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0200081-8201
“The Kynge Had a Demyng of Hit”― Arthur と妻の不倫
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“The Kynge Had a Demyng of Hit”
― Arthur と妻の不倫
秋 篠 憲 一
はじめに
14 世紀フランスでつくられた The Vulgate Cycle の Lancelot の写本(BN fr.
16999, Bibliothèque Nationale, Paris)の中に興味深い挿し絵がある。Lancelot
と Guinevere の不倫の恋を語る上できわめて有名な二人のはじめてのキス
シーンを描いている。1 絵の左側に2人,右側に5人の人物がいる。左の二
人は Lancelot と Guinevere, 右の人物の中には王冠をかぶった Arthur が二人
に視線を注いでいる。面白いのは,彼以外に二人の人物が,同じように,キ
スしようとする二人を見ていることである。Peggy McCracken は“Arthur is
absent in the textual description of the scene; the illuminator seems to have added
the suggestion that Arthur knew about the adulterous liaison from its originating
moment.”(105)と述べている。果して,この写本の彩飾師が,Arthurが王妃の
不義をそもそもはじめから知っていたことを示すためにこれを描いたのであ
ろうか。Lancelot では,王妃と Lancelot は王から遠く離れたところではじめ
てキスをするわけで,わざわざこの挿し絵のように注視する王を描きこんだ
ことは,興味深い。またMcCracken は言及していないが,王の他にも王妃の
不倫を知る者たちが宮廷にはいることをこの絵は表しているのである。
Arthur 以外に二人の人物が Lancelot と王妃を見ている。実際二人の仲を取り
持ったのは Lancelotを愛する騎士 Galehaut であり,また二人のキスについて
は,近くで Lancelot の王妃への愛の告白を聞いている Lady Malehaut も知っ
ている。Lady Malehaut は Lancelot を幽閉したときに彼に恋心を抱き,彼の
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Lancelot. BN fr. 16999, fol. 88 v. Bibliothèque Nationale, Paris.
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武勲は誰かへの愛ゆえと思い,その相手に興味を持っている。作品では,
“Seeing that the knight [Lancelot] dared do no more, the queen took him by the chin
and gave him a prolonged kiss in front of Galehaut, so that the lady of Malehaut
knew that she was kissing him.”(Lancelot-Grail II 146)と語られる。
拙論ではSir Thomas Malory 作のLe Morte Darthurをとりあげるが,Malory
では Lancelot と Guinevere のはじめてのキスとシーンは語られず,特に作品
の前半では二人の愛については他の人物たちの言葉を通して間接的に描かれ
る。2 それではいったい Arthur はどのようにして己が妻の不倫を知るように
なるのか。聖杯探求のあと,Lancelotは聖杯探求中にした隠者すなわち神へ
の約束(王妃との不義の関係を絶つ)を忘れ, “. . . they loved togydirs more
hotter than they dud toforehonde.”(Works 1045)と描かれるように,彼と王妃の
不倫の愛は宮廷のうわさになり,Gawain の弟の Agravain がその姦通につい
て直々に Arthur に告げることになる。その時語り手は “ . . . the kynge had a
demyng of hit. . . .”(Works 1163)と述べる。「王はそのことについて察してい
た」のである。また,R. M. Lumiansky は “ . . . sir Launcelot tolde the kynge of
hys aventures that befelle hym syne he departed.”(Works 1020)を根拠に,Lancelot
は Arthur に聖杯探求での隠者への不倫の罪の告白まで語ったと解釈し,
It is difficult to see how Lancelot, in recounting fully his Grail adventures,
could conceal the adultery and its limiting effects. Surely, when Lancelot
told of his interview with the first hermit (869-99), the King would have
understood that the Queen whom Lancelot had loved for years was Guenevere,
and that the hermit’s specifying of Lancelot’s old sin as lechery referred to
his adulterous relationship with Guenevere.
