約款、保険料および責任準備金の算出方法書を添付し、これらの書類について審査を受ける
ことが必要です。
3.少額短期保険募集人
少額短期保険業者の役員もしくは使用人または少額短期保険業者の委託を受けた者もしくはその
者の再委託を受けた者もしくはこれらの者の役員もしくは使用人で、その少額短期保険業者のため
に保険契約の締結の代理または媒介を行うものをいいます(保険業法第2条第22項)。
4.少額短期保険業者の業務の範囲
少額短期保険業者は、専業を原則としており、少額短期保険業およびこれに付随する業務に加え、
少額短期保険業に関連する業務として内閣府令で定める業務(例えば、他の少額短期保険業者また
は保険会社の業務の代理または事務の代行など)を行う場合には、内閣総理大臣の承認を得なけれ
ばなりません(保険業法第272条の11、同施行規則第211条の24)。
また、少額短期保険業者は、保険料として収受した金銭その他の資産の運用についても、預金、国
債・地方債の取得等に限定されています(保険業法第272条の12、同施行規則第211条の26~28)。
★18★
ステップ
少額短期保険業の役割
少額短期保険業は根拠法のない共済への対応から生まれました。ここでは、少額短期保険業に求められ
る役割を少額短期保険業創設の経緯と保険業としての位置づけという2つの側面から考えてみましょ
う。
1.少額短期保険業創設の経緯
少額短期保険業を定めた改正保険業法が施行される2006(平成18)年4月以前においては、根拠法
のない共済の特徴として、次のようなことがあげられていました。
①特定の顧客を相手に保険会社の提供しないリスクに対応した保険商品や低廉なリスク移転の手
段を提供するといった特定のニーズに対応した商品提供の担い手となっている。
②事業の多様性がある。見舞金程度の給付から保険会社と同程度の高額給付までの多様な商品を、
自ら保険の引受けにかかわるリスク保有を行うもの、再保険等によりリスクの大半を保険会社等
に移転するものなど多様な事業形態で提供している。
少額短期保険業は、こうした根拠法のない共済の特徴を踏まえる一方で次に述べる保険業としての
位置づけを確保するために創設されています。お客様の特定のニーズに対応した商品を提供するこ
とは、少額短期保険業者の特徴の1つといえます。
2.保険業としての位置づけ
保険業の新しい枠組みとして誕生した少額短期保険業は、「保険」を取り扱う者として、保険業法
に基づく規制・監督の対象となりました。保険契約者の保護を全うし、公正な競争ルールに則った
保険募集を展開することが求められています。
また、少額短期保険業については、金融庁から「少額短期保険業者向けの監督指針」(以下「監督
指針」といいます。)が公表され、規制・監督の詳細が⺬されており、
「適法性」、
「透明性」が強く
求められています。保険契約者の保護を確立し、安心を提供することが、少額短期保険業として果
たすべき責任の1つといえます。
3.消費者に密着した保障(補償)
少額短期保険業の大きな役割は、上記の2つの側面から考えてみますと、保険業としての位置づけ
を確保しつつ、
「お客様に密着し」
「ニーズを掘り起こし」
「ニーズに応え」
「保障(補償)で応える」
ことであるといえます。
※一般社団法人 日本少額短期保険協会では、少額短期保険を紹介した「少額短期保険ガイドブッ
ク」を作成しています。この冊子により多くの少額短期保険の魅力を知っていただき、賢くご加
入いただくことを目的にしたものです。また、本冊子の別冊として、全少額短期保険業者の商品
を掲載した「各社商品一覧」も作成していますので、あわせてご利用・ご確認ください。
★19★
第2編 少額短期保険業 第1章 少額短期保険業の役割
2
第2章
少額短期保険業の特色
少額短期保険業は、共済から保険への移行・転換の過程において、商品、事業形態、保険契約者の保護
など多くの点で制約を受けています。この制約と本来的に持っている自在性に富んだ性格が少額短期保
険業の特色を形成しています。
1.保険金額に関する制限(上限)
(保険業法施行令第1条の6、同第38条の9、保険業法施行規則第211条の31)
少額短期保険業においては、次のとおり、保険の区分に応じて1被保険者についての保険金額の上
限が設けられています(注)。なお、①~⑥の保険の保険金額の合計額は1,000万円が上限となります。
①死亡保険(下記⑤を除きます) ················ 300万円
②傷害疾病保険(下記③④を除きます) ············ 80万円
③重度障害保険(下記④を除きます) ············ 300万円
④特定重度障害保険(傷害による重度障害保険) ·· 600万円
⑤傷害死亡保険 ································ 300万円
(調整規定付傷害死亡保険の場合は、600万円)
⑥損害保険(下記⑦を除きます) ·············· 1,000万円
⑦低発生率保険 ······························ 1,000万円
●上記③、④については、同一被保険者について引受ける保険にほかの上記①、③、④、⑤の保
険が含まれる場合には、③、④で重度障害による給付が行われたときは、死亡による給付およ
び重度障害による給付は、保険金額からすでに支払った重度障害の給付を差し引いて支払うこ
ととされている保険に限ります。
●上記⑤の調整規定付傷害死亡保険とは、傷害死亡保険のほかに上記①の保険を契約している場
合に、傷害死亡保険に係る保険金の支払い等により、①の保険の保険金額から当該保険金の支
払い等に係る金額に相当する部分が減額されることとされているものをいいます。
●上記⑦の低発生率保険とは、損害保険のうち、特に保険事故の発生率が低いと見込まれるもの
であり、個人の日常生活に伴う損害賠償責任を対象とする保険(自動車の運行に係るものを除
きます)をいいます。
●少額短期保険業者は、1保険契約者について引受ける上記の保険の区分に応じた保険金額の合
計額(「総保険金額」といいます)について、それぞれの区分に定める金額の100倍の金額(「上
限総保険金額」といいます)を超える保険の引受けを行ってはなりません。なお、上記⑤につ
いては、調整規定付傷害死亡保険以外の保険の上限総保険金額は3億円、調整規定付傷害死亡
保険の上限総保険金額は6億円から調整規定付傷害死亡保険以外の保険の総保険金額を控除
した金額となります。
●会社等の代表者を保険契約者とし、その構成員等を被保険者とする保険契約のうち、保険期間
の中途で被保険者を増加させることができることとされているものについては、総保険金額は
上限総保険金額の10%に限り、これを超過することができます。
(注)経過措置により、施行日(2006(平成18)年4月1日)から7年を経過する日(2013(平成25)年3月31
日。
「基準日」といいます)の間は、既存事業者が引受けを行うことができる保険金額の上限は、上記①~
⑥に掲げる区分に応じ、それぞれ定める金額の5倍(上記②については3倍)とします。
また、さらに、基準日の翌日から起算して5年を経過する日(2018(平成30)年3月31日)までの間は、
基準日において既契約の被保険者であった者はそれぞれ定める金額の5倍(上記②については3倍)とし、
新規契約の被保険者はそれぞれ定める金額の3倍(上記②については2倍)とする経過措置が講じられて
います。
★20★
少額短期保険業においては、次のとおり、保険期間に上限が設けられています。
①生命保険、傷害疾病保険(第三分野の保険) ······· 1年
②損害保険 ······································· 2年
3.少額短期保険業で引受けることができない保険(保険業法施行令第1条の7)
少額短期保険業においては、保険金額、保険期間に関する制限とともに、次の保険は引受けること
ができません。
①人の生存に関し、一定額の保険金を支払うことを約する保険(個人年金保険、貯蓄保険など)
②保険期間の満了後満期返れい金を支払うことを約する保険(積立型の保険など)
③保険料を主として株式や債券などの有価証券に投資し、その運用実績に応じて保険金額が変動す
る保険―運用実績連動型保険契約(変額保険など)
④再保険
(注)再保険とは、保険業者間の保険契約であり、ある保険業者が営業活動によって引受けたその保険責任の全
部または一部を他の保険業者に引受けてもらうことによって、保険責任の平準化を図るしくみです。この
再保険には保険契約を申し込む保険業者と保険契約を引受ける保険業者とがあり、前者を出再保険(会社)、
後者を受再保険(会社)といい、ここでいう再保険は受再保険をいいます。
⑤保険料または保険金、返れい金その他の給付金の額が外国通貨をもって表⺬されている保険
(外貨建て保険など)
⑥保険金の全部または一部を定期的に、または分割払いの方法により支払う保険であって、その支
払いの期間が1年を超えるもの
4.生損保兼営
少額短期保険業では、保険金額の制限、保険期間の制限、取扱商品の制限を充足している少額短期
保険商品であれば、生命保険、損害保険、傷害疾病保険(第三分野の保険)のいずれも取扱うこと
ができます。
少額短期保険業の「自在性」を発揮できる土壌があるといえます。
5.事業規模
少額短期保険業者は、「小規模事業者(その収受する保険料が政令で定める基準を超えないもの)
でなければならない」(保険業法第272条第2項)と規定されています。
保険業法施行令第38条は上記第272条第2項の「政令で定める基準」として、
「前事業年度の年間収
受保険料が50億円」と規定しています。
年間収受保険料とは、1事業年度において収受した保険料または収受すべきことの確定した保険料、
再保険返れい金等の合計額から、当該事業年度において支払った再保険料および解約返れい金また
は支払うべきことの確定した再保険料および解約返れい金の合計額を控除した額のことです。
(注)ここでいう再保険とは、出再保険をいいます。(上記3.④の(注)参照)
★21★
第2編 少額短期保険業 第2章 少額短期保険業の特色
2.保険期間に関する制限(上限)
(保険業法施行令第1条の5)
6.保険契約者保護のしくみ
生命保険業免許、損害保険業免許の対象となる保険商品については、保険契約者保護のしくみとし
て、それぞれ「保険契約者保護機構」が設けられていますが、少額短期保険業はこの制度の対象外
となっています。
少額短期保険募集人は、保険募集にあたっては書面の交付により、「保険契約者保護機構の対象外
であること」を契約者に説明しなければなりません。
少額短期保険業については、法令等により次のような各種の規制措置等が講じられており、少額短
期保険業者の経営の安定を図ることにより保険契約者等の保護を図っています。
(1) 供託金 ―――― 最初の事業年度→「事業開始時1,000万円」
各事業年度(最初の事業年度を除く)→「1,000万円+〔当該各事業年度の
前事業年度年間収受保険料×5%〕」(保険業法第272条の5第1項、同施行
令第38条の4、同規則第211条の9)
(2) 最低資本金 ―― 1,000万円(保険業法第272条の4第1項第2号、同施行令第38条の3)
(3) 規制・監督 ―― 責任準備金等の積立の適切性、再保険に関するリスク管理、ソルベンシー・
マージン比率(注)の適切性、コンプライアンス(法令等遵守)態勢などの事
項が規定されています。
(注)ソルベンシ-・マージン比率とは、巨大災害や保有資産の大幅な下落など「通常の予測を超える危険」に対す
る「保険会社が保有している資産・準備金などの支払能力」の割合を⺬す指標をいい、次の算式により算出さ
れます。
ソルベンシ-・マージン比率(%)=
資本金および通常の予測を超える危険のために積立てている準備金等の額
×100
通常の予測を超える危険に対応する額 ×1/2
7.少額短期保険業者と保険会社の違い
「少額短期保険業者」と「保険会社」の相違点は次のとおりです。
項
目
免許制、登録制
取扱商品の制約
事業規模の制約
少額短期保険業者
保険会社
登録制(保険業法第272条)
免許制(保険業法第3条)
(申請先は「財務局」)
(申請先は「金融庁」)
あり(保険金額、保険期間)
特になし
(制約内での「生損保兼営」可)
(生損保兼営不可)
小規模事業者であること
特になし
(収受保険料規模50億円を超えない)
保険契約者保護
保険契約者保護機構の対象外
(供託金制度)
供託金が必要(事業開始時1,000万円)
資本金・基金
1,000万円以上
10億円以上
監督指針
少額短期保険業者向けの監督指針
保険会社向けの総合的な監督指針
保険契約者保護機構の対象
●少額短期保険業者は、業者の規模、特性に合わせて「保険会社向けの総合的な監督指針」の項目
を参照しつつ対応することが求められます。
●少額短期保険業者の商品には、税法上の地震保険料控除・生命保険料控除は適用されません。
★22★
考
■保険業法2005(平成17)年改正と既存の共済事業との関係
保険業法の2005(平成17)年改正により、既存の共済事業は、原則として保険業法の規定
が適用されることになり2年間の移行期間が設けられました。
また、公益の増進を目指した2008(平成20)年12月1日の公益法人制度改革法の施行によ
り、公益法人については、移行期間が2013(平成25)年11月30日まで延⻑されました。
その後、既存の共済事業の中には、保険業法の規制に直ちに適合することが容易でないも
のが存在することが判明したため、2010(平成22)年11月19日(公布)に保険業法の一部
が改正され(公布日から6か月以内に施行)、既存の共済事業のうち、一定の要件(注)に該
当するもの(公益法人以外も含まれます)については、2013(平成25)年11月30日までに
行政庁の認可を受ければ、当分の間、認可特定保険業者として存続することが認められま
した。
(注)一定の要件とは、①一般社団法人または一般財団法人であること、②一定の財産的基礎、人的構成
を有すること、③業務・経理の適切性などです。
2006(平成18)年4月1日時点から現在まで共済事業を行っている既存の共済事業につい
ては、2013(平成25)年11月30日までに、下記のように、保険業法に則した対応が必要と
なります。
(1) 共済事業契約による保障内容を継続する場合には、以下の対応が考えられます。
①新法人(一般社団法人など)を少額短期保険業者に登録し、共済事業契約を継続する。
(注)一般社団法人・一般財団法人・公益社団法人、公益財団法人いずれも、当該法人形態のまま
で、少額短期保険業者の登録が可能です。
②既存の保険会社や新しく設立する保険会社に、共済事業を譲渡して継続する。
③既存の制度共済(生協・事業協同組合など)や、新しく設立する制度共済に、共済事
業を譲渡して継続する。
④給付金額を、慶弔見舞金として社会通念上妥当な金額の範囲内に変更して継続する。
⑤保険会社との間で、当該共済事業に類似した内容の団体保険を締結して、実質的に継
続する。
⑥行政庁の認可を受けて認可特定保険業者となる。
(2) 共済事業契約を新規に契約せずに保険金の支払い等のみを継続して行う場合で、2013
(平成25)年11月30日までに共済事業契約のすべての契約が終了する場合には、特段の
対応は必要ありません。
ただし、新法人への移行登記後においても共済事業契約が残存する場合には、新法人へ
の移行登記後1年以内に、他の保険会社に共済事業契約を包括移転して継続するなどの
対応が必要になります。
★23★
第2編 少額短期保険業 第2章 少額短期保険業の特色
参
理 解 度 チ ェ ッ ク テ ス ト
テキストの理解度をチェックしてみましょう。
正解の場合はチェック欄をチェック。間違った場合は再度チャレンジしましょう。
理解度テスト1
次の文章は「少額短期保険業」について述べたものです。正しいものには○印を、誤っているものには
×印を解答欄に記入してください。
1.少額短期保険募集人とは、少額短期保険業者の役員もしくは使用人または少額短期保険業者の委託
を受けた者もしくはその者の再委託を受けた者もしくはこれらの者の役員もしくは使用人で、その
少額短期保険業者のために保険契約の締結の代理または媒介を行うものをいいます。
2.少額短期保険業においては、保険金額、保険期間など商品に対する制約が課されていますが、この
制約の範囲内であれば、生損保兼営が認められています。
3.少額短期保険業では、人の生存に関し、一定額の保険金を支払うことを約する保険(個人年金保険、
貯蓄保険など)を引受けることができます。
4.少額短期保険募集人は、保険募集にあたっては書面の交付により、「保険契約者保護機構の対象外
であること」を保険契約者に説明しなければなりません。
解答欄
1
2
3
4
チェック欄
(答:1→○
2→○
3→×
4→○)
理解度テスト2
次の文章は少額短期保険業で引受できる「保険金額・保険期間に関する制限」について述べたものです。
正しいものには○印を、誤っているものには×印を解答欄に記入してください。
なお、経過措置の規定は考慮しないものとします。
1.死亡保険(傷害死亡保険を除きます)の保険金額は、300万円が上限となっています。
2.傷害疾病保険(重度障害保険および特定重度障害保険を除きます)の保険金額は、80万円が上限と
なっています。
3.重度障害保険ならびに傷害による重度障害保険の保険金額の上限は、いずれも300万円となってい
ます。
4.生命保険、損害保険、傷害疾病保険(第三分野の保険)で引受けられる保険期間の上限は、いずれ
も2年となっています。
解答欄
1
2
3
4
チェック欄
(答:1→○
★24★
2→○
3→×
4→×)
第3編
コンプライアンス
学習のポイント
第3編では、少額短期保険募集人のコンプライアンス(法令等の遵守)を中心として、
①少額短期保険募集人はどのようなスタンス・役割を持って販売活動を行う必要があ
るのか?
②少額短期保険募集人が保険を販売するうえで守らなければならない法律・ルールに
はどのようなものがあり、どのような点に注意し活動すればいいのか?
③少額短期保険募集人はどのように日常業務を行わなければならないのか?
