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お酒の話

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お酒の話
2003/08
お酒の話
今年の全国新酒鑑
評会はあまり話題に
もならなかったよう
です。バイオ酵母が
主流のこの全国新酒
鑑評会に愛想をつか
した名醸藏の出品と
りやめ、大吟醸酒造
りに縁のなかった酒
蔵の受賞が相次ぐな
ど 、﹁金賞受賞﹂はま
るで﹁インチキ酒の
証明?﹂という雰囲
気。このかつての国
のお酒の最高研究機
関﹁国税庁醸造試験
場﹂も東京から広島
に移転し、独立行政
法人﹁酒類総合研究
所﹂となっています
が、ここわずか数年
でえらく評価を落と
したものです。と言
ってもその前の東京
の時代から香りプン
プンが主流でしたか
ら研究所の先生方の
責任とばかりも言え
ませんが 、、、
、ここで
はいまだに日本酒の
香水作りに熱中して
いる感があります。
今や業界の関心は
各国税局の開催する
﹁局の鑑評会﹂に向
けられています。以
前は全国新酒鑑評会
の前哨戦という一段
ランク下の鑑評会と
いう感じでしたが、
最近は中央︵国税庁
醸造試験場︶の全国
新酒鑑評会を気にす
ることがなくなった
せいでしょうか?各
鑑定官室長の判断で
独自の鑑評会が開催
され始めたようです。
﹁新酒鑑評会﹂を止
めて﹁秋の鑑評会﹂
に変更したところも
ありました。飲む時
期のお酒で評価しよ
うということです。
酒造業界に以前から
あった要望が実現さ
れ始めました。広島
県 、山 口 県、岡山県、
鳥取県、島根県を管
轄 す る﹁広 島 国 税 局﹂
では昨年は﹁春﹂と
﹁秋﹂に鑑評会を開
きましたが、今年は
﹁春﹂を中止、秋に
﹁吟 醸 酒 部 門 ﹂と﹁純
米酒部門﹂とで審査
と発表、さらに﹁純
米 酒 部 門 ﹂は﹁冷 や﹂
の審査はなしで﹁熱
燗﹂と﹁ぬる燗﹂で
の出品を求めて、味
のあるお燗酒を重要
視 。﹁吟醸酒部門﹂も
今はやりの香りプン
プンのカプロン酸吟
醸酒ではなく 、
﹁まと
もな吟醸酒﹂を重視
とか。まぁ実際に審
査結果を見なければ
なんとも言えません
が、建前とは違って
やはりカプロン酸吟
醸酒が多く受賞する
などということがな
け れ ば 良 い で す
が 、、、、
。宮城県、岩
手県、福島県、青森
県、秋田県、山形県
を統括する﹁仙台国
税局﹂も﹁秋﹂のみ
の開催を検討中と聞
こえてきています。
﹁まともなお酒の世
界﹂へと向かってい
る感じがします。
ところでこの春の
全国新酒鑑評会で面
白いことが起こりま
した。数年前から少
なからず注目を集め
始めた酒蔵がここで
﹁金賞﹂を受賞しま
した。ビルの中の十
坪くらいの広さの工
場で造ったお酒です 。
働いている人も2名 。
そういえば以前出会
った能登の酒蔵さん
が﹁酒って何人いれ
ば造れると思いま
す?﹂と質問 。
﹁う∼
ん ﹂﹁ 実 は ひ と り で 造
れるんですよ ﹂
﹁今年
はひとり入ったので
ずいぶんと楽でした 。
やはりものを渡した
り受けたりするのは
ふたりの方が楽です
か ら 、、、、﹂ と い う 会
話を思い出しました 。
前述の極小規模酒
蔵さんも同じような
現場なんでしょうが 、
違いは﹁金賞﹂受賞
だけではありません 。
使用した白米はわず
か200キログラム。
小さなタンク1本だ
けです。能登の極小
規模藏の造りと比べ
ても十分の一です。
どうやら新しい発想
の酒蔵の出現です。
これだけの生産量で
は採算がとれません 。
当然年間を通して製
造する﹁四季醸造﹂
で、いつでも生酒で
売るということです 。
冷房設備が整い夏で
も冬の気候が作れる
こととバイオ酵母で
香りプンプンの若い
人に好まれるお酒造
りが可能な時代が産
んだ酒造りです。生
で売るフランスワイ
ン﹁ボジョレーヌー
ボ﹂の日本版の通年
製造です。こんな動
きが加速すると、近
い将来、ビール会社
が﹁麦と米は兄弟で
す。こころを込めて
私たちが作りました ﹂
なんて言って生産に
乗り出すかもしれま
せん。なんたって日
本国中のコンビニや
スーパーに陳列棚を
しっかりもっている
のはビール会社だけ
ですから。そんな事
態になる前に﹁伝統
的な日本酒﹂を残す
た め に 酒 蔵 、販売店 、
消費者がひとりでも
多く目を覚ますこと 、
そして﹁まともな鑑
評会﹂が当たり前に
なることが必要です 。
時間はどれだけ残っ
ているのでしょう?
-1-
号
181
02/10-03/09
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