Malory must therefore have wanted us to realize, as we begin the seventh
division, that Arthur has thus learned of the earlier adultery between Lancelot
and Guenevere. . . . (Malory’s Originality 210)
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と論じる。果してそのようなことが言えるのか。
また,Wilfred L.Guerin は“Arthur’s knowledge or lack of knowledge of his
own cuckoldry is important for an estimate of him as a tragic character. His ‘demyng’
of the liaison (1163) is, in my understanding of Malory’s purpose, of long
standing.”(263)と述べ,Arthur の“demyng”について,その手がかりになるエ
ピソードとして,Tristram の盾,Mark 王の Arthur への手紙,Lancelot の狂気
をあげているが,残念ながら,それぞれのエピソードについて詳細な分析を
していない。この論文ではAgravainによる王妃の告発の前に語られる上記の
エピソードを詳しく論じながら,Arthur の“demyng”について,すなわちど
のようにして王が妻と最も信頼する家臣であるLancelotの愛に気づくように
なるのかについて考察してみたい。
I Tristram の盾と Mark 王の手紙
Malory の Le Morte Darthur において,Arthur が Guinevere と結婚するとき,
Merlinから警告される。 “. . . M[e]rlyon warned the kyng covertly that Gwenyver
was nat holsom for hym to take to wyff. For he warned hym that Launcelot scholde
love hir, and sche hym agayne, . . .”(Works 97). ちなみに Malory の source であ
るLa Suite du Merlinでは,Merlinは, “. . . you speak the truth about the maiden’s
beauty, for she is the most beautiful I know at this time in the world. But if you
didn’t already love her, I would have you take another, whom I would praise to you
more highly, for such great beauty as she has can sometimes be a hindrance.”(LancelotGrail IV 222)とあいまいな言い方にとどめ,Malory にあるようなあからさま
な表現を避ける。Merlin の言う“a hindrance”こそは,Vinaver が言うように
“the misfortune that Lancelot’s love for her will bring upon Arthur”(Works 1324)な
のであるが,物語では“The king did not then understand what Merlin said to him,
for it was too obscure, . . . .”(Lancelot-Grail IV 222)と語られる。Malory では,
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Arthur は,名前まであげて,これから妻となる Guinevere の不倫を警告され
る。予言者Merlinの警告がどれほど王の心に残ったのか,このあとのプロッ
トの展開がそれを明らかにしてくれる。
次に Malory では Tristram の盾が登場する(Caxton 版第9巻 40 章)
。この
盾は,Arthur の異父姉 Morgan が Arthur に Lancelot と妻の姦通を気づかせる
ため,また己が愛に報いてくれないLancelotに復讐するためにつくったもの
である。ちなみに,Caxton 版第8巻 34 章では,Lancelot と王妃を侮辱する
ため,王の宮廷の二人の騎士に,金の飾りのついた角の杯を王のもとにとど
けるよう命じる。だが,Lamorakがその騎士達に途中で出会い,その杯をMark
王の宮廷に持っていかせ,Mark 王の妻 Iseult は夫の甥である Tristram との不
倫ゆえにその杯から酒をのむことができない。この杯は,貞節な妻ならその
杯から酒を飲めるという不思議なものだったのである。Morganは王が開催す
る馬上槍試合に参加するTristramにこれを持って行かせる。その盾には次の
ような図柄が描かれている。 “. . . the fylde was gouldes with a kynge and a quene
therein paynted, and a knyght stondynge aboven them with hys one foote standynge
uppon the kynges hede and the othir uppon the quenys hede”(Works 554). Tristram
は図柄の意味について尋ねるが,“Hit signyfieth kynge Arthure and que[ne]
Gwenyver, and a knyght that holdith them bothe in bondage and in servage.”(Works
554)と彼女は答える。しかし, “a knyght”がだれであるかについては,聞か
れても明らかにしない。
ここで重要なのは,この時点でMorgantが王妃の不倫について気づいてい
ることである。実はこのエピソードの前に(Caxton版第6巻3章)
,Lancelot
がMorganはじめ四人の女王に魔法をかけられ,とある城に連れていかれ,そ
のうちの一人の愛人になるよう迫られる。その時彼女らは, “. . . we know well
there can no lady have thy love but one, and that is quene Gwenyvere, and now thou
shalt hir love lose for ever, and she thyne.”(Works 257)と述べ,彼女たちがすで
に王妃の不倫について知っていることがあきらかにされる。 Lancelotは “. . .
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she is the treweste lady unto hir lorde lyvynge.”(Works 258)と王妃の潔白を主張
するが,二人の愛はすでに秘密のものではなくなっているのである。3
Tristram は例の盾を持って馬上槍試合に出場し,Arthur 王の眼前ですばら
しい活躍をする。その時の Arthur と Guinevere について, “And whan kynge
Arthure saw that shylde he mervayled gretly in what entent hit was made. But que[ne]
Gwenyver demed as hit was, wherefore she was hevy.”(Works 557)と述べられる。
ただちに王妃はその盾の図柄の意味を理解するのであるが,Arthurはただ不
思議がるばかりで,それがなんのために作られたのか理解できない。ちょう
どその時,Morganの侍女が姿を現し,王がその盾について述べたので,それ
がつくられたいきさつについて, “Sir kynge, wyte you well thys shylde was
ordayned for you, to warn you of youre shame and dishonoure that longith to you
and your quene.”(Works 557)と説明するが, “shame”と“dishonoure”がいかな
るものか明らかにしない。乙女が帰ったあと,王は悲しみ,怒り,その乙女
がどこから来たのかを尋ねるが,それに答えられるものはいない。一方
Guinevere は Lancelot の弟の Ector を呼び, “I wote well thys shylde was made