などについて学習し、理解します。
【学習する項目】
1.正しい販売活動
2.少額短期保険募集人が守らなければならない法律
3.少額短期保険募集人の日常業務
★25★
第1章
正しい販売活動
少額短期保険の販売は、お客様と少額短期保険募集人の信頼関係の上に成立します。お客様から信頼さ
れる少額短期保険募集人となるには、常に正しい販売活動を行い、保険を通じてお客様の暮らしの良き
アドバイザーとなる必要があります。そのためには、コンプライアンス(法令等の遵守)を前提とした
販売活動を行わなければなりません。
ステップ
1
少額短期保険募集人の役割
以下に述べる少額短期保険募集人の役割・業務は一般的なものであり、少額短期保険募集人個々の役
割・業務については、委託契約書等で確認する必要があります。
1.少額短期保険募集人の役割
少額短期保険募集人は、「少額短期保険業者のために保険契約の締結の代理または媒介を行うこと
により、さまざまな保険商品をお客様に販売すること」が基本的な役割です。
少額短期保険募集人の最も重要な仕事は、お客様と少額短期保険業者のパイプ役となり、お客様を
さまざまな危険から守るために最適な保険の提案を行い、契約を締結するまたは契約の締結に尽力
することです。また、万一災害や事故、疾病等が発生した場合は、迅速かつ円満な解決を援助する
など広範なコンサルティング活動が求められています。
このように、少額短期保険募集人は、保険の販売において重要な役割を担っています。
2.委託契約書と少額短期保険募集人の業務
(1)委託契約書
少額短期保険業者の委託を受けた少額短期保険募集人が行う業務は、相互の権利・義務などと
ともに、少額短期保険業者との間で締結された「委託契約書」に記載されています。少額短期
保険募集人は、この委託契約書に基づいて業務を行います。
★26★
(2)少額短期保険募集人の業務
行います。また、少額短期保険募集人は保険に関する専門家としてお客様への保険商品に関す
る設計や説明のほか、保険に関するさまざまな情報やサービスを提供できなければなりません。
募集人の
主な業務
・保険契約の勧誘
・保険契約の内容に関する説明
・保険契約の締結(代理の場合)
・保険契約の申込の受付(媒介の場合)
・保険料の受領と保険料領収証の発行・交付(代理の場合)
・第1回保険料充当金の受領と第1回保険料充当金の保険料領収証の発
行・交付(媒介の場合)
・保険契約の変更・解約等の申出の受付
・保険契約の維持・管理
・保険契約の報告業務
・保険契約者等からの事故報告の受付、少額短期保険業者への報告
★27★
など
第3編 コンプライアンス 第1章 正しい販売活動
少額短期保険募集人は、委託契約書に基づいて、その取扱う保険について一般的に次の業務を
ステップ
2
コンプライアンスの重要性
1.保険商品の販売はお客様からの信頼が基本
保険事業は社会性・公共性の高い事業であるため、少額短期保険募集人は、常にお客様(保険契約
者等)保護の観点に留意した販売活動を行わなければなりません。
保険商品は、目に見えない無形の商品であり、事故や災害、疾病等が起こって初めてその効果が分
かるものです。また、保険は「保険事故または給付事由が発生した場合に保険契約に基づいて保険
金を支払う」ことを保険契約者と約束するもので、保険販売は保険契約者との信頼関係の上に成り
立っているといえます。
少額短期保険募集人が保険商品の販売にあたり、お客様の「信頼」を獲得するためには、法令や少
額短期保険業者のルールに則った正しい販売活動を行う必要があります。
2.コンプライアンス
(1)コンプライアンスとは
コンプライアンス(Compliance)とは、一般的に「法令等の遵守」という意味で使われていま
す。法令(法律や政省令など)をはじめ、少額短期保険業者の諸規定、社会規範にいたるまで
あらゆるルールを遵守することが第一に求められます。
少額短期保険募集人として活動するために守らなければならない基本的な法律として「保
険業法」があります。このほか、民法、保険法、消費者契約法、金融商品販売法、犯罪収
益移転防止法、個人情報保護法なども少額短期保険募集人活動に関係の深い法律となりま
す。
また、少額短期保険業者と少額短期保険募集人の権利・義務などを定めた「委託契約書」
のほか諸規定など、少額短期保険業者が定めたルールも守らなければなりません。
法令違反を起こさないようにするためには、少額短期保険募集人が自らの責任で違法行為がな
いか定期的にチェックするなど、コンプライアンス体制を構築することが重要になります。
なお、法令違反を起こさないように予防的に対応することは当然のことながら、万一、不祥事
件など法令違反を起こしてしまった場合に適切な対応をとることも大切です。
(2)コンプライアンスにおける基本的な姿勢
コンプライアンスにおいては、「しなければならないと決められていないが行ったほうがよい
と思われることを積極的に行い、禁止されていないが行わないほうがよいと思われることは厳
に慎む」という基本的な姿勢を身に付けなければなりません。
そのためには、基本的なルールを十分に理解するとともに、行動規範など高い倫理観のもとに
業務を行うこともあわせて重要となります。
★28★
ステップ
3
顧客満足とコンサルティングセールス
「顧客満足」
(Customer Satisfaction=CS)とは、お客様のニーズを充足することにより得られ
る、お客様の満足のことをいいます。保険販売にあたっては、多様化するお客様のニーズを把握し、
それらに的確に応えていくことにより顧客満足が得られます。
そのために少額短期保険募集人は、保険商品の販売やその後の顧客管理を通して、お客様の良きア
ドバイザーになれるよう心がけていく必要があります。
2.保険販売に必要なコンサルティングセールス
(1)保険設計の重要性
保険商品は目に見えない無形の商品であることから、少額短期保険募集人の役割は非常に重要
なものとなります。少額短期保険募集人は、家庭生活や企業活動をとりまくいろいろな危険を
的確に把握したうえで、多様化するお客様のニーズに応えるために、キメ細かい情報を提供し、
適切な保険商品の選択が行えるよう助言しなければなりません。
お客様としては十分な保険を付けているつもりであっても、少額短期保険募集人からの情報に
よって新たなリスクに気が付くことも多いと考えられます。少額短期保険募集人は、保険契約
者のライフサイクル(人生の生活周期:出生・成⻑・結婚・育児など)や生活環境の変化など
から考えられるリスクを想定し、これに備えられるよう保険設計を行い、かつ、積極的に提案
することが求められます。
(2)顧客管理の重要性
少額短期保険募集人が、お客様に対して、保険期間中の契約管理、実際に保険事故または給付
事由が発生したときの保険金請求手続きに関するアドバイス、保険期間満了時における更新の
提案など、さまざまなサービス機能を発揮していくことも、保険商品の販売と同様に重要とな
ります。
そのために、少額短期保険募集人は、保険商品に関する知識だけではなく、それを支えるもの
として、法律や税金に関する知識、その他の金融商品に関する知識、社会保険に関する知識な
ども身に付けるよう日頃から心がける必要があります。
★29★
第3編 コンプライアンス 第1章 正しい販売活動
1.顧客満足を高めるために
第2章
少額短期保険募集人が守らなければならない法律
少額短期保険募集人には、保険の販売活動を行ううえで守らなければならないさまざまな法律がありま
す。その最も基本となる法律が「保険業法」です。また、消費者と事業者間での契約に関する規定を定
めた「消費者契約法」や「金融商品販売法」、
「犯罪収益移転防止法」、
「個人情報保護法」などの法律も、
少額短期保険募集人の募集活動に関係するのでしっかりと身に付けておく必要があります。
ステップ
1
保険業法の概要
保険業法は、少額短期保険募集人をはじめ、保険業に携わる者が守らなくてはならない基本的な法律で
あり、少額短期保険募集人は「保険募集」に関する規定を中心に、その内容を十分に理解したうえで、
厳格に守り日常業務に適正に反映していかなくてはなりません。
1.保険業法の目的
保険業法は、「保険業の公共性にかんがみ、保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営および保
険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図り、もって国民生活の安定および国
民経済の健全な発展に資すること」を目的としています。
2.保険業法の概要
保険業法は、保険監督法の基本となる法律であり、保険業を行う保険会社や少額短期保険業者等に
関する監督と保険募集に関する監督などについて規定しています。
募集活動に直結する「保険募集に関する監督」では、募集従事者に対する登録や保険募集の際の禁
止行為、金融庁が保険業者等に対して行う検査・命令、クーリング・オフ制度などに関する事項が
定められています。
保険業法の
主な規定
・保険募集を行うことができる者(保険業法第275条)
・少額短期保険募集人等の登録事項(同法第276条、第277条)
・登録事項に変更があった場合(同法第280条)
・少額短期保険募集人等の権限等に関するお客様への説明(同法第294条)
・募集禁止行為(同法第300条)
・少額短期保険募集人等の役員・使用人に募集を行わせる場合と届出事項(同
法第302条)
・少額短期保険募集人等が違反行為等をした場合の措置(同法第306条、第307
条)
・保険契約者等が保険契約の申込みを撤回できる場合(同法第309条)
・保険業法違反に対する罰則(同法第307条、第317条の2、第320条、第337条)
★30★
ステップ
2
保険募集を行うためのルール(少額短期保険募集人の規制)
少額短期保険募集人とは、少額短期保険業者のために保険契約の締結の代理または媒介を行う者
で、次の者をいいます(保険業法第2条第22項)。
①少額短期保険業者の役員・使用人
②少額短期保険業者の委託を受けた者もしくはその者の再委託を受けた者
③少額短期保険業者の委託を受けた者の役員・使用人もしくは少額短期保険業者の委託を受
けた者の再委託を受けた者の役員・使用人
2.少額短期保険募集人の登録・届出
少額短期保険募集人として保険募集を行うには行政庁へ登録等を行う必要があります。少額短期
保険募集人としての登録・届出の要否は、下表のように少額短期保険募集人の区分等によって異
なります(保険業法第275条第1項第3号、同第276条、同第302条、同施行規則第212条の3)。
■少額短期保険募集人の登録・届出の要否
少額短期保険募集人
生命保険の募集を
行う場合
①少額短期保険業者の役員・使用人
②少額短期保険業者の委託を受けた者
もしくはその者の再委託を受けた者
生命保険の募集を行わない場合
(損害保険や傷害疾病保険のみ
の募集を行う場合)
登録
登録・届出のいずれも不要
登録
登録
登録
届出
③少額短期保険業者の委託を受けた者
の役員・使用人もしくは少額短期保
険業者の委託を受けた者の再委託を
受けた者の役員・使用人
なお、少額短期保険募集人のうち、生命保険の募集を行わない者(損害保険や傷害疾病保険のみ
の募集を行う者)で、少額短期保険業者の委託を受けた者でないもの(上記少額短期保険募集人
のうち登録の不要なもの〔上表の白抜き文字部分〕)を「特定少額短期保険募集人」といいます
(保険業法第275条第1項第3号)。
必要な登録・届出を行わないで、保険募集を行った場合は、無登録募集または無届募集として法
令上の罰則等を受けることになります。
■法令上の罰則等
無登録募集
1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科(保険業法
第317条の2第4号)
無届募集
50万円以下の過料(保険業法第337条)
★31★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
1.少額短期保険募集人
(1)少額短期保険募集人の登録
①登録
少額短期保険募集人(特定少額短期保険募集人を除きます)として保険の募集を行う場合は、
内閣総理大臣(実務上は権限の委任による財務(支)局⻑)の登録を受けなければなりませ
ん。したがって、登録を受けずに保険募集を行うことはできません(保険業法第276条)。
登録にあたっては、少額短期保険募集人の
a.商号もしくは名称または氏名および生年月日
b.事務所の名称および所在地
c.所属少額短期保険業者の商号、名称または氏名
d.他に業務を行っているときは、その業務の種類
などの登録事項の申請が必要となります(保険業法第277条)。
②登録の拒否
登録の申請を行っても、登録申請者が次の登録拒否要件に該当するときには、登録を受ける
ことができません(保険業法第279条)。
a.破産者で復権を得ないもの
b.禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行後3年を経過しない者
c.保険業法により罰金の刑を受け、その刑の執行後3年を経過しない者
d.登録を取り消された日から3年を経過しない者
e.成年被後見人もしくは被保佐人
f.登録申請前3年以内に保険募集に関し著しく不適当な行為をした者
g.保険仲立人またはその役員もしくは保険募集を行う使用人
など
③変更等の届出
登録を受けた少額短期保険募集人は、次の事項に該当することとなった場合には、遅滞なく
内閣総理大臣(実務上は、権限の委任による財務(支)局⻑)に届け出なければなりません
(保険業法第280条)。
a.登録時の申請事項(商号・名称、事務所の所在地など)に変更が生じたとき
b.保険募集の業務を廃止したとき
c.個人である少額短期保険募集人が死亡したとき、または法人である少額短期保険募集人
が破産手続開始の決定をしたとき
など
★32★
(2)特定少額短期保険募集人の届出
①届出
用人で、損害保険や傷害疾病保険のみの募集を行う者に保険募集を行わせるときは、その者
の氏名・生年月日を内閣総理大臣(実務上は権限の委任による財務(支)局⻑)に届け出な
ければなりません(保険業法第302条)。なお、特定少額短期保険募集人のうち、少額短期保
険業者の役員・使用人で、損害保険や傷害疾病保険のみの募集を行う者は、登録・届出のい
ずれも不要です。(P.31の表を参照)
(注1)上記の保険募集に従事する役員・使用人は、他の少額短期保険業者の委託を受けた者または少額短
期保険業者において保険募集に従事する役員・使用人にはなれません。
(注2)特定少額短期保険募集人を追加する場合は、内閣総理大臣(実務上は財務(支)局⻑)への届出日
以降でなければ、これらの者に保険募集を行わせることはできません。
②役員・使用人の届出の要件
特定少額短期保険募集人として届け出るためには、次の3つの要件をすべてを満たしていな
ければなりません(少額短期保険業者向けの監督指針)。
役員・使用人
の届出の要件
a.少額短期保険業者の委託を受けた者の事務所に勤務していること
b.保険募集に関し所定の教育を受けていること
c.少額短期保険業者の委託を受けた者の管理のもとで保険募集を行う
こと
③変更等の届出
特定少額短期保険募集人が次の事項に該当することとなった場合には、遅滞なく内閣総理大
臣(実務上は、権限の委任による財務(支)局⻑)に届け出なければなりません(保険業法
第302条)。
a.氏名などの届出事項に変更が生じたとき
b.特定少額短期保険募集人が保険募集を行わなくなったとき
c.特定少額短期保険募集人が死亡したとき
★33★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
特定少額短期保険募集人のうち、少額短期保険業者の委託を受けた者(代理店)の役員・使
ステップ
3
保険募集
1.保険募集とは
保険募集とは、保険契約(新規・継続契約を問いません)の締結の代理または媒介を行うことをい
います(保険業法第2条第26項)。
保険募集は、保険契約の締結権限を有する「代理」と、保険契約の締結権限がなく単なる契約締結
の仲介を行う「媒介」に区分されます。
損害保険募集人には、通常、契約の締結権限(代理権)が与えられており、保険募集人が契約を締
結すれば、その日から契約の効力が生じます。例えば、自動車保険契約では、代理店が保険契約申
込書を受け取り、保険料を受領すると、契約直後に事故が発生しても、保険金が支払われます。
これに対し、生命保険募集人には、通常、契約の締結権限が与えられておらず、保険募集人の役割
は媒介になります。したがって、保険業者が契約の引受けを「承諾」して、はじめて契約の効力が
生じます。これは、保険業者が「告知書」や「健康診断の結果」を精査し、引受けの可否や引受条
件を決定する必要があるためです。
【代理と媒介の違い(一般的な例)
】
保険契約の締結の代理
保険契約の締結の媒介
保険業者を代理する権限に基づい
保険業者と保険契約者との間に立
て、保険契約の締結を行います。
って、保険契約の成立に尽力します
(保険契約者の意思を保険業者に
取り次ぐこと)。
保険契約の締結権
ある
ない
告知の受領権
ある
ない
保険料の受領権
ない
ある
(ただし、第1回保険料充当金を受
領する権限がある)
具体的には以下の業務が「保険募集」に該当するとされています。
保険募集に該
当する主な業
務
・保険契約の勧誘
・保険商品、保険料に関する説明
・保険契約申込書の作成に関する説明、当該申込書の受理・記載内容の確認
・保険料の領収
・保険料領収証の発行
・告知または通知の受付
・異動承認請求書の作成に関する説明、当該請求書の受理・記載内容の確認
上記の募集業務は、契約者と対面販売する場合にのみ適用されるわけではなく、
電話やインターネットの画面を通じた説明にも適用されます。
★34★
なお、以下の業務については保険募集に該当しないと解釈されています。
・少額短期保険募集人の指⺬を受けて行う商品案内チラシやパンフレットの単
なる配布
・満期案内ハガキ、更改申込書等の郵送作業
・電話の単なる取次ぎ
・経理等の内務事務
・申込書控、保険証券写等の管理業務
など
2.お客様に対する少額短期保険募集人の権限等の説明
保険業法では、少額短期保険募集人は保険募集にあたり、お客様に対して、次の事項を明らかにし
なければならないことを定めています(保険業法第294条、施行規則第227条の2)。
①所属少額短期保険業者の商号、名称または氏名
②自己が所属少額短期保険業者の代理人として保険契約を締結するか、または保険契約の締結
を媒介するかの別
③自らの商号、名称または氏名
また、上記権限等の説明とともに、自らが取り扱いできる少額短期保険業者の範囲(少額短期保険業
者の数等)の情報や告知受領権の有無についても、お客様に説明しなければなりません(P.60参照)
。
【具体的な説明方法】
お客様に明らかにする事項
具体例
所属少額短期保険業者の商号、 ・当該保険募集の引受少額短期保険業者名が記載された保険契
名称または氏名
約申込書やパンフレットを渡す。
自己が所属少額短期保険業者
・「少額短期保険募集人が保険契約の締結の代理権を有してい
の代理人として保険契約を締
ること」または「保険契約の締結を媒介すること」が記載さ
結すること、または保険契約の
れた保険契約申込書やパンフレットを渡し、説明する。
締結を媒介すること
・告知の受領権の有無も説明する。
自らの商号、名称または氏名
・少額短期保険募集人名等が記載されたパンフレット等を渡
す。また、名刺等を活用し、商号、名称または氏名を名乗る。
なお、郵送による契約手続きを行う場合には、パンフレットの「お問い合わせ先」欄に、少額短期
保険募集人の商号、氏名等を明記し、郵送するなどの方法により、上記の各事項をお客様に明らか
にする必要があります。
■法令上の罰則等
お客様に対する説明を行わなかった場合・・・・・・・・・登録の取消しまたは6か月以内の業務の
停止(保険業法第307条第1項第3号)
★35★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
保険募集に該
当しない業務
ステップ
4
重要事項の説明
保険は目に見えない無形の商品であるため、お客様には商品内容を正しく理解していただくための説明
が重要となります。特に、少額短期保険の販売に際しては、説明義務のある重要事項がいくつかあり、
この重要事項について必ずお客様に説明し十分理解を得る必要があります。
1.重要事項の説明義務
少額短期保険募集人には、保険募集に際して、保険契約者および被保険者(保険契約の締結時にお
いて被保険者が特定できない場合を除きます。)に対して、保険契約の契約条項のうち重要な事項
