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ブラシレス DC モーター用「樹脂鉄心ローター」を開発
(リ本 No.0609) 2006 年 2 月 15 日 三菱電機株式会社 家電製品の省エネ化を可能にする、射出成形による新しいモーターコア製造技術 ブラシレス DC モーター用「樹脂鉄心ローター」を開発 三菱電機株式会社(執行役社長:野間口 有)は、エアコンや換気扇などの送風機に使う小出力ブラシレス DCモーター※1を高性能化する新技術として、世界で初めて、強磁性粉末複合樹脂(以下 樹脂鉄心材料)を射 出成形してバックヨーク※2を形成し、プラスチックマグネットを一体成形する「樹脂鉄心ローター」製造技術を開 発しました。この開発成果を応用することで、エアコンや換気扇などのさらなる省エネが可能となります。 ※1:DC(直流)モーターにおいて、永久磁石(マグネット)を回転子(ローター)とし、ブラシや整流子などの機械的接触部を取り 除いた高効率、高信頼性が特長のモーター ※2:磁束の漏れを防ぎマグネットの磁力を最大限に引き出すため、マグネットに取り付ける磁性部品 開発の背景 エアコン、冷蔵庫などの家電製品は、地球環境保全の観点からさらなる省エネ化が望まれており、今や圧縮 機にインバーター駆動のブラシレス DC モーターを搭載しない機種はまれなほどです。しかし、省エネが進んだ エアコンでも室内機や室外機のファンを回すモーターや、換気扇のモーターなど、送風用のモーターには低騒 音であることも求められるので、低騒音と省エネの両立が大きな課題になっています。 当社はモーターの固定子(ステーター)を製造する技術として、展開したステーターの鉄心に巻線してから丸 めることにより、モーターの性能と生産性を共に向上させる「ポキポキモータ」を 1993 年に開発し、各種の製品 に適用しています。今回、ブラシレス DC モーターのローターを改良することにより、低騒音化しつつ、モーター 性能をさらに向上できる新技術を開発しました。 主な開発成果 1.樹脂鉄心ローターの開発 従来のブラシレス DC モーターのローターはフェライトマグネットや希土類マグネットを用い、周方向に N 極と S 極が交互に並ぶ円筒形状をしています。しかしローター表面の磁束密度分布は周方向に滑らかでなく、N 極と S 極の間で磁束密度が急変する矩形状であることから、回転力(トルク)の脈動(リップル)を生じ、低騒音 と効率の両立を妨げる原因になっていました。当社は射出成形可能な樹脂鉄心材料を用いて、厚みを連続 的に変化させた外周のプラスチックマグネットの形状(偏肉形状)に合わせて、バックヨークを一体成形するこ とにより、磁極の中心に磁束を集中させると同時に、磁束分布を滑らかにすることに成功しました。これにより、 モーター性能の向上と同時に小型、軽量化を実現しました。 2.モータ性能の向上 (1)高効率化 :磁極の中心に磁束を集中させることにより高めた磁力で、モーターの高効率化を可能にしま した。これにより、エアコンのファンモーターにおいて、モーター効率 ※3 を従来の 84%から 87%に向上できました。モーター損失※4 で比較すると 20%の改善です。 ※3:モーター効率=[モーター出力(仕事率)]/[モーター入力(消費電力)] ※4:モーター損失=[モーター入力(消費電力)]-[モーター出力(仕事率)] (2)モーターの:一般的にモーター効率を上げるためには強力な希土類マグネットを使いますが、同時にトル 低騒音化 クリップルが増えるので、製品に組み込んだ場合、従来のローター構造では騒音が 10dB 以 上大きくなることがあり、強力な磁石が使えず、モーター効率を最大限に引き出せませんでし た。樹脂鉄心ローターでは、表面の磁束密度の分布が滑らかなため、強力な磁石により、モ ーター効率を上げても騒音を現行同等レベル以下に抑えることができました。 (3)モーターの:樹脂鉄心材料を用いたバックヨークでは、ステーターの反磁界が小さくなり、電流を増しても 高出力化 マグネットの磁力を弱めてしまうことがないため、トルクを上げることができます。これにより、モ ーター出力を約 30%向上することができ、小型で高出力のモーターを作ることができます。 3.端材を自工程で再利用 プレス加工して製造する従来の電磁鋼板バックヨークでは、必ず端材(スクラップ)が発生しますが、樹脂鉄 心材料の場合は、端材を射出成形工程で再利用ができるため、材料を無駄にすることがありません。省資源 性に優れているのはもちろん、自己循環型の再利用という利点があります。 今後の展開 ルームエアコン、換気扇などの送風機用モーターに順次搭載を進めていきます。 特許件数 報道関係からの お問い合わせ先 国内 6 件出願中。 〒100-8310 東京都千代田区丸の内二丁目 7 番 3 号 電話 03-3218-2359 FAX03-3218-2431 三菱電機株式会社 広報部 1 補足説明 1.樹脂鉄心ローター搭載、ブラシレス DC モーターの構造 樹脂鉄心バックヨーク ステーター 巻線 希土類プラスチックマグネット 図 1 モーター構成図 2.従来ローターと樹脂鉄心ローター 外周のプラスチックマグネットの厚みを連続的に変化させた偏肉形状により、磁極の中心(図中“N 極”、 “S 極”表示位置)に磁束を集中させると同時に、磁束分布を滑らかにできるので、プラスチックマグネッ トの特性を最大限に引き出して、モーターの高性能化が可能になりますが、従来ローターではこの形 状に密着する精度でバックヨークを加工することが難しいため、偏肉形状マグネットのローターは実用 化されていませんでした。 樹脂鉄心ローターでは、射出成形可能な樹脂鉄心材料を用いて、バックヨークを一体成形することによ り、偏肉マグネットの形状に合わせて、容易にローターを構成することができます。 従来ローター 樹脂鉄心ローター 電磁鋼板バックヨーク 樹脂鉄心バックヨーク N 外観 S N N S S 希土類プラスチックマグネット (磁極中心) S極 S N 希土類プラスチックマグネット(偏肉形状) (磁極中心) S極 マグネット 偏肉マグネット 断面図 N極 (磁極中心) N 極(磁極中心) バックヨーク バックヨーク 電圧 電圧 誘起電圧波形 時間 時間 2 誘起電圧は、ローターの 回転によるステーター側 の発電電位をあらわしま す。磁束密度分布を滑ら かにすることによって、誘 起電圧波形が正弦状に なり、トルクリップルなど の加振力が低減でき、騒 音が改善できます。