by Morgan le Fay in the dispite of me and of sir Launcelot, wherefore I drede me
sore leste I shall be distroyed.”(Works 558)と,ことのいきさつを鋭く見抜き身
の破滅を心配する。またその後華々しく活躍するTristramの盾をじっと見つ
める夫を見て,彼女は胸中不安を覚える。試合のあと,よほど盾のことが気
にかかるのか,王はTristramにその盾をどこで手に入れたを尋ねる。Tristram
は,Morganから与えられた事実だけを告げる。その盾を持っている理由につ
いて言わない Tristam に対して業を煮やした王は彼と闘い,人馬もろとも倒
されてしまう。もし予言者Merlinの警告の言葉を思い出していれば,その盾
の意味するところを理解する一助になったかもしれないが,実際はそのよう
にならなかったのである。
Arthur の妻の不倫に関してまた別の出来事が起こる(Caxton 版第 10 巻 2627 章)
。Arthur 王とはちがって,甥 Tristram と己が妻 Iseult との関係に強い
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疑惑“grete suspeccion”(Works 577)を抱く Mark 王は,ある日 Arthur に手紙
を送る。その手紙の内容については, “And to begyn, the kyngis lettirs spake
wondirly shorte unto kynge Arthur, and bade hym entermete with hymself and wyth
hys wyff, and of his knyghtes, for he was able to rule his wyff and his
knyghtes.”(Works 617)と描かれる。Mark は,おのれ自身と王妃,家臣の騎士
に注意怠りなければ彼らを御することが出来るとArthurに忠告するが,この
手紙は Arthur に対する皮肉でもある。実は,Mark は Guinevere にも手紙を
送り,その中には “shame by her and by sir Launcelot”(Works 617)が書かれて
あり,Mark がすでに Arthur にとって恥辱となる彼の妻の不倫について知っ
ていることが示される。Arthur は手紙を理解し,王妃と Lancelot の関係につ
いて述べたMorganの言葉を思い出しながら,考え込む。
(MaloryではMorgan
が具体的にどのようなことを Arthur に言ったかは語られない。)ただ王は,
Morgan が自分にとって敵であり,王妃と Lancelot をひどく憎んでいること
を思い合わせ,Mark の手紙を無視することになる。Merlin の警告に始まっ
て,Tristramの盾,Markの手紙と,三度にわたって妻の不倫について考える
機会を与えられるのであるが,Arthur はこれによって Mark のように己の妻
に疑念の目を向けることはない。Beroul の Le Roman de Tristan では「ああ,
神よ!愛を抱き続けて一年また一年,/ それが外に現われぬことがありえま
しょうか? / なぜなら,愛は隠しおおせるものではない。」(573-75)と語られ,
ふたりの恋人を陥れようとするMarkの卑劣な家来どもが,「甥御とイズー様
は愛し合っておりますぞ。 / およそその気になれば,誰にも分かること, / わ
れらはこれ以上の我慢はいたしかねます」(607-09)と主君に忠告するように,
愛は人の目にふれやすいものなのである。夫であるArthurは身近にいる妻の
不倫に気づいていないのか。
「その気になればだれにもわかること」
であれば
なぜそうしないのか。彼には妻より大事なものがあり,あえて妻の不倫を深
く追及しないのか。これについては,のちに考えてみたい。
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II Lancelot の狂気
聖杯城の主である Pelles の娘 Elaine に Galahad を孕ませた Lancelot は,宮
廷を訪れた Elaine とベッドをともにする(実は侍女の魔法によって)ことに
なり,Guinevere によって“false traytoure knyght”(Works 805)と罵られ,やむ
なく宮廷を去る。気が狂った彼は二年の間森の中をさまよい,そしてある時
Elaine のいる Corbenic に辿り着く。そこでは道化にまで身を落とし,ようや
くElaineによつて発見される。彼女は彼を聖杯の前に寝かせ,彼の狂気は聖
杯によって癒される。奇蹟が起こるのである。しかし,病い癒えても彼は
Arthur の宮廷にもどろうとはせず,Le Shyvalere Mafete (“the knyght that hath
trespassed”[Works 826])と名乗り,Joyus Ile (喜びの島)で生活することにな
る。
そして Lancelot は盾をつくらせるが,その盾は “a shylde all of sable, and a
quene crowned in the myddis of sylver, and a knyght clene armed knelynge afore
her”(Works 827)である。もちろん盾に描かれた王冠をつけた王妃はGuinevere
であり,その前で跪くのは Lancelot である。13 世紀に書かれたフランスの
La Suite du Merlin では, “. . . before her on his knees was a knight, fully armed,
who held up his clasped hands to her as if to plead for forgiveness.”(Lancelot-Grail
V 78)と語られ,また Lancelot では “. . . in the middle, where the boss should
have been, was painted a silver queen and a knight on his knees before her, as if he
were begging for mercy.”(Lancelot-Grail III 336)となっており,罪を犯した
(Elaine に Galahad を孕ませ,しかも再度彼女とベッドをともにすることで,
王妃を裏切った)騎士 Lancelot が愛する王妃の赦し,慈悲を求めている姿が
描かれていると解釈できる。この懺悔の盾をつくらせただけではなく,
Lancelot は,一日に一度は,主君 Arthur と愛する王妃がいる Logres の方角
を眺めて泣き崩れるのである。
ある日,Perceval と Ector が喜びの島にやって来る。Perceval と Lancelot は
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激しい闘いをするが,お互い相手がだれであるかが分かり,そのあとLancelot
は弟 Ector とも再会する。Lancelot は,弟から王妃の深い嘆きと Lancelot 捜
索のために彼女が二万ポンドもの費用を負担したこを聞かされ,宮廷に戻る
ことを決意する。弟の言葉によって,王妃の赦しと慈悲を確信するのである。
彼らは喜びの島を出発し,15日間の旅を経てCamelotに帰ってくる。王と
他の騎士たちは大いに喜び,Perceval とEctor は,Lancelotが宮廷を去ったあ
と狂気におちいり,Le Shyvalere Mafete と名乗り,また喜びの島での武勇ぶ
りについて語る。実はこのことは,Elaineが彼らに語ったものである。その
間の王妃の様子は “. . . quene Gwenyver wepte as she shulde have dyed. Than the
quene made hym grete chere.”(Works 832)と描かれる。
このあと Malory では Arthur と Lancelot の間で,以下のような Lancelot の
狂気についてのやりとりがある。これは Malory 独自の加筆であり,注目に
値する。
“A, Jesu!” seyde kynge Arthure, “I mervayle for what cause ye, sir Launcelot,
wente oute of youre mynde. For I and many othir deme hyt was for the love
of fayre Elayne, the doughtir of kynge Pelles, by whom ye ar noysed that ye
have gotyn a chylde, and hys name ys Galahad. And men sey that he shall do
many mervaylouse thyngys.”