を説明することが義務付けられています(保険業法第300条第1項第1号)。
なお、重要な事項を告げない行為は法令違反となり、罰則の対象となります。
■法令上の罰則等
・1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科(保険業法第317条の2)
・登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
(注)少額短期保険業者に対しては、重要事項の説明を確保するための措置を講じることが求められており(保
険業法第272条の13第2項、施行規則第211条の30第7項)、これに違反した場合には業務の停止または登録
の取消しに処せられることがあります(保険業法第272条の25、第272条の26)。
2.重要事項説明書の交付と説明
少額短期保険募集人は、事業活動に伴い事業者が被る損害をてん補する保険商品や団体保険または
団体契約について保険契約者である団体に対して販売する場合を除き、保険契約の販売・勧誘時に、
「契約概要」と「注意喚起情報」に分類した「重要事項説明書」を必ず交付し、重要な事項を説明
しなければなりません。
なお、事業活動に伴い事業者が被る損害をてん補する保険商品や団体保険または団体契約について
も重要事項説明書、約款等の他の方法により、重要な事項を適正に告げる必要があります(少額短
期保険業者向けの監督指針)。
保険募集にあたって重要事項を説明する場合は、保険契約者等に対して保険契約締結前に「重要事
項説明書(契約概要、注意喚起情報)」を交付し、これらの書面を読むことが重要であることを告
げたうえで、書面の内容を口頭で説明(契約概要と注意喚起情報に分類のうえ説明)します。
重要事項の説明には十分に時間をかけ、保険契約者等が書面の内容を理解したか確認したうえで契
約を締結する必要があります。
なお、電話・郵便・インターネット等、非対面方式による情報提供や説明を行う場合にも、上記と
同程度の情報提供・説明を行う必要があります。
契約概要および注意喚起情報に関する重要事項の主なものには、次のようなものがあります。
★36★
・この情報が「契約概要」であること
・商品の仕組み(保険種類等、商品の概要)
・保障(補償)内容(保険金を支払う場合・支払わない場合の主なもの)
・付加(付帯)できる主な特約とその概要
・保険期間
・引受条件(保険金額など)
・保険料に関する事項(保険料額、保険料の支払規定、払込方法、保険料
払込期間)
・配当金に関する事項(配当金の有無、配当方法、配当額の決定方法)
・解約返れい金等の有無およびそれらに関する事項
注意喚起情
報に関する
重要事項
(主なもの)
など
・この情報が「注意喚起情報」であること
・クーリング・オフ(保険契約の申込みの撤回等)
・告知義務および通知義務の内容
・責任開始期
・支払事由に該当しない場合および免責事由等の保険金等を支払わない場
合のうち主なもの
・保険料の払込猶予期間、契約の失効等
・保険契約者保護機構の行う資金援助等の措置がないことおよび法に規定
する補償対象契約に該当しないこと
・特に法令等で注意喚起することとされている事項
など
注意喚起情報に関して、「特に法令等で注意喚起することとされている事項」には次の事例が含ま
れますので、該当する書面により説明し、保険契約者に対して重要な事項を理解できたか十分に確
認し、事後に確認状況を検証できるようにしておくことが必要です。
①更新型保険において更新時に契約内容の変更がありうること
自動更新型の保険については、保険契約者に対し、更新後の保険契約について、保険料の計算
の方法、保険金額などを見直す場合があること、当該商品が不採算となり、更新契約の引受け
が困難となった場合には、その契約の更新を引受けないことを記載した書面を交付し、説明を
行い、書面を受領した旨の署名もしくは記名押印を得る必要があります。
②セーフティネット(保険契約者保護機構)の対象外であること
保険契約者に対し、「少額短期保険業者の経営が破綻した場合、保険契約者保護機構の行う資
金援助等の措置がないこと」、
「少額短期保険が保険契約者保護機構の補償対象契約に該当しな
いこと」を記載した書面を交付し、説明を行い、書面を受領した旨の署名もしくは記名押印を
得る必要があります。
★37★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
契約概要に
関する
重要事項
(主なもの)
③各種制限があること
保険契約者に対し、保険金額や保険期間の制限についての内容を記載した書面を交付し、説明
を行い、書面を受領した旨の署名もしくは記名押印を得る必要があります。
(P.20~21 第2編第2章の「1.保険金額に関する制限(上限)」および「2.保険期間に
関する制限(上限)」参照)
3.お客様のニーズの確認(意向確認)
保険契約にあたって提供する保険商品がお客様のニーズに合致しているかどうかを確認すること
は大変重要なことです。確認するための方法として「意向確認書面」を交付することがあります。
なお、「意向確認書面」の交付をしない保険商品の場合についても、契約の申込みを行おうとする
保険商品がお客様のニーズに合致しているものかどうかを、お客様が契約締結前に確認する機会を
確保する必要があります。
★38★
ステップ
5
保険募集の禁止行為
に対して禁止行為を定めています。これらの禁止行為が行われた場合には、保険業法の規定により行政
処分や司法処分を受けることになります。
1.保険契約の締結・保険募集に関する禁止行為(保険業法第300条)
保険業法第300条第1項では、「⋯保険募集人または保険仲立人もしくはその役員もしくは使用
人は、保険契約の締結または保険募集に関して、次に掲げる行為をしてはならない。」としてい
ます。少額短期保険募集人には、保険契約者等の保護や保険募集の公正を図る観点から、保険募
集に関し以下の禁止行為が定められています。
(1)虚偽のことを告げる行為・重要事項を告げない行為の禁止
保険契約者または被保険者に対して、事実と異なることを告げたり、重要事項の説明をせずに
保険契約を勧める行為は禁止されています。
保険契約の締結にあたっては、保険契約者等に重要事項が記載された説明書を交付するほか、
パンフレット等の書面を利用して、契約内容に関する重要事項を必ず説明し、お客様に納得い
ただいたことを確認する必要があります。(前記「ステップ4
重要事項の説明」参照)
具体例
・保険金を支払う場合のみを説明し、保険金を支払わない場合についていっさい説明しなかった。
・いつ解約しても払い込んだ保険料相当額を返還すると説明した。
・保険金が支払われない場合であるにもかかわらず、保険金は支払われると説明した。
■法令上の罰則等
・1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科(保険業法第317条の2)
・登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
(2)虚偽の告知を勧める行為・告知を妨害する行為・告げないことを勧める行為の禁止
保険契約者または被保険者が保険契約の締結に際して、事実と異なることを少額短期保険業者
に告げるように勧める行為や、少額短期保険募集人が保険契約者等の告知を妨害する行為は禁
止されています。
保険契約の締結にあたっては、正しい告知をしていただくために、保険契約者等に適切にアド
バイスし、保険契約申込書や告知書の告知事項について事実を漏らさず記載してもらい、記載
内容を確認していただいたうえで、保険契約者等の署名または記名押印を得る必要があります。
具体例
・火災保険の契約締結にあたり、建物の構造を偽るように勧めた。
・傷害保険の契約締結にあたり職業・職務を偽るように勧めた。
・被保険者の年齢を偽るように勧めた。
・生命保険を契約するにあたり、病歴を偽るように勧めた。
・他の保険契約があるにも関わらず、「無い」と記入するように勧めた。
・保険契約者等に確認せずに勝手に嘘の告知を記入した。
★39★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
保険業法では保険契約者等の保護や保険募集の公正を図るために、保険募集を行う少額短期保険募集人
■法令上の罰則等
・1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科(保険業法第317条の2)
・登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
(3)不当な乗換募集行為の禁止
保険契約者または被保険者に対して不利益となる事実を説明せずに、すでに成立している保険
契約を消滅させて、新たな保険契約の申込みをさせる行為、または新たな保険契約の申込みを
させてすでに成立している保険契約を消滅させる行為は禁止されています。
不利益となる事実については、重要事項説明書(契約概要、注意喚起情報)でその内容を十分
に説明して、保険契約者等に納得していただいたうえで、保険契約者等の署名または記名押印
を得る必要があります。
具体例
・保険料が高くなることを説明せずに、既存の保険契約を解約させ、新たな保険契約を締結さ
せた。
・被保険者の健康状態が保険契約締結時よりも悪化したため、その被保険者が新たに加入でき
ないおそれがあることを説明せずに、既存の保険契約を解約させた。
■法令上の罰則等
登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
(4)特別の利益の提供を約束する行為または特別の利益を提供する行為の禁止
保険契約者または被保険者に対して、規定外の保険料の割引や割戻しを行う行為および保険料
の端数サービスを行うなど社会通念上妥当とはいえない金品その他の利益を提供する行為は
禁止されています。また、保険契約者等本人ではなく、本人と同居する親族などに対する特別
の利益の提供も禁止されています。
物品やサービスの提供であっても、保険料の割引等と同程度の重要な利益であれば、特別の利
益の提供とみなされる場合がありますので、保険募集の際は注意を要します。
少額短期保険業者が、保険契約者または被保険者に対して、保険契約の締結によりポイントを
付与し、ポイントに応じてキャッシュバックを行うことは、保険料の割引・割戻しに該当し、
保険業法第272条の2第2項各号に掲げる書類(事業方法書、普通保険約款等)に基づき行う
場合を除き、禁止されています。
(注)自らを保険契約者または被保険者とする保険契約を自己契約といいます。こうした自己契約等に
より、実質的に契約の手数料相当額の保険料を割り引くことを主たる目的とするような行為も禁
止されています。
★40★
具体例
・保険契約者に対して、保険料の一部に充てるため現金を渡した。
・契約締結を目的に、高額の商品券を渡すなどの過度のサービスを提供した。
・保険契約締結時に、保険契約者ではなく、その親族に対し高額の商品券を渡した。
■法令上の罰則等
登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
(5)誤解を招く比較表⺬行為の禁止
保険契約者もしくは被保険者または不特定の者に対し、他の保険商品との比較で、有利な部分
だけを取り上げて説明したり、都合のよい部分のみの資料を提⺬するなどの誤解させるおそれ
のあるものを告げたり表⺬する行為は禁止されています。
他の保険業者の商品と比較等をする場合には、契約内容について、正確な判断を行うに必要な
事項を包括的に⺬さず一部のみを表⺬すること、⻑所のみをことさらに強調したり、⻑所を⺬
す際にそれと不離一体の関係にあるものを併せて⺬さないことにより、あたかも全体が優良で
あるかのように表⺬することや、社会通念上または取引通念上同等の保険種類として認識され
ない保険契約間の比較(終身保険や定期保険のように保険期間に相違がある保険商品の比較を
行う場合など)について、あたかも同等の保険種類との比較であるかのように表⺬することは
禁止されています。
具体例
・他社の異なる保険商品と保障(補償)内容を比較して、自社の保険商品が有利であると説明し
た。
・一般的に同種類の保険でないものを、あたかも同種類の保険のように比較して説明した。
・内容・条件の違う他の保険契約と保険料のみを比較して、意図的に自社の保険料の方が安く
有利であると説明した。
・他社の保険商品を誹謗・中傷する目的で、その商品の短所を不当に強調して説明した。
・自社のこの保険商品は業界№1の商品ですと、客観的事実に基づかないことを表⺬した。
■法令上の罰則等
登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
★41★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
・保険料の端数を値引きした。
(6)誤解を招く予想配当表⺬行為の禁止
保険契約者もしくは被保険者または不特定の者に対して、配当数値などを説明する際に、将来
間違いなく支払われるかのような説明や資料の作成・提⺬をする行為は禁止されています。
契約者配当金など、不確定な要素がある保険契約内容の説明にあたっては、契約者配当金の支
払いは不確定であり、将来支払われない場合もあることなど、配当金の特徴を明確に伝えるこ
とが必要です。
具体例
・契約者配当金が将来間違いなく支払われるかのような断定的説明をしたり、表⺬を行った。
・予想配当額が、単なる予想額であるにもかかわらず、その旨を説明しなかった。
・過去の配当実績を⺬し、将来も確実に支払われるような表⺬をしたり、説明をした。
■法令上の罰則等
登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
(7)威迫、業務上の地位等の不当利用の禁止
保険契約者または被保険者を威迫したり、業務上の優位な地位を利用するなど、保険契約者等
の契約意思を妨げるような状態において保険契約の締結や解約を行わせる行為は禁止されて
います。
お客様に対し、威圧的な態度や乱暴な言葉を使って困惑させたり、勧誘に対する拒絶の意思を
明らかにしたお客様に対し、その業務や生活の平穏を害するような時間帯に執拗に訪問したり
電話をかけるなど、社会的批判を招くような方法により保険募集をしたり、職務上の上下関係
等による影響力を使って、お客様の意思を拘束する目的で利益または不利益を与えるなどの行
為は行ってはなりません。
具体例
・取引の条件として、保険加入を強制した。
・加入を断ったお客様に対して、深夜に電話をかけたり、訪問して勧誘を行った。
・加入を拒否したお客様に対して、
「加入するまでは帰らない」と加入を迫った。
・職務上の上下関係を利用して、強制的に保険契約を締結した。
・取引のある会社の社⻑に依頼し、従業員に保険の加入を強制させた。
■法令上の罰則等
登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
★42★
(8)誤解を招く保険業者の信用、支払能力等の表⺬行為の禁止
保険契約者もしくは被保険者または不特定の者に対して、保険業者の信用や支払能力など、保
告げたり表⺬する行為は禁止されています。
具体例
・保険業者等の信用・支払能力について、客観的事実に基づかない数値や格付けを表⺬した資
料を使ったり、また、一部の数値や資料のみを使って、説明をした。
・他社の業務悪化に関する新聞や雑誌等を利用し、自社の保険への乗換えを交渉した。
・資本金、総資産などの数値だけを使用して、
「当社の信用力は業界1位」と表⺬したり、
「当
社は○○少額短期保険業者より保険金支払能力が優れている」と説明した。
■法令上の罰則等
登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
(9)保険の種類・保険業者の誤認を招く行為の禁止
共同保険契約や保険業者間の保険商品の提携販売など、1保険契約者が複数の保険業者との間
で保険契約を同時に締結(契約の更改および更新を含みます)する場合などにおいて、保険契
約者が保険の種類や引受保険業者について、誤解するおそれのあることを告げる行為は禁止さ
れています。
保険募集をする際には、保険種類や引受保険業者を明⺬する必要があります。したがって、共
同保険契約等を締結する際には、共同保険であること、引受保険業者、幹事保険業者はどこか、
それぞれの保険金額や引受割合など、保険業者と保険契約者との間の契約関係を明確にし、誤
解を招かないような説明が必要です。
具体例
・共同保険契約であることを説明せずに勧誘した。
・自社単独で引受けていると誤解させるような説明をした。
■法令上の罰則等
登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
★43★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
険契約者等の判断に影響を及ぼすような重要な事項について、誤解させるおそれのあることを
2.その他保険募集に関し著しく不適当な行為の禁止
保険業法の禁止行為(保険業法第300条)以外にも、少額短期保険業者向けの監督指針において、
次の行為は不適当な行為として禁止されています(少額短期保険業者向け監督指針)。
①金融機関への過度の預金協力による見込客の獲得、保険料ローンを不正に利用した募集、
特定の募集人等に対する過度の便宜供与など、過当競争の弊害を招きかねない行為
②作成契約(架空契約)、超過保険契約などの不適正な行為
③架空契約や保険金詐取を目的とする契約等の不正な保険契約の発生防止のため、保険契
約者が本人であることの確認をしない、あるいは法人の事業活動の有無の把握をしない
行為
④当初から中途解約を前提の契約等、保険本来の趣旨を逸脱する募集行為
など
具体例
・保険契約の更改に際し、保険契約者本人の意思を確認せずに、無断で更改申込書を作成した。
・保険契約者が本人であるかどうかを確認せずに、保険契約を締結した。
■法令上の罰則等
登録の取消しまたは6か月以内の業務の停止(保険業法第307条第1項第3号)
★44★
ステップ
保険業法違反に対する措置
6
分)を受けることになります。このほか、少額短期保険業者の社内規程等によっても処分されることが
あります。
①行政処分…一定期間の募集業務の停止が命じられたり、少額短期保険募集人登録の取消し処分を受け
ます。
②司法処分…1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(または両者の併科)に処せられます。
例えば、前述の「重要事項を告げない行為」や「告知義務違反を勧める行為」をした場合
などが該当します。
■違反行為に対する行政処分・司法処分のまとめ(保険募集関係)
主な違反行為
行政処分
・不正な手段により登録を受けた場合(保険業法第276条)
・登録拒否要件に該当することとなった場合(少額短期保険募集人
が破産したり、禁固刑以上の刑に処された場合等)(同第279条)
・禁止行為を行った場合(同第300条)
・募集に関し著しく不適当な行為を行った場合(同第307条)
・登録事項の変更等の無届(保険業法第280条)
・役員・使用人の無届(同第302条)
・役員・使用人の変更等の無届(同第302条)
主な違反行為
登録の取消し
または
6か月以内の業務の停止
(保険業法第307条)
50万円以下の過料
(保険業法第337条)
司法処分
・無登録で募集を行った場合(保険業法第275条)
・不正な手段により登録を受けた場合(同第276条)
・禁止行為を行った場合(虚偽告知・告知妨害等)(同第300条)
・内閣総理大臣の処分に違反した場合(保険業法第307条)
・検査の際に虚偽の報告をした場合(保険業法第305条)
1年以下の懲役もしくは
100万円以下の罰金、
またはこれを併科
(保険業法第317条の2)
30万円以下の罰金
(保険業法第320条)
(注)「罰金」は刑法上の刑罰です。一方、「過料」は法令違反に対して国などが科する金銭罰で、
刑罰ではありません。
★45★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
保険業法に定められた事項に違反した場合には、違反の内容によって下記の罰則等(行政処分、司法処
ステップ
7
クーリング・オフ(契約撤回請求権)制度
(1)クーリング・オフ制度とは
少額短期保険募集人が保険契約者等を訪問して保険募集を行う場合には、保険契約者等が受動的な
立場に置かれ、契約意思が不確定のままに保険契約の申込みや契約締結が行われることがあること