“My lorde,” seyde sir Launcelot, “yf I ded ony foly I have that I
sought.”
And therewythall the kynge spake no more. (Works 832-33)
Arthur は Perceval と Ector の報告は聞いたが,それだけではなぜ Lancelot が
狂気におちいり,しかも彼が名乗った名前が示すどのような罪をかれが犯し
たのかが明らかではない。そこで,まず,狂気の原因がElaineへの愛なのか
どうか尋ねる。実際,Lancelot は Corbenic の Elaine のもとで聖杯によって病
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いをいやされ,しかも Lancelot が宮廷を去る前には Elaine がそこを訪れてい
たわけで,このような質問になるのかもしれない。
王の問いかけに Lancelot は “. . . yf I ded ony foly I have that I sought”ときわ
めてあいまいな返答をする。彼はどのような愚かな行為をしたのか,また彼
が得ようとしたものが何であるかを明らかにしない。La Suite du Merlinでは,
彼の持つ盾は“the sign of my misdeed”(Lancelot-Grail V 78)であり,この作品
の作者の盾の解釈は Malory にも適合し,その愚かな行為とは既述したよう
に王妃への裏切りである。そして彼が得ようとしたものは,その己が罪に対
する王妃の赦し,慈悲であり,それを彼は得たのである。まさか愛する王妃
の夫であり己が主君の眼前で,そのことをはっきり言うわけにはいかない。
そこでしかたなくあいまいな表現でごまかすのである。
では Arthur は Lancelot の言葉をどのように理解したのか。なぜか Arthur
は狂気の理由も,彼の名乗ったなぞめいた名前の由来についてもそれ以上問
いたださない。 “And therewythall the kynge spake no more.”は簡潔な描写なが
ら,王の複雑な内面を描き,いろいろなことをわれわれに問いかけてくる。
なぜ疑問を残したたかたちで会話を終えるのか。すでに論じた Merlin の警
告,Tristramの盾,Mark王の手紙からも,王にはその原因が己が妻にあると
いうことが心をかすめたのかもしれない。しかし家臣たちのいる前で
Lancelot に核心に迫る質問をぶつけるわけにはいかない。そこで Elaine のこ
とをそれとなく持ち出し,Lancelot の反応を見ようとしたのではないか。
Catherine Batt は“Arthur sees Galahad as ‘evidence’ of a love for Elaine worth the
forfeit of one’s rational faculties.”(123)と論じているが,私は Elaine への言及
は,一種の誘導尋問として使われたと解釈する。その結果は,Lancelotのあ
いまいな返答で,この時点ではじめて妻の不倫が疑念となってArthurの心に
残ることとなる。だが王にはこれ以上王妃のことで,自らの手で騎士に叙し
た最愛の家臣に恥辱を加える勇気はない。このあとMalory は,Lancelotの身
内のものすべては狂気の原因を知っていたと付け加えるが,4 Arthur の内面
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については一切描かない。しかしながら,主君と彼の最愛の家臣の緊迫した
やりとりは,王が最も恐れる真実を直感したことを伝えているとも言えよう。
III Agravain による王妃の不義の暴露
聖杯探求から無事 Lancelot は Arthur の宮廷にもどってくるが,Lumiansky は
すでに述べたように,Lancelotは王に,聖杯探求の中で隠者に対して為した,
「ある王妃」への不倫の罪の告白までも語ると解釈し,王はそれによって
Lancelotと王妃の罪深い愛を知ったと述べている。果してそのような解釈が
成り立つであろうか。Lancelotは確かに隠者に罪の告白はしているが,王妃
の名前は隠している。これに対して,Malory が典拠としたフランスの La
Queste del Saint Graal でははっきりと Guinevere の名前を明らかにする。隠
者に対して,あえて王妃の名前を隠したLancelotがその罪の告白まで王に報
告するとは考えられない。また,のちに,王妃がLancelotとの不倫の罪ゆえ
に処刑されるところを彼が救いだすのであるが,王妃を喜びの砦に匿い,あ
くまで “. . . take your quene unto youre good grace, for she ys both tru and
good.”(Works 1188)と王妃の潔白を王に主張する。この時 Lancelot はすでに
王妃と同衾していたことがわれわれ読者には知らされている。Lancelotが囚
人運送用にも使われる荷車に乗って誘拐された王妃の救出に向かう「荷車の
騎士」のエピソードでは,鉄格子まで破って,王妃とベッドをともにする彼
の姿が描かれている。彼は王妃の名誉を守るためならあえて嘘もつくのであ
る。従ってLumiansky の解釈には無理があり,聖杯探求直後のArthurは王妃
の不倫については,Lancelotの狂気のエピソードのところで既述したように,
疑念こそあれ,まだ確信は持ってはいない。
12 世紀フランスの Andreas Capellanus が “When made public love rarely
endures.”(185)と述べるように,不倫の愛にとって秘密は重要なものになる
が,王妃とLancelotの愛は今まで以上にはげしいものになる。そして宮廷で
は二人の愛の噂が広まり,Gawain 兄弟の一人である Agravain がその不倫を
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Arthur に暴露する。
The Vulgate Cycle の La Mort le Roi Artu では,Arthur は王妃の処刑を決定
する前に彼女の不義について三度警告を受ける。まずWinchesterの馬上槍試
合の時に,Agravainはその不倫について王に警告するが,王はそれを信じよ
うとしない。しかし,Lancelotが宮廷に残ることを知らされ,馬上槍試合を
見たいと言う王妃を宮廷に残し,Agravainの言ったことが本当かどうか確か
める。しかし Lanacelot が試合に参加したことが分かり,疑念は消える。
次に,Tanebourc での馬上槍試合からの帰途,偶然に王は異父姉である
Morgan の城で宿をとる。そして Morgan は王に,彼女が Lancelot を一年半
幽閉したときに Lancelot が描いた絵を見せる。実は,その絵には Lancelot と
王妃の愛が描かれていたのである。Morganから “It won’t take long . . . to catch
them together, provided people are vigilant.”(Lancelot-Grail IV 107)と言われ,
王は “. . . if they love each other sinfully, as you tell me, they’re found together
before the month has passed, provided Lancelot comes to court during that
time.”(Lancelot-Grail IV 107)と答える。しかしながら,宮廷に戻ったあと,
Lancelotが宮廷に一日しかいなかったこと知り,もし彼が王妃を愛している
ならそのまま宮廷に残っていたはずで,王は Morgan の城での出来事,彼女
の言葉が信じられなくなる。
三度目の警告は毒リンゴ事件のあとに起こる。この事件は,Gawainを毒殺
しようとしたある騎士のために,円卓の別の騎士が犠牲になり,王妃が無実
の罪をきせられ,危ういところをLancelotによって助けられるというもので
ある。まず “And if Lancelot had loved the queen before,he now loved her much
more, and she him; and they conducted themselves so indiscreetly that many of the
people there knew the truth beyond any doubt, and Sir Gawain himself realized it
clearly, as did all four of his brothers.”(Lancelot-Grail IV 118-19)と語られる。
そして Gawain 兄弟達が大声で話をしているところに王がやってきて,何の
話をしていたのかと,鞘から剣を抜いてまでして,Agravainに話の内容につ
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いて白状するように迫ったときに,再度彼の口から王妃の姦通を告げられる。
そして Agravain と Mordred に, “If you ever loved me, do whatever you must to
catch them in the act; and if I don’t take revenge as one should with a traitor, I’ll
never again wish to wear the crown.”(Lancelot-Grail IV 119)と述べる。二度に
わたる Agravain の警告と,一時は疑ったが,Morgan によって示された証拠
によって,王は不義を犯した二人への復讐を決意する。E. J. Burnsは“Because
Arthur has seen Lancelot’s secret depiction of his love for queen in the Salle aux
Images at Morgan’s castle, the cuckolded king devises a plot to catch the lovers.”(152)
と,Arthur の行動に対する Morgan の城での出来事の影響について論じてい
る。
Maloryでは,聖杯探求後のプロットの展開では,Winchesterの馬上槍試合
での Agravain による警告と Morgan の館のエピソードは省かれている。しか
しながら,Caxton 版 20 巻2章での Agravain による告発の前に注目すべき場
面がある。ある日,Lancelotへの片思いゆえに焦がれ死んだAstolatの乙女の
亡骸が彼女の遺言どおり舟で運ばれArthur王の宮廷に到着する。その乙女の
亡骸をまえにして Arthur と Guinevere そして Lancelot が乙女の死について言
葉を交わす。乙女にもっとやさしくしてあげたらよかったのにと,王妃は乙
女に同情の念を示すが,Lancelot は “I love nat to be constrayned to love, for
love muste only aryse of the harte selff, and nat by none constraynte.”(Works 1097)
と答える。さらに Arthur も “That ys trouth . . . and with many knyghtes love ys
fre in himselffe, and never woll be bonde; for where he ys bonden he lowsith
hymselff.”(Works 1097)と付け加える。一途な愛を Lancelot に受入れられず乙
女は死んでいった。それでは,Lancelotには誰か愛する女性がいるのか。し
かも愛とは心から自由に生れるもので拘束されるべきものではないと彼は王
妃と王の前で述べる。 “constrayned”と“constraynte”が強調され,たとえ愛す
る相手が忠誠を誓った主君の妻であっても,愛は主従関係には左右されない
と主張しているようにも解釈できる。ArthurはLancelotの考えに同調するが,
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心のなかでは,目の前にいる二人に対する疑念を持ったのではないか。しか
し常にLancelotを味方につけておきたい王としては,これ以上のことは言え
ないのである。
このあと,Caxton 版第 19 巻で王妃が Meliagaunt によって誘拐される「荷
車の騎士」と Lancelot による傷ついた騎士 Urry の傷の癒しのエビソードが
あり,そのあと Agravain による王妃の不倫の暴露が語られる。Malory は
“. . . here I go unto the morte Arthur, and that caused sir Aggravayne.”(Works 1154)
と述べ,Agravain が王の死の原因になることを指摘する。
王はAgravain から“. . . sir Launcelot holdith youre quene, and hath done longe;
and we be your syster sunnes, we may suffir hit no lenger. And all we wote that ye
shulde be above sir Launcelot, and ye are the kynge that made hym knyght, and
therefore we woll preve hit that he is a traytoure to youre person.”(Works 1163)と
聞かされる。そして “I wolde that he were takyn with the dede.”(Works 1163)と,
現場をおさえるように言う。Malory の Arthur にはフランスの作品で Morgan
が示した証拠となるようなものはない。
注目すべきは,Malory の以下の言葉である。
For, as the Freynshe booke seyth, the kynge was full lothe that such a noyse
shulde be uppon sir Launcelot and his quene; for the kynge had a demyng of
hit, but he wold nat here thereoff, for sir Launcelot had done so much for
hym and for the quene so many tymes that wyte you well the kynge loved
hym passyngly well. (Works 1163)
王は宮廷で囁かれる王妃とLancelotの愛についての噂には耳を傾けたくない
のである。なぜならLancelotはそれまでに王と王妃のために多くのことを為
し,しかも王は彼のこと愛していたからである。ここで注意すべきは, “the
kynge had a demyng of hit”である。Middle English Dictionary では“deming” 3.