から、事後にトラブルを生じるおそれがあります。
そこで、保険業法では、保険契約者等の保護を図るとともに保険募集の公正を担保するため、契約
法上の特則として、保険契約の申込みをした者または保険契約者(以下、
「申込者等」といいます)
が一定の範囲内で保険契約の申込みの撤回または解除を行うことができる「クーリング・オフ制度
(契約撤回請求権制度)
」を規定しています(保険業法第309条、同施行令第45条、同施行規則第241
条)。
少額短期保険募集人は、この「クーリング・オフ制度」について十分に留意し、特にクーリング・
オフの対象となる保険契約を締結する場合には、クーリング・オフ説明書等により、申込者等に適
切に説明する必要があります。
(2)クーリング・オフ制度の内容
申込者等が保険契約の申込みの撤回等を行うためには、少額短期保険業者に対してハガキなど「書
面(郵送)」により通知する必要があります。
申込みの撤回等の期限は、「申込み撤回等に関する事項を記載した書面(クーリング・オフ制度の
説明書など)を交付された日」または「申込みをした日」のいずれか遅い日から起算して8日以内
となっています。
「申込み撤回等に関する事項を記載した書面を交付
された日」か「申込みをした日」のいずれか遅い日
(例)
10日
11日
12日
13日
14日
15日
16日
この日の消印まで
17日
契約申込みの撤回可能期間(8日以内)
18日
撤回できない
(3)クーリング・オフの対象となる契約と少額短期保険募集人の役割
クーリング・オフは、個人契約(営業または事業のために締結したものを除きます)で、保険期間
が1年を超える保険契約を対象としています。したがって、保険期間が1年以内の少額短期保険契
約は、原則としてクーリング・オフの対象となりません。
少額短期保険募集人がクーリング・オフの対象となる保険契約の申込み手続きを行う際は、申込者
等に「クーリング・オフ制度の説明書等」を交付し、クーリング・オフ制度の概要や申し出方法を
説明する必要があります。
★46★
クーリング・オフの対象とならない契約
・営業・事業のために申込んだ契約
・国・地方公共団体・一般社団法人などが申込んだ契約
・保険契約者が、少額短期保険業者や代理店にあらかじめ日を通知して、その営業所等を訪問
し、かつ、その訪問が保険契約の申込みをするためのものであることを明らかにしたうえで
申込んだ契約
・保険契約者が、自ら指定した場所(例えば、喫茶店やホテルのロビー等です。ただし、少
額短期保険業者や代理店の営業所等および契約者等の居宅は除きます。)で申込んだ契約
・郵便・ファクシミリ装置等の機器を利用する方法により申込んだ契約
・保険契約者が、少額短期保険業者や代理店の預貯金口座へ、直接、口座振込みにより保険
料の払込みを行った契約
・質権が設定されているなど債務の履行を担保するための保険契約
・既契約の更改または既契約の内容変更にかかわる契約
など
※上記に該当した場合でも、各社の実務においてクーリング・オフを適用している場合がありま
す。
(4)少額短期保険業者の委託を受けた者の対応
少額短期保険業者の委託を受けた者は、クーリング・オフの申し出を受け付けることはできません。
したがって、少額短期保険業者の委託を受けた者は、クーリング・オフの申し出があった場合には、
保険契約者等に対して、ハガキなど書面で少額短期保険業者に直接通知すべき旨を伝えなければな
りません。
(5)保険料等の返還義務
保険契約のクーリング・オフがあった場合、少額短期保険業者は、その保険契約に関連して金銭を
受領しているときは、申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければなりません。ただし、保
険契約の解除の場合には、その保険契約の始期日から解除日までの既経過保険料を請求することが
できます(保険業法第309条第5項、同施行規則第242条第1項)。
★47★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
・保険期間が1年以内の保険契約
ステップ
8
消費者契約に関する法律
消費者保護を目的とした「消費者契約法」と「金融商品の販売等に関する法律」は、いずれも少額短期
保険募集人にとって募集活動や業務運営上重要な法律ですので、これらの法律を十分理解したうえで、
適切な活動を行う必要があります。
1.消費者契約法
(1)消費者契約法とは
一般的に、消費者と事業者の間には情報量や交渉力の格差があり、事業者が十分な説明をしな
いまま消費者が契約してしまったり、消費者にとって不利な内容があっても十分に理解しない
まま契約してしまい、トラブルとなることが想定されます。こうしたトラブルの解決を目指し、
個人消費者と事業者の間で締結される契約を対象として、事業者の一定の行為により消費者が
誤認・困惑して契約の申込みをした場合、契約を取り消すことができることなどにより、消費
者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを
目的とした法律です。
消費者契約法では、大きく分けて以下の2点を定めています。
①事業者の一定の行為により消費者が誤認したり、困惑した場合に、契約の申込みまたは
その承諾の意思表⺬を取り消すことができること。
②事業者の損害賠償責任を免除する条項や消費者の利益を不当に害する条項の全部または
一部を無効とすること。
消費者契約とは、「消費者と事業者との間で締結される契約」をいい、保険契約も対象となり
ます。また、事業者とは、「法人その他の団体および事業としてまたは事業のために契約の当
事者となる場合における個人」をいいます。少額短期保険業者は当該事業者となりますが、そ
の保険業者を代理する者および媒介をすることの委託を受けた者(受託者等)も事業者とみな
されます。したがって、少額短期保険業者のために保険契約の締結の代理または媒介を行う少
額短期保険募集人も事業者となります。
【「取消し」と「無効」の法的効果の違い】
「取消し」とは、詐欺・強迫によって契約を締結した場合など、一定の事由に基づき、契
約当事者の一方が、契約締結後に相手方に取消しの意思表⺬を行い、いったん有効に成立
した契約の効力を契約締結時にさかのぼって消滅させることをいいます。
「無効」とは、契約締結に際し、公序良俗に反する事項を目的とする契約の締結など、法
律行為や意思表⺬がその有効要件を満たさないため、契約の効力が始めから生じないこと
をいいます。当事者の意思表⺬は必要ありません。
★48★
(2)消費者契約の申込み等の取消し
消費者契約法では、事業者が契約を勧誘する際に、次のような行為があった場合には、消費者
①消費者に対して重要事項について事実と異なることを告げたり、不確実な事項につき断定的
判断を提供したり、不利益となる事実を故意に告げないなど、消費者に契約内容を「誤認」
させた場合
【例】少額短期保険募集人が重要事項について事実と違うことを説明し、保険契約を締結
した。
少額短期保険募集人が消費者に対し、契約者配当金が将来確実に支払われるような
断定的な説明を行い保険の勧誘を行った。
少額短期保険募集人が消費者に利益になることばかり説明し、不利益となることを
説明せずに、保険の勧誘を行った。
②事業者が消費者の住居等から退去しなかったり、事務所から消費者を退去させないなど、消
費者が「困惑」する行為をして契約を締結した場合
【例】消費者からの「帰って欲しい」という訴えに少額短期保険募集人が応じないため、
困惑しやむを得ず保険契約を締結した。
消費者が「帰る」といっても、少額短期保険募集人の事務所から消費者を帰さなか
ったため、困惑して仕方なく保険契約を締結した。
2.金融商品の販売等に関する法律(金融商品販売法)
(1)金融商品販売法とは
金融商品販売法は、個人投資家や預金者、保険契約者など金融サービスを利用する顧客の保護
を図ることを目的とした法律です。
金融商品販売法では、大きく分けて次の3点を定めています。
①金融商品販売業者等が金融商品を販売する際に、金融商品が持っているリスクなどの重
要事項について、顧客に説明する義務を課したこと。
②金融商品販売業者等が顧客に対する説明義務を怠り、そのために顧客が損害を被った場
合には、金融商品販売業者等が損害賠償責任を負うこと。
③金融商品販売業者等が金融商品を販売するために勧誘をする際に、勧誘の適正の確保を
要請するとともに、一定の勧誘方針の策定・公表を義務付けていること。
金融商品販売法では保険をはじめ預金、信託、有価証券など、金融商品全般が対象となり、少
額短期保険商品についても、金融商品販売法の対象となります。
金融商品販売業者等とは、金融商品の販売等を業として行う者をいい、少額短期保険業者の委
託を受けて保険契約の締結の代理または媒介を行う少額短期保険募集人も「金融商品販売業者
等」に該当しますので、本法上の各種義務を負うことになります。
★49★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
はその契約を取り消すことができると規定しています。
(2)金融商品販売業者等の説明義務等
金融商品販売法では、金融商品販売業者等に該当する少額短期保険募集人が金融商品を販売する
際には、金融商品が持っているリスクなどの重要事項について、金融商品の販売が行われるまで
の間(保険契約の締結までの間)に顧客に説明することを義務付けています。
また、金融商品販売業者等が金融商品を販売する際に、不確実な事項について断定的判断の提
供等をすることを禁止しています。
●金融商品販売法における重要事項とは
「信用リスク(経営破綻リスク)」のことで、保険契約にあたっては少額短期保険業者の経
営が破綻した場合のリスクについて少なくとも次のことを説明する必要があります。
保険金・解約返れい金等が削減される可能性があること。
少額短期保険は、保険契約者保護機構の行う資金援助等の措置がなく、補償対象契約に該
当しないこと。
(3)金融商品販売法における損害賠償責任
金融商品販売業者等に該当する少額短期保険募集人が、顧客に対し重要事項の説明義務を怠っ
たり、または断定的判断の提供等を行った場合、これによって生じた顧客の損害を賠償しなけ
ればなりません。顧客は金融商品販売業者等が説明義務を怠ったこと、または断定的判断の提
供等を行ったことだけを立証すれば、金融商品販売業者等に対して、当該金融商品の販売等に
よって生じた元本欠損額を損害額として請求できます。
(4)勧誘方針の策定・公表義務
金融商品販売業者等に該当する少額短期保険募集人は、勧誘方針を定め、公表しなければなり
ません。また、策定・公表された勧誘方針を変更したときも、これを公表する必要があります。
★50★
参
考
(1)金融商品取引法とは
金融商品取引法は、金融・資本市場をとりまく環境の変化に対応し、幅広い金融商品について
の投資者保護のための横断的な法制として、証券取引法を改組して、2006(平成18)年6月14
日に公布され、2007(平成19)年9月30日に施行されました。
金融商品取引法は、幅広い金融商品について横断的・包括的な法を整備し、同じ経済機能を有
する金融商品に同じルールを適用することを意図しています。保険会社の扱う変額保険・変額
年金や外貨建て保険等の特定保険契約について保険業法に同様の規定が設けられています。
なお、特定保険契約とは、金利、通貨の価格、有価証券の売買等の市場における相場その他の
指標にかかわる変動により保険料総額が、保険金・返れい金その他の給付金の合計額を上回る
こととなるおそれのある保険契約をいいます。
(2)保険業法への準用
保険業法では金融商品取引法のいくつかの規定を準用しています。(保険業法第300条の2)
例えば
・広告等の規制(37条)
・契約締結前の書面の交付(37条の3)
・契約締結時等の書面の交付(37条の4)
・禁止行為(38条)
・損失補てん等の禁止(39条)
・適合性の原則等(40条)
(3)金融商品販売法における説明義務の強化
金融商品取引法の施行を受け、金融商品販売法における説明義務が強化されました。
従来から、元本割れのおそれのある場合には、その原因として市場リスク(価格変動リスク)、
信用リスクを説明することとされていましたが、これに加え、「取引の仕組みのうちの重要な
部分」、すなわち、金融商品の種類に応じて、
「契約の内容」
、
「有価証券等に表⺬される権利お
よび顧客が負担する義務」、
「顧客の権利および義務の内容」等を説明することとされています。
★51★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
金融商品取引法
ステップ
9
犯罪による収益の移転防止に関する法律
(犯罪収益移転防止法)
1.犯罪収益移転防止法の目的
2001(平成13)年9月の米国同時多発テロ事件の発生以降、国際社会においてテロ資金対策やマネ
ー・ローンダリング対策が重要な課題となっています。これを発端として、2003(平成15)年1月
6日に「本人確認法」が施行され、金融機関等による顧客等の本人特定事項等の確認、確認記録・
取引記録の作成・保存が義務づけられました。
(注)「本人確認法」は、犯罪収益移転防止法の施行により、廃止されました。
近年になり、マネー・ローンダリングは金融機関以外の事業者を利用するなど、その手口にも変化
がみられるようになったため、2007(平成19)年3月31日に「犯罪収益移転防止法」が制定され、
2008(平成20)年3月1日に全面施行されました(2013(平成25)年4月1日改正施行)
。
(注)マネー・ローンダリング(資金洗浄)とは、犯罪などで得た「汚れた資金」を正当な取引で得た「きれいな
資金」であるかのように見せかけることです。
犯罪収益移転防止法は、特定事業者による顧客等の本人特定事項等の確認、取引記録等の保存、疑
わしい取引の届出等の措置を講ずることにより、犯罪による収益の移転防止を図り、あわせてテロ
リズムに対する資金供与の防止の的確な実施を確保し、もって国民生活の安全と平穏を確保すると
ともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的としています。
特定事業者とは、金融機関のみならず、不動産・貴金属・宝石等取扱業者等や弁護士等、この法律
によって本人特定事項等の確認義務が課せられている事業者をいい、少額短期保険業者も特定事業
者に該当します。
特定事業者は、この法律により、特定取引に際して顧客等の本人特定事項等の確認、取引時確認を
行った場合に取引記録保存等の措置を講じなければなりません。また、弁護士等以外の特定事業者
は、疑わしい取引の届出等の措置も講じなければなりません。
★52★
2.犯罪収益移転防止法における「本人特定事項等の確認」
更・解約時などの際に本人特定事項等の確認を行う必要が生じる場合があります。
(1)取引時確認が必要となる場合および確認事項
犯罪収益移転防止法において本人特定事項等の確認が必要となるのは以下のような場合です。
これらの確認を総称して「取引時確認」といいます。
①特定取引
生命保険契約の締結をいいます。
(保険契約の締結時のほか、保険契約者の変更や解約時なども含まれます。)
本人特定事項、取引を行う目的、職業または事業の内容、法人の実質的支配者の本人特
定事項の確認を行わなければなりません。
②厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引等
ア.顧客等または代表者等になりすましている疑いのある取引
イ.取引時確認事項を偽っていた疑いがある顧客等との取引
ウ.特定国等(イラン、北朝鮮)に居住しまたは所在する顧客等との取引
上記①と同じ確認を行わなければなりません。当該取引が200万円を超える価額の財産の
移転を伴う取引である場合は、さらに、資産および収入の状況の確認を行わなければな
りません。
(注)取引時確認が必要な契約や取引等については、対象外となるものもあるため、各少額短期保険業者にご
確認ください。
※一度取引時確認を行った顧客について
一度取引時確認を行った顧客については、次回以降の取引では「取引時確認済みの顧客」で
あることを確認できれば再度の取引時確認は不要です。ただし、取引時確認に係る事項を偽
っている疑いがある顧客の場合には、再度の取引時確認が必要となります。
(2)取引時確認が必要な事項
①本人特定事項
次の公的証明書等(本人確認書類)により顧客等の本人特定事項を確認します。
顧客等
個人の場合
法人の場合
公的証明書
運転免許証、各種健康保険証・年金手帳、
パスポート、印鑑登録証明書など
法人の設立に係る登録事項証明書、印鑑登
録証明書など
本人特定事項
氏名・住所・生年月日
法人の名称・本店または
主たる事務所の所在地
(注1)顧客等が法人の場合、法人と実際の取引代理人双方の本人特定事項の確認が必要です。
(注2)顧客等が代理人を利用して取引する場合も、顧客等と実際の取引担当者双方の本人特定事項の確認
が必要です。
★53★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
少額短期保険募集人は、少額短期保険業者の定める方法により、保険契約の締結時や契約内容の変
②取引を行う目的
顧客等またはその代表者等から申告を受けることにより確認します。
③職業または事業の内容
顧
客
等
個人、人格のない社団等の場合
確認方法
顧客等またはその代表者等から申告を受ける。
法人の設立に係る登録事項証明書、定款等の書類を確認
法人の場合
する。
④実質的支配者の確認(顧客等が法人である場合)
顧客等の代表者等から申告を受けることにより確認します。
⑤資産および収入の状況
顧
客
等
確認書類
個人の場合
源泉徴収票、確定申告書
など
法人の場合
貸借対照表、損益計算書
など
※特定事業者の免責規定
顧客等が取引時確認に応じない場合には、取引時確認に応じるまでの間、取引に係る義務の
履行を拒むことができることとし、免責規定を設けています。
(3)「確認記録」と「取引記録」の作成・保存
①確認記録の作成・保存の義務
取引時確認を行った場合には、直ちに確認記録を作成し、その「確認記録」を取引終了日ま
たは契約終了日から7年間保存しなければなりません。
②取引記録の作成・保存の義務
顧客との間で取引を行った場合には、直ちに当該取引の記録を作成し、その「取引記録」を
取引日から7年間保存しなければなりません。
★54★
ステップ
10
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)
えい、プライバシーの侵害などの懸念が増大し、個人情報の保護の重要性がますます高まっています。
こうした背景から、
「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)
」が2005(平成17)年4月より全
面施行となり、個人情報を事業として取扱う者に対して、個人情報の適正な取扱いについて法的義務を
課すこととなりました。
1.個人情報保護法の目的
個人情報保護法は、
「個人情報の適正な取扱いに関し、
(中略)個人情報を取扱う事業者の遵守すべ
き義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する」こと
を目的としています。
2.個人情報保護法の対象となる個人情報とは
個人情報保護法の対象となる個人情報とは、氏名や生年月日、住所、電話番号など「生存する個人
に関する情報で特定の個人を識別できるもの」をいいます。
※死者に関する情報であっても、遺族等の生存する個人に関する情報に該当する場合がありますので注意が必要です。
少額短期保険募集人が少額短期保険業者の保険募集を行う際に取扱う個人情報とは、以下のような
ものをいいます。
①顧客等の氏名
「顧客等」とは、保険契約者のほか、被保険者、見込客、事故の際の被害者・加害者等をい
います。
②生年月日、連絡先(住所・電話番号・電子メールアドレス)、会社における職位または所属に
関する情報について、それらと本人の氏名を組み合わせた情報
③上記①、②に付随し顧客等が保険契約申込書等に記載した、保険契約等の締結に必要な情報
④特定の個人を識別できる情報が記述されていなくても周知の情報を補うことや、取得時に特
定の個人を識別できなくとも取得後に新たな情報が付加または照合されたことにより特定の
個人を識別できるもの
具体的には下記のような帳票や電子記録媒体等に個人情報が記載されています。
●契約内容が記載された書類
・申込書類(保険契約申込書、更改契約申込書、異動承認請求書、口座振替依頼書など)
・保険証券、告知書、端末画面のハードコピー、満期はがき、保険料領収証