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Speculation, conjecture; also, a conjecture, an inkling となっており,この用法
として Malory の上記の例があげられている。5 Mark 王は Tristram と Iseult に
対して“grete suspeccion”(Works 577)を抱いていたが,Arthur の場合は
“demyng”が使われている。Lumiansky は“had a suspicion”と言い換えている
が(Le Morte Darthur 695),この言葉には簡単に suspicion に置き換えられな
いArthurの複雑な思いがこめられているのではないか。王は王妃の不倫につ
いてそれなりに察していた。それは不確実な情報に基づくものである。その
情報の中でも,もっとも王にとって気にかかるのは,狂気が癒されたあとの,
王の質問に対するLancelotのあいまいな答えであったにちがいない。しかし
“the kynge loved hym passyng well”であり,いみじくも王が“And much more
I am soryar for my good knyghtes losse than for the losse of my fayre quene; for
quenys I myght have inow, but such a felyship of good knyghtes shall never be
togydirs in no company.”(Works 1184)と素直に本心を吐露するように,彼に
とっては,円卓騎士団を維持するためには,Lancelotが不可欠の存在であり,
王妃との一件には目をつぶるつもりだったのである。D. C. MacRae は La
Mort le Roi Artu に描かれた Arthur について
Lancelot’s love for the Queen, while obviously important in itself, finds its
real significance, not in adultery, but in the fact that it threatens to bring
about the confrontation which Arthur has sought to delay as long as possible.
The King is prepared to close his eyes to the truth, to accept the appearance
of the situation, as long as he can postpone the inevitable. (113)
と述べる。MacRae の解釈は Malory 描く Arthur にもあてはまる。Malory は
“demyng”を使って,己が手で騎士にした,最も愛する Lancelot と妻の不倫,
そして彼の裏切りという真実からなんとか目をそらしたいArthurの心理をき
わめて簡潔な表現で描きだしたのではないだろうか。Caxton 版第 21 巻 11 章
秋 篠 憲 一
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で,30分前に死んだGuinevereとLancelotが対面するとき, “Than syr Launcelot
sawe hir vysage, but he wepte not gretelye, but syghed.”(Works 1256)と Lancelot
の複雑な思いをあえて描かない Malory であるが,これと同じような表現方
法がここで用いられている。
Agravain と Mordred は 12 人の騎士とともに Lancelot と王妃が密会する現
場を急襲するが,Agravain と Gawain の二人の息子を含む 13 名の騎士の命
が奪われ,かろうじて Mordred だけが王のもとへ逃げ帰る。Mordred から報
告を聞いた王を Malory は次のように描く。
“Jesu mercy!” seyde the kynge, “he [Lancelot] ys a mervaylous knyght of
proues. And alas,” seyde the kynge, “me sore repentith that ever sir Launcelot
sholde be ayenste me, for now I am sure the noble felyshyp of the Rounde
Table ys brokyn for ever, for wyth hym woll many a noble knyght holde.
And now hit ys fallen so,” seyde the kynge, “that I may nat with my worshyp
but my quene muste suffir dethe,” and was sore amoved.
So than there was made grete ordynaunce in thys ire, and the quene muste
nedis be jouged to the deth. (Works 1174)
MacRae の言う“the inevitable”がやってきた。Lancelot が自分を騎士に叙し
た主君Arthurにはじめてそむいたのである。王にとって大切な騎士達の命を
奪ってまでもLancelotは王妃を守ろうとしたのである。しかもその反逆行為
によって円卓騎士団の団結も崩壊する。Arthurがもっとも恐れたことであり,
その団結を崩さないために,それまで王妃の不倫に疑念の目を積極的に向け
ることをしなかったのである。この時点でArthurの王妃とLancelotの姦通に
ついての“demyng”が確信となるのである。王妃の処刑を決定する時の王の
興奮ぶり(“in thys ire”)がそれを表している。
“The Kynge Had a Demyng of Hit”― Arthur と妻の不倫
17
おわりに
Arthurと妻の不倫を考える場合,重要なのは王にとって妻よりも円卓騎士
団の維持のほうが大切であるということである。王妃の取り替えはできるが,
円卓騎士団の場合はそれが不可能である。とりわけ,王にとって,Lancelot
とその一族あっての円卓騎士団なのである。P. McCracken は “In the ties of
mutual dependence represented by the adulterous love triangle, the king recognizes
the queen’s influence over his knight and tries to use it to his advantage.”(102)と述
べているが,王にとって,フランス出身の Lancelot とその一族を Logres に
留めておくにはLancelotが愛する王妃を利用するしかない。Caxton版第1巻
では若い Arthur の女性遍歴が描かれる。17 章では Sanam 伯爵の娘 Lionors
にやがて円卓騎士団の一員となるBorreを孕ませ,また18章では,Guinevere
と初めて会って恋におち,19 章では Lot 王の王妃である Morgause に一目ぼ
れし,彼女が異父姉であることを知らずに同衾し近親相姦の子Mordredが生
れる。そして Arthur はやがて我が子 Mordred に殺される。このように Arthur
は Lancelot のように “stabylité”(Works 1119)のある愛を持てない人間なので
ある。王にとって,愛は何かを成し遂げるための手段であり,そのために命
をささげるようなものではないのである。
Merlinの警告に始まってAgravainの告発にいたるまで,Arthurの“demyng”
について論じてきたが,王が最も信頼する家臣の裏切りに気づいた時,円卓
騎士団の団結に大きなひび割れが生じてしまう。このあとLancelotは王妃を
火あぶりの処刑から救い出すが,そのとき不幸にも Gawain の最愛の弟であ
る Gareth を殺し,Gawain の Lancelot への復讐心に火をつけ,円卓騎士団は
一挙に崩壊へと向かう。たとえ王が王妃の不倫を確信したとしても,その罪
が円卓騎士団に害を及ぼさないものなら,彼はその行為に対して見てみぬふ
りをしたであろう。だが,Lancelotは,王妃を守るために円卓の騎士13名を
刃にかけたのである。王は “. . . for my quene he shall nevermore fyght. . . .”(Works
秋 篠 憲 一
18
1175)と言って,これ以上王妃のために円卓騎士団から犠牲者を出さないた
めに王妃の処刑を決定する。やはりArthurにとって,妻よりも騎士の命が大
事なのである。愛をもてあそんだArthurが最も愛する騎士団は,皮肉にも王
妃と Lancelot の “stabylité” を持った“trew love”(Works 1119)が原因で崩れ
去っていく。神がArthurのために用意した死は,近親相姦と不倫の子である
Mordred によってもたらされる死である。
注
01 Pierpont Morgan Library Ms 805, fol. 67 では,左に Galehaut とその前でキスしよう
とするGuinevereとLancelotが描かれ,右のすこし離れたところで,Galehautの言い
つけで Lancelot を王妃のもとへ連れてきた家令の Kay と Lady of Malehaut と Lore of
Carduel が話をしている。Arthur のすがたは画面にはない。この挿画はテキストに,
よりいっそう忠実である。
02 Caxton 版 10 巻までは Lancelot と王妃の愛については直接的に描かれることは少な
い。第5巻3章で,ローマ皇帝と戦うため,本国を離れる時,ArthurはIseultを愛す
る Tristram は Mark 王のもとに残すが,これに対して Guinevere を愛する Lancelot は
王に同行しなければならない。Lancelotはこのことを怒る。また,第6巻1章では,
ローマから帰国後のLancelotの活躍が語られ,次に“Wherefore quene Gwenyvere had
hym in grete favoure aboven all other knyghtis, and so he loved the quene agayne aboven all
other ladyes of his lyff, and for hir he dud many dedys of armys and saved her frome the fyre
thorow his noble chevalry.”(Works 253)という一節が来る。ここでは第 20 巻の王妃の
火刑のことまで言及される。
03 また同じ第6巻 10 章ではある乙女が “. . . hit is noysed that ye love quene
Gwenyvere.”(Works 270)と述べ,また15章ではHellawes the Sorceressが “. . . I have loved
the this seven yere, [but] there may no woman have thy love but queneGwenyver. . . .”(Works
281)とLancelotへの愛を打ち明ける。このように王妃とLancelotの不倫の噂は広がっ
ているのである。
04 冒険の旅から喜びの砦に帰ってきた Tristram は Iseult から Lancelot の狂気について
告げられると, “Alas . . . that caused som debate betwyxt hym and queneGwenyver.”(Works
839)と言う。彼には狂気の原因がすぐに分かったのである。しかもIseultもGuinevere
からの手紙でそのことを知っているのである。従って,Lancelotの身内以外にも狂
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“The Kynge Had a Demyng of Hit”― Arthur と妻の不倫
気の原因について知る者がいるのである。
05 Malory では“a demyng”がもう1箇所,Caxton 版第 20 巻 15 章で使われている。
“Howbehit I have be macched with good knyghtes, as sir Trystram and sir Lamorak, but ever
I had favoure unto them and a demyng what they were.”(Works 1198; 下線筆者)で,Lancelot
がArthurに対して自分がいかに彼に尽くしてきたかを述べる一節である。同じ用法
であり,下線部は「彼らがどのような人物かと思っていた」と訳せばよいであろう。
参考文献
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秋 篠 憲 一
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ベルール. 「トリスタン物語」新倉俊一訳 『フランス中世文学集1―信仰と愛と』新
倉俊一他訳 東京: 白水社 , 1990.