・保険金・給付金関係書類
●一覧性のある個人情報(氏名、住所、生年月日、電話番号、加入状況等が記載されたリスト)
・満期一覧表
・集金・口座振替関係書類(集金契約一覧表、口座請求一覧表)
・顧客リスト
●その他パソコン本体、各種電子記録媒体(CD-ROM、USBメモリなど)に記録された
特定個人を識別できるデータを含みます。
★55★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
近年の高度情報通信社会の進展においては個人情報の利用が拡大し、これに伴って情報の不正利用や漏
参
考
個人情報保護法の対象となる情報
個人情報
生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるもの、または他の情報と容易に照合する
ことができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの
個人情報データベース等
個人情報を含む情報の集合物であり、以下のいずれかに該当するもの
①特定の個人情報をコンピュータを用いて検索できるように体系的に構成したもの
②上記のほか、特定の個人情報を容易に検索できるように体系的に構成したものとして
政令で定めるもの(例:紙によるファイリングシステム)
個人データ
個人情報データベース等を構成する個人情報のこと
保有個人データ
個人情報取扱事業者が、開⺬、内容の訂正、追加または削除、利用の停止、
消去および第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人デ
ータ
3.個人情報保護法の対象となる事業者とは
個人情報データベース等を事業に使用している事業者で、個人情報データベース等を構成する個人
情報によって特定される個人の数が過去6か月のいずれかの日において5,000人を超える者が「個
人情報取扱事業者」に該当し、個人情報保護法の各種の義務規定が適用されます。
個人情報の取扱いに関して問題が生じた場合、少額短期保険業者には、委託先または従業者である
少額短期保険募集人の行為についての監督責任が生じる一方、少額短期保険募集人には少額短期保
険業者の指⺬に従う義務が生じます。したがって、少額短期保険募集人は、個人情報取扱事業者で
あるか否かにかかわらず、法令等に則り、個人情報を適正に取扱う必要があります。
★56★
4.個人情報取扱事業者の義務
定められています。(主なもの)
①個人情報の利用目的の特定
個人情報を取扱うにあたって、利用目的をできる限り特定しなければなりません。
②個人情報の利用目的の制限
あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報
を利用してはなりません。ただし、法令に基づく場合、または人の生命、身体または財産の保
護のために必要な場合で本人の同意を得ることが困難であるときなどは、あらかじめ本人の同
意を得ていない場合でも利用することができます。
③個人情報の適正な取得
個人情報は業務上必要な範囲で、かつ適法で公正な手段によって取得しなければなりません。
偽りその他不正な手段により個人情報を取得してはなりません。
④利用目的の通知、公表、明⺬
個人情報を取得した場合は、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目
的を本人に通知または公表しなければなりません。
本人から直接書面に記載された個人情報を取得する場合は、あらかじめ利用目的を明⺬しなけ
ればなりません。
少額短期保険業者やその委託を受けた者は次のような場合、本人に利用目的を通知、公表、明
⺬しなければなりません。
・保険契約者など本人から直接保険契約申込書等の書面に記載された個人情報を取得する場合
・アンケート等により見込客情報を入手し、保険商品等を勧める場合
・少額短期保険業者やその委託を受けた者が独自の利用目的を有する場合
■少額短期保険業者やその委託を受けた者における利用目的の通知、公表、明⺬の具体的方法
通
知
公
表
明
⺬
チラシ、郵便、ファックス、電子メールの送信などにより本人に利用目的を知らせる。
ホームページへの掲載、事務所等の見やすい場所への掲⺬等により、本人が利用目的
を確認できるようにする。
パンフレットや申込書、会社案内等に、利用目的が記載されている旨を⺬すことで、
本人に明⺬する。
★57★
第3編 コンプライアンス 第2章 少額短期保険募集人が守らなければならない法律
個人情報保護法における個人情報取扱事業者が遵守しなければならない義務として、下記の規定が
⑤個人データの安全管理措置
個人データの漏えい、滅失・き損の防止その他個人データの安全管理のために必要かつ適切な
措置を講じなければなりません。例えば、個人情報取扱事業者は安全管理措置として次のよう
な対策を講じる必要があります。
【安全管理措置の例】
・個人情報が記載された帳票や収録された電子記録媒体(CD-ROM、USBメモリなど)
を事務所外に持ち出す場合は、
「必要最小限にとどめる」
「常時携行し車中等に放置しない」
「持ち出すデータは管理台帳に記録する等の適切な方法により管理する」などの対策をと
る。
・個人情報が搭載されているパソコン、情報端末等は、パスワード等の設定を行い、その管
理を適切に行う。
・業務用パソコン等の情報端末等についてはセキュリティ対策ソフトを導入する。また、業
務用パソコンにファイル共有ソフトをインストールしない。
・個人情報は施錠できるキャビネット等に保管し、事務所等の施錠をしっかり行う。
万一、個人情報の漏えい等が発生し、または発生するおそれが高い場合には、少額短期保険業
者の委託を受けた者は、直ちに少額短期保険業者に報告し、警察への届出や顧客への報告をす
るとともに、漏えい範囲の拡大防止等の措置を講じなければなりません。
⑥従業者・委託先の監督
少額短期保険業者は、個人データを取扱う従業者・委託先に対して必要かつ適切な監督を行う
ことが義務付けられています。
少額短期保険募集人は、少額短期保険業者の指⺬に従って個人データを適正に取扱わなければ
なりません。
⑦個人データの第三者提供の制限
原則として、あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを第三者へ提供してはなりません。
⑧機微(センシティブ)情報の目的外利用等の原則禁止
機微(センシティブ)情報※は、本人の同意に基づき業務上必要な範囲で取得、利用または第
三者に提供する場合などを除き、取得、利用または第三者提供を行うことはできないこととさ
れています。
※機微(センシティブ)情報とは、政治的見解、信教(宗教、思想および信条をいいます)、
労働組合への加盟、人種および民族、本籍地、保健医療および性生活、並びに犯罪歴などの
内容を含む個人情報をいいます。
★58★
第3章
少額短期保険募集人の日常業務
保険事故または給付事由の発生時の対応、照会・苦情への対応などさまざまな業務があります。
少額短期保険募集人には、この業務を適正に遂行する知識や能力が求められます。
■事務処理の流れ
少額短期保険募集人の事務処理は、少額短期保険募集人が「代理」であるか「媒介」であるかにより
異なります。
代理の場合
少額短期保険募集人(代理)
1.保険契約申込書の作成
契約の引受け
(申込書の受理と承諾)
保険料の受領
3.契約の報告
(申込書の送付)
5.保険料の精算
2.保険料領収証
の発行・交付
少額短期保険業者
保険契約者
4.保険証券の交付
媒介の場合
少額短期保険募集人(媒介)
1.保険契約申込書の作成
契約の受付
(申込書の受理)
第1回保険料充当金の
受領
2.第1回保険料充当
金の領収証の発行・
交付
3.契約の報告
(申込書の送付)
保険料充当金の送金
4.契約の承諾
保険契約者
少額短期保険業者
5.保険証券の交付
★59★
第3編 コンプライアンス 第3章 少額短期保険募集人の日常業務
少額短期保険募集人の日常業務には、保険契約の締結、保険料の領収・保管・管理、保険契約の管理、
ステップ
1
保険契約の締結
※このステップでは、少額短期保険募集人が契約の締結権限・告知の受領権を有する「代理」の場合を
中心に解説しています(「媒介」の場合は、契約の締結権限(代理権)
・告知の受領権はありません)。
また、保険契約の締結または募集については、お客様、見込客または保険契約者と分けて記載すべき
箇所がありますが、このステップでは、原則として、保険契約者としています。
1.保険契約の締結
少額短期保険募集人は、保険契約の締結にあたって、保険契約者に保険契約の内容を十分に説明し、
保険契約者の意思を確認しなければなりません。さらに、保険の対象(保険の目的物)や本人(保
険契約者・被保険者)を確認するなど、契約の引受を適正に行う必要があります。
(1)保険契約者への重要事項の説明
保険契約者が保険の内容について十分理解しないままの契約は、契約締結後にトラブルを招く
原因となりかねません。
したがって、少額短期保険募集人は保険契約の締結時に「重要事項説明書(契約概要・注意喚
起情報)」に基づいて、保険契約者に対して商品内容を十分に説明し理解を得る必要がありま
す(P.36参照)。また、同時に「商品パンフレット」「ご契約のしおり(約款)」などを活用し、
商品内容をより深く理解していただくように工夫することが大切です。
なお、約款や重要事項説明書(契約概要・注意喚起情報)を必ず保険契約者に渡さなければな
りません。
(2)保険契約者等からの告知の受領
保険制度は、多くの人々が保険料を出し合うことによって成り立っており、保険契約者が負担
する保険料は危険度に見合った公平なものでなければなりません。そのために、少額短期保険
業者は、危険に関する重要な事項のうち、必要とする事項を「告知事項」として情報を収集す
ることになります。契約締結の際、保険契約者または被保険者には少額短期保険業者が求める
「告知事項」について、正確に事実を告知する「告知義務」が課せられており、定められた書
面(保険契約申込書および告知書)に基づき正確に「告知」をいただくことは少額短期保険募
集人の重要な役割です。
なお、告知義務を負う保険契約者や被保険者が故意または重大な過失によって、事実を告知し
なかったり、事実と異なることを告知した場合には、告知義務違反になります。少額短期保険
業者は、告知義務違反を知ったときには契約を解除することができますので、少額短期保険募
集人は告知を受領する際には正確に告知してもらえるよう適切な助言を行わなければなりま
せん(P.9「ステップ2保険のしくみ2.(4)①告知義務」参照)
。
また、少額短期保険募集人は、保険募集にあたり、この告知の受領権を有しているか否かを保
険契約者または被保険者に説明を行う必要があります。
★60★
【告知を必要とする事項(例)】
被保険者の職業・職務、最近の健康状態、過去の傷病歴
火災保険
保険の対象の所在地、建物の構造・用法・面積、他の保険契約
自動車保険
被保険自動車の車名・型式、登録番号、用途車種、前契約における事故の有
無、他の保険契約
等
等
等
傷害保険
被保険者の職業・職務、補償内容が重複するような他の保険契約
医療保険
被保険者の生年月日・性別・健康状態、他の保険契約
等
等
(3)リスクと保険引受(危険の選択)
保険制度の健全な運営、契約者間の公平性の観点から、保険引受にあたっては、さまざまなリ
スクの大きさ(危険度)を把握・評価することが重要となります。
保険引受にあたって把握すべきリスクは、保険商品によって異なりますが、生命保険契約およ
び傷害疾病定額保険契約では、リスクの種類を「身体的リスク」
「環境的リスク」
「道徳的リス
ク(モラルリスク)」、損害保険契約の場合は「道徳的リスク(モラルリスク)」に分類するこ
とができます。
リスクの種類
リスクの内容
身体的リスク
既往症、身体の障害状態、現在の健康状態などにかかわる危険
環境的リスク
現在の職業や仕事の内容などにかかわる危険
道徳的リスク
保険を利用して、不正に利得しようとする行為にかかわる危険
少額の保険料を支払って、万一のときには高額の保険金を受取ることができる保険契約では、
保険金目当ての放火や殺人などの犯罪に結びつく道徳的リスク(モラルリスク)が潜在してい
ます。善意の保険契約者の利益を保護するためにも、保険引受にあたっては道徳的リスク(モ
ラルリスク)の排除に努める必要があります。
少額短期保険募集人は、契約者や被保険者と直接面接でき、観察や質問によって多くの情報を入
手できる立場にあることから、保険引受の際には、次の点などに十分注意する必要があります。
★61★
第3編 コンプライアンス 第3章 少額短期保険募集人の日常業務
生命保険
取扱
保険
保険契約の引受の際の注意点
生命保険および傷害疾病定額保険
損害保険
●危険の選択
危険の選択とは、生命保険や傷害疾病定額保険の契約引受にあたって、少額短期保
険業者がその申込みに対し危険度の大きさを評価し、契約を承諾するか否かを決め
ることです。
危険を選択するにあたっては、被保険者の健康状態や職業・仕事の内容などをきち
んと把握することが大切です。
●傷病歴等の確認
被保険者の既往症、身体の障害状態、健康状態などを確認する必要があります。
●被保険者の同意
保険契約者以外の者を被保険者とする生命保険契約(死亡保険契約)および傷害疾
病定額保険契約(死亡に関する保険給付については、法定相続人が保険金受取人で
ある場合を除く)においては、被保険者の同意がなければ保険契約の効力は生じま
せん。
そのため、これらの保険契約については、保険契約申込書等の被保険者同意欄に被
保険者本人が署名または記名押印することなどにより被保険者の同意の確認を行
う必要があります。
●被保険利益の確認
火災保険などの損害保険契約は、損害をてん補する契約であるため、被保険利益が
ない場合には保険契約は成立しません。
実務上では、保険を付ける建物や家財などが誰の所有物であるのか、その建物が実
在するかどうか確認する必要があります。
●保険事故歴
自動車保険などの損害保険契約では、保険事故歴によって保険料が割増になる場合
があります。したがって、過去における保険事故の有無や件数などについて、保険
契約者に確認する必要があります。
●保険契約者等の本人確認
新規の保険契約を締結する際には、架空契約や保険金の詐取を目的とする不正な保
険契約の発生を防止するため、運転免許証などの公的証明書により、保険契約者お
よび被保険者本人の確認を慎重に行う必要があります。
(注)「犯罪収益移転防止法」により、保険契約者を特定する事項(個人の場合「氏名・住所・生
年月日」)を確認することが義務付けられているものもあります。(P.53参照)
共通
●他の保険契約の有無
火災保険などの物を保険の対象とする損害保険契約では、同じ保険の対象にすでに
「他の保険契約(他の保険業者の契約や共済契約を含む)」が付けられている場合
には、他の保険契約の保険金額を考慮して適切な保険金額を設定する必要がありま
す。
また、傷害保険などの傷害疾病定額保険契約では、契約時に定められた保険金額・
保険金日額に従って保険金が支払われるため、同じ被保険者にすでに「他の保険契
約」が付けられている場合には、保険金額・保険金日額等が過大とならないように
注意することが必要です。
したがって、損害保険契約や傷害疾病定額保険契約を締結する際には、同じ保険の
対象または同じ被保険者について「他の保険契約」の有無、およびそれらの保険金
額等を確認することがきわめて重要です。
★62★
(4)保険契約者のニーズの確認と保険契約申込書の作成
①保険契約申込みの意思・契約内容の確認
あります。特に、生命保険契約、傷害疾病定額保険契約については、提供する保険商品が保
険契約者のニーズに合致していることを確認するために、保険契約を締結する前に「意向確
認書面」を保険契約者に交付します。
②保険契約申込書への記入
保険契約申込書は、保険契約の申込みを受ける際の重要な書類であり、保険契約申込書の記
載内容に基づいて保険契約が成立することになります。したがって、保険契約申込書の記入
にあたっては、保険契約の内容を十分確認したうえで、保険契約者に署名または記名押印し
ていただきます。なお、保険契約者と被保険者が異なる場合には、被保険者の同意を得るこ
とが必要となります。
③保険契約申込書写し等の交付
保険契約締結時には、保険契約者に保険契約申込書の写し等を交付する必要があります。
★63★
第3編 コンプライアンス 第3章 少額短期保険募集人の日常業務
保険契約の締結にあたっては、保険契約者に保険契約の申込みと契約内容を確認する必要が
2.保険料の取扱い
(1)正当な保険料の領収
定められた保険料の全額を領収しなければなりません。保険料を勝手に分割して領収(分割
払契約などの場合を除きます。)したり、特段の規定がないにもかかわらず保険料の割引・
割戻や金品その他の利益を提供したりすることはできません。
保険料の領収にあたっては、現金や小切手等定められた方法で行うものとし、小切手を受け
取ったときは、日付、金額などを入念に確認する必要があります。
※小切手でも先日付小切手による領収や手形による領収を行ってはいけません。
(2)保険料領収証の発行・交付
保険料の領収と引き換えに「保険料領収証」を発行・交付する必要があります。保険料領収証
は、単に保険料を領収したことを証明するだけでなく、保険契約の責任開始を証明する重要な
書類となるため、次の点に留意する必要があります。
○保険料の全額または一部の領収を受けずに、保険料領収証を発行・交付してはなりません。
○保険料領収証は、少額短期保険業者の所定のものを使用し、名刺や市販の領収証などを代用
してはいけません。
○保険料領収証を書き損じたり、汚したりした場合は使用せず、新しいもので発行・交付しな
ければなりません。なお、書き損じたり、汚したりした保険料領収証は破棄せずに少額短期
保険業者に返却しなければなりません。
○使用有効期限を過ぎた保険料領収証は、直ちに、少額短期保険業者に返却しなければなりま
せん。
○万一、保険料領収証を紛失したり、盗難にあったりした場合は、直ちに少額短期保険業者に
連絡しなければなりません。
(3)保険料の区分管理
領収した保険料は適切に管理しなければなりません。保険料は自己の財産とは明確に区分して
管理する必要があり、領収した保険料を費消したり、他に流用する行為は絶対に行ってはいけ
ません。
(4)保険料の入金・預入
領収した保険料は遅滞なく少額短期保険業者への入金手続きを行うか、専用の預貯金口座に預
け入れる必要があります。
★64★
ステップ
2
保険契約の管理
す。
1.保険契約の変更
保険契約が成立したことで仕事のすべてが終了したわけではなく、引き続き、保険契約者等に良質
なサービス等を提供していくことは少額短期保険募集人の重要な役割です。
保険契約者等を取り巻く諸環境に変化が生じた場合、お客様の要望に基づいてそれに対応した保険
金額の増額・保険期間の延⻑・特約の追加などを適切かつ確実に行っていくことが保険契約者等の
信頼を高めることになります。
また、保険期間の中途において、保険契約締結時の「告知事項」について変更(危険の増加等)が
生じた場合、保険契約者または被保険者は少額短期保険業者に通知しなければならない旨を約款で
定める場合があります。これを「通知義務」といいます。約款上通知義務の定めがある場合、少額
短期保険募集人は、あらかじめ保険契約者等に通知が必要な事項(被保険者の職業や職務の変更、
住所の変更、建物の構造・用途の変更など保険商品により異なります。)について、十分説明して
おく必要があります。
(P.10「ステップ2
保険のしくみ
2.保険契約(4)②通知義務」参照)
2.保険契約の解約
保険期間中に、保険契約者は自分の意思により、いつでも少額短期保険業者に申し出て、将来に向
かって保険契約を取りやめることができます。これを「解約」といいます。少額短期保険募集人は、
保険契約者から解約の申し出があった場合は、速やかに手続きをとる必要があります。
なお、解約の申し出があった場合、少額短期保険業者はその契約について解約返れい金があれば支
払います。
3.契約管理
締結した保険契約の保険期間が終了すると保険契約が満了となり、その効力は失われます。もしも、
保険契約を更新せずに保険事故または給付事由が発生した場合、保険契約者等は大きな痛手を被る
ことになります。
少額短期保険募集人は、日頃から保険契約者ごとに各保険契約の満了日を管理・把握し、満了日以
前に余裕をもって保険契約者にハガキや電話、電子メールなどにより満了案内を行い、確実に保険
契約を更新できるよう努めることが大切です。
また、満了案内や更新の際には、保険契約者のライフプランや環境の変化などに応じて、
「保障(補
償)額などを含めた保険契約の内容の見直し」などの提案を行うことも大切です。
なお、保険契約者の意思を確認せずに勝手に更新手続きを行ってはいけません。
★65★
第3編 コンプライアンス 第3章 少額短期保険募集人の日常業務
少額短期保険募集人は、保険契約者等に良質のサービスを提供し、適正な契約管理を行う責任がありま
ステップ
3
事故発生時の対応
保険契約者が少額短期保険に加入する主な目的は、火災、賠償事故、傷害疾病などが発生した場合の損
害の補償や医療費・入院費の確保にあり、保険金等の迅速かつ適切な支払いは少額短期保険業における
最も基本的かつ重要な責務であるといえます。
保険契約者等が、保険金・給付金等の請求を適切に行うためには、保険契約の勧誘時から保険金・給付
金等の支払事由が発生した場合の請求方法等について説明しておくことが重要です。
また、保険事故や給付事由が発生したときには、保険金請求手続について適切な助言と支援を行うこと
が大切です。こうした少額短期保険募集人の活動により、保険金や給付金等の支払事由等が発生したと
きに、少額短期保険業者は迅速かつ適切な対応を行うことができます。
1.事故発生報告の重要性
少額短期保険業者は、保険契約者等からの「保険事故発生の報告」または「給付事由発生の報告」
を受けて、各種の調査を行い、これをもとに保険金支払いの有無や支払額などを決定します。
したがって、少額短期保険募集人は、日頃から保険契約者や被保険者に対し、万一、保険事故また
は給付事由が発生した場合には、直ちに少額短期保険募集人または少額短期保険業者に報告するよ
う依頼しておかなければなりません。
また、保険事故が発生したことまたは給付事由が発生したことを知ってから一定期間内に報告をし
ないと、保険金が支払われない場合がありますので、その旨も加えて説明しておく必要があります。
2.少額短期保険募集人の初期対応
(1)事故発生報告の受付
保険契約者等から少額短期保険募集人に保険事故または給付事由の発生の報告があった場合は、
その内容等を確認しなければなりません。
なお、生命保険契約では、被保険者の死亡などの請求事由が発生した場合には、保険契約者また
は保険金受取人が少額短期保険業者に直接報告することになります。
また、保険事故または給付事由の発生の報告があった際には、保険事故等に遭遇した保険契約者
等の不安を解消するために、今後の対応のしかたや保険金請求までの流れなどを説明することが
大切です。
(2)少額短期保険業者への報告
少額短期保険募集人は、保険契約者等から保険事故または給付事由の発生の報告を受けた場合は、
直ちにその内容を少額短期保険業者に報告しなければなりません。
(3)保険金請求手続きへの協力・助言
少額短期保険募集人は、保険契約者等から保険事故または給付事由の発生の報告を受けた場合は、
その内容を確認し、保険金が迅速に支払われるよう、少額短期保険業者と連絡を取り合い相談し
ながら、保険金請求手続きについて保険契約者等に協力し助言しなければなりません。
なお、少額短期保険募集人は、保険金が支払われるか否か、保険金の支払額などについて断定し
てはいけません。
★66★
ステップ
4
照会・苦情への対応
少額短期保険募集人による説明の不備などがあった場合、事故や疾病の際に問題が顕在化しトラブルと
なるケースもあります。
万一、契約内容などについて照会や苦情の申し出があった場合は、迅速、的確に、誠意をもって対応し、
信頼を損なわないようにしていく必要があります。
1.照会・苦情の受付にあたっての心構え
保険契約者等が少額短期保険募集人の対応や保険契約に対し不満を抱いた場合、その多くは「苦情」
という形で少額短期保険募集人に申し出ることになります。
苦情への対応が適切であれば、お客様との信頼関係をより深めることができ、保険契約の継続や他
の保険への加入にもつながる機会になります。
また、苦情内容を少額短期保険業者に連絡し相談することも重要です。
(1)保険契約内容の確認
少額短期保険募集人が保険契約者等から照会や苦情を受けた場合には、まず保険証券番号など
により該当する保険契約を特定し、契約内容を正確に把握したうえで対応しなければなりませ
ん。
(2)保険契約者等の理解度に応じた説明
保険契約者等との意思疎通を円滑にするためにも、保険契約者等の保険に対する知識のレベル
を勘案しながら対応することが大切です。保険用語は一般的な用語ではないので、話し合いの
中で相互に混乱が生じないよう、少額短期保険募集人が説明する場合はもちろん、保険契約者
等の照会内容等を聞く場合にも、相手の意図を正確にくみ取るよう注意して対応することが必
要です。
(3)保険契約者等の間の公平性の維持
保険契約者等から苦情等があった場合には、その内容を十分に聞きながらも、保険契約者等の
間の公平性を保ち、公正・中立な対応を心がけることが大切です。
(4)人権の尊重
日頃から人権感覚を磨き、保険契約者等の人権を尊重することが必要です。照会・苦情への対
応にあたっても、相手方を差別しないことはもちろんのこと、差別につながる言動がないよう
に心がけ、相手方に嫌悪感や不快感を与える表現を使わないことが大切です。
★67★
第3編 コンプライアンス 第3章 少額短期保険募集人の日常業務
保険は目に見えない無形の商品であるため、保険契約者等の契約内容に対する認識が不十分であったり、
2.照会・苦情の内容
照会・苦情の多くは、保険契約の締結時における商品内容の説明不足やお客様の理解不足が原因と
考えられます。したがって、苦情を発生させないためにも、保険契約締結の際には商品内容を十分
に説明し、保険契約者がそれを理解・認知しているか、十分確認したうえで契約することが重要で
す。
3.金融ADR制度
金融商品取引法、保険業法等の改正により、2010(平成22)年10月1日実施で「金融分野における
裁判外紛争解決制度(金融ADR=Alternative Dispute Resolution)
」が導入されました。
金融ADR制度とは、①主務大臣が苦情処理・紛争解決を行う「紛争解決機関」を指定し、紛争解
決の中立性・公正性を確保するとともに、②金融商品取引業者等に対し手続応諾や結果尊重等の義
務を課し、紛争解決の実効性を確保することにより、裁判以外の方法で利用者が簡易で迅速に金融
トラブルの解決を図るための制度です。
少額短期保険業務に関する紛争解決機関としては、一般社団法人日本少額短期保険協会(少額短期
ほけん相談室)が指定されており、各少額短期保険業者は、一般社団法人日本少額短期保険協会と
紛争解決等業務の実施に関する「手続実施基本契約」を締結しなければならないことになりました。
参
考
■相談・苦情受付・紛争解決等業務と解決の流れ
解決支援機関
申立人
(保険契
約者等)
一般の相談
苦情の申立①
和解の斡旋
話し合い③
裁定の申立⑥
裁定の手続⑦
(裁定の提示・受諾勧告、裁定
の取下げ・打ち切り)
紛争解決等業務
に関する苦情
結果の通知
少額短期ほけん相談室
(指定紛争解決機関)
・室長
・相談員
・補助者
裁定委員会
・弁護士
・学識経験者
・消費者生活相談員
・事務局長
消費者委員会調査部会
・協会の常勤役員
・調査部会員
解決依頼②
少額短期
保険業者
報告④
★68★
外部意見聴取⑤
・顧問弁護士
・学識経験者
・消費者生活相談員
消費者行政・消費者
関連団体からの
要望・意見
理 解 度 チ ェ ッ ク テ ス ト
正解の場合はチェック欄をチェック。間違った場合は再度チャレンジしましょう。
理解度テスト1
「重要事項の説明」に関する下記の文章のうち、正しいものには○印を、誤っているものには×印を解
答欄に記入してください。
1.少額短期保険募集人には、保険募集に際して、保険契約者等に対して、重要事項を説明することが
保険業法等により義務付けられています。
2.少額短期保険募集人は、「自動更新型の保険については、更新時に、保険料の計算の方法、保険金
額などを見直す場合がある」ことを保険契約者等に説明する必要はありません。
3.少額短期保険業者の経営が破綻した場合、保険契約者保護機構の行う資金援助等の措置はありません。
4.保険募集にあたって重要事項を説明する場合は、保険契約者等に対して保険契約締結前に「重要事
項説明書(契約概要・注意喚起情報)」を交付し、これらの書面を読むことが重要であることを告
げたうえで、所定の内容を口頭で説明(契約概要と注意喚起情報に分類のうえ説明)しなければな
りません。
1
解答欄
2
3
4
チェック欄
(答:1→○
2→×
3→○
4→○)
理解度テスト2
次の文章の
に当てはまる最も適切なものを下記ア.~キ.から選び、解答欄に記入して
ください。
虚偽のことを告げる行為・重要事項を告げない行為は禁止されており、保険契約の締結にあたっ
ては、保険契約者等に重要事項が記載された説明書を交付するほか、保険契約の内容を分りやすく
解説したパンフレット等の書面を利用して、
1
に関する重要事項を必ず説明し、お客様
に納得いただいたことを確認する必要があります。なお、こうした禁止行為を行った場合、少額短
期保険募集人は、違反の内容によって
2
を受けることになります。
保険契約の締結にあたっては、正しい告知をしてもらうために、保険契約者等に適切にアドバイ
スし、
3
の告知事項について事実を漏らさず記載してもらい、記載内容を確認してもら
ったうえで、保険契約者等の
ア.代筆
4
を得る必要があります。
オ.立法処分
イ.署名または記名押印
ウ.保険契約申込書や告知書
カ.司法処分や行政処分
解答欄
エ.契約内容
キ.重要事項が記載された説明書
1
2
3
4
チェック欄
(答:1→エ
★69★
2→カ
3→ウ
4→イ)
第3編 コンプライアンス 理解度チェックテスト
テキストの理解度をチェックしてみましょう。
理解度テスト3
「保険募集」に関する下記の文章のうち、正しいものには○印を、誤っているものには×印を解答欄に
記入してください。
1.乗換募集は、不利益となる事実を保険契約者等に説明し、保険契約者等に納得していただいた場合
にも、保険業法で禁止されています。
2.保険契約者等に対して締結した保険契約の保険料を立替える行為は、保険業法で禁止されています
が、保険料の端数を値引きすることは禁止されていません。
3.保険契約締結の際、契約者配当金について、将来確実で間違いなく支払われるという説明は、保険
業法の禁止行為には該当しません。
4.保険加入を断ったお客様に対して、そのお客様の利益につながるようにと思って、深夜に電話をか
けたり、訪問して勧誘を行う行為は、保険業法の禁止行為には該当しません。
解答欄
1
2
3
4
チェック欄
(答:1→×
2→×
3→×
4→×)
理解度テスト4
「少額短期保険募集人の募集行為」に関する下記の文章のうち、正しいものには○印を、誤っているも
のには×印を解答欄に記入してください。
1.生命保険契約の締結にあたり、保険契約に関する重要事項について、保険契約者に対してその場で
説明せずに、
「重要事項説明書」を手渡して後日読んでおくよう伝えました。
2.火災保険契約の締結にあたり、保険契約者に対し、保険料を安く抑えるために保険の対象となる建
物の構造を偽って保険契約申込書に記載するように勧めました。
3.生命保険契約の締結にあたり、保険契約者に対して不利益となる事実を十分に説明し、理解しても
らったうえで既存の保険契約を解約させて、新たな保険契約を申し込んでもらいました。
4.保険契約者に高額な金券を渡すことを約束したうえで、傷害保険契約を締結してもらいました。
解答欄
1
2
3
4
チェック欄
(答:1→×
★70★
2→×
3→○
4→×)
第4編
保険商品の概要
学習のポイント
第4編では、
「生命保険」
、
「損害保険」および傷害疾病保険のうち、
「傷害疾病定額保
険」について学習します。
①生命保険とはどのような保険か?
②損害保険にはどのような保険があるのか?
③傷害疾病定額保険とはどのような保険か?
など、生命保険、損害保険、傷害疾病定額保険の商品の概要を理解します。
※少額短期保険業者の取扱う商品については、個々の少額短期保険業者によって異な
りますが、ここでは、生命保険会社、損害保険会社の商品について概説します。
【学習する項目】
1.生命保険
2.損害保険
3.傷害疾病定額保険
★71★
第1章
ステップ
1
生命保険
生命保険
生命保険とは、人の死亡や老後の所得喪失などに備える保険で、人の生存または死亡に関する出来事を
対象とします。
1.保険事故による分類
生命保険は、保険事故により、「死亡保険」、「生存保険」および「生死混合保険」の3つに分類さ
れます。
死亡保険
生存保険
生命保険
生死混合保険
区
分
概
要
被保険者が死亡した場合に保険金が支払われる保険で、
死亡保険
被保険者が定められた保険期間内に死亡したことが保
険事故となります。終身保険においては保険期間の制限
はありません。
主な保険商品
・定期保険
・終身保険
・定期付終身保険
被保険者が定められた保険期間の満了まで生存してい
生存保険
る場合に保険金が支払われる保険で、満期時に被保険者
・個人年金保険(注)
が生存していることが保険事故となります。
死亡保険と生存保険を組み合わせたもので、被保険者が
定められた保険期間内に死亡した場合は死亡保険金が、
生死混合保険
保険期間満了まで生存した場合は満期保険金が支払わ
・養老保険
れる保険です。保険期間内の被保険者の死亡または満期
時の被保険者の生存が保険事故となります。
(注)通常は死亡保障を付加して販売されます。
2.主な保険商品
(1)定期保険
保険期間中に被保険者が死亡した場合に、保険金が支払われる保険です。満期保険金はありま
せん。
(2)終身保険
被保険者が死亡した場合に死亡保険金を支払う保険のうち、保険期間が終身にわたる保険です。
★72★
(3)定期付終身保険
終身保険に一定期間の死亡保障を行う定期保険特約を組み合わせた保険です。
あらかじめ定められた年齢から年金の支払が開始される保険です。
(5)養老保険
保障と貯蓄の両機能を兼ね備え、満期の場合も死亡の場合も同額の保険金が支払われる保険で
す。
生命保険は、保険金の額の決定方法により、定額保険と変額保険とに分類されます。
区
分
定額保険
概
要
契約時に定めた保険金の額が保険期間中適用される生命保険をいいます。通
常、生命保険は定額保険です。
主として株式や債券などの有価証券に投資し、その運用実績に応じて実際に
変額保険
支払われる保険金の額や解約返れい金等が変動する生命保険をいいます。
(少
額短期保険業者は取扱うことができません。)
4.保険金・給付金を支払わない場合
生命保険は、わずかな保険料の払込みでも、死亡したときは多額の保険金が支払われます。
ただし、保険料計算の基礎に使用している死亡率とはなはだしくかけはなれた高い死亡率を⺬す
ような死亡原因や、公序良俗に反するようなものにまで保険金を支払うことは、かえって保険制
度の健全な運営をさまたげたり、善良な保険契約者の利害を害したり、あるいは社会一般の公益
に反することになる場合があります。そのために以下のような場合には、保険金が支払われない
旨、約款に定めています。
・被保険者が、責任開始日から所定期間内に自殺したとき
・保険契約者が、故意に被保険者を死亡させたとき
参
など
考
かんぽ生命保険(旧簡易保険)について
2007(平成19)年10月1日に簡易生命保険法が廃止されたことにより、旧簡易保険は、(株)かん
ぽ生命保険により販売される民営の生命保険となりました。移行当初は、郵政民営化法により、
(株)
かんぽ生命保険は、生命保険の保険金額や業務範囲等についての制限が残りますが、徐々に緩和さ
れ、移行期間終了後は、保険業法が適用されることとなっています。
★73★
第1章 生命保険
3.保険金の額の決定方法による分類
第4編 保険商品の概要
(4)個人年金保険
第2章
ステップ
1
損害保険
火災保険
火災保険とは、建物(住宅、店舗、事務所、工場など)や動産(家財、商品、什器、備品など)が
火災や爆発などの事故によって損害を受けたとき、その損害を補償する保険(財産危険に備える保
険)です。
【主な火災保険商品】
ひょう
住宅火災保険
普通火災保険
火災、落雷、破裂・爆発、風災・ 雹 災・雪災、臨時費用、残存物取片づけ費
用、失火見舞費用、地震火災費用、修理付帯費用(普通火災保険のみ)、消防
または避難のために生じた損害、損害防止費用に対して保険金を支払います。
ひょう
火災、落雷、破裂・爆発、風災・ 雹 災・雪災、物体の落下・飛来・衝突・倒
住宅総合保険
じょう
壊、水濡れ、騒 擾 などの集団行動・労働争議、盗難、持ち出し家財の損害、
水災、臨時費用、残存物取片づけ費用、失火見舞費用、地震火災費用、修理付
店舗総合保険
帯費用(店舗総合保険のみ)、消防または避難のために生じた損害、損害防止
費用に対して保険金を支払います。
※火災保険で保険金を支払わない場合(主なもの)
①保険契約者や被保険者の故意または重大な過失、法令違反
②火災などの事故の際における保険の対象の紛失または盗難
③戦争、暴動
④地震、噴火またはこれらによる津波(ただし、地震火災費用保険金を除きます)
⑤核燃料物質による事故
参
など
考
地震保険とは
地震保険は、地震保険に関する法律(地震保険法)に基づき、居住用建物(店舗併用住宅を含みま
す)と家財を対象に、基本的には火災保険で補償の対象とならない地震、噴火またはこれらによる
津波によって生じた損害について、その損害の程度(全損・半損・一部損)に応じて保険金が支払
われる保険です。
なお、火災保険における「地震火災費用保険金」は地震保険とは関係がなく、地震等が原因で火災
となった場合で、建物や家財、設備・什器等、商品・製品等が損害を被り、その損害の状況が一定
の条件を満たしたときに、臨時に生じる費用に対して支払われる保険金です。
※地震保険法に基づく地震保険は、少額短期保険業者は取扱うことができません。
★74★
ステップ
自動車の保険
2
とを目的とした保険です。
自動車の保険は、法律(自賠法)で加入することが義務付けられている自動車損害賠償責任保険(自
賠責保険)と任意に加入する自動車保険に分けることができます。
【任意の自動車保険】
わせて契約します。
自動車事故で、歩行者や自動車の同乗者、他の車の搭乗者などを死傷させ
たような場合に備える保険です(自賠責保険の上乗せ補償)。
対物賠償保険
自動車事故で、他人の車や家などを壊したような場合に備える保険です。
人身傷害補償保険
自動車事故で、被保険者が死亡したり、後遺障害または傷害を被った場合
に備える保険です。
搭乗者傷害保険
自動車事故で、自分の車に搭乗している人が死傷した場合に備える保険です。
自損事故保険
自動車を運転中に、電柱に衝突したり、がけから転落した場合など、被保
険者(保有者、運転者や同乗者)が死傷した場合などに備える保険です。
無保険車傷害保険
被保険自動車の運転者や同乗者が、他の自動車との事故で死亡したり、後
遺障害を被ることによって生じた損害について、相手方に損害賠償を請求
することができる場合であって、相手の車に対人賠償保険が付いていなか
ったり(無保険自動車)、あて逃げされた場合など、相手側から十分な賠
償を受けられない場合に備える保険です。
車両保険
自動車事故で被保険自動車が壊れた場合や、盗まれた場合などに備える保
険です。
参
考
自動車損害賠償保障法(自賠法)
自賠法は、自動車による人身事故の場合に、加害者の賠償資力を確保することにより、被害者の保
護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に寄与することを目的とした法律です。
ただし、物損事故(対物賠償事故)の場合、自賠法は適用されません。
また自賠法は、ひき逃げにあったり、自賠責保険の付いていない自動車にひかれたような被害者を
救済するため、自賠責保険と同基準の補償ができるように、政府が自動車損害賠償保障事業を行う
ことを定めています。
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法(自賠法)により、原則としてすべての自動車(農耕作業用小
型特殊自動車を除き、原動機付自転車を含みます)に付けることが義務付けられている強制保険です。
(注)全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)などが行う自賠責共済も自賠責保険と同一の取扱いを受けます。
★75★
損害保険
対人賠償保険
第2章
任意の自動車保険とは、保険契約者が必要に応じて契約する保険です。下記の各種の保険を組み合