“The Kynge Had a Demyng of Hit”― Arthur と妻の不倫
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Synopsis
“The Kynge Had a Demyng of Hit”:
Arthur and His Wife’s Adultery
Kenichi Akishino
In Sir Thomas Malory’s Le Morte Darthur, Agravain reveals to King Arthur
that Queen Guinevere loves Lancelot adulterously, and the king reluctantly
tells his nephew to catch the lovers in the act. Concerning the king’s thoughts,
the author explains: “. . . the kynge was full lothe that such a noyse shulde be
upon sir Launcelot and his quene; for the kynge had a demyng of hit, but he
wold nat here thereoff, for sir Launcelot had done so much for hym and for
the quene so many tymes that wyte you well the kynge loved hym passyngly
well.” What does “the kynge had a demyng of hit” mean? Wilfred L. Guerin
states that “Arthur’s knowledge or lack of knowledge of his own cuckoldry is
important for an estimate of him as a tragic character. His ‘demyng’ of the
liaison is, in my understanding of Malory’s purpose, of long standing.” As
for Arthur’s suspicions, Guerin refers to the following episodes in the “Tale
of Tristram”: Tristram’s shield, King Mark’s letter to Arthur, and Lancelot’s
madness. However, he does not analyze each of these episodes nor explain
how they relate to the king’s “demyng.” We wonder how and when Arthur
notices his wife’s illicit relationship with Lancelot. R. M. Lumiansky says
that Arthur learns of the earlier adultery between Lancelot and Guinevere
because Lancelot recounts to the king all his Grail adventures, including the
fact that he confessed to the first hermit that he loved “a quene unmesurabely”.
Has Lancelot, who concealed the queen’s name from the hermit in the
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秋 篠 憲 一
sacrament of penance, told the truth to Arthur? In this article I will analyze
mainly the above episodes in the “Tale of Tristram” and investigate how
Arthur’s suspicion of his wife’s adultery is fostered and deepened, and finally
discuss his attitude toward the liaison.
Arthur marries Guinevere, King Leodegraunce’s daughter, despite Merlin’s
warning of her adultery with Lancelot; unfortunately, Merlin’s prediction
comes true. In Malory Arthur is given the opportunity to know her betrayal
three times before Agravain’s disclosure of it. Firstly, Morgan le Fay makes a
shield and orders Tristram to take it with him and participate in a tournament
announced by Arthur. Her intention is to make the king aware of his wife's
sinful love and revenge herself on Lancelot for his rejection of her own love.
The shield depicts a knight standing on the heads of the king and queen.
While Guinevere understands what the shield means, the king does not.
Secondly, King Mark sends a letter to Arthur to warn him to be wary of his
own wife and knights. Arthur reads it and remembers what Morgan said
about Guinevere’s love of Lancelot; nevertheless, he ignores it. He is unable
to believe her words because she is hostile to him. Finally, Lancelot’s madness,
caused by his betrayal of Guinevere’s love, awakens Arthur’s suspicion of the
illicit love affair. Lancelot, in madness, wanders for two years and finally
arrives at the Grail Castle; there his madness is healed by the Holy Grail. His
return to Camelot is welcomed by the king and queen. Arthur asks Lancelot
about the cause of his madness. Lancelot answers, “My lorde, . . . yf I ded
ony foly I have that I sought.” What he wants to say is that although he was
disloyal to Guinevere, he has obtained her forgiveness. Lancelot’s explanation
is not clear and lucid; even so, the king speaks no more. This ambiguous
reply makes Arthur suspect him of committing adultery with Guinevere. In
this respect the episode of Lancelot’s madness is important in considering
“The Kynge Had a Demyng of Hit”― Arthur と妻の不倫
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Arthur’s “demyng” of the liaison.
While Arthur is out on a sham hunt planned by Agravain, Agravain, Mordred,
and the other twelve knights go to the queen’s room to catch the two sinful
lovers. Unfortunatelly, Lancelot kills thirteen of them, including Agravain
and Gawain’s two sons. Immediately Mordred tells the king what has occurred,
and at that time the king’s “demyng” changes to conviction. For love of
Guinevere, Lancelot, whom Arthur knighted and loves most, has slain Arthur’s
knights, and this loss is much more grievous for the king than the loss of his
queen’s fidelity.
What is love for Arthur? He begets Borre on Lionors, Earl Sanam’s daughter,
and Mordred on Morgause, his own sister and King Lot’s wife, before he is
wedded to Guinevere. He is not a true lover as Lancelot is. He says:“. . .
quenys I myght have inow, but such a felyship of good knyghtes shall never
be togydirs in no company.” As P. McCracken observes, “the king recognizes
the queen’s influence over his knight and tries to use it to his advantage.” So
long as his queen’s adultery with Lancelot does not shatter the solidarity of
the Round Table, Arthur is willing to overlook it. This is because Lancelot is
essential to the Arthurian chivalry. However, Lancelot’s murder of the thirteen
knights causes the king to decide to execute his queen to ensure that Lancelot
does not fight any more for her. This decision accelerates the collapse of the
noble fellowship of knights. The Round Table, which Arthur loves more than
his wife, disintegrates because of these sinful lovers’ true love. Arthur’s attitude
toward love ultimately determines his fate: he is killed by his own son Mordred,
issue of incest and adultery.
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