第4編 保険商品の概要
自動車の保険とは、万一の事故等に備え、加害者の賠償資力を高め、被害者に十分な補償をするこ
第3章
傷害疾病定額保険
傷害疾病保険には、傷害疾病定額保険と傷害疾病損害保険がありますが、ここでは保険法上、傷害疾病
定額保険の規定が適用される保険について学習します。
ステップ
1
医療保険・がん保険・介護保険・傷害保険
1.医療保険
医療保険は、病気やケガによる入院、手術などに備える保険です。一生涯の医療保障をするタイプ
(終身タイプ)、保険期間を年数で定めるタイプ(定期タイプ)や満期年齢を定めるタイプ(定期
タイプ)があります。
2.がん保険
がんによる入院や手術に備える保険です。がんと診断されたときは診断給付金が支払われます。保
険期間を5年、10年などと定める定期タイプとがんについて一生涯を保障する終身タイプがありま
す。また、一般的に無診査で告知のみなので、保険期間の初日から一定期間(90日など)は保険金
が支払われない旨を定めています。
3.介護保険
介護保険は、被保険者が機能障害(注)または認知症により一定の介護が必要な状態となった場合に
備える保険です。被保険者が介護が必要な状態となり、この状態が一定期間継続したときに、介護
保険金や介護一時金が支払われます。
(注)機能障害とは、傷害や疾病により、身体機能が一部または全般にわたり低下し、かつ日常の生活に支障が生
じることをいいます。
4.傷害保険
人間の身体に異常をもたらす原因を大別すると「病気」と「ケガ」に分けることができますが、そ
のうちの「ケガ」を対象とする保険が傷害保険です。
【主な傷害保険商品】
普通傷害保険
家族傷害保険
交通事故傷害保険
ファミリー交通傷害保険
国内・国外を問わず、家庭内、職場内、通勤途上、旅行中など、日
常生活の中で起こるさまざまな事故によるケガに備える、最も基本
的な保険です。
国内・国外を問わず、保険金が支払われる場合を、運行中の交通乗
用具との衝突・接触等によるケガや運行中の交通乗用具に搭乗中に
生じたケガなど、主として交通事故によるケガに限定した保険です。
★76★
理 解 度 チ ェ ッ ク テ ス ト
テキストの理解度をチェックしてみましょう。
理解度テスト1
「保険商品の概要」に関する下記の文章のうち、正しいものには○印を、誤っているものには×印を解
答欄に記入してください。
1.生命保険は、保険事故により、「死亡保険」、「生存保険」および「生死混合保険」の3つに分類さ
れます。
2.火災保険とは、建物や動産が火災や爆発などの事故によって損害を受けたときに、その損害を補償
する保険です。
3.自動車の保険は、法律で加入することが義務付けられている自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)
と任意に加入する自動車保険に分けることができます。
4.人間の身体に異常をもたらす原因を大別すると「病気」と「ケガ」に分けることができますが、そ
のうちの「病気」を対象とする保険が傷害保険です。
解答欄
1
2
3
4
チェック欄
(答:1→○
★77★
2→○
3→○
4→×)
理解度チェックテスト
第4編 保険商品の概要 第3章 傷害疾病定額保険
正解の場合はチェック欄をチェック。間違った場合は再度チャレンジしましょう。
MEMO
★78★
第5編
保険の周辺知識
学習のポイント
第5編では、保険の周辺知識について学習します。
少額短期保険業に関係する法律や相続、また共済事業など少額短期保険業を取り巻く
業界の知識についても知っておく必要があります。
実務においてお客様から尋ねられることもある内容ですので、しっかりと知識の習得
に努め、理解を深めてください。
【学習する項目】
1.保険と法律
2.保険と税金
3.少額短期保険業を取り巻く業界
★79★
第1章
ステップ
1
保険と法律
賠償責任に関する法律知識
わたしたちは、日常生活をおくる中で、交通事故などによって他人に不利益(損害)を与えてしまうこ
とがあります。このような場合における紛争解決のひとつの手段が「損害賠償」です。
この「損害賠償」とは、法律上の義務として、他人に与えた損害を賠償し、損害がないのと同じ状態に
することをいいます。
1.損害賠償責任の発生
損害賠償責任は、民法上、次のように「不法行為」や「債務不履行」があった場合に発生します。
なお、損害賠償は金銭によるのが原則です。
故意または過失によって、他人の権利または法律上保護される利益を侵害し
不法行為責任
(民法第709条)
た者(加害者)は、被害者に対し、これによって生じた損害を賠償する責任
を負います。
なお、被害者が損害賠償を請求する場合、被害者は、加害者に故意または過
失があったことを証明しなければなりません。
契約の当事者である債務者が、自分の責任で契約上の義務を果たさなかった
債務不履行責任
場合、債務者はその損害を賠償する責任を負います。
(民法第415条)
なお、債権者から損害賠償を請求された場合、債務者は、自らに責任がない
ことを証明しない限り、その責任を負うことになります。
上記のとおり、不法行為責任と債務不履行責任とは、ともに他人に損害を与えた場合に生じる責任
ですが、債務不履行責任があらかじめ契約関係にある者の間で成立するのに対し、不法行為責任は
このような契約関係を前提としない点で異なります。
2.損害賠償責任と損害保険
被害者は、不法行為などにより法律上の損害賠償請求権を取得しても、加害者に賠償資力がなけれ
ば現実には救済されません。また、加害者にとっても一時に多額の損害賠償金を負担することは容
易なことではありません。そこで、損害保険業界では、各種の賠償責任保険商品を用意し、偶然の
事故で加害者が法律上の損害賠償責任を負担することになった場合の損害を補償することにより、
結果として被害者の救済を図っています。
★80★
3.損害賠償責任と過失相殺
加害者に何らかの落ち度(過失)があった場合に、加害者が被害者に負うべき責任が「損害賠償責
任」です。
も落ち度(過失)があるのが一般的であり、このような場合には、加害者は、被害者側の過失の割
合に基づき、被害者側が負う分を差し引いて、被害者に損害を賠償することになります。これを「過
失相殺」といいます。
損害賠償額は、相手側の過失の程度に応じて実際の損害額を減額したものとなり、保険金はこの損
害賠償額について支払われることとなります。
過失による火災(以下「失火」といいます。)で他人の家に延焼損害を与えてしまった場合には、
民法の不法行為に関する規定に優先して「失火責任法」が適用され、その失火が「重過失」により
生じた場合に限り、火元が損害賠償責任を負うこととしています(放火など「故意」による火災の
場合には、民法の不法行為責任の規定が適用されます。)
。
つまり、延焼による被害を受けても「軽過失」による場合には、火元が損害賠償責任を負わないた
め、損害の賠償を基本的には期待できないことになります。火災保険は、このようなもらい火への
備えとしても大切であるということができます。
★81★
第1章 保険と法律
4.失火の責任に関する法律(失火責任法)と火災保険
第5編 保険の周辺知識
交通事故においては、加害者側が一方的に悪いようなケース(過失100%)はまれで、被害者側に
ステップ
相続に関する法律知識
2
生命保険、自動車保険の対人賠償保険・搭乗者傷害保険、傷害保険などでは、保険事故または給付事由
として人の死亡に接するケースがあります。したがって、保険の募集に携わるうえで、民法の相続に関
する法律知識も非常に重要となります。
1.相続
(1)相続
死亡した人(被相続人)の財産上のいっさいの権利・義務を他の人(相続人)が引き継ぐこと
を相続といいます。
(2)相続人と法定相続分
わが国では、相続人となる者の範囲や順序が法律(民法)によって定められていますが、この
ような制度を法定相続といい、法律で定めた相続分を法定相続分といいます。
なお、遺言により指定された相続分を「指定相続分」といいます。
民法上の相続順位と法定相続分は、以下のとおりです。
相続人
順
位
第1順位
第2順位
第3順位
子
直系尊属(父母等)
兄弟姉妹
配偶者は常に相続人
となります
配偶者
1
2
配偶者
2
3
配偶者
3
4
子
1
2
父母等
1
3
兄弟姉妹
1
4
法定相続分
①被相続人に配偶者がいるときは、その配偶者は常に相続人となります。ただし、内縁の場合
は、民法上の相続権はありません。
②被相続人に子(代襲相続人を含みます)があれば、配偶者とともに第1順位で子が相続人と
なります。
③被相続人に子(代襲相続人を含みます)がないときは、配偶者とともに、第2順位として被
相続人の直系尊属(父母等)が相続人となります。
④被相続人に子(代襲相続人を含みます)も直系尊属もいないときは、配偶者とともに、第3
順位として被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
⑤配偶者以外の同順位の相続人が2人以上いる場合、その相続人の相続分は原則として均等に
なります。
★82★
(3)代襲相続
被相続人より先に、相続人である子あるいは兄弟姉妹が死亡、または民法の規定により相続権
を失った場合には、子の場合は、その直系卑属(被相続人の孫、ひ孫等)、あるいは兄弟姉妹
の場合は、その子(甥、姪)がそれぞれ権利を受け継ぐことになります。これを代襲相続とい
(注)なお相続開始後に相続人が相続放棄した場合は、代襲相続は生じません。
(4)遺言
自分の財産をどのように処分するのかは、本人の自由意思に委ねられています。そこで法律(民
法)は、その人の死後にもその人の意思を実現させるための手段として遺言の制度を定めてお
できます。
遺言は次に述べる法定相続の規定に優先して被相続人の意思を実現させるという強い効力を
持っているため、間違いなく本人の遺言であることがはっきり分かるものでなければなりませ
ん。したがって、遺言は法律で厳格な方式が定められています。
(5)遺留分
遺言によって特定の者が全財産を相続することになると、他の相続人には何の権利も残されず、
不都合な事態が生じます。そこで、一定範囲の相続人(配偶者、子、親など)に対し遺言の内
容にかかわらず最低限相続できる財産割合を定めています。これを遺留分と呼んでいます。
★83★
第1章 保険と法律
り、被相続人は、原則として遺留分を侵さない限り、遺言で相続財産を自由に処分することが
第5編 保険の周辺知識
います。
2.相続の承認と放棄
相続人は、被相続人の財産上の権利・義務を相続するかしないかを自由に決めることができるよう
になっています。その方法には(1)相続の承認、(2)相続の放棄の2つの方法があります。
(1)相続の承認
①単純承認
被相続人の財産上の権利・義務を全部受け継ぐ方法です。したがって、もし借金などの債務
が相続財産より大きい場合には、相続人は自分の固有の財産から弁済しなければなりません。
(注)相続の開始(被相続人の死亡のとき)があったことを知ったときから3か月間、何の手続きもしなけ
れば、単純承認したことになります。
②限定承認
相続財産の範囲内で債務を弁済する方法です。したがって、債務が相続財産を超過しても、
相続人固有の財産から弁済する必要はありません。
(注)この場合には相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、全相続人が共同して家庭裁判
所へ申述することが必要です。
(2)相続の放棄
相続人が相続を拒否することを相続の放棄といいます。この場合、相続財産も受け継がないし、
債務も負担しないことになります。
(注)限定承認と同様、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければ
なりませんが、全相続人が共同で行う必要はなく、1人でも、また数人が共同で行うこともできます。
3.遺産の分割
相続人が2人以上のとき、遺産をどのように分割するかは、次の方法によります。
(1)遺言による分割
被相続人があらかじめ、自分の財産をどのように受け継がせるかを定めておく方法です。
(2)各相続人による協議分割
遺言のないときに、各相続人の間で話し合って決める方法です。
(3)家庭裁判所による分割
各相続人の分割の協議が整わないときに、家庭裁判所に分割の調停や審判を求める方法です。
4.相続税の対象となる財産
相続で引き継いだ財産には相続税が課せられます。相続税の課税対象となる財産には、相続により
取得した現金・土地など本来の相続財産の他に、みなし相続財産として、死亡保険金や死亡退職金
なども含まれます。
★84★
参
考
1.本来の相続財産
相続や遺贈※で取得した財産となるものには、次のようなものがあります。
・不動産 ―― 土地、家屋・工場など
・不動産上にある権利 ―― 地上権、借地権など
・その他 ―― 「のれん」「商標」などの営業権など
※遺贈とは、遺言によって自らの財産を他人に与えることをいいます。
相続税の課税対象となる財産には、現金・土地など本来の相続財産のほかに、相続(また
は遺贈)により取得した財産ではないが、実質的にこれと同様な経済効果をもつ死亡保険
金や死亡退職金なども含まれます。
これを「みなし相続財産」といいます。
・死亡保険金
被相続人の死亡により支払われる死亡保険金(ただし、被相続人の負担した保険料に対
する部分に限ります。)
(注)死亡に伴い支払われる損害賠償金や生命共済金も同様に取り扱われます。
・生命保険契約に関する権利
(注)保険契約者でない被相続人が保険料を負担している生命保険契約で、相続開始の時までに保険
事故が発生していないものです(原則として解約返戻金の額が評価額となります。
)。
・退職手当金(死亡退職金)、功労金
・定期金給付契約に関する権利
★85★
第1章 保険と法律
2.みなし相続財産
第5編 保険の周辺知識
・動産 ―― 現金、預貯金、有価証券など
第2章
ステップ
1
保険と税金
生命保険商品の保険金と税金
少額短期保険業者や生命保険会社は、保険法で規定する「生命保険」と「傷害疾病定額保険」に分類さ
れる保険商品を取扱います。
国が行う社会保障制度は、すべての国民が「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するた
めの社会的な制度で、個々の家庭ごとに必要な事項に対して、必要な時点で必要な金額を必ずしも保障
するものではありません。したがって、生命保険や傷害疾病定額保険は、個々の家庭のライフサイクル
に基づいた生活設計に不可欠なものであり、社会保障制度を補う重要な役割を果たしています。また、
保険契約者から払込まれた保険料は、国民生活に関わりの深い産業への⻑期資金としても投融資され、
国民生活の向上や日本経済の発展に貢献しています。
このように、生命保険や傷害疾病定額保険は社会的にみても大いに意義あるものと認められ、国として
も生命保険や傷害疾病定額保険の普及・発展を奨励しており、こうした理由から、生命保険や傷害疾病
定額保険に対して種々の税法上の特典が与えられています。
なお、税法上の取扱いは、個人と法人で異なりますが、ここでは税金の基礎知識として、個人の契約に
ついて説明することにします。
1.死亡保険金と税金
生命保険や傷害疾病定額保険の死亡保険金を受け取った場合は、所得税、相続税、贈与税のうちい
ずれかの税の課税対象となりますが、誰が保険料を負担し、誰が死亡保険金を受け取ったか、また、
被保険者は誰であったかによって、次の表のように異なります。
【保険金と課税関係】
保険金
保険契約者
被保険者
保険金受取人
対象となる税金の種類
夫
夫
相続人
相続税(保険金非課税の特典あり)
亡
夫
夫
相続人以外の人
相続税(保険金非課税の特典なし)
保険金
夫
妻
夫
所得税(一時所得)
夫
妻
子
贈与税
死
(保険料負担者)
(1)所得税の課税対象となる場合
保険契約者と保険金受取人が同一人の保険契約では、支払われた死亡保険金は一時所得となり、
所得税の課税対象となります。
死亡保険金から、正味払込保険料を差し引き、さらに、一時所得の特別控除額(50万円)を差
し引いた金額が一時所得となります。
一時所得=(死亡保険金-正味払込保険料)-特別控除額
なお、課税対象となるのは、一時所得の金額の2分の1です。
★86★
一時所得となることによって特別控除の適用があり、さらにその金額の2分の1が非課税にな
ることなど、税法上優遇されています。保険金受取人を決める場合は、十分説明することが必
要です。
保険契約者と被保険者が同一人の保険契約で死亡保険金が支払われた場合、その保険金は相続
税の課税対象となります。ただし、保険金受取人が相続人の場合は、各相続人の実際の受取金
額に関係なく、 500万円×法定相続人(注)の数
までの金額が非課税となります。
(注)相続放棄した相続人を含みます。
税対象となりますが、この場合には、保険金に対する非課税の特典はありません。したがって、
死亡保険金の受取人は、相続人であることが税法上有利だといえます。
(3)贈与税の課税対象となる場合
生前に自分の財産を無償で他の人に与えることを「贈与」といいます。したがって、保険契約
者の生存中に保険契約者以外の人が死亡保険金を受け取った場合は、贈与税の課税対象となり
ます。
つまり、保険契約者・被保険者・保険金受取人がそれぞれ異なる生命保険契約などの場合、死
亡保険金には贈与税が課税されます(前ページの1.死亡保険金と税金およびP.90の1.損害
保険金と税金の表内を参照)。
贈与税の課税対象となる金額は、死亡保険金から、基礎控除額を差し引いた金額となります。
贈与税の課税対象となる金額=死亡保険金-基礎控除額
贈与税の基礎控除額は、贈与額が110万円までの場合はその全額、110万円を超える場合は一律
110万円となります。
参
考
親(被相続人)から子である推定相続人(※)に財産を贈与した場合、贈与税相当額を相続
税額から控除することができる「相続時精算課税制度」があります。この制度を選択する
と贈与財産は2,500万円までは非課税となり非課税限度額を超える部分については税率
20%をかけた額が課税されます。
※推定相続人とは
相続人という場合は、相続が開始した後の相続人を意味しますが、相続が開始する前の段階、つまり、
まだ被相続人が死亡していない段階で、被相続人が死亡したときに、第一順位で相続人になる資格を有
している者(たとえば、配偶者と子、子がいない場合の親、子も親もいない場合の兄弟姉妹)を推定相
続人といいます。相続が開始しても、必ず相続人になるかどうかがはっきりしない、たんに相続人にな
る可能性がある第二順位者や第三順位者は推定相続人とはいいません。
★87★
第2章 保険と税金
なお、保険契約者と被保険者が同一人で、相続人でない者が受け取る死亡保険金も相続税の課
第5編 保険の周辺知識
(2)相続税の課税対象となる場合
2.満期保険金と税金(少額短期保険業者の商品は該当しません)
保険契約者と保険金受取人が同一人で、生命保険などの満期保険金を保険契約者が受け取った場合
は、一時所得となり、所得税の課税対象となります。
保険契約者と保険金受取人が別人で、生命保険などの満期保険金を保険契約者以外の人が受け取っ
た場合は、贈与税の課税対象となります。
(注)保険期間5年以下の一時払養老保険などについては、満期保険金などと既払保険料との差額に対して利子所
得同様の課税方式がとられ、一律20%の源泉分離課税となっています。
3.給付金と税金
生命保険や傷害疾病定額保険の高度障害保険金(給付金)、障害給付金、入院給付金などは、その
支払いを受けた者が、身体に傷害を受けた者(被保険者)またはその配偶者や直系血族、あるいは
生計を一にするその他の親族であるときは、非課税となります。
これは、こうした保険金や給付金が、ケガをしたり⻑期に入院した場合の経済的保障に役立ってい
るからです。
★88★
参
考
保険料と税金
生命保険や傷害疾病定額保険(傷害保険を除きます)を契約して保険料を支払うと、その支払
保険料に応じて、一定の額がその年の保険契約者(保険料負担者)の所得から控除されます。
これを生命保険料控除といい、その分だけ課税所得が少なくなり、所得税と住民税が軽減され
ます。
生命保険料控除には、一般の生命保険料控除と個人年金保険料にかかる控除があります。
なお、少額短期保険業者の商品には、税法上の保険料控除は適用されません。
生命保険料控除の対象となる契約は、保険金などの受取人が、本人または配偶者もしくはその
他の親族となっている契約です。
(3)生命保険料控除の対象となる保険料
その年の1月1日から12月31日までに払込まれた保険料で、社員(契約者)配当金を差し引い
た金額が対象となります。
保険料-配当金=正味払込保険料・・・・・・(生命保険料控除の対象となる保険料)
なお、約款上、配当金で保険金を買増しする場合や、配当金の支払方法が積立(据置)で途中
引き出しができない場合は、保険料がそのまま対象となります。
また、(自動)振替貸付の保険料も、正常に払込まれたものと同様に対象となります。
(4)控除される金額
2010(平成22)年の税制改正により、2012(平成24)年1月1日以後に締結した保険契約につ
いては新しい保険料控除制度が適用されることになりました。したがって、生命保険料控除制
度は、2011(平成23)年12月31日以前に締結した保険契約に適用されるもの(「旧制度」とい
います)と、2012(平成24)年1月1日以後に締結した保険契約に適用されるもの(「新制度」
といいます)との2本立てになります。なお、2011(平成23)年12月31日以前に締結された生
命保険契約について、2012(平成24)年1月1日以後に更新や特約中途付帯(「更新等」とい
います)を行った場合には、当該契約について更新等の日以後の保険料に対して新制度が適用
されます。
■各制度における控除限度額
<旧制度>
全体
(所得税 100,000円限度)
(住民税
70,000円限度)
①一般生命保険料控除
(所得税 50,000円限度)
(住民税 35,000円限度)
②個人年金保険料控除
(所得税 50,000円限度)
(住民税 35,000円限度)
<新制度>
全体
(所得税 120,000円限度)
(住民税
70,000円限度)
①一般生命保険料控除
(所得税 40,000円限度)
(住民税 28,000円限度)
②個人年金保険料控除
(所得税 40,000円限度)
(住民税 28,000円限度)
③介護医療保険料控除
(所得税 40,000円限度)
(住民税 28,000円限度)
※住民税については、2013(平成25)年以降納付分より適用
★89★
第2章 保険と税金
(2)生命保険料控除の対象となる契約
第5編 保険の周辺知識
(1)生命保険料控除
ステップ
2
損害保険商品の保険金と税金
少額短期保険業者や損害保険会社は、保険法で規定する「損害保険(傷害疾病損害保険を含みます)」
と「傷害疾病定額保険」に分類される保険商品を取扱います。
保険契約の締結により、保険契約者は保険料を払込み、少額短期保険業者や損害保険会社は保険金を支
払います。
この金銭のやり取りに対して、さまざまな税金の問題が生じます。また、社会生活上、たいへん重要な
役割を果たしている損害保険や傷害疾病定額保険については、税法上いろいろな優遇策が与えられてい
ます。
なお、税法上の取扱いは、個人と法人で異なりますが、ここでは税金の基礎知識として、個人の契約に
ついて説明することにします。
1.損害保険金と税金
「モノ」に損害が生じたことにより支払われる保険金や被保険者が損害賠償の責任を負うことによ
って生ずることのある損害をてん補する責任保険契約の保険金は、利得が生じないため、原則とし
て非課税となります。ただし、傷害疾病定額保険のうち傷害保険や、自動車保険(人身傷害補償保
険・搭乗者傷害保険・自損事故保険)における死亡保険金は、所得税、相続税または贈与税の課税
対象となります。基本的には、生命保険の死亡保険金と同じ取り扱いになります。
※傷害疾病定額保険の後遺障害保険金、入院保険金、通院保険金などは、利得が生じないため、原
則として非課税となります。
【死亡保険金と税金】(保険金を個人が受け取る場合)
傷害保険および自動車保険(人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険・自損事故保険)により支払われ
る死亡保険金は、誰が保険料を負担し、誰が保険金を受け取ったか、被保険者は誰であったかによ
って下表のとおり課税方法が異なります。
保険契約者
個人
個人
個人
個人
被保険者
保険金受取人
個人
個人の相続人
(保険契約者)
個人
第三者
(保険契約者)
課税関係
相続税
(保険金非課税の特典あり)
相続税
(保険金非課税の特典なし)
第三者
個人
所得税
(保険契約者以外)
(保険契約者)
(一時所得)
第三者の相続人
贈与税
第三者
(保険契約者、保険金受取人以外)
★90★
参
考
保険料と税金(保険料を個人が支払う場合)
控除または生命保険料控除を受けることにより、支払った保険料の一定額をその年の所得から控除
し、所得税と住民税を軽減することができます。
ここでは、所得税について説明することにします。
(注1)2006(平成18)年の税制改正において、損害保険料控除は改組され、地震保険料控除となりました。
(所得
税は2007(平成19)年分以降、個人住民税は2008(平成20)年度分以降適用されています。)
【地震保険料控除】
2007(平成19)年1月1日以降、本人等が所有し、常時居住している家屋または生活用動産を保
険の対象とする地震保険契約の保険料を支払った場合、保険契約者は地震保険料控除として、最
高50,000円を所得金額から控除することができます。
○経過措置
下記に定める積立型火災保険および積立型傷害保険のうち、契約の締結日および保険の始期日
が2006(平成18)年12月31日以前の「⻑期の損害保険契約」(保険期間が10年以上のもので、
かつ満期返戻金を支払うことになっている積立型火災保険および積立型傷害保険)で、2007(平
成19)年1月1日以降も当該契約等の変更をしていない保険契約に限り、2007(平成19)年1
月1日以降も当該保険契約の満期日まで、毎年最高15,000円を、所得金額から控除することが
できます。ただし、地震保険契約と⻑期の損害保険契約の両方がある場合には、合算して50,000
円が限度となります。
区
分
家屋または生活用動産
要
件
本人等が所有し、常時居住している家屋または
生活用動産を保険の対象とする損害保険契約
身体の傷害
本人等の身体の傷害に基因して保険金が支払
われる傷害疾病定額保険契約
★91★
保険の種類
積立型火災保険
積立型傷害保険
第2章 保険と税金
(注2)少額短期保険業者の商品には、税法上の保険料控除は適用されません。
第5編 保険の周辺知識
地震保険や傷害疾病定額保険(傷害保険を除きます)を締結した場合、保険契約者は、地震保険料
第3章
ステップ
1
少額短期保険業を取り巻く業界
共済(JA共済連・全労済・全国生協連)
1.共済事業
共済事業とは、特定の職業・職種に従事する人や職場に働く人、あるいは特定の地域に居住する人
等が加入する協同組合等の団体が、その団体の構成員の福利厚生または経済的地位の安定・向上の
ために、構成員より共済掛金の払込みを受け、災害や不幸の発生に際し、共済金の支払いを行う相
互扶助制度に基づく事業をいいます。つまり、共済事業は協同組合等が保険のしくみを使って行う
保障事業ということができます。
この共済事業は、各種の協同組合のほか、地方公共団体、労働組合などによって行われています。
2.主な共済事業を実施している団体の業務
共済事業を実施している団体はさまざまですが、ここでは協同組合共済について、全国共済農業協
同組合連合会(JA共済連)と全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)・全国生活協同組合
連合会(全国生協連)を例に挙げて説明します。
(1)全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)
農業協同組合(農協)は、農業生産力の増進と農業者の経済的・社会的地位の向上を図ること
を目的とする農業者による協同組織であり、営利を目的とせず、共済事業のほかに販売・購買
事業、信用事業、営農・生活指導等を行っています。農協の行う事業は、農業協同組合(JA)
および全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)の2段階制により機能の分担が図られてい
ます。
JA共済連は、農林水産省・各都道府県の監督のもとに、原則として農協(JA)の組合員と
その家族を対象に事業を行っています。
(2)消費生活協同組合(全労済・県民共済等)
消費生活協同組合(生協)は、協同互助の精神に基づき、組合員の生活の文化的および経済的
な改善・向上を図ることを目的とする協同組合組織であり、営利を目的とせず、共済事業のほ
かに購買事業、利用事業等を行っています。生協は、厚生労働省・各都道府県の監督のもと、
組合員を対象に事業を行っています。
なお、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)は、共済事業を実施する代表的な生協組
織です。その組織は、地域生協である単位生協(47会員)
、職域生協である単産共済(8会員)
と生協連合会(2会員)により構成されています。
★92★
【主な共済商品】
JA共済
全労済
全国生協連(県民共済)
・こくみん共済
・生命共済
・医療共済
・新せいめい共済
・火災共済
・養老生命共済
・新総合医療共済
・予定利率変動型年金共済
・ねんきん共済
・建物更生共済
・団体生命共済
・自動車共済
・マイカー共済
・自賠責共済
・自賠責共済
・傷害共済
・火災共済
など
・自然災害共済
★93★
など
第3章 少額短期保険業を取り巻く業界
・火災共済
など
第5編 保険の周辺知識
・終身共済
理 解 度 チ ェ ッ ク テ ス ト
テキストの理解度をチェックしてみましょう。
正解の場合はチェック欄をチェック。間違った場合は再度チャレンジしましょう。
理解度テスト1
「保険の周辺知識」に関する下記の文章のうち、正しいものには○印を、誤っているものには×印を解
答欄に記入してください。
1.民法上の不法行為責任とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵
害した者が、これによって生じた損害について、被害者に賠償する責任のことをいいます。
2.自宅からの失火により他人の家に延焼損害を与えてしまった場合には、民法の不法行為に関する規
定に優先して「失火責任法」が適用されるため、その失火が「重過失」によるときでも、損害賠償
責任は発生しません。
3.被相続人の配偶者は、子の有無にかかわらず、常に相続人となります。
4.相続の承認の方法の1つである限定承認とは、相続財産の範囲内で債務を弁済する方法です。
解答欄
1
2
3
4
チェック欄
(答:1→○
2→×
3→○
4→○)
理解度テスト2
「保険の周辺知識」に関する下記の文章のうち、正しいものには○印を、誤っているものには×印を解
答欄に記入してください。
1.債務不履行責任とは、契約の当事者である債務者が自分の責任で契約上の義務を果たさなかった場
合、債務者が債権者に対し、その損害を賠償する責任のことをいいます。
2.相続人は、被相続人の財産上の権利・義務を相続するかしないかは、自由に決めることはできませ
ん。
3.相続の放棄をした場合、相続財産も受け継がないし、債務も負担しないことになります。
4.共済事業とは、特定の職業・職種に従事する人や職場に働く人、あるいは特定の地域に居住する人
等が加入する協同組合等の団体が、構成員の福利厚生または経済的地位の安定・向上のために、構
成員より共済掛金の払込みを受け、災害や不幸の発生に際し、共済金の支払いを行う相互扶助制度
に基づく事業をいいます。
解答欄
1
2
3
4
チェック欄
(答:1→○
★94★
2→×
3→○
4→○)
★95★
保険に関する用語解説
保険に関する用語解説
用
語
解
説
保険業法では、保険を「生命保険(第一分野の保険)」「損害保険(第ニ分野
の保険)」「傷害疾病保険(第三分野の保険)」の三つに大別しています。
一方、保険法は「傷害疾病保険」を「傷害疾病定額保険」と「傷害疾病損害
生命保険
・
損害保険
・
傷害疾病定額保険
保険」に区分し、保険を「生命保険」
「損害保険(傷害疾病損害保険を含みま
す)」「傷害疾病定額保険」に分類し、規定しています。
「生命保険」とは、人の生存または死亡に関して契約時に約定された額を保
険金として支払う「定額払い」の保険のことをいいます。
「損害保険」とは、偶然の事故によって生じた実際の損害額に応じて保険金
を支払う「損害てん補」の保険のことをいいます。
「傷害疾病定額保険」とは、人の傷害疾病による死亡・後遺障害・治療等に
対し、契約時に約定された金額を保険金として支払う「定額払い」の保険の
ことをいいます。
保険契約の当事者のうち、保険金支払いの対象となる保険事故または給付事
保険者
由が生じたときに保険金の支払義務を負う者のことをいい、少額短期保険業
者などの保険業者がこれにあたります。
保険契約者
保険契約の当事者のうち、保険業者に自分の名前で保険契約の申込みをし、
保険契約を締結する者のことをいい、保険料の支払義務を負います。
損害保険契約における被保険者とは、保険事故の発生によって経済的損失を
被る可能性のある者のことをいい、保険事故による損害が発生した場合、保
険金を受け取る権利を有します。
生命保険契約における被保険者とは、その者の死亡または生存に関し保険者
被保険者
が保険給付を行うこととなる保険契約の対象となる者のことをいいます。ま
た、傷害疾病定額保険契約における被保険者とは、傷害疾病により保険契約
の対象となる者のことをいい、必ずしも損害保険契約のように、被保険者が
保険金を受け取る権利を有することを意味していません。
(注)保険契約者と被保険者が異なる生命保険契約(死亡保険契約)および傷害疾病定額
保険契約(傷害疾病による死亡保険契約)については、被保険者の同意が必要です。
保険金受取人
第三者のためにする
保険契約
生命保険契約または傷害疾病定額保険契約において、保険金の支払いを受け
るべき者をいいます。
損害保険契約では、保険契約者と被保険者の異なる契約をいい、生命保険契
約・傷害疾病定額保険契約では、保険契約者と保険金受取人の異なる契約の
ことをいいます。
損害保険契約において、保険事故によって損害が発生する可能性のある保険
保険の対象
(保険の目的物)
の目的物のことをいいます。例えば、火災保険における建物や家財などがこ
れにあたります。
生命保険契約や傷害疾病定額保険契約では、保険の対象は被保険者です。
保険金
保険事故または給付事由が発生したときに、保険契約に基づいて保険業者が
被保険者または保険金受取人に支払う金銭のことをいいます。
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用
語
解
説
損害保険契約では、契約時に定められた保険金支払いの限度額のことをいい
保険金額
ます。生命保険契約および傷害疾病定額保険契約では、
「保険給付の額」とい
い、契約時に定められた金額が保険金として定額給付されます。
保険料
保険料率
保険期間
保障(補償)の対価として、保険契約者が保険契約に基づいて保険業者に支
払う金銭のことをいいます。
保険金額に対する保険料の割合をいい、
「保険料」は、通常「保険金額」に「保
険料率」を乗じて算出されます。
保険業者が保険契約により保障(補償)の責任を負う期間のことをいいます。
「保険事故」とは、損害保険契約では、保険者が保険金支払義務を負う損害
を発生させる「偶然の事故」をいい、生命保険契約では被保険者の「死亡」
保険事故・給付事由
または「一定時期における生存」をいいます。
なお、傷害疾病定額保険契約では、傷害疾病自体は保険事故ではなく、傷害
疾病による死亡・後遺障害・要介護・手術・入院・通院等を「給付事由」と
いいます。
保険約款に定められた保険金が支払われない事由のことをいいます。
免責事由
保険業者は、保険事故または給付事由が発生した場合には保険契約に基づい
て保険金を支払う義務を負っていますが、この免責事由に該当するときは、
保険金支払義務を免れます。
保険契約締結時に、保険契約者または被保険者が、保険業者に対して、危険
告知義務
に関する重要な事項のうち、保険業者が求める「告知事項」について、事実
を告げなければならない義務のことをいいます。
保険契約締結後に、保険業者が契約時に求めた告知事項について変更(危険
通知義務
の増加)があった場合、保険契約者または被保険者が、遅滞なく、保険業者
に対してその事実を通知しなければならない義務のことをいいます。
保険料支払義務
保険契約の保障(補償)の対価として、保険業者に対して保険料を支払わな
ければならない保険契約者の義務のことをいいます。
保険業者が、保険契約の内容や条件をあらかじめ定型的に定めた契約条項の
保険約款
ことをいいます。保険約款には、一般的な契約内容を定めた「普通保険約款」
と、その内容を追加・変更する「特約」とがあります。
コンプライアンス
保険募集
一般的に「法令等の遵守」という意味で用いられています。
保険契約の締結の代理または媒介を行うことをいいます。
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用
語
解
説
「代理」とは、保険業者を代理して保険業者のために保険契約を締結するこ
代理と媒介
とをいいます。
これに対し「媒介」とは、保険業者と保険契約者との間に立って保険契約の
締結に向けて仲介・斡旋することをいいます。
クーリング・オフ制度
申込みの撤回
保険契約の申込みをした者または保険契約者が一定の期間内に保険契約の申
込みの撤回または解除を行うことができる制度のことをいいます。
「申込みの撤回」とは、契約の申込み(意思表⺬)をした者が、契約が成立
する前にその意思表⺬の効果を将来に向かって消滅させることをいいます。
「取消し」とは、詐欺・強迫によって契約を締結した場合など、一定の事由に
基づき、契約当事者の一方が、契約締結後に相手方に取消しの意思表⺬を行
い、いったん有効に成立した契約の効力を契約締結時にさかのぼって消滅さ
取消し・無効
せることをいいます。
「無効」とは、契約締結に際し、公序良俗に反する事項を目的とする契約の締
結など、法律行為や意思表⺬がその有効要件を満たさないため、契約の効力が
始めから生じないことをいいます。当事者の意思表⺬は必要ありません。
「失効」とは、保険契約が保険期間の中途で効力を失うことをいいます。た
とえば、保険料の払込猶予期間を経過しても保険料が払込まれない場合、保
険契約は失効します。契約が失効すると、保険事故または給付事由が発生し
ても保険金は支払われません。
失効・解除
「解除」とは、契約当事者の一方が、いったん成立した契約の効力を契約時
にさかのぼって消滅させることをいいます。しかし、保険契約の解除につい
ては、契約の効力は、契約解除時から将来に向かってのみ消滅します。ただ
し、告知義務違反・通知義務違反によって保険者が保険契約を解除した場合
には、契約の解除前に発生した保険事故による損害に対しては、原則として
保険金が支払われません。
モラルリスク
保険金目当ての放火・殺人や、保険事故・給付事由の偽装等による不正な保
険金請求など、保険契約が不正な目的に利用されることをいいます。
保険事故の発生によって被保険者が経済的損失を被る可能性のことをいいま
被保険利益
す。被保険利益は「金銭に見積もることができる利益」、つまり経済的利益で
なければなりません。
他の保険契約
保険契約申込書
保険証券
同じ保険の対象や同じ被保険者に付けられている当該保険契約以外の保険契
約のことをいいます。
保険契約申込みの証として保険契約者が署名または記名押印のうえ保険業者
に提出する書類をいいます。
保険契約の成立や契約内容などを証明するために保険業者が発行し、保険契
約者に交付する書類をいいます。
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用
語
保険料即収の
原則
保険料領収証
解
説
保険契約の締結と同時に保険料全額を保険契約者から領収しなければならな
い原則をいいます。
保険契約締結の際に、保険料領収の証として保険業者または少額短期保険募
集人が発行し、保険契約者に交付する書類をいいます。
「変更」とは、保険期間中に保険契約者等からの申出(請求)に基づき契約
変更・解約
内容を変更することをいいます。
「解約」とは、保険期間中に保険契約者の意思により、保険業者に申し出て
保険契約を取りやめることをいいます。
★99★
MEMO
★100★
少額短期保険募集人教育テキスト
2013(平成25)年4月版
2013(平成25)年4月発行
発行者
特定非営利活動法人
少額短期保険募集人研修機構
東京都中央区八丁堀3丁目12-8
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